(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
[第一の実施形態]
本発明の第一の実施形態のプレス成形システム100について
図1〜
図6に基づいて説明する。
図1はプレス成形システム100を示す構成図である。
【0010】
[プレス成形システムの概略構成]
プレス成形システム100は、加熱炉1、搬入コンベア2、搬入装置6、検知装置7、鍛造プレス装置10、制御装置90を備えている。
【0011】
加熱炉1は成形材料Wを加熱するインダクションヒータ等からなる。
搬入コンベア2は、加熱炉1において加熱された成形材料Wを搬入装置6へ搬送するローラ式の搬送装置である。
この搬入コンベア2には、プッシャー5が設けられており、加熱炉1から排出された成形材料Wを搬入装置6に送り込むことができる。
搬入装置6は、モータ駆動のベルトコンベア機構であり、後述する鍛造プレス装置10のトランスファフィーダ40の受け取り位置に成形材料Wを搬入することができる。
検知装置7は、搬入装置6の搬送方向上流側の所定位置において、搬入コンベア2から供給された成形材料Wを検知する。この検知装置7は、例えば、ホットメタルデテクターのような所定の高温度の物体を検知するもので構成されている。但し、温度に拘わらず、所定位置で物体の有無を検出することが可能な他の検出手段、例えば、近接センサ、カメラ等で代用することも可能である。
この検知装置7による成形材料Wの検知により、トランスファフィーダ40による成形材料Wのプレス加工部への供給可能状態を検知することができる。
【0012】
[鍛造プレス装置]
図2は鍛造プレス装置10を示す構成図である。
鍛造プレス装置10は、ベッド23、複数のアップライト22、クラウン21、ボルスタ24、スライド18、対をなす金型3,4、駆動機構20、制御装置90及びトランスファフィーダ40を備える。
【0013】
ベッド23、複数のアップライト22及びクラウン21は、鍛造プレス装置10のフレーム部を構成する。ベッド23、複数のアップライト22及びクラウン21は、内部にタイロッド25aが通され、タイロッドナット25bにより締め付けられることで、互いに締結される。左右に配置された二つのアップライト22それぞれには四つのガイド19(一部図示略)が設けられている。スライド18は四つのガイド19によって上下方向への昇降動作が可能である。なお、スライド18の移動方向は上下方向でなくともよい。
【0014】
スライド18の下部には、ハードプレート27が装備され、さらにその下部にはボルスタ28が装備されている。そして、ボルスタ28の下面には、対をなす金型の一方である上金型3が固定される。なお、鍛造プレス装置10は、複数対の金型を備えており、複数の上金型3は
図2の左右方向(エキセン軸16方向)に沿って一列に並んで配設されている。例えば、
図2の左側から右側へ一列に四つ並んで配設されているが、その個体数は増減可能である。
ボルスタ24は、ハードプレート26を介してベッド23に固定される。ボルスタ24は、対をなす金型の他方である下金型4が固定される部品である。なお、複数の下金型4はボルスタ24上において、
図2の左右方向(エキセン軸16方向)に沿って一列に並んで配設されている。例えば、
図2の左側から右側へ一列に四つ並んで配設されているが、その個体数は増減可能である。各上金型3と各下金型4は個別に対向するように配置され、スライド18が下降したときに互いに近接する。相対する上金型3と下金型4の間に成形材料Wが投入されている場合、スライド18が下降することで成形材料Wが上金型3と下金型4の型空間の中で加圧され、成形材料Wが鍛造成形される。
【0015】
鍛造プレス装置10は、スライド18を昇降するための構成として、サーボモータ11、伝動軸14、減速機15、エキセン軸16、コンロッド17を備え、これらが駆動機構20を構成する。
【0016】
サーボモータ11は、クラウン21又はアップライト22などのフレーム部の側面に固定される。サーボモータ11は、一回転中で任意に回転速度を変化させる制御や任意の回転角度で停止させる制御が可能である。従って、スライド18の上下の昇降動作の移動速度を1ストローク中で変化させたり、任意の位置で停止させたりすることが可能である。
【0017】
サーボモータ11は、伝動軸14の軸方向の一方の端部側に配置されている。そして、サーボモータ11の出力軸は、伝動軸14の一端部に直結されている。
