(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記副磁石は、前記回転軸線に直交する断面形状における長手方向の両端が、周方向で隣り合う前記主磁石の間の極境界の直近まで延出するように形成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の同期モータ。
【発明を実施するための形態】
【0027】
次に、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0028】
(第1実施形態)
(減速機付モータ)
図1は、減速機付モータ1の斜視図、
図2は、
図1のA−A線に沿う断面図である。
図1、
図2に示すように、減速機付モータ1は、例えば車両に搭載される電装品(例えば、ワイパ、パワーウインドウ、サンルーフ、電動シート等)の駆動源となるものである。減速機付モータ1は、モータ部2と、モータ部2の回転を減速して出力する減速部3と、モータ部2の駆動制御を行うコントローラ部4と、を備えている。
なお、以下の説明において、単に軸方向という場合は、モータ部2の回転軸31の軸方向をいい、単に周方向という場合は、回転軸31の周方向をいい、単に径方向という場合は、回転軸31の径方向をいうものとする。
【0029】
(モータ部)
モータ部2は、モータケース5と、モータケース5内に収納されている略円筒状のステータ8と、ステータ8の径方向内側に設けられ、ステータ8に対して回転可能に設けられたロータ9と、を備えている。モータ部2は、ステータ8に電力を供給する際にブラシを必要としない、いわゆるブラシレスモータである。
【0030】
(モータケース)
モータケース5は、例えばアルミダイキャスト等の放熱性の優れた材料に形成されている。モータケース5は、軸方向に分割可能に構成された第1モータケース6と、第2モータケース7と、からなる。第1モータケース6及び第2モータケース7は、それぞれ有底筒状に形成されている。
第1モータケース6は、底部10が減速部3のギヤケース40と接合されるように、このギヤケース40と一体成形されている。底部10の径方向略中央には、ロータ9の回転軸31を挿通可能な貫通孔10aが形成されている。
【0031】
また、第1モータケース6の開口部6aに、嵌合部16が形成されていると共に、第2モータケース7の開口部7aに、嵌合部17が形成されている。これら嵌合部16,17同士をインロー嵌合させて内部空間を有するモータケース5を形成している。そして、モータケース5の内部空間に、第1モータケース6及び第2モータケース7に内嵌されるようにステータ8が配置されている。
【0032】
(ステータ)
図3は、ステータ8及びロータ9の軸方向からみた平面図である。
図2、
図3に示すように、ステータ8は、径方向に沿う断面形状が略正六角形となる筒状のコア部21と、コア部21から径方向内側に向かって突出する複数(例えば、本第1実施形態では6つ)のティース22と、が一体成形されたステータコア20を有している。
ステータコア20は、複数の金属板を軸方向に積層することにより形成されている。なお、ステータコア20は、複数の金属板を軸方向に積層して形成する場合に限られるものではなく、例えば、軟磁性粉を加圧成形することにより形成してもよい。
【0033】
ティース22は、コア部21の内周面から径方向に沿って突出するティース本体101と、ティース本体101の径方向内側端から周方向に沿って延びる鍔部102と、が一体成形されたものである。鍔部102は、ティース本体101から周方向両側に延びるように形成されている。そして、周方向で隣り合う鍔部102の間に、スロット19が形成される。
【0034】
また、コア部21の内周面、及びティース22は、樹脂製のインシュレータ23によって覆われている。このインシュレータ23の上から各ティース22にコイル24(
図2参照、
図3では不図示)が巻回されている。各コイル24は、コントローラ部4からの給電により、ロータ9を回転させるための磁界を生成する。
【0035】
(ロータ)
図4は、
図3のロータ9を拡大した図である。
同図に示すように、ロータ9は、ステータ8の径方向内側に微小隙間S1を介して回転自在に設けられている。ロータ9は、回転軸31と、回転軸31に外嵌固定されこの回転軸31を軸心C1とする略円柱状のロータコア32と、ロータコア32の外周面に設けられた4つの主磁石33と、ロータコア32に埋設されている4つの副磁石34と、を備えている。回転軸31は、減速部3を構成するウォーム軸44と一体成形されている(
