(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
アジマス方向およびエレベーション方向に沿って配列した複数の振動子のうちの少なくともいずれかを介して、前記エレベーション方向における音場が互いに異なる第1のスキャンおよび第2のスキャンを実行する送受信部と、
前記第1のスキャンの結果を用いて第1の針強調画像を生成し、前記第2のスキャンの結果を用いて第2の針強調画像を生成する処理部と、
を備え、
前記処理部は、
前記第1の針強調画像と前記第2の針強調画像とにもとづいて穿刺支援情報を出力するとともに、前記第1の針強調画像における所定の画素値以上の画素値をもつ画素数を前記第2の針強調画像における所定の画素値以上の画素値をもつ画素数で除した割合が所定の割合より小さいと、その旨の情報を前記穿刺支援情報として音声出力または画像出力することによりユーザに通知する、
超音波診断装置。
前記第3のスキャンの前記エレベーション方向における音場の幅は、前記第1のスキャンの前記エレベーション方向の音場の幅および前記第2のスキャンの前記エレベーション方向の音場の幅のうち狭い方の幅に実質的に等しい、
請求項11記載の超音波診断装置。
前記アジマス方向および前記エレベーション方向に沿って配列された複数の振動子を有し、前記処理部により制御されて前記エレベーション方向に互いに異なる音場を形成可能であるとともに、前記エレベーション方向において中心軸に対して対称な音場を形成する超音波プローブ、
をさらに備えた請求項1ないし16のいずれか1項に記載の超音波診断装置。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明に係る超音波診断装置および超音波画像生成プログラムの実施の形態について、添付図面を参照して説明する。本発明の一実施形態に係る超音波診断装置は、たとえば超音波画像ガイド下での穿刺術を行う場合に使用される。
【0011】
図1は、本発明の一実施形態に係る超音波診断装置10の一構成例を示すブロック図である。超音波診断装置10は、超音波プローブ11、穿刺針12、操作パネル20、ディスプレイ30および装置本体40を有する。
【0012】
図2は、超音波プローブ11を構成する超音波振動子の配置例を示す説明図である。
【0013】
超音波プローブ11は、複数の超音波振動子(圧電振動子)を有する。これら複数の超音波振動子は、装置本体40から供給される駆動信号にもとづいて超音波を発生させる。超音波プローブ11は、複数の超音波振動子から発生する超音波を被検体Pの体内へ送信し、さらに、被検体Pからのエコー信号を受信して電気信号に変換する。また、超音波プローブ11は、圧電振動子に設けられる整合層と、圧電振動子から後方への超音波の伝播を防止するバッキング材などを有する。
【0014】
本実施形態において、超音波プローブ11は、エレベーション方向(スライス方向ともいう)における音場が互いに異なる第1のスキャンおよび第2のスキャンを実行可能に構成される。このため、超音波プローブ11としては、エレベーション方向に複数の素子が配列された2次元アレイプローブを用いることができる。この種の2次元アレイプローブとしては、たとえば1.5Dアレイプローブ、1.75Dアレイプローブや、2Dアレイプローブなどを用いることができる。
【0015】
ここで、1.5Dアレイプローブとは、エレベーション方向に中心から等距離にある振動子どうしが共通接続されており、エレベーション方向における超音波の音場が中心軸に対して対称であり(
図2参照)、エレベーション方向において送受信超音波の遅延とアポダイゼーションを中心軸に対して対称に制御可能であるものをいう。1.75Dアレイプローブとは、エレベーション方向に可変口径で、焦点距離をダイナミックに変更可能であり、エレベーション方向における超音波の音場が中心軸対称性を持たないものをいう。また、2Dアレイプローブとは、各振動子の送受信信号線が独立であり、エレベーション方向において送受信超音波の遅延、アポダイゼーションに加えて音場中心および送受信角度が制御可能であるものをいう。以下の説明では、超音波プローブ11として1.5Dアレイプローブを用いる場合の例について示す。
【0016】
穿刺針12は、たとえばガイドアタッチメントを介して超音波プローブ11に取り付けられて、ユーザにより被検体Pの所要部位に穿刺される。
