(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
請求項1から7のいずれか一項に記載のシートベルトリトラクタと、前記シートベルトと、前記シートベルトに取り付けられたタングと、前記タングが着脱されるバックルとを備える、シートベルト装置。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示に係る実施形態を図面を参照して説明する。
【0010】
図1は、シートベルト装置の構成の一例を示す図である。
図1に示されるシートベルト装置101は、車両に搭載されたシートベルト装置の一例である。シートベルト装置101は、例えば、シートベルト104と、リトラクタ103と、ショルダーアンカー106と、タング107と、バックル108とを備える。
【0011】
シートベルト104は、車両のシート102に座る乗員111を拘束するシートベルトの一例であり、リトラクタ103に引き出し可能に巻き取られる帯状部材である。シートベルトは、ウェビングとも称される。シートベルト104の先端のベルトアンカー105は、車体の床又はシート102に固定される。
【0012】
リトラクタ103は、シートベルト104の巻き取り又は引き出しを可能にするシートベルト巻き取り装置の一例である。リトラクタ103は、車両衝突時等の所定値以上の加減速度または車両角度が検知されると、シートベルト104がリトラクタ103から引き出されることを制限する。リトラクタ103は、シート102又はシート102の近傍の車体に固定される。リトラクタ103は、シートベルトリトラクタの一例である。
【0013】
ショルダーアンカー106は、シートベルト104が挿通するベルト挿通具の一例であり、リトラクタ103から引き出されたシートベルト104を乗員111の肩部の方へガイドする部材である。
【0014】
タング107は、シートベルト104が挿通するベルト挿通具の一例であり、ショルダーアンカー106によりガイドされたシートベルト104にスライド可能に取り付けられた部品である。
【0015】
バックル108は、タング107が着脱可能に連結される部品であり、例えば、車体の床又はシート102に固定される。
【0016】
タング107がバックル108に連結された状態で、ショルダーアンカー106とタング107との間のシートベルト104の部分が、乗員111の胸部及び肩部を拘束するショルダーベルト部109である。タング107がバックル108に連結された状態で、ベルトアンカー105とタング107との間のシートベルト104の部分が、乗員111の腰部を拘束するラップベルト部110である。
【0017】
図2は、シートベルトリトラクタの一例を示す側面図である。
図3は、シートベルトリトラクタの切断面を矢視A−A(
図2参照)で示す図である。
図4は、シートベルトリトラクタのストッパー機構の分解斜視図である。
図5は、シートベルトリトラクタの全体分解斜視図である。なお、
図5において、紙面の都合上、スプール2の軸方向での部品の配置が前後している場合がある。
【0018】
図2〜5に示したリトラクタ1は、シートベルトリトラクタの一例であり、より具体的には、
図1に示したリトラクタ103の一例である。以下、
図2〜5を参照して、リトラクタ1の構成について説明する。
【0019】
リトラクタ1は、スプール2、ベースフレーム3、スプリングユニット4、プリテンショナ5、ロック機構6、トーションバー21、ストッパー機構8及びジョイントレバー92を備える。
【0020】
スプール2は、乗員を拘束するシートベルトを巻き取る回転部材である。スプール2の一端は、スプリングユニット4に接続されている。スプリングユニット4に格納されたスパイラルスプリング43によって、スプール2は、シートベルトを巻き取る方向に回転するように付勢されている。スプール2の回転軸は、シャフト2aと、シャフト2aの一端に固定されたブッシュ42とを含んで構成されている。スプール2の両端には、スプールベアリング24,25が取り付けられている。
【0021】
スプリングユニット4は、スプール2がシートベルトの巻き取り方向に回転するようにスプール2を付勢するスプリング機構の一例である。スプリングユニット4は、スパイラルスプリング43と、スプリングカバー41とを有する。
【0022】
