特許第6871076号(P6871076)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6871076
(24)【登録日】2021年4月19日
(45)【発行日】2021年5月12日
(54)【発明の名称】検査装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/84 20060101AFI20210426BHJP
   G01N 21/85 20060101ALI20210426BHJP
   B07C 5/342 20060101ALI20210426BHJP
【FI】
   G01N21/84 C
   G01N21/85 A
   B07C5/342
【請求項の数】3
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-115498(P2017-115498)
(22)【出願日】2017年6月12日
(65)【公開番号】特開2019-2716(P2019-2716A)
(43)【公開日】2019年1月10日
【審査請求日】2020年1月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005119
【氏名又は名称】日立造船株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】林 一久
(72)【発明者】
【氏名】村上 聡
(72)【発明者】
【氏名】水戸川 保宏
【審査官】 嶋田 行志
(56)【参考文献】
【文献】 特開平02−157074(JP,A)
【文献】 特表2001−502965(JP,A)
【文献】 特開平08−108146(JP,A)
【文献】 実開平01−115615(JP,U)
【文献】 特開平05−305919(JP,A)
【文献】 特開2009−090197(JP,A)
【文献】 特開2017−072529(JP,A)
【文献】 特開平10−202206(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/84−21/958
G01N 21/00−21/61
G01J 3/00− 3/52
B07C 1/00−99/00
JSTPlus/JST7580/JSTChina(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査対象物を搬送する搬送部と、
前記搬送部の終端部から放出された前記検査対象物を撮影する撮影部と、
前記撮影部の撮影範囲に向けて光を照射する光照射部と、
前記撮影部によって撮影される画像の背景を設けるために光を照射する背景光照射部と、
前記撮影部によって撮影された色彩に基づいて、前記検査対象物に対する所定の判定を行う判定部とを備え、
前記搬送部は、始端部から前記終端部に向けて下るように水平面に対する20°以上40°以下の傾斜角度で傾斜して配置され、表面に多数の孔部を有する無端ベルトを回転させるベルトコンベアであり、
前記撮影部は、前記検査対象物を下方から撮影する下側撮影部を含み、
前記光照射部は、前記下側撮影部の撮影範囲に向けて光を照射する下側光照射部を含み、
前記背景光照射部は、前記下側撮影部の付近に配置される下側背景光照射部を含み、
前記下側撮影部、前記下側光照射部および前記下側背景光照射部は、前記搬送部の下側に隠れる位置に配置されていることを特徴とする検査装置。
【請求項2】
前記無端ベルトは、網目状に形成されていることにより多数の前記孔部を有することを特徴とする請求項1に記載の検査装置。
【請求項3】
前記検査対象物は水分を含んでいることを特徴とする請求項1または2に記載の検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検査対象物を撮影した色彩に基づいて検査対象物を検査する検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1に記載されているように、検査対象物の色彩に基づいて検査対象物に混在する異物等を検出する装置が知られている。引用文献1に記載されている装置は、検査対象物を、ベルトコンベアにより一定以上の速度で送ることでベルトコンベアの終端から飛び出させ、色彩を検知して選別や判別を行う。検査対象物は、ベルトコンベアから送り出された速度で飛び出すことにより、落下軌道に沿って落下する。また、当該装置は、この落下軌道の下側で検知装置を設けている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−202206号公報(1998年8月4日公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記の装置で検査される検査対象物がカット野菜(特に葉物野菜を角切りしたもの)のように水分を含んでいる場合、ベルトコンベアとの接触面に作用する摩擦力が、検査対象物が水分を含むことによる付着などにより大きいために、ベルトコンベアから飛び出すときにベルトから離れにくくなる。
