(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
近年、EV(Electric Vehicle)及びPHV(Plug-in Hybrid Vehicle)等の充電可能な自動車(以下では「充電可能車」と呼ぶことがある)が数多く開発されている。充電可能車にはモータと定格電圧が200V程度の高圧バッテリとが搭載され、充電可能車は、この高圧バッテリに充電された電力によってモータが駆動されることによりモータによる走行が可能となる。また、充電可能車には、DC充電により急速充電が可能なものがある。
【0003】
充電可能車において、高圧バッテリとモータとは、昇圧コンバータ及びインバータを介して接続される。昇圧コンバータは、高圧バッテリから供給される電力の電圧(例えば200V)をモータの定格電圧(例えば500V)へ昇圧する。インバータは、昇圧コンバータでの昇圧後の電力を直流から交流に変換し、変換後の交流の電力をモータへ供給する。
【0004】
さらに、充電可能車において、高圧バッテリと昇圧コンバータとは、リレーを介して接続される。以下では、高圧バッテリと昇圧コンバータとの間に設置されるリレーを「高圧リレー」と呼ぶことがある。高圧リレーが閉成されているときは、高圧バッテリから出力された電力が昇圧コンバータへ供給される一方で、高圧リレーが開放されているときは、高圧バッテリから出力された電力は昇圧コンバータへ供給されない。
【0005】
また、充電可能車は、DC充電時にDC充電のコネクタ(以下では「DC充電コネクタ」と呼ぶことがある)を車両外部から接続されるインレット(以下では「DC充電インレット」と呼ぶことがある)を有する。DC充電インレットは、DC充電インレットと高圧リレーとの間に設置されたリレー(以下では「DC充電リレー」と呼ぶことがある)と、高圧リレーとを介して高圧バッテリに接続される。DC充電リレー及び高圧バッテリが閉成されているときは、DC充電インレットから出力された電力が高圧バッテリへ供給されて高圧バッテリが充電可能な一方で、DC充電リレーまたは高圧リレーが開放されているときは、DC充電インレットから出力された電力は高圧バッテリへ供給されず、高圧バッテリは充電されない。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本願の開示する充電インレットの実施例を図面に基づいて説明する。なお、この実施例により本願の開示する充電インレットが限定されるものではない。例えば、以下の説明では充電方式としてCHAdeMO(登録商標)を一例に挙げて説明するが、本願の開示する充電インレットは、CHAdeMO(登録商標)以外の充電方式(例えばCombined Charging System等)にも適用可能である。また、以下の説明ではDC充電を一例に挙げて説明するが、本願の開示する充電インレットは、AC充電にも適用可能である。また、以下の実施例において同一の構成には同一の符号を付す。
【0014】
[実施例1]
<車両電源システムの構成>
図1は、実施例1の車両電源システムの構成例を示す図である。
図1において、車両電源システム21は、高圧バッテリ25と、高圧リレー101−1,101−2と、PCU22と、DC充電リレー106−1,106−2と、DC充電インレット107と、制御部112とを有する。PCU22にはモータ26が接続される。車両電源システム21及びモータ26は、充電可能車に搭載される。高圧バッテリ25の定格電圧は例えば200Vであり、モータ26の定格電圧は例えば500Vである。高圧リレー101−1,101−2、及び、DC充電リレー106−1,106−2は、「開閉器」の一例である。以下では、高圧リレー101−1,101−2を区別しない場合には高圧リレー101と総称し、DC充電リレー106−1,106−2を区別しない場合にはDC充電リレー106と総称することがある。
【0015】
PCU22は、昇圧コンバータ103と、インバータ104とを有する。
【0016】
高圧リレー101が閉成されているとき、昇圧コンバータ103は、高圧バッテリ25から出力される電力の電圧(例えば200V)をモータ26の定格電圧(例えば500V)へ昇圧し、昇圧後の電力をインバータ104へ出力する。
【0017】
インバータ104は、昇圧コンバータ103での昇圧後の電力を直流から交流に変換し、変換後の交流の電力をモータ26へ供給する。
【0018】
モータ26は、インバータ104での変換後の交流の電力によって駆動される。
【0019】
