【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、少なくとも一方の面に粘着剤層を有する粘着テープであって、前記粘着剤層は、アクリル共重合体及び前記アクリル共重合体100重量部に対して0.1〜5重量部のシランカップリング剤を含有し、前記アクリル共重合体は、フッ素含有モノマーに由来する構成単位を30重量%以上含有し、かつ、水酸基、カルボキシル基、アミノ基及びエポキシ基からなる群より選択される少なくとも一つの極性官能基の極性官能基価が0.01〜5であり、前記粘着剤層は、60℃、湿度90%の条件でオレイン酸に24時間浸漬した後の膨潤率が100重量%以上、115重量%以下である粘着テープ(「第1の本発明の粘着テープ」ともいう)である。
【0007】
また、本発明は、少なくとも一方の面に粘着剤層を有する粘着テープであって、前記粘着剤層は、アクリル共重合体及び前記アクリル共重合体100重量部に対して0.1〜5重量部のシランカップリング剤を含有し、前記アクリル共重合体は、ニトリル基含有モノマーに由来する構成単位を10重量%以上含有し、かつ、水酸基、カルボキシル基、アミノ基及びエポキシ基からなる群より選択される少なくとも一つの極性官能基の極性官能基価が0.01〜5であり、前記粘着剤層は、60℃、湿度90%の条件でオレイン酸に24時間浸漬した後の膨潤率が100重量%以上、115重量%以下である粘着テープ(「第2の本発明の粘着テープ」ともいう)である。
【0008】
また、本発明は、少なくとも一方の面に粘着剤層を有する粘着テープであって、前記粘着剤層は、アクリル共重合体及び前記アクリル共重合体100重量部に対して0.1〜5重量部のシランカップリング剤を含有し、前記アクリル共重合体は、炭素数2以下のアルキル基を有するモノマーに由来する構成単位を50重量%以上含有し、かつ、水酸基、カルボキシル基、アミノ基及びエポキシ基からなる群より選択される少なくとも一つの極性官能基の極性官能基価が0.01〜5であり、前記粘着剤層は、60℃、湿度90%の条件でオレイン酸に24時間浸漬した後の膨潤率が100重量%以上、115重量%以下である粘着テープ(「第3の本発明の粘着テープ」ともいう)である。
以下、本発明を詳述する。
【0009】
本発明者らは、少なくとも一方の面に粘着剤層を有する粘着テープにおいて、特定のアクリル共重合体と、シランカップリング剤とを併用して粘着剤層を形成するとともに、該粘着剤層の60℃、湿度90%の条件でオレイン酸に24時間浸漬した後の膨潤率を特定範囲に調整することを検討した。その結果、本発明者らは、このような粘着剤層とすることにより、皮脂の主成分であるオレイン酸に対する粘着テープの耐性を高め、人の手が頻繁に触れる部分に粘着テープを用いても粘着力を維持できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0010】
第1の本発明の粘着テープは、少なくとも一方の面に粘着剤層を有する。
第1の本発明の粘着テープにおいて、上記粘着剤層は、アクリル共重合体及び上記アクリル共重合体100重量部に対して0.1〜5重量部のシランカップリング剤を含有する。
【0011】
第1の本発明の粘着テープにおいて、上記アクリル共重合体は、フッ素含有モノマーに由来する構成単位を30重量%以上含有し、かつ、水酸基、カルボキシル基、アミノ基及びエポキシ基からなる群より選択される少なくとも一つの極性官能基の極性官能基価が0.01〜5である。
このようなアクリル共重合体は、皮脂の主成分であるオレイン酸に対する膨潤率が低い。このため、上記アクリル共重合体と、シランカップリング剤とを併用して粘着剤層を形成することにより、粘着テープの皮脂への耐性を高め、人の手が頻繁に触れる部分に粘着テープを用いても粘着力を維持することができる。
【0012】
上記フッ素含有モノマーに由来する構成単位の含有量が30重量%以上であれば、フッ素自身の高い撥水撥油性と、フッ素原子の密なパッキングとにより、上記アクリル共重合体の分子鎖内へのオレイン酸の浸入が抑えられる。このため、上記アクリル共重合体のオレイン酸に対する膨潤率が低くなり、粘着テープの皮脂への耐性が向上する。同様に、フッ素自身の高い撥水撥油性と、フッ素原子の密なパッキングとにより、上記アクリル共重合体の分子鎖内へのアルコールの浸入が抑えられることから、上記アクリル共重合体のアルコールに対する膨潤率が低くなり、粘着テープのアルコール耐性が向上する。上記含有量の好ましい下限は40重量%、より好ましい下限は50重量%である。
