(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明を実施するための形態について図面を用いて説明する。ただし、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい限定がされているが、発明の範囲を以下に限定するものではない。なお、以下の実施形態の説明に用いる全図においては、特に理由がない限り、同様箇所には同一符号を付す。また、以下の実施形態において、同様の構成・動作に関しては繰り返しの説明を省略する場合がある。
【0016】
(第1の実施形態)
まず、本発明の第1の実施形態に係るレーダシステムについて図面を参照しながら説明する。
図1は、本実施形態のレーダシステムの構成について説明するためのブロック図である。
図1のように、本実施形態のレーダシステムは、レーダ装置10と、信号生成装置20によって構成される。
【0017】
レーダ装置10は、レーダ送信機11と送信空中線12とを有する。レーダ装置10は、一般的なレーダ装置によって実現できる。
【0018】
レーダ送信機11(レーダ送信手段とも呼ぶ)は、レーダ送信信号を生成する。レーダ送信機11は、図示しない発信器や励振器、増幅器によってレーダ送信信号を生成する。
【0019】
送信空中線12は、送信信号を送出するアンテナである。
【0020】
信号生成装置20は、欺瞞信号生成部30と結合部40とを有する。本実施形態では、簡易的な回路で一個の装置形状で信号生成装置20を構成する。信号生成装置20は、レーダ装置10にアダプタとして付加する構成とすることによって、レーダ装置10を改修する場合と比較して費用や日程を低減し、実用性を高めることができる。
【0021】
欺瞞信号生成部30(欺瞞信号生成手段とも呼ぶ)は、レーダ送信信号(第1の信号とも呼ぶ)の同期信号を入力とし、レーダ送信信号に付加する欺瞞信号をレーダ送信信号に同期させて生成する。例えば、欺瞞信号生成部30は、擬似的なスプリアス成分やスパイク成分、リンギング成分などをレーダ送信信号に同期して付加する。
【0022】
例えば、欺瞞信号生成部30は、レーダ本体の性能に妨害による影響を与えないように、レーダ送信タイミングに同期するが重ならないタイミングで欺瞞信号を発生させる。同様に、欺瞞信号生成部30は、レーダ本体の性能に妨害による影響を与えないように、レーダ送信周波数とずらした周波数で欺瞞信号を発生させる。
【0023】
結合部40(結合手段とも呼ぶ)は、レーダ送信信号と欺瞞信号とを合成する方向性結合部である。結合部40の主線路にはレーダ送信信号が入力され、結合線路には欺瞞信号が入力される。結合部40の方向性によって、欺瞞信号生成部30から入力される欺瞞信号は、レーダ送信機11の方向には出力されず、送信空中線12の方向に導出される。
【0024】
このとき、結合部40の主線路にはレーダ送信信号が入力され、結合線路には欺瞞信号が入力されているので、結合部40の出力にはレーダ送信信号と欺瞞信号とが重畳した信号が現れる。
図2に示すように、レーダ送信信号と欺瞞信号とは時間的な同期がとられているので、欺瞞信号を付加したレーダ送信信号(以下、送信信号と呼ぶ)が合成される。
【0025】
結合部40によって生成される送信信号は、その送信信号の送信元があたかも別の個体であるかのように見せかけたレーダ波として送信される。その結果、送信信号を受信した相手方の電波探知機は、受信した送信信号に基づいて送信源を別の個体であると識別することになる。
【0026】
図3は、レーダ送信機11において生成されるレーダ送信信号を時間軸で示したパルス波形である。
図4は、レーダ送信機11において生成されるレーダ送信信号波形に欺瞞信号を付加した後の送信信号を時間軸で示したパルス波形である。
【0027】
元のレーダ送信信号のパルス波形(
図3)には、前縁にスパイクがなく、後縁の立ち下がりは伸びていない。それに対し、欺瞞信号が付加された送信信号のパルス波形(
