特許第6871069号(P6871069)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6871069
(24)【登録日】2021年4月19日
(45)【発行日】2021年5月12日
(54)【発明の名称】ガス弁装置
(51)【国際特許分類】
   F23K 5/00 20060101AFI20210426BHJP
   F16K 31/04 20060101ALI20210426BHJP
   F16K 1/36 20060101ALI20210426BHJP
   F16K 37/00 20060101ALI20210426BHJP
   F16K 31/06 20060101ALI20210426BHJP
   F16K 1/00 20060101ALI20210426BHJP
【FI】
   F23K5/00 301D
   F16K31/04 K
   F16K31/04 A
   F16K1/36 Z
   F16K37/00 D
   F16K31/06 385F
   F16K1/00 F
【請求項の数】3
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-110949(P2017-110949)
(22)【出願日】2017年6月5日
(65)【公開番号】特開2018-204869(P2018-204869A)
(43)【公開日】2018年12月27日
【審査請求日】2020年5月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000115854
【氏名又は名称】リンナイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000305
【氏名又は名称】特許業務法人青莪
(72)【発明者】
【氏名】近藤 秀幸
【審査官】 岩▲崎▼ 則昌
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−068356(JP,A)
【文献】 特開2002−276932(JP,A)
【文献】 特開2003−130333(JP,A)
【文献】 特開2017−020704(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23K 5/00
F16K 1/00
F16K 1/36
F16K 31/04
F16K 31/06
F16K 37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バルブケーシング内に流量調節弁が設けられたガス弁装置であって、バルブケーシングの軸方向一方を往動方向、軸方向他方を復動方向として、流量調節弁は、ステッピングモータの出力軸の正転及び逆転により運動変換機構を介して往動方向及び復動方向に駆動される操作ロッドに連結された弁体と、バルブケーシング内に設けられた復動方向を向く弁座とを備え、弁体は、弁座に当該弁座に開設した弁孔を閉塞するようにして着座可能な主弁体部と、主弁体部から往動方向に突出して弁孔に挿入可能なニードル状の副弁体部と、流量調節弁の上流側と下流側とを常時連通するバイパス通路とを有し、操作ロッドが往動方向に移動して所定のストローク範囲に存するときに、主弁体部が弁座に着座してバイパス通路のみを介してガスが流れてガス流量が最小量になる状態に維持されるようにしたものにおいて、
ガス流量を最小量に絞る際は、ステッピングモータに入力されるパルス数が、前記所定のストローク範囲の所定の中間位置よりも往動方向側にずれた当該ストローク範囲内の所定の最小流量位置への操作ロッドの移動に必要な所定数に達したときに、ステッピングモータを停止するようにし、
更に、ステッピングモータの出力軸と操作ロッドと運動変換機構の構成部材との何れかに設けられた検出子と、操作ロッドが前記所定の中間位置に移動したときの検出子の位置である所定の検出位置に検出子が変位したときにこれを検出する位置センサとを備え、
ガス流量を最小量に絞る際に、位置センサにより検出位置への検出子の変位が検出されないまま、ステッピングモータに入力されるパルス数が所定数に達した場合は、ガス供給を停止することを特徴とするガス弁装置。
【請求項2】
