特許第6871082号(P6871082)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本電産コパル株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6871082-リニア振動モータ及び電子機器 図000002
  • 特許6871082-リニア振動モータ及び電子機器 図000003
  • 特許6871082-リニア振動モータ及び電子機器 図000004
  • 特許6871082-リニア振動モータ及び電子機器 図000005
  • 特許6871082-リニア振動モータ及び電子機器 図000006
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6871082
(24)【登録日】2021年4月19日
(45)【発行日】2021年5月12日
(54)【発明の名称】リニア振動モータ及び電子機器
(51)【国際特許分類】
   H02K 33/02 20060101AFI20210426BHJP
   B06B 1/04 20060101ALI20210426BHJP
【FI】
   H02K33/02 A
   B06B1/04 S
【請求項の数】5
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2017-122142(P2017-122142)
(22)【出願日】2017年6月22日
(65)【公開番号】特開2019-9872(P2019-9872A)
(43)【公開日】2019年1月17日
【審査請求日】2020年6月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001225
【氏名又は名称】日本電産コパル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000626
【氏名又は名称】特許業務法人 英知国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】久信田 栞
【審査官】 佐藤 彰洋
(56)【参考文献】
【文献】 特開2017−077153(JP,A)
【文献】 特開2017−070017(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 33/00−33/18
B06B 1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
可動子と、前記可動子を振動可能に支持する基体と、前記可動子を前記基体に沿って振動させるコイルと、前記可動子の振動方向に沿って弾性的に撓む板バネとを備え、
前記基体には、前記振動方向に対する交差方向へ弾性変形可能な支持部が一体的に設けられ、
前記板バネは、一端側を前記可動子に止着するとともに他端側を前記支持部に止着していることを特徴とするリニア振動モータ。
【請求項2】
前記基体は、前記可動子の振動方向の両側に位置する側壁を有し、
前記側壁は、前記交差方向へ間隔を置いた二つの切欠部を有し、これら二つの切欠部の間の部分を、前記支持部にしていることを特徴とする請求項1記載のリニア振動モータ。
【請求項3】
前記支持部の前記弾性変形により、前記可動子が傾いて前記基体に接触するようにしたことを特徴とする請求項2記載のリニア振動モータ。
【請求項4】
前記可動子は、前記交差方向の寸法が前記振動方向の寸法よりも長い長尺状に形成され、
前記板バネは、一端側を前記可動子の長手方向の一方側に止着するとともに、他端側を前記可動子の長手方向の他方側へ斜めに延設し前記支持部に止着していることを特徴とする請求項3記載のリニア振動モータ。
【請求項5】
請求項1乃至4何れか1項記載のリニア振動モータを備えた電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リニア振動モータ、及びこのリニア振動モータを備えた電子機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
振動モータ(或いは振動アクチュエータ)は、携帯電子機器に内蔵され、着信やアラームなどの信号発生等を振動によって携帯者に伝える装置として広く普及しており、携帯者が身につけて持ち運ぶウエアラブル電子機器においては、不可欠な装置になっている。また、振動モータは、タッチパネルなどのヒューマン・インターフェイスにおけるハプティクス(皮膚感覚フィードバック)を実現する装置として、近年注目されている。
【0003】
このような振動モータについて各種の形態が開発されている中で、可動子の直線的な往復振動によって比較的大きな振動を発生させることができるリニア振動モータが注目されている。リニア振動モータは、可動子側に錘とマグネットを設け、固定子側に設けたコイルに通電することでマグネットに作用するローレンツ力が駆動力となり、振動方向に沿って弾性支持される可動子を一軸方向に往復振動させるものである。
例えば、特許文献1には、可動子(分銅)の振動に伴い板バネを弾性的に撓ませるように、可動子が板バネを介して蓋部の側壁に止着されている振動アクチュエータが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017−18958号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記従来技術によれば、リニア振動モータを可動子の振動方向へ落下した場合に、その落下衝撃を板バネの弾性的な撓みによりある程度吸収することができる。