【0005】
例えば、図6の(a)に示すように、乾燥した食品である検査対象物T1を水平に配置されたベルトコンベア300によって送り出す場合、検査対象物T1は、二点鎖線にて示す一定の放物線軌道を描くように落下する。これに対し、図6の(b)に示すように、例えば、上記のようなカット野菜である検査対象物T2をベルトコンベア300によって送り出すと、検査対象物T2は、ベルトコンベア300の終端部から直ぐには飛び出さずに、少しベルトに引き込まれるようにして飛び出す。このため、検査対象物T2は、二点鎖線にて示す放物線軌道より下方で回転しながら落下する。
【0006】
このように、乾燥していない検査対象物T2は、ベルトコンベア300のベルト301への付着性が高いので、ベルトコンベア300から飛び出すタイミングが遅れてしまう。特に、面積の大きいカット野菜はベルトに付着しやすいので、図6の(b)に示すように、ベルトコンベア300から飛び出すときに引き込まれるという不都合は解消できない。
【0007】
本発明の一態様は、一定の軌道に沿って検査対象物を落下させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る検査装置は、検査対象物を搬送する搬送部と、前記搬送部の終端部から放出された前記検査対象物を撮影する撮影部と、前記撮影部によって撮影された色彩に基づいて、前記検査対象物に対する所定の判定を行う判定部とを備え、前記搬送部が、始端部から前記終端部に向けて下るように傾斜して配置され、表面に多数の孔部を有する無端ベルトを回転させるベルトコンベアである。
【0009】
上記の構成によれば、無端ベルトが表面に多数の孔部を有することにより、対象物との接触面積が少なくなる。これにより、カット野菜(特に葉物野菜を角切りしたもの)のように無端ベルトとの接触面積が大きくなる検査対象物が搬送部から飛び出すとき、無端ベルトに巻き込まれることを回避することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の一態様によれば、一定の軌道に沿って検査対象物を落下させることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態に係る検査システムの構成を示す正面図である。
図2】(a)は上記検査システムにおける検査装置の構成を示す上面図であり、(b)は(a)のA−A線矢視断面図であり、(c)は上記検査装置の右方側面図である。
図3】上記検査装置の制御系の構成を示すブロック図である。
図4】(a)は水平に配置されたベルトコンベアに対するカメラの配置例を示す図であり、(b)は水平に配置されたベルトコンベアに対するカメラの他の配置例を示す図である。
図5】上記検査装置における搬送装置に対する下側カメラの配置を示す図である。
図6】(a)は水平に配置されたベルトコンベアから飛び出す乾燥した検査対象物が落下する状態を示す図であり、(b)は水平に配置されたベルトコンベアから飛び出すカット野菜が落下する状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の一実施形態について図1図5を用いて説明すれば、以下の通りである。
【0013】
図1は、本実施形態に係る検査システム100の構成を示す正面図である。図2の(a)は検査システム100における検査装置1の構成を示す上面図である。図2の(b)は、図2の(a)のA−A線矢視断面図である。図2の(c)は、検査装置1の右方側面図である。図3は、検査装置1の制御部11の構成を示すブロック図である。
【0014】
〔検査システム100の構成〕
図1に示すように、検査システム100は、検査装置1と、供給装置2と、投入装置3とを備えている。
【0015】
検査装置1は、供給装置2によって供給される検査対象物(以降、単に「対象物」と称する)を検査位置において上方から撮影した色彩と下方から撮影した色彩とに基づいて、対象物に対して所定の判定、例えば、異物であるか否か、良品であるか否かといった判定を行い、その判定結果に基づいて対象物を選別する装置である。ここでは、対象物として、乾燥食品と異なり水分を含んだカット野菜が考えられる。カット野菜としては、特に、葉物野菜と呼ばれる、キャベツ、レタス、ベビーリーフ等を生の状態で角切りしたもの(数センチ角程度に切り分けたもの)が対象物として好適である。また、カット野菜としては、みじん切りや千切り、さらにはダイスカットやスティック状にカットされた野菜も対象物として含まれる。