【0017】
操作パネル20は、タッチコマンドスクリーンとして機能し、ディスプレイと、このディスプレイの近傍に設けられたタッチ入力回路と、ハードキーとを有する。タッチ入力回路は、ユーザによるタッチ入力回路上の指示位置の情報を装置本体40に与える。ハードキーは、キーボード、マウス、フットスイッチ、トラックボール、各種ボタン等を含む。タッチ入力回路およびハードキーは入力回路を構成し、それぞれ、超音波診断装置10のユーザからの各種指示を受け付ける。
【0018】
ディスプレイ30は、たとえば液晶ディスプレイやOLED(Organic Light Emitting Diode)ディスプレイなどの一般的な表示出力装置により構成され、装置本体40において生成された生体組織画像と穿刺支援画像との合成画像などの超音波画像を表示する。また、ディスプレイ30は、たとえば超音波診断装置10のユーザが操作パネル20を用いて各種指示を入力するための画像を表示する。また、ディスプレイ30は、装置本体40から受けたユーザに対する通知情報を表示する。
【0019】
装置本体40は、超音波プローブ11が受信した被検体Pからのエコー信号にもとづいて超音波画像を生成する。装置本体40は、
図1に示すように、送受信回路50、Bモード処理回路51、ドプラ処理回路52、画像生成回路53、画像メモリ54、タイマ55、記憶回路56、処理回路57および表示制御回路58を有する。
【0020】
送受信回路50は、送信回路50aおよび受信回路50bを有し、処理回路57と協働して超音波の送受信における送信指向性と受信指向性とを制御する。なお、
図1には送受信回路50が装置本体40に設けられる場合の例について示したが、送受信回路50は超音波プローブ11に設けられてもよいし、超音波プローブ11と装置本体40の両方に設けられてもよい。
【0021】
送信回路50aは、パルス発生器、送信遅延回路およびパルサ回路などを有し、超音波プローブ11に駆動信号を供給する。パルス発生器は、所定のレート周波数で、送信超音波を形成するためのレートパルスを繰り返し発生する。送信遅延回路は、超音波プローブ11から発生される超音波をたとえばビーム状に集束し、あるいは拡散させるなどして、送信指向性を決定するために必要な圧電振動子ごとの遅延時間を、パルス発生器が発生する各レートパルスに対し与える。また、パルサ回路は、レートパルスにもとづくタイミングで、超音波プローブ11に駆動パルスを印加する。送信遅延回路は、各レートパルスに対し与える遅延時間を変化させることで、圧電振動子面から送信される超音波の送信方向を任意に調整する。
【0022】
また、送信回路50aは、処理回路57に制御されて、所定のスキャンシーケンスを実行するために、送信周波数、送信駆動電圧などを瞬時に変更可能な機能を有する。送信駆動電圧の変更機能は、瞬間にその値を切り替え可能なリニアアンプ型の発信回路、または、複数の電源ユニットを電気的に切り替える機構によって実現される。
【0023】
受信回路50bは、アンプ回路、A/D変換器、加算器などを有し、超音波プローブ11が受信したエコー信号を受け、このエコー信号に対して各種処理を行なって反射波データを生成する。アンプ回路は、エコー信号をチャンネルごとに増幅してゲイン補正処理を行なう。A/D変換器は、ゲイン補正された反射波信号をA/D変換し、デジタルデータに受信指向性を決定するのに必要な遅延時間を与える。加算器は、A/D変換器によって処理されたエコー信号の加算処理を行なって反射波データを生成する。加算器の加算処理により、エコー信号の受信指向性に応じた方向からの反射成分が強調される。
【0024】
Bモード処理回路51は、受信回路50bから反射波データを受信し、対数増幅、包絡線検波処理などを行なって、信号強度が輝度の明るさで表現されるデータ(Bモードデータ)を生成する。
【0025】
ドプラ処理回路52は、受信回路50bから受信した反射波データから速度情報を周波数解析し、ドプラ効果による血流や組織、造影剤エコー成分を抽出し、平均速度、分散、パワーなどの移動体情報を多点について抽出したドプラデータを生成する。
【0026】