図2参照)。
【0036】
ロータコア32は、複数の金属板を軸方向に積層することにより形成されている。なお、ロータコア32は、複数の金属板を軸方向に積層して形成する場合に限られるものではなく、例えば、軟磁性粉を加圧成形することにより形成してもよい。
また、ロータコア32の径方向略中央には、軸方向に貫通する貫通孔32aが形成されている。この貫通孔32aに、回転軸31が圧入されている。なお、貫通孔32aに対して回転軸31を挿入とし、接着剤等を用いて回転軸31にロータコア32を外嵌固定してもよい。
【0037】
さらに、ロータコア32の外周面32bには、4つの突起35が周方向に等間隔で設けられている。突起35は、径方向に突出され、且つロータコア32の軸方向全体に延びるように形成されている。
このように形成されたロータコア32の外周面32bは、周方向で隣り合う2つの突極35の間が、それぞれ主磁石収納部36として構成されている。これら主磁石収納部36に、それぞれ主磁石33が配置され、例えば接着剤等によりロータコア32に固定される。
【0038】
ここで、主磁石33の外表面33aの円弧中心C2は、回転軸31の軸心C1から僅かに偏心している。より具体的には、主磁石33の外表面33aの円弧中心C2は、ロータコア32の周方向で隣り合う2つの突極35間の中心を通る径方向に沿う直線L1上で、且つ回転軸31よりも対応するロータコア32の外周面32b寄りに設定されている。このため、主磁石33は、周方向中央における径方向の肉厚が最も大きく、周方向両端に向かうに従って徐々に肉厚が薄くなるように形成される。
このため、主磁石33の径方向外側の外表面33aとティース22の内周面との間の微小隙間S1は、主磁石33の周方向中央が最も小さく、この周方向中央から周方向に離間するに従って徐々に大きくなる。
【0039】
また、主磁石33は、磁界の配向が厚み方向に沿ってパラレル配向となるように着磁されている。そして、周方向に磁極が互い違いになるように、主磁石33が配置されている(
図4における主磁石33中に記載の矢印参照)。さらに、ロータコア32の突起35は、周方向で隣り合う主磁石33の間、つまり、磁極の境界(極境界)に位置している。
また、ロータコア32には、各主磁石33の径方向内側(回転軸31側)に、それぞれ副磁石用スリット37が形成されている。この副磁石用スリット37に、副磁石34が収納され、例えば接着剤等によりロータコア32に固定される。
【0040】
副磁石用スリット37は、径方向に沿う断面が径方向内側に向かって凸となるように略円弧状(瓦状)に形成されている。また、副磁石用スリット37は、径方向に沿う断面の長手方向両端37aが、ロータコア32の突起35の直近(極境界の直近)に至るまで延出するように形成されている。すなわち、ロータコア32の各突起35の径方向内側には、周方向で隣り合う2つの副磁石用スリット37の長手方向両端37aが、周方向に並んで配置された形になる。
【0041】
また、副磁石用スリット37は、径方向内側(回転軸31側)の内側面37bの曲率半径R1が、径方向外側(主磁石33側)の内側面37cの曲率半径R2よりも小さく設定されている。このため、副磁石用スリット37の短手方向の幅であるスリット幅は、径方向に沿う断面で長手方向中央が最も大きく、長手方向両端37aに向かうに従って徐々に小さくなる。
このように形成された副磁石用スリット37に収納される副磁石34は、副磁石用スリット37の形状に対応するように、径方向に沿う断面が径方向内側に向かって凸となるように、略円弧状(瓦状)に形成されている。副磁石34は、磁界の配向が厚み方向に沿ってラジアル配向となるように着磁されている。そして、副磁石34は、対応する主磁石33の配向とほぼ同じ向きになるように配置されている(
図4における副磁石34中に記載の矢印参照)。
【0042】
図5は、
図4のB部拡大図である。
ここで、同図に示すように、副磁石34の径方向に沿う断面の長手方向の周長は、副磁石用スリット37の径方向に沿う断面の長手方向の周長よりも若干短く設定されている。このため、副磁石用スリット37の長手方向両端37aには、副磁石34との間に僅かに空洞部38が形成される。この空洞部38は、副磁石34の磁束漏れを抑制するためのフラックスバリヤとして機能する。
