(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記キャビティの前記底面が、該底面の両側の少なくとも一方が離れるに従って次第に下方に向かうように傾斜している部位を有する請求項1から9のいずれか一項に記載の鋳型装置。
砂を含む材料から形成され、成形品を形成するためのキャビティを有する鋳型本体において、前記キャビティの下方に、前記成形品にガス欠陥を形成する要因となるガスを吸引する吸引部材を埋設して鋳型本体を製作する工程と、
前記成形品を形成する成形材料の溶湯を前記キャビティに注入する工程と、
前記溶湯の前記キャビティへの注入によって発生するガスを、前記吸引部材で吸引する工程と、
を備える鋳造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、形成すべき成形品の外周面が、例えば、鋳造時の砂型において鉛直下方を向く平面等を有している場合等には、この平面の下方で、砂型の鋳造時に発生するガスが、抜けにくい。
これに対し、特許文献1に記載されたような構成では、上記したような成形品において鉛直下方を向く平面の下側に吸引口を設けることになる。しかし、砂型の製作時に、このような吸引口を設けるのに手間が掛かる。また、吸引口によって、吸引口の上方の砂型の強度が不足する場合もある。
【0008】
また、特許文献2に記載されたような構成では、発生するガスが抜けにくい部位が、主型の外周面から遠く、ガスを除去することが困難となる場合がある。
【0009】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、注湯時に発生したガスが抜けにくい部位において、砂型の強度を確保しつつ、より効率良くガスの除去を行うことのできる鋳型装置、及び鋳造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明は以下の手段を採用する。
本発明の第一の態様に係る鋳型装置は、砂を含む材料から形成され、成形品を形成するためのキャビティを有する鋳型本体
を備え、前記成形品は、鉛直下方に向かって凸となる形状の下部構造部と、前記下部構造部の上端部の幅方向両側から突出するように設けられたフランジ部と、を有し、前記キャビティ
の底面のうち、前記フランジ部に対応する部位の下方
のみにおいて前記鋳型本体に埋設され、前記成形品にガス欠陥を形成する要因となるガスを吸引する吸引部材と、を備える。
【0011】
このような鋳型装置によれば、鋳型本体のキャビティに、成形品を形成する成形材料の溶湯を注ぎ込むと、成形材料が冷却されて固化することで、成形品を成形することができる。溶湯をキャビティに注ぎ込むと、溶湯の熱によって、鋳型本体を形成する鋳型材料から、成形品にガス欠陥を形成する要因となるガスが発生する。鋳型本体において、キャビティの下方に位置する領域では、発生したガスが上方に抜けにくい。これに対し、キャビティの下方に設けられた吸引部材によって、発生したガスが吸引されて除去される。よって、成形品にガス欠陥が形成されることを抑制できる。
また、吸引部材を鋳型本体に埋設すればよいので、鋳型本体自体に、ガスを除去するための吸引口(空洞)を設ける必要もない。従って、鋳型本体の製作を容易に行うことができ、鋳型本体の強度が低下することを抑える。
さらに、吸引部材を鋳型本体に埋設することで、吸引部材を、キャビティに、より近い位置に配置することができる。これにより、吸引部材において、ガスを効率良く吸引除去することができる。
【0012】
また、本発明の第二の態様に係る鋳型装置では、上記第一の態様における前記吸引部材は、前記鋳型本体において、前記キャビティにおける前記ガスが溜まりやすい部位の下方の領域に配置されていてもよい。
【0013】
鋳型本体から発生したガスは、下方から上方に向かって上昇しようとするが、その上方のキャビティに注ぎ込まれた溶湯によって、ガスの上昇が遮られる。これによって、キャビティの特定の部位には、ガスが溜まりやすい。このようなキャビティの特定のガスが溜まりやすい部位の下方の領域に吸引部材を設けることで、ガスを効率良く吸引して除去することができる。