スパイラルスプリング43は、スプール2の回転軸に接続された一端と、スプリングカバー41の外周壁に連結された他端とを有し、スプール2がシートベルトの巻き取り方向に回転するようにスプール2を付勢する弾性体の一例である。スパイラルスプリング43の一端は、スプール2に一体的に回転可能に取り付けられたブッシュ42に連結されている。スパイラルスプリング43は、スプール2をシートベルトの巻き取り方向に常時付勢する。スパイラルスプリング43の一端は、例えば、ブッシュ42に形成された溝に引っ掛けられている。
【0023】
スプリングカバー41は、スパイラルスプリング43の他端が接続された外周壁を有し、スパイラルスプリング43を当該外周壁の内側に収容する。スプリングカバー41は、リテーナ81に固定されている。
【0024】
なお、シートベルトの巻き取り方向にスプール2を回転させる力を付与する手段は、スプリングユニット4に限定されず、電動モータ等を用いた他の機構でもよい。
【0025】
スプール2の中心部に形成された空洞には、軸心を形成するトーションバー21が延在している。トーションバー21の一端は、スプリングユニット4及びストッパー機構8が接続された側のスプール2の端部内面に接続されている。トーションバー21の他端は、ロッキングベース22に接続されている。
【0026】
ロッキングベース22は、スプール2の空洞部と嵌合する一端と、リテーナカバー35に回転可能にベアリングキャップ36を介して支持された他端とを有する。ロッキングベース22の一端には、パドルホイール51とスプールベアリング24の各々の中央孔を貫通する軸部22aが形成されている。軸部22aは、パドルホイール51の中央孔と嵌合する。ロッキングベース22の他端側には、ロック機構6のパウル61がカバープレート66内で回転可能に配置されている。
【0027】
プリテンショナ5やロック機構6が作動していない通常時には、トーションバー21は、スプール2と一体になって回転するように構成されている。プリテンショナ5の作動時には、プリテンショナ5がパドルホイール51によりスプール2を回転させることによって、シートベルトをスプール2に巻き取ることができる。ロック機構6の作動時には、パウル61がベースフレーム3の側面32に形成された内歯32aと噛み合うことにより、スプール2の回転がロックされる。これにより、シートベルトの引き出しが阻止される。
【0028】
そして、シートベルトの引き出しがロック機構6により阻止されている状態でシートベルトの引き出し方向の力がさらに作用した場合、トーションバー21の捩れ変形によってシートベルトの荷重を制限することができ、乗員のエネルギーを吸収する。
【0029】
また、ロック機構6の作動時に引き出されるシートベルトによってスプール2が引き出し方向に回転すると、乗員のエネルギーが、スプール2に挿入された金属製のデフォメーションピン23の塑性変形により吸収される。なお、トーションバー21が十分なエネルギー吸収力を有している場合には、デフォメーションピン23は省略されてもよい。
【0030】
ベースフレーム3は、スプール2を回転可能に収容し、リトラクタ1の骨格を形成する筐体である。ベースフレーム3は、例えば、対峙する一対の側面31,32と、側面31,32を連結する背面33と、背面33と対峙し側面31,32に接続されるタイプレート34とを含んで構成されている。側面31の外側には、スプリングユニット4及びストッパー機構8が配置されている。側面32の内側には、プリテンショナ5のパドルホイール51が配置されている。側面32の外側には、ロック機構6が配置されている。ロック機構6は、ベースフレーム3に接続されるリテーナカバー35内に収納されている。
【0031】
リテーナカバー35内には、車両の加減速や傾きの急激な変化を検出するビークルセンサ7が配置されている。ビークルセンサ7は、内蔵された一つの球体と、その球体の移動によって揺動されるアクチュエータ71とを有する。ビークルセンサ7は、リテーナカバー35に形成された凹部に収納される。ビークルセンサ7は、加減速や傾きの急激な変化が車体に生じると、球体が移動することに伴ってアクチュエータ71の先端部が揺動するように構成されている。この揺動によって、アクチュエータ71は、ロックギア62の外歯62aに係止する。また、ビークルセンサ7は、車両の加減速や傾きの急激な変化を検出すると、車両に搭載された他の電子部品や電子制御システムに、その急減な変化を検出したことを表す検出信号を発信するように構成されていてもよい。
【0032】
プリテンショナ5は、車両衝突時等の所定値以上の加減速度または車両角度が検知される緊急時に、シートベルトを巻き取ってシートベルトの弛みを除去する機構である。プリテンショナ5は、スプール2の端部にトーションバー21及びロッキングベース22を介して接続されるパドルホイール51と、パドルホイール51を回転させる動力発生部52と、パドルホイール51を収容するプリテンショナカバー53とを有する。
