(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ワイヤボビンに巻かれた未使用のワイヤ電極を加工対象物に向けて送り出しながら、前記ワイヤ電極と前記加工対象物とで形成される極間に電圧を印加して放電を発生させることで、前記加工対象物に対して放電加工を施すワイヤ放電加工機であって、
放電加工に用いられた使用済みの前記ワイヤ電極を回収する回収箱と、
前記回収箱が所定の回収位置に設置されているかを検出する回収箱検出部と、
前記回収箱で回収された前記ワイヤ電極の量を推定する回収済み電極量推定部と、
オペレータが、前記回収済み電極量推定部が推定した回収済みの前記ワイヤ電極の量をリセットするかどうかを指示するための操作部と、
前記回収箱検出部によって、前記回収箱が前記所定の回収位置から取り外されたことが検出された場合は、推定された回収済みの前記ワイヤ電極の量をリセットすることをオペレータに報知する第1の報知部と、
を備え、
前記回収済み電極量推定部は、オペレータによる前記操作部の操作によってリセットの指示がされた場合は、推定した回収済みの前記ワイヤ電極の量をリセットする、ワイヤ放電加工機。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明に係るワイヤ放電加工機および推定方法について、好適な実施の形態を掲げ、添付の図面を参照しながら以下、詳細に説明する。
【0011】
[第1の実施の形態]
図1は、ワイヤ放電加工機10の機械的な概略構成図である。ワイヤ放電加工機10は、加工液中で、ワイヤ電極12と加工対象物とで形成される極間に電圧を印加して放電を発生させることで、加工対象物に対して放電加工を施す工作機械である。ワイヤ放電加工機10は、加工機本体14、加工液処理装置16、および、制御装置18を備える。
【0012】
ワイヤ電極12の材質は、例えば、タングステン系、銅合金系、黄銅系等の金属材料である。一方、加工対象物の材質は、例えば、鉄系材料または超硬材料等の金属材料である。
【0013】
加工機本体14は、加工対象物(ワーク、被加工物)に向けてワイヤ電極12を供給する供給系統20aと、加工対象物を通過したワイヤ電極12を回収する回収系統20bとを備える。
【0014】
供給系統20aは、未使用のワイヤ電極12が巻かれたワイヤボビン22と、ワイヤボビン22に対してトルクを付与するトルクモータ24と、ワイヤ電極12に対して摩擦による制動力を付与するブレーキシュー26と、ブレーキシュー26に対してブレーキトルクを付与するブレーキモータ28と、ワイヤ電極12の張力の大きさを検出する張力検出部30と、加工対象物の上方でワイヤ電極12をガイドするワイヤガイド(上ワイヤガイド)32とを備える。このトルクモータ24およびブレーキモータ28には、回転位置または回転速度を検出するエンコーダEC1、EC2が設けられている。制御装置18は、エンコーダEC1、EC2が検出した検出信号に基づいて、トルクモータ24およびブレーキモータ28の回転速度が所定の回転速度となるように、トルクモータ24およびブレーキモータ28をフィードバック制御する。
【0015】
回収系統20bは、加工対象物の下方でワイヤ電極12をガイドするワイヤガイド(下ワイヤガイド)34と、ワイヤ電極12を挟持可能なピンチローラ36およびフィードローラ38と、フィードローラ38に対してトルクを付与するトルクモータ40と、ピンチローラ36およびフィードローラ38により搬送された使用済みのワイヤ電極12を回収する回収箱42とを備える。このトルクモータ40には、回転位置または回転速度を検出するエンコーダEC3が設けられている。制御装置18は、エンコーダEC3が検出した検出信号に基づいて、トルクモータ40の回転速度が所定の回転速度となるように、トルクモータ40をフィードバック制御する。
【0016】
なお、加工機本体14には、回収箱42が所定の回収位置に設置されているかを検出する回収箱検出部44が設けられている。この回収箱検出部44は、回収箱42が所定の回収位置に設置されるとオンになるスイッチであってもよい。オペレータは、回収箱42内にあるワイヤ電極12を除去する場合は、回収箱42を所定の回収位置から取り外して、回収箱42で回収されたワイヤ電極12を除去した後、回収箱42を所定の回収位置に設置する。
【0017】
