特許第6871152号(P6871152)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6871152
(24)【登録日】2021年4月19日
(45)【発行日】2021年5月12日
(54)【発明の名称】動弁装置
(51)【国際特許分類】
   F01L 1/18 20060101AFI20210426BHJP
【FI】
   F01L1/18 H
   F01L1/18 A
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-248258(P2017-248258)
(22)【出願日】2017年12月25日
(65)【公開番号】特開2019-113026(P2019-113026A)
(43)【公開日】2019年7月11日
【審査請求日】2019年12月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】100087653
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴江 正二
(72)【発明者】
【氏名】小山 秀行
(72)【発明者】
【氏名】田中 良憲
(72)【発明者】
【氏名】山口 隆志
(72)【発明者】
【氏名】坂口 久美子
(72)【発明者】
【氏名】尾曽 洋樹
【審査官】 稲村 正義
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−263007(JP,A)
【文献】 実開昭55−127819(JP,U)
【文献】 実開平02−056803(JP,U)
【文献】 国際公開第2009/093682(WO,A1)
【文献】 特開2016−188615(JP,A)
【文献】 特開2005−264736(JP,A)
【文献】 特開2001−152817(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01L 1/00−1/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃焼室に臨むバルブと、前記バルブを駆動するロッカーアームと、前記バルブの受動側端部に被せられるキャップとを備え、
前記キャップは前記受動側端部に相対回動可能に被せられるとともに、前記ロッカーアームの円柱状の弁駆動側端部は、前記キャップの凹状の受圧面における偏心箇所を押す状態に構成され、
前記弁駆動側端部の押圧面の角アールを含まない径である有効径と、前記受圧面の隅アールを含まない径である有効径とは、偏り方向でそれぞれの外縁が一致し、かつ、前記押圧面の有効径は、前記受圧面の有効径の半分以下となる状態に構成されている動弁装置。

【請求項2】
前記偏心箇所は、前記受圧面における前記ロッカーアームの揺動軸心に沿う方向に偏った箇所に設定されている請求項1に記載の動弁装置。
【請求項3】
前記受圧面は、下方に凹んだ凹状面に形成されている請求項1又は2に記載の動弁装置。
【請求項4】
前記受圧面の縁に形成される隅Rの曲率は、前記弁駆動側端部の縁に形成される角Rの曲率よりもわずかに小さいものに設定されている請求項3に記載の動弁装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガソリンエンジンやディーゼルエンジンに組み込まれている動弁装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
OHC(オーバーヘッドカムシャフト)やOHV(オーバーヘッドバルブ)形式のエンジンに用いられる動弁装置は、燃焼室に臨む吸気弁や排気弁などのバルブを、カムやプッシュロッドで揺動駆動されるロッカーアームで駆動する構成が採られている。
【0003】
そして、動弁装置においては、通常、バルブの軸部分であるステムの端、即ち受動側端部にキャップ(バルブキャップ)が被せられており、このキャップの上面がロッカーアームの先端である弁駆動側端部で駆動される、という構成が採られている。このような従来例としては、特許文献1において開示されるエンジンの動弁装置、が知られている。
【0004】