図4)には、前縁にスパイクがあり、後縁の立ち下がりの伸びを伴っている。レーダ装置10の送信空中線12からは、
図4のパターンの送信信号が放射される。そのため、相手方の傍受装置のデータベースに格納されたパターンと送信信号のパターン(
図4)とを比較して分析すると、送信信号の発信源は、元のレーダ送信信号のパルス波形を持つ個体とは異なる個体として識別される。
【0028】
図5は、レーダ送信機11において生成されるレーダ送信信号を周波数軸で示したスペクトラムである。
図6は、レーダ送信機11において生成されるレーダ送信信号波形に欺瞞信号を付加した後の送信信号を周波数軸で示したスペクトラムである。
【0029】
元のレーダ送信信号のスペクトラム(
図5)には、レーダ送信信号の送信周波数が観測される。それに対し、欺瞞信号を付加した送信信号のスペクトラム(
図6)には、レーダ送信信号の周波数の他に、意図的に付加した周波数成分が観測される。
図6の例では、送信周波数の整数倍の周波数成分(高調波)や、不要スパイクや立ち下がり波形を付加したことによるノイズ成分、周波数ジッタ成分が欺瞞信号として付加される。
【0030】
なお、
図3〜
図6に示す波形やスペクトラムは一例であって、付加する波形成分や周波数成分は任意に設定できる。
【0031】
ここで、一般的なレーダシステムと比較することによって、本実施形態のレーダシステムがどのような特徴を持つのかについてあらためて説明する。
【0032】
図7は、一般的なレーダ装置100から送信された送信信号が相手方の傍受装置200によって傍受される例である。
【0033】
レーダ装置100は、レーダ送信信号を生成するレーダ送信機110と、レーダ送信信号を送信する送信空中線120とを備える。
図7の例では、個体Aにレーダ装置100が搭載されていることを想定する。
【0034】
傍受装置200は、電波探知装置210、解析装置220、データベース230を備える。電波探知装置210は、レーダ送信信号を含む電波を受信する。解析装置220は、受信した電波の到来方位や周波数、パルス幅、パルスの繰り返し周期などを分析し、データベース230にあらかじめ蓄積されたデータと比較することによって、受信した電波の発信源を特定する。データベース230には、受信する電波が有するパターンと、その電波の発信源の個体との対応関係が蓄積される。
【0035】
傍受装置200は、受信した電波を解析することによって、電波の発信源であるレーダ装置の種類や、そのレーダ装置を搭載する航空機や船舶、車両などの識別を行う。
図7の例では、傍受装置200は、レーダ装置100からのレーダ送信信号のパターンを解析、レーダ送信信号の発信源が個体Aであると特定する。相手方は、傍受装置200の解析結果に基づいて、電波の発信源の個体Aへの対応策を講じることができる。
【0036】
図8は、本実施形態のレーダシステムから送信信号を送信する例である。
図8の例では、傍受装置200のデータベースには登録されていない送信信号がレーダ装置10から送信される。そのため、傍受装置200は、送信信号の発信源に該当する個体がないと分析し、送信信号の発信源が未知の個体Xであると特定する。すなわち、本実施形態によれば、レーダ装置10からの送信信号の発信源を相手方に誤認させることができる。
【0037】
本実施形態のレーダシステムによれば、レーダ送信信号に欺瞞信号を付加することによって、送信信号が相手方に傍受・分析・識別される課程で、送信信号の発信源が新たな個体であると誤認させることができる。その結果、相手方において送信信号の発信源の個体を特定することが難しくなる。すなわち、本実施形態によれば、探索対象を探索する際に用いるレーダ波の傍受を妨害する送信信号を生成することができる信号生成装置を提供できる。
【0038】
また、欺瞞信号が付加されたレーダ送信信号を送出し続けば、敵方が誤ったデータを収集し続けてデータベースを更新し続けることによって、相手方がデータベースを使用する際に混乱を生じさせることができる。
【0039】