【0043】
また、
図4に示すように、主磁石33の最大肉厚をT1maxとし、副磁石34の最大肉厚をT2maxとしたとき、最大肉厚T1max,T2maxは、
T1max≧T2max ・・・(1)
を満たすように設定されている。これについての詳細は、後述する。
そして、このように構成されたロータコア32は、1つの主磁石33と1つの副磁石34とが対となって1極を構成する。すなわち、本第1実施形態のロータコア32は、主磁石33と副磁石34との対が4つ設けられているので、4極に構成されている。
【0044】
(減速部)
図1、
図2に戻り、減速部3は、モータケース5が取り付けられているギヤケース40と、ギヤケース40内に収納されるウォーム減速機構41と、を備えている。ギヤケース40は、例えばアルミダイキャスト等の放熱性の優れた材料により形成されている。ギヤケース40は、一面に開口部40aを有する箱状に形成されており、内部にウォーム減速機構41を収容するギヤ収容部42を有する。また、ギヤケース40の側壁40bには、第1モータケース6が一体成形されている箇所に、この第1モータケース6の貫通孔10aとギヤ収容部42とを連通する開口部43が形成されている。
【0045】
さらに、ギヤケース40の側壁40bには、3つの固定ブラケット54a,54b,54cが一体成形されている。これら固定ブラケット54a,54b,54cは、不図示の車体等に、減速機付モータ1を固定するためのものである。3つの固定ブラケット54a,54b,54cは、モータ部2を避けるように、周方向にほぼ等間隔に配置されている。各固定ブラケット54a,54b,54cには、それぞれ防振ゴム55が装着されている。防振ゴム55は、減速機付モータ1を駆動する際の振動が、不図示の車体に伝達されてしまうのを防止するためのものである。
【0046】
また、ギヤケース40の底壁40cには、略円筒状の軸受ボス49が突設されている。
軸受ボス49は、ウォーム減速機構41の出力軸48を回転自在に支持するためのものであって、内周面に不図示の滑り軸受が設けられている。さらに、軸受ボス49の先端内周縁には、不図示のOリングが装着されている。これにより、軸受ボス49を介して外部から内部に塵埃や水が侵入してしまうことが防止される。また、軸受ボス49の外周面には、複数のリブ52が設けられている。これにより、軸受ボス49の剛性が確保されている。
【0047】
ギヤ収容部42に収容されたウォーム減速機構41は、ウォーム軸44と、ウォーム軸44に噛合されるウォームホイール45と、により構成されている。ウォーム軸44は、モータ部2の回転軸31と同軸上に配置されている。そして、ウォーム軸44は、両端がギヤケース40に設けられた軸受46,47によって回転自在に支持されている。ウォーム軸44のモータ部2側の端部は、軸受46を介してギヤケース40の開口部43に至るまで突出している。この突出したウォーム軸44の端部とモータ部2の回転軸31との端部が接合され、ウォーム軸44と回転軸31とが一体化されている。なお、ウォーム軸44と回転軸31は、1つの母材からウォーム軸部分と回転軸部分とを成形することにより一体として形成してもよい。
【0048】
ウォーム軸44に噛合されるウォームホイール45には、このウォームホイール45の径方向中央に出力軸48が設けられている。出力軸48は、ウォームホイール45の回転軸方向と同軸上に配置されており、ギヤケース40の軸受ボス49を介してギヤケース40の外部に突出している。出力軸48の突出した先端には、不図示の電装品と接続可能なスプライン48aが形成されている。
【0049】
また、ウォームホイール45の径方向中央には、出力軸48が突出されている側とは反対側に、不図示のセンサマグネットが設けられている。このセンサマグネットは、ウォームホイール45の回転位置を検出する回転位置検出部60の一方を構成している。この回転位置検出部60の他方を構成する磁気検出素子61は、ウォームホイール45のセンサマグネット側(ギヤケース40の開口部40a側)でウォームホイール45と対向配置されているコントローラ部4に設けられている。
【0050】
(コントローラ部)
モータ部2の駆動制御を行うコントローラ部4は、磁気検出素子61が実装されたコントローラ基板62と、ギヤケース40の開口部40aを閉塞するように設けられたカバー63と、を有している。そして、コントローラ基板62が、ウォームホイール45のセンサマグネット側(ギヤケース40の開口部40a側)に対向配置されている。