動弁装置における各摺動部へのオイル供給は、オイル飛散(油飛沫)により行われている。特許文献1のものでは、その図1に示されるように、カム(30)の上方に配置されているオイルパイプ(32)の孔(32a,32b)からオイル飛散させ、カム(30)とロッカーアーム(20)との摺動部やロッカーアーム(20)とキャップ(7)との摺動部などにオイル供給させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2015−81518号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の動弁装置におけるオイル飛散によるオイル供給手段は、言わば、飛び散っているオイルが偶然に摺動部に降り掛かる現象を用いたものである。従って、各摺動部に十分にオイルが供給されるように設計並びに実験が行われ、潤滑性能が十分なものとなるように検証されてから商品化されるようになっている。
【0007】
オイル飛散によるオイル供給では、気温や天候、或いはエンジンが搭載された産業車両の凹凸路走行や傾斜などにより、実使用時でのオイル飛散状況が変化し易い面がある。つまり、各摺動部へオイルが安定供給されないことも考えられるため、場合によっては摺動部への潤滑油供給が不足がちになるおそれがあった。特に、高負荷エンジンではその傾向が増し、フリクションロスの増加や磨耗し易いといった不利や、所期した耐久性が発揮され難いといった問題の出るおそれがあった。
【0008】
本発明の目的は、当接及び離間が繰り返されることで上記問題が引き起こされ易い箇所、即ち、ロッカーアームとキャップとの摺動部に着目し、このロッカーアームとキャップとの摺動部の磨耗が軽減されて、所期された耐久性が発揮できるように改善された動弁装置を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、動弁装置において、
燃焼室に臨むバルブ19と、前記バルブ19を駆動するロッカーアーム17と、前記バルブ19の受動側端部19Dに被せられるキャップ23とを備え、
前記キャップ23は前記受動側端部19Dに相対回動可能に被せられるとともに、前記ロッカーアーム17の円柱状の弁駆動側端部17Aは、前記キャップ23の凹状の受圧面23Aにおける偏心箇所hを押す状態に構成され、
前記弁駆動側端部17Aの押圧面17sの角アール17rを含まない径である有効径17dと、前記受圧面23Aの隅アール23rを含まない径である有効径23dとは、偏り方向でそれぞれの外縁が一致し、かつ、前記押圧面17sの有効径17dは、前記受圧面23Aの有効径23dの半分以下となる状態に構成されていることを特徴とする。
【0010】
第2の本発明は、本発明による動弁装置において、
前記偏心箇所hは、前記受圧面23Aにおける前記ロッカーアーム17の揺動軸心Xに沿う方向に偏った箇所に設定されていることを特徴とする。
【0011】
第3の本発明は、本発明又は第2の本発明による動弁装置において、
前記受圧面23Aは、下方に凹んだ凹状面に形成されていることを特徴とする。
【0012】
第4の本発明は、第3の本発明による動弁装置において、
前記受圧面23Aの縁に形成される隅アール23rの曲率は、前記弁駆動側端部17Aの縁に形成される角アール17rの曲率よりもわずかに小さいものに設定されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ロッカーアームの弁駆動側端部は、キャップの受圧面における偏心箇所を押すので、詳しくは、実施形態の項にて説明するが、ロッカーアームがキャップを駆動するに従い、バルブに対してキャップが回動するようになる。つまりエンジン作動時には、キャップが回動するので、キャップにおける弁駆動側端部と当接する箇所が周状のものとなる。
故に、キャップは常に同じ箇所を駆動される従来品に比べて、キャップの摺動面が実質的に拡大されるので、キャップの受圧面の磨耗量が低減されるようになる。
【0014】
その結果、ロッカーアームとキャップとの摺動部の磨耗が軽減されて、所期された耐久性が発揮できるように改善された動弁装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】ディーゼルエンジンの断面正面図
図2】エンジン作動時における動弁機構の要部拡大図
図3】エンジン停止時における動弁機構の要部拡大図
図4】ロッカーアームとバルブとの連動構造を示し、(a)は要部の一部切欠きの側面図、(b)は要部の平面図
図5】ロッカーアームとバルブとの別連動構造を示す動弁装置の断面図
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明による動弁装置の実施の形態を、産業用ディーゼルエンジンに適用される場合について、図面を参照しながら説明する。
【0017】
