(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1の導電層と前記第2の導電層の前記エッチングは、前記第1の導電層が順テーパー構造を有し、前記第2の導電層が逆テーパー構造を有するように行う、請求項6に記載の製造方法。
前記第1の導電層と前記第2の導電層の前記エッチングは、前記第1の導電層が順テーパー構造を有し、前記第2の導電層が逆テーパー構造を有するように行う、請求項10に記載の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の各実施形態について、図面等を参照しつつ説明する。但し、本発明は、その要旨を逸脱しない範囲において様々な態様で実施することができ、以下に例示する実施形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
【0010】
図面は、説明をより明確にするため、実際の態様に比べ、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。本明細書と各図において、既出の図に関して説明したものと同様の機能を備えた要素には、同一の符号を付して、重複する説明を省略することがある。
【0011】
本明細書と請求項において、ある一つの膜を加工して複数の膜を形成した場合、これら複数の膜は異なる機能、役割を有することがある。しかしながら、これら複数の膜は同一の工程で同一層として形成された膜に由来し、同一の材料を有する。したがって、これら複数の膜は同一層に存在しているものと定義する。
【0012】
本明細書および請求項において、ある構造体の上に他の構造体を配置する態様を表現するにあたり、単に「上に」と表記する場合、特に断りの無い限りは、ある構造体に接するように、直上に他の構造体を配置する場合と、ある構造体の上方に、さらに別の構造体を介して他の構造体を配置する場合との両方を含むものとする。
【0013】
本明細書および請求項において、「ある構造体が他の構造体から露出するという」という表現は、ある構造体の一部が他の構造体によって覆われていない態様を意味し、この他の構造体によって覆われていない部分は、さらに別の構造体によって覆われる態様も含む。
【0014】
<第1実施形態>
[1.全体構成]
本発明の一実施形態の表示装置100の模式的斜視図を
図1に示す。表示装置100は、発光素子を表示素子として含む有機エレクトロルミネッセンス(EL:Electro−Luminescence)表示装置である。
【0015】
図1に示すように表示装置100は、表示領域108、および走査線駆動回路110が配置された第1の基板102と、表示領域108および走査線駆動回路110を覆うように配置された第2の基板104を備えている。表示領域108や走査線駆動回路110からは図示しない配線が第1の基板102の一辺へ延び、第1の基板102の端部で露出されて端子114を形成する。端子114はフレキシブル印刷回路基板(FPC)116と電気的に接続することができ、FPC116上には画素回路を制御するためのドライバIC112を搭載することができる。なお、ドライバIC112はFPC116上に設けずに第1の基板102上に搭載してもよく、ドライバIC112の替わりに駆動回路を第1の基板102上に形成してもよい。
【0016】
表示領域108には、複数の画素106がマトリクス状に配置される。各画素106には発光素子と発光素子を制御するための画素回路が設けられる。画素回路はトランジスタおよび容量などの種々の半導体素子を含み、走査線駆動回路110やドライバIC112を介して外部回路(図示せず)から供給される信号によって制御される。発光素子から得られる発光を制御することによって、表示領域108に画像が表示される。
【0017】