上記フッ素含有モノマーに由来する構成単位の含有量の上限は特に限定されないが、好ましい上限は80重量%である。上記フッ素含有モノマーに由来する構成単位の含有量が80重量%以下であれば、上記粘着剤層が固くなり過ぎず、充分なタック性を維持することができ、粘着テープが充分な粘着力を発揮することができる。上記含有量のより好ましい上限は70重量%である。
【0013】
上記フッ素含有モノマーは特に限定されず、例えば、2,2,2−トリフルオロエチルアクリレート、2−(パーフルオロヘキシル)エチルアクリレート、2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピルアクリレート、2−(パーフルオロブチル)エチルアクリレート、3−パーフルオロブチル−2−ヒドロキシプロピルアクリレート、3−パーフルオロヘキシル−2−ヒドロキシプロピルアクリレート、3−(パーフルオロ−3−メチルブチル)−2−ヒドロキシプロピルアクリレート、1H,1H,3H−テトラフルオロプロピルアクリレート、1H,1H,5H−オクタフルオロペンチルアクリレート、1H,1H,7H−ドデカフルオロヘプチルアクリレート、1H−1−(トリフルオロメチル)トリフルオロエチルアクリレート、1H,1H,3H−ヘキサフルオロブチルアクリレート、1,2,2,2−テトラフルオロ−1−(トリフルオロメチル)エチルアクリレート等が挙げられる。なかでも、より高い粘着力を発揮できることから、2−(パーフルオロヘキシル)エチルアクリレートが好ましい。これらのフッ素含有モノマーは単独で用いてもよく、複数を併用してもよい。
【0014】
第2の本発明の粘着テープは、少なくとも一方の面に粘着剤層を有する。
第2の本発明の粘着テープにおいて、上記粘着剤層は、アクリル共重合体及び上記アクリル共重合体100重量部に対して0.1〜5重量部のシランカップリング剤を含有する。
【0015】
第2の本発明の粘着テープにおいて、上記アクリル共重合体は、ニトリル基含有モノマーに由来する構成単位を10重量%以上含有し、かつ、水酸基、カルボキシル基、アミノ基及びエポキシ基からなる群より選択される少なくとも一つの極性官能基の極性官能基価が0.01〜5である。
このようなアクリル共重合体は、皮脂の主成分であるオレイン酸に対する膨潤率が低い。このため、上記アクリル共重合体と、シランカップリング剤とを併用して粘着剤層を形成することにより、粘着テープの皮脂への耐性を高め、人の手が頻繁に触れる部分に粘着テープを用いても粘着力を維持することができる。
【0016】
上記ニトリル基含有モノマーに由来する構成単位の含有量が10重量%以上であれば、上記アクリル共重合体の極性及び凝集力が高くなり、上記アクリル共重合体の分子鎖内へのオレイン酸の浸入が抑えられる。このため、上記アクリル共重合体のオレイン酸に対する膨潤率が低くなり、粘着テープの皮脂への耐性が向上する。また、上記アクリル共重合体の凝集力が高くなることで、上記アクリル共重合体の分子鎖内へのアルコールの浸入が抑えられる。このため、上記アクリル共重合体のアルコールに対する膨潤率が低くなり、粘着テープのアルコール耐性が向上する。上記含有量の好ましい下限は13重量%である。
上記ニトリル基含有モノマーに由来する構成単位の含有量の上限は特に限定されないが、好ましい上限は20重量%である。上記ニトリル基含有モノマーに由来する構成単位の含有量が20重量%以下であれば、粘着テープが充分な粘着力を発揮することができる。上記含有量のより好ましい上限は17重量%である。
【0017】
上記ニトリル基含有モノマーとして、(メタ)アクリロニトリルが挙げられる。なかでも、より優れた粘着力を発揮できることから、アクリロニトリルが好ましい。これらのニトリル基含有モノマーは単独で用いてもよく、複数を併用してもよい。
なお、本明細書において(メタ)アクリロニトリルとは、アクリロニトリル又はメタクリロニトリルを意味し、(メタ)アクリレートとは、アクリレート又はメタクリレートを意味する。
【0018】
第3の本発明の粘着テープは、少なくとも一方の面に粘着剤層を有する。