【0051】
コントローラ基板62は、いわゆるエポキシ基板に複数の導電性のパターン(不図示)が形成されたものである。コントローラ基板62には、モータ部2のステータコア20から引き出されたコイル24の端末部が接続されていると共に、カバー63に設けられたコネクタの端子(何れも不図示)が電気的に接続されている。また、コントローラ基板62には、磁気検出素子61の他に、コイル24に供給する電流を制御するFET(Field Effect Transistor:電界効果トランジスタ)等のスイッチング素子からなるパワーモジュール(不図示)が実装されている。さらに、コントローラ基板62には、このコントローラ基板62に印加される電圧の平滑化を行うコンデンサ(不図示)等が実装されている。
【0052】
このように構成されたコントローラ基板62を覆うカバー63は、樹脂により形成されている。また、カバー63は、若干外側に膨出するように形成されている。そして、カバー63の内面側は、コントローラ基板62等を収容するコントローラ収容部56とされている。
また、カバー63の外周部に、不図示のコネクタが一体成形されている。このコネクタは、不図示の外部電源から延びるコネクタと嵌着可能に形成されている。そして、不図示のコネクタの端子に、コントローラ基板62が電気的に接続されている。これにより、外部電源の電力がコントローラ基板62に供給される。
【0053】
さらに、カバー63の開口縁には、ギヤケース40の側壁40bの端部と嵌め合わされる嵌合部81が突出形成されている。嵌合部81は、カバー63の開口縁に沿う2つの壁81a,81bにより構成されている。そして、これら2つの壁81a,81bの間に、ギヤケース40の側壁40bの端部が挿入(嵌め合い)される。これにより、ギヤケース40とカバー63との間にラビリンス部83が形成される。このラビリンス部83によって、ギヤケース40とカバー63との間から塵埃や水が浸入してしまうことが防止される。なお、ギヤケース40とカバー63との固定は、不図示のボルトを締結することにより行われる。
【0054】
(減速機付モータの動作)
次に、減速機付モータ1の動作について説明する。
減速機付モータ1は、不図示のコネクタを介してコントローラ基板62に供給された電力が、不図示のパワーモジュールを介してモータ部2の各コイル24に選択的に供給される。すると、ステータ8(ティース22)に所定の鎖交磁束が形成され、この鎖交磁束とロータ9の主磁石33及び副磁石34により形成される有効磁束との間で磁気的な吸引力や反発力が生じる。これにより、ロータ9が継続的に回転する。
ロータ9が回転すると、回転軸31と一体化されているウォーム軸44が回転し、さらにウォーム軸44に噛合されているウォームホイール45が回転する。そして、ウォームホイール45に連結されている出力軸48が回転し、所望の電装品が駆動する。
【0055】
また、コントローラ基板62に実装されている磁気検出素子61によって検出されたウォームホイール45の回転位置検出結果は、信号として不図示の外部機器に出力される。
不図示の外部機器は、ウォームホイール45の回転位置検出信号に基づいて、不図示のパワーモジュールのスイッチング素子等の切替えタイミングが制御され、モータ部2の駆動制御が行われる。なお、パワーモジュールの駆動信号の出力やモータ部2の駆動制御は、コントローラ部4で行われていても良い。
【0056】
(ロータの作用、効果)
次に、
図4、
図6〜
図9に基づいて、ロータ9の作用、効果について説明する。
図4に示すように、ロータコア32には、各主磁石33の径方向内側(回転軸31側)にそれぞれ副磁石34が設けられている。また、径方向で並ぶ対の主磁石33及び副磁石34は、それぞれ磁界の配向の向きがほぼ同一方向に向いている。このため、主磁石33の磁束の不足分を副磁石34で補う形になる。
【0057】
しかも、主磁石33は、ロータコア32の外周面32bに沿って径方向に沿う断面が径方向外側に向かって凸となるように、略円弧状(瓦状)に形成されている。そして、主磁石33は、磁界の配向が厚み方向に沿ってパラレル配向となるように着磁されている。一方、副磁石34は、径方向に沿う断面が径方向内側に向かって凸となるように、略円弧状(瓦状)に形成されている。さらに、副磁石34は、磁界の配向が厚み方向に沿ってラジアル配向となるように着磁されている。このため、ロータコア32の全体でみると、所望の磁界の流れに沿って各磁石33,34が着磁されている。よって、主磁石33及び副磁石34のそれぞれを薄肉化しつつ、ロータコア32の全体として有効磁束量を十分満足することができる。以下、より具体的に説明する。
