(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、実施形態の医用画像処理装置及び医用画像診断システムを図面を参照して説明する。
【0012】
(1)構成
図1は、実施形態に係る医用画像処理装置及び医用画像診断システムの一例を示す概念的な構成図である。
【0013】
図1に示すように、医用画像診断システム100は、医用画像処理装置1、スキャナ210、ディスプレイ220、医用画像保存通信システム(PACS:Picture Archiving and Communication Systems)300、モダリティ400を備える。
【0014】
スキャナ210は、インターベンションを行う際に、被検体PのX線透視画像を取得するモダリティである。スキャナ210は、X線源及びX線検出器を保持するCアームを備える。CアームによってX線源とX線検出器とは、被検体Pを挟んで互いに対向するように配置される。なお、スキャナ210は、Cアームに替えてΩアームを備えて構成されてもよい。また、スキャナ210は、CアームとΩアームとを組み合わせたバイプレーン型であってもよい。
【0015】
さらにスキャナ210は、Cアームの回転制御回路を備え、Cアームは、撮像領域に応じて回転及び移動可能に構成される。スキャナ210は、Cアームの撮像角度に基づいて求められる投影方向を医用画像処理装置1に送信する。
【0016】
CアームのX線源からはX線が照射され、照射されたX線は、被検体Pを透過する。CアームのX線検出器は、例えばマトリクス状に配列された多数のX線検出素子を備え、被検体Pを透過したX線を電気信号に変換して蓄積し、蓄積した電気信号をデジタル信号に変換して医用画像処理装置1に入力する。以下、医用画像処理装置1に入力されるデジタル信号を透過データと呼ぶこととする。
【0017】
なおスキャナ210は、被検体PにX線を連続的に照射するX線透視撮像を行う。X線透視撮像とは、リアルタイムで時系列的に複数の透過データを取得する撮像であって、通常のX線撮像よりも低線量で実施される。
【0018】
医用画像処理装置1は、透過データから投影データを生成し、投影データを再構成処理してX線透視画像を生成する。なお医用画像処理装置1は、リアルタイムで時系列的に複数のX線透視画像を順次生成する。医用画像処理装置1の構成の詳細については、後述の
図2で説明する。
【0019】
ディスプレイ220は、液晶ディスプレイパネル、プラズマディスプレイパネル、及び、有機EL(Electro Luminescence)パネル等の表示デバイスである。ディスプレイ220は、複数のディスプレイで構成されてもよく、複数のディスプレイは、それぞれ異なる映像を表示してもよい。また、複数のディスプレイに1つの映像が分割して表示されるよう医用画像診断システム100を構成してもよい。
【0020】
医用画像処理装置1は、PACS300及びモダリティ400と電子ネットワークNWを介して相互接続される。
【0021】
ここで、電子ネットワークNWとは、電気通信技術を利用した情報通信網全体を意味し、病院基幹LAN、無線/有線LANやインターネット網、電話通信回線網、光ファイバー通信ネットワーク、ケーブル通信ネットワーク、及び衛星通信ネットワークなどを含む。
【0022】
PACS300は、モダリティ400で取得された医用画像を保存する画像サーバである。PACS300には、被検体Pから予め取得されたボリュームデータが記憶されている。ここで予めとは、被検体Pに対してPCIなどのインターベンションを実施するより前のことである。
【0023】
なお、サーバとは、例えば、コンピュータネットワークにおいて、クライアント端末に対し当該サーバ自体の持つ機能やデータを提供するコンピュータの意味である。医用画像診断システム100における画像サーバのクライアント端末は、医用画像処理装置1である。
【0024】
モダリティ400は、X線CT装置、MRI(magnetic resonance imaging)装置及び超音波診断装置などの医用画像取得(診断)装置である。モダリティ400は、ボリュームデータなどの医用画像を取得する。ここでボリュームデータとは、被検体Pの3次元的な形体情報を備える画像データのことである。
【0025】
医用画像処理装置1は、スキャナ210及びディスプレイ220と有線又は無線で相互接続される。医用画像処理装置1は、スキャナ210やディスプレイ220が設置された検査室又は手術室内に設置されてもよいし、検査室又は手術室に隣接して設けられた操作室又は機械室に設置されてもよい。また、医用画像診断システム100は、複数の医用画像処理装置1を備えて構成されてもよい。