図2に、画素回路の一例を等価回路として示す。ここで示した例では、各画素回路は、走査線駆動回路110から延伸する第1の走査線120、第2の走査線122、第3の走査線124、およびドライバIC112側から延伸する映像信号線126や電源線128などの配線と電気的に接続される。画素回路は、スイッチングトランジスタ130、出力トランジスタ132、リセットトランジスタ133、駆動トランジスタ134の四つのトランジスタ、および保持容量140、補助容量142の二つの容量を半導体素子として有している。これらは、上述した配線と直接、あるいは間接的に接続される。こられの半導体素子によって発光素子150が制御される。ここでは、発光素子150の陽極側には、電源線128に接続された高電位PVDDから電流が供給される。供給された電流は発光素子150の発光に寄与し、陰極側に接続された低電位PVSSへと流れる。図示しないが、画素回路は
図2に示した構成に限られず、様々な構造を有する画素回路を表示装置100に適用することができる。
【0018】
[2.断面構造]
画素106の断面構造を用いて表示装置100の構造を説明する。
図3に示す模式的断面図では、
図2に示した画素回路のうち、発光素子150、駆動トランジスタ134、保持容量140、および補助容量142の断面が模式的に示されている。
【0019】
2−1.画素回路
第1の基板102は、この上に形成される画素回路を支持する機能を有し、ガラスや石英、あるいは高分子を含むことができる。第2の基板104も第1の基板102と同様の材料を含むことができる。第1の基板102や第2の基板104にポリイミドやポリアミド、ポリカーボナートなどの高分子を用いることで、表示装置100に可撓性を付与することができ、いわゆるフレキシブルディスプレイを提供することも可能である。
【0020】
駆動トランジスタ134や保持容量140は、アンダーコート160を介して第1の基板102上に配置される。アンダーコート160は、第1の基板102からの不純物を防止したり、特に第1の基板102が高分子である場合などは、外部からの水分侵入を防止する役割を含む。アンダーコート160には、例えばケイ素を含む無機化合物を用いることができる。具体的には、窒化ケイ素膜、酸化ケイ素膜、窒化酸化ケイ素膜、酸化窒化ケイ素膜から選ばれた一を含む無機膜で形成される。
図3ではアンダーコート160は単層構造を有する様に記載されているが、前述の膜の積層で形成されてもよい。
【0021】
駆動トランジスタ134は、半導体膜162、半導体膜162上のゲート絶縁膜164、ゲート絶縁膜164上のゲート電極166、ゲート電極166上の第1の層間膜168、第1の層間膜168上のソース/ドレイン電極170、172などを有する。半導体膜162は活性領域162a、活性領域162aを挟持する低濃度不純物領域162b、およびこれらを挟持する高濃度不純物領域162cなどを有することができる。
図3では駆動トランジスタ134はトップゲート構造のトランジスタとして描かれているが、画素回路に設けられるトランジスタの構造に制約はなく、種々の構造のトランジスタを利用することができる。
【0022】
保持容量140は、半導体膜162の一部(高濃度不純物領域162c)、その上のゲート絶縁膜164、ゲート電極166と同一層に存在する容量電極174、容量電極174上の第1の層間膜168、およびソース/ドレイン電極172の一部によって構成される。ここでゲート絶縁膜164と第1の層間膜168は保持容量140の誘電体として機能する。
【0023】
駆動トランジスタ134や保持容量140の上には、任意の構成として第2の層間膜176を設けてもよい。アンダーコート160、ゲート絶縁膜164、第1の層間膜168、第2の層間膜176は、酸化ケイ素や窒化ケイ素、酸化窒化ケイ素、窒化酸化ケイ素などを含むことができる。これらの膜は単層構造を有していてもよく、積層構造を有していてもよい。
【0024】
駆動トランジスタ134や保持容量140の上にはさらに、平坦化膜178が設けられる。平坦化膜178によって駆動トランジスタ134や保持容量140などの半導体素子に起因する凹凸が吸収され、平坦な面を与えることができる。平坦化膜178は高分子を含むことができ、高分子としてはアクリル樹脂やエポキシ樹脂、ポリシロキサン、ポリイミド、ポリアミドなどが例示される。
【0025】