減速機15は、伝動軸14の軸方向のもう一方の端部の近傍、すなわちサーボモータ11の逆方の端部の近傍に配置される。サーボモータ11及び減速機15は、エキセン軸16と同軸上に配置される。
このような配置により、サーボモータ11と減速機15とを、エキセン軸16の軸方向の両側に分散して配置できる。これにより、鍛造プレス装置10の良好な重量バランスを図ることができる。
【0018】
エキセン軸16は、その主軸部16aが軸受け41を介してクラウン21又はアップライト22などのフレーム部に回転可能に支持される。
エキセン軸16は、回転中心軸に沿って貫通する中空部を有する。伝動軸14は、この中空部においてエキセン軸16と相対的に回転可能かつ同軸上に配置される。伝動軸14は、サーボモータ11の回転力を減速機15に伝達する。減速機15は、伝動軸14の回転運動を減速してエキセン軸16に伝達する。
【0019】
エキセン軸16は、主軸部16aに対して偏心した偏心部16bを有し、偏心部16bがコンロッド17と接続されている。コンロッド17は、エキセン軸16とスライド18とを連結し、エキセン軸16の回転運動を直線運動に変換してスライド18に伝達する。
【0020】
上記のように、エキセン軸16は、サーボモータ11から減速機15を介して回転力が付与される。そして、エキセン軸16は、鍛造プレス装置10の一回のサイクルに一回転する構成なので、サーボモータ11の回転速度に対して低速でスライド18が上下方向の昇降動作を行う。
【0021】
なお、上記駆動機構20、ボルスタ24,28、ハードプレート26,27、上金型3及び下金型4は、成形材料にプレス成形を行うプレス加工部を構成している。
そして、上金型3と下金型4の近傍には、プレス加工部に成形材料Wを供給する材料供給装置としてのトランスファフィーダ40が設けられている。このトランスファフィーダ40は、上金型3と下金型4とが離間したときに、最上流側の下金型4及び上金型3に新たな成形材料Wを供給したり、一列に並んだ複数の下金型4及び上金型3に対して、ワークを順番に搬送したりする。
【0022】
トランスファフィーダ40は、2本の平行に配置した送り桿41,41を備え、各送り桿41,41には複数のつかみ爪42が設けられている。
各送り桿41,41は、一列に配置された複数の下金型4の両側でその並び方向に平行に配置されている。
各送り桿41,41からは、各つかみ爪42が互いに向かい合うように延出されている。また、各つかみ爪42の並び方向の間隔は複数の下金型4の間隔に一致している。また、各送り桿41,41は、つかみ爪42を下金型4よりも一つ多く備えている(例えば、下金型4は四つ、つかみ爪42は五つ)。
【0023】
トランスファフィーダ40は、
図3に示すように、2本の送り桿41,41を、(1)クランプ→(2)リフト→(3)アドバンス→(4)ダウン→(5)アンクランプ→(6)リターンの順で動作させて、プレス加工部のプレス動作に同期させて、成形材料Wをプレス加工部の四つの下金型4に順送りする。なお、符号Hは、(1)クランプ動作の出発点であり(6)リターン動作の到着点となる待機位置(ホームポジション)である。
【0024】
[制御装置]
制御装置90は、プログラムに従ってプレス成形システム100の動作制御を行うマイクロコンピュータ等の情報処理装置である。
制御装置90は、前述した検知装置7により搬入装置6からトランスファフィーダ40への成形材料Wの供給可能状態の検知の有無に応じて、トランスファフィーダ40とプレス加工部のサーボモータ11について動作制御を実行する。
【0025】
[プレス成形システムの動作制御]
制御装置90によって実行されるプレス成形システム100の動作制御について説明する。
制御装置90は、所定の判断期間p1内に、検知装置7により搬入装置6からトランスファフィーダ40への成形材料Wの供給可能状態を検知した場合と検知しない場合とで、サーボモータ11及びトランスファフィーダ40に対して異なる動作制御実行する。
上記判断期間p1については後述する。
【0026】
検知装置7による判断期間p1内の成形材料Wの供給可能状態の検知は、搬入装置6から滞りなく成形材料Wが供給されることを意味する。
また、検知装置7による判断期間p1内の成形材料Wの供給可能状態の非検知は、搬入装置6からの成形材料Wの供給の遅れを意味する。
従って、制御装置90は、供給可能状態の検知の際には、サーボモータ11及びトランスファフィーダ40が標準動作を行う動作制御を実施する。
また、制御装置90は、供給可能状態の非検知の際には、サーボモータ11及びトランスファフィーダ40が一時的に停止又は待機状態となる動作制御を実施する。