例えば、航空機や潜水艇、船舶などの個体に搭載されたレーダ機能を用いて、数百キロ範囲内に位置する探索対象を探索しながら行動する場合、こちらからのレーダ送信信号が探知されて個体識別される可能性がある。本実施形態のレーダシステムによれば、欺瞞信号が付加された送信信号を放射するため、その送信信号を傍受した相手方には識別不明の新型個体が識別されることになる。
【0040】
また、例えば、欺瞞信号を含む送信信号を発しながら大型の船舶が行動する際に、あらかじめ同じ特徴を持たせた欺瞞信号を含む送信信号を小型の船舶から発して相手型にデータ収集させておく運用もある。このような運用の場合、相手型のデータベースには、欺瞞信号を含む送信信号の送信源が小型船舶であるように刷り込まれているため、大型の船舶が小型の船舶であると相手方に誤認させることができる。
【0041】
また、例えば、相手方がデータ収集専用の航空機や固定設備などによりこちらのレーダ信号の特徴を収集する場合が想定される。このような場合においては、欺瞞信号を含む不正確なデータを収集させることによって相手方のデータベースを不正確なものとし、こちらの個体を識別不明とすることができる。
【0042】
本実施形態のレーダシステムの欺瞞機能は、レーダ送信信号を発生させるレーダ装置の設計段階においてあらかじめ組み込むことができる。ところで、例えば、船舶などの個体に搭載された水上監視レーダなどに既にレーダ装置が配備されている場合、レーダ装置を換装するのには相当な時間と費用が発生してしまう。そのため、既存のレーダ装置に欺瞞機能を追加する場合、送信系統の関係する各回路を個別に改修すると、日程および費用が高額となってしまう。
【0043】
本実施形態の信号生成装置は、アダプタとしてレーダ装置に付加することができるため、信号生成装置の製造期間中に運用を止める必要がなくなり、既存のレーダ装置への改修変更工事が簡略化される。そのため、本実施形態の信号生成装置は、限られた予算と日程でレーダ装置に欺瞞機能を付加するのに好適である。
【0044】
(第2の実施形態)
次に、本実施形態に係るレーダシステムについて図面を参照しながら説明する。
【0045】
図9は、本実施形態のレーダシステムの構成を示すブロック図である。
図9のように、本実施形態のレーダシステムは、レーダ装置10、信号生成装置20−2、操作装置50を備える。なお、レーダ装置10は、第1の実施形態と同じ構成であるため、詳細な説明は省略する。
【0046】
信号生成装置20−2は、高周波信号発生器31A、31B、31C・・・31X、パルス変調器32A、32B、32C・・・32X、選択器33、高周波増幅器34および方向性結合器41を有する。高周波信号発生器31A、31B、31C・・・31X、パルス変調器32A、32B、32C・・・32X、選択器33および高周波増幅器34が欺瞞信号生成部30−2(破線で囲んだ範囲内)を構成する。
【0047】
例えば、ある個体に搭載済みのレーダ装置10の系統に信号生成装置20−2を付加する際には、
図9のように、レーダ送信機11と送信空中線12との間に信号生成装置を接続すればよい。具体的には、レーダ送信機11と送信空中線12との間を接続する導波管や同軸ケーブルの送信空中線12側の一端を取り外し、方向性結合器41の入力に接続する。そして、レーダ送信機11から出力されるレーダ送信信号を方向性結合器41経由で送信空中線12に送出する系統とする。方向性結合器41の結合線路側から欺瞞信号生成部30−2が発生させる欺瞞信号を入力することによって、レーダ送信機11から出力されるレーダ送信信号に欺瞞信号を重畳付加することができる。本実施形態のレーダシステムは、欺瞞信号を発生させない場合、元のレーダ送信信号と同等の成分の送信信号を送出できる。
【0048】
以下において、信号生成装置20−1の構成要素および操作装置50の詳細について説明する。なお、高周波信号発生器31A、31B、31C・・・31Xをまとめて高周波信号発生器31と記載することがある。同様に、パルス変調器32A、32B、32C・・・32Xをまとめてパルス変調器32と記載することがある。
【0049】