【0016】
供給装置2は、検査装置1に対象物を供給する装置である。供給装置2は、ベルトコンベア21と、架台22とを備えている。ベルトコンベア21は、架台22上に支持されており、ポリウレタン製の無端ベルトを回転駆動することにより、水平方向に対象物を搬送する。また、ベルトコンベア21は、検査装置1に設けられている後述の搬送部5の搬送速度より遅い搬送速度で対象物を搬送する。ベルトコンベア21の搬送速度については、後に具体的に説明する。
【0017】
投入装置3は、供給装置2に対象物を投入する装置であり、ベルトコンベア31と、対象物の搬送範囲を規制するトラフ32と、架台33とを備えている。投入装置3は、望ましくは、対象物を(時間的に)一定量となるように供給装置2に投入する。また、投入装置3は、ベルトコンベア31の終端部から直下の供給装置2(ベルトコンベア21)上に対象物を落下させる。
【0018】
〔検査装置1の構成〕
図1および図2の(a)〜(c)に示すように、検査装置1は、筐体4と、搬送部5と、上側検出部6と、下側検出部7と、エアガンユニット8と、電磁弁ユニット9と、シュータ10とを備えている。また、検査装置1は、図3に示す制御部11を備えている。
【0019】
筐体4は、後部筐体41と、支持部42と、上部筐体43と、下部筐体44とを有している。
【0020】
後部筐体41は、検査装置1の後部において、支持部42上に、検査装置1の上端に至る高さに設けられている。後部筐体41の内部には、制御部11を構成する制御ユニット(図示せず)が配置されている。
【0021】
支持部42は、筐体4の下部に設けられており、コ字形状を成すフレームによって構成されている。支持部42の下端面には、複数の支持脚42aが設けられている。
【0022】
上部筐体43は、後部筐体41における上部の正面左側に、後部筐体41の前面から前方に突出するように設けられている。上部筐体43の前面には、操作表示部43aが設けられている。操作表示部43aは、タッチパネルを有するモニタ装置であり、表示機能および操作機能を有している。また、上部筐体43内には、上側検出部6が配置されている。
【0023】
下部筐体44は、後部筐体41における下部の正面右側に、後部筐体41の前面から前方に突出するように設けられている。下部筐体44内には、下側検出部7が配置されている。
【0024】
搬送部5は、対象物が上側検出部6および下側検出部7による撮影位置を通過するように対象物を送り出す装置である。搬送部5は、後述する無端ベルト56を回転させるベルトコンベアであり、水平面に対して傾斜するように配置されている。具体的には、搬送部5は、対象物が供給される始端部から対象物を放出する終端部に向けて下るように傾斜している。搬送部5は、一対の支持フレーム51と、ローラ52,53,54と、一対のローラ支持板55と、無端ベルト56と、モータ支持部材57と、モータ58と、ベルト59とを有している。
【0025】
一対の支持フレーム51は、細長い板状の部材であり、無端ベルト56の幅よりもやや広い幅で平行となるように設けられている。支持フレーム51の供給装置2側には、ローラ52が回転可能に設けられ、支持フレーム51の上側検出部6および下側検出部7の側には、ローラ53が回転可能に設けられている。
【0026】
一対のローラ支持板55は、板状の部材であり、支持フレーム51の中間部位の下端部から、支持フレーム51の長手方向に対して垂直に下方へ伸びるように設けられている。ローラ支持板55の端部には、ローラ54が回転可能に設けられている。
【0027】
無端ベルト56は、ローラ52,53,54に架け渡されている。無端ベルト56は、一定の幅を有しており、表面に多数の孔部を有している。各孔部は、密集して設けられることが好ましい。また、無端ベルト56は、表面に多数の孔部を密集して有するように、全体に網目状に形成されていてもよい。無端ベルト56は、ローラ52,53間を移動する区間で水平面に対して傾斜している。
【0028】
モータ支持部材57は、モータ58を支持する部材であり、箱状に形成されている。モータ支持部材57は、後部筐体41側の支持フレーム51におけるローラ52側の端部に取り付けられている。モータ支持部材57の内部には、ベルト59が配置されている。
【0029】
ベルト59は、モータ58の駆動軸に設けられたプーリと、ローラ52と同軸に設けられたプーリとに架け渡されている。これにより、ベルト59はモータ58の回転力をローラ52に伝達する。
【0030】