【0027】
図4は判断期間p1内に成形材料Wの供給可能状態が検知された場合のスライド18のストロークとトランスファフィーダ40の各方向の動作変化量とエキセン軸16の回転数との関係を示す線図である。
図5は判断期間p1内に成形材料Wの供給可能状態が検知されない場合のスライド18のストロークとトランスファフィーダ40の各方向の動作変化量とエキセン軸16の回転数との関係を示す線図である。
図4及び
図5中の太線のL1はスライド18のストローク(上金型3の高さ)を示す。
一点鎖線のL2はエキセン軸16の回転数(単位はrpm)を示す。
二点鎖線のL3はトランスファフィーダ40における
図3のクランプ−アンクランプ方向の動作変化量を示す。
点線のL4はリフト−ダウン方向の動作変化量を示す。
破線のL5はアドバンス−リターン方向の動作変化量を示す。
これらの動作線図に示す動作は、全て制御装置90によるサーボモータ11及びトランスファフィーダ40に対する制御により実行される。
【0028】
図4の太線L1に示すように、標準動作においては、スライド18は、サーボモータ11によるエキセン軸16の一回転分の回転駆動を1ストロークとして、退避位置である上死点からプレス成形を行う進行位置としての下死点を通過して上死点に戻る動作パターンで上下方向に往復移動を行う。ここでは、スライド18のストロークが500[mm]である場合を例示するが、一例であってこの長さに限定するものではない。
【0029】
一点鎖線L2に示すように、スライド18に移動力を伝えるエキセン軸16は、スライド18が上死点から下死点に向かう途中まで規定の通常速度で回転する。さらに、エキセン軸16は、スライド18が下死点に近くなる125[mm]の高さで減速し、下死点近くで通常速度まで加速してそのままスライド18を上死点まで上昇させる。スライド18は、この動作を繰り返し実行する。
【0030】
トランスファフィーダ40は、前述した待機位置Hで待機し、スライド18が下死点から上死点に戻る前の同期タイミングt1で供給動作を開始する。
同期タイミングt1では、二点鎖線L3に示すように、各送り桿41,41のクランプ移動が行われる。
次いで、点線L4に示すように、リフト移動が行われる。
次いで、破線L5に示すように、アドバンス移動が行われる。
次いで、点線L4に示すように、ダウン移動が行われる。
次いで、二点鎖線L3に示すように、アンクランプ移動が行われる。
次いで、破線L5に示すように、リターン移動が行われる。そして、このリターン移動が終わる頃に次の同期タイミングt1に到達する。
【0031】
トランスファフィーダ40の同期タイミングt1とは、上昇するスライド18が同期位置を通過するタイミングを示す。
同期位置は、スライド18が同期位置を通過するタイミングでトランスファフィーダ40が動作を開始した場合に、スライド18の往復移動により昇降する上金型3に対して、トランスファフィーダ40のつかみ爪42や当該つかみ爪42が保持する成形材料Wが干渉しない適切な位置である。
このような同期タイミングt1では、スライド18は220[mm]の高さにあり、エキセン軸16は通常速度で回転している。
つまり、スライド18が通常速度で上記同期位置に達するタイミングを同期タイミングt1としている。
【0032】
一方、判断期間p1は、サーボモータ11及びトランスファフィーダ40を一時的に停止させるか否かを判断する期間なので、スライド18の下死点通過時以降であって上記同期タイミングt1より前の範囲内とすることが望ましい。
本実施形態では、
図5に示すように、判断期間p1の開始をスライド18の下死点通過時とし、判断期間p1の終了を同期タイミングt1より幾分前としている。
図5はサーボモータ11が停止した場合の線図であるが、符号ta1はサーボモータ11が停止しなかった場合の同期タイミングを示している。
判断期間p1の終了を同期タイミングt1より幾分前としているのは、サーボモータ11を停止状態から回転状態に復帰させたときに、前述した同期タイミングt1となる位置で通常速度まで加速できるようにするためである。
【0033】
上記範囲に設定された判断期間p1内に成形材料Wの供給可能状態が検知されない場合には、制御装置90は、
図5に示すように、サーボモータ11及びトランスファフィーダ40を制御する。
即ち、太線L1及び一点鎖線L2に示すように、判断期間p1の終了時に、サーボモータ11を減速して速やかに停止し、スライド18を同期タイミングt1の同期位置より手前の位置(およそ180[mm])で停止させる。