〔高周波信号発生器〕
高周波信号発生器31は、レーダ送信機11が発生させるレーダ送信信号と同じ周波数帯の高周波信号と、その高周波信号の整数倍となる高調波の周波数帯の高周波信号を同時に発生させる信号源である。高周波信号発生器31が発生させる高周波信号の周波数は、操作装置50を介して運用者によって設定される。例えば、高周波信号発生器31が発生させる高周波信号の周波数は、レーダ送信機11が発生させるレーダ送信信号の周波数の近傍や高調波周波数などに設定される。
【0050】
高周波信号発生器31は、レーダ装置10と同等の数ギガヘルツ帯の高周波信号を発生させる。高周波信号発生器31には、発振器と周波数ミキサ、シンセサイザなどの汎用部品を組み合わせて構成してもよいし、汎用計測器を用いてもよい。
【0051】
高周波信号発生器31は、高調波成分や近傍の周波数の信号などのように、レーダ送信信号と異なる複数の周波数の信号を付加する場合、内部に複数系統の発振器またはシンセサイザを装備すればよい。その場合、異なる複数の周波数成分を同時に発生して電力合成した信号を出力することができる。例えば、高周波信号発生器31が複数の周波数の信号を発生させる場合、それぞれの周波数成分を独立して入り切り制御するためのスイッチを設けることが好ましい。
【0052】
〔パルス変調器〕
パルス変調器32は、高周波信号発生器31の後段に設置される。パルス変調器32A、32B、32C・・・32Xは、それぞれ高周波信号発生器31A、31B、31C・・・31Xに接続される。パルス変調器32は、レーダ送信機11からの同期信号に同期させて、高周波信号発生器31から入力される高周波信号にレーダ送信機11と同種のパルス変調を掛ける。このとき、複数のパルス変調器32を接続することにより、同時に異なる波形のパルス変調波を生成することができる。
図9の例では、X個のパルス変調器32によってX種類の形状の異なるパルスを生成できる。パルス変調器32は、生成したパルス変調波を後段の選択器33に出力する。
【0053】
図9の例では、高周波信号発生器31A、31B、31C・・・31Xと、パルス変調器32A、32B、32C・・・32Xとを並列に配置し、X個のパルス変調波を生成する。高周波信号発生器31A、31B、31C・・・31Xのそれぞれに周波数を設定する際には、同じ周波数を設定してもよいし、異なった周波数を設定してもよい。高周波信号発生器31A、31B、31C・・・31Xに設定する周波数は、後続するパルス変調器32A、32B、32C・・・32Xの設定に合わせて設定する。
【0054】
パルス変調器32は、レーダ送信機11からレーダ送信信号の同期信号を受けてレーダ送信信号と時間的に同期が取れたパルス信号を発生させる機能(パルス発生機能)を有する。また、パルス変調器32は、発生したパルス信号によって、高周波信号発生器31が出力する高周波信号にパルス変調を掛ける機能(パルス変調機能)を有する。
【0055】
パルス変調器32は、汎用のPINダイオード等の半導体と、PINダイオードにバイアス電源を印加する駆動回路を用いて構成できる。パルス変調器32は、高周波信号が入力されると、パルス発生機能が発し、駆動回路に入力する波形に従って、PINダイオードをON/OFF制御することにより高周波信号をON/OFFし、所望の高周波パルス信号を生成する。パルス変調器32は、時間的な連続信号(CW:Continuous Wave)をパルス状に断続的に入り切りした波形や、アナログ的に連続する曲線状に切り取った波形の信号を生成することが可能である。パルス変調器32は、パルス前縁のスパイク波形を模した波形や、徐々に立ち下がるパルス後縁が伸びた波形などの任意の波形の信号を生成する。パルス変調器32は、パルス信号の発生源にレーダ装置の同期信号を注入することによって、時間的な同期が取れた高周波パルス信号を生成する。
【0056】
