(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
軸線周りに回転可能に設けられたロータと、前記ロータを囲繞するように配設されて蒸気流路を形成するケーシングと、前記ロータに一体に接続して設けられる複数の動翼と、前記ケーシングに一体に接続して前記蒸気流路内に設けられた複数の静翼とを備え、
少なくとも一部の前記静翼は、中空構造で形成されるともに、その中空部と、前記中空部に加熱流体を供給するための加熱流体供給口と、前記中空部から加熱流体を排出するための加熱流体排出口とからなる加熱流体流通路を備えて形成されており、
前記軸線を中心とした周方向に並設した複数の前記少なくとも一部の静翼のそれぞれの前記加熱流体流通路を流通する加熱流体の圧力損失が略均等になるように構成されており、
前記軸線を中心とした周方向に並設した複数の前記少なくとも一部の静翼は、前記加熱流体供給口と前記加熱流体排出口の少なくとも一方の大きさを異にして形成され、前記加熱流体供給口と前記加熱流体排出口の少なくとも一方の大きさの違いによって複数の前記少なくとも一部の静翼のそれぞれの前記加熱流体流通路を流通する加熱流体の圧力損失が略均等になるように構成されている蒸気タービン。
軸線周りに回転可能に設けられたロータと、前記ロータを囲繞するように配設されて蒸気流路を形成するケーシングと、前記ロータに一体に接続して設けられる複数の動翼と、前記ケーシングに一体に接続して前記蒸気流路内に設けられた複数の静翼とを備え、
少なくとも一部の前記静翼は、中空構造で形成されるともに、その中空部と、前記中空部に加熱流体を供給するための加熱流体供給口と、前記中空部から加熱流体を排出するための加熱流体排出口とからなる加熱流体流通路を備えて形成されており、
前記軸線を中心とした周方向に並設した複数の前記少なくとも一部の静翼のそれぞれの前記加熱流体流通路を流通する加熱流体の圧力損失が略均等になるように構成されており、
前記軸線を中心とした周方向に並設した複数の前記少なくとも一部の静翼は、前記中空部の最小断面積と容積の少なくとも一方の大きさを異にして形成され、前記中空部の最小断面積と容積の少なくとも一方の大きさの違いによって複数の前記少なくとも一部の静翼のそれぞれの前記加熱流体流通路を流通する加熱流体の圧力損失が略均等になるように構成されている蒸気タービン。
軸線周りに回転可能に設けられたロータと、前記ロータを囲繞するように配設されて蒸気流路を形成するケーシングと、前記ロータに一体に接続して設けられる複数の動翼と、前記ケーシングに一体に接続して前記蒸気流路内に設けられた複数の静翼とを備え、
少なくとも一部の前記静翼は、中空構造で形成されるともに、その中空部と、前記中空部に加熱流体を供給するための加熱流体供給口と、前記中空部から加熱流体を排出するための加熱流体排出口とからなる加熱流体流通路を備えて形成されており、
前記軸線を中心とした周方向に並設した複数の前記少なくとも一部の静翼のそれぞれの前記加熱流体流通路を流通する加熱流体の圧力損失が略均等になるように構成されており、
前記軸線を中心とした周方向に並設した複数の前記少なくとも一部の静翼は、前記軸線よりも上方に配された上半部の複数の静翼と、前記軸線よりも下方に配された下半部の複数の静翼とに区分され、
前記上半部の複数の静翼は、それぞれの加熱流体供給口を通じてそれぞれの中空部が前記軸線中心の周方向に延びた凸円弧状の上半部の外側キャビティに連通するとともに、それぞれの加熱流体排出口を通じてそれぞれの中空部が前記軸線中心の周方向に延びて前記ロータを囲繞するように配された円環状の内側キャビティに連通し、
前記下半部の複数の静翼は、それぞれの加熱流体供給口を通じてそれぞれの中空部が前記内側キャビティに連通するとともに、それぞれの加熱流体排出口を通じてそれぞれの中空部が前記軸線中心の周方向に延びた凹円弧状の下半部の外側キャビティに連通し、
且つ、前記凸円弧状の上半部の外側キャビティの最上部に前記加熱流体を供給する供給元口が設けられるとともに、前記凹円弧状の下半部の外側キャビティの最下部に前記加熱流体を排出する排出元口が設けられており、
前記上半部の複数の静翼は、前記供給元口から離れるほどに前記加熱流体供給口の大きさ、及び/又は前記中空部の最小断面積と容積の少なくとも一方の大きさが大となるように構成され、