【0033】
パドルホイール51は、プリテンショナ5の作動時にシートベルトの巻き取り方向へスプール2を回転させる回転体の一例である。パドルホイール51は、スプール2と同軸に接続されている。パドルホイール51の外周には、パドルホイール51の径方向外方に突出する複数の係合歯51aが形成されている。
【0034】
動力発生部52は、例えば、ロッド52a、ガイドパイプ52b、ガス発生装置52c、ストッパースプリング52d及びピストン52eを有する。
【0035】
ロッド52aは、係合歯51aに係合してパドルホイール51を回転させる変形可能な射出体である。ロッド52aは、例えば、合成樹脂製の棒状部材である。ロッド52aの後端部に圧力が加えられると、ガイドパイプ52b内でガイドパイプ52bの形状に沿って塑性変形しながら移動する。ロッド52aの全長は、プリテンショナ5の作動終了状態においてロッド52aの後端がガイドパイプ52bから放出されない長さに設定されている。このような構成により、プリテンショナ5の作動終了後にガイドパイプ52bからガスが外部に放出されることを抑制することができる。
【0036】
なお、係合歯51aに係合してパドルホイール51を回転させる射出体は、棒状のロッド52aに限定されない。例えば、そのような射出体は、金属製又は樹脂製の球体を複数利用した部材や、二つの金属製又は樹脂製の球体が連結されたツインボールを複数利用した部材や、予め歯が形成された平板状のラックでもよい。
【0037】
ガイドパイプ52bは、ロッド52aを収容するとともにロッド52aの移動を案内する。ガイドパイプ52bは、パドルホイール51の係合歯51aに臨む先端部と、ロッド52aの移動に必要な長さ分だけ延伸されてリトラクタ1の外形に沿って配置された後端部とを有する。ガイドパイプ52bの先端部には、パイプ開口52gが形成されている。ロッド52aは、パイプ開口52gからパドルホイール51の係合歯51aに向けて射出される。
【0038】
ガス発生装置52cは、ガイドパイプ52bの後端部に配置され、ロッド52aに動力を付与するガスを発生させる。ガス発生装置52cは、例えば、ビークルセンサ7と車体に搭載された加速度センサとの少なくとも一方からの検知信号に反応して、ガイドパイプ52bにガスを噴出するマイクロガスジェネレータである。ガス発生装置52cとロッド52aとの間には、ロッド52aとガイドパイプ52bの内周面との隙間をシールするとともに、ガス発生装置52cからのガス圧を受ける受圧面を有するピストン52eが配置されている。
【0039】
このような動力発生部52によれば、通常時は、ロッド52aの剛性により、ガイドパイプ52b内にロッド52aが収容された状態が維持される。そして、ガス発生装置52cからガスが発生すると、ロッド52aは、塑性変形しながらガイドパイプ52b内を移動し、パイプ開口52gからプリテンショナカバー53内に放出される。このとき、ロッド52aは、パドルホイール51の係合歯51aと塑性変形しながら係合し、パドルホイール51を回転させる。ロッド52aは、プリテンショナカバー53内の形状に沿って移動し、最終的に、ガイドパイプ52b、ロッド52a自身、プリテンショナカバー53、ストッパーピン39又はその他の部品に接触して停止する。ロッド52aは、プリテンショナカバー53内の形状に沿ってガイドされる。ストッパーピン39は、プリテンショナカバー53にプッシュナット37により固定される。
【0040】
プリテンショナカバー53は、少なくともパドルホイール51を収容するカバー部材の一例である。プリテンショナカバー53は、略椀形状又は略箱形状を有する金属部品であって、ベースフレーム3の側面32及び背面33の内側に固定される。プリテンショナカバー53は、スプール2の端部が挿入される開口部53aを有する。開口部53aは、スプールベアリング24を介して間接的にスプール2のラジアル荷重を受ける。
【0041】
なお、スプールベアリング24が省略された形態では、プリテンショナカバー53の開口部53aの内縁部が直接的にスプール2のラジアル荷重を受けてもよい。
【0042】
ロック機構6は、車両衝突時等の所定値以上の加減速度または車両角度が検知される緊急時に、シートベルトの引き出しをロックする。ロック機構6は、パウル61と、ロッキングベース22と、ロックギア62と、フライホイール63とを有する。
【0043】