複数のパルス変調器32のそれぞれには、異なる特徴を有する波形の生成を受け持たせる。例えば、パルス変調器32Aにはレーダ送信信号のパルスの前縁に付加するスパイク波形を生成させ、パルス変調器32Bにはパルス後縁の立ち下がりが伸びた波形を生成させ、パルス変調器32Cにはリンギング成分を生成させる。そして、パルス変調器32Xには高調波成分を生成させる。複数のパルス変調器32のパルス変調波形の諸元は、操作装置50を介して運用者によって設定される。
【0057】
〔選択器〕
選択器33は、複数のパルス変調器32の後段に設置され、複数のパルス変調器32から複数のパルス変調波形を入力とする。選択器33は、入力された複数のパルス変調波形の信号の中から少なくとも一つの信号を選択し、選択した信号を組み合わせて一つのパルスに合成したパルス波形(以下、合成パルス波形と呼ぶ)の信号を高周波増幅器34に出力する。選択器33が組み合わせる信号は、操作装置50を介して運用者によって設定される。
【0058】
選択器33は、同軸スイッチまたはPINダイオードスイッチを組み合わせて構成される。選択器33は、スイッチの設定に応じて複数の入力から1個または複数の信号を選択して出力する機能を有数する。選択器33は、複数のパルス波形を選択すると、選択されたパルス波形が重畳された波形の信号を出力する。例えば、選択器33が、パルス前縁のスパイク波形(パルスA)と、パルス後縁の立ち下がりが伸びた波形(パルスB)とを選択するように設定されているとする。このとき、選択器33からは、別々のパルス変調器32で生成されたパルスAとパルスBとを選択し、前縁のスパイク波形(パルスA)と後縁の立ち下がりが伸びた波形(パルスB)とを合成した波形の信号が出力される。
【0059】
パルス変調器32同士が相互に干渉し合ったり、生成した波形が変動したりすることのないように、選択器33の各入力間は、アイソレーションを十分に確保したスイッチを用いたり、アイソレーションが優れた電力合成器やアイソレータを用いたりするのがよい。
【0060】
〔高周波増幅器〕
高周波増幅器34は、合成パルス波形の信号を選択器33から入力とする。高周波増幅器34は、合成パルス信号の信号を任意の電力レベルに増幅して方向性結合器41に出力する。高周波増幅器34から出力される高電力のパルス信号が欺瞞信号に相当する。高周波増幅器34は、操作装置50を介して運用者によって設定される電力レベルに合成パルス信号を増幅する。
【0061】
高周波増幅器34は、必要な電力レベルを発生させる能力と選択器33が送出したパルス信号の形状を崩すことなく増幅できさえすれば、レーダ装置10に使用される増幅器と同等でもよいし、異なっていてもよい。例えば、高周波増幅器34は、複数の電力増幅器を並列動作させて分配器や合成器と組み合わせて形成してもよい。高周波増幅器34がパルス信号を増幅する際の電力レベルは、後段の方向性結合器41の結合度(通常は、10〜15デシベル程度)をあらかじめ加算して、レーダ送信信号の電力と重畳した際に見合うレベルに設定する。
【0062】
スパイク波形を付加する際は、ピーク電力を高くする必要があるために、より高電力を出力する増幅器が必要となるが、送信デューティが極めて低くてよいため、ピーク電力の確保に特化した簡易的な増幅器で十分である。なお、スパイク波形の付加を行わない場合は、スパイク波形に相当するピーク電力が不要となる。
【0063】
〔方向性結合器〕
方向性結合器41は、レーダ送信機11からレーダ送信信号を主線路に入力とし、高周波増幅器34から欺瞞信号を結合線路に入力とする。方向性結合器41に入力されたレーダ送信信号に欺瞞信号が重畳されることによって、欺瞞信号を含む送信信号が生成される。方向性結合器41は、欺瞞信号を含む送信信号をレーダ装置10に出力する。レーダ装置10に出力された送信信号は、送信空中線12から放射される。
【0064】
〔操作装置〕
操作装置50は、欺瞞信号生成部30−2を構成する複数の高周波信号発生器31、複数のパルス変調器32、選択器33および高周波増幅器34に接続される。操作装置50は、運用者が欺瞞信号生成部30−2の構成要素に各種の設定を制御する制御装置である。操作装置50は、高周波信号発生の諸元や各パルス変調の諸元、パルス波形の組み合わせ、高周波増幅器のレベル設定などを一元的に制御する。また、操作装置50は、欺瞞信号の付加の入り切りの制御も行う。