前記下半部の複数の静翼は、前記排出元口に近づくほどに前記加熱流体排出口の大きさ、及び/又は前記中空部の最小断面積と容積の少なくとも一方の大きさが小となるように構成されている蒸気タービン。
【背景技術】
【0002】
従来、蒸気タービンプラント(蒸気タービンシステム)は、例えば、ボイラと、ボイラからの蒸気で駆動する蒸気タービン(高圧蒸気タービン、中圧蒸気タービン、低圧蒸気タービンなど)と、各タービンの駆動で発電する発電機と、低圧蒸気タービンから排気された蒸気を水に戻してボイラに供給する復水器と、これら各機器を制御する制御装置とを備えて構成されている。
【0003】
蒸気タービンは、ロータとステータとを備え、ロータは、軸線方向に軸状に並設された複数のロータディスクと、各ロータディスクの外周から軸線中心の径方向に突出して放射状に配設された複数の動翼とを備えている。
【0004】
ステータは、ロータを囲繞するように配設され、タービンの内部を外部から区画するケーシング本体及びケーシング本体の内周部に支持されて一体に設けられた翼環からなるケーシングと、複数の静翼とを備えている。
【0005】
また、一つのロータディスクの複数の動翼とこれに対応する静翼が一つの「段」を構成しており、蒸気タービンには、多数段の動翼、静翼が設けられている。さらに、複数の段は、動翼及び静翼の翼高さ(ロータに略直交する方向の翼の長さ)が蒸気の流通方向上流側から下流側に向かうに従い大きくなるように構成されている。
【0006】
このように構成した蒸気タービンは、蒸気が軸線方向一端側からケーシング内に供給されて軸線方向他端側に流通するとともに、各段の静翼での圧力降下によって運動エネルギーが生じ、これを動翼によって回転トルクに変換し、ロータを軸線周りに回転させることができる。
【0007】
ここで、蒸気タービンの内部(ケーシングの内部)では、下流段側ほどエネルギーが減少し、例えば低圧タービンの最終段(最終翼群内部)では湿りが発生する。この蒸気の湿り(水分)は様々な形態で蒸気タービンにエネルギー損失をもたらすだけでなく、水滴となって翼を浸食し、損傷させるおそれがある。特に、静翼表面に付着した粗大な水滴が静翼の後縁部から飛散して動翼に衝突することにより、エネルギーの損失だけでなく動翼の損傷を招くケースがある。
【0008】
これに対し、静翼を中空構造で形成するとともに中空部に加熱流体を流通させ、加熱流体で静翼を加熱することにより、付着しようとする水分を蒸発させ、静翼の外面に水滴等の水分が付着しないようにする手法が知られている(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上記従来の静翼の中空部に加熱流体を流通させ、静翼の外面に水滴等の水分が付着しないようにする手法においては、一連の流路に加熱流体を供給するとともに、一連の流路に開口した加熱流体供給口から静翼の中空部に加熱流体を供給し、中空部から加熱流体排出口を通じて外部に加熱流体を排出させる。
【0011】
このとき、一連の流路にそれぞれ開口し、各段の周方向に並ぶ複数の静翼の中空部にそれぞれ加熱流体を供給する複数の加熱流体供給口が同形同大で形成されている。また、複数の静翼の中空部を流通した加熱流体を外部に排出させる複数の加熱流体排出口が同形同大で形成されている。
【0012】
このため、一連の流路を一方向に流通するとともに各加熱流体供給口から周方向に並ぶ静翼の中空部に順次加熱流体が供給されてゆくことになり、一連の流路を一方向に流通する前記一方向の上流側より下流側の静翼ほど、加熱流体の供給量が少なくなってしまう。すなわち、周方向に並ぶ複数の静翼への加熱流体の供給量にバラつきが生じ、結果として周方向に並ぶ複数の静翼の加熱状態にムラが生じてしまい、静翼の位置によって、外面にそれぞれ付着する水滴などの水分を除去する効率、その効果に差異が生じるという問題があった。
【0013】