【0026】
図2は、実施形態に係る医用画像処理装置1の機能構成例を示す機能ブロック図である。
図2に示すように、医用画像処理装置1は、処理回路10、記憶回路20、及び入力回路30を備える。
【0027】
処理回路10は、専用のハードウェアで構成してもよいし、内蔵のプロセッサによるソフトウェア処理で後述する各種機能を実現するように構成してもよい。ここでは一例として、処理回路10がプロセッサによるソフトウェア処理によって各種機能を実現する場合について説明する。
【0028】
ここでプロセッサとは、専用又は汎用のCPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、特定用途向け集積回路(ASIC:Application Specific Integrated Circuit)、プログラマブル論理デバイス、及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA:Field Programmable Gate Array)などの回路を意味する。上記プログラマブル論理デバイスとしては、例えば、単純プログラマブル論理デバイス(SPLD:Simple Programmable Logic Device)、複合プログラマブル論理デバイス(CPLD:Complex Programmable Logic Device)などが挙げられる。処理回路10は、記憶回路20に記憶されたプログラム又は処理回路10のプロセッサ内に直接組み込まれたプログラムを読み出し、当該プログラムを実行することで各機能を実現する。
【0029】
また、処理回路10は、単一のプロセッサによって構成されてもよいし、複数の独立したプロセッサの組合せによって構成されてもよい。後者の場合、複数のプロセッサにそれぞれ対応する複数の記憶回路が設けられると共に、各プロセッサにより実行されるプログラムが当該プロセッサに対応する記憶回路に記憶される構成でもよい。別の例としては、1個の記憶回路が複数のプロセッサの各機能に対応するプログラムを一括的に記憶する構成でもよい。
【0030】
処理回路10は、病変抽出機能11、血管推定機能12、及び画像合成機能13を実現する。なお、病変抽出機能11、血管推定機能12、及び画像合成機能13は、記憶回路20に格納されているプログラムを処理回路10のプロセッサが実行することによって実現される機能である。
【0031】
病変抽出機能11は、PACS300に記憶された被検体Pのボリュームデータを取得し、取得したボリュームデータから病変部を抽出する。病変部は、石灰化組織又はプラーク組織などの正常組織と比較して異なる変化が発生した組織のことである。
【0032】
病変部の一例である石灰化組織は、X線CT装置で画像化が可能である。したがって、ボリュームデータとしてX線CT装置で取得したX線CT画像の画素値であるCT値を解析することで石灰化組織を抽出できる。石灰化組織は、正常組織と比較してCT値が高くなる。病変抽出機能11は、所定の閾値以上のCT値を有する領域を病変部として抽出する。
【0033】
また、病変部の一例であるプラーク組織は、プラーク組織内に脂肪を蓄積している。脂肪成分は、MRI装置によって画像化が可能である。したがって、ボリュームデータとして、MRI装置で取得したMR画像を用いることにより、プラーク組織を描出できる。病変抽出機能11は、描出されたプラーク組織をセグメンテーションなどの画像処理により病変部として抽出する。
【0034】
さらに、病変抽出機能11は、X線CT画像やMR画像に限らず、ボリュームデータで取得された超音波診断画像に基づいて病変部を抽出することもできる。病変抽出機能11は、超音波診断画像を組織分布解析することにより病変部の分布を取得することができる。このように、病変抽出機能11は、ボリュームデータを解析して病変部を抽出する。
【0035】
血管推定機能12は、病変抽出機能11によって抽出された病変部の分布に基づいて閉塞血管領域を推定する。ここで、閉塞血管領域とは、病変部の存在によってボリュームデータには描出されない閉塞している血管の閉塞した領域ではなく、該当する血管に石灰化組織等の病変部が存在しないと仮定した時の仮想的な血管領域のことである。
【0036】