【0065】
例えば、操作装置50は、コンソールやレーダ操作席などのように、操作者に近い場所に設置される。操作装置50は、各高周波信号発生器31の周波数諸元、各パルス変調器32の設定諸元、選択器33の選択設定、高周波増幅器34の出力レベルの設定や出力可否を一元的にリモート制御するための端末の機能を持つ。操作装置50は、欺瞞信号生成部30−2の内部の設定/制御を必要とする各構成品とケーブル等によって電気的に接続される。例えば、操作装置50は、一般的なコンピュータによって実現できる。操作装置50をコンピュータによって実現する場合、欺瞞信号生成部30−2の内部の各構成品とは、専用のケーブルの他に、光ケーブルやLANによるものでも実現可能であるが、各構成品の接続方法に応じたインターフェースを介して接続することが好ましい。
【0066】
ここで、
図10を用いて、信号生成装置20−2が、同一のレーダ送信信号に異なる欺瞞信号を付加する例について説明する。
図10の例においては、信号生成装置20−2は、異なるパターンの欺瞞信号をレーダ送信信号に付加することによって複数の送信信号を生成する。
図10の例では、パターン1およびパターン2の2種類の欺瞞信号をレーダ送信信号に付加する例を示す。なお、パターン1の送信信号と、パターン2の送信信号とを送信するタイミングなどは任意に設定できる。
【0067】
例えば、欺瞞信号生成部30−2(欺瞞信号生成手段とも呼ぶ)は、同一のレーダ送信信号(第1の信号)に付加するための複数の異なる欺瞞信号を生成する。そして、方向性結合器41は、複数の異なる欺瞞信号を第1の信号に付加することで複数の異なる送信信号(第2の信号とも呼ぶ)を生成し、生成した複数の第2の信号をレーダ装置10の送信空中線に出力する。このとき、欺瞞信号生成部30−2が複数の異なる送信信号ごとに設定される異なった所定のタイミングで複数の送信信号のそれぞれをレーダ装置10に出力すれば、単一の送信元でありながら、異なる送信間隔で異なる送信信号を送信空中線12から送出できる。
【0068】
以上のように、本実施形態のレーダシステムは、複数の欺瞞信号を切り替えてレーダ送信信号に付加することができる。そのため、本実施形態のレーダシステムによれば、複数の欺瞞信号を切り替えて送信することにより、発信源が一つでありながら複数の発信源から送信信号が送信さえているように相手方誤認させることができる。例えば、異なる欺瞞信号が付加された複数の送信信号を生成し、生成した複数の送信信号ごとに所定のタイミングで送信すればよい。その場合、複数の送信信号ごとに送信間隔を変えれば、異なる送信信号が傍受されるタイミングが一様ではなくなるため、より効果的に相手方に誤認させることができる。
【0069】
また、例えば、本実施形態のレーダシステムは、レーダの運用上支障のない「高調波スプリアスが異常に強い」というような目立つ特徴を持つ欺瞞信号を送信信号に付加することができる。例えば、大型の船舶と小型の船舶とが同じ特徴の欺瞞信号を共有すれば、大型の船舶を小型の船舶と誤認させたり、小型の船舶を大型の船舶と誤認させたりすることができる。
【0070】
(第3の実施形態)
次に、本発明の第3の実施形態に係るレーダシステムについて図面を参照しながら説明する。本実施形態のレーダシステムは、第2の実施形態とは異なり。レーダ送信機の内部を改修し、レーダ送信機の終段増幅器の手前の励振器または励振回路に相当する部分から励振信号を取り出して、第2の実施形態の欺瞞装置を付加した構成を有する。
【0071】
図11は、本実施形態のレーダシステムの構成を示すブロック図である。
図11のように、本実施形態のレーダシステムは、レーダ装置10−3、信号生成装置20−2、操作装置50を備える。なお、信号生成装置20−2および操作装置50は、第2の実施形態と同じ構成であるため、詳細な説明は省略する。
【0072】
レーダ送信機11−3は、励振器111と増幅器112とを含む。
