(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
アクリルゴム系樹脂に、植物系ワックス、動物系ワックス、鉱物系ワックスから選択される少なくとも1種のワックス微粒子が分散されてなる非粘着層を形成する非粘着層形成工程と、
前記非粘着層上に、アクリル系化合物と、光重合開始剤と、熱伝導性フィラーとを含有する熱伝導柔軟層組成物を塗布して光硬化させ、熱伝導柔軟層を形成する熱伝導柔軟層形成工程と
を有する熱伝導性シートの製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本技術の実施の形態について、図面を参照しながら下記順序にて詳細に説明する。
1.熱伝導性シート
2.熱伝導性シートの製造方法
3.実施例
【0013】
<1.熱伝導性シート>
本技術の一実施形態として示す熱伝導性シートは、アクリル系樹脂に、熱伝導性フィラーが分散されてなる熱伝導柔軟層と、アクリルゴム系樹脂に、植物系ワックス、動物系ワックス、鉱物系ワックスから選択される少なくとも1種のワックス微粒子が分散されてなる非粘着層とを積層してなるものである。これにより、非粘着層の優れた屈曲性を得ることができるとともに、優れた耐ブロッキング性を得ることができる。優れた屈曲性は、アクリルゴム系樹脂により非粘着層の追従性が向上したため得られたものと考えられる。また、優れた耐ブロッキング性は、熱伝導柔軟層の形成時にワックス微粒子がアクリル系化合物と混ざるのを抑制することができため得られたものと考えられる。
【0014】
図1は、本技術の一実施の形態に係る熱伝導性シートの一例を示す斜視図である。この熱伝導性シートは、熱伝導柔軟層10と、非粘着層であるタックフリー層20とが積層されている。また、熱伝導柔軟層10のタックフリー層20とは反対面に、使用時には剥離される剥離フィルム30が貼付されている。
【0015】
熱伝導性シートの熱伝導性としては、実用上、熱伝導性シートの厚み方向の熱伝導率が、ASTM D5470に準拠した熱傾斜法よる測定で1W以上であること好ましく、1.5W/m・K以上あることがより好ましく、2W/m・K以上であることがさらに好ましい。
【0016】
熱伝導性シートは、タックフリー層20の屈曲性が良好であるため、リールに巻き回して保管することができる。また、巻き回した熱伝導性シートは、熱伝導柔軟層10側に貼付された剥離フィルム30を剥がし、電子部品とヒートシンクとの組み立てに使用することができる。
【0017】
[熱伝導柔軟層]
熱伝導柔軟層10は、アクリル系樹脂に、熱伝導性フィラーが分散されている。熱伝導柔軟層10は、熱伝導性シートを電子部品やヒートシンクの所定の場所へ貼ってセットする目的から、タックフリー層20よりも高いタック性を有する。熱伝導柔軟層10の熱伝導率は、1.0W/m・K以上であることが好ましい。また、熱伝導柔軟層10の荷重1kgf/cm
2時の圧縮率は、10%以上であることが好ましい。圧縮率が高いほど、熱伝導樹脂層が圧縮され易く、柔軟性が優れており、発熱体や放熱体に対して優れた密着性が得られる。
【0018】
アクリル系樹脂は、アクリル系化合物を硬化させたものであり、アクリル系化合物としては、その硬化物であるアクリル系樹脂のガラス転移温度が、好ましくは−80〜15℃となるものを使用することができる。このようなアクリル系化合物としては、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等の単官能(メタ)アクリレート等を挙げることができ、中でも、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリルアクリレートを使用することが好ましい。
【0019】