閉塞した血管には血液のみならず造影剤も流れないため、閉塞した血管領域は、X線CT装置やMRI装置で取得したボリュームデータには描出されない。その一方で、石灰化組織やプラーク組織等の病変部は、X線CT装置やMRI装置で取得したボリュームデータに描出される。血管推定機能12は、これらのボリュームに描出された病変部の分布に基づいて、血流自体や造影剤では描出されなかった閉塞血管領域を推定する機能である。
【0037】
閉塞血管領域が推定されたボリュームデータは、記憶回路20に保存される。血管推定機能12における閉塞血管領域の推定方法については、後述の
図5乃至
図7で説明する。
【0038】
画像合成機能13は、スキャナ210により取得された透過データから投影データを生成し、投影データからX線透視画像を再構成すると共に、X線透視画像に閉塞血管領域を重ね合わせた重畳画像を生成する。画像合成機能13は、生成した重畳画像をディスプレイ220に出力する。画像合成機能13で生成される重畳画像の詳細については、後述の
図8で説明する。
【0039】
記憶回路20は、ROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)の他、HDD(Hard Disk Drive)や光ディスク装置等の外部記憶装置を含む記憶媒体である。記憶回路20は、処理回路10において実行される各種プログラム(アプリケーションプログラムの他、オペレーティングシステム等も含まれる)、プログラムの実行に必要なデータ、及び画像データを記憶する。また、記憶回路20は、オペレーティングシステムを制御するための各種コマンドを記憶してもよい。入力回路30からの入力を支援するGUI(Graphical User Interface)のプログラムを記憶してもよい。
【0040】
記憶回路20は、閉塞血管領域が推定されたボリュームデータを記憶する。
【0041】
入力回路30は、例えば、キーボード、マウス、ジョイスティック、又はトラックボール等の入力デバイスから構成される。入力回路30は、操作者による入力デバイスの操作に応じた入力信号を生成し、当該入力信号を処理回路10に出力する。なお、入力回路30は、入力デバイスと表示デバイスとが一体的に構成されたタッチパネルで構成されてもよい。
【0042】
(2)動作
以下、心臓の冠動脈のPCIを例として、適宜
図4から
図7を参照しつつ、
図3のフローチャートのステップ番号に従って、実施形態に係る医用画像処理装置1の動作を説明する。
【0043】
図3は、実施形態に係る医用画像処理装置1の動作の一例を示すフローチャートである。
【0044】
ステップST101において、心臓のボリュームデータがPACS300から医用画像処理装置1に入力される。医師等のユーザは、ボリュームデータをレンダリング処理した3次元表示画像をディスプレイに表示し、閉塞部を有する閉塞血管及び当該閉塞血管と接続し得る正常血管を含む領域を対象領域として選択する。なお、対象領域が自動で抽出されるように医用画像処理装置1を構成してもよい。
【0045】
また、対象領域の選択
は、必須ではない。即ち、対象領域を限定せずにボリュームデータ全てに対して後述のステップにおける処理が実行されるように医用画像処理装置1を構成してもよい。
【0046】
図4は、ボリュームデータから取得された対象領域を説明する模式図である。
図4の左側は、心臓のボリュームデータをレンダリング処理した3次元表示画像IMG1を示している。
図4の右側は、3次元表示画像IMG1中の対象領域TRの拡大図を示している。
【0047】
3次元表示画像IMG1において心臓の冠動脈の一部が途切れている部分がある。この血管が途切れている部分に血管の閉塞部がある。このように、閉塞部の血管は、血管の閉塞により造影剤が流入しないため3次元表示画像IMG1には描出されない。
【0048】
対象領域TRには、3つの血管BV1、血管BV2、及び血管BV3が含まれる。それぞれの血管において血液は矢印で示す方向に流れている。血管BV1は、正常血管である。血管BV2は、閉塞血管領域を有する血管であって、血管BV1から分岐した血管である。血管BV3は、血管BV2の閉塞により栄養されなくなった組織を栄養するために新しく発生した側副血行路の血管である。側副血行路は、冠動脈の閉塞が慢性化した場合、付近にある血管から血管新生が起こり、閉塞が生じた血管の下流にある組織の血行を補うようになる。
【0049】