加工機本体14は、放電加工の際に使用される脱イオン水または油等の加工液を貯留可能な加工槽46を備え、加工槽46内に、ワイヤガイド32、34が配置されている。この加工槽46は、ベース部48上に載置されている。加工対象物は、ワイヤガイド32とワイヤガイド34との間に設けられている。ワイヤガイド32、34は、ワイヤ電極12を支持するダイスガイド32a、34aを有する。また、ワイヤガイド34は、ワイヤ電極12の向きを変えながらピンチローラ36およびフィードローラ38に案内するガイドローラ34bを備える。
【0018】
なお、ワイヤガイド32は、スラッジ(加工屑)を含まない清浄な加工液を噴出する。これにより、ワイヤ電極12と加工対象物との隙間(極間)を、放電加工に適した清浄な加工液で満たすことができ、放電加工によって発生したスラッジによって放電加工の精度が低下することを防止することができる。また、ワイヤガイド34も、スラッジを含まない清浄な加工液を噴出してもよい。
【0019】
加工対象物は、X方向およびY方向に移動可能なテーブル(図示略)によって支持されている。ワイヤガイド32、34、加工対象物、および、前記テーブルは、加工槽46によって貯留された加工液に浸漬している。
【0020】
ここで、この加工対象物には、放電加工の開始点となる開始孔または加工溝(ともに図示略)が形成され、この開始孔または加工溝にワイヤ電極12が挿通されてワイヤ電極12が結線される。この加工対象物の開始孔または加工溝とワイヤ電極12との隙間が、極間となる。ワイヤ放電加工機10は、ワイヤ電極12が開始孔または加工溝に挿通されて結線された後で、ワイヤ電極12を加工対象物に向けて下方向(−Z方向)に送り出しながら、前記テーブル(加工対象物)をXY平面と平行する平面上で移動させることで、加工対象物を加工する。ワイヤ電極12の結線とは、ワイヤボビン22に巻かれたワイヤ電極12を、ワイヤガイド32、加工対象物、および、ワイヤガイド34に通して、ピンチローラ36およびフィードローラ38で挟持させることを言い、ワイヤ電極12が結線されると、ワイヤ電極12には所定の張力が付与されている。なお、X方向およびY方向は互いに直交しており、XY平面(水平面)と直交する方向をZ方向とする。
【0021】
加工液処理装置16は、加工槽46に発生した加工屑(スラッジ)を除去するとともに、電気抵抗率・温度の調整等を行うことで加工液の液質を管理する装置である。この加工液処理装置16によって液質が管理された加工液が再び加工槽46に戻される。制御装置18は、加工機本体14および加工液処理装置16を制御する。
【0022】
図2は、制御装置18の構成を示すブロック図である。制御装置18は、入力装置50、報知装置52、制御部54、および、記憶媒体56を有する。回収箱検出部44が検出した検出信号、および、エンコーダEC1〜EC3が検出した検出信号は、制御部54に送られる。
【0023】
入力装置50は、オペレータの操作を受け付けるものであり、例えば、キーボード、マウス、ファンクションキー、テンキ―等によって構成される。また、入力装置50は、後述する操作部51を有する。報知装置52は、オペレータに必要な情報を報知するものであり、例えば、液晶ディスプレイまたは有機ELディスプレイ等で構成される表示部(報知部、第1の報知部、第2の報知部)52a、光を発光するLED等の発光素子(報知部、第1の報知部、第2の報知部)52b、および、スピーカ(報知部、第1の報知部、第2の報知部)52cの少なくとも1つを有する。なお、入力装置50は、表示部52aの表示画面に貼り付けられるタッチパネル50aを有してもよい。この場合は、タッチパネル50aと表示部52aの表示画面に表示された操作ボタンとで、操作部51を構成してもよい。
【0024】
制御部54は、ワイヤ放電加工機10の各部を制御する。制御部54は、CPU等のプロセッサ等によって構成される。記憶媒体56は、制御部54の制御に必要な情報(例えば、基本プログラム、加工プログラム、加工条件等)を記憶するとともに、制御部54のバッファメモリとしても機能する。記憶媒体56は、揮発性メモリ、不揮発性メモリ等によって構成される。
【0025】
本実施の形態の制御部54は、特に、回収済み電極量推定部60、報知制御部62、使用予定電極量推定部64、および、電極量判断部66を備える。
【0026】