画像生成回路53は、超音波プローブ11が受信した反射波にもとづいて超音波画像を生成する。具体的には、画像生成回路53は、Bモード処理回路51およびドプラ処理回路52が生成したデータから超音波画像を生成する。たとえば、画像生成回路53は、Bモード処理回路51が生成した2次元のBモードデータから反射波の強度を輝度にて表したBモード画像を生成する。また、画像生成回路53は、ドプラ処理回路52が生成した2次元のドプラデータから移動体情報を表す平均速度画像、分散画像、パワー画像、または、これらの組み合わせ画像としてのカラードプラ画像を生成する。以下の説明では、2次元のBモード画像および2次元のカラードプラ画像などの超音波画像を、適宜生体組織画像という。
【0027】
ここで、画像生成回路53は、一般的には、超音波走査の走査線信号列を、テレビなどに代表されるビデオフォーマットの走査線信号列に変換し、表示用の2次元超音波画像を生成する。具体的には、画像生成回路53は、超音波プローブ11による超音波の走査形態に応じて座標変換を行なうことで、表示用の2次元超音波画像を生成する。
【0028】
画像メモリ54は、画像生成回路53が生成したBモード画像やカラードプラ画像を記憶する記憶回路である。
【0029】
タイマ55は、処理回路57により制御され、所定の時間をセットされて起動される。たとえば、タイマ55は、タイマ閾値Tthをセットされて起動されて計時開始後にタイマ閾値Tthだけ時間が経過すると、処理回路57に対してタイムアウト信号を出力し計時を停止する。
【0030】
記憶回路56は、磁気的もしくは光学的記録媒体または半導体メモリなどの、プロセッサにより読み取り可能な記録媒体を含んだ構成を有する。これら記憶媒体内のプログラムおよびデータの一部または全部は電子ネットワークを介した通信によりダウンロードされるように構成してもよい。
【0031】
処理回路57は、記憶回路56に記憶されたプログラムを読み出して実行することにより、生体組織画像に対応する生体断面と穿刺針12との位置関係をユーザが容易に把握することができるよう支援するための処理を実行するプロセッサである。
【0032】
表示制御回路58は、GPU(Graphics Processing Unit)およびVRAM(Video RAM)などを含み、処理回路57により制御されて、処理回路57から表示出力要求のあった画像をディスプレイ30に表示させる。表示制御回路58は、ディスプレイ30に表示される画像と同等の画像を操作パネル20のディスプレイに表示させてもよい。
【0033】
図3は、処理回路57のプロセッサによる実現機能例を示す概略的なブロック図である。
図3に示すように、処理回路57のプロセッサは、スキャン制御機能61、画像生成機能62、状態判定機能63および通知機能64を実現する。これらの各機能61−64は、それぞれプログラムの形態で記憶回路56に記憶されている。
【0034】
まず、これらの各機能61−64の概略について簡単に説明する。
【0035】
スキャン制御機能61と送受信回路50は、スキャン部70を構成する。スキャン部70は、アジマス方向およびエレベーション方向に沿って配列された超音波プローブ11の複数の超音波振動子のうちの少なくともいずれかを介して、エレベーション方向における音場が互いに異なる第1のスキャンおよび第2のスキャンを実行する。スキャン制御機能61は、送受信回路50を制御し、エレベーション方向の音場が互いに異なる第1のスキャンおよび第2のスキャンを実行させる。
【0036】
画像生成機能62は、第1のスキャンの結果を用いて第1の針強調画像を生成し、前記第2のスキャンの結果を用いて第2の針強調画像を生成する。また、画像生成機能62は、第1の針強調画像と前記第2の針強調画像とを合成することにより、穿刺支援情報として穿刺支援画像を生成する。また、画像生成機能62は、生体組織スキャンの結果を用いて生体組織画像を生成し、この生体組織画像と穿刺支援画像との合成画像を生成してディスプレイ30に表示させる。
【0037】
また、画像生成機能62は、第1の針強調画像および第2の針強調画像のいずれか一方の画像をディスプレイ30に表示させるモード(以下、切り替えモードという)を有するとともに、設定に応じて自動的に、またはユーザ指示に応じて手動で、第1の針強調画像および第2の針強調画像の一方の画像から他方の画像へ、ディスプレイ30に表示させる画像を切り替えてもよい。
【0038】