DC充電インレット107とDC充電リレー106−1とは電源ケーブルAFによって接続され、DC充電インレット107とDC充電リレー106−2とは電源ケーブルBEによって接続される。また、DC充電インレット107と制御部112とは信号ラインCによって接続される。
【0020】
制御部112は、高圧リレー101及びDC充電リレー106の開閉制御を行う。
【0021】
<車両電源システムの動作>
以下、車両電源システム21の動作例について、DC充電時の動作(動作例1)と、走行時の動作(動作例2)とに分けて説明する。車両電源システム21が搭載される車両は、モータ26を駆動させる「走行モード」、または、モータ26を駆動させない「非走行モード」の何れかで起動される。DC充電が行われる際には、車両電源システム21が搭載される車両は「非走行モード」で起動される。一方で、走行の際には、車両電源システム21が搭載される車両は「走行モード」で起動される。つまり、以下の動作例1は、車両電源システム21が搭載される車両が「非走行モード」で起動される場合の動作例であり、以下の動作例2は、車両電源システム21が搭載される車両が「走行モード」で起動される場合の動作例である。なお、動作例1及び動作例2の何れでも、起動前の初期状態において、高圧リレー101及びDC充電リレー106は開放されている。
【0022】
<動作例1:DC充電時の動作>
DC充電インレット107にDC充電コネクタが接続されると、DC充電インレット107から信号ラインCを介して制御部112へDC充電コネクタ接続検出信号が入力される。このDC充電コネクタ接続検出信号に応じて、制御部112は、高圧リレー101及びDC充電リレー106を開放状態から閉成状態にする。
【0023】
高圧リレー101及びDC充電リレー106が閉成されることで、DC充電コネクタからDC充電インレット107を介して供給される電圧200Vの電力は、DC充電リレー106及び高圧リレー101を通って高圧バッテリ25に充電される。
【0024】
<動作例2:走行時の動作>
車両のイグニッションスイッチ(図示省略)がオンになると、車両電源システム21が搭載される車両が「走行モード」で起動される。車両が「走行モード」で起動されると、制御部112は、高圧リレー101を開放状態から閉成状態にする。
【0025】
高圧リレー101が閉成されることで、高圧バッテリ25から出力された電力が昇圧コンバータ103及びインバータ104を介してモータ26へ供給されるため、モータ26による車両の走行が可能となる。
【0026】
<DC充電インレットの構造>
図2及び
図3は、実施例1のDC充電インレットの構造例を示す図である。
図2には、DC充電インレット107がDC充電リレー106に接続されていないときの状態(以下では「状態1」と呼ぶことがある)を示し、
図3には、DC充電インレット107がDC充電リレー106に接続されているときの状態(以下では「状態2」と呼ぶことがある)を示す。
【0027】
図2及び
図3に示すように、
図1に示す電源ケーブルAFは、電源ケーブルAと電源ケーブルFとに二分割されている。同様に、
図1に示す電源ケーブルBEは、電源ケーブルBと電源ケーブルEとに二分割されている。
【0028】
また、
図2及び
図3において、DC充電インレット107は、ソケット1〜10を有する。ソケット1〜10は、DC充電インレット107が有する「端子」の一例であり、メス端子に相当する。ソケット1〜10のうち、ソケット5には電源ケーブルEが接続され、ソケット6には電源ケーブルFが接続されている。また、ソケット1〜4及びソケット7〜10には、信号ラインC(
図1)を介して、常に制御部112が接続されている。よって、ソケット1〜10のうち、ソケット5,6は高い電圧が印加される「高圧端子」に該当し、ソケット1〜4及びソケット7〜10は、ソケット5,6に印加される電圧よりも低い電圧が印加される「低圧端子」に該当する。
【0029】
DC充電コネクタ15は、DC充電インレット107のソケット1〜10にそれぞれ対応するピン1’〜10’を有する(図示省略)。すなわち、ピン1’〜4’,7’〜10’はソケット1〜4,7〜10にそれぞれ対応し、ピン5’,6’はソケット5,6にそれぞれ対応する。ピン1’〜10’は、DC充電コネクタ15が有する「端子」の一例であり、オス端子に相当する。DC充電コネクタ15がDC充電インレット107に嵌められるときには、ピン1’〜4’,7’〜10’の各々が、それぞれ対応するソケット1〜4,7〜10の各々と嵌合し、ピン5’,6’の各々が、それぞれ対応するソケット5,6の各々と嵌合する。よって、DC充電コネクタ15がDC充電インレット107に嵌められることにより、DC充電コネクタ15がDC充電インレット107に嵌められる前には外部に露出していたソケット1〜10が外部に露出しなくなる。また、ピン1’〜10’のうち、ピン5’,6’は高い電圧が印加される「高圧端子」に該当し、ピン1’〜4’,7’〜10’は、ピン5’,6’に印加される電圧よりも低い電圧が印加される「低圧端子」に該当する。