閉塞血管領域は、破線で囲まれた領域R1内に存在する。実施形態に係る医用画像処理装置1の処理回路10は、閉塞血管領域を推定するため、まず、血管領域を対象領域TRから抽出する。対象領域TRから抽出される血管領域は、閉塞血管領域を含む血管BV2、閉塞血管が接続している正常な血管BV1、及び側副血行路の血管BV3である。ここで、血管領域とは、造影剤により血管として他の組織と識別可能な領域のことである。さらに、処理回路10は、閉塞血管領域の開始点SP又は閉塞血管領域の終点を対象領域TRから抽出してもよい。
【0050】
なお、対象領域TR、血管領域、血管BV2の開始点SP及び終点は、医師等のユーザにより手動で抽出されてもよいし、画像解析によって自動で抽出されるよう医用画像処理装置1を構成してもよい。
【0051】
閉塞血管領域の開始点SPは、血管BV2の血管領域の外縁と、血管BV2の血管芯線とが交わる点であって、血流方向の上流側に存在する点である。血管芯線は、血管の中心線であり、血管領域から幾何学的に求められる。
【0052】
図3に戻ってフローチャートの説明を続ける。
【0053】
ステップST102において、病変抽出機能11は、対象領域TRから複数の病変部を抽出する。なお、対象領域TRが設定されていない場合、ボリュームデータに含まれる全ての病変部が抽出される。
【0054】
ステップST103において、血管推定機能12は、抽出された病変部の分布に基づいて、閉塞血管領域を推定する。
【0055】
ステップST104において、血管推定機能12は、閉塞血管領域が推定されたボリュームデータを記憶回路20に記憶する。なお血管推定機能12は、閉塞血管領域が推定されたボリュームデータをPACS300に送信してもよい。
【0056】
以上のステップST101〜ステップST104は、PCIの開始前に実施される動作である。
【0057】
以下、
図5〜
図7を用いてステップST103における閉塞血管領域の推定方法を説明する。
【0058】
図5は、ボリュームデータから閉塞血管領域を特定する第1の方法を説明する模式図である。
図5は、血管BV2の閉塞部の周辺領域から抽出された病変部の分布に基づいて、閉塞血管領域を推定する方法を説明する図である。血管BV2に示された破線L11は、血管BV2の血管芯線を示し、破線L11上の点は閉塞血管領域の開始点SPを示している。
【0059】
図5の左から1番目は、病変抽出機能11によりボリュームデータ上で血管BV2の閉塞部の周辺領域について病変部が抽出された状態を示す。病変抽出機能11により抽出された病変部は、病変部LR11、病変部LR12、病変部LR13、及び病変部LR14の4つである。このように、病変部は、閉塞部の周辺領域に離散的に存在する。なお、病変抽出機能11により抽出される病変部は、3次元的な形状を有する。
【0060】
図5の左から2番目は、血管推定機能12によりボリュームデータ上で病変部の中心が特定された状態を示している。病変抽出機能11により抽出された病変部は4つであり、血管推定機能12は、4つの病変部から中心C11、中心C12、中心C13、及び中心C14をそれぞれ特定する。なお、血管推定機能12は、病変部の中心に替えて重心を求めてもよい。また、血管推定機能12は、近接する2以上の病変部を纏めて1つの病変部とみなして中心を求めてもよい。
【0061】
図5の左から3番目は、血管推定機能12によりボリュームデータ上で開始点SPから病変部の中心が滑らかな線でそれぞれ結ばれた状態を示している。血管推定機能12は、開始点SPから病変部の中心をそれぞれ結び、血管走行線L12を求める。血管走行線L12は、血管の走行方向を示す線である。
【0062】
なお、血管推定機能12は、病変部の中心を直線で順に結んで血管走行線L12を求めてもよいし、病変部の中心を制御点としたスプライン曲線により血管走行線L12を求めてもよい。また、血管走行線L12は、病変部の中心を通らない曲線であってもよい。また、血管推定機能12は、複数ある病変部の中心のうちいくつかを選択して血管走行線L12を求めてもよい。
【0063】
さらに、血管推定機能12は、夫々の中心に重み付けを行い、最小二乗法により曲線を求めてもよい。例えば、中心を結んだ直線において屈曲が大きくなる点に重みを付けて血管走行線L12を求めてもよい。なお、重み付け係数は、予め記憶回路20に記憶されていてもよい。ここでの予めは、血管推定機能12が中心を結んだ血管走行線L12を求めるよりも前である。
【0064】
図5の左から4番目は、血管推定機能12によりボリュームデータ上で閉塞血管領域EV11が推定された状態を示している。血管推定機能12は、血管走行線L12を血管芯線とみなして、当該血管芯線を血管BV2の血管領域の幅まで拡張させて閉塞血管領域EV11を推定する。血管BV2の血管領域の幅とは、血管BV2において閉塞していない正常な血管領域における血管の短軸方向の幅である。