請求項1記載のガス弁装置であって、前記バルブケーシング内に、前記流量調節弁用の前記弁座及び前記弁孔を形成した軸方向に可動の弁座部材と、弁座部材を復動方向に付勢する弁座付勢手段と、弁座部材の復動方向への移動を所定位置で制止する弁座ストッパ手段と、電磁安全弁とが設けられ、電磁安全弁は、弁座部材に往動方向を向くように形成した安全弁用の弁座と、この弁座に着座可能な安全弁用の弁体と、この弁体を復動方向に付勢して安全弁用の弁座に着座させる弁バネと、安全弁用の弁体に往動方向にのびる弁軸を介して連結される吸着片と、吸着片に対向する電磁石とを有し、操作ロッドの往動方向への移動により、弁座部材が流量調節弁用の弁体に押されて往動方向に移動し、弁座部材を介して安全弁用の弁体が電磁石に吸着片が当接する開弁位置に押動されるようにし、前記所定のストローク範囲は、弁座部材が弁座ストッパ手段で制止される所定位置に存する状態で流量調節弁用の弁座に流量調節弁用の弁体の主弁体部が着座する位置と、開弁位置に存する安全弁用の弁体に安全弁用の弁座が当接する直前の位置との間の範囲であることを特徴とするガス弁装置。
【請求項3】
請求項2記載のガス弁装置であって、前記運動変換機構は、前記出力軸に連動して回転するように出力軸に連結子を介して連結される、前記操作ロッドと同心の筒状のカム体と、カム体に形成した螺旋状のカム溝に係合する、操作ロッドに固定のピンとを有し、カム体の正転と逆転でカム溝からピンを介して作用する軸方向推力により操作ロッドが往動方向と復動方向とに移動するようにしたカム機構で構成され、カム体は軸方向に移動可能であって、カム体の往動方向への移動を所定位置で制止するカムストッパ手段と、カム体を往動方向に付勢するカム付勢手段とを備え、前記安全弁用の弁体が開弁位置に到達した後の更なる前記出力軸の正転でピンからカム溝を介して作用する軸方向反力によりカム体がカムストッパ手段で制止される所定位置からカム付勢手段の付勢力に抗して復動方向に移動するようにしたものにおいて、
前記検出子は、カム体の外周面に突設した、復動方向に盛上る山部を有する突起部で構成され、山部は、山部の頂点部分から正転方向に向けて往動方向に傾斜してのびる第1斜辺部を有し、前記位置センサは、カム体の正転で検出子が前記検出位置に回転変位する際に第1斜辺部に当接して復動方向に押し上げられる検知レバーを有するマイクロスイッチで構成され、山部は、山部の頂点部分から逆転方向に向けてカム溝の傾斜角度以上の角度で往動方向に傾斜してのびる第2斜辺部を有し、安全弁用の弁体が開弁位置に到達した後の更なる出力軸の正転でカム体が正転するときに、検知レバーが第2斜辺部に当接することを特徴とするガス弁装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バルブケーシング内に流量調節弁が設けられたガス弁装置であって、バルブケーシングの軸方向一方を往動方向、軸方向他方を復動方向として、流量調節弁は、ステッピングモータの出力軸の正転及び逆転により運動変換機構を介して往動方向及び復動方向に駆動される操作ロッドに連結された弁体と、バルブケーシング内に設けられた復動方向を向く弁座とを備え、弁体は、弁座に当該弁座に開設した弁孔を閉塞するようにして着座可能な主弁体部と、主弁体部から往動方向に突出して弁孔に挿入可能なニードル状の副弁体部と、流量調節弁の上流側と下流側とを常時連通するバイパス通路とを有するものに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のガス弁装置として、バルブケーシング内に、流量調節弁用の弁座及び弁孔を形成した軸方向に可動の弁座部材と、弁座部材を復動方向に付勢する弁座付勢手段と、弁座部材の復動方向への移動を所定位置で制止する弁座ストッパ手段と、電磁安全弁とが設けられ、電磁安全弁は、弁座部材に往動方向を向くように形成した安全弁用の弁座と、この弁座に着座可能な安全弁用の弁体と、この弁体を復動方向に付勢して安全弁用の弁座に着座させる弁バネと、安全弁用の弁体に往動方向にのびる弁軸を介して連結される吸着片と、吸着片に対向する電磁石とを有し、操作ロッドの往動方向への移動により、弁座部材が流量調節弁用の弁体に押されて往動方向に移動し、弁座部材を介して安全弁用の弁体が電磁石に吸着片が当接する開弁位置に押動されるようにしたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このものでは、操作ロッドが往動方向に移動して所定のストローク範囲、即ち、弁座部材が弁座ストッパ手段で制止される所定位置に存する状態で流量調節弁用の弁座に流量調節弁用の弁体の主弁体部が着座する位置と、開弁位置に存する安全弁用の弁体に安全弁用の弁座が当接する直前の位置との間の範囲に存するときに、バイパス通路のみを介してガスが流れてガス流量が最小量になる状態に維持される。そこで、ガス流量を最小量に絞る際は、ステッピングモータに入力されるパルス数が、上記所定のストローク範囲内の所定の最小流量位置への操作ロッドの移動に必要な所定数に達したところで、ステッピングモータを停止している。然し、ステッピングモータにより駆動される運動変換機構の構成部材や操作ロッドのこじり等によりステッピングモータでの滑りを生ずると、ステッピングモータに入力されるパルス数が所定数に達しても、操作ロッドの実際の位置が上記所定のストローク範囲に到達せず、ガス流量が最小量よりも多くなってしまうことがある。