【0030】
また、DC充電コネクタ15は、DC充電コネクタ接続検出信号の出力元である充電スタンドを介して、商用電源等の外部電源に接続されている。つまり、DC充電コネクタ15が有するピン1’〜10’のうち、ピン5’,6’は、外部電源から供給されて高圧バッテリ25に充電される電流が流れるピンであり、ピン1’〜4’,7’〜10’は、充電スタンドから出力される信号が流れるピンである。
【0031】
状態1(
図2)において、電源ケーブルAの一端はDC充電リレー106−1に接続されている一方で電源ケーブルAの他端は開放されており、電源ケーブルBの一端はDC充電リレー106−2に接続されている一方で電源ケーブルBの他端は開放されている。また、状態1(
図2)において、電源ケーブルEの一端はソケット5に接続されている一方で電源ケーブルEの他端は開放されており、電源ケーブルFの一端はソケット6に接続されている一方で電源ケーブルFの他端は開放されている。つまり、状態1において、電源ケーブルAと電源ケーブルFとは接続されていないため、DC充電リレー106−1とソケット6とは接続されていない。また、状態1において、電源ケーブルBと電源ケーブルEとは接続されていないため、DC充電リレー106−2とソケット5とは接続されていない。このため、DC充電インレット107が
図2に示す状態にあるときは、たとえ高圧リレー101及びDC充電リレー106の双方が閉成されていても、高圧バッテリ25から出力された電力は、DC充電インレット107のソケット5,6に到達しない。よって、DC充電インレット107が
図2に示す状態にあるときは、たとえソケット5,6に人体の一部が接触したとしても、感電は発生しない。
【0032】
そして、DC充電インレット107が
図2に示す状態にあるときに、DC充電コネクタ15をDC充電インレット107に嵌める操作(以下では「第一の操作」と呼ぶことがある)がDC充電コネクタ15に対して行われる。この第一の操作により、DC充電コネクタ15のピン1’〜4’,7’〜10’と信号ラインC(
図1)とがDC充電インレット107のソケット1〜4,7〜10を介して接続されるため、ピン1’〜4’,7’〜10’と制御部112とがソケット1〜4,7〜10を介して接続される。
【0033】
一方で、第一の操作が行われた段階(つまり、第一段階)では、電源ケーブルAと電源ケーブルFとは接続されておらず、かつ、電源ケーブルBと電源ケーブルEとは接続されていない。このため、第一段階では、たとえ高圧リレー101及びDC充電リレー106の双方が閉成されていても、高圧バッテリ25から出力された電力は、DC充電インレット107のソケット5,6に到達しない。
【0034】
次いで、第一の操作に後続して、DC充電インレット107に嵌められた後のDC充電コネクタ15を回転させる操作(以下では「第二の操作」と呼ぶことがある)が行われる(
図2)。回転の角度は、例えば90°である。この第二の操作により、
図3に示すように、電源ケーブルAと電源ケーブルFとが接続されるとともに、電源ケーブルBと電源ケーブルEとが接続される(
図3)。このため、第一の操作に後続する第二の操作によって、DC充電コネクタ15のピン6’とDC充電リレー106−1とがDC充電インレット107のソケット6を介して接続されるとともに、DC充電コネクタ15のピン5’とDC充電リレー106−2とがDC充電インレット107のソケット5を介して接続される。よって、第二の操作が行われた段階(つまり、第二段階)において、外部電源による高圧バッテリ25の充電が可能となる。
【0035】
また、DC充電インレット107は、第二の操作前にはDC充電インレット107に対してDC充電コネクタ15が着脱可能であるのに対し、第二の操作後はDC充電インレット107からDC充電コネクタ15を取り外すことができなくなる機構を有する。これにより、充電中において、DC充電コネクタ15のDC充電インレット107からの脱落を防ぐことができる。なお、充電完了時には、第二の操作での回転方向と逆方向にDC充電コネクタ15を回転させることにより、DC充電インレット107からDC充電コネクタ15を抜き外すことが可能になる。