また、これらのアクリル系化合物と共重合可能な、(メタ)アクリル酸、N−ビニルピロリドン、イタコン酸、テトラヒドロフルフリルアクリレート、エチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、イソボニル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート等を1種以上混合して使用することができる。
【0020】
また、他の成分として、アジピン酸ジオクチル、アジピン酸ジイソノニル等のアジピン酸系化合物、セバシン酸オクチル、セバシン酸ジイソデシル等のセバシン酸系化合物、リン酸トリクレシル等のリン酸系化合物、ヒマシ油やその誘導体、ステアリン酸やオレイン酸等の高級脂肪酸および誘導体、フタル酸ジブチル、フタル酸ジオクチル等のフタル酸系化合物、低分子量アクリルポリマー、ワックス、タッキファイアーなどから選ばれる可塑剤の1種以上を含有させることが好ましい。可塑剤の含有量は、前述のアクリル系化合物のモノマーユニット100質量部に対して、好ましくは20〜80質量部、より好ましくは30〜70質量部である。また、必要に応じて、酸化防止剤、熱劣化防止剤、難燃剤、着色剤等を配合することができる。
【0021】
アクリル系化合物の硬化方法としては、例えば、光重合開始剤、光架橋剤等を使用し、紫外線を照射する方法とすることができる。この場合、長波長紫外線(波長320〜400nm)を光重合開始剤の開裂に必要なエネルギー分だけ照射することにより、熱伝導柔軟層10の劣化を抑制することができる。
【0022】
熱伝導性フィラーとしては、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の金属水酸化物;アルミニウム、銅、銀等の金属;アルミナ、マグネシア等の金属酸化物;窒化アルミ、窒化ホウ素、窒化珪素等の窒化物;カーボンナノチューブ等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を使用することができる。これらの中でも、良好な難燃性と絶縁性とを実現する点から、水酸化アルミニウム、アルミナ、窒化アルミニウム、酸化マグネシウムから選択される1種以上を用いることが好ましい。また、熱伝導性フィラーとして、樹脂との界面強化や樹脂に対する分散性の向上のため、シランカップリング剤、チタネート系カップリング剤、ステアリン酸などで処理したものを用いてもよい。
【0023】
また、熱伝導性フィラーの平均粒径は、0.5μm以上100μm以下とすることが好ましく、特に、分散性と熱伝導性の点から、平均粒径3μm以上20μm以下の小径のフィラーと、平均粒径25μm以上100μm以下の大径のフィラーを併用することが好ましい。
【0024】
熱伝導性フィラーのアクリル系樹脂組成物中の含有量は、アクリル系化合物100質量部に対し、好ましくは100質量部以上2000質量部、より好ましくは300質量部以上1000質量部以下である。熱伝導性フィラーの含有量が少なすぎると、熱伝導性シートの熱伝導性を十分に高めることが困難となり、熱伝導性フィラーの含有量が多すぎると、熱伝導性シートの柔軟性が低下する傾向がある。また、平均粒径の異なる2種の熱伝導性フィラーを使用する場合、小径のフィラーと大径のフィラーの配合比は15:85〜90:10とすることが好ましい。
【0025】
熱伝導柔軟層10の層厚は、500〜3000μmであることが好ましい。薄すぎると被着体の凹凸に対する十分な追従性が得られず、厚すぎると硬化に時間を要することになり生産性が悪化する。
【0026】
[タックフリー層]
タックフリー層20は、アクリルゴム系樹脂に、植物系ワックス、動物系ワックス、鉱物系ワックスから選択される少なくとも1種のワックス微粒子が分散されている。
【0027】
アクリルゴム系樹脂は、官能基として水酸基、カルボキシル基、グリシジル基から選ばれる少なくとも1種の官能基を有するアクリルゴムを硬化させたものである。アクリルゴムのガラス転移温度(TG)は、−80〜50であることが好ましく、−50〜0℃であることがより好ましい。また、アクリルゴムの重量平均分子量は、10万〜100万であることが好ましい。アクリルゴムの硬化剤としては、イソシアネート系硬化剤、エポキシ系硬化剤等を使用することができる。これにより、タックフリー層20の優れた追従性が得られ、優れた屈曲性を得ることができる。