しかしながら、リニア振動モータを可動子の振動方向に対する交差方向へ落下した場合には、板バネの弾性的な撓みを得難いため、板バネの止着箇所に局部的に荷重が作用し、板バネの塑性変形や損傷等を生じてしまうおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような課題を解決するために、本発明は以下の構成を具備するものである。
可動子と、前記可動子を振動可能に支持する基体と、前記可動子を前記基体に沿って振動させるコイルと、前記可動子の振動方向に沿って弾性的に撓む板バネとを備え、前記基体には、前記振動方向に対する交差方向へ弾性変形可能な支持部が一体的に設けられ、前記板バネは、一端側を前記可動子に止着するとともに他端側を前記支持部に止着していることを特徴とするリニア振動モータ。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明に係るリニア振動モータの一例を示す斜視図である。
図2】同リニア振動モータを示す分解斜視図である。
図3】同リニア振動モータについて、基板部及びコイル等を省いた状態を示す底面図である。
図4】同リニア振動モータの縦断面図であり、可動子が基板部に接触した状態を示す。
図5】同リニア振動モータを具備した電子機器の一例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。以下の説明で異なる図における同一符号は同一機能の部位を示しており、各図における重複説明は適宜省略する。
【0009】
リニア振動モータ1は、図1図4に示すように、可動子10と、可動子10を振動可能に支持する箱状の基体20と、可動子10を基体20に沿って振動させるコイル30と、可動子10の振動方向に沿って弾性的に撓む2つの板バネ40,40とを備える。
【0010】
可動子10は、振動方向の寸法よりも、振動方向に対する交差方向の寸法が長い長尺状に形成される。
この可動子10は、長尺状の一対のマグネット11,11と、これらマグネット11,11の長手方向の両端側に固定された錘体12,12と、マグネット11,11の反コイル側の面に長手方向へわたって固定されたヨーク13とを備え、両側の板バネ40,40を介して短手方向(図示のY方向)へ振動するように支持されている。
【0011】
各マグネット11は、長尺な直方体状に形成され、コイル30面に対し直交する方向(図示のZ方向)の一方をN極、他方をS極としている。
一対のマグネット11,11は、所定の隙間を置いて略平行に設けられる。一方のマグネット11は、他方のマグネット11に対し磁極が逆になっている。
これら一対のマグネット11,11は、ヨーク13によって一体に固定されている。
【0012】
錘体12,12は、比重の高い金属材料(例えば、タングステン)などによって略直方体状に形成される。
【0013】
各錘体12は、可動子10が短手方向(図示のY方向)へ振動した際に、後述する基体20のカバー部22内面に固定された緩衝材14に当接する。
緩衝材14は、ゴム等の弾性材料からブロック状に形成され、振動した際の可動子10を受けてその衝撃をカバー部22に伝達するとともに、弾性変形することにより振動音の発生を防ぐ。
【0014】
ヨーク13は、一対のマグネット11,11の反コイル側面を覆う長尺状に形成され、その長手方向の両端側に、コイル30側へ突出する突片部13a,13aを有する。各突片部13aには、板バネ40を位置決めし支持するための凸部13a1が設けられる。
このヨーク13は、例えば、磁性金属材料からなる略矩形状の板材を曲げ加工することによって、断面略凹状に形成される。
【0015】
各突片部13aは、幅方向(図示のY方向)の中央寄りに曲げ形成された嵌合片部13a2を、一対のマグネット11,11の間に挟み込むようにして、マグネット11,11に対し接着剤を介して接着されている。
【0016】
また、基体20は、コイル30を支持し固定する基板部21と、可動子10の周囲及び反コイル側面を覆うカバー部22とを備え、コイル30及び可動子10に沿う長尺な箱状に構成される。
【0017】
基板部21は、略長方形状に形成され、その長辺部分に端子板21aを突出させている。端子板21aの表面には2つの端子T,Tが設けられ、これら端子T,Tは、それぞれ、コイル30を構成する線材の両端部に電気的に接続される。
【0018】
カバー部22は、金属製の板材から基板部21側を開口した矩形箱状に形成され、可動子10及びコイル30を間に置いて基板部21に対向する平面視長方形状の平板部22aと、この平板部22aの四辺側から基板部21側へ突出して可動子10の四方を囲む4つの側壁22b,22b,22c,22cとを有する。このカバー部22は、側壁22b,22b,22c,22cの突端をカバー部22に嵌め合わせて固定される。
【0019】
前記4つの側壁のうち、可動子10の振動方向(図示のY方向)の両側で対向する2つの側壁22b,22bは、それぞれ、前記振動方向に対する直交方向(図示のX方向)へ間隔を置いた二つの切欠部22b1,22b1を有し、これら二つの切欠部22b1,22b1の間を、板バネ40を支持するための支持部22dにしている。
【0020】
各切欠部22b1は、側壁22bにおける平板部22a側から基板部21側へわたって連続するスリット状に形成される。
【0021】
支持部22dは、二つの切欠部22b1の間に位置するようにして、平板部22a側から基板部21側へ突出しており、その突端部と、対向する基板部21面及び端子板21a面との間に、隙間sを確保している。
このため、支持部22dは、例えばリニア振動モータ1が落下衝撃等の比較的強い衝撃を受けた場合に、その衝撃によるX方向の力成分により、平板部22a側を支点にし隙間s側をX方向へ揺動させるようにして(図1参照)、若干弾性変形する。
この支持部22dの弾性変形は、板バネ40の撓み量よりも小さい。すなわち、支持部22dの前記交差方向(図示のX方向)の剛性が、板バネ40の撓み方向(図示のY方向)の剛性よりも大きく設定されている。