上側検出部6は、対象物の上方から対象物の色彩を検出するために設けられている。上側検出部6は、上側カメラ61(撮影部)と、上側第1ランプ62と、上側第2ランプ63と、上側バックライト64とを有している。
【0031】
上側カメラ61は、搬送部5の終端部から放出された対象物を搬送部5の後段で上方から撮影する。上側カメラ61は、対象物を取付部材65によって上部筐体43の内壁上面に取り付けられている。上側カメラ61としては、例えば、一直線に配置されたラインセンサカメラが用いられる。
【0032】
上側第1ランプ62および上側第2ランプ63は、搬送部5の幅方向に沿って配置された長尺の光源であり、取付部材66によって上部筐体43の内壁上面に取り付けられている。上側第1ランプ62および上側第2ランプ63は、搬送部5の終端部の直後の空間、すなわち上側カメラ61の撮影範囲に向けて光を照射するように配置されている。
【0033】
上側バックライト64は、上側カメラ61で撮影される画像の背景とするために設けられており、拡散板を有するLEDによって構成されている。上側バックライト64は、取付部材67によって上部筐体43の内壁側面に取り付けられている。
【0034】
下側検出部7は、対象物の下方から対象物の色彩を検出するために設けられている。下側検出部7は、下側カメラ71(下側撮影部)と、下側第1ランプ72と、下側第2ランプ73と、下側バックライト74とを有している。
【0035】
下側カメラ71は、搬送部5の終端部から放出された対象物を搬送部5の後段で下方から撮影する。下側カメラ71は、取付部材75によって下部筐体44の内壁下面に取り付けられている。また、下側カメラ71は、搬送部5の下側で、搬送部5の終端部よりも搬送部5の上流側に配置されている。下側カメラ71としては、例えば、一直線に配置されたラインセンサカメラが用いられる。
【0036】
下側第1ランプ72および下側第2ランプ73は、搬送部5の幅方向に沿って配置された長尺の光源である。下側第1ランプ72は、取付部材76によって上部筐体43の内壁上面に取り付けられている。下側第2ランプ73は、下側カメラ71とともに取付部材75によって上部筐体43の内壁下面に取り付けられている。下側第1ランプ72および下側第2ランプ73は、搬送部5の終端部の直後の空間、すなわち下側カメラ71の撮影範囲に向けて光を照射するように配置されている。
【0037】
下側バックライト74は、下側カメラ71で撮影される画像の背景とするために設けられており、拡散板を有するLEDによって構成されている。下側バックライト74は、取付部材77によって上部筐体43の内壁下面に取り付けられている。
【0038】
なお、上側検出部6および下側検出部7は、それぞれ上側カメラ61および下側カメラ71を有しているが、対象物を撮影する手段はカメラに限定されない。上側検出部6および下側検出部7は、対象物を撮影する手段として、カメラに代えて一直線に配置されたセンサ(検出素子)などの他の撮影装置や色彩検出装置を有していてもよい。
【0039】
また、上側カメラ61の代わりに、搬送部5の上方から対象物を撮影するカメラ等を設けてもよい。
【0040】
上部筐体43における下部および搬送部5側の側部の一部は、下側検出部7が、対象物に光を照射するとともに色彩を検出するため、および後述するエアガンユニット8が対象物(異物、不良品等)に対して空気を噴射するために、開放されている。
【0041】
エアガンユニット8は、搬送部5の幅方向に沿って複数のエアガンが並べられて構成されている。エアガンユニット8は、図示しない取付部材によって上部筐体43における内壁の前面および後面に取り付けられている。エアガンユニット8の各エアガンは、搬送部5の終端部から放出された対象物が選別すべきものである場合、当該対象物に空気を噴射してその軌道を逸らせることにより、対象物を空中で選別する。
【0042】
電磁弁ユニット9は、複数の電磁弁が1つにまとめられたユニットであり、互いに間隔をおいて配置されている。電磁弁ユニット9は、図示しない取付部材によって上部筐体43における内壁の前面および後面に取り付けられている。電磁弁ユニット9を構成する各電磁弁は、オンすることにより、検査装置1の外部に設けられた図示しない圧縮空気供給源から供給される圧縮空気をエアガンユニット8において対応するエアガンに供給する。このため、各電磁弁は対応するエアガンと図示しないエアパイプを介して接続されている。
【0043】
シュータ10は、図1に示すように、取付部材91によって上部筐体43に取り付けられている。シュータ10は、搬送部5から放出されてエアガンユニット8によって軌道を逸らされなかった対象物と、エアガンユニット8によって軌道を逸らされた対象物とを区別して案内する部材である。