そして、予め規定された設定時間、成形材料Wの供給可能状態の検知を継続し、設定時間の間に成形材料Wの供給可能状態の検知が行われると(符号t2は検知時を示す)、サーボモータ11の回転駆動を行い、スライド18の往復動作を再開する。
そして、前述した同期タイミングt1となる位置にスライド18が通常速度で到達すると、トランスファフィーダ40が前述した
図4の場合と同じ動作を順番に実行する。
【0034】
[プレス成形システムの動作説明]
上記制御装置90によるプレス成形システム100の動作制御を
図6のフローチャートに基づいて説明する。
まず、制御装置90は、サーボモータ11の駆動中において(ステップS1)、サーボモータ11に併設されたエンコーダによりモータ出力軸の軸角度から、前述した判断期間p1の開始時期の到達を判定する(ステップS3)。
【0035】
そして、判断期間p1の開始時期に到達していない場合には当該判定を繰り返し実行する(ステップS3:NO)。
また、判断期間p1の開始時期に到達した場合には(ステップS3:YES)、検知装置7により搬入装置6からの成形材料Wの供給可能状態が検知されたか否かを判定する(ステップS5)。
【0036】
そして、成形材料Wの供給可能状態が検知された場合には(ステップS5:YES)、搬入装置6に対して成形材料Wの搬入指令を入力し、サーボモータ11のエンコーダから同期タイミングt1の到達を判定する(ステップS7)。
そして、同期タイミングt1に到達していない場合には当該判定を繰り返し実行する(ステップS7:NO)。
【0037】
また、同期タイミングt1に到達した場合には(ステップS7:YES)、
図4に示すように、トランスファフィーダ40を作動させて、クランプ→リフト→アドバンス→ダウン→アンクランプ→リターンの動作を順番に実行させる(ステップS9)。
これにより、最も上流側の下金型4に新たな成形材料Wが供給され、その他の下金型4に対して上流側から成形材料Wが搬送される。
そして、制御装置90は、処理をステップS3に処理を戻して、再び、判断期間p1の開始時期の到達を判定する。
【0038】
一方、ステップS5において、検知装置7により搬入装置6からの成形材料Wの供給可能状態が検知されない場合には(ステップS5:NO)、判断期間p1の終了時期の到達を判定する(ステップS11)。
そして、判断期間p1の終了時期に到達していない場合には(ステップS11:NO)、ステップS5に処理を戻して、成形材料Wの供給可能状態が検知されたか否かを判定する。
【0039】
また、成形材料Wの供給可能状態が検知されずに、判断期間p1の終了時期に到達した場合には(ステップS11:YES)、制御装置90は、
図5に示すように、サーボモータ11の駆動を停止させる(ステップS13)。
そして、再び、成形材料Wの供給可能状態が検知されたか否かを判定する(ステップS15)。
【0040】
そして、検知装置7により搬入装置6からの成形材料Wの供給可能状態が検知されない場合には(ステップS15:NO)、サーボモータ11の停止から設定時間が経過したか否かを判定する(ステップS19)。
設定時間が経過していない場合には(ステップS19:NO)、再び、成形材料Wの供給可能状態が検知されたか否かを判定する(ステップS15)。
【0041】
これにより、設定時間が経過する前に、搬入装置6からの成形材料Wの供給可能状態が検知された場合には(ステップS15:YES)、サーボモータ11の駆動を再開し(ステップS17)、ステップS7に処理を進める。
即ち、同期タイミングt1の到達を待ってから(ステップS7)、トランスファフィーダ40を作動させる(ステップS9)。
【0042】
一方、搬入装置6からの成形材料Wの供給可能状態が検知されないまま設定時間が経過してしまった場合には(ステップS19:YES)、サーボモータ11の駆動を再開し(ステップS17)、同期タイミングt1の到達を待ってから(ステップS7)、トランスファフィーダ40を作動させる(ステップS9)。
つまり、異常が発生せずに生産を終了したと考えて、新規の成形材料Wの供給を待たずに、そのまま、鍛造プレス作業を実行する。
【0043】
なお、ステップS19において、上記のように、新規の成形材料Wの供給を待たずに鍛造プレス作業を進める動作制御を例示したが、鍛造プレス作業を中止しても良い。
搬入装置6からの成形材料Wの供給可能状態が検知されることなく、判断期間p1+設定時間が経過したということは、搬入装置6又はその上流側の加熱炉1や搬入コンベア2においてトラブルが発生している可能性がある。従って、ステップS19において設定時間が経過した場合には、エラー報知を行って、作業を中止する制御を行っても良い。
