(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、PMRモータは、ロータコアの磁気回路が磁束を集中させる構造上、漏れ磁束となる箇所をできる限り減少させることが望ましい。例えば、各永久磁石の径方向内側端において、周方向で隣り合う永久磁石の間の間隔をできる限り狭めて配置すると、この箇所のロータコアの肉厚が薄くなり、磁気飽和する。この結果、永久磁石の径方向内側での漏れ磁束を低減でき、ロータの磁気特性を向上できる。
しかしながら、ロータコアに肉厚の薄い箇所ができると、その薄肉箇所の剛性が低くなる。このため、ロータが回転する際の遠心力によってロータコアが変形してしまう可能性があった。
【0007】
そこで、本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであって、漏れ磁束による磁気特性の低下を抑えつつ、剛性を確保できるロータおよび電動モータを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明に係るロータは
、回転軸と、前記回転軸に外嵌固定され
た筒状の内周コア
、及び前記内周コアよりも径方向外側に配置され、且つ周方向に所定の間隔をあけて配置された複数の磁極部コアを有するロータコアと、前記内周コアの外周面に、径方向の一端が当接するように、且つ周方向
で隣接する前記磁極部コアの間を埋めるように設けられた複数の永久磁石と、を備え
、前記ロータコアは、軸方向に積層された複数の電磁鋼板からなる複数の中間コアおよび複数のエンドコアを有し、前記中間コアは、前記内周コアと、前記内周コアと別体の前記複数の磁極部コアと、からなり、前記エンドコアは、前記内周コアと、前記複数の磁極部コアと、前記内周コアと前記複数の磁極部コアとを径方向に沿って連結する内連結部と、からなり、前記ロータコアは、前記中間コアにおける前記内周コアの外周面と、前記中間コアにおける前記磁極部コアの内周面と、前記エンドコアの前記内連結部と、により形成された開口部を有することを特徴とする。
【0009】
このように、漏れ磁束の要因となる内連結
部を、軸方向全体に渡って形成せずに、一部に形成することにより、内連結
部としての磁路を減少させることができる。このため、内連結
部の周方向における肉厚として、必要な肉厚を確保しつつ、漏れ磁束によるロータの磁気特性の低下を抑えることができる。
このように構成することで、中間コアとエンドコアとを積層するだけでロータを形成することが可能になるので、ロータの製造コストを低減できる。
また、比較的磁束密度の高い軸方向中央の大部分に、内連結部と外周連結部のない中間コアが配置されるので、効果的に磁束漏れを低減できると共に、ロータの外周面に効果的に永久磁石を露出させることができる。このため、ロータの剛性を確保しつつ、ロータの磁気特性を最大限高めることができる。
【0010】
本発明に係るロータ
において、前記エンドコアは、
周方向で隣接する前記複数の磁極部コア同士の一部を前記永久磁石の径方向外側で連結する外周連結部をさらに備えることを特徴とする。
【0011】
このように、漏れ磁束の要因となる外周連結部を、軸方向全体に渡って形成せずに、一部に形成することにより、内連結部や外周連結部全体としての磁路を減少させることができる。このため、外周連結部の周方向における肉厚として、必要な肉厚を確保しつつ、漏れ磁束によるロータの磁気特性の低下を抑えることができる。
【0012】
本発明に係るロータにおいて、前記中間コアと前記エンドコアとの比率は、8:2に設定されていることを特徴とする。
【0013】
このように構成することで、ロータの剛性を確実に確保しつつ、ロータの磁気特性を確実に高めることができる。
【0014】
本発明に係るロータ
において、前記エンドコアは、前記中間コアの軸方向両側に配置されていることを特徴とする。
【0015】
このように構成することで、内周コア側への磁束漏れを低減できる。
また、中間コアとエンドコアとを積層するだけでロータを形成することが可能になるので、ロータの製造コストを低減できる。
【0016】
本発明に係るロータにおいて、前記凹部は、各前記永久磁石の径方向内側端における周方向両側にそれぞれ形成されており、前記内連結部は、周方向で隣り合う前記永久磁石の間で、且つ周方向で隣り合う前記凹部の間に配置されていることを特徴とする。
【0017】
このように構成することで、内連結部の形成箇所をできる限り減少させると共に、内周コア側への磁束漏れを確実に低減できる。
【0018】
本発明に係るロータにおいて、各前記内連結部は、軸方向全体に対して1/4の領域に形成されていることを特徴とする。
【0019】