【0028】
ワックス微粒子は、植物系ワックス、動物系ワックス、鉱物系ワックスから選択される少なくとも1種である。植物系ワックスとしては、カルナバワックス、キャンデリラワックス、ライスワックス、木蝋等が挙げられる。動物系ワックスとしては、蜜蝋、ウールワックス等が挙げられる。鉱物系ワックスとしては、モンタンワックス、オゾケライト、セレシン等が挙げられる。これらは単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0029】
これらのワックスは、パラフィンワックス、マイクロマックス等の石油系ワックスに比べ、炭化水素の含有割合が少ないため、アクリル系化合物との相溶性が低いものと考えられ、熱伝導柔軟層10の形成時にアクリル系化合物と混ざるのを抑制することができ、タックフリー層20に所望の低タック性を付与させることができる。
【0030】
また、前述のワックスの中でも、モンタンワックス、
カルナバワックス、ライスワックスから選択される少なくとも1種を使用することが好ましい。これらのワックスは、エステル量が多いため、アクリル系化合物との相溶性が低く、熱伝導柔軟層10の形成時にアクリル系化合物と混ざるのを抑制することができる。これにより、タックフリー層20に30kN/m
2以下の低タック性を付与させることができ、優れた耐ブロッキング性を得ることができる。
【0031】
ワックス微粒子の融点は、60℃以上であることが好ましく、80℃以上であることがさらに好ましい。これにより、タックフリー層20に所望の低タック性を付与させることができる。
【0032】
ワックス微粒子の平均粒径は、分散の安定性、塗布性(外観)の点から0.1〜25μmであることが好ましく、0.5〜20μmであることがより好ましい。また、ワックス微粒子の含有量は、アクリルゴム100質量部に対し60〜180質量部であることが好ましい。これにより、タックフリー層20の表面にワックス微粒子に由来する表面凹凸を形成し、タックフリー層20の表面がべたつくことを防止してワーク性を向上させることができる。また、タックフリー層20をコーターで塗布形成した場合の塗り跡が目立ちにくくなり、外観が向上する。
【0033】
タックフリー層20の層厚は、1〜25μmであることが好ましく、5〜20μmであることがより好ましい。タックフリー層20の層厚が薄すぎると熱伝導柔軟層10との相溶や熱伝導性フィラーによる擦過ダメージにより粘着性が上がってしまい、厚すぎると熱伝導性シートとしての熱伝導性が不十分となる。
【0034】
タックフリー層20のタック性は、タックフリー層20に、温度40℃、アルミニウム製円柱状プローブを、押しつけ速度30mm/min、引き剥がし速度120mm/min、荷重196g、押しつけ時間5.0秒、引っ張り距離5mm、プローブ加熱40℃、シートステージ加熱40℃の条件で押しつけて引き剥がすことにより測定されるプローブタックが6〜30kN/m
2であることが好ましく、7〜28kN/m
2であることが好ましい。これにより、タックフリー層20は、熱伝導性シートを用いて電子部品とヒートシンクとを組み立てる際に、適度に低い粘着性を発揮し、ワーク性が向上すると共に、組み直すときのリワーク性も向上する。
【0035】
[剥離フィルム]
剥離フィルム30としては、例えば、シリコーンなどの剥離剤をPET(Polyethylene Terephthalate)、OPP(Oriented Polypropylene)、PMP(Poly-4-methylpentene−1)、PTFE(Polytetrafluoroethylene)などに塗布したものを用いることができる。
【0036】
<2.熱伝導性シートの製造方法>