【0014】
また、本発明の第三の態様に係る鋳型装置では、上記第二の態様における前記吸引部材は、前記キャビティの下側の底面に対し、上下方向下方
50mm以上200mm以下の範囲に配置されていてもよい。
さらに、前記吸引部材は、前記キャビティの下側の底面に対し、上下方向下方100mm以上200mm以下の範囲に配置されていてもよい。
【0015】
このように、吸引部材を、キャビティの下側の底面に近い位置に設けることで、キャビティの下方に溜まりやすいガスを、効率良く吸引して除去することができる。
【0016】
また、本発明の第四の態様に係る鋳型装置では、上記第一から第三のいずれかの態様における前記吸引部材は、中空の管状又は箱状をなした吸引容器と、前記吸引容器の内外を連通する複数の吸引孔と、を備えていてもよい。
【0017】
このような吸引部材においては、吸引孔を通して鋳型材料から発生したガスを吸引容器内に取り入れることで、ガスを除去することができる。
【0018】
また、本発明の第五の態様に係る鋳型装置では、上記第四態様における前記吸引容器は、前記キャビティの前記底面側を向く対向面を有し、前記吸引孔は、前記対向面に形成されていてもよい。
【0019】
吸引容器に、底面側を向く対向面を設けて、この対向面に吸引孔を形成することで、キャビティの下方でガスを効率良く吸引して除去することができる。
【0020】
また、本発明の第六の態様に係る鋳型装置では、上記第四又は第五の態様において、前記吸引孔を覆うように設けられ、前記砂の粒径よりも小さい開口を有したフィルタをさらに備えていてもよい。
【0021】
このフィルタによって、ガスのみがフィルタを通して吸引孔から吸引容器内に吸い込まれ、砂が吸引容器内に流れ込むのを抑えることができる。
【0022】
また、本発明の第七の態様に係る鋳型装置においては、上記第一から第六のいずれかの態様における前記鋳型本体の外部に設けられ、負圧を発生する負圧発生源と、前記負圧発生源と前記吸引部材とを連通し、可撓性を有した接続管と、を備えていてもよい。
【0023】
このような構成によれば、負圧発生源と吸引部材とを接続する接続管が可撓性を有しているので、鋳型本体に埋設される吸引部材の位置を、容易に所定の位置に合わせて配置することができる。
また、前記キャビティの前記底面が、水平に延びる部位を有してもよい。
さらに、前記キャビティの前記底面が、該底面の両側の少なくとも一方が離れるに従って次第に下方に向かうように傾斜している部位を有してもよい。
そして、前記鋳型本体は、前記キャビティに連通する湯道を有し、前記吸引部材は、前記湯道の最低面よりも上方に埋設されていてもよい。
【0024】
また、本発明の第八の態様に係る鋳造方法は、砂を含む材料から形成され、成形品を形成するためのキャビティを有する鋳型本体において、前記キャビティの下方に、前記成形品にガス欠陥を形成する要因となるガスを吸引する吸引部材を埋設して鋳型本体を製作する工程と、前記成形品を形成する成形材料の溶湯を前記キャビティに注入する工程と、前記溶湯の前記キャビティへの注入によって発生するガスを、前記吸引部材で吸引する工程と、を備える。
【0025】
このような鋳造方法によれば、溶湯をキャビティに注入することによって鋳型本体に発生したガスを、吸引部材によって吸引して除去することができる。よって、成形品にガス欠陥が形成されることを抑制できる。
また、吸引部材を鋳型本体に埋設すればよいので、鋳型本体自体に、ガスを除去するための吸引口等の空洞を設ける必要がない。従って、鋳型本体の製作を容易に行うことができる。
さらに、吸引部材を鋳型本体に埋設することで、吸引部材を、キャビティに、より近い位置に配置することができる。従って、吸引部材において、ガスを効率良く吸引除去することができる。
【発明の効果】
【0026】
上記の鋳型装置、及び鋳造方法によれば、注湯時に発生したガスが抜けにくい部位において、砂型の強度を確保しつつ、より効率良くガスの除去を行うことが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施形態に係る鋳型装置1について説明する。