このように構成することで、ロータの剛性を確保しつつ、内連結部による磁束漏れを最小限に抑えることができる。
【0020】
本発明に係るロータにおいて、前記内連結部の周方向の幅、および前記外周連結部の径方向の幅の少なくとも何れか一方は、磁気飽和可能な幅に設定されていることを特徴とする。
【0021】
このように構成することで、内連結部による磁束漏れを確実に抑えることができる。
【0022】
本発明に係る電動モータは、上記に記載のロータと、前記ロータの周囲を取り囲むように形成された環状のステータコア、および該ステータコアの内周面から径方向内側に向かって突出し、コイルが巻回される複数のティースを有するステータと、を備えたことを特徴とする。
【0023】
このように構成することで、漏れ磁束による磁気特性の低下を抑えつつ、剛性を確保可能な電動モータを提供できる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、漏れ磁束の要因となる内連結部や外周連結部を、軸方向全体に渡って形成せずに、一部に形成することにより、内連結部や外周連結部全体としての磁路を減少させることができる。このため、内連結部や外周連結部の周方向における肉厚として、必要な肉厚を確保しつつ、漏れ磁束によるロータの磁気特性の低下を抑えることができる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
次に、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0027】
(減速機付モータ)
図1は、減速機付モータ1の斜視図、
図2は、
図1のA−A線に沿う断面図である。
図1、
図2に示すように、減速機付モータ1は、例えば車両に搭載される電装品(例えば、ワイパ、パワーウインドウ、サンルーフ、電動シート等)の駆動源となるものである。減速機付モータ1は、モータ部2と、モータ部2の回転を減速して出力する減速部3と、モータ部2の駆動制御を行うコントローラ部4と、を備えている。
なお、以下の説明において、単に軸方向という場合は、モータ部2の回転軸31の軸方向をいい、単に周方向という場合は、回転軸31の周方向をいい、単に径方向という場合は、回転軸31の径方向をいうものとする。
【0028】
(モータ部)
モータ部2は、モータケース5と、モータケース5内に収納されている略円筒状のステータ8と、ステータ8の径方向内側に設けられ、ステータ8に対して回転可能に設けられたロータ9と、を備えている。
【0029】
(モータケース)
モータケース5は、例えばアルミダイキャストや鉄板等の放熱性の優れた材料にて形成されている。モータケース5は、軸方向に分割可能に構成された第1モータケース6と、第2モータケース7と、からなる。第1モータケース6および第2モータケース7は、それぞれ有底筒状に形成されており、それぞれの開口部6a,7aを嵌合させることで内部空間を有するモータケース5を形成している。
【0030】
より詳しくは、第1モータケース6は、底部10が減速部3のギヤケース40と接合されるようにこのギヤケース40と一体成形されている。底部10の径方向略中央には、ロータ9の回転軸31を挿通可能な貫通孔10aが形成されている。
また、第1モータケース6の周壁部11は、軸方向からみて略正六角形となるように形成されている。周壁部11の内周面には、開口部6a側に段差により拡径形成されたステータ内嵌部18が形成されている。このステータ内嵌部18にステータ8の外周面が嵌合される。さらに、第1モータケース6の周壁部11の外周面には、開口部6a側に段差部12aを介して縮径形成された嵌合部12が形成されている。この嵌合部12は、第2モータケース7の開口部7aを嵌合するためのものである。
【0031】
第2モータケース7の周壁部14も、第1モータケース6の周壁部11の形状に対応するように、軸方向からみて略正六角形となるように形成されている。周壁部14の外周面には、開口部7a側に全周に渡って凸条部16が形成されている。また、第2モータケース7の開口部7aには、段差により拡径形成された嵌合部17が形成されている。この嵌合部17と、第1モータケース6の嵌合部12とが嵌合される。さらに、第1モータケース6の段差部12aと第2モータケース7の凸条部16とが当接することにより、第1モータケース6と第2モータケース7との軸方向の相対位置が決定される。
【0032】
(ステータ)
図3は、ステータ8およびロータ9の軸方向に直交する断面図である。
図2、