回収済み電極量推定部60は、回収箱42で回収されたワイヤ電極12の量、つまり、回収箱42内にあるワイヤ電極12の量を推定する。回収済み電極量推定部60は、回収箱42内に送られるワイヤ電極12の量を積算することで、回収箱42で回収されたワイヤ電極12の量(以下、単に、回収済み電極量と呼ぶ場合がある。)を推定する。回収済み電極量推定部60が推定した回収済み電極量は、記憶媒体56に記憶される。
【0027】
回収済み電極量推定部60は、ワイヤ電極12の送り速度およびワイヤ電極12を送り出した時間に基づいて、回収済み電極量を推定してもよい。ワイヤ電極12の送り速度およびワイヤ電極12を送り出した時間とからどのくらいの量が回収箱42で回収されたのかがわかる。回収済み電極量推定部60は、エンコーダEC1〜EC3のうち、少なくとも1つのエンコーダECが検出した検出信号に基づいて、ワイヤ電極12の送り速度とワイヤ電極12を送り出した時間とを算出する。
【0028】
また、回収済み電極量推定部60は、ワイヤボビン22に現在巻かれている未使用のワイヤ電極12の残量から、回収済み電極量を推定してもよい。このワイヤボビン22に巻かれている未使用のワイヤ電極12の残量は、ワイヤボビン22に巻かれているワイヤ電極12の巻径、および、ワイヤ電極12が巻かれるワイヤボビン22の軸径に基づいて算出することができる。具体的には、特開2003−53628号公報に開示されているような公知の手法を用いることで、ワイヤボビン22に現在巻かれているワイヤ電極12の残量を算出することができる。
【0029】
操作部51は、オペレータの操作に応じて、回収済み電極量推定部60が推定した回収済みのワイヤ電極12の量をリセットするか否かを指示する指示信号を制御部54に出力する。したがって、回収済み電極量推定部60は、操作部51からリセットする旨の指示信号が送られてくると、推定した回収済み電極量をリセット(ゼロ)にする。これにより、記憶媒体56に記憶されている回収済み電極量がゼロになる。
【0030】
報知制御部(表示制御部)62は、回収箱検出部44によって回収箱42が所定の回収位置から取り外されたことが検出された場合は、回収済み電極量をリセットすることを報知装置52に報知させる。なお、この報知(回収済み電極量のリセットの報知)を、以下、便宜的に第1の報知と呼ぶ場合がある。
【0031】
オペレータは、この第1の報知を受け、実際に回収箱42で回収された回収済みのワイヤ電極12を除去した場合は、操作部51を操作してリセットを指示する。これにより、回収済み電極量推定部60が推定した回収済み電極量がリセットされる。この第1の報知によって、オペレータがリセットの指示をし忘れることを防止することができる。また、オペレータは、第1の報知を受けた場合であっても、実際に回収箱42で回収された回収済みのワイヤ電極12を除去していない場合は、操作部51を操作してリセットしないことを指示すればよい。例えば、別の物体等が回収箱42にぶつかって、回収箱42の設置位置がずれた場合には、回収箱検出部44によって回収箱42が取り外されたと検出されてしまうが、このような場合にも対応することができる。したがって、回収済み電極量推定部60は、回収箱42内の回収済みのワイヤ電極12の量を精度よく推定することができる。
【0032】
報知制御部62は、例えば、回収済み電極量をリセットすることを促す画面を表示部52aに表示させることでオペレータに報知させてもよい。また、報知制御部62は、発光素子52bを発光させることで回収済み電極量をリセットすることをオペレータに報知してもよいし、スピーカ52cから音を出力させることで回収済み電極量をリセットすることをオペレータに報知してもよい。
【0033】
ワイヤ放電加工機10の電源がオフのときは、報知装置52への電力供給も停止している。そのため、報知制御部62は、ワイヤ放電加工機10の電源がオフの状態において、回収箱検出部44によって、回収箱42が所定の回収位置から取り外されたことが検出された場合は、次に、ワイヤ放電加工機10の電源がオンにされたときに、回収済み電極量をリセットすることをオペレータに報知させる。
【0034】
例えば、回収箱検出部44によって、回収箱42が所定の回収位置から取り外されたことが検出されると、記憶媒体56の記憶されている取外しフラグが「1」になる。そして、ワイヤ放電加工機10の電源がオンにされたときに、報知制御部62が記憶媒体56の取外しフラグを読み込み、取外しフラグが「1」となっている場合は、回収済みのワイヤ電極12の量をリセットすることをオペレータに報知させる。報知制御部62は、この報知を行うと、記憶媒体56の取外しフラグを「0」にリセットする。