【0065】
図6は、推定された閉塞血管領域と正常血管との接続方法を説明する模式図である。
図6は、対象領域TRの3次元表示画像を示している。血管BV2の開始点SPから血管BV1に向かって延びる実線は、血管走行線L12を血管BV1に向かって延長させた線(血管走行線L13)である。血管BV1に示した破線は、血管BV1の血管芯線L14を示す。
【0066】
閉塞血管領域の終点EPは、血管BV1の血管芯線L14と血管BV2の血管走行線L13とが交わる点であってもよいし、血管BV2の血管走行線L13と血管BV1の血管領域の外縁とが接する点であってもよい。血管推定機能12は、終点EPまで血管走行線L13を血管BV2の血管領域の幅まで拡張させて血管BV2から血管BV1に接続する閉塞血管領域EV13を推定する。
【0067】
図5では病変部の中心を結んで血管走行線を求める方法を説明したが、血管走行線を求める方法は、
図5の態様には限定されない。
【0068】
図7は、ボリュームデータから閉塞血管領域を特定する第2の方法を説明する模式図である。
図7は、
図5と同様に血管BV2の閉塞部の周辺領域から抽出された病変部の分布に基づいて、閉塞血管領域を推定する方法を説明する図である。
図5と異なる点は、血管走行線を病変部の中心ではなく、隣接する病変部の中心間の直線の中点を利用する点である。
【0069】
図7の左から1番目は、血管推定機能12によりボリュームデータ上で病変部の中点が求められた状態を示している。
図7では、6つの病変部が抽出された例を示している。例えば、病変部LR21及び病変部LR22の中点はそれぞれ中心C21及び中心C22である。
【0070】
図7の左から2番目は、ボリュームデータ上で病変部の中心同士の距離が最も短くなる中心間の中点が求められた状態を示している。即ち血管推定機能12は、近接した病変部同士の中心間の中点を求める。例えば、病変部LR21及び病変部LR22が近接した病変部であった場合、血管推定機能12は、中心C21と中心C22とを結ぶ直線の中点CP21を求める。
【0071】
図7の左から3番目は、ボリュームデータ上で開始点SPから中点が滑らかな線で順に結ばれ、血管走行線L21が求められた状態を示している。なお、血管走行線L21の求め方は、
図5と同様である。
【0072】
図7の左から4番目は、血管推定機能12によりボリュームデータ上で閉塞血管領域EV21が推定された状態を示している。閉塞血管領域EV21の推定方法は
図5と同様であり、血管走行線L21を血管芯線とみなして、当該血管芯線を血管BV2の血管領域の幅まで拡張させて閉塞血管領域EV21を推定する。
【0073】
以上がボリュームデータから閉塞血管領域を推定する処理の説明である。
図3に戻ってフローチャートの説明を続ける。以下、ステップST105〜ステップST107は、PCI中にリアルタイムで実施される処理である。
【0074】
ステップST105において、スキャナ210は、被検体PにX線を照射し、透過データを画像合成機能13に入力する。画像合成機能13は、透過データに基づいて投影データを生成し、投影データからX線透視画像を再構成する。
【0075】
ステップST106において、画像合成機能13は、記憶回路20から閉塞血管領域が推定されたボリュームデータを取得する。また、画像合成機能13は、スキャナ210から現在の投影方向を取得する。
【0076】
画像合成機能13は、ボリュームデータ上の閉塞血管領域を現在の投影方向で投影した閉塞血管画像を生成する。さらに、画像合成機能13は、閉塞血管画像とX線透視画像とを位置合わせした上で、X線透視画像に閉塞血管画像を重畳して重畳画像を生成する。以下、画像合成機能13により生成される閉塞血管領域を示す2次元画像を閉塞血管画像と呼ぶこととする。
【0077】
ステップST107において、画像合成機能13は、重畳画像をディスプレイ220に出力する。
【0078】
以上がフローチャートの説明である。以下、画像合成機能13により生成される重畳画像について
図8を用いて補足的に説明する。
【0079】
図8は、推定された閉塞血管領域をX線透視画像に重畳した重畳画像を説明する模式図である。
図8の左側は、X線透視画像IMG2を示し、
図8の右側は、閉塞血管画像IMG3とX線透視画像IMGとが重畳された重畳画像IMG4を示している。