第3の本発明の粘着テープにおいて、上記粘着剤層は、アクリル共重合体及び上記アクリル共重合体100重量部に対して0.1〜5重量部のシランカップリング剤を含有する。
【0019】
第3の本発明の粘着テープにおいて、上記アクリル共重合体は、炭素数2以下のアルキル基を有するモノマーに由来する構成単位を50重量%以上含有し、かつ、水酸基、カルボキシル基、アミノ基及びエポキシ基からなる群より選択される少なくとも一つの極性官能基の極性官能基価が0.01〜5である。
このようなアクリル共重合体は、皮脂の主成分であるオレイン酸に対する膨潤率が低い。このため、上記アクリル共重合体と、シランカップリング剤とを併用して粘着剤層を形成することにより、粘着テープの皮脂への耐性を高め、人の手が頻繁に触れる部分に粘着テープを用いても粘着力を維持することができる。
【0020】
上記炭素数2以下のアルキル基を有するモノマーに由来する構成単位の含有量が50重量%以上であれば、上記アクリル共重合体の極性及び凝集力が高くなり、上記アクリル共重合体の分子鎖内へのオレイン酸の浸入が抑えられる。このため、上記アクリル共重合体のオレイン酸に対する膨潤率が低くなり、粘着テープの皮脂への耐性が向上する。上記含有量の好ましい下限は55重量%、より好ましい下限は60重量%である。
上記炭素数2以下のアルキル基を有するモノマーに由来する構成単位の含有量の上限は特に限定されないが、好ましい上限は99重量%である。上記炭素数2以下のアルキル基を有するモノマーに由来する構成単位の含有量が99重量%以下であれば、上記粘着剤層が固くなり過ぎず、充分なタック性を維持することができ、粘着テープが充分な粘着力を発揮することができる。上記含有量のより好ましい上限は97重量%である。
【0021】
上記炭素数2以下のアルキル基を有するモノマーとして、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレートが挙げられる。これらの炭素数2以下のアルキル基を有するモノマーは単独で用いてもよく、複数を併用してもよい。
【0022】
以下、第1〜第3の本発明の粘着テープに共通する事項について説明する。
本明細書においてアクリル共重合体の水酸基、カルボキシル基、アミノ基及びエポキシ基からなる群より選択される少なくとも一つの極性官能基の極性官能基価とは、アクリル共重合体中の上記極性官能基を有するモノマーに由来する構成単位の含有量を意味する。なお、モノマーが2価以上である(モノマーが上記極性官能基を2つ以上有する)場合には、上記極性官能基1価相当に換算した含有量を意味する。上記極性官能基には、シランカップリング剤由来の極性官能基は含まない。
第1〜第3の本発明の粘着テープにおいて、上記極性官能基価が0.01以上であれば、上記アクリル共重合体の極性及び凝集力が高くなり、上記アクリル共重合体の分子鎖内へのオレイン酸の浸入が抑えられる。このため、上記アクリル共重合体のオレイン酸に対する膨潤率が低くなり、粘着テープの皮脂への耐性が向上する。上記極性官能基価が5以下であれば、上記粘着剤層が固くなり過ぎず、充分なタック性を維持することができ、粘着テープが充分な粘着力を発揮することができる。上記極性官能基価の好ましい下限は0.05、好ましい上限は4であり、より好ましい下限は0.1、より好ましい上限は3である。
【0023】
上記極性官能基は、架橋反応等の反応性を有するものであり、水酸基、カルボキシル基、アミノ基及びエポキシ基からなる群より選択される少なくとも一つである。なかでも、粘着力の向上に寄与できることから、水酸基又はカルボキシル基が好ましい。
上記水酸基を有するモノマーとして、例えば、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等の水酸基を有する(メタ)アクリル酸エステルが挙げられる。上記カルボキシル基を有するモノマーとして、例えば、(メタ)アクリル酸が挙げられる。上記エポキシ基を有するモノマーとして、例えば、グリシジル(メタ)アクリレートが挙げられる。これらの極性官能基を有するモノマーは単独で用いてもよく、複数を併用してもよい。
【0024】
第1〜第3の本発明の粘着テープにおいて、上記アクリル共重合体は、本発明の効果を阻害しない範囲で、更に、プロピルアクリレート、ブチルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、オクチルアクリレート、ノニルアクリレート、イソボルニルアクリレート、ベンジルアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、酢酸ビニル等に由来する構成単位を含んでいてもよい。