平坦化膜178や第2の層間膜176には、ソース/ドレイン電極172に達する開口が設けられ、この開口と平坦化膜178の一部を覆う接続電極180がソース/ドレイン電極172と接するように設けられる。平坦化膜178上にはさらに、補助容量電極182が設けられ、接続電極180と補助容量電極182を覆うように絶縁膜184が形成される。絶縁膜184は、平坦化膜178に設けられた開口では接続電極180の一部を覆わず、接続電極180の底面を露出する。これにより、その上に設けられる画素電極152と接続電極180間の電気的接続が可能となる。絶縁膜184には、その上に設けられる隔壁190と平坦化膜178の接触を許容するための開口186を設けてもよい。絶縁膜184は上述したケイ素含有無機化合物を用いることができ、典型的には窒素、酸素、ケイ素を含む窒化ケイ素が用いられる。なお、接続電極180や開口186の形成は任意である。接続電極180を設けることで、引き続くプロセスにおいてソース/ドレイン電極172の表面の酸化を防止することができ、これによる接触抵抗の増大を抑制することができる。開口186は、平坦化膜178から水や酸素などの不純物を放出するための開口として機能することができ、これを設けることで画素回路中の半導体素子や発光素子150の信頼性を向上させることができる。
【0026】
絶縁膜184上には、接続電極180と補助容量電極182を覆うように、発光素子150の画素電極152が設けられる。画素電極152は、平坦化膜178に設けられる開口において、接続電極180を介してソース/ドレイン電極172と電気的に接続される。絶縁膜184は補助容量電極182と画素電極152によって挟持され、この構造によって補助容量142が構築される。補助容量142、および保持容量140が有する容量により、ゲート電極166の電位を安定化させることができる。画素電極152は、補助容量142と発光素子150によって共有される。
【0027】
2−2.発光素子
画素電極152の上には、画素電極152の端部を覆う隔壁190が設けられる。画素電極152は、隔壁190に覆われた部分以外は隔壁190から露出している。換言すると、隔壁190は開口部を有する絶縁膜であり、開口部において画素電極152は隔壁190から露出され、後述する電界発光層154と接する。隔壁190はアクリル樹脂やエポキシ樹脂などの高分子を含むことができ、隣接する画素106間を電気的に絶縁するとともに、平坦化膜178に設けられた開口や補助容量電極182、画素電極152などに起因する凹凸を吸収する機能を有する。
【0028】
画素電極152の端部の構造を
図4に示す。
図4は
図3における領域192の拡大図である。
図4に示すように、画素電極152は三層構造を有する。具体的には、画素電極152は、絶縁膜184の上面に接する第1の導電層152a、第1の導電層152a上で第1の導電層152aと接する第2の導電層152b、および第2の導電層152b上で第2の導電層152bと接する第3の導電層152cによって構成される。
【0029】
第1の導電層152aは導電性を有し、かつその下に位置する絶縁膜184に対し、良好な接着性を有する材料を含むことが好ましい。さらに、第3の導電層152cに含まれる材料と比較して、同条件下、同一のエッチャントを用いた場合のエッチング速度が大きい材料を含むことが好ましい。好ましくは、第1の導電層152aのエッチング速度は、第3の導電層152cのそれの3倍以上50倍以下、3倍以上20倍以下、あるいは3倍以上15倍以下である。具体的には、インジウム、および亜鉛を含む導電性酸化物(IZO)を第1の導電層152aに用いることができる。インジウムと亜鉛の組成比は任意であり、この組成比は必ずしも実質的に整数比である必要は無い。上述したエッチャントとしては、リン酸、酢酸、および硝酸を含む水溶液、シュウ酸水溶液などが挙げられる。前者は混酸とも呼ばれ、例えば、リン酸が30vol%〜70vol%、硝酸が0.3vol%〜10vol%、酢酸が20vol%〜50vol%の範囲で調製される。
【0030】
第1の導電層152aは比較的大きな厚さを有することができる。具体的には、後述する第1の導電層152aと第2の導電層152cのエッチング後において、30nm以上100nm以下、40nm以上100nm以下、あるいは50nm以上100nm以下、典型的には50nmの厚さを有するように、第1の導電層152aが形成される。後述するように、第2の導電層152bには銀、あるいはその合金を用いることができる。しかしながら、絶縁膜184に窒化ケイ素が含まれる場合、銀と窒化ケイ素は接着力が弱い。このため、第1の導電層152aを用いずに第2の導電層152bを絶縁膜184上に形成すると、画素電極152の剥離が生じやすい。これに対し、IZOなどの酸化物は比較的窒化ケイ素との接着力が高いため、第1の導電層152aを用いることで、画素電極152の剥離を防止することができる。また、上述した厚さで第1の導電層152aを形成することで、絶縁膜184との高い接着力を得ることができる。