【0004】
ここで、鍋底温度センサを付設したコンロバーナ用のガス供給路にガス弁装置を介設し、鍋底温度センサの検出温度が所定の設定温度範囲の上限温度に上昇したときにガス流量を最小量に絞り、鍋底温度センサの検出温度が設定温度範囲の下限温度に低下したときにガス流量を増加する温調制御を行うものがある。この場合、鍋底温度センサの検出温度が設定温度範囲の上限温度に上昇して、操作ロッドを最小流量位置に移動停止させたときに、操作ロッドの実際の停止位置が上記の如く所定のストローク範囲に到達せずに、ガス流量が最小量よりも多くなると、鍋底温度が設定温度範囲の上限温度から大きくオーバーシュートし、過度に上昇してしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2013−68356号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、以上の点に鑑み、ステッピングモータに入力されるパルス数が最小流量位置に対応する所定数に達したときの操作ロッドの実際の位置がガス流量を最小量に維持する所定のストローク範囲に到達していない場合にガス供給を停止できるようにしたガス弁装置を提供することをその課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は、バルブケーシング内に流量調節弁が設けられたガス弁装置であって、バルブケーシングの軸方向一方を往動方向、軸方向他方を復動方向として、流量調節弁は、ステッピングモータの出力軸の正転及び逆転により運動変換機構を介して往動方向及び復動方向に駆動される操作ロッドに連結された弁体と、バルブケーシング内に設けられた復動方向を向く弁座とを備え、弁体は、弁座に当該弁座に開設した弁孔を閉塞するようにして着座可能な主弁体部と、主弁体部から往動方向に突出して弁孔に挿入可能なニードル状の副弁体部と、流量調節弁の上流側と下流側とを常時連通するバイパス通路とを有し、操作ロッドが往動方向に移動して所定のストローク範囲に存するときに、主弁体部が弁座に着座してバイパス通路のみを介してガスが流れてガス流量が最小量になる状態に維持されるようにしたものにおいて、ガス流量を最小量に絞る際は、ステッピングモータに入力されるパルス数が、前記所定のストローク範囲の所定の中間位置よりも往動方向側にずれた当該ストローク範囲内の所定の最小流量位置への操作ロッドの移動に必要な所定数に達したときに、ステッピングモータを停止するようにし、更に、ステッピングモータの出力軸と操作ロッドと運動変換機構の構成部材との何れかに設けられた検出子と、操作ロッドが前記所定の中間位置に移動したときの検出子の位置である所定の検出位置に検出子が変位したときにこれを検出する位置センサとを備え、ガス流量を最小量に絞る際に、位置センサにより前記検出位置への検出子の変位が検出されないまま、ステッピングモータに入力されるパルス数が所定数に達した場合は、ガス供給を停止することを特徴とする。
【0008】
ここで、ステッピングモータでの滑りを生じなければ、ステッピングモータに入力されるパルス数が所定数に達する前に、位置センサにより検出位置への検出子の変位が検出される。この場合は、操作ロッドの実際の位置が上記所定のストローク範囲に入っており、ガス流量が最小量に絞られる。一方、ステッピングモータでの滑りを生じて、ステッピングモータに入力されるパルス数が所定数に達したときの操作ロッドの実際の位置が上記所定のストローク範囲に到達していなければ、検出子の検出位置への変位が位置センサで検出されないまま、ステッピングモータに入力されるパルス数が所定数に達して駆動停止されることになる。従って、本発明によれば、ステッピングモータに入力されるパルス数が所定数に達して駆動停止されたときの操作ロッドの実際の位置が上記所定のストローク範囲に入っていない場合にガス供給を停止でき、安全である。
【0009】