これにより、周方向に並ぶ複数の静翼をむらなく加熱することを可能にする手法の開発が強く望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の蒸気タービンは、軸線周りに回転可能に設けられたロータと、前記ロータを囲繞するように配設されて蒸気流路を形成するケーシングと、前記ロータに一体に接続して設けられる複数の動翼と、前記ケーシングに一体に接続して前記蒸気流路内に設けられた複数の静翼とを備え、少なくとも一部の前記静翼は、中空構造で形成されるともに、その中空部と、前記中空部に加熱流体を供給するための加熱流体供給口と、前記中空部から加熱流体を排出するための加熱流体排出口とからなる加熱流体流通路を備えて形成されており、前記軸線を中心とした周方向に並設した複数の前記少なくとも一部の静翼のそれぞれの前記加熱流体流通路を流通する加熱流体の圧力損失が略均等になるように構成されており、前記軸線を中心とした周方向に並設した複数の前記少なくとも一部の静翼は、前記加熱流体供給口と前記加熱流体排出口の少なくとも一方の大きさを異にして形成され、前記加熱流体供給口と前記加熱流体排出口の少なくとも一方の大きさの違いによって複数の前記少なくとも一部の静翼のそれぞれの前記加熱流体流通路を流通する加熱流体の圧力損失が略均等になるように構成されていることが望ましい。
【0016】
本発明の蒸気タービンは、軸線周りに回転可能に設けられたロータと、前記ロータを囲繞するように配設されて蒸気流路を形成するケーシングと、前記ロータに一体に接続して設けられる複数の動翼と、前記ケーシングに一体に接続して前記蒸気流路内に設けられた複数の静翼とを備え、少なくとも一部の前記静翼は、中空構造で形成されるともに、その中空部と、前記中空部に加熱流体を供給するための加熱流体供給口と、前記中空部から加熱流体を排出するための加熱流体排出口とからなる加熱流体流通路を備えて形成されており、前記軸線を中心とした周方向に並設した複数の前記少なくとも一部の静翼のそれぞれの前記加熱流体流通路を流通する加熱流体の圧力損失が略均等になるように構成されており、前記軸線を中心とした周方向に並設した複数の前記少なくとも一部の静翼は、前記中空部の最小断面積と容積の少なくとも一方の大きさを異にして形成され、前記中空部の最小断面積と容積の少なくとも一方の大きさの違いによって複数の前記少なくとも一部の静翼のそれぞれの前記加熱流体流通路を流通する加熱流体の圧力損失が略均等になるように構成されていてもよい。
【0017】
本発明の蒸気タービンは、軸線周りに回転可能に設けられたロータと、前記ロータを囲繞するように配設されて蒸気流路を形成するケーシングと、前記ロータに一体に接続して設けられる複数の動翼と、前記ケーシングに一体に接続して前記蒸気流路内に設けられた複数の静翼とを備え、少なくとも一部の前記静翼は、中空構造で形成されるともに、その中空部と、前記中空部に加熱流体を供給するための加熱流体供給口と、前記中空部から加熱流体を排出するための加熱流体排出口とからなる加熱流体流通路を備えて形成されており、前記軸線を中心とした周方向に並設した複数の前記少なくとも一部の静翼のそれぞれの前記加熱流体流通路を流通する加熱流体の圧力損失が略均等になるように構成されており、前記軸線を中心とした周方向に並設した複数の前記少なくとも一部の静翼は、前記軸線よりも上方に配された上半部の複数の静翼と、前記軸線よりも下方に配された下半部の複数の静翼とに区分され、前記上半部の複数の静翼は、それぞれの加熱流体供給口を通じてそれぞれの中空部が前記軸線中心の周方向に延びた凸円弧状の上半部の外側キャビティに連通するとともに、それぞれの加熱流体排出口を通じてそれぞれの中空部が前記軸線中心の周方向に延びて前記ロータを囲繞するように配された円環状の内側キャビティに連通し、前記下半部の複数の静翼は、それぞれの加熱流体供給口を通じてそれぞれの中空部が前記内側キャビティに連通するとともに、それぞれの加熱流体排出口を通じてそれぞれの中空部が前記軸線中心の周方向に延びた凹円弧状の下半部の外側キャビティに連通し、且つ、前記凸円弧状の上半部の外側キャビティの最上部に前記加熱流体を供給する供給元口が設けられるとともに、前記凹円弧状の下半部の外側キャビティの最下部に前記加熱流体を排出する排出元口が設けられており、前記上半部の複数の静翼は、前記供給元口から離れるほどに前記加熱流体供給口の大きさ、及び/又は前記中空部の最小断面積と容積の少なくとも一方の大きさが大となるように構成され、前記下半部の複数の静翼は、前記排出元口に近づくほどに前記加熱流体排出口の大きさ、及び/又は前記中空部の最小断面積と容積の少なくとも一方の大きさが小となるように構成されていることがより望ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明の蒸気タービンにおいては、軸線中心の周方向に並ぶ複数の静翼の全ての中空部にバランスよく加熱流体を流通させることができる。これにより、従来のように周方向に並ぶ複数の静翼への加熱流体の供給量にバラつきが生じ、その結果として周方向に並ぶ複数の静翼の加熱状態にムラが生じることがなく、複数の静翼の外面にそれぞれ付着する水滴などの水分を、静翼の位置に関わりなく効率的且つ効果的に除去することが可能になる。