図1に示すように、鋳型装置1は、鋳型本体2と、ガス除去装置10と、を備える。
【0029】
鋳型本体2は、主型3と、中子4と、を備える。主型3及び中子4は、それぞれ、砂を、有機樹脂等からなるバインダで結着させることで形成されている。ここで、主型3及び中子4を形成する鋳型材料については、砂やバインダの種類や配合比、その他の添加物の種類や有無等、何ら限定するものではない。このように、砂をバインダで結着させた主型3、中子4は、いわゆる砂型であり、結着した砂の粒子の間に微細な空隙が形成された多孔質体から形成されている。
【0030】
主型3は、床面F上に設けられる外枠9の内側に形成されている。主型3は、形成すべき成形品100の外周面を形成するため、成形品100の外形形状に対応した形状の凹部5を有している。
【0031】
中子4は、成形品100の内周面を形成する。中子4は、主型3の凹部5の内側に、間隔をあけて設けられている。
【0032】
このようにして、鋳型本体2は、主型3の凹部5の内周面と、中子4の外周面との間に、形成すべき成形品100を形成するためのキャビティ6を備える。
また、鋳型本体2は、主型3の上面3aからキャビティ6に連通する湯道7が形成されている。湯道7は、鋳型本体2を構成する主型3の上面3aに開口する湯口8を有している。
【0033】
鋳型装置1で鋳造により成形品100を形成するには、成形品100を形成するための成形材料を溶融した溶湯100Lを、湯口8から湯道7を通してキャビティ6に注ぎ込む。キャビティ6に送り込まれた溶湯100Lが温度低下して固化することで、成形品100が鋳造される。
【0034】
ここで、形成すべき成形品100の形状については、何ら限定するものではない。この実施形態では、成形品100は、例えば、下部構造部100aと、フランジ部100bと、上部構造部100cと、を備える。
下部構造部100aは、例えば、鉛直下方に向かって凸となる断面半円形をなしている。フランジ部100bは、下部構造部100aの幅方向両側の上端部に、幅方向外側に向かって突出するよう形成されている。上部構造部100cは、フランジ部100bから鉛直上方に向かって延びるよう形成されている。
このような成形品100において、フランジ部100bの幅方向両外側には、水平面内に位置して、鉛直下方を向く下向面101が形成されている。
【0035】
ガス除去装置10は、吸引部材11と、真空ポンプ12(負圧発生源)と、接続管13と、を備える。
【0036】
図2に示すように、吸引部材11は、成形品100にガス欠陥を形成する要因となるガスGを吸引する。鋳型装置1においては、キャビティ6に溶湯100Lが注ぎ込まれると、主型3が加熱される。すると、主型3を形成する鋳型材料の砂に付着した水分や、バインダを形成する樹脂等の材料からガスGが発生する。発生したガスGは、多孔質体からなる砂型である鋳型本体2(主型3)内を、下方から上方に向かって上昇しようとするが、その上方にキャビティ6があると、キャビティ6に注ぎ込まれた溶湯100Lによって、ガスGの上昇が遮られる。本実施形態では、例えば、成形品100のフランジ部100bの下向面101を形成する、キャビティ6の底面6bに面する部位6AにガスGが溜まりやすい。このようなガスGが溜まりやすい部位としては、キャビティの底面が水平に延びる部位が挙げられる。このような部位の下方では、鋳型本体2で発生したガスは、キャビティ6の底面が水平に伸びていて側方へと流れ難いため、上方のキャビティ6内へと進入する。キャビティ6内の溶湯も底面が水平に延びていることで流動しにくいため、進入したガスがそのままその位置で空洞を形成してしまう。また、ガスGが溜まりやすい部位としては、キャビティ6の底面の両側の少なくとも一方が離れるに従って次第に下方に向かうように傾斜している部位も挙げられる。このような部位の下方では、上記同様ガスが発生する。ガスは、隣接する離れるに従って下方へ向かうように傾斜している側へは流れにくく、また、このような傾斜している部位から発生したガスが流入してくる。このため、発生したガスは上方のキャビティ6に進入してその位置で空洞を形成してしまう。
【0037】