また、本発明によれば、上記検出位置を操作ロッドが上記所定のストローク範囲の中間位置に存するときの検出子の位置に設定しているため、位置センサの設置位置の誤差等で、位置センサにより検出される検出子の実際の検出位置が所定の検出位置から多少ずれても、実際の検出位置に対応する操作ロッドの位置は上記所定のストローク範囲に入る。ここで、実際の検出位置に対応する操作ロッドの位置が上記所定のストローク範囲の手前であると、位置センサにより検出子の検出位置への変位が検出されてから、ステッピングモータに入力されるパルス数が所定数に達した場合でも、操作ロッドの実際の位置が上記所定のストローク範囲に到達していない可能性がある。これに対し、本発明によれば、上述した如く、操作ロッドが上記所定のストローク範囲に入る前に、位置センサにより検出位置への検出子の変位が検出されることはない。その結果、ステッピングモータに入力されるパルス数が所定数に達したときの操作ロッドの実際の位置が上記所定のストローク範囲に到達していないのに、ガス供給が停止されないことを防止できる。
【0010】
また、本発明のガス弁装置は、上記特許文献1に記載のガス弁装置の如く、バルブケーシング内に、流量調節弁用の上記弁座及び上記弁孔を形成した軸方向に可動の弁座部材と、弁座部材を復動方向に付勢する弁座付勢手段と、弁座部材の復動方向への移動を所定位置で制止する弁座ストッパ手段と、電磁安全弁とが設けられ、電磁安全弁は、弁座部材に往動方向を向くように形成した安全弁用の弁座と、この弁座に着座可能な安全弁用の弁体と、この弁体を復動方向に付勢して安全弁用の弁座に着座させる弁バネと、安全弁用の弁体に往動方向にのびる弁軸を介して連結される吸着片と、吸着片に対向する電磁石とを有し、操作ロッドの往動方向への移動により、弁座部材が流量調節弁用の弁体に押されて往動方向に移動し、弁座部材を介して安全弁用の弁体が電磁石に吸着片が当接する開弁位置に押動されるようにしたものとすることができる。この場合、上記所定のストローク範囲は、弁座部材が弁座ストッパ手段で制止される所定位置に存する状態で流量調節弁用の弁座に流量調節弁用の弁体の主弁体部が着座する位置と、開弁位置に存する安全弁用の弁体に安全弁用の弁座が当接する直前の位置との間の範囲になる。
【0011】
また、このような安全弁付きのガス弁装置において、本願出願人は、先に特願2016−142075号により、運動変換機構を、ステッピングモータの出力軸に連動して回転するように出力軸に連結子を介して連結される、操作ロッドと同心の筒状のカム体と、カム体に形成した螺旋状のカム溝に係合する、操作ロッドに固定のピンとを有し、カム体の正転と逆転でカム溝からピンを介して作用する軸方向推力により操作ロッドが往動方向と復動方向とに移動するようにしたカム機構で構成したものを提案している。このもので、カム体は軸方向に移動可能であって、カム体の往動方向への移動を所定位置で制止するカムストッパ手段と、カム体を往動方向に付勢するカム付勢手段とを備え、安全弁用の弁体が開弁位置に到達した後の更なるステッピングモータの出力軸の正転でピンからカム溝を介して作用する軸方向反力によりカム体がカムストッパ手段で制止される所定位置からカム付勢手段の付勢力に抗して復動方向に移動するようにしている。
【0012】
このようなガス弁装置において、検出子をカム体の外周面に突設した、復動方向に盛上る山部を有する突起部で構成し、位置センサを、カム体の正転で検出子が検出位置に回転変位する際に山部の頂点部分から正転方向に向けて往動方向に傾斜してのびる斜辺部に当接して復動方向に押し上げられる検知レバーを有するマイクロスイッチで構成すれば、構造を簡素化してコストダウンを図ることができる。
【0013】
但し、このものでは、安全弁用の弁体が開弁位置に到達した後の更なるステッピングモータの出力軸の正転でカム体がカムストッパ手段で制止される所定位置から復動方向に移動したときに、検知レバーが復動方向に作動限界以上に押し込まれて、マイクロスイッチが故障する可能性がある。そのため、上記山部は、山部の頂点部分から逆転方向に向けてカム溝の傾斜角度以上の傾斜角度で往動方向に向けて傾斜してのびる第2の斜辺部を有し、安全弁用の弁体が開弁位置に到達した後の更なる出力軸の正転でカム体が正転するときに検知レバーが第2の斜辺部に当接するように構成することが望ましい。これによれば、安全弁用の弁体が開弁位置に到達した後の更なる出力軸の正転でカム体が正転しつつ上記所定位置から復動する際に、検知レバーが復動方向に作動限界以上に押し込まれることを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の第1実施形態のガス弁装置の切断側面図。
図2】第1実施形態のガス弁装置の斜視図。
図3】(a)(b)(c)第1実施形態のガス弁装置の作動を示す要部の切断側面図。