【0019】
よって、本発明の蒸気タービンによれば、周方向に並ぶ複数の静翼をむらなく加熱することができ、静翼の外面に付着する水滴などの水分によるエネルギー損失や、水滴などによって生じる翼の損傷を確実且つ効果的に防止することが可能になる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、
図1から
図6を参照し、本発明の一実施形態に係る蒸気タービンについて説明する。
【0022】
ここで、本実施形態では、本発明に係る蒸気タービンが例えば発電プラントなどの蒸気タービンプラント(蒸気タービンシステム)に具備される蒸気タービンであるものとして説明を行う。
【0023】
具体的に、このような蒸気タービンプラントは、例えば、ボイラと、ボイラからの蒸気で駆動する蒸気タービン(高圧蒸気タービン、中圧蒸気タービン、低圧蒸気タービン)と、各蒸気タービンの駆動に従動して発電する発電機と、低圧蒸気タービンから排出された蒸気を水に戻してボイラに供給するための復水器と、これら各機器を制御する制御装置とを備えている。
【0024】
一方、本実施形態の蒸気タービンAは、
図1から
図3に示すように、ロータ1とステータ2とを備えて構成されている。
【0025】
ロータ1は、軸線O1方向に軸状に並設された複数のロータディスク3と、各ロータディスク3の外周から軸線O1中心の径方向外側に突出して放射状に配設された複数の動翼4とを備えている。
【0026】
ステータ2は、ロータ1を囲繞するように配設され、蒸気タービンAの内部を外部から区画するケーシング本体5及びケーシング本体5の内周部に支持されて一体に設けられた翼環(外環)6からなるケーシング7と、翼環6から径方向内側に突出して放射状に配設されるとともに軸線O1方向(蒸気P1の流通方向)に所定の間隔をあけて配設された複数の静翼8とを備えている。
【0027】
また、一つのロータディスク3に設けられ、周方向に並ぶ複数の動翼4が環状動翼群を構成し、周方向に並ぶ複数の静翼8が環状静翼群を構成する。そして、一つのロータディスク3の複数の動翼4の一つの環状動翼群とこの環状動翼群の蒸気流通方向上流側に隣接する一つの環状静翼群で一つの「段」が構成され、蒸気タービンAには、多数段の動翼4、静翼8が設けられている。さらに、複数の段は、動翼4及び静翼8の翼高さ(ロータ1に略直交する方向の翼の長さ)が蒸気P1の流通方向上流側から下流側に向かうに従い大きくなるように構成されている。
【0028】
翼環6は、ケーシング本体5の内周部に一体に設けられるとともに円周方向に延びて円環状に配設されている。
【0029】
静翼8は、径方向外側に設けられ、翼環6に静翼8の基端部を溶接などして接続するための外側シュラウド10と、外側シュラウド10からロータ1に向かう径方向内側に延びる静翼本体11と、静翼本体11の径方向内側(ロータ1側)に一体に設けられた内側シュラウド12とを備えて形成されている。
【0030】
環状静翼群の複数の静翼8の外側シュラウド10はそれぞれ、周方向に向けて延び、翼環6との間に外側キャビティ13を形成している。これら複数の静翼8の各外側キャビティ13は、軸線O1よりも上方の上半部T1と、軸線O1よりも下方の下半部T2とでそれぞれ円周方向に連通し、上半部T1の外側キャビティ13a(13)と下半部の外側キャビティ13b(13)がそれぞれ凸円弧状、凹円弧状に形成されている。
【0031】
静翼本体11は、
図4に示すように、例えば、腹側を構成する腹側部材14と、背側を構成する背側部材15とを備えて形成されている。また、腹側部材14と背側部材15はそれぞれ金属製の板状部材を互いに異なる反り方で湾曲させたものであり、腹側部材14は、その外面/表面が静翼の腹面となるよう反り加工し、背側部材15は、その外面/表面が静翼8の背面となるよう反り加工して形成されている。