パウル61は、ロッキングベース22の端面に揺動可能に配置された係止爪の一例である。ベースフレーム3の側面32には、ロッキングベース22を挿通可能な開口部が形成されている。開口部の内縁には、複数の内歯32aが形成されている。パウル61は、開口部の内縁に形成された複数の内歯32aに係合可能に配置されている。
【0044】
ロッキングベース22は、ロック機構6が作動していない通常時にスプール2の回転と共に回転し、ロック機構6の作動時にシートベルトの引き出し方向へのスプール2の回転を阻止するロック部材の一例である。ロッキングベース22は、リテーナカバー35に支持される軸部22bを有し、軸部22bは、ロックギア62の軸孔62cに嵌まっている。ロックギア62の外周部には、複数の外歯62aが形成されている。外歯62aには、ビークルセンサ7のアクチュエータ71が係合される。ロックギア62には、フライホイール63が揺動可能に取り付けられている。リテーナカバー35には、円形の凹部が形成されている。リテーナカバー35のこの凹部の内側には、複数の内歯35aが形成されている。内歯35aには、フライホイール63の先端部が係合される。フックスプリング64は、フライホイール63の先端部を内歯35aから離れる方向に付勢する。
【0045】
ロックギア62の平面部には、外縁側から内縁側に向かって湾曲するカム孔62bが形成されている。カム孔62bには、パウル61の平面部から突出するボス61aが挿入されている。ボス61aがカム孔62bに沿って移動することで、パウル61が揺動する。パウルスプリング65は、パウル61の先端部を、ベースフレーム3の側面32に形成された内歯32aから離れる方向に付勢する。パウルスプリング65は、ロックギア62の平面部に形成された開口62dに収容されている。パウルスプリング65の一端は、開口62d付近の係止部に取り付けられていて、パウルスプリング65の他端は、パウル61のボス61aに取り付けられている。
【0046】
フライホイール63は、リテーナカバー35とロックギア62との間に揺動可能に配置された部材である。シートベルトの引き出し加速度が所定の閾値以下の場合には、フックスプリング64がフライホイール63を付勢する力が、フライホイール63に生ずる慣性力よりも大きくなるように設定されている。シートベルトの引き出し加速度が所定の閾値以下の場合、フライホイール63は、ロックギア62と一緒に回転する。
【0047】
これに対し、シートベルトの引き出し加速度が所定の閾値を超えた場合には、フライホイール63に生ずる慣性力は、フックスプリング64がフライホイール63を付勢する力よりも大きくなる。このため、フライホイール63の先端部は、リテーナカバー35の内歯35aに接近して係合する。
【0048】
次に、ロック機構6の動作について説明する。
【0049】
通常時、アクチュエータ71、フライホイール63及びパウル61は、非係合状態であることから、スプール2の回転に伴って、ロッキングベース22及びロックギア62が回転する。
【0050】
続いて、緊急時の作動について説明する。
【0051】
まず、シートベルトの急激な引き出しによるロック機構6の作動について説明する。
【0052】
シートベルトがスプール2から急激に引き出されることによりシートベルトの引き出し加速度が所定の閾値を超えた場合、スプール2は、シートベルトの引き出し方向に回転し、スプール2と共にロッキングベース22も同一方向に回転する。この時、フライホイール63は、シートベルトの急激な引き出しに対して慣性による遅れが生じ、回転中心から外周側に揺動する。フライホイール63が外周側に揺動すると、フライホイール63の先端部がリテーナカバー35の内歯35aに噛み合うので、ロックギア62の回転が阻止される。
【0053】
これに対して、ロッキングベース22は回転し続けようとするから、シートベルトの引き出し方向に回転が続くロッキングベース22と、回転が阻止されたロックギア62との間に相対回転(回転位相差)が発生する。回転位相差の発生に伴って、ロッキングベース22に揺動可能に取り付けられているパウル61も、ロッキングベース22と共に回転する。
【0054】
しかしながら、パウル61のボス61aがカム孔62bに挿入されているロックギア62の回転は、フライホイール63により阻止されている。そのため、ボス61aは、パウルスプリング65の付勢力に抗って、シートベルトの引き出し方向に応じた移動方向に、カム孔62bに沿って移動する。その結果、パウル61はロッキングベース22の端面に沿って揺動し、パウル61の先端部は、ベースフレーム3の側面32に形成された内歯32aに噛み合う。その結果、ロッキングベース22の引き出し方向の回転が阻止されるので、スプール2の引き出し方向の回転も阻止される。
【0055】