図3に示すように、ステータ8は、筒状のコア部21と、コア部21から径方向内側に向かって突出する複数(例えば、本実施形態では6つ)のティース22と、が一体成形されたステータコア20を有している。ステータコア20は、複数の金属板を軸方向に積層することにより形成されている。なお、ステータコア20は、複数の金属板を軸方向に積層して形成する場合に限られるものではなく、例えば、軟磁性粉を加圧成形することにより形成してもよい。
【0033】
コア部21は、磁路を形成すると共に、ステータ8の外郭を構成している。コア部21は、2つのモータケース6,7の周壁部11,14の形状に対応するように、軸方向に直交する断面形状が略正六角形に形成されている。このコア部21の外周面が、第1モータケース6のステータ内嵌部18に内嵌される。
【0034】
ティース22は、コア部21の内周面から径方向に沿って突出するティース本体101と、ティース本体101の径方向内側端から周方向に沿って延びる鍔部102と、が一体成形されたものである。鍔部102は、ティース本体101から周方向両側に延びるように形成されている。また、鍔部102の内周面102aは、回転軸中心C1を中心とする円弧状に形成されている。そして、周方向で隣り合う鍔部102の間に、スロット19が形成される。
【0035】
また、コア部21の内周面、およびティース22は、樹脂製のインシュレータ23によって覆われている。このインシュレータ23の上から各ティース22にコイル24が巻回されている。各コイル24は、コントローラ部4からの給電により、ロータ9を回転させるための磁界を生成する。
【0036】
(第1実施形態)
(ロータ)
図4は、ロータ9の斜視図である。
図2〜
図4に示すように、ロータ9は、回転軸31と、回転軸31に外嵌固定されている円柱状のロータコア32と、ロータコア32に周方向に等間隔で埋設されている複数(例えば、本第1実施形態では、4つ)の永久磁石33と、を備えている。回転軸31は、減速部3を構成するウォーム軸44と一体成形されている。
【0037】
図5は、ロータコア32の斜視図である。
同図に示すように、ロータコア32は、複数の中間電磁鋼板111aを積層してなる中間コア111と、中間コア111の軸方向両側に配置され複数のエンド電磁鋼板112aを積層してなるエンドコア112と、により構成されている。
【0038】
図6は、エンド電磁鋼板112aの斜視図である。
同図に示すように、エンド電磁鋼板112aは、回転軸31に外嵌固定される略円環状の内周部113と、内周部113の周囲を取り囲むように、周方向に等間隔に配置された略扇状の4つの磁極部114と、内周部113と4つの磁極部114とを連結する内連結部117と、周方向に隣接する磁極部114の円弧面114a同士を連結する外周連結部118と、が一体化されたものである。
【0039】
内周部113の内径は、回転軸31を圧入、または挿入可能な程度に設定されている。また、内周部113の外周面には、4つの凸条部115が周方向に等間隔に配置されている。凸条部115は、周方向に長い略長方形状に形成されており、その径方向外側端115aに永久磁石33の後述の下底33aが当接される。
【0040】
磁極部114は、周方向に隣接する永久磁石33の間を埋めるように、軸方向平面視で略扇形となるように形成されている。そして、磁極部114は、その円弧面114aが径方向外側を向くように配置されている。また、磁極部114は、円弧面114aとは反対側の先端部114bが、内周部113に形成されている凹部119の周方向略中央の位置と径方向で対向するように配置されている。
【0041】
磁極部114の円弧面114aは、中間電磁鋼板111a(ロータコア32)の外周面を構成する。また、円弧面114aの周方向両端よりもやや手前には、それぞれ溝部116が形成されている。溝部116は、径方向内側に向かって先細りとなるように略三角状に形成されている。
【0042】
このように形成された円弧面114aの溝部116よりも周方向端部側に、外周連結部118が形成されている。外周連結部118によって周方向に隣接する磁極部114の円弧面114a同士が連結されることにより、これら磁極部114と外周連結部118とに囲まれた磁石収納部120が形成される。
磁石収納部120は、磁極部114が略扇形に形成されていることから、軸方向平面視の形状が径方向内側に向かうに従って周方向の幅が漸次広くなるように等脚台形状になっている。また、このように形成された磁石収納部120と内周部113に形成された凹部119とが、連通されている。
【0043】
また、内周部113の周方向で隣接する凸条部115間の中央に、それぞれ内連結部117が一体成形されている。内連結部117は径方向に沿って延びており、内周部113と各磁極部114の先端部114bとを連結している。これにより、内連結部117を介して内周部113と4つの磁極部114とが一体化される。内連結部117は、径方向に沿って延びる棒状のものであり、軸方向に沿う断面形状は、略正方形状になっている。内連結部117が形成されることにより、この内連結部117と凸条部115との間に、それぞれ凹部119が形成された形になる。