図4】第1実施形態のガス弁装置の運動変換機構の構成部材及び弁座部材を示す斜視図。
図5】(a)(b)第1実施形態のガス弁装置の検出子とマイクロスイッチとの関係を示す側面図。
図6】第1実施形態のガス弁装置における操作ロッドの位置とガス流量との関係を示すグラフ。
図7】第1実施形態のガス弁装置で実行する最小流量への絞り制御の内容を示すフロー図。
図8】第2実施形態のガス弁装置の切断側面図。
図9】第3実施形態のガス弁装置の要部の切断側面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1図2を参照して、本発明の実施形態のガス弁装置は、筒状のバルブケーシング1と、バルブケーシング1内の軸方向一方寄り部分に配置した電磁安全弁2と、バルブケーシング1内の軸方向他方寄り部分に、電磁安全弁2と直列に配置した流量調節弁3と、バルブケーシング1内に軸方向他方から挿入されるバルブケーシング1の軸方向に長手の操作ロッド4と、バルブケーシング1の軸方向他方の端部に取付けられるボックス11の外端に搭載したステッピングモータ5と、ボックス11内に配置した、ステッピングモータ5の出力軸51の回転運動を操作ロッド4の軸方向運動に変換する運動変換機構6とを備えている。以下の説明では、バルブケーシング1の軸方向一方を往動方向、軸方向他方を復動方向と記す。
【0016】
バルブケーシング1には、電磁安全弁2の上流側に位置するガス流入口1aと、流量調節弁3の下流側に位置するガス流出口1bとが開設されている。そして、電磁安全弁2が開弁したとき、ガス流入口1aからガス流出口1bにガスが流れ、コンロバーナBにガスが供給される。このコンロバーナBには、調理容器の底面に当接する鍋底温度センサBaが付設されている。
【0017】
電磁安全弁2は、往動方向を向く弁座21と、弁座21に対向する弁体22と、弁体22を復動方向に付勢して弁座21に着座させる弁バネ23と、弁体22に往動方向にのびる弁軸22aを介して連結した吸着片24と、吸着片24に対向する電磁石25とを備えている。そして、弁体22を吸着片24が電磁石25に当接する開弁位置まで弁バネ23に抗して押動させた状態で電磁石25に通電することにより、弁体22が開弁位置に吸着保持される。また、コンロバーナBに付設する火炎検知素子(図示省略)により失火が検知されたときは、電磁石25への通電を停止し、弁体22を弁バネ23により弁座21に着座する閉弁位置に復帰させて電磁安全弁2を閉弁し、ガスの流出を防止する。
【0018】
電磁安全弁2の弁座21は、バルブケーシング1内に設けた、バルブケーシング1に対し軸方向に可動の弁座部材7の往動方向側端面に形成されている。また、バルブケーシング1内には、弁座部材7の復動方向への移動を電磁安全弁2の弁体22が着座可能な所定位置で制止する、バルブケーシング1の内面に形成した突起部から成る弁座ストッパ手段71と、弁座部材7を復動方向に付勢して上記所定位置に弾力的に保持するコイルスプリングから成る弁座付勢手段72とが設けられている。また、弁座部材7の外側にガスが流れることを防止するためにベロフラム73を設けている。
【0019】
流量調節弁3は、弁座部材7に復動方向を向くように形成した弁座31と、操作ロッド4の往動方向側端部に固定された弁体32とを備えている。弁体32は、弁座31に開設した弁孔31aを閉塞するように弁座31に着座可能な主弁体部321と、主弁体部321から往動方向に突出して弁孔31aに挿入可能なニードル状の副弁体部322と、流量調節弁3の上流側と下流側を常時連通するバイパス通路323とを有している。
【0020】
以上の構成によれば、図1に示す状態からステッピングモータ5の出力軸51を正転させると、運動変換機構6を介して操作ロッド4が往動方向に移動して、先ず、流量調節弁用の弁体32の主弁体部321が弁座ストッパ手段71で制止される所定位置に存する弁座部材7の流量調節弁用の弁座31に当接し、以後、弁座部材7が流量調節弁用の弁体32に押されて往動方向に移動し、弁座部材7を介して安全弁用の弁体22が開弁位置に押動される(図3(a)に示す状態)。この状態で電磁石25に通電して弁体22を開弁位置に吸着保持し、その後、ステッピングモータ5の出力軸51を逆転させ、運動変換機構6を介して操作ロッド4、即ち、流量調節弁用の弁体32を復動方向に移動させる。この際、弁座部材7は、弁座ストッパ手段71により制止される所定位置まで弁座付勢手段72の付勢力で弁体32に追従して復動方向に移動し、安全弁用の弁座21が開弁位置に吸着保持される弁体22から離れて、電磁安全弁2が開弁される。