【0032】
静翼本体11は、腹側部材14と背側部材15をそれぞれ静翼8の腹側部17と背側部18を構成するように組み付け、静翼8の前縁部8aと後縁部8bで腹側部材14と背側部材15の端部同士を溶接するなどして形成されている。これにより、静翼8は、その内部(腹側部材14の内面/裏面と背側部材15の内面/裏面の間)に、翼高さ方向に沿って延びる中空部16を備えている。なお、静翼本体11は、中空部16を備えていればよく、必ずしも腹側部材14と背側部材15を溶接して形成されていなくてもよい。
【0033】
各静翼8の内側シュラウド12は、
図1から
図3に示すように、静翼本体11の径方向内側(ロータ1側)に一体に取り付けられるとともに、周方向に延びて周方向に並ぶ複数の静翼8の内側シュラウド12同士が連結して円環状に形成されている。また、内側シュラウド12の軸線O1方向の端部にシール部材が取り付けられ、内側シュラウド12と軸線O1方向に隣接する動翼4のプラットホームの端部との間がシールされている。
【0034】
各内側シュラウド12は、軸線O1方向に間隔を空け、径方向内側に突出する二つのフランジ12aを備え、一方のフランジ12aをシールリング保持環12bに嵌合し、他方のフランジ12aをリテーナ部材12cを介してシールリング保持環12bに係止して構成されている。なお、シールリング保持環12bは、周方向に連続して環状に形成されており、内周部にシール機構(ラビリンスシール)を一体に設けて構成されている。
【0035】
各内側シュラウド12の内側区画壁12dとシールリング保持環12bとリテーナ部材12cとによって、内側キャビティ20が形成されている。内側キャビティ20は周方向に延びて周方向に並ぶ複数の静翼8の内側キャビティ20同士が連結してロータ1を囲繞するように円環状に形成されている。
【0036】
さらに、本実施形態の蒸気タービンプラントAにおいては、上半部T1の一連の外側キャビティ13と複数の静翼8の中空部16とが複数の静翼8にそれぞれ対応して形成された複数の加熱流体供給口21で連通している。また、上半部T1の複数の静翼8の中空部16と一連の内側キャビティ20とが複数の静翼8にそれぞれ対応次して形成された複数の加熱流体排出口22で連通している。
【0037】
また、下半部T2の複数の静翼8の中空部16と一連の内側キャビティ20とが複数の静翼8にそれぞれ対応して形成された複数の加熱流体供給口23で連通し、下半部T2の一連の外側キャビティ13と複数の静翼8の中空部16とが複数の静翼8にそれぞれ対応して形成された複数の加熱流体排出口24で連通している。
【0038】
これにより、上半部T1の一連の外側キャビティ13に接続した配管(供給元口25)を通じてケーシング7の外部から上半部T1の外側キャビティ13に供給した加熱流体P2が上半部T1の複数の加熱流体供給口21を通じて上半部T1の複数の静翼8の中空部16に供給され、上半部T1の複数の静翼8の中空部16から一連の内側キャビティ20に排出される。
【0039】
さらに、一連の内側キャビティ20から複数の加熱流体供給口23を通じて下半部T2の複数の静翼8の中空部16に加熱流体P2が供給され、下半部T2の複数の静翼8の中空部16から下半部T2の一連の外側キャビティ13に複数の加熱流体排出口24を通じて排出され、下半部T2の静翼8の一連の外側キャビティ13に接続した配管(排出元口26)を通じてケーシング7の外部に加熱流体P2が排出される。
【0040】
さらに、本実施形態では、ケーシング7の外部から上半部T1の一連の外側キャビティ13に加熱流体P2を供給するための配管の接続部、すなわち、加熱流体P2を供給する供給元口25が、上半部T1の外側キャビティ13/加熱流体流通路R1の最上部(時計表示で0時(12時)の位置)に設けられている。また、下半部T2の一連の外側キャビティ13からケーシング7の外部に加熱流体P2を排出するための配管の接続部、すなわち、加熱流体P2を排出する排出元口26が、下半部T2の外側キャビティ13/加熱流体流通路R1の最下部(時計表示で6時の位置)に設けられている。
【0041】