【0031】
第2の導電層152bは、可視光に対する反射率が高いことが好ましく、例えば0価の銀やアルミニウム、あるいはこれらの合金を含むことができる。第2の導電層152bの厚さは、100nm以上200nm、120nm以上160nm、あるいは120nm以上140nm、典型的には130nmとすることができる。このような厚さは可視光の透過を許容しないため、第2の導電層152bは高い反射率を示す。このため、発光素子150から得られる発光が効率よく反射し、第2の基板104を通して取り出すことが可能となる。
【0032】
第3の導電層152cは可視光に対して透過性を有し、典型的にはITOを含むことができる。第1の導電層152aの厚さは5nm以上25nm以下、あるいは10nm以上20nm以下、典型的には15nmとすることができる。第3の導電層152cの厚さは、第1の導電層152aの厚さよりも小さくすることが好ましく、第3の導電層152cの厚さの1/5以上1/2以下、1/4以上1/2以下、あるいは1/4以上1/3以下とすることができる。例えば第1の導電層152aの厚さが50nmの時、第3の導電層152cの厚さを15nmに設定することができる。
【0033】
また、端部が順テーパー構造を有するよう、第1の導電層152aを形成することができる。すなわち第1の導電層152aの端部のテーパー角θ1が0°よりも大きく、90°よりも小さくなるよう、第1の導電層152aを形成することができる。ここで、膜のテーパー角とは、互いに接するように積層された二つの膜の断面において、二つの膜が共有する辺(以下、共有辺)と、上側の膜の側面が形成する角度を意味する。この角度が0°より大きく90°よりも小さい時、上側の膜は順テーパー構造を有すると定義する。逆に、この角度が90°よりも大きく180°よりも小さい場合、上側の膜は逆テーパー構造を有すると定義する。したがって
図4の拡大断面図に示すように、第1の導電層152aとその下側の絶縁膜184の共有辺は、図中の点線の楕円で囲った辺であり、共有辺と第1の導電層152aの側面がなす角度がテーパー角θ1である。上述したように、θ1は0°よりも大きく、90°よりも小さくすることができる。
【0034】
一方、第2の導電層152bは、逆テーパー構造を有することができ、そのテーパー角θ2は90°よりも大きく180°よりも小さくすることができる。なお、第1の導電層152a、第2の導電層152bは、これらの全体が第3の導電層152cに覆われるよう、画素電極152を形成してもよい。この場合、
図4に示すように、第3の導電層152cの端部と比較し、第1の導電層152a、第2の導電層152bの端部は隔壁190の開口部191により近く位置する。換言すると、第3の導電層152cの端部を通る法線194が第1の導電層152a、第2の導電層152bと交差、あるいは貫通しないよう、画素電極152を形成することができる。
【0035】
なお、第1の導電層152aや第2の導電層152bの側面は、必ずしも
図4に示すように断面において直線を与える必要は無い。例えば
図5に示すように、これらの側面は曲面でも良く、断面において曲線によって表されてもよい。この場合、断面における側面上の任意の接線と共有辺とのなす角がテーパー角となる。
【0036】
図3を参照すると、画素電極152、隔壁190を覆うように発光素子150の電界発光層(以下、EL層)154、およびその上の対向電極156が設けられる。画素電極152、EL層154、対向電極156によって発光素子150が形成される。本明細書と請求項においてEL層154とは、画素電極152と対向電極156の間に設けられる層全体を指す。画素電極152と対向電極156からEL層154に電荷(電子、ホール)が注入され、電荷の再結合によって生じる励起状態からの輻射失活過程により発光が得られる。
【0037】