【0035】
これにより、ワイヤ放電加工機10の電源がオフのときに、回収箱42が所定の回収位置から取り外された場合であっても、推定された回収済み電極量をリセットすることをオペレータに確実に報知することができる。また、ワイヤ放電加工機10の電源がオフのときには、報知装置52へ電力を供給しなくて済むので、電気代を節約することができる。
【0036】
なお、報知制御部62は、回収箱検出部44によって、回収箱42が所定の回収位置から取り外されたことが検出された後、再び、回収箱42が所定の回収位置に設置されたことが検出された場合に、第1の報知を行ってもよい。これにより、実際に回収箱42内のワイヤ電極12を除去したオペレータが、推定された回収済みのワイヤ電極12の量のリセット指示をし忘れることを確実に防止することができる。
【0037】
この場合は、記憶媒体56に再設置フラグを設け、回収箱検出部44によって、回収箱42が所定の回収位置に設置されたことが検出されると、再設置フラグが「1」になる。したがって、報知制御部62が記憶媒体56の取外しフラグおよび再設置フラグを読み込み、取外しフラグおよび再設置フラグがともに「1」となっている場合は、回収済みのワイヤ電極12の量をリセットすることをオペレータに報知させる。報知制御部62は、第1の報知を行うと、記憶媒体56の取外しフラグおよび再設置フラグをともに「0」にリセットする。
【0038】
ここで、報知装置52によって、第1の報知がされていないにもかかわらず(回収箱42で回収されたワイヤ電極12が除去されていないにもかかわらず)、誤って操作部51が操作された場合は、回収済み電極量推定部60が推定した回収済み電極量がリセットされてしまう可能性がある。そこで、回収済み電極量推定部60は、報知装置52によって、第1の報知がされてから所定時間が経過するまでの間に、リセットが指示された場合に、推定した回収済み電極量をリセットしてもよい。つまり、第1の報知がされてから所定時間が経過するまでの時間外に、オペレータによる操作部51の操作によってリセットが指示されても、回収済み電極量推定部60は、推定した回収済み電極量をリセットしない。
【0039】
なお、この場合は、報知制御部62は、報知装置52が第1の報知を行ったことを示す報知信号を回収済み電極量推定部60に出力し、回収済み電極量推定部60は、報知信号を受け取ってから所定時間が経過するまでの間に、操作部51から出力された指示信号を受け付けてもよい。
【0040】
また、操作部51が、表示部52aの表示画面に表示された操作ボタンとタッチパネル50aとによって構成される場合は、報知制御部62は、回収箱検出部44によって回収箱42が所定の回収位置から取り外されたことが検出された場合に、前記した操作ボタンを表示部52aの表示画面に表示してもよい。この場合は、回収箱42が所定の回収位置から取り外されるまでは、オペレータは操作部51を操作することができない。また、報知制御部62は、第1の報知を行った後に、前記した操作ボタンを表示部52aの表示画面に表示してもよい。この場合は、第1の報知がされるまでは、オペレータは操作部51を操作することができない。
【0041】
使用予定電極量推定部64は、加工プログラムの実行によって使用される使用予定のワイヤ電極12の量(以下、単に、使用予定電極量と呼ぶ場合がある。)を推定する。つまり、使用予定電極量推定部64は、加工プログラムの実行によって新たに回収箱42で回収されるワイヤ電極12の量を推定する。使用予定電極量推定部64が推定した使用予定電極量は、記憶媒体56に記憶される。
【0042】
使用予定電極量推定部64は、加工プログラムの実行によって、ワイヤ電極12が送り出される予定速度およびワイヤ電極12を送り出される予定時間に基づいて、使用予定電極量を算出する。使用予定電極量推定部64は、実行する加工プログラムおよび加工条件に基づいてワイヤ電極12の予定速度および予定時間を決定する。
【0043】
電極量判断部66は、回収済み電極量推定部60が推定した回収済み電極量と、使用予定電極量推定部64が推定した使用予定電極量とを合算した合算量が閾値を超えるか否かを判断する。
【0044】