一方、本実施形態の蒸気タービンプラントAは、復水器とボイラを繋ぐ復水ラインの間に、例えば、蒸気タービンの排気との熱交換によって復水器で回収した水を加熱してボイラに給水するための給水加熱器や、蒸気タービンからの蒸気漏出、蒸気タービンへの外部空気の流入を防ぐためのグランドシール蒸気ラインの蒸気の熱及び復水の回収を行うためのグランド蒸気回収復水装置(GSC)が設けられている。ボイラには復水器で回収した水だけでなく、外部から水を供給するための給水ラインも接続して具備されている。
【0042】
このように構成した本実施形態の蒸気タービンプラントAにおいては、ボイラで水を加熱して生成した蒸気P1を蒸気タービンAに供給し、この蒸気P1が蒸気流路R2を流通するとともに動翼4ひいてはロータ1を回転させ、発電機で発電を行うことができる。
【0043】
また、蒸気タービンAの蒸気流路R2を流通してロータ1の回転に供された後の蒸気P1が蒸気流通方向下流側に設けられた蒸気排出口から外部に排出されるとともに復水器に送られ、熱交換によって冷却されて水に戻される。この水が復水器からボイラに送られ、蒸気P1として蒸気タービンAに循環給送される。
【0044】
ここで、蒸気タービンAの内部(ケーシング7の内部)では、下流段側ほどエネルギーが減少し、例えば低圧蒸気タービンの最終段(最終翼群内部)では湿りが発生する。
【0045】
これに対し、本実施形態においては、ケーシング7の外部から複数の静翼8の中空部16に加熱流体P2を供給し、上半部T1の静翼8から下半部T2の静翼8に加熱流体P2を流通させるように構成されている。加熱流体P2としては、グランドシール蒸気ラインの蒸気で熱交換して所定の温度に加熱した水や、高圧蒸気タービン、中圧蒸気タービン、低圧蒸気タービンから抽出した蒸気等を用いればよく、特に限定を必要とするものではない。
【0046】
また、本実施形態の蒸気タービンAでは、軸線O1中心の周方向に並ぶ複数の静翼8を、軸線O1中心の上半部T1と下半部T2、さらに軸線O1を通る上下方向に二分割し、時計表示で0時(12時)から3時、3時から6時、6時から9時、9時から12時に相当する4つの領域をそれぞれ1セグメント(計4セグメント:S1〜S4)とする。
【0047】
そして、本実施形態では、各セグメントS1〜S4において、上半部T1の外側キャビティ13から上半部T1の複数の静翼8のそれぞれの中空部16に流通する加熱流体P2の時間当たりの流量が略同等となるように、且つ下半部T2の内側キャビティ20から下半部T2の複数の静翼8のそれぞれ中空部16に流通する加熱流体P2の時間当たりの流量が略同等となるように構成されている。
【0048】
言い換えれば、本実施形態の蒸気タービンAでは、各セグメントS1〜S4において、上半部T1の外側キャビティ13から上半部T1の複数の静翼8のそれぞれの中空部16に加熱流体P2が流通する際の圧力損失、下半部T2の内側キャビティ20から下半部T2の複数の静翼8のそれぞれの中空部16に加熱流体P2が流通する際の圧力損失が、各セグメントS1〜S4の複数の静翼8で略同等になるように構成されている。
【0049】
このように上半部T1と下半部T2の複数の静翼8の中空部16を流通する加熱流体P2の流量や圧力損失を略同等にするために、本実施形態では、
図5(
図2、
図3(M1部、M2部)参照)に示すように、各セグメントS1〜S4において、上半部T1の一連の外側キャビティ13ひいてはケーシング7の外部から上半部T1の複数の静翼8の中空部16にそれぞれ加熱流体P2を供給するための各静翼8の加熱流体供給口21を異なる大きさで形成するようにした。
【0050】
また、下半部T2の複数の静翼8の中空部16を流通して下半部T2の一連の外側キャビティ13ひいてはケーシング7の外部に加熱流体P2を排出させるための各静翼8の加熱流体排出口24を異なる大きさで形成するようにした。
【0051】
このように各静翼8に設けられた加熱流体供給口21や加熱流体排出口24の大きさを調整することにより、蒸気流路R2内で湿りが発生し、その外面に水滴などの水分が付着しやすい静翼8の中空部16に好適に加熱流体P2が供給される。
【0052】