次に、ビークルセンサ7によるロック機構6の作動について説明する。
【0056】
ビークルセンサ7が車両衝突時等の所定値以上の加減速度または車両角度が検知した場合、アクチュエータ71がロックギア62の外歯62aに噛み合うので、ロックギア62の回転が阻止される。
【0057】
これに対して、シートベルトは、乗員の移動によって引っ張られ、スプール2から引き出される。したがって、スプール2は、シートベルトの引き出し方向に回転し、スプール2と共に回転するロッキングベース22も同一方向に回転する。そのため、シートベルトの引き出し方向に回転するロッキングベース22と、回転が阻止されたロックギア62との間に相対回転(回転位相差)が発生する。回転位相差の発生に伴って、ロッキングベース22に揺動可能に取り付けられているパウル61も、ロッキングベース22と共に回転する。
【0058】
しかしながら、パウル61のボス61aがカム孔62bに挿入されているロックギア62の回転は、アクチュエータ71により阻止されている。そのため、ボス61aは、パウルスプリング65の付勢力に抗って、シートベルトの引き出し方向に応じた移動方向に、カム孔62bに沿って移動する。その結果、パウル61はロッキングベース22の端面に沿って揺動し、パウル61のパウル先端部は、ベースフレーム3の側面32に形成された内歯32aに噛み合う。その結果、ロッキングベース22の引き出し方向の回転が阻止されるので、スプール2の引き出し方向の回転も阻止される。
【0059】
次に、プリテンショナ5による緊急時の作動について説明する。
【0060】
車両衝突時等の所定値以上の加減速度または車両角度が検知される緊急時にプリテンショナ5が作動すると、ガス発生装置52cからガスが発生する。発生したガスにより押されたロッド52aは、ガイドパイプ52bに沿って移動する。パイプ開口52gから放出されたロッド52aは、パドルホイール51をシートベルトの巻き取り方向に回転させるので、スプール2もシートベルトの巻き取り方向に回転する。これにより、シートベルトはスプール2に巻き取られる。
【0061】
シートベルトの巻き取りが完了すると、乗員の慣性によりシートベルトは引っ張られるので、シートベルトの引き出し方向にスプール2は逆回転し始める。プリテンショナ5の作動によるシートベルトの巻き取り完了時、ピストン52eがガイドパイプ52bの内部に留まることでガス圧が保持される。ガス圧の保持によりガス圧が抵抗となるので、スプール2のロック機構6側の端部にあるロッキングベース22の引き出し方向の回転が抑止され、トーションバー21が捩り変形する。つまり、トーションバー21は、ロッキングベース22に対してスプール2がシートベルトの引き出し方向に相対回転することにより捩れる。
【0062】
なお、プリテンショナ5の作動によるシートベルトの巻き取り完了時、ビークルセンサ7によるロック機構6の作動が上述のように行われてもよい。ビークルセンサ7によるロック機構6の作動が上述のように行われることにより、ロッキングベース22の引き出し方向の回転が阻止されているので、トーションバー21が捩り変形する。
【0063】
トーションバー21が捩れ変形しながら、シートベルトの引き出し方向にスプール2は回転するので、シートベルトから乗員に加わる力が低減する。このように、トーションバー21によって、ロック機構6の作動状態でシートベルトから乗員に作用するエネルギーを、シートベルトの引き出しを許容することにより吸収するフォースリミッタを機能させることができる。
【0064】
次に、ストッパー機構8について説明する。
【0065】
ストッパー機構8は、プリテンショナ5の作動をトリガにトーションバー21の捩れを停止させる。ストッパー機構8がトーションバー21の捩れを停止させることによって、乗員を拘束するシートベルトがスプール2から過度に引き出されることが制限されるので、その乗員が過度に移動することが抑制される。このように、ストッパー機構8によれば、乗員の移動量を抑制することができる。また、ストッパー機構8は、トーションバー21の捩れをトリガとするのではなく、プリテンショナ5の作動をトリガにトーションバー21の捩れを停止させる。これにより、トーションバー21の捩れ量にかかわらず、トーションバー21の捩れを停止させるタイミングを設定(設計)することができるので、フォースリミッタの設計の自由度が向上する。
【0066】
また、