【0022】
コイル30は、芯材を具備しない空芯コイルであり、長尺扁平状に巻回され、一対のマグネット11,11の反ヨーク13側の面に対し略一定の隙間を置くようにして、基板部21に止着されている。
このコイル30には、例えば、可動子10の質量と板バネ40の弾性係数で決まる共振周波数(固有振動数)を有する交番電流又はパルス電流からなる駆動信号が、端子T,Tを介して供給される。
【0023】
板バネ40は、可動子10の短手方向の両側に、点対称に二つ配設される。
各板バネ40は、弾性的に撓み可能な金属製の長尺板材を、略L字状に折り曲げて形成される。
詳細に説明すれば、この板バネ40は、一対のマグネット11,11の短手方向(図示のY方向)の端面に沿って斜めに延設された一片部41と、一片部41に略直交する他片部42とを有する。
【0024】
一片部41は、マグネット11の短手方向の端面と、カバー部22の側壁22bとの間に位置し、マグネット11の長手方向に沿う長尺板状に形成される。
この一片部41の一端側は、他片部42を介して、可動子10の長手方向の一方側(詳細にはヨーク13と錘体12の間)に止着される。
また、同一片部41の他端側は、可動子10の他方側へ斜めに延設され、支持部22dに止着されている。
【0025】
一片部41には、その長手方向の中央寄りに、可動子10の厚み方向の寸法を徐々に縮小する括れ部41aが形成され、支持部22d側の端部寄りに止着片部41bが設けられる。
【0026】
括れ部41aは、可動子10の振動によって一片部41と支持部22dの接続部分や、一片部41と他片部42間の曲げ部分等に加わる応力を分散する。
【0027】
また、止着片部41bは、支持部22dと略平行な平板状に形成され、支持部22dに溶接固定されている。
【0028】
また、他片部42は、貫通状の嵌合孔42aを、ヨーク13側の凸部13a1に嵌め合わせるようにして、突片部13a外面と錘体12の間に挟まれて固定されている。この固定手段は、例えば溶接や接着等とすることが可能である。
【0029】
止着片部41bの裏側(反支持部22d側)には、ゴム等の弾性材料からなる緩衝材41cが固定されている。この緩衝材41cは、可動子10が振動した際に、板バネ40の一片部41が、マグネット11側面に当接して騒音が発生するのを防ぐ。
【0030】
次に上記構成のリニア振動モータ1について、その特徴的な作用効果を詳細に説明する。
コイル30に交流電力が供給されると、コイル30と一対のマグネット11,11間の磁気作用によって可動子10が短手方向へ往復動し、この往復動に伴い両側の板バネ40,40が弾性的に撓み、この往復動による振動が支持部22d等を介して基体20に伝達される。
【0031】
仮にリニア振動モータ1を誤って落としてしまい、振動方向に対する交差方向(図示のX方向)の力が、可動子10及び板バネ40に加わった場合には、支持部22dが、両側の切欠部22b1,22b1の間で前記交差方向へ若干弾性変形するため、この弾性変形によって落下衝撃を吸収することができる。
また、落下等による前記交差方向の力が比較的大きい場合には、図4に示すように、支持部22dの前記交差方向への弾性変形に伴い、可動子10が図4に示すように傾斜して、可動子10の長尺方向の端部側(詳細には錘体12)が、基板部21又はカバー部22の平板部22aに当接するため、板バネ40の変形を抑制することができる。
よって、板バネ40が支持部22dとの止着箇所の近傍で塑性変形や破損等するのを防ぐことができ、当該リニア振動モータ1の耐衝撃性を向上することができる。
【0032】
次に、リニア振動モータ1を備えた電子機器について説明する。
図5は、本発明の実施形態に係るリニア振動モータ1を備えた電子機器として、携帯情報端末100を例示している。
この携帯情報端末100は、タッチ操作パネル50(タッチディスプレイを含む)のタッチ操作に応じてリニア振動モータ1を振動させるように構成され、その応答性が良好である上、万が一落としてしまった場合等でも、耐衝撃性に優れている。
【0033】
なお、他例としては、タッチ操作パネル50を具備しない電子機器にリニア振動モータ1を装備することも可能である。
【0034】
また、上記実施態様によれば、カバー部22の短手方向端部側の側壁22bに支持部22dを設けたが、他例としては、カバー部22の長手方向端部側の側壁22cに、カバー部22内側へ突出する突片部を設け、この突片部を、板バネ40を支持するための支持部22dとすることも可能である。
さらに、他例としては、基板部21にカバー部22側へ突出する突片部を設け、この突片部を、板バネ40を支持するための支持部22dとすることも可能である。
【0035】
また、上記実施態様によれば、支持部22dを可動子10の長手方向(図示のX方向)に沿って弾性変形させるようにしたが、他例としては、支持部22dを可動子10の厚み方向(図示のZ方向)へ弾性変形させ、この弾性変形によって板バネ40の変形や破損等を防ぐ構成とすることも可能である。
【0036】
以上、本発明の実施の形態について詳述してきたが、具体的な構成はこれらの実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。また、上述の各実施の形態は、その目的及び構成等に特に矛盾や問題がない限り、互いの技術を流用して組み合わせることが可能である。
【符号の説明】
【0037】
1:リニア振動モータ
10:可動子
11:マグネット
12:錘体
13:ヨーク
20:基体
21:基板部
22:カバー部
平板部:22a
22b,22c:側壁
22d:支持部
30:コイル
40:板バネ
41:一片部
42:他片部
100:携帯情報端末(電子機器)
図1
図2
図3
図4
図5