【0044】
そして、このように、内周部113、4つの磁極部114、4つの内連結部117、および4つの外周連結部118とが一体化されたエンド電磁鋼板112aを、複数(例えば、本第1実施形態では4枚)積層する。さらに、例えばカシメ固定等によって各エンド電磁鋼板112aを一体化することにより、エンドコア112が形成される。
【0045】
図7は、中間電磁鋼板111aの斜視図である。
同図に示すように、中間電磁鋼板111aは、回転軸31に外嵌固定される略円環状の内周部113と、内周部113の周囲を取り囲むように、周方向に等間隔に配置された略扇状の4つの磁極部114と、が分割構成されたものである。すなわち、中間電磁鋼板111aは、エンド電磁鋼板112aから内連結部117と外周連結部118とを除いたものである。なお、中間電磁鋼板111aの内周部113、および磁極部114は、エンド電磁鋼板112aの内周部113、および磁極部114と同様の構成であるので、同一符号を付して説明を省略する。
【0046】
このように、内周部113と4つの磁極部114とがそれぞれ分割構成された中間電磁鋼板111aを、複数(例えば、本実施形態では32枚)積層してカシメ固定することにより、中間コア111が形成される。
ここで、中間コア111は、それ自体では積層された内周部113と各磁極部114とが分割されたままである。しかしながら、中間コア111の軸方向両端にエンドコア112が配置され、例えばカシメ固定により中間コア111とエンドコア112とが一体化されている。このため、
図5に示すように、エンドコア112を介し、中間コア111の内周部113および各磁極部114が一体化され、さらにロータコア32が構成される。
【0047】
そして、
図5に示すように、ロータコア32は、内周部113を積層してなる略円筒状の内周コア121と、磁極部114を積層してなる軸方向に延在する4つの磁極部コア122と、内周コア121と磁極部コア122とを連結する内連結部117と、周方向に隣接する磁極部コア122同士を連結する外周連結部118と、を備えた形になる。
回転軸31に内周コア121が外嵌固定されることにより、回転軸31にロータコア32全体が固定される。磁極部コア122は、永久磁石33による磁束やステータ8により形成される磁束の通り道となる。
【0048】
また、ロータコア32の内連結部117、および外周連結部118には、それぞれ中間コア111に対応する位置に、開口部117a,118aが形成された形になる。さらに、ロータコア32の外周面32aには、各磁石収納部120の周方向両側に、溝部116が軸方向全体に延びるように形成された形になる。
ここで、
図3に詳細示するように、磁石収納部120を挟んで周方向両側に位置する2つの溝部116は、周方向中心間の円周長さL1が、ティース22の鍔部102における内周面の円周長さL2よりも長く設定されている。
【0049】
このように構成されたロータコア32の磁石収納部120に、永久磁石33が嵌め込まれている。永久磁石33は、磁石収納部120の形状に対応するように、軸方向に直交する断面形状が径方向内側に向かうに従って周方向の幅が漸次広くなるように等脚台形状となるように形成されている。すなわち、永久磁石33は、軸方向に直交する断面形状において、径方向内側に位置する下底33aと、径方向外側に位置する上底33bと、下底33aと上底33bとの間に位置する一対の脚33cと、を有している。
【0050】
また、永久磁石33は、パラレル配向、または極異方配向に着磁されており、形状が等脚台形状となるように形成されていることから、磁束を収束させるための配向の向きが、ロータコア32の外周側(ステータ8のティース22側)となる。この結果、磁極部コア122における磁束の向きが、ティース22側へと収束させやすくできる。さらに、周方向で隣り合う永久磁石33同士を近づけることなく、磁極部コア122内において磁束を集中させることができる。そして、q軸磁路を大きく設定でき、高いリラクタンストルクを発生させることができる。よって、ロータコア32の有効磁束を高めることができる。
【0051】
また、磁石収納部120に永久磁石33を収納した状態では、上底33bが、ロータコア32の外周面32aの開口部118aを介して径方向外側に露出した状態になる。
一方、永久磁石33の下底33aは、ロータコア32の凸条部115の径方向外側端115aに当接している。このため、永久磁石33の下底33aとロータコア32の内周コア121との間には、下底33aの周方向両側に、それぞれ凹部119が介在される。すなわち、凹部119は、磁束を通りにくくするフラックスバリア(空洞部)119aとして機能する。