状態判定機能63は、穿刺針12が生体組織スキャンの音場からずれた位置にあるか否か、すなわちオフプレーン状態であるか否かを判定する。状態判定機能63は、たとえば、第1の針強調画像における所定の画素値以上の画素値をもつ画素数を、第2の針強調画像における所定の画素値以上の画素値をもつ画素数で除した割合が、所定の割合より小さいと、オフプレーン状態であると判定する。
【0039】
通知機能64は、状態判定機能63がオフプレーン状態であると判定すると、その旨の情報を穿刺支援情報として出力する。具体的には、通知機能64は、状態判定機能63がオフプレーン状態であると判定すると、ディスプレイ30にその旨の情報を示す画像を表示させ、あるいは図示しないスピーカを介してその旨の情報を示す音声またはビープ音などを出力させることにより、ユーザにオフプレーン状態である旨の情報を通知する。
【0040】
なお、穿刺支援画像の生成にあたっては、エレベーション方向における音場が互いに異なる複数のスキャンが行われればよく、3以上のスキャンが行われてもよい。
【0041】
以下の説明では、穿刺支援画像の生成にあたって第1のスキャンと第2のスキャンの2つのスキャンが行われる場合の例について示す。また、第1のスキャンと第2のスキャンのうち、エレベーション方向の幅が小さいスキャンを狭針強調スキャンといい、他方のスキャンを広針強調スキャンというものとする。
【0042】
次に、各機能61−64の詳細について、
図4−8を参照してより具体的に説明する。
【0043】
図4は、処理回路57のプロセッサにより、生体組織画像に対応する生体断面と穿刺針12との位置関係をユーザが容易に把握することができるよう支援する際の手順の一例を示すフローチャートである。
図4において、Sに数字を付した符号はフローチャートの各ステップを示す。
【0044】
なお、
図4においては、狭音場81が生体組織スキャンの音場に等しい場合、狭音場81は生体組織画像に対応する生体断面に等しい場合の例について説明する。
【0045】
まず、ステップS1において、スキャン部70は、エレベーション方向における音場の幅を所定の幅に設定して生体組織スキャンを実行する。画像生成機能62は、生体組織スキャンにより得られたエコー信号にもとづいて生体組織画像を生成する。なお、生体組織スキャンで用いられるこの所定の幅は、生体組織画像ができるだけ鮮明な画像となるように、フォーカスが絞られたものとすることが好ましい。
【0046】
次に、ステップS2において、スキャン部70は、狭針強調スキャンを実行する。そして、画像生成機能62は、狭針強調スキャンにより得られたエコー信号にもとづいて狭針強調画像を生成する。なお、狭針強調スキャンで用いられるエレベーション方向における音場の幅は、生体組織スキャンにおける所定の幅と実質的に等しい幅とするとよい。
【0047】
ここで、オフプレーン状態における穿刺支援画像の生成方法について説明する。
【0048】
図5(a)は、Bモードスキャンにおける超音波送受信方向と穿刺針12との位置関係の一例を示す説明図であり、(b)は、針強調スキャンにおける超音波送受信方向と穿刺針12との位置関係の一例を示す説明図である。なお、ここで針強調スキャンとは、上記第1のスキャンおよび第2のスキャンなどの、穿刺支援画像の生成にあたって行われるスキャンの総称であるものとする。また、
図5には、超音波プローブ11がリニア型である場合の例について示した。
【0049】
穿刺針12は、被検体Pの体表に対して垂直に刺し入れられるとは限らない。このため、
図5(a)に示すように、生体組織スキャンの一例としてのBモードスキャンでは、穿刺針12と超音波送受信方向とは直交しないことが多い。そこで、より強い穿刺針12のエコー信号を受信することができるよう、針強調スキャンでは、超音波プローブ11は穿刺針12と直交する方向に超音波を送受信する(
図5(b)参照)。針強調スキャンで得られたエコー信号に対してゲイン調整などを施すことにより、穿刺針12の画像のみが抽出された画像を生成することができる。
【0050】
なお、狭針強調画像および広針強調画像は、それぞれたとえば複数のステアリングアングル(たとえば15度、30度、45度の3つなど)の画像を取得し、これらの画像のうち穿刺針12からのエコー信号が最も強い1の画像を用いてもよい。また、針抽出処理は、ゲイン調整に限られず、たとえば狭針強調スキャンおよび広針強調スキャンのそれぞれの音場で同一のステアリングアングルで時系列に連続した複数の画像を取得し、これらの画像間の動きベクトルにもとづいて進行中の穿刺針12を抽出してもよい。