所定位置に制止される弁座部材7に対し操作ロッド4が更に復動方向に移動すると、流量調節弁用の弁体32の主弁体部321が流量調節弁用の弁座31から離れ、副弁体部322が弁孔31aから次第に抜け出て、ガス流量が次第に増加する。その後、操作ロッド4が往動方向に移動して所定のストローク範囲、即ち、弁座部材7が弁座ストッパ手段71で制止される所定位置に存する状態で流量調節弁用の弁座31に流量調節弁用の弁体32の主弁体部321が着座する位置(図3(b)の状態)と、開弁位置に存する安全弁用の弁体22に安全弁用の弁座21が当接する直前の位置(図3(c)の状態)との間の範囲に存するときであれば、バイパス通路323のみを介してガスが流れてガス流量が最小量になる状態に維持される。
【0021】
ところで、安全弁用の弁体22が開弁位置に到達した瞬間、即ち、吸着片24が電磁石25に当接した瞬間に、ステッピングモータ5を停止することは制御上困難である。そのため、弁体22が開弁位置に到達した後の更なるステッピングモータ5の出力軸51の正転で運動変換機構6を介して操作ロッド4が往動方向に押されると、吸着片24と電磁石25との当接部に過大な力が加わり、吸着片24の傷付きで吸着不良を生ずることがある。
【0022】
そこで、本実施形態では、運動変換機構6を以下の如く構成している。即ち、運動変換機構6は、図4にも示すように、ステッピングモータ5の出力軸51に連動して回転するように出力軸51に連結子61を介して連結される、操作ロッド4と同心の筒状のカム体62と、カム体62に形成した螺旋状のカム溝63に係合する、操作ロッド4に固定のピン64とを有し、カム体62の正転と逆転でカム溝63からピン64を介して作用する軸方向推力により操作ロッド4が往動方向と復動方向とに移動するようにしたカム機構で構成されている。
【0023】
連結子61は、断面が非円形の出力軸51に嵌合する非円形の孔611を有し、出力軸51と一緒に回転する。また、連結子61には、カム体62の復動方向側端部の小径筒部621に形成した切欠き部622に係合して回転力を伝達する突片部612が設けられている。
【0024】
カム体62には、バルブケーシング1から復動方向に延出したガイド筒65が挿入されている。ガイド筒65には、軸方向に長手の長孔651が形成されており、この長孔651にピン64を軸方向に摺動自在に係合させている。また、カム体62は、軸方向に移動自在であって、カム体62の往動方向への移動を所定位置で制止する、ボックス11の端板で構成されるカムストッパ手段66と、カム体62を往動方向に付勢するコイルスプリングから成るカム付勢手段67とを設けている。そして、安全弁用の弁体22が開弁位置に到達した後の更なるステッピングモータ5の出力軸51の正転で、ピン64からカム溝63を介して作用する軸方向反力によりカム体62がカム付勢手段67の付勢力に抗して復動方向に移動するようにしている。これによれば、安全弁用の弁体22が開弁位置に到達した後に更にステッピングモータ5の出力軸51を正転させても、吸着片24と電磁石25との当接部に過大な力は加わらず、吸着片24の傷付きで吸着不良を生ずることを防止できる。尚、安全弁用の弁体22が開弁位置に到達する前に、弁バネ23及び弁座付勢手段72の付勢力に負けてカム体62が復動方向に移動することのないように、カム付勢手段67の付勢力は、弁バネ23及び弁座付勢手段72の付勢力の合力よりも若干大きくなるように設定される。
【0025】
ところで、鍋底温度センサBaの検出温度が所定の設定温度範囲の上限温度に上昇したときにガス流量を最小量に絞り、鍋底温度センサBaの検出温度が設定温度範囲の下限温度に低下したときにガス流量を増加する温調制御を行うことがある。ガス流量を最小量に絞る際には、ステッピングモータ5に入力されるパルス数が、上記所定のストローク範囲(図3(b)の位置と同図(c)の位置との間の範囲)内の所定の最小流量位置への操作ロッド4の移動に必要な所定数に達しときに、ステッピングモータ5を停止する。
【0026】
図6は、ガス流量が最大となる最大流量位置からステッピングモータ5を正転させて操作ロッド4を往動方向に移動させたときのガス流量の変化を示している。上記所定のストローク範囲は図6のSの範囲となる。尚、このストローク範囲Sを超えて操作ロッド4を往動方向に移動させると、開弁位置に存する安全弁用の弁体22に安全弁用の弁座21が当接して、ガス供給が停止される。
【0027】