図8の右側において、閉塞血管領域を示す閉塞血管画像IMG3にはグレースケールのハッチングを付し、他の領域と識別可能な態様で示している。
【0080】
X線透視画像IMG2からは造影剤が流れない閉塞部の形状は観察できない。したがって、医師等のユーザは、血管BV2が血管BV1にどの位置で接続しているか把握できず、カテーテルを進行させる向きをX線透視画像から判断することができない。
【0081】
一方、重畳画像IMG4には閉塞血管領域を示す閉塞血管画像IMG3がX線透視画像IMG2上に表示される。医師等のユーザは、閉塞血管画像IMG3により血管BV2が血管BV1に接続する位置を重畳画像IMG4から推測できる。
【0082】
また、画像合成機能13は、アームの回転角度が変更されて投影方向が変更される度に閉塞血管領域が推定されたボリュームデータから現在の投影方向における閉塞血管画像を生成し、X線透視画像に重畳する。即ち、画像合成機能13は、X線透視画像の投影方向に連動させて閉塞血管画像を生成し、重畳画像を表示する。
【0083】
なお、
図8では、閉塞血管領域に一致する閉塞血管画像IMG3をX線透視画像IMG2に重畳する例を示したが、
図8の態様には限定されない。例えば、X線透視画像に重畳される画像は、閉塞血管領域が推定されたボリュームデータをX線透視画像と同じ投影方向に投影した3次元表示画像であってもよい。
【0084】
また、
図8では、閉塞血管領域をグレースケールのハッチングで示したが、
図8の態様には限定されない。例えば、閉塞血管画像を識別的な有彩色で表示してもよい。また、閉塞血管画像を含む3次元表示画像の各画素に組織の種類に応じた色を割り当て、X線透視画像が観察可能となるように当該3次元表示画像を透過させてX線透視画像に重畳してもよい。このように、閉塞血管領域及び重畳画像は、医師等のユーザにとって直感的に分かり易い態様で表示される。
【0085】
以上のように、実施形態に係る医用画像処理装置1によれば、血液が流れていないため従来技術では医用画像上に描出できない血管の閉塞部の走行方向及び形状に関する情報を医師等のユーザに提供できる。さらに、閉塞血管領域における仮想的な血管の走行方向及び形状を示す閉塞血管画像の表示により、医師はカテーテルを進める方向を瞬時に判断することができ、手術時間の短縮に寄与する。
【0086】
また、医用画像診断システム100は、医用画像処理装置1を備えて構成されるため、医用画像処理装置1と同等の効果を有する。なお、医用画像処理装置1により実現される機能は、読影装置や画像表示装置などのその他の病院端末又は一般的なパーソナルコンピュータにより実現されてもよい。
【0087】
なお、
図3〜
図8では、PCI開始前に閉塞血管領域を推定する動作を説明したが、閉塞血管領域を推定するタイミングは、PCI実施中であってもよい。例えば、PCI開始してから閉塞部位にカテーテルを進入させる間に、閉塞血管領域を推定するよう医用画像処理装置1を構成してもよい。
【0088】
また、
図3〜
図8では、ボリュームデータ上で閉塞血管領域を推定する方法を説明したが、閉塞血管領域の推定は、ボリュームデータ上で実行される態様には限定されない。例えば、ボリュームデータを予め所定の投影方向に投影した2次元画像を生成し、当該2次元画像上で病変部を抽出し、閉塞血管領域を推定するよう医用画像
処理装置1を構成してもよい。インターベンション中に投影方向を変更した際に、閉塞血管領域を推定する計算量を抑えるため、複数の投影方向で投影した2次元画像それぞれに基づいて閉塞血管画像を予め生成するよう医用画像
処理装置1を構成してもよい。
【0089】
さらに、
図3〜
図8では、心臓を例として説明したが、対象となる解剖学的部位は、心臓には限定されない。閉塞血管領域を推定する技術思想は、例えば、脳や下肢など他の解剖学的部位の血管に発生した閉塞部の治療にも適用できる。
【0090】
以上述べた少なくとも一つの実施形態の医用画像処理装置及び医用画像診断システムによれば、血液の流れが滞っている血管の走行方向又は形状を推定し、医用画像上に表示可能となる。
【0091】
なお、上記実施形態における病変抽出機能11は、特許請求の範囲における抽出部の一例である。また、血管推定機能12は、特許請求の範囲における推定部の一例である。上記実施形態におけるスキャナ210は、特許請求の範囲における画像取得部の一例である。実施形態における画像合成機能13は、特許請求の範囲における画像生成部の一例である。
【0092】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。