報知制御部62は、電極量判断部66によって合算量が閾値を超えると判断した場合は、加工プログラムの実行前にその旨を報知装置52に報知させる。この報知を、以下、便宜的に第2の報知と呼ぶ場合がある。これにより、加工プログラムの実行によって、回収箱42がワイヤ電極12で一杯になること、または、回収箱42がワイヤ電極12で溢れることを、加工プログラムの実行前にオペレータは認識することができる。オペレータは、この第2の報知がされると、加工プログラムの実行前に、回収箱42で回収された回収済みのワイヤ電極12を除去する。なお、閾値は、回収箱42が収容することができる最大収容量の値であってもよいし、最大収容量より小さい値であってもよい。
【0045】
報知制御部62は、例えば、加工プログラムの実行によって回収箱42内のワイヤ電極12の量が閾値を超えてしまう旨を表示部52aに表示させることでオペレータに報知させてもよい。また、報知制御部62は、発光素子52bを発光させることでその旨をオペレータに報知してもよいし、スピーカ52cから音を出力させることでその旨をオペレータに報知してもよい。
【0046】
なお、報知制御部62は、第1の報知および第2の報知を同一の報知部を用いて報知してもよいし、第1の報知と第2の報知とを異なる報知部を用いて報知してもよい。例えば、第1の報知および第2の報知を表示部52aを用いて報知してもよいし、第1の報知をスピーカ52cを用いて報知し、第2の報知を表示部52aを用いて報知してもよい。また、第1の報知および第2の報知を、発光素子52bまたはスピーカ52cを用いて報知する場合は、両者を区別するため異なる色または異なる音で報知してもよい。
【0047】
次に、
図3、
図4に示すフローチャートを用いて、ワイヤ放電加工機10の動作を説明する。なお、ワイヤ放電加工機10による放電加工中は、回収済み電極量推定部60によって回収済み電極量が推定されている。また、放電加工中に限らず、ワイヤ電極12の送り出しによって回収箱42内に搬送されたワイヤ電極12の量も回収済み電極量推定部60によって推定されている。まず、
図3に示す動作を説明してから、
図4に示す動作を説明する。
【0048】
回収済み電極量推定部60で推定された回収済み電極量をリセットするための動作を
図3に示すフローチャートにしたがって説明する。ステップS1で、報知制御部62は、回収箱42が所定の回収位置から取り外されたか否かを判断する。具体的には、記憶媒体56の取外しフラグが「1」であるか否かを判断する。なお、回収箱検出部44によって回収箱42が所定の回収位置から取り外されたことが検出されると、記憶媒体56の取外しフラグが「1」になる。
【0049】
ステップS1で、回収箱42が所定の回収位置から取り外されていないと判断されると、回収箱42が取り外されたと判断されるまでステップS1に留まる。一方で、ステップS1で、回収箱42が所定の回収位置から取り外されたと判断されるとステップS2に進む。
【0050】
ステップS2に進むと、報知制御部62は、回収箱42が所定の回収位置に設置されたかを否かを判断する。具体的には、記憶媒体56の再設置フラグが「1」であるか否かを判断する。なお、回収箱検出部44によって回収箱42が所定の回収位置に設置されたことが検出されると、再設置フラグが「1」になる。
【0051】
ステップS2で、回収箱42が所定の回収位置に設置されていないと判断されると、回収箱42が設置されたと判断されるまでステップS2に留まる。一方で、ステップS2で、回収箱42が所定の回収位置に設置されたと判断されるとステップS3に進む。
【0052】
ステップS3に進むと、報知制御部62は、回収済み電極量をリセットすることを報知装置52に報知させる。なお、報知制御部62は、このとき、取外しフラグおよび再設置フラグをともに「0」にリセットする。
【0053】
次いで、ステップS4で、回収済み電極量推定部60は、オペレータによる操作部51の操作によってリセットが指示されたか否かを判断する。具体的には、回収済み電極量推定部60は、操作部51からリセットを指示する指示信号が送られてきたか否かを判断する。
【0054】
ステップS4で、オペレータによって操作部51が操作されていないと判断すると操作されるまでステップS4に留まり、オペレータによって操作部51が操作されたと判断するとステップS5に進む。
【0055】
ステップS5に進むと、回収済み電極量推定部60は、推定した回収済み電極量をリセットして、ステップS1に戻る。これにより、記憶媒体56に記憶されている回収済み電極量がゼロになる。
【0056】
次に、加工プログラムを実行する前に実施される動作を