次に、前述した熱伝導性シートの製造方法について説明する。本技術の一実施形態として示す熱伝導性シートの製造方法は、アクリルゴム系樹脂に、植物系ワックス、動物系ワックス、鉱物系ワックスから選択される少なくとも1種のワックス微粒子が分散されてなる非粘着層であるタックフリー層を形成する非粘着層形成工程と、タックフリー層上に、アクリル系化合物と、光重合開始剤と、熱伝導性フィラーとを含有する熱伝導柔軟層組成物を塗布して光硬化させ、熱伝導柔軟層を形成する熱伝導柔軟層形成工程とを有する。
【0037】
図2は、本技術の一実施の形態に係る熱伝導性シートの製造方法を示し、
図2(A)は、非粘着層形成工程を説明するための断面図であり、
図2(B)は、熱伝導柔軟層形成工程を説明するための断面図である。以下、非粘着層形成工程、及び熱伝導柔軟層形成工程について説明する。
【0038】
[非粘着層形成工程]
図2(A)に示すように、非粘着層形成工程では、アクリルゴム系樹脂21に、植物系ワックス、動物系ワックス、鉱物系ワックスから選択される少なくとも1種のワックス微粒子22が分散されてなるタックフリー層20を形成する。
【0039】
具体的には、先ず、ワックスを加温させたトルエン等の溶剤に一旦溶解し、攪拌しながら室温まで冷却してワックスを微粒子状に析出させ、ワックス分散液を作製する。また、アクリルゴムを溶解させたバインダー溶液を作製する。そして、所定の固形分の質量部比で、バインダー溶液と、硬化剤と、ワックス分散液とを配合して、タックフリー層解塗工液を作製する。具体的には、バインダー溶液とワックス分散液とを混合し、十分に均一になった後、硬化剤を添加してタックフリー層解塗工液を作製する。この塗料を、剥離処理を施したPETライナー31上に乾燥後に所定厚みとなるようにバーコーターで塗布し、ワックスの融点未満の温度で10分間乾燥させてタックフリー層を形成する。
【0040】
[熱伝導柔軟層形成工程]
図2(B)に示すように、熱伝導柔軟層形成工程では、タックフリー層20上に、アクリル系化合物と、光重合開始剤と、熱伝導性フィラーとを含有する熱伝導柔軟層組成物を塗布して光硬化させ、熱伝導柔軟層10を形成する。
【0041】
具体的には、先ず、タックフリー層20上に、アクリル系化合物と、光重合開始剤と、熱伝導性フィラーとを含有する熱伝導柔軟層組成物をバーコーター41で塗布し、透明フィルム32を被せ、タックフリー層20と熱伝導柔軟層10との合計厚みが所定値となるように塗工機のローラー42のギャップを通過させる。これにより、タックフリー層20の凹部分は、熱伝導柔軟層組成物によって充填され、タックフリー層20の凸部分は、熱伝導柔軟層組成物によって覆われ、タックフリー層20と熱伝導柔軟層10との間の接着力を向上させることができる。
【0042】
そして、上面及び下面からUVランプを照射して熱伝導柔軟層10を光硬化させ、アクリル系化合物を重合させることにより、熱伝導性シートを得ることができる。
【0043】
[変形例]
図3は、熱伝導性シートの製造方法の変形例を説明するための断面図である。前述の製造方法では、タックフリー層20上へ熱伝導柔軟層組成物を塗布していたが、これに限られるものではない。例えば、予め作製したタックフリー層20と、予め透明フィルム32上に熱伝導柔軟層組成物を塗布した熱伝導柔軟層組成物層とを作成しておき、
図3に示すように、ローラー43、44の間に、タックフリー層20と熱伝導柔軟層組成物層とを挟んで貼付し、光硬化させてもよい。
【実施例】
【0044】
<3.実施例>
以下、本技術を適用した実施例について説明する。本実施例では、タックフリー層と熱伝導柔軟層とを積層させ、熱伝導性シートを作製した。そして、各熱伝導性シートについて、屈曲性及び耐ブロッキング性を評価した。なお、本技術はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0045】
熱伝導性シートの屈曲性及び耐ブロッキング性の評価は、次のように行った。
【0046】
[屈曲性の評価]