【0073】
例えば、ある個体に搭載済みのレーダ装置10−3の系統に信号生成装置20−2を付加する際には、
図11のように、励振器111と増幅器112との間に信号生成装置20−2を接続すればよい。具体的には、励振器111と増幅器112との間を接続する導波管や同軸ケーブルの増幅器112側の一端を取り外し、方向性結合器41の入力に接続する。そして、励振器111から出力される励振信号を方向性結合器41経由で増幅器112に送出する系統とする。方向性結合器41の結合線路側から欺瞞信号生成部30−2が発生させる欺瞞信号を入力することによって、励振器111から出力される励振信号に欺瞞信号を重畳付加することができる。レーダ送信機11−3は、欺瞞信号が付加された励振信号を増幅器112で増幅してから送信空中線12に出力する。その結果、レーダ装置10−3からは、欺瞞信号が付与された送信信号が送出される。
【0074】
励振器111の出力は、信号生成装置20−2の方向性結合器41の主線路の入力に接続される。励振器111は、図示しない発信器において発生される信号を増幅し、励振信号を生成する。励振器111は、生成した励振信号を方向性結合器41に出力する。
【0075】
欺瞞信号生成部30−2は、レーダ送信機11−3からの同期信号に同期させ、操作装置50を介した運用者の設定に応じて、励振信号の欺瞞信号を生成する。欺瞞信号生成部30−2は、生成した欺瞞信号を方向性結合器41に出力する。
【0076】
増幅器112は、方向性結合器41の出力に接続される。増幅器112は、欺瞞信号が付加された励振信号を増幅し、欺瞞信号が含まれるレーダ送信信号を生成する。増幅器112は、生成したレーダ送信信号を送信空中線12に出力する。送信空中線12からは、増幅器112によって生成されたレーダ送信信号が送信信号として送出される。
【0077】
本実施形態においては、レーダ装置を改修する工程が必要になるが、励振器と増幅器とを接続するケーブル等の引き出しや引き込みが複雑ではない限り、容易に信号生成装置をレーダ装置にアダプタとして付加することができる。本実施形態においては、欺瞞信号の信号レベルを確保する増幅器をレーダ装置のものと共用するため、欺瞞装置の高周波増幅器を大規模にしなくてもよい。そのため、レーダ送信機の改修費用と、欺瞞装置の高周波増幅器の費用とのトレードオフにより改修方法を選定すればよい。
【0078】
本実施形態においては、レーダ装置の増幅器を終段増幅器とする。そのため、欺瞞信号で付加する高調波、すなわちレーダ送信信号の2倍、3倍・・・の周波数の強度は、レーダ送信機の増幅器の運用周波数外の増幅性能に依存する。運用周波数に性能特化した増幅器の場合は、高調波を付加したとしても、意図した強度の高調波レベルに達しないこともあり得る。そのため、増幅器の高調波周波数の増幅能力(利得と飽和電力)をあらかじめ把握した上で改修方法を選定するのがよい。
【0079】
(ハードウェア)
ここで、本発明の各実施形態に係る操作装置を実現するハードウェア構成について、
図12のコンピュータ90を一例として挙げて説明する。なお、
図12のコンピュータ90は、各実施形態の操作装置を実現するための構成例であって、本発明の範囲を限定するものではない。
【0080】
図12のように、コンピュータ90は、プロセッサ91、主記憶装置92、補助記憶装置93、入出力インターフェース95および通信インターフェース96を備える。
図12においては、インターフェースをI/F(Interface)と略して表記する。プロセッサ91、主記憶装置92、補助記憶装置93、入出力インターフェース95および通信インターフェース96は、バス99を介して互いにデータ通信可能に接続される。また、プロセッサ91、主記憶装置92、補助記憶装置93および入出力インターフェース95は、通信インターフェース96を介して、インターネットやイントラネットなどのネットワークに接続される。
【0081】