図4に示すフローチャートにしたがって説明する。ステップS11で、使用予定電極量推定部64は、これから加工プログラムが実行されるか否かを判断する。ステップS11で、加工プログラムが実行されないと判断されると、実行されると判断するまでステップS11に留まり、実行されると判断されるとステップS12に進む。
【0057】
ステップS12に進むと、使用予定電極量推定部64は、加工プログラムの実行によって使用される使用予定電極量を推定する。使用予定電極量推定部64は、加工プログラムの実行によって、ワイヤ電極12が送り出される予定速度およびワイヤ電極12が送り出される予定時間に基づいて、使用予定電極量を算出する。この算出した使用予定電極量は、記憶媒体56に記憶される。
【0058】
次いで、ステップS13で、電極量判断部66は、回収済み電極量と使用予定電極量とを合算した合算量が閾値を超えるか否かを判断する。ステップS13で、合算量が閾値を超えないと判断されるとステップS11に戻り、合算量が閾値を超えると判断されるとステップS14に進む。
【0059】
ステップS14に進むと、報知制御部62は、合算量が閾値を超えることを報知して、ステップS11に戻る。
【0060】
このように、回収箱42が所定の回収位置から取り外されたことが検出された場合は、オペレータに、推定された回収済み電極量をリセットすることが報知される。そして、オペレータの操作によってリセットの指示がされた場合は、推定した回収済みのワイヤ電極12の量がリセットされる。したがって、回収箱42で回収されたワイヤ電極12の量を精度よく推定することができる。
【0061】
加工プログラムを実行する前に、加工プログラムの実行によって使用される使用予定電極量が推定され、推定された使用予定電極量と回収済み電極量とを合算した合算量が閾値を超えるか否かが判断される。そして、合算量が閾値を超える場合は、その旨がオペレータに報知される。これにより、加工プログラムの実行によって、回収箱42がワイヤ電極12で一杯になる、または、回収箱42がワイヤ電極12で溢れることを事前に防止することができる。
【0062】
なお、報知制御部62は、回収済み電極量推定部60が推定した回収済みのワイヤ電極12の量を表示部52aに表示してもよい。これにより、オペレータは、現在の回収箱42内にあるワイヤ電極12の量を認識することができる。したがって、オペレータは、適切なタイミングで、回収箱42内にあるワイヤ電極12を除去することができる。
【0063】
また、報知制御部62は、使用予定電極量推定部64が推定した使用予定のワイヤ電極12の量を表示部52aに表示してもよい。これにより、オペレータは、加工プログラムの実行によって、どのくらいの量のワイヤ電極12が回収箱42で回収されるのかを認識することができる。
【0064】
〔実施の形態から得られる技術的思想〕
上記実施の形態から把握しうる技術的思想について、以下に記載する。
【0065】
<第1の技術的思想>
ワイヤ放電加工機(10)は、ワイヤボビン(22)に巻かれた未使用のワイヤ電極(12)を加工対象物に向けて送り出しながら、ワイヤ電極(12)と前記加工対象物とで形成される極間に電圧を印加して放電を発生させることで、加工対象物に対して放電加工を施す。ワイヤ放電加工機(10)は、放電加工に用いられた使用済みのワイヤ電極(12)を回収する回収箱(42)と、回収箱(42)が所定の回収位置に設置されているかを検出する回収箱検出部(44)と、回収箱(42)で回収されたワイヤ電極(12)の量を推定する回収済み電極量推定部(60)と、オペレータが、回収済み電極量推定部(60)が推定した回収済みのワイヤ電極(12)の量をリセットするかどうかを指示するための操作部(51)と、回収箱検出部(44)によって、回収箱(42)が所定の回収位置から取り外されたことが検出された場合は、推定された回収済みのワイヤ電極(12)の量をリセットすることをオペレータに報知する第1の報知部(52a〜52c)と、を備える。回収済み電極量推定部(60)は、オペレータによる操作部(51)の操作によってリセットの指示がされた場合は、推定した回収済みのワイヤ電極(12)の量をリセットする。
【0066】
これにより、回収箱(42)で回収された回収済みのワイヤ電極(12)の量の推定精度が向上する。
【0067】