【0052】
また、内連結部117は、周方向で隣り合う永久磁石33の間で、且つ周方向で隣り合う凹部119の間に配置される。ここで、内連結部117の周方向の幅H1は、ロータコア32の剛性を確保可能な範囲で、できる限り狭いことが望ましい。さらには、内連結部117の幅H1は、永久磁石33の磁束が飽和可能な幅に設定されていることが望ましい。
【0053】
(減速部)
図1、
図2に戻り、減速部3は、モータケース5が取り付けられているギヤケース40と、ギヤケース40内に収納されるウォーム減速機構41と、を備えている。ギヤケース40は、例えばアルミダイキャスト等の放熱性の優れた材料により形成されている。ギヤケース40は、一面に開口部40aを有する箱状に形成されており、内部にウォーム減速機構41を収容するギヤ収容部42を有する。また、ギヤケース40の側壁40bには、第1モータケース6が一体成形されている箇所に、この第1モータケース6の貫通孔10aとギヤ収容部42とを連通する開口部43が形成されている。
【0054】
さらに、ギヤケース40の側壁40bには、3つの固定ブラケット54a,54b,54cが一体成形されている。これら固定ブラケット54a,54b,54cは、不図示の車体等に、減速機付モータ1を固定するためのものである。3つの固定ブラケット54a,54b,54cは、モータ部2を避けるように、周方向にほぼ等間隔に配置されている。各固定ブラケット54a,54b,54cには、それぞれ防振ゴム55が装着されている。防振ゴム55は、減速機付モータ1を駆動する際の振動が、不図示の車体に伝達されてしまうのを防止するためのものである。
【0055】
また、ギヤケース40の底壁40cには、略円筒状の軸受ボス49が突設されている。
軸受ボス49は、ウォーム減速機構41の出力軸48を回転自在に支持するためのものであって、内周面に不図示の滑り軸受が設けられている。さらに、軸受ボス49の先端内周縁には、不図示のOリングが装着されている。これにより、軸受ボス49を介して外部から内部に塵埃や水が侵入してしまうことが防止される。また、軸受ボス49の外周面には、複数のリブ52が設けられている。これにより、軸受ボス49の剛性が確保されている。
【0056】
ギヤ収容部42に収容されたウォーム減速機構41は、ウォーム軸44と、ウォーム軸44に噛合されるウォームホイール45と、により構成されている。ウォーム軸44は、モータ部2の回転軸31と同軸上に配置されている。そして、ウォーム軸44は、両端がギヤケース40に設けられた軸受46,47によって回転自在に支持されている。ウォーム軸44のモータ部2側の端部は、軸受46を介してギヤケース40の開口部43に至るまで突出している。この突出したウォーム軸44の端部とモータ部2の回転軸31との端部が接合され、ウォーム軸44と回転軸31とが一体化されている。なお、ウォーム軸44と回転軸31は、1つの母材からウォーム軸部分と回転軸部分とを成形することにより一体として形成してもよい。
【0057】
ウォーム軸44に噛合されるウォームホイール45には、このウォームホイール45の径方向中央に出力軸48が設けられている。出力軸48はウォームホイール45の回転軸方向と同軸上に配置されており、ギヤケース40の軸受ボス49を介してギヤケース40の外部に突出している。出力軸48の突出した先端には、不図示の電装品と接続可能なスプライン48aが形成されている。
【0058】
また、ウォームホイール45の径方向中央には、出力軸48が突出されている側とは反対側に、不図示のセンサマグネットが設けられている。このセンサマグネットは、ウォームホイール45の回転位置を検出する回転位置検出部60の一方を構成している。この回転位置検出部60の他方を構成する磁気検出素子61は、ウォームホイール45のセンサマグネット側(ギヤケース40の開口部40a側)でウォームホイール45と対向配置されているコントローラ部4に設けられている。
【0059】
(コントローラ部)
モータ部2の駆動制御を行うコントローラ部4は、磁気検出素子61が実装されたコントローラ基板62と、ギヤケース40の開口部40aを閉塞するように設けられたカバー63と、を有している。そして、コントローラ基板62が、ウォームホイール45のセンサマグネット側(ギヤケース40の開口部40a側)に対向配置されている。
【0060】