図3では、EL層154は単層の構造を有するように示されているが、EL層154は複数の層から構成することができ、例えば電荷注入層、電荷輸送層、発光層、電荷ブロック層、励起子ブロック層など、種々の機能を有する層を組み合わせて形成することができる。EL層154の構造は、すべての画素106間で同一でも良く、隣接する画素106間で構造が異なるようにEL層154を形成してもよい。例えば発光層の構造や材料を隣接する画素106間で異なるようにEL層154を形成することで、隣接する画素から異なる発光を得ることができる。すべての画素106において同一のEL層154を用いる場合には、第2の基板104にカラーフィルタを設けることで、複数の発光色を得ることが可能となる。
【0038】
対向電極156は可視光に対して透過性を有し、例えばITOやIZOなどの透光性を有する導電性酸化物を用いて形成することができる。あるいは銀やアルミニウム、あるいはこれらの合金を可視光が透過可能な厚さで形成することで、対向電極156を形成してもよい。
【0039】
2−3.その他の構成
任意の構成として、発光素子150上に保護膜(以下、パッシベーション膜)200を設けてもよい。パッシベーション膜200の構造は任意に選択することができるが、例えば
図3に示すように、無機化合物を含む第1の層202、有機化合物を含む第2の層204、および無機化合物を含む第3の層206を含む積層構造をパッシベーション膜200に適用することができる。この場合、無機化合物としては上述したケイ素を含有する無機化合物を使用することができる。有機化合物としては、エポキシ樹脂やアクリル樹脂などの高分子を使用することができる。
【0040】
第2の基板104はシール材210を用いて、発光素子150や画素回路を挟持するよう、第1の基板102に固定される。これにより、発光素子150や画素回路が封止される。
【0041】
上述したように、表示装置100の画素106の画素電極152では、第1の導電層152aの厚さが比較的大きい。したがって、第1の導電層152aと、これと接する絶縁膜184との間で高い密着性を確保することができる。このため、表示装置100の製造プロセスにおいて画素電極152のすべて、あるいは一部が剥離することがなく、断線や異物の発生による不良を効果的に抑制することができ、表示装置100の歩留りや信頼性を向上させることができる。
【0042】
一方、第3の導電層152cは、上述したように第2の導電層152bにおいて反射した光を透過する機能を有し、ITOやIZOなどを含むことができる。しかしながら、ITOやIZOは可視光領域にある程度の吸収を有する。このため、上述したように第3の導電層152cの厚さを小さくすることで、第3の導電層152cによる吸収の影響を小さくすることができる。その結果、発光素子150の効率低下を防ぐことができ、表示装置100の消費電力を低減することができる。また、第3の導電層152cの厚さを小さくすることで、EL層154と第2の導電層152b間の光学距離を小さくすることができる。このため、EL層154からの発光の干渉に対する第3の導電層152cの寄与を小さくすることができ、発光素子150の光学設計をEL層154の構造によって容易に行うことができる。
【0043】
さらに第2実施形態で述べるように、第1の導電層152aに含まれる材料と第3の導電層152cに含まれる材料のエッチング速度を上述したように調整することで、エッチング工程に起因する異物の発生を効果的に抑制することができる。このため、本実施形態を適用することで、高い信頼性を有する表示装置を歩留まり良く製造することが可能となる。
【0044】
<第2実施形態>
本実施形態では、表示装置100の製造方法に関し、主に画素電極152の作製方法を中心に説明する。第1実施形態と同様の構成については説明を割愛することがある。
【0045】
図6(A)は
図3に対応する断面図であり、ここでは第1の基板102上に駆動トランジスタ134と保持容量140、およびこれらの上に平坦化膜178までが形成された状態が示されている。駆動トランジスタ134や保持容量140、および平坦化膜178は、既に知られた材料、方法を適用して形成できるため、説明は割愛する。
【0046】
[1.補助容量]