第1の報知部(52a〜52c)は、回収箱検出部(44)によって、回収箱(42)が所定の回収位置から取り外されたことが検出された後、再び回収箱(42)が所定の回収位置に設置されたことが検出された場合には、推定された回収済みのワイヤ電極(12)の量をリセットすることをオペレータに報知してもよい。これにより、実際に回収箱(42)内のワイヤ電極(12)を除去したオペレータが、推定された回収済みのワイヤ電極(12)の量のリセット指示をし忘れることを確実に防止することができる。
【0068】
第1の報知部(52a〜52c)は、ワイヤ放電加工機(10)の電源がオフの状態において、回収箱検出部(44)によって、回収箱(42)が所定の回収位置から取り外されたことが検出された場合は、次にワイヤ放電加工機(10)の電源がオンされたときに、推定された回収済みのワイヤ電極(12)の量をリセットすることをオペレータに報知してもよい。これにより、ワイヤ放電加工機(10)の電源がオフのときに、回収箱(42)が所定の回収位置から取り外された場合であっても、推定された回収済みのワイヤ電極(12)の量をリセットすることをオペレータに確実に報知することができる。また、ワイヤ放電加工機(10)の電源がオフのときには、報知装置(52)へ電力を供給しなくて済むので、電気代を節約することができる。
【0069】
回収済み電極量推定部(60)は、第1の報知部(52a〜52c)によって回収済みのワイヤ電極(12)の量をリセットすることが報知されてから所定時間が経過するまでの間に、オペレータによる操作部(51)の操作によってリセットが指示された場合に、推定した回収済みのワイヤ電極(12)の量をリセットしてもよい。これにより、操作部(51)の誤操作によって推定された回収済みのワイヤ電極(12)の量がリセットされてしまうことを防止することができる。
【0070】
ワイヤ放電加工機(10)は、画像として情報を表示する表示部(52a)と、表示部(52a)を制御する表示制御部(62)と、表示部(52a)の表示画面に貼り付けられたタッチパネル(50a)と、を備えてもよい。操作部(51)は、表示部(52a)の表示画面に表示された操作ボタンとタッチパネル(50a)とによって構成されてもよい。表示制御部(62)は、回収箱(42)が所定の回収位置から取り外されたことが検出された場合に、操作ボタンを表示してもよい。これにより、操作部(51)の誤操作によって推定された回収済みのワイヤ電極(12)の量がリセットされてしまうことを防止することができる。
【0071】
回収済み電極量推定部(60)は、ワイヤ電極(12)の送り出し速度およびワイヤ電極(12)を送り出した時間、または、ワイヤボビン(22)に巻かれた未使用のワイヤ電極(12)の残量を用いて回収箱(42)で回収されたワイヤ電極(12)の量を推定してもよい。これにより、精度よく回収済みのワイヤ電極(12)の量を推定することができる。
【0072】
ワイヤ放電加工機(10)は、加工プログラムの実行によって使用される使用予定のワイヤ電極(12)の量を推定する使用予定電極量推定部(64)と、回収済み電極量推定部(60)が推定した回収済みのワイヤ電極(12)の量と、使用予定電極量推定部(64)が推定した使用予定のワイヤ電極(12)の量とを合算した合算量が閾値を超えるか否かを判断する電極量判断部(66)と、電極量判断部(66)によって合算量が閾値を超えると判断された場合は、加工プログラムの実行前にその旨を報知する第2の報知部(52a〜52c)と、を備えてもよい。これにより、加工プログラムの実行によって、回収箱(42)がワイヤ電極(12)で一杯になる、または、回収箱(42)がワイヤ電極(12)で溢れることを事前に防止することができる。
【0073】
使用予定電極量推定部(64)は、加工プログラムの実行によって、ワイヤ電極(12)が送り出される予定速度およびワイヤ電極(12)が送り出される予定時間を用いて使用予定のワイヤ電極(12)の量を推定してもよい。これにより、精度よく使用予定のワイヤ電極(12)の量を推定することができる。
【0074】
<第2の技術的思想>