図3に示されるように、ストッパー機構8は、ロッキングベース22がトーションバー21に対して配置されている側とは反対側に配置されている。ストッパー機構8がこのように配置されていることにより、リトラクタ1の外観形状を対称に近づけることができるので、リトラクタ1の車両への搭載性が向上する。プリテンショナ5を備えた本実施形態では、トーションバー21に対してロッキングベース22及びパドルホイール51が配置されている側とは反対側に、ストッパー機構8が配置されているので、リトラクタ1の車両への搭載性が向上する。
【0067】
ストッパー機構8は、ベースフレーム3の側面31に対してトーションバー21とは反対側に配置されていて、トーションバー21とスプリングユニット4との間に配置されている。ストッパー機構8がこのように配置されていることにより、スプリングユニット4が存在していても、リトラクタ1の外観形状を対称に近づけることができるので、リトラクタ1の車両への搭載性が向上する。
【0068】
ストッパー機構8は、リテーナ81、ロックカムギア82、クラッチスプリング83、アーム84、ロックプレート85、アームスプリング86、ギアプレート87、ロックレバー88、トーションスプリング89、スペーサ90及び複数のスクリュ91を備える。
【0069】
また、リトラクタ1は、ロッド52aがプリテンショナ5から射出されることによって、プリテンショナ5の作動をストッパー機構8に伝達する伝達機構9を備える。例えば、図示のリトラクタ1は、伝達機構9として、スライダ93、スライダベース94及びジョイントレバー92を備える。ジョイントレバー92は、入力レバー92aと、出力レバー92bと、入力レバー92aと出力レバー92bとを繋ぐジョイントシャフト92cとを有する。
【0070】
次に、ストッパー機構8及び伝達機構9の動作について説明する。
【0071】
図6〜8は、プリテンショナ5の作動時の伝達機構9の動作の流れの一例を示す図である。
図6は、プリテンショナ5から射出されたロッド52aがスライダ93に接触する前の状態を示す図である。
図7は、プリテンショナ5から射出されたロッド52aがスライダ93に接触した状態を示す図である。
図8は、プリテンショナ5から射出されたロッド52aがスライダ93を押し出した状態を示す図である。
【0072】
図7〜8に示されるように、ロッド52aは、プリテンショナ5の作動時に、プリテンショナカバー53に沿って移動する。ロッド52aは、パドルホイール51を回転させながら、スライダ93をプリテンショナカバー53に形成された孔から押し出し方向aに押し出す。押し出し方向aは、スライダ93が移動するスライド方向を表す。スライダ93の押し出し動作によって、ジョイントレバー92が回転方向bに回転する。
【0073】
スライダ93の押し出し方向a及びジョイントレバー92の回転方向bは、スライダベース94によって規制される。スライダベース94は、ベースフレーム3の側面32の内側に固定されて配置されている。
【0074】
ロッド52aとの接触によりスライダ93が押し出し方向aに移動することによって、スライダ93は、入力レバー92aに接触する。スライダ93との接触により、入力レバー92aは、回転方向bに回転する。
【0075】
図9は、ジョイントレバー92が回転する状態を示す外観斜視図である。入力レバー92aが回転方向bに回転することに伴って、ジョイントシャフト92c及び出力レバー92bも、回転方向bと同じ回転方向cに回転する。つまり、ジョイントレバー92全体が回転する。ジョイントレバー92により、ベースフレーム3の側面32側でのアクションが、ベースフレーム3の側面31側に移る。
【0076】
図10は、ロックレバー88がロックカムギア82と係合する前の状態を示す図である。
図11は、ロックレバー88がロックカムギア82と係合した後の状態を示す図である。
図10,11に示されるように、ジョイントレバー92の出力レバー92bが回転するのを利用して、ロックレバー88が動く。ジョイントレバー92の出力レバー92bが回転すると、ロックレバー88は、トーションスプリング89の付勢力により、ロックカムギア82の外周部に形成された複数の外歯82aに近づくように回転方向dに回転する。ロックレバー88の係止部88aがロックカムギア82の外歯82aと噛み合うことにより、ロックカムギア82の回転は、阻止される。
【0077】
ロックレバー88は、レバー回転軸90aを中心に回転する。レバー回転軸90aは、スペーサ90の平面部から突出するように形成されている。
【0078】
ロックカムギア82は、ストッパー機構8が作動していない通常時にスプール2の回転と共に回転し、ストッパー機構8の作動時にシートベルトの引き出し方向へのスプール2の回転を阻止する第2のロック部材の一例である。ロックカムギア82は、スプール2のシャフト2aと嵌合するギア軸孔82cを有する。