より具体的に、本実施形態において、上半部T1のセグメントS1、S2は、上方側から下方側(時計表示で0時から3時、0時(12時)から9時)に向かうに従い、一連の外側キャビティ13から複数の静翼8の中空部16のそれぞれに加熱流体P2を供給するための加熱流体供給口21の開口面積が大となるように形成され、複数の静翼8の中空部16のそれぞれから一連の内側キャビティ20に加熱流体P2を排出するための複数の加熱流体排出口22が同形同大で形成されている。
【0053】
一方、下半部T2のセグメントS3、S4は、一連の内側キャビティ20から複数の静翼8の中空部16のそれぞれに加熱流体P2を供給するための加熱流体供給口23が同形同大で形成されている。これに対し、下半部T2のセグメントS3、S4は、複数の静翼8の中空部16のそれぞれから一連の外側キャビティ13に加熱流体P2を排出するための加熱流体排出口24が上方側から下方側(時計表示で3時から6時、9時から6時)に向かうに従い開口面積が小となるように形成されている。
【0054】
また、本実施形態において、大きさが異なる上半部T1の複数の加熱流体供給口21は、
図5、
図6に示すように、直前の加熱流体供給口21よりも次(隣)の加熱流体供給口21が必ず大きくなるようにし、1つのセグメントS1、S2の範囲内で加熱流体供給口21の面積拡大率の平均が20%以下となるように設定されている。
なお、時計表示で0時から3時(または0時(12時)から9時)に向かってN個の加熱流体供給口に番号を1から順にN番までふり、n番目の加熱流体供給口の面積をAnとおくとき、面積拡大率の平均は次の式で表される。
面積拡大率の平均[%] =1/N×ΣAn×1/An×100−100(Σはn=1からn=N−1の総和)
【0055】
さらに、下半部T2の複数の加熱流体排出口24は、直前の加熱流体排出口24よりも次(隣)の加熱流体排出口24が必ず小さくなるようにし、1つのセグメントS3、S4の範囲内で加熱流体排出口24の面積拡大率の平均が20%以下となるように設定されている。
なお、時計表示で6時から3時(または6時から9時)に向かってN個の加熱流体供給口に番号を1から順にN番までふり、n番目の加熱流体供給口の面積をAnとおくとき、面積拡大率の平均は次の式で表される。
面積拡大率の平均[%]=1/N×ΣAn+1/An×100−100(Σはn=1からn=N−1の総和)
【0056】
そして、上記のように加熱流体流通路R1を構成した本実施形態の蒸気タービンAにおいては、
図3に示すように、グランドシール蒸気ラインの蒸気で熱交換して所定の温度に加熱した水や、高圧蒸気タービン、中圧蒸気タービン、低圧蒸気タービンから抽出した蒸気等の加熱流体P2を供給元口25から供給すると、上半部T1の凸円弧状の一連の外側キャビティ13の最上部から左右に且つ下方にそれぞれ加熱流体P2が流通してゆく。
【0057】
上半部T1の最上部から左右のセグメントS1、S2に沿って加熱流体P2が流通すると、各セグメントS1、S2に形成された加熱流体供給口21から周方向に並ぶ上半部T1の複数の静翼8の中空部16に加熱流体P2が供給される。
【0058】
このとき、上半部T1では、上方側から下方側(時計表示で0時から3時、0時(12時)から9時)に向かうに従い、一連の外側キャビティ13から複数の静翼8の中空部16のそれぞれに加熱流体P2を供給するための加熱流体供給口21の開口面積が大となるように形成されている。言い換えれば、供給元口25に近く、早期に加熱流体P2が供給される加熱流体供給口21が小さく形成され、供給元口25から遠く、前の加熱流体供給口21に加熱流体P2が採られて供給圧力が小さくなる加熱流体供給口21が大きく形成されている。
【0059】
これにより、加熱流体P2の供給元口25からの距離が異なり、加熱流体P2の供給圧力に違いが生じていても、加熱流体供給口21の大きさが調整されていることにより、上半部T1の複数の静翼8の中空部16にそれぞれ供給される加熱流体P2の時間当たりの量、圧力損失を略同等にすることができる。
【0060】
次に、上半部T1の複数の静翼8の中空部16から上半部T1の複数の加熱流体排出口222を通じて一連の内側キャビティ20に加熱流体P2が排出される。この加熱流体P2が、下半部T2の複数の加熱流体供給口23から下半部T2の複数の静翼8の中空部16に供給される。そして、下半部T2の複数の静翼8の中空部16から下半部T2の複数の加熱流体排出口24を通じて下半部T2の一連の外側キャビティ13に加熱流体P2が排出され、排出元口26を通じてケーシング7の外部に排出される。