推定方法は、ワイヤ放電加工機(10)によって、加工に用いられ、回収箱(42)で回収されたワイヤ電極(12)の量を推定する。ワイヤ放電加工機(10)は、ワイヤボビン(22)に巻かれた未使用のワイヤ電極(12)を加工対象物に向けて送り出しながら、ワイヤ電極(12)と加工対象物とで形成される極間に電圧を印加して放電を発生させることで、加工対象物に対して放電加工を施しつつ、回収箱(42)で使用済みのワイヤ電極(12)を回収する。推定方法は、回収箱(42)が所定の回収位置に設置されているかを検出する回収箱検出ステップと、回収箱(42)で回収されたワイヤ電極(12)の量を推定する回収済み電極量推定ステップと、オペレータの操作に応じて、回収済み電極量推定ステップが推定した回収済みのワイヤ電極(12)の量をリセットするかどうかを指示する指示ステップと、回収箱(42)が所定の回収位置から取り外されたことが検出された場合は、推定された回収済みのワイヤ電極(12)の量をリセットすることをオペレータに報知する第1の報知ステップと、推定されたワイヤ電極(12)の量のリセットが指示された場合は、推定された回収済みのワイヤ電極(12)の量をリセットするリセットステップと、を含む。
【0075】
これにより、回収箱(42)で回収された回収済みのワイヤ電極(12)の量の推定精度が向上する。
【0076】
第1の報知ステップは、回収箱(42)が所定の回収位置から取り外されたことが検出された後、再び回収箱(42)が所定の回収位置に設置されたことが検出された場合には、推定された回収済みのワイヤ電極(12)の量をリセットすることをオペレータに報知してもよい。これにより、実際に回収箱(42)内のワイヤ電極(12)を除去したオペレータが、推定された回収済みのワイヤ電極(12)の量のリセット指示をし忘れることを確実に防止することができる。
【0077】
第1の報知ステップは、ワイヤ放電加工機(10)の電源がオフの状態において、回収箱(42)が所定の回収位置から取り外されたことが検出された場合は、次にワイヤ放電加工機(10)の電源がオンされたときに、推定された回収済みのワイヤ電極(12)の量をリセットすることをオペレータに報知してもよい。これにより、ワイヤ放電加工機(10)の電源がオフのときに、回収箱(42)が所定の回収位置から取り外された場合であっても、推定された回収済みのワイヤ電極(12)の量をリセットすることをオペレータに確実に報知することができる。また、ワイヤ放電加工機(10)の電源がオフのときには、報知装置(52)へ電力を供給しなくて済むので、電気代を節約することができる。
【0078】
リセットステップは、第1の報知ステップによって回収済みのワイヤ電極(12)の量をリセットすることが報知されてから所定時間が経過するまでの間に、オペレータの操作によってリセットが指示された場合に、推定された回収済みのワイヤ電極(12)の量をリセットしてもよい。これにより、操作部(51)の誤操作によって推定された回収済みのワイヤ電極(12)の量がリセットされてしまうことを防止することができる。
【0079】
ワイヤ放電加工機(10)は、画像として情報を表示する表示部(52a)と、表示部(52a)の表示画面に貼り付けられたタッチパネル(50a)と、を備えてもよい。オペレータが、推定された回収済みのワイヤ電極(12)の量をリセットするかどうかを指示するための操作部(51)は、表示部(52a)の表示画面に表示された操作ボタンとタッチパネル(50a)とによって構成されてもよい。推定方法は、回収箱(42)が所定の回収位置から取り外されたことが検出された場合に、操作ボタンを表示部(52a)に表示する表示制御ステップを含んでもよい。これにより、操作部(51)の誤操作によって推定された回収済みのワイヤ電極(12)の量がリセットされてしまうことを防止することができる。
【0080】
回収済み電極量推定ステップは、ワイヤ電極(12)の送り出し速度およびワイヤ電極(12)を送り出した時間、または、ワイヤボビン(22)に巻かれた未使用のワイヤ電極(12)の残量を用いて回収箱(42)で回収されたワイヤ電極(12)の量を推定してもよい。これにより、精度よく回収済みのワイヤ電極(12)の量を推定することができる。
【0081】
推定方法は、加工プログラムの実行によって使用される使用予定のワイヤ電極(12)の量を推定する使用予定電極量推定ステップと、回収済み電極量推定ステップが推定した回収済みのワイヤ電極(12)の量と、使用予定電極量推定ステップが推定した使用予定のワイヤ電極(12)の量とを合算した合算量が閾値を超えるか否かを判断する電極量判断ステップと、電極量判断ステップによって合算量が閾値を超えると判断された場合は、加工プログラムの実行前にその旨を報知する第2の報知ステップと、を含んでもよい。これにより、加工プログラムの実行によって、回収箱(42)がワイヤ電極(12)で一杯になる、または、回収箱(42)がワイヤ電極(12)で溢れることを事前に防止することができる。