ここで、ステッピングモータ5により駆動される運動変換機構6の構成部材や操作ロッド4のこじり等によりステッピングモータ5での滑りを生ずると、ステッピングモータ5に入力されるパルス数が上記所定数に達しても、操作ロッド4の実際の位置が上記所定のストローク範囲Sに到達せずに、ガス流量が最小量よりも多くなってしまうことがある。これにより、鍋底温度が設定温度範囲の上限温度から大きくオーバーシュートし、過度に上昇してしまう。
【0028】
そこで、本実施形態では、ガス流量を最小量に絞る際は、ステッピングモータ5に入力されるパルス数が、上記所定のストローク範囲Sの所定の中間位置Smidよりも往動方向側にずれた当該ストローク範囲S内の所定の最小流量位置への操作ロッド4の移動に必要な所定数に達したときにステッピングモータ5を停止するようにしている。更に、運動変換機構6の構成部材であるカム体62に設けられた検出子8と、操作ロッド4が上記所定の中間位置Smidに移動したときの検出子8の位置である所定の検出位置に検出子8が変位したときにこれを検出する位置センサ9とを設けている。そして、ガス流量を最小量に絞る際に、位置センサ9により検出位置への検出子8の変位が検出されないまま、ステッピングモータ5に入力されるパルス数が上記所定数に達した場合は、ガス供給を停止するようにしている。
【0029】
図5も参照して、より具体的に説明すれば、検出子8は、カム体62の外周面に突設した、復動方向に盛上る山部81を有する突起部で構成されている。山部81は、その頂点部分81aから正転方向に向けて往動方向に傾斜してのびる第1斜辺部81bを有している。また、位置センサ9は、カム体62の正転で検出子8が上記検出位置に回転変位する際に第1斜辺部81bに当接して復動方向に押し上げられる検知レバー91を有するマイクロスイッチで構成されている。そして、検出子8が上記所定の中間位置Smidに対応する図5(a)に示す検出位置に回転変位したときに、位置センサたるマイクロスイッチ9がオンするようにしている。これによれば、検出子及び位置センサの構造を簡素化して、コストダウンを図ることができる。
【0030】
但し、このままでは、安全弁用の弁体22が開弁位置に到達した後の更なるステッピングモータ5の出力軸51の正転でカム体62がカムストッパ手段66で制止される所定位置から復動方向に移動したときに、検知レバー91が復動方向に作動限界以上に押し込まれて、マイクロスイッチ9が故障する可能性がある。そこで、山部81は、更に、頂点部分81aから逆転方向に向けてカム溝63の傾斜角度以上の角度で往動方向に傾斜してのびる第2斜辺部81cを有している。そして、安全弁用の弁体22が開弁位置に到達した後の更なるステッピングモータ5の出力軸51の正転でカム体62が正転するときに、検知レバー91が図5(b)に示す如く第2斜辺部81cに当接するようにしている。これによれば、安全弁用の弁体22が開弁位置に到達した後の更なるステッピングモータ5の出力軸の正転でカム体62が上記所定位置から復動方向に移動する際に、検知レバー81が復動方向に作動限界以上に押し込まれることを防止できる。
【0031】
温調制御でガス流量を最小流量に絞る際の制御内容は図7に示す通りであり、先ず、STEP1でステッピングモータ5を駆動して、操作ロッド4を往動方向に移動開始する。次に、STEP2で、ステッピングモータ5の駆動開始からの当該モータ5への入力パルス数が、上記所定の最小流量位置への操作ロッド4の移動に必要な所定数に達したか否かを判別し、所定数に達したときに、STEP3でステッピングモータ5、即ち、操作ロッド4を停止する。次に、STEP4に進み、マイクロスイッチ9がそれまでにオンしたか否かを判別する。マイクロスイッチ9がオンした場合は、STEP5に進んで今回の絞り制御を終了し、最小流量でのガス供給を継続する。一方、マイクロスイッチ9がそれまでにオンしなかった場合は、STEP6に進み、電磁石25への通電停止で電磁安全弁2を閉弁して、ガス供給を停止する。
【0032】
ここで、ステッピングモータ5での滑りを生じなければ、ステッピングモータ5に入力されるパルス数が所定数に達する前に、位置センサたるマイクロスイッチ9により検出位置への検出子8の変位が検出されて、マイクロスイッチ9がオンする。この場合は、操作ロッド4の実際の位置が上記所定のストローク範囲Sに入っており、ガス流量が最小量に絞られる。一方、ステッピングモータ5での滑りを生じて、ステッピングモータ5に入力されるパルス数が所定数に達したときの操作ロッド4の実際の位置が上記所定のストローク範囲Sに到達していなければ、検出子8の検出位置への変位がマイクロスイッチ9で検出されず、マイクロスイッチ9がオンしないまま、ステッピングモータに入力されるパルス数が所定数に達して駆動停止されることになる。従って、本実施形態の絞り制御によれば、ステッピングモータ5に入力されるパルス数が所定数に達して駆動停止されたときの操作ロッド4の実際の位置が上記所定のストローク範囲Sに入っていない場合にガス供給を停止でき、安全である。