【0044】
〔制御部11の構成〕
図3に示すように、制御部11は、搬送制御部12と、照明制御部13と、操作表示制御部14と、判定部15と、選別制御部16とを有している。
【0045】
搬送制御部12は、搬送部5の動作を制御する。照明制御部13は、上述の、上側第1ランプ62、上側第2ランプ63、上側バックライト64、下側第1ランプ72、下側第2ランプ73および下側バックライト74の点灯を制御する。操作表示制御部14は、操作表示部43aのタッチパネルおよびモニタの動作を制御する。操作表示制御部14は、検査装置1の起動または停止の操作を受けると、搬送制御部12、照明制御部13、判定部15および選別制御部16を起動または停止させる。
【0046】
判定部15は、上側カメラ61および下側カメラ71から得られた対象物の色彩のデータに基づいて、対象物に対して所定の判定処理を行う。例えば、検査装置1を選別装置として利用する場合、判定部15は、予め記憶している基準品の色彩データと、撮影された対象物の色彩データとを照合して、対象物と基準品との相違を判定する。判定部15が行うこのような判定処理は、公知の色彩認識処理技術を用いて実現することができる。
【0047】
選別制御部16は、判定部15の判定結果に基づいて、エアガンユニット8の空気噴出動作を制御する。選別制御部16は、具体的には、対象物が選別すべきものであるという判定部15の判定結果を受けて、選別すべき対象物の軌道を逸らせるエアガンに対応する電磁弁をオンさせるように制御する。
【0048】
〔検査システム100の動作〕
上記のように構成される検査システム100の動作について説明する。ここでは、検査対象物が選別すべきものであるか否かを判定して、その結果に基づいて選別する動作について説明する。
【0049】
まず、対象物が投入装置3から供給装置2に投入される。供給装置2は、検査装置1に向けて対象物を搬送する。このとき、供給装置2は、ある程度速い速度で対象物を搬送するので、供給装置2から供給された対象物を適度に分散した状態で検査装置1に供給することができる。
【0050】
検査装置1において、搬送部5は、供給装置2によって搬送部5の始端部に供給された対象物を、供給装置2よりも速い速度で搬送部5の終端部に向けて搬送する。
【0051】
搬送部5に設けられた網目状の無端ベルト56は、編み込まれた繊維によって構成されているので、一般的なポリウレタン製の無端ベルトと異なって固い。このため、無端ベルト56上に対象物を投入すると、対象物が無端ベルト56上で跳ねやすい。また、搬送速度が速い搬送部5に対象物を直接投入すると、対象物が無端ベルト56上で跳ねやすくなる。このため、検査装置1の前段に、検査装置1よりも遅い速度で対象物を搬送する供給装置2を設けておく。
【0052】
ここで、搬送部5の搬送速度は、例えば90m/minであり、供給装置2の搬送速度は、例えば60m/minである。まず、供給装置2に対象物を投入し、ある程度速い速度で搬送部5に供給することで、無端ベルト56上での跳ね上がりを抑えて、対象物を安定させやすい。
【0053】
供給装置2の搬送速度が遅すぎると、投入された対象物が供給装置2上で重なりやすくなるだけでなく、検査装置1への供給速度が遅くなるので、検査効率が低下する。しかも、搬送部5と供給装置2との搬送速度の差が大きくなるので、対象物が無端ベルト56上で跳ねやすくなる。一方、供給装置2の搬送速度が速すぎると、投入装置3から投入された対象物が供給装置2上で跳ねやすくなるので、対象物を安定させるために、供給装置2の搬送距離を長くする必要がある。このため、供給装置2、延いては検査システム100を大型化させることになる。
【0054】
したがって、検査装置1の搬送速度は処理効率を高めるために速くするとともに、供給装置2の搬送速度には、搬送部5の搬送速度とある程度の速度差を設けておく。
【0055】
なお、供給装置2および搬送部5の搬送速度は、上記の例に限定されることがないのは勿論である。
【0056】
検査装置1において、搬送部5は、対象物を終端部まで搬送すると、搬送速度で対象物を放出する。上側検出部6の上側カメラ61および下側検出部7の下側カメラ71は、搬送部から放出された直後の対象物を両面(上側に向いた面および下側に向いた面)で撮影し、撮影した対象物の色彩データを制御部11に出力する。
【0057】
制御部11において、判定部15は、上側カメラ61および下側カメラ71からの色彩データに基づいて、対象物が選別すべきものであるか否かの判定処理を行う。
【0058】