そこで、本実施形態では、吸引部材11は、フランジ部100bの下向面101を形成するキャビティ6の底面6bにおいて、ガスが溜まりやすい部位6Aの下方の領域Aにおいて、鋳型本体2の主型3に埋設している。
【0038】
吸引部材11は、キャビティ6の下側の底面6bに対し、上下方向下方に100mm以上200mm以下の範囲の間隔Lで配置される。ここで、吸引部材11は、キャビティ6の底面6bに対し、上下方向下方に0mm、すなわち、底面6bに面するように設けてもよい。
吸引部材11は、キャビティ6の下側の底面6bに対し、上下方向下方に0mmよりも大きな間隔Lを隔てて形成する場合、間隔Lが過度に小さいと、鋳型本体2の強度が不足してしまう場合がある。そこで、吸引部材11とキャビティ6の底面6bとの間隔Lは、例えば50mm以上とするのが好ましく、特に100mm以上とするのが好ましい。
また、吸引部材11とキャビティ6の底面6bとの間隔Lが過度に大きいと、吸引部材11で発生する吸引力が、キャビティ6の底面6bの近傍にまで及びにくくなる場合が有る。従って、吸引部材11とキャビティ6の底面6bとの間隔Lは、例えば200mm以下とするのが好ましい。
これらのことからして、吸引部材11とキャビティ6の下側の底面6bとの間隔Lは、100mm程度に設定するのが特に好ましい。
【0039】
図3に示すように、吸引部材11は、吸引容器14と、吸引孔15と、フィルタ16と、を備える。
【0040】
吸引容器14は、中空の箱状をなしている。ここで、吸引容器14は、中空の管状をなしていてもよい。吸引容器14は、例えば直方体状で、その上面14a(対向面)が、キャビティ6の底面6b側を向くよう配置される。
【0041】
吸引孔15は、吸引容器14の内外を連通するよう、複数が形成されている。吸引孔15は、吸引容器14の上面14aに形成されている。
【0042】
フィルタ16は、吸引孔15を覆うように設けられている。フィルタ16は、網体、あるいは金属焼結体のような多孔質体から形成される。フィルタ16は、鋳型本体2を形成する鋳型材料の砂の粒径よりも小さい開口を有している。
ここで、鋳型本体2を製作する際には、予め定めた開口寸法(メッシュ)を有する篩(ふるい)で砂を分級することによって、所定範囲の粒径を有した砂を用いる。従って、吸引部材11が備えるフィルタ16は、鋳型本体2の製作時に砂の分級に用いた篩の開口寸法よりも小さな開口を有するものとする。
【0043】
図1に示すように、真空ポンプ12は、鋳型本体2の外部に設けられる。真空ポンプ12は、負圧を発生する負圧発生源として用いられる。ここで、所定の負圧を発生することができるのであれば、真空ポンプ12以外を負圧発生源として用いてもよい。
【0044】
接続管13は、真空ポンプ12と吸引部材11の吸引容器14とを接続する。接続管13は、鋳型本体2の製作時に、その取り回しを容易に行えるよう、可撓性(柔軟性)を有した、例えばステンレス製のフレキシブルホースで形成するのが好ましい。
【0045】
このようなガス除去装置10は、真空ポンプ12を作動させて負圧を発生すると、その負圧が接続管13を介して吸引部材11に及ぶ。吸引部材11は、その周囲の鋳型本体2(主型3)内で発生したガスGを、吸引孔15を通して吸引容器14内に吸い込む。吸引容器14内に吸い込んだガスGは、負圧により、接続管13、真空ポンプ12を介して鋳型本体2の外部に排出される。
ここで、フィルタ16により、鋳型本体2を形成する鋳型材料の砂が吸引容器14内に吸い込まれるのを防ぎ、ガスGのみが、吸引部材11によって吸引されて除去される。
【0046】
ところで、真空ポンプ12で発生する負圧の圧力は、吸引部材11において周囲のガスGを吸引する流量が、溶湯100Lの注入によって鋳型本体2で発生するガスの発生速度(単位時間当たりの発生量)を上回るように設定するのが好ましい。
図4は、吸引部材11におけるガスの吸引圧力Pと、吸引部材11で吸引されるガスの流量との相関を、シミュレーションにより解析した結果の一例を示す図である。
この