【0079】
図12は、ロックカムギアの一例を示す斜視図である。
図12に示されるロックカムギア82の平面部には、渦巻き状の溝82bが形成されている。
【0080】
図13は、ストッパー機構の一例を一部を省略して示す斜視図である。
図14は、ストッパー機構の一例を示す断面図である。
図13では、ロックカムギア82が省略されている。
【0081】
ロックプレート85は、スプール2のシャフト2aと嵌合するプレート軸孔85cを有する。また、ロックプレート85の平面部には、アーム回転軸85aと長孔85bとが形成されている。アーム回転軸85aは、ロックプレート85の平面部から突出するように形成されている。アーム84は、アーム回転軸85aを中心に回転する。長孔85bには、セカンドパウル95の平面部から突出するセカンドボス95bが挿入されている。
【0082】
アーム84は、ロックプレート85の平面部にアーム回転軸85aを中心に揺動可能に取り付けられている。アーム84は、アーム回転軸85aが挿入されるアーム孔84aを有する。また、アーム84は、ロックカムギア82の溝82bに挿入されるアームボス84bを有する。アームボス84bは、アーム84の平面部から突出するように形成されている。
【0083】
図15〜17は、アーム84の動作を示す図である。
図15は、アーム84の動作前の状態を示す図である。
図16は、アーム84の動作中の状態を示す図である。
図17は、アーム84の動作後の状態を示す図である。
【0084】
ロックレバー88の係止部88aがロックカムギア82の外歯82aと噛み合うことにより、ロックカムギア82の回転は、固定されている。しかしながら、乗員の慣性によりシートベルトは引っ張られるので、シートベルトの引き出し方向にスプール2は回転する。そのため、スプール2に接続されているロックプレート85も回転し、ロックプレート85の上に載っているアーム84も回転する。その結果、ロックカムギア82の内側に設けられた渦巻き状の溝82bに沿ってアームボス84bが渦巻き方向eに進む(
図16参照)。アームボス84bが渦巻き状の溝82bの終点に到着すると(
図17参照)、アーム84の回転は固定されるので、ロックプレート85の回転は阻止される。ロックカムギア82の溝82bの渦巻き方向の長さ(溝82bの始点から終点までの長さ)によって、アーム84のアームボス84bが溝82bの終点に到着するタイミングを任意に設定することができる。また、溝82bの渦巻き方向の長さによって、トーションバー21の捩れ量を設定することができる。
【0085】
図18は、セカンドパウルの動作前の状態を示す図である。
図19は、セカンドパウルの動作中の状態を示す図である。
図20は、セカンドパウルの動作後の状態を示す図である。
【0086】
ロックカムギア82及びアーム84の回転が固定されることによりロックプレート85の回転が阻止されても、スプール2はさらに引き出し方向に回転しようとする。そのため、引き出し方向に回転するスプール2と、回転が阻止されたロックプレート85との間に相対回転(回転位相差)が発生する。回転位相差の発生に伴って、スプール2のスプールボス2bに揺動可能に取り付けられているセカンドパウル95も、スプール2と共に回転する。スプールボス2bは、スプール2のシャフト2aが突出する側の端面部に形成された突出部である。スプールボス2bは、セカンドパウル95に形成された揺動中心孔95aに挿入される。
【0087】
しかしながら、セカンドパウル95のセカンドボス95bが長孔85bに挿入されているロックプレート85の回転は、ロックカムギア82及びアーム84により阻止されている。そのため、セカンドボス95bは、シートベルトの引き出し方向に応じた移動方向に、長孔85bに沿って移動する。その結果、セカンドパウル95はロックプレート85の端面に沿って揺動し、セカンドパウル95のパウル先端部は、ギアプレート87の開口に形成された内歯87aに係合する。セカンドパウル95は、スプール2に直接連結されている。よって、セカンドパウル95が内歯87aに噛み合うことにより、スプール2の回転が阻止されるので、トーションバー21の捩れ動作は停止する。トーションバー21の捩れ動作が停止することにより、エネルギーの吸収動作は停止する。
【0088】
以上、シートベルトリトラクタ及びシートベルト装置を実施形態により説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。他の実施形態の一部又は全部との組み合わせや置換などの種々の変形及び改良が、本発明の範囲内で可能である。