【0025】
上記アクリル共重合体は、重量平均分子量の好ましい下限が50万、好ましい上限が200万である。上記アクリル共重合体の重量平均分子量が上記範囲であることによって、粘着テープの粘着力が向上する。上記アクリル共重合体の重量平均分子量のより好ましい下限は70万、より好ましい上限は150万である。
なお、重量平均分子量は、重合条件(例えば、重合開始剤の種類又は量、重合温度、モノマー濃度等)によって調整できる。
【0026】
上記アクリル共重合体を合成するには、上記構成単位の由来となるアクリルモノマーを重合開始剤の存在下にてラジカル反応させればよい。重合方法は特に限定されず、従来公知の方法を用いることができる。例えば、溶液重合(沸点重合又は定温重合)、エマルジョン重合、懸濁重合、塊状重合等が挙げられる。なかでも、合成が簡便であることから、溶液重合が好ましい。また、特にアクリロニトリルに由来する構成単位の含有量を多くする場合には、エマルジョン重合が好ましい。
【0027】
重合方法として溶液重合を用いる場合、反応溶剤として、例えば、酢酸エチル、トルエン、メチルエチルケトン、メチルスルホキシド、エタノール、アセトン、ジエチルエーテル等が挙げられる。これらの反応溶剤は単独で用いてもよく、複数を併用してもよい。
【0028】
上記重合開始剤は特に限定されず、例えば、有機過酸化物、アゾ化合物等が挙げられる。上記有機過酸化物として、例えば、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、t−ヘキシルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシピバレート、2,5−ジメチル−2,5−ビス(2−エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサン、t−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、t−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシラウレート等が挙げられる。上記アゾ化合物として、例えば、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル等が挙げられる。これらの重合開始剤は単独で用いてもよく、複数を併用してもよい。
【0029】
第1〜第3の本発明の粘着テープにおいて、上記粘着剤層は、上記アクリル共重合体100重量部に対して0.1〜5重量部のシランカップリング剤を含有する。
上記粘着剤層にシランカップリング剤を添加することにより、粘着テープと被着体との界面の接着強度を高めることができる。このため、上述したようなオレイン酸に対する膨潤率が低いアクリル共重合体と、シランカップリング剤とを併用して粘着剤層を形成することにより、粘着テープの皮脂への耐性を高め、人の手が頻繁に触れる部分に粘着テープを用いても粘着力を維持することができる。
【0030】
上記シランカップリング剤は特に限定されず、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメチルメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、メルカプトブチルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン等が挙げられる。なかでも、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランが好ましい。
【0031】
上記シランカップリング剤の含有量が0.1重量部以上であれば、粘着テープと被着体との界面の接着強度が高くなり、粘着テープの皮脂への耐性が向上する。上記シランカップリング剤の含有量が5重量部以下であれば、粘着テープを剥離した際の糊残りを抑えることができ、粘着テープのリワーク性が向上する。上記シランカップリング剤の含有量の好ましい下限は0.5重量部、好ましい上限は4重量部であり、より好ましい下限は1重量部、より好ましい上限は3重量部である。