コントローラ基板62は、いわゆるエポキシ基板に複数の導電性のパターン(不図示)が形成されたものである。コントローラ基板62には、モータ部2のステータコア20から引き出されたコイル24の端末部が接続されていると共に、カバー63に設けられたコネクタの端子(何れも不図示)が電気的に接続されている。また、コントローラ基板62には、磁気検出素子61の他に、コイル24に供給する電流を制御するFET(Field Effect Transistor:電界効果トランジスタ)等のスイッチング素子からなるパワーモジュールやコントローラ基板に印加される電圧の平滑化を行うコンデンサ(何れも不図示)等が実装されている。
【0061】
このように構成されたコントローラ基板62を覆うカバー63は樹脂製であって、若干外側に膨出するように形成されている。そして、カバー63の内面側は、コントローラ基板62等を収容するコントローラ収容部56とされている。
また、カバー63の外周部に、不図示のコネクタが一体成形されている。このコネクタは、不図示の外部電源から延びるコネクタと嵌着可能に形成されている。そして、不図示のコネクタの端子に、コントローラ基板62が電気的に接続されている。これにより、外部電源の電力がコントローラ基板62に供給される。
【0062】
さらに、カバー63の開口縁には、ギヤケース40の側壁40bの端部と嵌め合いされる嵌合部81が突出形成されている。嵌合部81は、カバー63の開口縁に沿う2つの壁81a,81bにより構成されている。そして、これら2つの壁81a,81bの間に、ギヤケース40の側壁40bの端部が挿入(嵌め合い)される。これにより、ギヤケース40とカバー63との間にラビリンス部83が形成される。このラビリンス部83によって、ギヤケース40とカバー63との間から塵埃や水が浸入してしまうことが防止される。なお、ギヤケース40とカバー63との固定は、不図示のボルトを締結することにより行われる。
【0063】
(減速機付モータの動作)
次に減速機付モータ1の動作について説明する。
減速機付モータ1は、不図示のコネクタを介してコントローラ基板62に供給された電力が、不図示のパワーモジュールを介してモータ部2の各コイル24に選択的に供給される。すると、ステータ8(ティース22)に所定の磁界が形成され、この磁界とロータ9の永久磁石33との間で磁気的な吸引力や反発力が生じる。これにより、ロータ9が継続的に回転する。
【0064】
ロータ9が回転すると、回転軸31と一体化されているウォーム軸44が回転し、さらにウォーム軸44に噛合されているウォームホイール45が回転する。そして、ウォームホイール45に連結されている出力軸48が回転し、所望の電装品が駆動する。
【0065】
また、コントローラ基板62に実装されている磁気検出素子61によって検出されたウォームホイール45の回転位置検出結果は、信号として不図示の外部機器に出力される。
不図示の外部機器は、ウォームホイール45の回転位置検出信号に基づいて、不図示のパワーモジュールのスイッチング素子等の切替えタイミングが制御され、モータ部2の駆動制御が行われる。なお、パワーモジュールの駆動信号の出力やモータ部2の駆動制御は、コントローラ部4で行われていても良い。
【0066】
(ロータの作用、効果)
次に、ロータ9の作用、効果について説明する。
ロータ9のロータコア32は、回転軸31に外嵌固定される内周コア121と、磁極を構成する磁極部コア122と、内周コア121と磁極部コア122とを連結する内連結部117と、周方向に隣接する磁極部コア122同士を連結する外周連結部118と、により構成されている。このうち、内連結部117、および外周連結部118には、開口部117a,118aが形成されている。すなわち、内連結部117は、内周コア121と磁極部コア122との一部を連結している。また、外周連結部118は、磁極部コア122同士の一部を連結している。
【0067】
このように、漏れ磁束の要因となる内連結部117や外周連結部118を、軸方向全体に渡って形成せずに、一部に形成することにより、内連結部117や外周連結部118全体としての磁路を減少させることができる。このため、内連結部117や外周連結部118の周方向における肉厚として、必要な肉厚を確保しつつ、漏れ磁束によるロータ9の磁気特性の低下を抑えることができる。
【0068】
また、内連結部117、および外周連結部118に開口部117a,118aを形成するにあたり、ロータコア32を、内周部113と磁極部114とが分割構成された中間コア111と、これら内周部113や磁極部114を連結する内連結部117および外周連結部118を有するエンドコア112と、により構成している。このため、これら中間コア111とエンドコア112を積層するだけで、開口部117a,118aを有するロータコア32を形成することができる。このため、ロータ9の製造コストを低減できる。
【0069】