【0033】
また、本実施形態によれば、マイクロスイッチ9がオンする検出位置を操作ロッド4が上記所定のストローク範囲Sの中間位置Smidに存するときの検出子8の位置に設定しているため、マイクロスイッチ9の設置位置の誤差等で、マイクロスイッチ9がオンする検出子8の実際の検出位置が所定の検出位置から多少ずれても、実際の検出位置に対応する操作ロッド4の位置は上記所定のストローク範囲Sに入る。ここで、実際の検出位置に対応する操作ロッドの位置が上記所定のストローク範囲Sの手前であると、マイクロスイッチ9がオンしてから、ステッピングモータ5に入力されるパルス数が所定数に達した場合でも、操作ロッド4の実際の位置が上記所定のストローク範囲Sに到達していない可能性がある。これに対し、本実施形態によれば、上述した如く、操作ロッド4が上記所定のストローク範囲Sに入る前に、マイクロスイッチ9がオンすることはない。その結果、ステッピングモータ5に入力されるパルス数が所定数に達したときの操作ロッド4の実際の位置が上記所定のストローク範囲Sに到達していないのに、ガス供給が停止されないことを防止できる。
【0034】
尚、上記第1実施形態では、検出子8をカム体62に設けているが、図8に示す第2実施形態の如く、ピン64に検出子8を設けてもよい。即ち、第2実施形態では、ピン64の端部で検出子8を構成している。そして、操作ロッド4が上記所定のストローク範囲の所定の中間位置(図8に示す位置)に存するときに、位置センサたるマイクロスイッチ9の検知レバー91が検出子8に当接して押し上げられ、マイクロスイッチ9がオンするようにしている。
【0035】
また、ピン64の端部に、検出子たる磁石を取付けると共に、位置センサをホールIC等の磁気センサで構成して、操作ロッド4が上記所定のストローク範囲の所定の中間位置に存するときに、磁石が磁気センサに近接対向して、センサ出力信号が切替るようにしてもよい。更に、検出子を、ステッピングモータ5の出力軸51や操作ロッド4といった運動変換機構6の構成部材以外の部材に設けることも可能である。但し、ステッピングモータ5の出力軸51に検出子を設けた場合は、運動変換機構6での遊びのばらつきにより、操作ロッド4が所定の中間位置に到達したときの検出子の位置が比較的大きくばらつく。このばらつきを小さく抑えるには、出力軸51に直接連結されていない運動変換機構6の構成部材又は操作ロッド4に検出子を設けることが望ましい。
【0036】
また、図9に示す第3実施形態のガス弁装置にも本発明を適用できる。第3実施形態では、バルブケーシング1内に軸方向に不動の弁座部材7´を設けると共に、操作ロッド4の往動方向側の端部に、操作ロッド4に対し軸方向に所定距離移動自在で、且つ、バネ32aにより往動方向に付勢される流量調節弁用の弁体32を取付けている。このものでは、操作ロッド4が、弁座部材7´に形成した復動方向を向く流量調節弁用の弁座31に弁体32の主弁体部321が着座する着座開始位置(図9の操作ロッド上半部の位置)と、弁体32に対しバネ32aを圧縮しつつ往動方向に所定距離移動した押切り位置(図9の操作ロッド下半部の位置)との間の所定ストローク範囲に存するときに、ガス流量が最小量になる。そして、図示しないが、上記実施形態と同様の検出子と位置センサとを設けて、操作ロッド4が上記所定のストローク範囲の所定の中間位置に移動したときに、これを位置センサで検出できるようにし、上記実施形態と同様の絞り制御を行う。
【符号の説明】
【0037】
1…バルブケーシング、2…電磁安全弁、21…安全弁用の弁座、22…安全弁用の弁体、22a…弁軸、23…弁バネ、24…吸着片、25…電磁石、3…流量調節弁、31…流量調節弁用の弁座、31a…弁孔、32…流量調節弁用の弁体、321…主弁体部、322…副弁体部、323…バイパス通路、4…操作ロッド、5…ステッピングモータ、51…出力軸、6…運動変換機構、61…連結子、62…カム体、63…カム溝、64…ピン、66…カムストッパ手段、67…カム付勢手段、7…弁座部材、71…弁座ストッパ手段、72…弁座付勢手段、8…検出子、81…山部、81a…頂点部分、81b…第1斜辺部、81c…第2斜辺部、9…マイクロスイッチ(位置センサ)、91…検知レバー。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9