図4に示すように、吸引部材11におけるガスの吸引圧力Pが低い(真空ポンプ12で発生する負圧の真空度が高い)ほど、吸引部材11で吸引されるガスの流量が大きくなる。そこで、溶湯100Lの注入によって、鋳型本体2で発生するガスの発生速度の想定値Gsよりも、吸引部材11で吸引されるガスの流量が大きくなるように、吸引部材11におけるガスの吸引圧力P(真空ポンプ12で発生する負圧の真空度)を設定するのが好ましい。
また、吸引部材11におけるガスの吸引圧力Pが過度に大きいと、吸引部材11の上方で鋳型本体2が崩壊してしまう可能性がある。従って、吸引部材11におけるガスの吸引圧力P(真空ポンプ12で発生する負圧の真空度)の下限を設定するのが好ましい。
これらのことから、真空ポンプ12で発生する負圧の大きさが、予め設定した範囲内となるように、計測器等でモニタリングしながら、真空ポンプ12の運転を制御するようにしてもよい。
【0047】
ここで、
図5に示すように、吸引部材11と、キャビティ6の底面6bとの間隔Lが大きいほど、吸引部材11でガスGを吸引すべき領域Aの容積Vが大きくなる。この間隔L(容積V)が大きくなるほど、吸引部材11とキャビティ6の底面6bとの間の領域に存在するガスGが多くなる。また、間隔Lが大きくなるほど、キャビティ6の底面6bに近い位置から吸引部材11までの間での圧力損失が大きくなる。
従って、吸引部材11と、キャビティ6の底面6bとの間隔Lが大きくなるほど、吸引部材11におけるガスの吸引圧力Pを高くなるよう、吸引圧力Pを設定するのが好ましい。
【0048】
次に、上記したような鋳型装置1における鋳造方法について説明する。
図6に示すように、本実施形態における鋳造方法は、鋳型製作工程S1と、溶湯注入工程S2と、ガス吸引工程S3と、脱型工程S4と、を備える。
【0049】
鋳型製作工程S1では、形成すべき成形品100に合わせて、鋳型本体2を製作する。
鋳型本体2は、外枠9の内側に、砂とバインダとを含む鋳型材料を入れ、砂を、樹脂等からなるバインダで結着させることで、主型3及び中子4を所定形状に形成する。このとき、成形品100を形成するキャビティ6、湯道7、湯口8等は、オス型を用いて形成する。
【0050】
主型3を形成するため、外枠9の内側に鋳型材料を入れるに際しては、キャビティ6の底面6bの下方となる位置に、ガス除去装置10を構成する吸引部材11を配置する。また、吸引部材11には、接続管13の第一端を接続する。接続管13の第二端は、外枠9を通して外部の真空ポンプ12に接続する。これら吸引部材11、接続管13を配置した後、鋳型材料を外枠9内に供給して、吸引部材11及び接続管13を鋳型材料中に埋設させる。
このとき、接続管13に、可撓性(柔軟性)を有したフレキシブルホースを用いることで、吸引部材11をキャビティ6の底面6bの下方の所定位置に位置合わせする作業、接続管13の吸引部材11への接続作業、接続管13の下側への鋳型材料の配置作業等を容易に行うことができる。
【0051】
溶湯注入工程S2は、成形品100を形成する成形材料を溶融した溶湯100Lを、鋳型本体2の湯口8から湯道7を通してキャビティ6に注入する。ここで、溶湯100Lの温度は、用いる成形材料にもよるが、例えば金属材料の場合、1000℃以上の高温である。
この溶湯注入工程S2で、溶湯100Lをキャビティ6に注入しはじめると、高温の溶湯100Lにより、キャビティ6の周囲の鋳型本体2が温度上昇する。この鋳型本体2の温度上昇により、鋳型本体2では、鋳型本体2を形成する砂の粒子の表面に付着した水分の蒸発や、バインダを形成する樹脂材料のガス化により、ガスが発生する。
【0052】
ガス吸引工程S3は、上記溶湯注入工程S2における溶湯100Lのキャビティ6への注入によって発生するガスGを、吸引部材11で吸引する。
これには、真空ポンプ12を作動させて負圧を発生させる。この負圧により、吸引部材11は、その周囲の鋳型本体2(主型3)内で発生したガスGを、吸引孔15を通して吸引容器14内に吸い込む。吸引容器14内に吸い込んだガスGは、負圧により、接続管13、真空ポンプ12を介して鋳型本体2の外部に排出される。
ここで、上記したように、溶湯注入工程S2では、高温の溶湯100Lの注入によって、鋳型本体2からガスが直ちに発生する。このため、ガス吸引工程S3は、溶湯注入工程S2の開始後、直ちに開始、あるいは溶湯注入工程S2と同時に開始するのが好ましい。