【0058】
図6は、磁石33,34の1gあたりのロータコア32の有効磁束量[μWb/g]を示すグラフであって、本第1実施形態のロータコア32と従来構造のロータコアと比較している。なお、ここでいう従来構造とは、ロータコアの外周面に永久磁石を一列に配置した、いわゆるSPM(Surface Permanent Magnet)モータのロータコアの構造をいう。
同図に示すように、従来構造と比較して、本第1実施形態の磁石33,34の1gあたりのロータコア32の有効磁束量が増加していることが確認できる。
【0059】
図7は、ロータコア32の有効磁束量[μWb/g]を示すグラフであって、主磁石33及び副磁石34の着磁の配向の違い毎に比較している。なお、
図7中、横軸は、主磁石33と副磁石34の着磁の配向の組み合わせを示し、「主磁石33の配向/副磁石34の配向」としている。また、「パラレル」は、パラレル配向をいい、「ラジアル」はラジアル配向をいう。すなわち、例えば「パラレル/ラジアル」とは、主磁石33の配向がパラレル配向であり、副磁石34の配向がラジアル配向であることを示している(以下の
図8も同様)。
【0060】
同図に示すように、主磁石33の配向がパラレル配向の場合に、ロータコア32の有効磁束量が増大することが確認できる。とりわけ、本第1実施形態のように、主磁石33の配向がパラレル配向であるのに対し、副磁石34の配向がラジアル配向である場合に、ロータコア32の有効磁束量が最大限に増大することが確認できる。
【0061】
図8は、ロータ9のコギングトルク[mN・m]を示すグラフであって、主磁石33及び副磁石34の着磁の配向の違い毎に比較している。
同図に示すように、主磁石33の配向がパラレル配向の場合に、ロータ9のコギングトルクを低減できることが確認できる。
【0062】
図9は、ロータコア32の有効磁束量[μWb/g]を示すグラフであって、主磁石33の最大肉厚T1maxと副磁石34の最大肉厚T2max(
図4参照)との比率の違いによる有効磁束量を比較している。なお、横軸に記載の数値は、主磁石33の最大肉厚T1maxを副磁石34の最大肉厚T2maxで除した値を示している。
同図に示すように、主磁石33の最大肉厚T1max及び副磁石34の最大肉厚T2maxが、上記式(1)を満たす場合、つまり、主磁石33の最大肉厚T1maxを副磁石34の最大肉厚T2maxで除した値が1以上である場合、ロータコア32の有効磁束量が十分満足されることが確認できる。
【0063】
このように、上述の第1実施形態のロータコア32は、このロータコア32の外周面32bに配置される1つの主磁石33と、この主磁石33の径方向内側(回転軸31側)に配置される1つの副磁石34と、が対となって1極を構成している。これにより、磁石33,34の1gあたりのロータコア32の有効磁束量を増大させることができる(
図6参照)。このため、従来のように磁石の磁化方向を肉厚化することなく、モータ部2のモータ特性を高めることができる。
【0064】
また、主磁石33を、ロータコア32の周囲を取り囲む略円筒状のリングマグネットとせずに、略瓦状に分割された複数(本第1実施形態で4つ)の主磁石33で構成している。そして、各主磁石33に、それぞれ1つの副磁石34を設けている。このため、ロータコア32に形成される磁束の流れを、所望の流れにできる限り近似させることができる。この結果、磁石33,34の1gあたりのロータコア32の有効磁束量を効率よく増大させることができる。よって、主磁石33及び副磁石34の材料コストを抑えることができる。
【0065】
さらに、主磁石33は、ロータコア32の外周面32bに沿って径方向に沿う断面が径方向外側に向かって凸となるように、略円弧状(瓦状)に形成されている。また、副磁石34は、径方向に沿う断面が径方向内側に向かって凸となるように、略円弧状(瓦状)に形成されている。このため、ロータコア32内における磁束の流れを効果的に形成でき、ロータコア32の外周面32bでの磁束密度を効果的に高めることができる。
【0066】