熱伝導性シートを180度に折り曲げたときのタックフリー層表面のひび割れの有無を確認した。タックフリー層にひび割れが発生しなかった場合の評価を「G」とし、タックフリー層にひび割れが発生した場合の評価を「B」とした。
【0047】
[耐ブロッキング性の評価]
熱伝導性シートのタックフリー層表面にPET(Polyethylene Terephthalate)フィルムを載せ、25gf/cm
2の圧力を加えた状態で50℃雰囲気下に24時間保管した。保管後、室温まで冷却させて、PETフィルムを引き剥がし、タックフリー層のPETフィルムへの貼り付き(ブロッキング)を確認した。タックフリー層のPETフィルムへの貼り付きが発生しなかった場合の評価を「G」とし、タックフリー層のPETフィルムへの貼り付きが発生した場合の評価を「B」とした。
【0048】
<実施例1>
トルエン90質量部にワックスとしてモルタン酸エステルワックス(部分ケン化)(リコワックスOP、クラリアントジャパン(株))10質量部の比率で配合して85℃にて一旦溶解し、攪拌しながら室温まで冷却してワックスを微粒子状に析出させ、ワックスの分散液を作製した。また、アクリルゴムの固形分が23%になるようにトルエンと酢酸エチルとに溶解させたバインダー溶液を作製した。
【0049】
次に、表1に示す固形分の質量部比で、バインダー溶液と、硬化剤と、ワックス分散液とを配合して、タックフリー層解塗工液を作製した。具体的には、バインダー溶液とワックス分散液とを混合し、十分に均一になった後、硬化剤を添加してタックフリー層解塗工液を作製した。この塗料を、剥離処理を施したPETライナー上に乾燥後の厚みが10μmとなるようにバーコーターで塗布し、ワックスの融点未満の温度で10分間乾燥させてタックフリー層を作製した。
【0050】
次に、単官能アクリレートモノマーとしてアクリル酸2エチルヘキシルを100質量部、可塑剤としてヒマシ油誘導脂肪酸エステルを47質量部、硬化剤としてヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジアクリレートを1.5質量部、光重合開始剤としてイルガキュア819(BASFジャパン(株))を1.4質量部、熱伝導性フィラーとして粒径80μmの水酸化アルミを400質量部及び粒径8μmの水酸化アルミを400質量部配合し、遊星攪拌装置を用いて脱泡しながら熱伝導性フィラーを分散させ、熱伝導柔軟層組成物を作製した。
【0051】
そして、予め作製したタックフリー層上に熱伝導柔軟層組成物を塗布し、透明フィルムを被せ、タックフリー層と熱伝導柔軟層との厚みの合計が1mmとなるように塗工機のギャップを通過させた後、上面及び下面からUVランプを照射して熱伝導柔軟層を硬化させ、熱伝導性シートを作製した。
【0052】
表1に示すように、実施例1の熱伝導性シートの屈曲性の評価はGであり、耐ブロッキング性の評価はGであった。
【0053】
<実施例2>
表1に示す固形分の質量部比で、バインダー溶液と、硬化剤と、ワックス分散液とを配合した以外は、実施例1と同様に熱伝導性シートを作製した。表1に示すように、実施例2の熱伝導性シートの屈曲性の評価はGであり、耐ブロッキング性の評価はGであった。
【0054】
<実施例3>
ワックスとしてモルタン酸エステルワックス(リコワックスE、クラリアントジャパン(株))を用い、表1に示す固形分の質量部比で、バインダー溶液と、硬化剤と、ワックス分散液とを配合した以外は、実施例1と同様に熱伝導性シートを作製した。表1に示すように、実施例3の熱伝導性シートの屈曲性の評価はGであり、耐ブロッキング性の評価はGであった。
【0055】
<実施例4>
ワックスとしてセロチン酸ミリシル(カルナバワックス、東亜化成(株))を用い、表1に示す固形分の質量部比で、バインダー溶液と、硬化剤と、ワックス分散液とを配合した以外は、実施例1と同様に熱伝導性シートを作製した。表1に示すように、実施例4の熱伝導性シートの屈曲性の評価はGであり、耐ブロッキング性の評価はGであった。
【0056】