【0051】
図6(a)は狭針強調スキャンにおける狭音場81の一例を示す説明図であり、(b)は広針強調スキャンにおける広音場82の一例を示す説明図である。
【0052】
狭針強調スキャンでは、フォーカスを絞っているため、狭音場81に位置する穿刺針12の画像は非常にシャープに描出することができるものの(
図6(a)の実線参照)、狭音場81に入っていない穿刺針12の部分のエコー信号は受信することができない(
図6(a)の2点鎖線参照)。
【0053】
一方、広針強調スキャンでは、オフプレーン状態であっても、広音場82に入っている穿刺針12であればエコー信号を受信することができるが、フォーカスが甘いために、穿刺針12の画像がぼけてしまう(
図6(b)の点線参照)。なお、広音場82は、狭音場81よりもエレベーション方向に広ければよく、広音場82は狭音場81に比べてフォーカスを弱くすることによって実現される音場のみならず、超音波を拡散させることによって実現される音場も含まれる。
【0054】
図7は、オフプレーン状態において狭針強調画像と広針強調画像を合成することにより生成される穿刺支援画像と狭音場81および広音場82との関係を説明するための図である。
【0055】
オフプレーン状態では、狭針強調画像のみでは描出される穿刺針12の画像が小さすぎるため、ユーザは穿刺針12の位置を把握することが難しい。そこで、本実施形態に係る画像生成機能62は、オフプレーン状態では、狭針強調画像と広針強調画像を合成することにより穿刺支援画像を生成する。
【0056】
このため、
図4のステップS2で狭針強調スキャンを実行して狭針強調画像を生成した後、ステップS3において、スキャン制御機能61は、1つ前のステップS1―S12の実行時に広針強調スキャンが実行されたか否かを判定する。広針強調スキャンが実行されており(ステップS3のYES)、かつそのときオフプレーン状態であった場合は(ステップS4のYES)、ステップS5において、スキャン部70は広針強調スキャンを実行する。画像生成機能62は、広針強調スキャンの結果を用いて広針強調画像を生成する。また、広針強調スキャンを実行すると、スキャン制御機能61は、タイマ閾値Tthをセットしてタイマ55を起動し、タイマ55に計時を開始させる。すでにタイマ55が起動されて計時を行っているときは、スキャン制御機能61は、タイマ55をリセットして再度タイマ閾値Tthをセットしてタイマ55に計時を開始させる。タイマ55の計時情報は、ステップS10から再びステップS1に戻った次回以降の手順において利用される。
【0057】
次に、ステップS6において、画像生成機能62は、狭針強調画像と広針強調画像を合成することにより穿刺支援画像を生成する。このとき、画像生成機能62は、広針強調画像よりも狭針強調画像のほうが優先されるように穿刺支援画像を生成する。
【0058】
次に、ステップS7において、状態判定機能63は、穿刺針12が生体組織スキャンの音場でもある狭音場81からずれた位置にあるか否か、すなわちオフプレーン状態であるか否かを判定する。具体的には、状態判定機能63は、狭針強調画像における所定の画素値以上の画素値をもつ画素数を、広針強調画像における所定の画素値以上の画素値をもつ画素数で除した割合が、所定の割合より小さいと、オフプレーン状態であると判定する。ここで、所定の画素値とは、生体組織のエコー信号を排除して穿刺針12のエコー信号を抽出することができる画素値とするとよい。また、所定の割合としては、たとえば80%〜100%の範囲のいずれかを用いるとよい。状態判定機能63は、この判定結果の情報をたとえば記憶回路56に記憶させておく。状態判定機能63がオフプレーン状態であると判定すると、ステップS8に進む。一方、オフプレーン状態ではないと判定すると、ステップS9に進む。
【0059】
次に、ステップS8において、通知機能64は、ディスプレイ30にその旨の情報を示す画像を表示させ、あるいは図示しないスピーカを介してその旨の情報を示す音声を出力させ、あるいはその両者を実行することにより、ユーザにオフプレーン状態である旨の情報を通知する。また、超音波プローブ11が2Dアレイプローブである場合は、状態判定機能63は、狭音場81に対する穿刺針12の位置を把握することができる。この場合、通知機能64は、オフプレーン状態を解消するために超音波プローブ11を動かすべき並進方向および回転方向の情報をディスプレイ30に表示させ、あるいはスピーカに音声出力させ、あるいはその両者を実行するとよい。