また、副磁石用スリット37(副磁石34)は、径方向に沿う断面の長手方向両端37aが、ロータコア32の突起35の直近(極境界の直近)に至るまで延出するように形成されている。そして、ロータコア32の各突起35の径方向内側には、周方向で隣り合う2つの副磁石用スリット37の長手方向両端37a(副磁石34の長手方向両端)が、周方向に並んで配置された形になる。このため、副磁石用スリット37(副磁石34)が突起35に続く磁路を遮断する形になり、突起35を介して主磁石33の磁束が漏出してしまうことを抑制できる。さらに、ステータ8(ティース22)に形成される鎖交磁束が突起35を介して流れ込むのを抑制でき、鎖交磁束によるロータコア32の磁束の乱れを抑制できる。この結果、ロータコア32の有効磁束量をさらに高めることができ、モータ部2のモータ特性をさらに高めることができる。
【0067】
また、ロータコア32の外周面32bには、4つの突起35が周方向に等間隔で設けられている。そして、周方向で隣り合う主磁石33の間に、突起35が介在された形になる。このため、突起35を利用してロータコア32の外周面32bに主磁石33を容易且つ確実に位置決め固定できる。また、主磁石33と比較して剛性の高い突起35を利用して主磁石33を固定するので、主磁石33同士を突き合わせて固定する場合と比較して、主磁石33のロータコア32に対する固着力を高めることができる。
【0068】
さらに、主磁石33の最大肉厚T1max及び副磁石34の最大肉厚T2maxが、上記式(1)を満たすように設定されているので、ロータコア32の有効磁束量を十分満足することができる。このため、ロータ9全体として磁石(主磁石33、副磁石34)の材料コストを確実に抑えることができる。
また、主磁石33がパラレル配向に着磁されているので、ロータコア32の外周面32bでの磁束の向きを均一化できる。このため、各主磁石33の径方向外表面の磁束を効率よく利用でき、ロータコア32の有効磁束を高めることができる。
【0069】
さらに、主磁石33の外表面33aの円弧中心C2が、回転軸31の軸心C1から僅かに偏心している。このため、主磁石33の径方向外側の外表面33aとティース22の内周面との間の微小隙間S1が、主磁石33の周方向中央が最も小さく、この周方向中央から周方向に離間するに従って徐々に大きくなる。よって、周方向で隣接する主磁石33間での急激な磁束の変化がステータ8(ティース22)に及ぼす影響を、極力減少することができる。この結果、モータ部2のコギングトルクを減少できる。
【0070】
(第2実施形態)
次に、
図10に基づいて、第2実施形態について説明する。
図10は、第2実施形態におけるステータ8及びロータ209の軸方向からみた平面図であって、前述の
図3に対応している。なお、前述の第1実施形態と同一態様には同一符号を付して説明を省略する(以下の第3実施形態についても同様)。
同図に示すように、前述の第1実施形態と本第2実施形態との相違点は、第2実施形態では、1つの主磁石33の径方向内側に、2つの副磁石34,234が設けられている点にある。
【0071】
より具体的には、ロータコア232には、外周面232bと副磁石用スリット37との間に、それぞれ第2の副磁石用スリット237が形成されている。この副磁石用スリット237に、第2の副磁石234が収納され、例えば接着剤等によりロータコア232に固定される。
第2の副磁石用スリット237は、径方向に沿う断面が径方向内側に向かって凸となるように略円弧状(瓦状)に形成されている。また、第2の副磁石用スリット237は、径方向に沿う断面の長手方向両端237aが、ロータコア232の外周面232b(主磁石収納部36)の直近に至るまで延出するように形成されている。
【0072】
また、第2の副磁石用スリット237は、径方向内側(回転軸31側)の内側面237bの曲率半径R3が、径方向外側(主磁石33側)の内側面237cの曲率半径R4よりも小さく設定されている。このため、第2の副磁石用スリット237の短手方向の幅であるスリット幅は、径方向に沿う断面で長手方向中央が最も大きく、長手方向両端237aに向かうに従って徐々に小さくなる。
【0073】
このように形成された第2の副磁石用スリット237に収納される第2の副磁石234は、第2の副磁石用スリット237の形状に対応するように、径方向に沿う断面が径方向内側に向かって凸となるように、略円弧状(瓦状)に形成されている。第2の副磁石234は、磁界の配向が厚み方向に沿ってラジアル配向となるように着磁されている。そして、第2の副磁石34は、対応する主磁石33の配向及び副磁石34と同じ向きになるように配置されている。