図1に示されるように、シリンダブロック1、シリンダヘッド2、ヘッドカバー3、オイルパン4、冷却ファン(図示省略)、ピストン5、コネクティングロッド6、クランク軸7、吸気マニホルド12、オイルレベルゲージ9、ポンプ駆動部10、排気マニホルド8などを有して頭上弁型(OHV型)のディーゼルエンジンAが構成されている。シリンダブロック1は、シリンダ部1Aとクランクケース部1Bとを有している。
【0018】
図1に示されるように、ディーゼルエンジンAの動弁装置Dは、シリンダ部1A、シリンダヘッド2、ヘッドカバー3に跨って構成されているが、主要部はヘッドカバー3の内部に配置されている。動弁装置Dは、ギヤ機構(図示省略)を介してクランク軸7により駆動されるカム軸13、カム軸13に一体回転状態で装備されるカム14、カム14で駆動(押し駆動)されるプッシュロッド15、ヘッドカバー3内に配備されるアーム軸16に揺動可能に枢支されるロッカーアーム17、燃焼室18に臨む弁体19Aを有する排気弁(バルブの一例)19などを備えて構成されている。
【0019】
図示は省略するが、排気弁19と同様の構造で駆動される吸気弁(バルブの一例)も備えている。図1において、20は燃料噴射ポンプ、21は燃料噴射器、22は副室、11は、排気弁19で開口可能であって排気マニホルド8に連通される状態でシリンダヘッド2に形成されている排気ポートである。
【0020】
図1図3に示されるように、上下向きに配されるプッシュロッド15は、その下端部に、カム14に摺接するタペット15Aが相対移動可能に支持されており、そして上端部には、臼状の凹入面15C(図2,3を参照)を備える押付端15Bが形成されている。凹入面15Cは、図2,3に示されるように、おおよそ半球面に形成されている湾曲内底面15aと、湾曲内底面15aから先拡がり状に続く円錐面状の内側周面15bとからなる。従って、押付端15Bの縦断面形状は略Y字形状に設定されている。
【0021】
図1図3に示されるように、筒軸状のアーム軸16に枢支されるロッカーアーム17は、そのプッシュロッド側となる根元側の端部に、ロックナット27を伴って軸ピン24が螺着されている。そして、バルブ側となる先端側は、平ら又は小なる曲率の凸曲面でなる押圧面17sを下端に有する弁駆動側端部17Aに形成されている。
【0022】
ロッカーアーム17におけるプッシュロッド15に押される箇所である被押付端24Aは、プッシュロッド15の長手方向へ螺進可能にロッカーアーム17に螺着される軸ピン24により形成されている。ロッカーアーム17には、これを枢支するアーム軸16に外嵌する嵌合内周面17aに開口し、かつ、軸ピン24を螺着するための雌ねじ部17bに開口する第1油路w1が形成されている。
【0023】
また、図2,3に示されるように、ロッカーアーム17には、嵌合内周面17aに開口し、かつ、アーム軸16の上側に延びて開口する孔である第3油路w3が形成されている。つまり、エンジン作動に伴い、第3油路w3から噴出されてヘッドカバー3内を飛散するオイル(エンジンオイルのことであり、以下、単に「オイル」とする)により、各摺動部に潤滑油が適宜に供給されるように構成されている。
【0024】
軸ピン24は、その下端に球面状の被押付端24Aが、そして上下中間部の大部分には雄ねじ部24Bが形成されている。軸ピン24には、雄ねじ部24Bの上下中間部に若干小さい径の部分として形成される小径部28と、被押付端24Aの下端に開口して上方に延びる縦穴29と、縦穴29の上端部に連通する状態で小径部28に開口する横孔30と、でなる第2油路w2が形成されている。
【0025】
排気弁19は、弁体19A、弁体19Aに一体化される弁軸19B、弁軸19Bの上端部に支持されるばね座19C、弁軸19Bの上端の受動側端部19Dと、を有して構成されている。排気弁19は、燃焼室18に連通する空気の排気ポート11(図3参照)を弁体19Aにより開閉する弁であって、バルブスプリング31により、排気ポート11が弁体19Aで閉じられる状態に閉じ付勢されている。
【0026】
図2,3に示されるように、プッシュロッド15の上端の押付端15Bに、軸ピン24の下端の被押付端24Aが内嵌収容されている。つまり、被押付端24Aと、被押付端24Aを収容する押付端15Bとにより、プッシュロッド15とロッカーアーム17との接触部(符記省略)が構成されている。
【0027】