平坦化膜178に対してエッチングを行い、ソース/ドレイン電極172を露出するための開口を形成する。その後、この開口を覆い、ソース/ドレイン電極172と接するように、平坦化膜178上に接続電極180を形成する(
図6(B))。接続電極180は、ITOやIZOなどの導電性を有する導電性酸化物を用い、スパッタリング法によって形成すればよい。
【0047】
引き続き、補助容量電極182を平坦化膜178上に形成する(
図7(A))。補助容量電極182は、チタンやタングステン、モリブデン、アルミニウム、銅などを含むことができ、単層構造、あるいは積層構造で形成することができる。典型的には、スパッタリング法、あるいは有機金属化学気相堆積法(MOCVD法)などを適用して補助容量電極182が形成される。
【0048】
補助容量電極182上には、補助容量142の誘電体として機能する絶縁膜184を形成する。絶縁膜184は化学気相堆積法(CVD法)を適用して形成すればよく、上述したように、窒化ケイ素などのケイ素含有無機化合物を含むことができる。絶縁膜184は接続電極180や補助容量電極182を覆うように形成されたのちエッチングに供され、これにより、接続電極180の底面が露出され、開口186が形成される。ここまでの工程により、補助容量142の補助容量電極182と絶縁膜184が形成される。
【0049】
[2.画素電極]
その後、絶縁膜184上に、画素電極152を形成する。具体的には、第1の導電層152aを絶縁膜184に接するように形成する。この時、第1の導電層152aは接続電極180、およびソース/ドレイン電極172と接するように形成される(
図7(B))。例えば第1の導電層152aは、IZOをターゲットとして用いるスパッタリング法を適用し、第1実施形態で述べた厚さで形成すればよい。
【0050】
次に、
図7(B)の点線で囲った領域の拡大図(
図8(A))に示すように、第1の導電層152a上に第2の導電層152b、第3の導電層152cを順次形成する。第2の導電層152bは、例えば銀あるいはその合金を含むことができ、蒸着法、スパッタリング法、あるいはMOCVD法などを適用して形成される。第3の導電層152cは、例えばITOをターゲットとして用いるスパッタリング法を適用し、第1実施形態で述べた厚さで形成することができる。
【0051】
引き続き、レジスト158を第3の導電層152cに接するように形成する(
図8(B))。このレジスト158のパターンは、画素電極152の形状に対応する。続いてレジスト158をマスクとして用い、第3の導電層152cを優先的にパターニングする(
図8(C))。この例では、シュウ酸をエッチャントとして用いるウエットエッチングにより、第3の導電層152cをパターニングする。ここで、銀のシュウ酸におけるエッチング速度と比較してITOのそれは大幅に大きい。このため、レジスト158から露出された領域では、第2の導電層152b、およびこれに覆われる第1の導電層152aはほとんどエッチングされず、ほぼ初期の形状を保つのに対し、第3の導電層152cが優先的にパターニングされる。
【0052】
次に、レジスト158を除去し(
図9(A))、露出した第3の導電層152cをマスクとして第2の導電層152bと第1の導電層152aに対して同時にエッチングを行う。具体的には、混酸をエッチャントとして用いてエッチングを行う。銀は混酸によってエッチングを受けると同時に、第3の導電層を形成するITOも混酸に曝されてエッチングを受けるが、ITOのエッチング速度は銀やIZOのそれよりも小さいため、第3の導電層152cの厚さの減少は生じるものの、その面積はほとんど変化せず、第2の導電層152bが優先的にパターニングされる。一方、IZOの混酸によるエッチング速度はITOのそれと比較して大きい。このため、第1の導電層152aの厚さが第3の導電層152cと比較して大きい場合であっても、第3の導電層152cの厚さが大きく減少することなく、第1の導電層152aが第1の導電層152cの形状に対応するようにパターニングされる(
図9(B))。
【0053】
このように、混酸に対するエッチング速度の差を利用することで、比較的小さい厚さを有する第3の導電層152cをマスクとして用いても、その平面形状をほぼ維持したまま、第1の導電層152aと第2の導電層152bをパターニングすることができる。これにより、レジスト158のパターンに対応するように画素電極152を形成することができる。なお、理由は明らかではないものの、この方法により、