【0060】
図8は、穿刺支援画像および合成画像の一例を説明するための図である。
図8には、生体組織画像としてBモード画像を用いる場合の例を示した。
【0061】
次に、ステップS9において、画像生成機能62は、生体組織画像と穿刺支援画像とを合成した合成画像を生成し、ディスプレイ30にこの合成画像を表示させる(
図8下段参照)。
【0062】
図7に示すように、狭針強調画像に含まれた穿刺針12の画像はシャープに描出される一方、広針強調画像に含まれた穿刺針12の画像はぼやけて描出される。このため、ユーザは、狭針強調画像と広針強調画像を合成することにより生成された穿刺支援画像を確認することにより、容易に穿刺針12と狭音場81および広音場82との位置関係を把握することができる。したがって、ユーザは穿刺支援画像を確認しながら、広針強調画像の占める割合が少なくなるように超音波プローブ11を回転させることにより、容易に穿刺針12を狭音場81に位置させてオフプレーン状態を解消することができる。オフプレーン状態を解消することにより、ユーザは穿刺術において穿刺針12の鮮明な画像を得ることができる。また、オフプレーン状態を解消することにより、ユーザは穿刺針12を生体組織画像の生体断面内で刺入することができるため、施術の安全性および確実性を大幅に向上させることができる。
【0063】
また、
図8の中段左に示すように、画像生成機能62は、狭針強調画像に含まれた穿刺針12の画像の表示態様(たとえば
図8の穿刺支援画像のドットハッチング参照)と、広針強調画像に含まれた穿刺針12の画像の表示態様(たとえば
図8の穿刺支援画像の斜線ハッチング参照)と、を異ならせて穿刺支援画像を生成するとよい。
【0064】
狭針強調画像と広針強調画像とで表示態様を異ならせる場合、ユーザは、穿刺針12の画像の表示態様を確認することにより、より容易に穿刺針12と狭音場81および広音場82との位置関係を把握することができる。したがって、この場合、ユーザは穿刺支援画像を確認することにより、生体組織画像に対応する生体断面と穿刺針12との位置関係を容易に把握することができる。
【0065】
より具体的には、画像生成機能62は、たとえば狭針強調画像については生体組織画像とおなじカラーマップ(たとえば輝度値が増えるにともない黒から白に変わるカラーマップなど)を用いて各画素の画素値を決定する一方、広針強調画像については異なるカラーマップ(たとえば輝度値が増えるにともない青から赤に変わるよう色付けするカラーマップ)を用いて各画素の画素値を決定するとよい。この場合、穿刺支援画像において広針強調画像が利用される割合が高いほど、すなわち穿刺針12が狭音場81からずれるほど、穿刺針12の画像のうち色付けされた部分が多くなる。色付けを行なうことにより、ユーザはさらに容易に穿刺針12と狭音場81および広音場82との位置関係を把握することができる。このとき、画像生成機能62はさらに、狭針強調画像および広針強調画像のそれぞれのカラーマップの意味を示す情報をディスプレイ30に表示させてもよい。
【0066】
ここで、ステップS6における画像生成機能62による穿刺支援画像の生成方法について、より詳細に説明する。
【0067】
広針強調画像よりも狭針強調画像のほうが優先されるように穿刺支援画像を生成する第1の方法は、画素ごとに狭針強調画像の輝度値と広針強調画像の輝度値とを比較して、輝度値が大きい方を穿刺支援画像の各画素の輝度値として用いることにより、穿刺支援画像を生成する方法である。狭針強調画像における穿刺針12の画像のほうが、フォーカスが合っているぶん、広針強調画像における穿刺針12の画像よりも輝度が高くなると考えられる。したがって、第1の方法によって広針強調画像よりも狭針強調画像のほうが優先されるように穿刺支援画像を生成することができる。
【0068】
第2の方法は、広針強調画像よりも狭針強調画像が優先されるように、狭針強調画像および広針強調画像の少なくとも一方の輝度値に重みをかける方法である。この方法は、第1の方法と組み合わせて用いることができる。具体的には、まず第2の方法により狭針強調画像が広針強調画像よりも強調されるように画素値に重みを掛けたあとで、各画素の輝度値の比較を行なうことにより、より確実に狭針強調画像を優先することができる。