【0032】
第1〜第3の本発明の粘着テープにおいて、上記粘着剤層は、必要に応じて、可塑剤、乳化剤、軟化剤、充填剤、顔料、染料等の添加剤、ロジン系樹脂、テルペン系樹脂等の粘着付与剤、その他の樹脂等を含有していてもよい。
【0033】
第1〜第3の本発明の粘着テープにおいて、上記粘着剤層は、ゲル分率が10重量%以上であることが好ましい。上記ゲル分率が10重量%以上であれば、後述する粘着剤層の60℃、湿度90%の条件でオレイン酸に24時間浸漬した後の膨潤率を特定範囲に調整しやすくなり、粘着テープの皮脂への耐性が向上する。上記ゲル分率のより好ましい下限は20重量%である。
上記ゲル分率の上限は特に限定されないが、好ましい上限は99重量%、より好ましい上限は95重量%である。
なお、本明細書における「ゲル分率」とは、下記式(1)のように酢酸エチルに浸漬する前の粘着剤層の重量に対する酢酸エチルに浸漬し、乾燥した後の粘着剤層の重量の割合を百分率で表した値である。
ゲル分率(重量%)=100×(W2−W0)/(W1−W0) (1)
(W0:基材の重量、W1:酢酸エチル浸漬前の粘着テープ試験片の重量、W2:酢酸エ
チル浸漬、乾燥後の粘着テープ試験片の重量)
【0034】
第1〜第3の本発明の粘着テープにおいて、上記粘着剤層は、60℃、湿度90%の条件でオレイン酸に24時間浸漬した後の膨潤率(「オレイン酸膨潤率」ともいう)が100重量%以上、115重量%以下である。
上述したようなオレイン酸に対する膨潤率が低いアクリル共重合体と、シランカップリング剤とを併用して粘着剤層を形成するとともに、上記膨潤率を上記範囲に調整することにより、粘着テープの皮脂への耐性を高め、人の手が頻繁に触れる部分に粘着テープを用いても粘着力を維持することができる。
なお、本明細書における「オレイン酸膨潤率」とは、下記式(2)のようにオレイン酸に浸漬する前の粘着剤層の重量に対するオレイン酸に浸漬し、乾燥した後の粘着剤層の重量の割合を百分率で表した値である。オレイン酸への粘着剤成分の溶出がある場合、オレイン酸膨潤率は100重量%を下回る。
オレイン酸膨潤率(重量%)=100×(W5−W3)/(W4−W3) (2)
(W3:基材の重量、W4:オレイン酸浸漬前の粘着テープ試験片の重量、W5:オレイン酸浸漬、乾燥後の粘着テープ試験片の重量)
【0035】
上記粘着剤層の60℃、湿度90%の条件でオレイン酸に24時間浸漬した後の膨潤率が100重量%以上であれば、オレイン酸への粘着剤成分の溶出がないことを意味しており、粘着テープの皮脂への耐性が向上する。上記粘着剤層の60℃、湿度90%の条件でオレイン酸に24時間浸漬した後の膨潤率が115重量%以下であれば、粘着テープの皮脂への耐性が向上する。上記膨潤率の好ましい上限は110重量%であり、より好ましい上限は105重量%である。
【0036】
第1〜第3の本発明の粘着テープにおいて、上記粘着剤層は、60℃、湿度90%の条件でイソプロパノ−ル80重量%と水20重量%との混合液に24時間浸漬した後の膨潤率(「アルコール膨潤率」ともいう)が100重量%以上、150重量%以下であることが好ましい。
なお、本明細書における「アルコール膨潤率」とは、下記式(3)のようにイソプロパノ−ル80重量%と水20重量%との混合液に浸漬する前の粘着剤層の重量に対するイソプロパノ−ル80重量%と水20重量%との混合液に浸漬し、乾燥した後の粘着剤層の重量の割合を百分率で表した値である。混合液への粘着剤成分の溶出がある場合、アルコール膨潤率は100重量%を下回る。
アルコール膨潤率(重量%)=100×(W8−W6)/(W7−W6) (3)
(W6:基材の重量、W7:イソプロパノ−ル80重量%と水20重量%との混合液浸漬前の粘着テープ試験片の重量、W8:イソプロパノ−ル80重量%と水20重量%との混合液浸漬、乾燥後の粘着テープ試験片の重量)
【0037】
上記粘着剤層の60℃、湿度90%の条件で上記混合液に24時間浸漬した後の膨潤率が100重量%以上であれば、上記混合液への粘着剤成分の溶出がないことを意味しており、粘着テープのアルコール耐性が向上する。上記粘着剤層の60℃、湿度90%の条件で上記混合液に24時間浸漬した後の膨潤率が150重量%以下であれば、粘着テープのアルコール耐性が向上する。上記膨潤率のより好ましい上限は140重量%であり、更に好ましい上限は130重量%である。