【0074】
また、第2の副磁石234の径方向に沿う断面の長手方向の周長は、第2の副磁石用スリット237の径方向に沿う断面の長手方向の周長よりも若干短く設定されている。このため、第2の副磁石用スリット237の長手方向両端237aには、第2の副磁石234との間に、僅かにフラックスバリヤとして機能する空洞部238が形成される。
さらに、第2の副磁石234の最大肉厚をT22maxとしたとき、第2の副磁石234の最大肉厚T22maxと副磁石34の最大肉厚T2maxは、
T2max≧T22max ・・・(2)
を満たすように設定されている。
【0075】
したがって、上述の第2実施形態によれば、前述の第1実施形態と同様の効果を奏することができる。さらに、第2の副磁石234を設ける分、前述の第1実施形態と比較してロータコア232の有効磁束量をさらに増大させることができる。
【0076】
(第3実施形態)
次に、
図11に基づいて、第3実施形態について説明する。
図11は、第3実施形態におけるステータ8及びロータ309の軸方向からみた平面図であって、前述の
図3に対応している。
同図に示すように、前述の第1実施形態と本第3実施形態との相違点は、第3実施形態では、1つの主磁石33の径方向内側に配置された副磁石334が、周方向に2分割に構成されて第1副磁石334a及び第2副磁石334bの2つの副磁石334a,334bで構成されている点にある。
【0077】
より具体的には、ロータコア332には、各主磁石33の径方向内側(回転軸31側)に、それぞれ副磁石用スリット337が形成されている。副磁石用スリット337は、径方向に沿う断面が径方向内側に向かって凸となるように略円弧状(瓦状)に形成されている。また、副磁石用スリット337は、径方向に沿う断面の長手方向両端337aが、ロータコア332の突起35の直近(極境界の直近)に至るまで延出するように形成されている。すなわち、ロータコア332の各突起35の径方向内側には、周方向で隣り合う2つの副磁石用スリット337の長手方向両端337aが、周方向に並んで配置された形になる。
【0078】
さらに、副磁石用スリット337の径方向断面における長手方向中央には、センターブリッジ50が設けられている。センターブリッジ50は、副磁石用スリット337の径方向内側(回転軸31側)の内側面337bと径方向外側(主磁石33側)の内側面337cとに跨るように形成されている。すなわち、センターブリッジ50は、径方向に沿って、且つロータコア332の軸方向全体に渡って形成されている。
そして、センターブリッジ50によって、副磁石用スリット337が2つの小副磁石用スリット338,339に区画されている。これら2つの小副磁石用スリット338,339に、それぞれ副磁石334a,334bが収納され、例えば接着剤等によりロータコア332に固定される。
【0079】
各副磁石334a,334bは、収納される小副磁石用スリット338,339の形状に対応するように、径方向に沿う断面が径方向内側に向かって凸となるように、略円弧状(瓦状)に形成されている。各副磁石334a,334bは、磁界の配向が厚み方向に沿ってラジアル配向となるように着磁されている。そして、各副磁石334a,334bは、対応する主磁石33の配向とほぼ同じ向きになるように配置されている。
【0080】
また、各副磁石334a,334bの径方向に沿う断面の長手方向の周長は、それぞれ対応する小副磁石用スリット338,339の径方向に沿う断面の長手方向の周長よりも若干短く設定されている。このため、各小副磁石用スリット338,339の長手方向両端には、それぞれ副磁石334a,334bとの間に、僅かにフラックスバリヤとして機能する空洞部340が形成される。
【0081】
このように、上述の第3実施形態では、1つの主磁石33の径方向内側(回転軸31側)に、2つの副磁石334a,334bが配置された形になる。そして、1つの主磁石33と2つの副磁石334a,334bとにより、1極を構成している。このように構成した場合であっても、前述の第1実施形態と同様の効果を奏することができる。
また、副磁石用スリット337にセンターブリッジ50を設けることにより、副磁石用スリット337を形成することによるロータコア332の剛性の低下を抑制できる。このため、例えば、ロータ309を高速回転させた際、遠心力によってロータコア332が変形してしまうことを抑制でき、信頼性の高いロータ309を提供できる。