ロッカーアーム17の先端の弁駆動側端部17Aは、キャップ23を介して受動側端部19Dに当接して、バルブスプリング31の付勢力に抗して排気弁19を押し下げ駆動することが可能に構成されている。軸ピン24の螺着構造及びロックナット27により、軸ピン24のロッカーアーム17に対する高さ位置の調節設定が可能である。
【0028】
〔実施形態1〕
次に、動弁装置Dの主要部について説明する。図2図4に示されるように、キャップ23は受動側端部19Dに相対回動可能に被せられるとともに、ロッカーアーム17の弁駆動側端部17Aは、キャップ23の受圧面23Aにおける偏心箇所hを押す状態に構成されている。偏心箇所hは、受圧面23Aにおけるロッカーアーム17の揺動軸心Xに沿う方向に偏った箇所に設定されている。
【0029】
受圧面23Aは、下方に凹んだ凹状面に形成されている。受圧面23Aの縁に形成される隅アール23rの曲率は、弁駆動側端部17Aの縁に形成される角アール17rの曲率よりもわずかに小さいものに設定されている。弁駆動側端部17Aの押圧面17sの有効径17dは、受圧面23Aの有効径23dの半分以下(17d≦23d/2)となる状態に構成されている。
【0030】
キャップ23は、下向き開放状の円穴23aと、皿状で上向きの受圧面23Aとを有する円柱状の部品であり、排気弁19のバルブ軸心Zの回りで相対回動可能に円柱状の受動側端部19Dに外嵌装着されている。受圧面23Aは、平らな面又小なる曲率で凹む凹曲面(以後、便宜上「平ら凹面」と略称する)で円形の中央面25と、その径外側に向けて立上る隅アール23rが施された円環状の外周縁26を有して形成されている。
【0031】
ロッカーアーム17の弁駆動側端部17Aは、下向きに突出した短い円柱状の部分であり、平ら又は小なる曲率の凸曲面(以後、便宜上「平ら凸面」と略称する)でなる押圧面17sが形成されている。押圧面17sの径外側に角アール17rが全周に亘って形成されている。なお、角アール17rは、受圧面23Aに対する偏心箇所、即ち、隅アール23rに対峙する部分にのみ形成される構成でも良い。
【0032】
図4(a),(b)に示されるように、例として弁駆動側端部17Aの下端部はバルブ軸心Zの方向視で円形をなし、キャップ23に対して揺動軸心Xの方向に目一杯偏る状態にロッカーアーム17とキャップ23即ち排気弁19とが相対配置されている。弁駆動側端部17Aの外周縁である角アール17rが、受圧面23Aの最外側に当る隅アール23rに当接せんばかりに寄せられている。押圧面17sの中心と中央面25の中心(=バルブ軸心Z)とはズレ量αで偏心されている。なお、図4(a)では、簡単のため、ばね座19Cを弁軸19Bに係止するための部品(コレット)は省いてある。
【0033】
つまり、図4(b)に示されるように、弁駆動側端部17Aの摺接面(平ら凸面)17sの有効径(角アール17rを含まない径)17dと、受圧面23Aの中央面(平ら凹面)25の有効径(隅アール23rを含まない径)23dとは、偏り方向(バルブ軸心Z方向)で外縁が一致し、かつ、押圧面17sの有効径17dは、中央面25の有効径23dの1/2以下となるように構成されている。図4(b)においては、ズレ量α=23d/2−17d/2に設定されている。
【0034】
弁駆動側端部17Aがキャップ23に当接して排気弁19を押し下げ駆動するのは、詳しくは、押圧面17sが中央面25の一部を押すことでなされる構造である。このロッカーアーム17の揺動による押圧面17sと中央面25との偏心箇所hでの当接及び離間の繰返しにより、図4(b)に示されるように、キャップ23はバルブ軸心Z回りの矢印p又は矢印q方向にゆっくりと回動するようになる。
【0035】
このような構成であるから、エンジンの回転による動弁装置Dの作動により、ロッカーアーム17の揺動によって、キャップ23が回動しながら押し駆動されるので、キャップは常に同じ箇所を押し駆動される従来品に比べて、キャップ23の摺動面が大きく拡大される。従って、キャップの摺動部である中央面25の磨耗量が明確に低減され、耐久性向上が図れるようになる。
【0036】
また、キャップ23は、その上面である受圧面23Aが下方に凹んだ凹状面である皿状に形成されているので、図2に示されるように、ロッカーアーム17のアーム軸16の上側において上向きに開口する第3油路w3などから噴出されて飛散するオイルを受止めて溜めることが可能となる。
【0037】
従って、受圧面23Aには常にある程度のオイルeが存在しており、押圧面17sと中央面25との間の潤滑が良好に行われるようになる。加えて、角アール17rの曲率よりも隅アール23rの曲率が僅かに小さいので、これら両者17r,23rの間には下窄まりの湾曲した隙間が形成され、その隙間にもオイルが供給されて良好な潤滑が可能になる。