選別制御部16は、判定部15から、対象物が選別すべきものではないという判定結果を通知されると、その対象物が通過する軌道に空気を噴出するエアガンに対応する電磁弁をオフする。これにより、当該対象物は、搬送部5の終端部から放出されると、エアガンによって空気を噴射されることなくそのままの軌道を進み、シュータ10によって案内されて、図2の(b)に示す良品収納部101に収納される。
【0059】
一方、選別制御部16は、判定部15から、対象物が選別すべきもの(例えば不良品や異物)であるという判定結果を通知されると、その対象物が通過する軌道に空気を噴出するエアガンに対応する電磁弁をオンする。これにより、搬送部5の終端部から放出された当該対象物は、エアガンに空気を噴射されることにより、シュータ10によって案内されて、図2の(b)に示す不良品収納部102に収納される。
【0060】
このような処理により、例えば、検査装置1に供給されたカット野菜から不良品(褐色や黒色に変色したもの)や異物を選別することができる。
【0061】
〔検査装置1による効果〕
本実施形態に係る検査装置1は、始端部から終端部に向けて下るように傾斜している搬送部5を備えている。具体的には、無端ベルト56の搬送面が上記のように傾斜している。搬送部5の傾斜角度は、具体的には30°に設定されるが、これに限らず、20°以上40°以下の範囲であればよい。また、搬送部5は、表面に多数の孔部を有する無端ベルト56を有しており、より好ましくは網目状の無端ベルト56を有している。無端ベルト56の網目の大きさは、例えば2mm程度である。
【0062】
上記構成によれば、搬送部5が傾斜していることにより、対象物を、ある程度の重力の影響を受けながら落下させるとともに、無端ベルト56によって対象物を落下方向に押し出す。これにより、対象物に作用する落下方向への力を大きくすることができる。それゆえ、対象物が搬送部5から飛び出した後の姿勢を、より安定させることができる。
【0063】
しかも、無端ベルト56が表面に多数の孔部を有することにより、対象物との接触面積が小さくなる。これにより、カット野菜(特に葉物野菜を角切りしたもの)のように無端ベルト56との接触面積が大きくなる対象物が搬送部5から飛び出すとき、無端ベルト56に巻き込まれることを回避することができる。また、洗浄後のカット野菜を検査する場合、カット野菜に付着した水分を網目状の無端ベルト56を通して落とすことにより、当該水分の除去が可能になる。
【0064】
したがって、乾燥していない葉物野菜や、洗浄後の濡れた葉物野菜といった、無端ベルト56への付着性が高い対象物を、規定の放物線軌道を辿って落下させることができる。よって、このような対象物に対する検査装置1の検査精度を向上させることができる。
【0065】
なお、本実施形態において、無端ベルト56は、表面に多数の孔部を有しているが、対象物との接触面積を小さくすることができれば、このような構成には限定されない。例えば、表面に多数の凹凸を設けた無端ベルト56であってもよい。
【0066】
ここで、前述した特許文献1に記載されているような従来の装置では、ベルトコンベアを搬送部5程度に大きく傾斜させると、検査対象物がベルトコンベア上を転がり落ちてしまう。このため、従来の装置では、ベルトコンベアを、ほぼ水平の緩やかな角度となるように配置している。
【0067】
これに対し、検査装置1が検査対象とする葉物野菜は、一般的なポリウレタン製のベルトコンベアで搬送される場合、10°以下といった緩やかな傾斜角度では、ベルトコンベアの終端部に達したときにベルトコンベアに引き込まれてしまう。このため、図6の(b)に示すように、規定の放物線軌道を辿って落下しないときいう不都合が生じる。
【0068】
そこで、検査装置1では、搬送部5を従来の装置におけるベルトコンベアと比べて大きく傾斜させることにより、葉物野菜の落下姿勢を、上記のようにより安定化させることができる。
【0069】
なお、対象物が搬送部5の傾斜角度が45°以上であると、対象物との接触面積が少ない無端ベルト56に対して対象物が滑り落ちてしまう。したがって、搬送部5の傾斜角度は、45°未満であることが好ましい。対象物が重力に抗しきれずに無端ベルト56に対して滑り落ちてしまう角度(安息角)は、対象物に応じて異なる。特に、葉物野菜は、搬送部5の傾斜角度が40°を超えると、重力に抗しきれずに無端ベルト56に対して滑り落ちてしまうので、搬送部5の傾斜角度は、40°以下であることが望ましい。
【0070】
続いて、下側カメラ71の配置について説明する。図4の(a)は、水平に配置されたベルトコンベア200に対するカメラ201の配置例を示す図である。図4の(b)は、水平に配置されたベルトコンベア200に対するカメラ202の他の配置例を示す図である。図5は、検査装置1における搬送部5に対する下側カメラ71の配置を示す図である。