【0038】
第1〜第3の本発明の粘着テープにおいて、上記粘着剤層の厚みは特に限定されないが、好ましい下限は5μm、好ましい上限は100μmである。上記粘着剤層の厚みが5μm以上であれば、粘着テープの粘着力が向上する。上記粘着剤層の厚みが100μm以下であれば、粘着テープの加工性が向上する。
【0039】
第1〜第3の本発明の粘着テープは、少なくとも一方の面に上記粘着剤層を有していれば、基材を有するサポートタイプであってもよいし、基材を有さないノンサポートタイプであってもよい。サポートタイプの場合には、基材の片面に上記粘着剤層が形成されていてもよいし、両面に上記粘着剤層が形成されていてもよい。
【0040】
上記基材は特に限定されず、例えば、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム等のポリオレフィン系樹脂フィルム、PETフィルム等のポリエステル系樹脂フィルム等が挙げられる。更に、エチレン−酢酸ビニル共重合体フィルム、ポリ塩化ビニル系樹脂フィルム、ポリウレタン系樹脂フィルム、ポリエチレン発泡体シート、ポリプロピレン発泡体シート等のポリオレフィン発泡体シート、ポリウレタン発泡体シート等が挙げられる。なかでも、PETフィルムが好ましい。また、耐衝撃性の観点からはポリオレフィン発泡体シートが好ましい。
また、上記基材として、光透過防止のために黒色印刷された基材、光反射性向上のために白色印刷された基材、金属蒸着された基材等も用いることができる。
【0041】
第1〜第3の本発明の粘着テープの製造方法は特に限定されず、例えば、第1〜第3の本発明の粘着テープが基材を有する両面粘着テープである場合は以下のような方法が挙げられる。
まず、アクリル共重合体、シランカップリング剤及び必要に応じて添加剤等に溶剤を加えてアクリル粘着剤aの溶液を作製して、このアクリル粘着剤aの溶液を基材の表面に塗布し、溶液中の溶剤を完全に乾燥除去して粘着剤層aを形成する。次に、形成された粘着剤層aの上に離型フィルムをその離型処理面が粘着剤層aに対向した状態に重ね合わせる。
次いで、上記離型フィルムとは別の離型フィルムを用意し、この離型フィルムの離型処理面にアクリル粘着剤bの溶液を塗布し、溶液中の溶剤を完全に乾燥除去することにより、離型フィルムの表面に粘着剤層bが形成された積層フィルムを作製する。得られた積層フィルムを粘着剤層aが形成された基材の裏面に、粘着剤層bが基材の裏面に対向した状態に重ね合わせて積層体を作製する。そして、上記積層体をゴムローラ等によって加圧することによって、基材の両面に粘着剤層を有し、かつ、粘着剤層の表面が離型フィルムで覆われた粘着テープを得ることができる。
【0042】
また、同様の要領で積層フィルムを2組作製し、これらの積層フィルムを基材の両面のそれぞれに、積層フィルムの粘着剤層を基材に対向させた状態に重ね合わせて積層体を作製し、この積層体をゴムローラ等によって加圧することによって、基材の両面に粘着剤層を有し、かつ、粘着剤層の表面が離型フィルムで覆われた粘着テープを得てもよい。
【0043】
第1〜第3の本発明の粘着テープの用途は特に限定されないが、皮脂への耐性に優れているため、人の手が頻繁に触れる電子機器の部品を固定するために特に好ましく用いることができる。具体的には、スマートフォンやタブレット端末等の携帯電子機器のタッチパネル部分を固定したり、カーナビ等の車載電子機器のディスプレイパネル部分を固定したりするのに第1〜第3の本発明の粘着テープを好ましく用いることができる。
【0044】
第1〜第3の本発明の粘着テープの形状は特に限定されず、長方形等であってもよいし、シート状であってもよい。上述のようにタッチパネル部分又はディスプレイパネル部分の固定に好適であることから、額縁状が好ましい。また、第1〜第3の本発明の粘着テープは、基材を有するサポートタイプであってもよいし、基材を有さないノンサポートタイプであってもよい。サポートタイプの場合には、基材の片面に上記粘着剤層が形成されていてもよいし、両面に上記粘着剤層が形成されていてもよい。また、第1〜第3の本発明の粘着テープは、皮脂への耐性に優れ、人の手が頻繁に触れる部分に用いても粘着力を維持できるため、粘着テープの幅が狭くても好ましく用いることができ、粘着テープの幅が5mm以下の場合に特に好ましく用いることができる。