【0053】
注入された溶湯100Lは、キャビティ6の周囲の鋳型本体2により熱を奪われ、温度低下する。溶湯100Lが、その融点以下に温度低下すると、溶湯100Lが凝固し、キャビティ6の形状に合わせた成形品100が形成される。
脱型工程S4では、鋳型本体2を解体し、形成された成形品100を脱型する。これにより、成形品100が鋳造される。
【0054】
以上説明した本実施形態の鋳型装置1、及び鋳造方法によると、キャビティ6の下方に設けられた吸引部材11によって、溶湯100Lの熱によって鋳型本体2を形成する鋳型材料から発生したガスを吸引して除去することができる。よって、成形品100にガス欠陥が形成されることを抑制できる。
また、吸引部材11を鋳型本体2に埋設すればよいので、鋳型本体2自体に、ガスGを除去するための空洞を設ける必要も無い。従って、鋳型本体2の強度が低下することが抑えられる。また、鋳型本体2の製作を容易に行うことができる。
さらに、吸引部材11を鋳型本体2に埋設することで、吸引部材11を、キャビティ6に、より近い位置に配置することができる。これにより、吸引部材11において、ガスGを効率良く吸引除去することができる。
従って、注湯時に発生したガスGが溜まりやすい部位6Aの下方の領域Aにおいて、砂型の強度を確保しつつ、より効率良くガスGの除去を行うことができる。
【0055】
また、吸引部材11は、キャビティ6の下方において、発生したガスGが溜まりやすい部位6Aの下方の領域Aに配置されている。このようなガスGが溜まりやすい部位6Aの下方の領域Aに吸引部材11を設けることで、ガスGを効率良く吸引して除去することができる。
【0056】
また、吸引部材11は、キャビティ6の下側の底面6bに対し、上下方向下方に100mm以上200mm以下の範囲に配置されている。このように、吸引部材11を、キャビティ6の下側の底面6bに近い位置に設けることで、キャビティ6の下方に溜まりやすいガスGを、効率良く吸引して除去することができる。
【0057】
また、吸引部材11は、吸引容器14と、吸引孔15と、を備えている。このような吸引部材11においては、吸引孔15を通して鋳型材料から発生したガスGを吸引容器14内に取り入れることで、ガスGを除去することができる。
【0058】
さらに、吸引容器14は、キャビティ6の底面6b側を向く上面14aを有し、吸引孔15は、上面14aに形成されている。これにより、キャビティ6の底面6bの下方でガスGを効率良く吸引して除去することができる。
【0059】
また、吸引孔15を覆うよう、砂の粒径よりも小さい開口を有したフィルタ16が設けられている。このフィルタ16によって、ガスGのみがフィルタ16を通して吸引孔15から吸引容器14内に吸い込まれ、砂が吸引容器14内に流れ込むのを抑えることができる。
【0060】
また、真空ポンプ12と吸引部材11とを接続する接続管13が、可撓性を有している。これにより、鋳型本体2の製作時に、吸引部材11の位置合わせ作業、接続管13の取り回し作業、鋳型材料の配置作業等を容易に行うことができる。
【0061】
以上、本発明の実施形態について詳細を説明したが、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲内において、多少の設計変更も可能である。
例えば、本実施形態では、吸引孔15を、吸引容器14の上面14aに形成するようにしたが、このような構成に限定されない。例えば、吸引孔15を、吸引容器14の側面や底面に形成するようにしてもよい。
【0062】
さらに、本実施形態では、鋳型本体2は、主型3と中子4とを有して構成されているが、このような場合に限定されない。即ち、中子4を用いずに鋳型本体2を構成する場合であってもよい。
【0063】
また、本実施形態では、鋳型本体2のキャビティ6の形状を図示により例示したが、当然のことながら、キャビティ6の形状は、成形すべき成形品100の形状に応じて変わる。従って、吸引部材11を配置する位置も、キャビティ6の形状に応じて適宜設定すればよい。