【0061】
このとき、下半部T2の複数の加熱流体供給口23は流通路の長さが小さい一連の内側キャビティ20に開口して形成されているため、各加熱流体供給口23における圧力に大きな差異がない。これにより、これら下半部T2の複数の加熱流体供給口23が同形同大で形成されていても、下半部T2の複数の静翼8の中空部16に略均等に(バランスよく)加熱流体P2が供給される。
【0062】
下半部T2では、上方側から下方側(時計表示で3時から6時、9時から6時)に向かうに従い、複数の静翼8の中空部16からそれぞれ一連の外側キャビティ13に加熱流体P2を排出するための加熱流体排出口24の開口面積が小となるように形成されている。すなわち、複数の静翼8の中空部16から排出された加熱流体P2が合流して圧力が低下し、排出圧力(内側キャビティと外側キャビティの圧力差)が排出元口26に近い加熱流体排出口24ほど、その大きさが小さく形成されている。言い換えれば、排出元口26から遠く、合流する加熱流体P2が少なく排出圧力が小さくなる加熱流体排出口24は大きく形成されている。
【0063】
これにより、加熱流体P2の排出元口26からの距離が異なり、加熱流体P2の排出圧力に違いが生じていても、加熱流体排出口24の大きさが調整されていることにより、下半部T2の複数の静翼8の中空部16からそれぞれ排出される加熱流体P2、ひいては複数の静翼8の中空部16を流通する加熱流体P2の時間当たりの量、圧力損失を略同等にすることができる。
【0064】
したがって、本実施形態の蒸気タービンAにおいては、上半部T1の複数の静翼8、下半部T2の複数の静翼8の全ての静翼8の中空部16にバランスよく加熱流体P2を流通させることができる。これにより、従来のように周方向に並ぶ複数の静翼8への加熱流体P2の供給量にバラつきが生じ、結果として周方向に並ぶ複数の静翼8の加熱状態にムラが生じることがなく、複数の静翼8の外面にそれぞれ付着する水滴などの水分を、静翼8の位置に関わりなく、効率的且つ効果的に除去することが可能になる。
【0065】
よって、本実施形態の蒸気タービンAによれば、周方向に並ぶ複数の静翼8をむらなく加熱することができ、静翼8の外面に付着する水滴などの水分によるエネルギー損失や、水滴などによって生じる翼の損傷を確実且つ効果的に防止することが可能になる。
【0066】
また、本実施形態の蒸気タービンAでは、上半部T1において、直前の加熱流体供給口21よりも次の加熱流体供給口21が必ず大きくなるようにし、1つのセグメントS1、S2の範囲内で加熱流体供給口21の面積拡大率が平均20%以下となるように設定する。さらに、下半部T2において、直前の加熱流体排出口24よりも次の加熱流体排出口24が必ず小さくなるようにし、1つのセグメントS3、S4の範囲内で加熱流体排出口24の面積拡大率の平均が20%以下となるように設定する。
これにより、好適に、周方向に並ぶ複数の静翼8への加熱流体P2の供給量のバラつきを抑えることができ、且つ周方向に並ぶ複数の静翼8の加熱状態のムラをなくすことが可能になる。
【0067】
以上、本発明に係る蒸気タービンの一実施形態について説明したが、本発明は上記の一実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0068】
例えば、本実施形態では、加熱流体供給口21や加熱流体排出口24の大きさを大小変化させて複数の静翼8にバランスよく加熱流体P2が供給されるようにしたが、例えば、
図4に示すように、各セグメントS1〜S4の複数の静翼8の中空部16の大きさ(最小断面積、容積)を大小変化させることより、複数の静翼8にバランスよく加熱流体P2が供給されるように構成してもよい。この場合においても、複数の静翼8のそれぞれの中空部16に流通する加熱流体P2の時間当たりの流量、加熱流体P2の圧力損失を略同等にする(バランスよくする)ことができ、本実施形態と同様の作用効果を得ることが可能である。
【0069】
また、本発明に係る蒸気タービンは、あらゆる用途の蒸気タービンに適用可能であり、本発明に係る構成を除き、本実施形態のように限定する必要はない。