【0069】
第3の方法は、広針強調画像よりも狭針強調画像が優先されるように、広針強調画像に対して狭針強調画像よりも高い透過度を与えてから合成する方法である。この場合、狭針強調画像のほうが低い透過度となり視認性が高くなるため、穿刺支援画像において狭針強調画像が優先される。この方法は、第1の方法および第2の方法と組み合わせることができる。たとえば、第2の方法で重み付けするとともに第3の方法で透過度を施してから、第1の方法で輝度値の比較を行うことで、穿刺針12の画像のうち狭針強調画像が採用される部分は低透過度かつ高輝度で表示される一方、当該部分に対して広針強調画像が採用される部分は高透過度かつ低輝度で表示される。
【0070】
以上の第1−第3の方法は、狭針強調画像および広針強調画像のそれぞれが生体組織の画像が残存した画像であっても適用可能である。
【0071】
さらに、狭針強調画像および広針強調画像のそれぞれが、エコー信号に対してゲイン調整などを施すことによって穿刺針12の画像のみが抽出された画像である場合には、第4の方法として、狭針強調画像が広針強調画像の上に重なるように穿刺支援画像を生成する方法を用いてもよい。この方法は、たとえば第1−第3の方法のいずれとも組み合わせることができるし、第1−第4の全ての方法を組み合わせてもよい。
【0072】
これらの第1−第4の方法は、生体組織画像と穿刺支援画像との合成画像を生成する際にも、狭針強調画像を生体組織画像に、広針強調画像を穿刺支援画像に、それぞれ読み替えることで適用することができる。
【0073】
また、画像生成機能62が穿刺支援画像を生成する際に利用する方法は、広針強調画像よりも狭針強調画像のほうが優先されるように穿刺支援画像を生成することができる方法であればよく、これらの第1−第4の方法に限られない。
【0074】
図4に戻って、合成画像を表示すると、ステップS10において終了判定を行い、超音波スキャンを終了すべきでない場合は、ステップS1にもどる。一方、ユーザにより超音波スキャンを終了すべき旨の指示があった場合など終了すべき場合は、一連の手順は終了となる。
【0075】
ステップS10からステップS1に戻った場合、ステップS3において1つ前のステップS1―S12の実行時に広針強調スキャンが実行されずに省略されて狭針強調スキャンのみが実行されたと判定されると(ステップS3のNO)、ステップS11に進む。
【0076】
ステップS11では、スキャン制御機能61は、前回広針強調スキャンが実行されてから所定時間以上経過したか否かを判定する。具体的には、スキャン制御機能61は、タイマ閾値Tthをセットされたタイマ55からタイムアウト信号が出力されたか否かを判定する。
【0077】
前回広針強調スキャンが実行されてから所定時間以上経過していない場合は(ステップS11のNO)、ステップS12に進む。また、1つ前のステップS1―S12の実行時に広針強調スキャンが実行された場合であっても(ステップS3のYES)、そのときオフプレーン状態ではなかった場合も(ステップS4のNO)、ステップS12に進む。そして、ステップS12において画像生成機能62は今回のステップS2で生成した狭針強調画像のみから穿刺支援画像を生成し、ステップS9に進んで合成画像を生成する。この場合、広針強調スキャンの実行が省略される。広針強調スキャンを省略することにより、合成画像を表示するフレームレートを向上させることができる。
【0078】
他方、前回広針強調スキャンが実行されてから所定時間以上経過した場合は(ステップS11のYES)、ステップS5に進み、スキャン制御機能61が広針強調スキャンを実行する。前回広針強調スキャンが実行されてから所定時間以上経過した場合は、一度オフプレーン状態を解消してから所定時間以上経過したことを意味する。この場合は、再度オフプレーン状態になってしまっている可能性がある。
【0079】
そこで、前回広針強調スキャンが実行されてから所定時間以上経過した場合は(ステップS11のYES)、オフプレーン状態になってしまっているか否かの確認のため、広針強調スキャンを実行し(ステップS5)、狭針強調画像と広針強調画像を合成して穿刺支援画像を生成した後(ステップS6)、オフプレーン状態であるか否かを判定する(ステップS7)。