ここで、永久磁石33は、軸方向両端の磁束密度が軸方向中央の大部分の磁束密度よりも減少しやすい。このため、比較的磁束密度の高い永久磁石33の軸方向中央の大部分に対応する箇所に、内連結部117と外周連結部118のない中間コア111を配置することにより、ロータコア32の磁束漏れを効果的に低減できる。また、ロータコア32の外周面32aに効果的に永久磁石33を露出させることができる。よって、ロータ9の剛性を確保しつつ、ロータ9の磁気特性を最大限高めることができる。
【0070】
さらに、本第1実施形態では、中間コア111を32枚の中間電磁鋼板111aにより構成し、エンドコア112を4枚のエンド電磁鋼板112aにより構成している。換言すれば、ロータコア32を構成する中間コア111とエンドコア112との比率は、8:2に設定されている。これを、内連結部117のみでいうと、内連結部117は、この内連結部117が形成される箇所の軸方向全体に対して1/4の領域に形成されている形になる。また、外周連結部118のみでいうと、外周連結部118は、この外周連結部118が形成される箇所の軸方向全体に対して1/4の領域に形成されている形になる。
このように構成することで、ロータコア32の剛性を確実に確保しつつ、ロータコア32の磁気特性を確実に高めることができる。このことについて、以下により詳しく説明する。
【0071】
図8は、中間コア111とエンドコア112との比率別(0:10,5:5,8:2)におけるロータコア32の有効磁束量を比較したグラフである。
同図に示すように、中間コア111とエンドコア112との比率が8:2のとき、優れた有効磁束量を得られることが確認できる。
【0072】
図9は、中間コア111とエンドコア112との比率が8:2のとき、ロータコア32を回転させた際にかかる応力の解析結果を示す図である。
同図に示すように、エンドコア112の内連結部117、および外周連結部118により、磁極部コア122や永久磁石33が飛散することなく、ロータコア32に十分な強度を持たせられることが確認できる。
【0073】
また、ロータコア32の内周コア121(内周部113)に凹部119を形成することにより、永久磁石33の下底33aとロータコア32の内周コア121との間に、フラックスバリア119aが形成される。このため、永久磁石33の内周コア121側への磁束漏れをより確実に低減できる。
【0074】
このように、凹部119は、各永久磁石33の下底33aの周方向両側にそれぞれ形成される。また、内連結部117は、周方向で隣り合う永久磁石33の間で、且つ周方向で隣り合う凹部119の間に配置される。このため、内連結部117の配置箇所を最小限としつつ、内周コア121と磁極部コア122とを一体化できる。よって、ロータコア32を十分な強度を確保して一体化しつつ、永久磁石33の磁束漏れをできる限り低減できる。
さらに、内連結部117の周方向の幅H1を、永久磁石33の磁束が飽和可能な幅に設定することにより、永久磁石33の内周コア121側への磁束漏れを確実に低減できる。
【0075】
また、ロータコア32の外周面32aには、各磁石収納部120の周方向両側に、溝部116が軸方向全体に延びるように形成されている。また、磁石収納部120を挟んで周方向両側に位置する2つの溝部116は、周方向中心間の円周長さL1が、ティース22の鍔部102における内周面の円周長さL2よりも長く設定されている。溝部116が形成されている箇所では、ロータコア32とステータ8のティース22との間のギャップが大きくなる。このため、溝部116では、ロータコア32の磁束によるティース22への影響が小さくなる。すなわち、ロータコア32の外周面32aにおいて、溝部116を形成することにより、永久磁石33が配置されている箇所と、これ以外の箇所と、による磁束の急激な変化を抑制でき、ロータ9のコギングを抑制できる。
【0076】
(第2実施形態)
(ロータ)
次に、
図10、
図11に基づいて、第2実施形態について説明する。
図10は、第2実施形態におけるロータ209の斜視図であって、前述の
図4に対応している。
図11は、第2実施形態におけるロータコア232の斜視図であって、前述の
図5に対応している。
【0077】
図10、
図11に示すように、前述の第1実施形態と本第2実施形態との相違点は、第1実施形態のロータコア32は、中間コア111と、この中間コア111の軸方向両側に配置されたエンドコア112と、により構成されているのに対し、第2実施形態のロータコア232は、中間コア111を構成する中間電磁鋼板111aとエンドコア112を構成するエンド電磁鋼板112aとが交互に積層されている点にある。なお、ロータコア232の軸方向両端には、それぞれエンド電磁鋼板112aが配置されている。