【0036】
以上のように、実施例1では、DC充電コネクタ15がDC充電インレット107に接続される。DC充電コネクタ15は、外部電源から供給されて高圧バッテリ25に充電される電流が流れるピン5’,6’を有する。一方で、DC充電インレット107は、ピン5’,6’にそれぞれ対応するソケット5,6を有する。そして、DC充電インレット107においては、DC充電コネクタ15をDC充電インレット107に嵌める操作である第一の操作前には、ソケット5,6が高圧バッテリ25と接続されておらず、DC充電コネクタ15に対する第二の操作であって、第一の操作に後続する第二の操作によって、ソケット5,6が高圧バッテリ25と接続される。
【0037】
こうすることで、第一の操作前にはソケット5,6が高圧バッテリ25と接続されていないため、第一の操作前の状態、つまり、ソケット5,6が外部に露出している状態でも、感電を防止することができる。よって、ソケット5,6が外部に露出している状態でも、感電を防ぎつつ、高圧バッテリ25から出力された電力をモータ26へ供給することができる。また、第一の操作後にはソケット5,6が外部に露出しなくなるため、第一の操作後は、ソケット5,6が高圧バッテリ25と接続されても、感電を防止することができる。また、第二の操作によって、ソケット5,6が高圧バッテリ25と接続されるため、第二の操作後は、外部電源による高圧バッテリ25の充電が可能になる。
【0038】
つまり、実施例1によれば、感電を防止した上で車両の走行または高圧バッテリ25の充電が可能となる。
【0039】
また、実施例1では、DC充電コネクタ15は、充電スタンドから出力される信号が流れるピン1’〜4’,7’〜10’をさらに有する。また、DC充電インレット107は、ピン1’〜4’,7’〜10’にそれぞれ対応するソケット1〜4,7〜10をさらに有する。そして、DC充電インレット107においては、第一の操作によって、ピン1’〜4’,7’〜10’と制御部112とがソケット1〜4,7〜10を介して接続される。
【0040】
こうすることで、ソケット5,6が高圧バッテリ25と接続される前に、前もって、充電スタンドから出力される信号を制御部112に送ることができるため、感電を防ぎつつ、充電スタンドと車両電源システム21との間の通信を高圧バッテリ25の充電に先立って行うことができる。
【0041】
また、実施例1では、第二の操作は、DC充電インレット107に嵌められた後のDC充電コネクタ15を回転させる操作である。
【0042】
こうすることで、高圧バッテリ25の充電が可能になったことをDC充電コネクタ15の操作者が違和感なく把握することができるとともに、簡易な機構でソケット5,6を高圧バッテリ25に接続することができる。
【0043】
[実施例2]
図1に示す制御部112は、例えば、プロセッサとメモリとを有するECU(Electronic Control Unit)によって実現される。プロセッサの一例として、CPU(Central Processing Unit),DSP(Digital Signal Processor),FPGA(Field Programmable Gate Array)等が挙げられる。メモリの一例として、SDRAM(Synchronous Dynamic Random Access Memory)等のRAM(Random Access Memory),ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ等が挙げられる。
【0044】
[実施例3]
実施例1では、充電方式としてCHAdeMO(登録商標)を一例に挙げて説明した。充電方式がCHAdeMO(登録商標)である場合は、上記のように、DC充電コネクタ15が、オス端子であるピン1’〜10’を有し、DC充電インレット107が、メス端子であるソケット1〜10を有する。これに対し、充電方式がCombined Charging Systemである場合には、充電コネクタがメス端子を有し、充電インレットがオス端子を有する。しかし、充電方式がCHAdeMO(登録商標)及びCombined Charging Systemの何れであっても、オス端子とメス端子とが嵌合されることにより充電コネクタと充電インレットとが導通される点は共通である。よって、本願の開示する充電インレットは、Combined Charging Systemを含め、CHAdeMO(登録商標)以外の充電方式にも適用可能である。