【0080】
もしオフプレーン状態になってしまっているのであれば(ステップS7のYES)、ユーザはステップS6、S8で通知機能64が出力する穿刺支援情報により、オフプレーン状態になってしまったことを即座に把握することができる。すなわち、ユーザは、たとえば合成画像に表示された広針強調画像に由来する穿刺針12の画像を確認することにより、あるいは音声または画像によるオフプレーン状態である旨の情報の通知により、オフプレーン状態になってしまったことを即座に把握することができる。一方、オフプレーン状態が解消されているままであれば(ステップS7のNO)、ステップS8−S10を実行後、再度ステップS1に戻ってステップS3でYESと判定された後、ステップS4で前回オフプレーン状態ではなかったと判定されてステップS12に進む。したがって、オフプレーン状態が解消されていれば、次回の合成画像生成処理から直ちに広針強調スキャン(ステップS5)を省略してフレームレートを回復することができる。
【0081】
なお、
図4には、穿刺支援情報として、穿刺支援画像の出力(ステップS6、S12)およびオフプレーン状態である旨の通知出力(ステップS8)の両方を行う場合の例を示したが、いずれか一方は省略されてもよい。
【0082】
また、
図4に示す手順の途中で、狭針強調画像および広針強調画像のいずれか一方の画像をディスプレイ30に表示させる切り替えモードへ移行してもよいし、切り替えモードから
図4に示す手順に戻ってもよい。
【0083】
切り替えモードでも、たとえば次の手順によれば、ユーザが穿刺針12を見失うおそれを低減させることができる。狭針強調画像と生体組織画像との合成画像を確認しながら手技を行っていると仮定する。オフプレーン状態となってしまい当該合成画像上で穿刺針12が確認しづらくなったとき、切り替えモードでは、ユーザは狭針強調画像から広針強調画像へディスプレイ30に表示させる画像を切り替えることができる。ユーザは、たとえば超音波プローブ11に設けられたダイヤルやボタン等の入力回路などを介して切り替え指示を行うことができる。ユーザは、広針強調画像に描出された穿刺針12の画像により、穿刺針12を見失いづらくなる。また、ユーザは、広針強調画像にもとづいて超音波プローブ11の位置を調整することもできる。
【0084】
以上説明した少なくとも1つの実施形態によれば、生体組織画像に対応する生体断面と穿刺針12との位置関係をユーザが容易に把握することができるよう支援することができる。
【0085】
なお、本実施形態における送受信回路50および処理回路57は、それぞれ特許請求の範囲における送受信部および処理部の一例である。
【0086】
また、上記実施形態に係る「プロセッサ」という文言は、たとえば、専用または汎用のCPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、あるいは、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、プログラマブル論理デバイス(たとえば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、およびフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA))等の回路を意味する。プロセッサは、記憶回路に保存されたプログラムを読み出して実行することにより、各種機能を実現する。
【0087】
また、記憶回路にプログラムを保存するかわりに、プロセッサの回路内にプログラムを直接組み込むよう構成してもよい。この場合、プロセッサは回路内に組み込まれたプログラムを読み出して実行することで各種機能を実現する。また、上記実施形態では単一の処理回路が各機能を実現する場合の例について示したが、複数の独立したプロセッサを組み合わせて処理回路を構成し、各プロセッサがプログラムを実行することにより各機能を実現してもよい。また、プロセッサが複数設けられる場合、プログラムを記憶する記憶媒体は、プロセッサごとに個別に設けられてもよいし、1つの記憶回路が全てのプロセッサの機能に対応するプログラムを一括して記憶してもよい。
【0088】
なお、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。