図9(B)に示すように、第1の導電層152aが順テーパー構造を有し、第2の導電層152bが逆テーパー構造を有する画素電極152が得られることが、発明者らによって実験的に確認されている。
【0054】
[3.その他の構成]
次に、画素電極152の端部を覆うように隔壁190を形成する(
図10(A))。隔壁190はアクリル樹脂やエポキシ樹脂、ポリイミド、ポリシロキサンなどの高分子を用い、スピンコーティング法やインクジェット法、スプレー法などの湿式成膜法によって形成される。
【0055】
引き続き、画素電極152と隔壁190と重なるようにEL層154と対向電極156を順次形成する(
図10(B))。EL層154は蒸着法、あるいは湿式成膜法により、対向電極156は蒸着法、あるいはスパッタリング法によって形成することができる。これにより、発光素子150が形成される。
【0056】
任意の構成として、発光素子150上にパッシベーション膜200を形成してもよい。第1実施形態で述べた三層構造を有するパッシベーション膜200を形成する場合には、例えば第1の層202をCVD法を用いて形成した後に、第2の層204を湿式成膜法によって形成し、引き続き第3の層206をCVD法を適用して形成すればよい(
図11)。その後、シール材210を用いて第2の基板104を第1の基板102上に固定することで、
図3に示す表示装置100が得られる。
【0057】
[4.変形例1]
上述した製造方法では、画素電極152は、第3の導電層152cをパターニングした後にレジスト158を除去し、その後第1の導電層152aと第2の導電層152bをパターニングすることで形成される。本実施形態はこの方法に限られず、異なる方法でも画素電極152を形成することができる。
【0058】
具体的には
図12(A)、
図12(B)に示すように、画素電極152に対応する領域にレジスト158を形成した後に、レジスト158をマスクとして、シュウ酸をエッチャントとして用いて第3の導電層152cを優先的にパターニングする。その後、レジスト158を除去することなく、混酸を用いて第1の導電層152aと第2の導電層152bをパターニングする(
図13(A))。最後にレジスト158を除去することで画素電極152が得られる(
図13(B))。
【0059】
[5.変形例2]
前述のように、第1の導電層152aをIZO、第2の導電層152bを銀、および第3の導電層152cをITOで形成する場合、これら三層を、混酸を用いて一括エッチングによりパターニングすることも可能である。
【0060】
図12(A)に示した状態から、混酸を用いて第3の導電層152cをエッチングした後、続けて第2の導電層152b、さらに第1の導電層152aをエッチングする。このとき、第3の導電層152cの混酸に対するエッチング速度は、第3の導電層152cのシュウ酸に対するエッチング速度よりも遅いため、前述の実施形態に比べてややエッチング時間は延びるが、問題無くパターニングが可能である。また、第3の導電層152cの混酸に対するエッチング速度は、第2の導電層152bの混酸に対するエッチング速度よりもはるかに小さく、第1の導電層152aの混酸に対するエッチング速度よりも小さいため、第2の導電層152b、第1の導電層152aのパターニングを通じて、第3の導電層152cは十分にその形状を保つことができる(
図13(A))。
【0061】
以上により、混酸のみを用いてのパターニングであっても、最終的に
図13(B)に示すような画素電極152の形状が得られる。
【0062】
[6.比較例]
上述したように、本実施形態で述べた画素電極152の作製方法では、第1の導電層152aと第3の導電層152cにそれぞれIZO、ITOを用い、第3の導電層152cを第1の導電層152aよりも小さな厚さを有するように形成する。その後第3の導電層152cのシュウ酸によるエッチングを行う。引き続き第3の導電層152cをマスクとして用い、混酸によるエッチングを第1の導電層152aと第2の導電層152bの両者に対して同時に行う。
【0063】