<実施例5>
表1に示す固形分の質量部比で、バインダー溶液と、硬化剤と、ワックス分散液とを配合した以外は、実施例1と同様に熱伝導性シートを作製した。表1に示すように、実施例5の熱伝導性シートの屈曲性の評価はGであり、耐ブロッキング性の評価はGであった。
【0057】
<比較例1>
アクリルゴムの固形分が23%になるようにトルエンと酢酸エチルとに溶解させたバインダー溶液を作製した。次に、表1に示す固形分の質量部比で、バインダー溶液と、硬化剤と、フィラーとして水酸化アルミニウム(ハイジライトH42M、昭和電工(株))とを配合して、タックフリー層解塗工液を作製した。この塗料を、剥離処理を施したPETライナー上に乾燥後の厚みが10μmとなるようにバーコーターで塗布し、80℃の温度で10分間乾燥させてタックフリー層を作製した。これ以外は、実施例1と同様に熱伝導性シートを作製した。表1に示すように、比較例1の熱伝導性シートの屈曲性の評価はBであり、耐ブロッキング性の評価はGであった。
【0058】
<比較例2>
ポリビニルブラチール(BX−1、積水化学(株))の固形分が23%になるようにトルエンと酢酸エチルとに溶解させたバインダー溶液を作製した。次に、表1に示す固形分の質量部比で、バインダー溶液と、硬化剤と、フィラーとして水酸化アルミニウム(ハイジライトH42M、昭和電工(株))とを配合して、タックフリー層解塗工液を作製した。この塗料を、剥離処理を施したPETライナー上に乾燥後の厚みが10μmとなるようにバーコーターで塗布し、80℃の温度で10分間乾燥させてタックフリー層を作製した。これ以外は、実施例1と同様に熱伝導性シートを作製した。表1に示すように、比較例2の熱伝導性シートの屈曲性の評価はBであり、耐ブロッキング性の評価はGであった。
【0059】
<比較例3>
表1に示す固形分の質量部比で、バインダー溶液と、硬化剤と、ワックス分散液とを配合した以外は、実施例1と同様に熱伝導性シートを作製した。表1に示すように、比較例3の熱伝導性シートの屈曲性の評価はGであり、耐ブロッキング性の評価はBであった。
【0060】
<比較例4>
表1に示す固形分の質量部比で、バインダー溶液と、硬化剤と、ワックス分散液とを配合した以外は、実施例1と同様に熱伝導性シートを作製した。表1に示すように、比較例4の熱伝導性シートの屈曲性の評価はBであり、耐ブロッキング性の評価はGであった。
【0061】
<比較例5>
ワックスとしてパラフィンワックス(日本精蝋(株))を用い、表1に示す固形分の質量部比で、バインダー溶液と、硬化剤と、ワックス分散液とを配合した以外は、実施例1と同様に熱伝導性シートを作製した。表1に示すように、比較例5の熱伝導性シートの屈曲性の評価はGであり、耐ブロッキング性の評価はBであった。
【0062】
<比較例6>
ワックスとしてマイクロワックス(日本精蝋(株))を用い、表1に示す固形分の質量部比で、バインダー溶液と、硬化剤と、ワックス分散液とを配合した以外は、実施例1と同様に熱伝導性シートを作製した。表1に示すように、比較例5の熱伝導性シートの屈曲性の評価はGであり、耐ブロッキング性の評価はBであった。
【0063】
【表1】
【0064】
比較例1、2のように、ワックスの代わりに水酸アルミニウムを使用した場合、タックフリー層にひび割れが発生し、良好な屈曲性が得られなかった。また、比較例3のように、ワックスの配合量が少ない場合、部分的に貼り付いてしまい、良好な耐ブロッキング性が得られなかった。また、比較例4のように、ワックスの配合量が多い場合、タックフリー層にひび割れが発生し、良好な屈曲性が得られなかった。また、比較例5、6のように、ワックスとして石油系ワックスを使用した場合、常温でも貼り付いてしまい、良好な耐ブロッキング性が得られなかった。
【0065】
一方、実施例1〜5のように、植物系ワックス、動物系ワックス、鉱物系ワックスから選択される少なくとも1種のワックス微粒子を使用することにより、優れた屈曲性及び耐ブロッキング性を得ることができた。