【0044】
[第一の実施形態の技術的効果]
上記プレス成形システム100は、その制御装置90が、判断期間p1以内に検知装置7により成形材料Wの供給可能状態が検知されない場合に、スライド18を下死点から上死点に到達する前に停止させる制御を行っている。
これにより、スライド18の移動が上死点より前の位置から動作を再開するので、トランスファフィーダ40の遅れを抑制してスライド18に容易に同期させることができる。
このため、鍛造プレス装置10において空打ちを回避することが容易となり、生産性を向上し、鍛造プレス装置10より上流側の成形材料Wの供給を滞りなく行うことが可能となる。
【0045】
また、制御装置90は、スライド18を停止させてから検知装置7により成形材料Wの供給可能状態を検知すると、スライド18の動作を再開する制御を行っている。
このため、スライド18の動作の再開を適正なタイミングを行うことができ、空打ちの発生を抑制し、適正な鍛造プレスを実現することが可能となる。
【0046】
さらに、プレス成形システム100では、判断期間p1を、スライド18が下死点を通過してから同期タイミングt1より前となる範囲としている。
このため、制御装置90は、判断期間p1以内に検知装置7により成形材料Wの供給可能状態が検知されない場合に、同期タイミングt1より前にスライド18を停止させることができる。
これにより、スライド18の停止時間の冗長化を抑制し、より生産性を向上させることが可能となる。
また、スライド18の動作を再開してから同期タイミングに到達するので、スライド18を通常速度まで加速する期間を確保することが容易となり、この面からもトランスファフィーダ40の同期をより適切に行うことが可能となる。
また、後述する他の動作制御(1)の場合のように、スライド18の反転移動を不要とするので、サーボモータ11のエネルギー損失を低減することが可能となる。
【0047】
また、プレス成形システム100の鍛造プレス装置10では、スライド18の移動動作の駆動源としてサーボモータ11を使用しているので、その速度制御や一時停止、駆動の再開等の動作をより適切に行うことができ、トランスファフィーダ40の同期や適切な速度による生産性の向上をより効果的に実現することが可能となる。
【0048】
[プレス成形システムの他の動作制御(1)]
上記プレス成形システム100では、判断期間p1がスライド18の下死点通過時以降であって同期タイミングt1より前までの範囲内とする場合を例示したが、判断期間p1をスライド18の下死点通過時以降であって上死点到達時より前の範囲内にしても良い。
ここでは、判断期間p1をスライド18の下死点通過時から同期タイミングt1までとした場合を
図7に例示するが、判断期間p1の終了は上死点到達時により近くしても良い。
【0049】
図7に示すように、上記判断期間p1内に検知装置7により搬入装置6からの成形材料Wの供給可能状態が検知されない場合、一点鎖線L2に示すように、判断期間p1の終了と共にサーボモータ11が速度0に向かって減速を開始する。
そして、サーボモータ11は、そのまま停止から逆回転を行い、太線L1に示すように、スライド18を同期タイミングt1の同期位置より下死点寄りの位置(およそ180[mm])まで下降させて停止する。
そして、予め規定された設定時間、成形材料Wの供給可能状態の検知を継続し、設定時間の間に成形材料Wの供給可能状態の検知が行われると(符号t2は検知時を示す)、サーボモータ11の回転駆動を行い、スライド18の往復動作を再開する。
そして、前述した同期タイミングt1となる位置にスライド18が通常速度で到達すると、トランスファフィーダ40が前述した
図4の場合と同じ動作を順番に実行する。
【0050】
このように、制御装置90は、判断期間p1をスライド18の下死点通過時以降であって上死点到達時より前の範囲内とした場合に、サーボモータ11を逆転させてスライド18の位置を同期タイミングt1におけるスライド18の位置より下死点寄りの位置まで反転移動させる制御を行う。
このため、スライド18に対してトランスファフィーダ40を遅れることなく容易に同期させることができる。
従って、この場合も、システムの生産性を向上し、鍛造プレス装置10より上流側の成形材料Wの供給を滞りなく行うことが可能となる。
【0051】
[プレス成形システムの他の動作制御(2)]