これに対し、第1の導電層152aにITOを用いた場合、混酸によるITOのエッチング速度はIZOのそれと比較して小さいため、第1の導電層152aと第2の導電層152bのエッチングに長時間を要することになる。この場合、薄い第3の導電層152cも厚い第1の導電層152aとほぼ同一のエッチング速度でエッチングされるため、
図14に示すように、第3の導電層152cが消失する。したがって、EL層154は直接第2の導電層152bと接することになり、電荷注入性などに大きな影響を及ぼす。
【0064】
第3の導電層152cをパターニングした後に変形例を適用した場合、すなわち、第3の導電層152cのパターニング後にレジスト158を除去せず、第1の導電層152aと第2の導電層152bを混酸でパターニングした場合、
図15に示すように、レジスト158に覆われた第3の導電層152cを残すことができる。しかしながら第1の導電層152aのエッチングに長時間を要するため、レジスト158の膨潤や剥離によるパターニング精度の低下が生じる。また、長時間のエッチングに起因して第2の導電層152bのサイドエッチングが無視できなくなり、
図15に示すように、第2の導電層152bの端部が第1の導電層152aや第3の導電層152cの端部の内側へ後退する。その結果、第3の導電層152cの一部は第2の導電層152bの端部から突き出し、第2の導電層152bに対して庇のような形状(バイザー)196が形成される。
【0065】
このようなバイザー196が、その後の工程で破損して導電性の異物として第1の基板102上に残存すると、隣接する画素電極152間のショート、画素電極152と対向電極156間のショートなどの不良を引き起こす原因となる。その結果、表示装置100の歩留りや信頼性が低下する。
【0066】
一方、第3の導電層152cをパターニングした後にレジスト158をのこしたまま混酸によるエッチングを短時間で行うことにより(
図15の上図参照)、
図16に示すように、第2の導電層152bを選択的にエッチングすることができる。これは、ITOと比較して第2の導電層152bに含まれる銀は、混酸に対して大きなエッチング速度を有するからである。その後、シュウ酸を用いて第1の導電層152aをエッチングすることで、第1の導電層152aをパターニングすることができる。しかしながらこの場合、第1の導電層152aのサイドエッチングが進行し、
図16に示すように、第1の導電層152aの側面が第2の導電層152bの側面から大きく後退してしまうことが発明者らによって実験的に確認されている。このような構造が形成されると、バイザー196が脱落して他所に再付着することにより、ショート不良の原因となり、滅点不良となることで歩留まりや信頼性の低下に至る。したがって、本実施形態のように第1の導電層152aにIZOを用いることで、ITOを用いた場合と比較して高い歩留りを得ることができる。
【0067】
以上述べたように、本実施形態の画素電極152の作製方法を用いることで、高い信頼性を有する表示装置100を歩留まり良く製造することが可能となる。また、第3の導電層152cの小さな厚さに起因し、発光効率の低下を招くことなく各画素106における発光素子150の光学設計を容易に行うことができる。このため、色純度に優れた発光素子150を配置し、高品質な画像を提供可能な表示装置を提供することができる。
【0068】
本発明の実施形態として上述した各実施形態は、相互に矛盾しない限りにおいて、適宜組み合わせて実施することができる。また、各実施形態の表示装置を基にして、当業者が適宜構成要素の追加、削除もしくは設計変更を行ったもの、または、工程の追加、省略もしくは条件変更を行ったものも、本発明の要旨を備えている限り、本発明の範囲に含まれる。
【0069】
本明細書においては、開示例として主にEL表示装置の場合を例示したが、他の適用例として、その他の自発光型表示装置、液晶表示装置、あるいは電気泳動素子などを有する電子ペーパ型表示装置など、あらゆるフラットパネル型の表示装置が挙げられる。また、中小型から大型まで、特に限定することなく適用が可能である。
【0070】
上述した各実施形態の態様によりもたらされる作用効果とは異なる他の作用効果であっても、本明細書の記載から明らかなもの、または、当業者において容易に予測し得るものについては、当然に本発明によりもたらされるものと解される。