プロセッサ91は、補助記憶装置93等に格納されたプログラムを主記憶装置92に展開し、展開されたプログラムを実行する。本実施形態においては、コンピュータ90にインストールされたソフトウェアプログラムを用いる構成とすればよい。プロセッサ91は、本実施形態に係る操作装置による処理を実行する。
【0082】
主記憶装置92は、プログラムが展開される領域を有する。主記憶装置92は、例えばDRAM(Dynamic Random Access Memory)などの揮発性メモリとすればよい。また、MRAM(Magnetoresistive Random Access Memory)などの不揮発性メモリを主記憶装置92として構成・追加してもよい。
【0083】
補助記憶装置93は、種々のデータを記憶する。補助記憶装置93は、ハードディスクやフラッシュメモリなどのローカルディスクによって構成される。なお、種々のデータを主記憶装置92に記憶させる構成とし、補助記憶装置93を省略することも可能である。
【0084】
入出力インターフェース95は、コンピュータ90と周辺機器とを接続するためのインターフェースである。通信インターフェース96は、規格や仕様に基づいて、インターネットやイントラネットなどのネットワークを通じて、外部のシステムや装置に接続するためのインターフェースである。入出力インターフェース95および通信インターフェース96は、外部機器と接続するインターフェースとして共通化してもよい。
【0085】
コンピュータ90には、必要に応じて、キーボードやマウス、タッチパネルなどの入力機器を接続するように構成してもよい。それらの入力機器は、情報や設定の入力に使用される。なお、タッチパネルを入力機器として用いる場合は、表示機器の表示画面が入力機器のインターフェースを兼ねる構成とすればよい。プロセッサ91と入力機器との間のデータ通信は、入出力インターフェース95に仲介させればよい。
【0086】
また、コンピュータ90には、情報を表示するための表示機器を備え付けてもよい。表示機器を備え付ける場合、コンピュータ90には、表示機器の表示を制御するための表示制御装置(図示しない)が備えられていることが好ましい。表示機器は、入出力インターフェース95を介してコンピュータ90に接続すればよい。
【0087】
また、コンピュータ90には、必要に応じて、ディスクドライブを備え付けてもよい。ディスクドライブは、バス99に接続される。ディスクドライブは、プロセッサ91と図示しない記録媒体(プログラム記録媒体)との間で、記録媒体からのデータ・プログラムの読み出し、コンピュータ90の処理結果の記録媒体への書き込みなどを仲介する。記録媒体は、例えば、CD(Compact Disc)やDVD(Digital Versatile Disc)などの光学記録媒体で実現できる。また、記録媒体は、USB(Universal Serial Bus)メモリやSD(Secure Digital)カードなどの半導体記録媒体や、フレキシブルディスクなどの磁気記録媒体、その他の記録媒体によって実現してもよい。
【0088】
以上が、本発明の各実施形態に係る操作装置を可能とするためのハードウェア構成の一例である。なお、
図12のハードウェア構成は、各実施形態に係る操作装置を実現するためのハードウェア構成の一例であって、本発明の範囲を限定するものではない。また、各実施形態に係る操作装置に関する処理をコンピュータに実行させるプログラムも本発明の範囲に含まれる。さらに、各実施形態に係るプログラムを記録したプログラム記録媒体も本発明の範囲に含まれる。
【0089】
各実施形態の操作装置の構成要素は、任意に組み合わせることができる。また、各実施形態の操作装置の構成要素は、ソフトウェアによって実現してもよいし、回路によって実現してもよい。
【0090】
以上、実施形態を参照して本発明を説明してきたが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。本発明の構成や詳細には、本発明のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。