上記他の動作制御(1)では、判断期間p1をスライド18の下死点通過時以降であって上死点到達時より前の範囲内に設定し、サーボモータ11の逆転によりスライド18を同期位置よりも下死点寄りに反転移動させる場合を例示した。
しかし、上記判断期間p1において、スライド18の反転移動は行わなくとも良い。
【0052】
図8に示すように、上記判断期間p1内に検知装置7により搬入装置6からの成形材料Wの供給可能状態が検知されない場合、一点鎖線L2に示すように、判断期間p1の終了と共にサーボモータ11が減速して停止する。つまり、スライド18は同期タイミングt1の同期位置より上死点寄りの位置(およそ260[mm])で停止する。
そして、予め規定された設定時間、成形材料Wの供給可能状態の検知を継続し、設定時間の間に成形材料Wの供給可能状態の検知が行われると(符号t2は検知時を示す)、サーボモータ11の回転駆動を行い、スライド18の往復動作を再開する。
この場合、同期タイミングt1となる位置をスライド18は既に通過しているので、スライド18の移動の再開と同時にトランスファフィーダ40が駆動し、前述した
図4の場合と同じ動作を順番に実行する。
【0053】
このように、制御装置90は、判断期間p1をスライド18の下死点通過時以降であって上死点到達時より前の範囲内とした場合に、サーボモータ11を逆転させることなく、スライド18の往復動作の再開とトランスファフィーダ40を駆動させる制御を行う。
この場合でも、スライド18が上死点に到達してからトランスファフィーダ40の動作を開始する場合に比べて、トランスファフィーダ40の遅れを低減することができるので、システムの生産性を向上し、鍛造プレス装置10より上流側の成形材料Wの供給を滞りなく行うことが可能となる。
【0054】
[第二の実施形態]
本発明の第二の実施形態のプレス成形システムは、前述した鍛造プレス装置10に替えて鍛造プレス装置10Aを備える構成となっている。そして、このプレス成形システムは鍛造プレス装置10A以外の構成については前述したプレス成形システム100と同一なので、主に鍛造プレス装置10Aについて説明する。
【0055】
図9は鍛造プレス装置10Aを示す構成図である。
この鍛造プレス装置10Aは、前述した鍛造プレス装置10の駆動機構20のサーボモータ11に替えてインバーターモータのような速度制御が可能なモータ11Aに変更した点が主に異なっている。以下の説明では、鍛造プレス装置10Aについて前述した鍛造プレス装置10と異なる点について主に説明し、鍛造プレス装置10を同一の構成については同符号を付して、重複する説明は省略する。
【0056】
鍛造プレス装置10Aでは、モータ11A、フライホイール12A、クラッチとしてのクラッチブレーキ13A、伝動軸14、減速機15、エキセン軸16、コンロッド17により駆動機構20Aを構成している。
【0057】
モータ11Aの動力は、例えば、ベルト111Aを介してフライホイール12Aに伝達され、フライホイール12Aを回転させる。
【0058】
クラッチブレーキ13Aは、フライホイール12Aと伝動軸14とを断続でき、これらを接続すると、フライホイール12Aの回転運動が伝動軸14に伝達される。さらに、クラッチブレーキ13Aは、伝動軸14と固定部分とを断続できる。固定部分とは、例えばアップライト22などのフレーム部、或いはフレーム部に固定された部材である。
【0059】
上記鍛造プレス装置10Aの場合には、上記駆動機構20A、ボルスタ24,28、ハードプレート26,27、上金型3及び下金型4が、成形材料にプレス成形を行うプレス加工部を構成する。
【0060】
鍛造プレス装置10を上記鍛造プレス装置10Aに交換したプレス成形システムの場合も、
図4,
図5又は
図8に示すプレス加工の動作制御を行うことが可能である。
例えば、スライド18の下降時の減速は、クラッチブレーキ13Aによるブレーキ又はモータ11Aの減速制御により実現することができる。
また、スライド18を一時停止する制御は、クラッチブレーキ13Aによる動力の切断により実現することができる。
【0061】
従って、鍛造プレス装置10Aを用いたプレス成形システム100の場合も、生産性を向上し、鍛造プレス装置10Aより上流側の成形材料Wの供給を滞りなく行うことが可能となる。
【0062】
[その他]
以上、本発明の各実施形態について説明した。しかし、本発明は上記各実施形態に限られない。各実施形態で示した細部は、発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。