【0071】
図4の(a)に示すように、水平に配置されたベルトコンベア200から対象物を放出する場合、下側から対象物を撮影するカメラ201は、ベルトコンベア200の終端部から飛び出した直後の軌道のばらつきが最小の状態で対象物を撮影することが好ましい。このため、カメラ201は、図4の(a)に示すように、ランプ202,203からの光が照射可能である検出位置P1の真下に配置されることが好ましい。しかしながら、カメラ201がこの位置に配置されると、微小な異物などがベルトコンベア200から真下に落下して、カメラ201のレンズ上に堆積するという不都合がある。
【0072】
このような不都合を回避するため、図4の(b)に示すように、ベルトコンベア200の下側において、終端部から始端部側(上流側)へ少し近づいた位置(ベルトコンベア200の下側に隠れる位置)に、カメラ201およびランプ202,203を配置する。しかしながら、この位置からベルトコンベア200の終端部へ斜め方向にカメラ201およびランプ202,203を向ける場合、上記の検出位置P1は、ベルトコンベア200の終端部によってランプ202,203の照射光が遮られる。このため、ランプ202,203の照射光が遮られないような、検出位置P1よりも終端部から離れた検出位置P2で、対象物を撮影しなければならない。検出位置P2で対象物を撮影すると、検出位置P1で対象物を撮影した場合よりも検査精度が低下してしまう。
【0073】
これに対し、検査装置1では、図5に示すように、搬送部5が従来の装置におけるベルトコンベアよりも上記のように大きく傾斜している。これにより、下側カメラ71を、下側第1ランプ72および下側第2ランプ73とともに、搬送部5の終端部から始端部側へ近づいた位置(搬送部5の下側に隠れる位置)に配置すると、検出位置P2よりも検出位置P1に近い検出位置P3で対象物を撮影することができる。したがって、図4の(b)に示す例と比べて、検査精度を向上させることができる。
【0074】
また、検出位置P3を検出位置P1に近づけるように、搬送部5の搬送方向と、下側カメラ71が検出位置P3の対象物を撮影する方向との成す角度を垂直に近い角度に確保した状態では、搬送部5の傾斜角度が大きいほど、下側カメラ71を、搬送部5の始端部側に近づけることができる。これにより、上記のように搬送部5が大きく傾斜することにより、下側カメラ71を搬送部5の終端部の直下から遠ざけることができる。したがって、下側カメラ71の汚損をより確実に防止することができる。なお、搬送部5の傾斜角度が20°未満であれば、下側カメラ71を搬送部5の終端部より上流側に配置することができなくなる。
【0075】
また、下側カメラ71、下側第1ランプ72および下側第2ランプ73が、搬送部5の下側に配置されるので、良品収納部101および不良品収納部102を搬送部5の終端部に近づけて配置することができる。これにより、検査装置1の小型化を図ることが可能となる。
【0076】
〔ソフトウェアによる実現例〕
検査装置1の制御部11は、集積回路(ICチップ)等に形成された論理回路(ハードウェア)によって実現してもよいし、CPU(Central Processing Unit)を用いてソフトウェアによって実現してもよい。
【0077】
後者の場合、検査装置1は、各機能を実現するソフトウェアであるプログラムの命令を実行するCPU、上記プログラムおよび各種データがコンピュータ(またはCPU)で読み取り可能に記録されたROM(Read Only Memory)または記憶装置(これらを「記録媒体」と称する)、上記プログラムを展開するRAM(Random Access Memory)などを備えている。そして、コンピュータ(またはCPU)が上記プログラムを上記記録媒体から読み取って実行することにより、本発明の目的が達成される。上記記録媒体としては、「一時的でない有形の媒体」、例えば、テープ、ディスク、カード、半導体メモリ、プログラマブルな論理回路などを用いることができる。また、上記プログラムは、該プログラムを伝送可能な任意の伝送媒体(通信ネットワークや放送波等)を介して上記コンピュータに供給されてもよい。なお、本発明は、上記プログラムが電子的な伝送によって具現化された、搬送波に埋め込まれたデータ信号の形態でも実現され得る。
【0078】
〔付記事項〕
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0079】
1 検査装置
5 搬送部
15 判定部
56 無端ベルト
61 上側カメラ(撮影部)
71 下側カメラ(撮影部,下側撮影部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6