このように構成した場合であっても、永久磁石33の磁束漏れの要因となる内連結部117および外周連結部118の体積を減少させることができるので、前述の第1実施形態と同様の効果を奏する。
【0078】
(第3実施形態)
(ロータコア)
次に、
図12に基づいて、第3実施形態について説明する。
図12は、第3実施形態におけるロータコア332の斜視図であって、前述の
図5に対応している。
同図に示すように、第3実施形態のロータコア332には、外周連結部118が形成されておらず、内周コア121と磁極部コア122とが内連結部117のみで一体化されている。この点、前述の第1実施形態と相違する点である。
【0079】
ここで、内連結部117に開口部117aが形成されることにより、内連結部117は、この内連結部117が形成される箇所の軸方向全体に対して1/4の領域に形成されている形になる。
また、ロータコア332には、外周連結部118(
図5参照)が形成されていない代わりに、磁極部コア122の外周部に、磁石収納部120側に向かって、且つ周方向に沿って突出する爪部131が形成されている。この爪部131により、ロータコア332から永久磁石33(
図12では不図示)が径方向外側に向かって抜け出てしまうことを防止できる。
【0080】
このように、上述の第3実施形態では、外周連結部118が形成されていない分、ロータコア332の外周面332aに露出する永久磁石33の面積が大きくなる。このため、前述の第1実施形態と同様の効果に加え、ロータ309の磁気特性を向上させることができる。
【0081】
(第4実施形態)
(ロータコア)
次に、
図13に基づいて、第4実施形態について説明する。
図13は、第4実施形態におけるロータコア432の斜視図であって、前述の
図5に対応している。
本第4実施形態は、前述の第2実施形態との比較が分かり易いので、第2実施形態と比較する。すなわち、
図11、
図13に示すように、前述の第2実施形態と本第4実施形態との相違点は、前述の第2実施形態では、外周連結部118が形成されているのに対し、本第4実施形態では、外周連結部118が形成されておらず、内周コア121と磁極部コア122とが内連結部117のみで一体化されている点にある。
【0082】
なお、ロータコア432には、外周連結部118(
図11参照)が形成されていない代わりに、磁極部コア122の外周部に、磁石収納部120側に向かって、且つ周方向に沿って突出する爪部131が形成されている。この爪部131により、ロータコア332から永久磁石33(
図13では不図示)が径方向外側に向かって抜け出てしまうことを防止できる。
このように構成した場合であっても、前述の第3実施形態と同様の効果を奏する。
【0083】
なお、本発明は上述の実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述の実施形態に種々の変更を加えたものを含む。
例えば、上述の実施形態では、減速機付モータ1は、車両に搭載される電装品(例えば、パワーウインドウ、サンルーフ、電動シート等)の駆動源となるものである場合について説明した。しかしながら、これに限られるものではなく、さまざまな用途に減速機付モータ1を使用することができる。
また、減速部3を設けずに、モータ部2を単体でさまざまな装置に用いることも可能である。
【0084】
さらに、上述の実施形態では、ロータコア32,232,332,432に4つの磁石収納部120を形成し、ロータコア32,232,332,432に永久磁石33を4つ設けた場合について説明した。しかしながら、これに限られるものではなく、ロータコア32,232,332,432の磁石収納部120の個数、および永久磁石33の個数は、任意に設定することができる。
【0085】
また、上述の実施形態では、ロータコア32,232,332,432の内周コア121に凹部119を形成し、この凹部119を、磁束を通りにくくするフラックスバリア119aとして機能させる場合について説明した。しかしながら、これに限られるものではなく、凹部119に樹脂等の絶縁材を充填してもよい。このように構成することで、永久磁石33の径方向内側(内周コア121側)への磁束漏れを抑制しつつ、ロータコア32,232,332,432の剛性を高めることができる。
【0086】
さらに、上述の実施形態では、複数の電磁鋼板(中間電磁鋼板111a、エンド電磁鋼板112a)を積層して、ロータコア32,232,332,432を形成する場合について説明した。しかしながら、これに限られるものではなく、最終的にロータコア32,232,332,432のような形状を形成できればよい。すなわち、例えば、ロータコア32,232,332,432を、軟磁性粉を加圧成形するいわゆる圧粉コア構造とすることも可能である。