【0082】
なお、本発明は上述の実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述の実施形態に種々の変更を加えたものを含む。
例えば、上述の実施形態では、減速機付モータ1は、車両に搭載される電装品(例えば、パワーウインドウ、サンルーフ、電動シート等)の駆動源となるものである場合について説明した。しかしながら、これに限られるものではなく、さまざまな用途に減速機付モータ1を使用することができる。
【0083】
また、上述の第1実施形態では、ロータコア32は、1つの主磁石33と、この主磁石33の径方向内側(回転軸31側)に配置される1つの副磁石34と、が対となって1極を構成している場合について説明した。さらに、上述の第2実施形態では、1つの主磁石33と、この主磁石33の径方向内側(回転軸31側)に配置される副磁石34及び第2の副磁石234とにより、1極を構成している場合について説明した。また、上述の第3実施形態では、1つの主磁石33と、この主磁石33の径方向内側(回転軸31側)に配置される2つの副磁石334a,334bとにより、1極を構成している場合について説明した。しかしながら、これに限られるものではなく、1つの主磁石33に対し、2つ以上の複数の副磁石を設けてもよい。
【0084】
また、上述の実施形態では、ロータコア32,232,332は、4つの主磁石33を有し、4極に構成されている場合について説明した。しかしながら、これに限られるものではなく、ロータコア32,232,332を、4極以上に構成してもよい。この場合、ロータコア32,232,332の極数に応じて主磁石33を設ければよい。
さらに、主磁石33は、略円弧状(瓦状)に形成されている場合について説明した。しかしながら、これに限られるものではなく、ロータコア32,232,332の外周面32,232b,332bを取り囲むように、主磁石33を略円筒状に形成してもよい。そして、主磁石33の磁極毎に、副磁石34,234,334a,334bを設ければよい。
【0085】
また、上述の実施形態では、ロータコア32,232,332に形成された副磁石用スリット37,237,337に、それぞれ副磁石34,234,334a,334bを収納した場合について説明した。しかしながら、これに限られるものではなく、副磁石用スリット37,237,337に磁性樹脂を充填し、この樹脂を副磁石34,234,334a,334bとして構成してもよい。
【0086】
さらに、上述の実施形態では、ロータコア32,232,332の外周面32,232b,332bには、径方向に突出され、且つロータコア32,232,332の軸方向全体に延びるように突起35が形成されている場合について説明した。しかしながら、これに限られるものではなく、ロータコア32,232,332の外周面32b,232b,332bに、軸方向に所定間隔をあけて突起35を形成してもよい。突起35は、略円弧状(瓦状)に形成された主磁石33の周方向の位置決めを行い、主磁石33を保持可能な形状であればよい。
【0087】
例えば、ロータコア32,232,332を、複数の金属板を軸方向に積層することにより形成する場合、金属板の外周面32b,232b,332bの1箇所に突起35を形成し、金属板を周方向に所定角度回転させながら積層してもよい。このように構成することで、ロータコア32,232,332の外周面32b,232b,332bに、軸方向に所定間隔をあけて突起35が形成される。
【0088】
また、上述の実施形態では、各副磁石用スリット37,237,337(各副磁石34,234,334a,334b)は、径方向に沿う断面が径方向内側に向かって凸となるように略円弧状(瓦状)に形成されている場合について説明した。しかしながら、これに限られるものではなく、主磁石33の配向と、この主磁石33と径方向で対向する副磁石34,234,334a,334bの配向とが同一方向を向いていればよい。
例えば、副磁石34,234,334a,334bを平板状に形成してもよい。また、各副磁石用スリット37,237,337を、径方向に沿う断面が径方向内側に向かって凸となるように、略V字状に形成し、これに対応するように、副磁石34,234,334a,334bを形成してもよい。