【0038】
従って、ロッカーアーム17とキャップ23との摺動部には、皿状の受圧面23Aによって常にオイル潤滑されており、この点からもフリクションロスの低減、並びに磨耗低減が図れ、耐久性向上という効果を奏することができるようになる。弁駆動側端部17Aの押圧面17sの有効径17dを、受圧面23Aの有効径23dの丁度半分とすれば、受圧面23Aには、キャップ23の回動による押圧面17sとの常時重なり部分がゼロとなり、有効径23dを全て使用しながら耐久性に優れる利点がある。また、有効径17dを有効径23dの半分以下にしても、キャップ23の耐久性向上が得られる。
【0039】
〔作用効果のまとめ〕
実施形態1による動弁装置Dでは、次の(1)〜(3)の作用効果が得られる。
(1)主にキャップ23と弁駆動側端部17Aとの改造によるものであるから、高負荷でも潤滑性が向上し、耐摩耗性が増してエンジンとしての耐久性向上が図れるものを安価にて提供することができる。
【0040】
(2)キャップ23とロッカーアーム17との摺動部におけるフリクションロスが減るので、エンジンの燃費改善が可能となる。
(3)キャップ23とロッカーアーム17との摺動部での摩擦熱が低減されるので、その分オイルの温度低下に寄与でき、オイル劣化の抑制が可能になる。
【0041】
〔実施形態2〕
本発明は、一対のバルブを同時に押すバルブブリッジを備えたエンジンの動弁装置に適用することが可能である。なお、実施形態1の動弁装置Dと同じ機能部品は、互いに同じ符号を付け、その説明がなされたものとする。
【0042】
実施形態2による動弁装置Dの概要を述べると、図5に示されるように、一対の吸気弁(バルブ)19,19の間において、円柱状の支軸32がシリンダヘッド2に立設されており、支軸32の上端部に、バルブブリッジ33が上下スライド移動可能に支持されている。吸気弁19の軸心Zと、支軸32の軸心Yとは互いに平行である。
【0043】
バルブブリッジ33の両端のバルブ出力部34,34が一対の受動側端部19D,19Dを駆動(押し駆動)する状態に構成され、バルブブリッジ33の支軸32を内嵌する装着孔35の上部開口を覆う状態でキャップ23が内嵌装備されている。そして、ロッカーアーム17の弁駆動側端部17Aの押圧面17sが、キャップ23の凹状面である受圧面23Aを駆動する状態に構成されている。
【0044】
従って、この動弁装置Dでは、ロッカーアーム17の揺動により、弁駆動側端部17Aがキャップ23を押し下げ駆動し、押下げ駆動されるバルブブリッジ33が一対の吸気弁19,19を同時に押し下げ駆動するように構成されている。
この実施形態2による動弁装置Dでも、実施形態1の動弁装置Dによる場合と同様の作用効果を得ることができる。
【0045】
〔別実施形態〕
偏心箇所hは、弁駆動側端部17Aがキャップ23に対して、揺動軸心X方向で、かつ、図4(b)に示される方向とは反対側に寄せられた構成でもよい。また、偏心箇所hは、揺動軸心Xに対して遠近される方向や、これらの方向に対する斜め方向に寄せられる構成でもよい。
【0046】
キャップ23の受圧面23Aは、すり鉢状や凹球面状に凹んだ単一の曲面からなる凹状面に形成されてもよい。この場合、弁駆動側端部17Aの押圧面17sを、単一の曲面でなる受圧面23Aの曲率と同じか僅かに大きい曲率を有する単一の凸曲面とされていれば、ロッカーアーム17の揺動に拘らずに、受圧面23Aと弁駆動側端部17Aとが面での当接状態になって好都合である。
【0047】
弁駆動側端部17Aの有効径17dが、受圧面23Aの有効径23dの半分より大きく、かつ、有効径23d以下となる範囲に設定される構成でもよい。この場合、受圧面23Aには、キャップ23の回動による押圧面17sとの常時重なり部分が存在するが、有効径23dを全使用しながら耐久性を高めることは可能となる利点がある。
【0048】
弁駆動側端部17Aを半球状として、球面状の押圧面17sとしてもよい。押圧面17sを球面とすれば、受圧面23aと当接した状態でもこれら両者17s,23A間の広い隙間にオイルが満たされ、摺動部としての摩擦抵抗をより低減させることが可能になる。
【符号の説明】
【0049】
17 ロッカーアーム
17A 弁駆動側端部
17d 有効径
17r 角アール
17s 押圧面
19 バルブ
19D 受動側端部
23 キャップ
23A 受圧面
23d 有効径
23r 隅アール
X 揺動軸心
h 偏心箇所
図1
図2
図3
図4
図5