(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の固体撮像装置について、図面を参照して説明する。初めに、厚い光電変換領域を有する固体撮像装置において、混色、感度低下、読み出し不良等が生じる原因について説明する。
【0011】
図9は、赤外感度を向上するために光電変換領域を厚くした固体撮像装置100の断面を模式的に示す図である。シリコン基板150上にオーバーフローバリア層160が形成され、その更に上に高抵抗エピタキシャル層170が形成されている。高抵抗エピタキシャル層170には、フォトセンサ110、垂直転送レジスタ120、チャネルストップ領域140等が設けられている。オーバーフローバリア層160は、シリコン基板150に対し、エピタキシャル層170形成前にイオン注入を行って形成したものであり、全体的なバリア領域160Bと、垂直転送レジスタ120の下方の高濃度バリア領域160Aとを含む。
【0012】
固体撮像装置100において、エピタキシャル層170は例えば10μmの厚さがあり、このことによって近赤外線領域の感度向上を図っている。
【0013】
このような固体撮像装置において、垂直転送レジスタ120とオーバーフローバリア層160との間において、素子分離のためのポテンシャルバリアが形成されていない領域が存在する。この領域の近傍で光電変換により電荷が生じると、電荷が隣接する画素に漏れて、画素間の混色が発生してしまう。
【0014】
これについて、
図10を参照して更に説明する。
図10は、固体撮像装置の断面をより模式的に示すものであり、概ね画素2つ(画素201及び画素202)に対応する範囲が示されている。また、半導体基板上に形成されたフォトダイオード等の光電変換領域210と、光電変換領域210同士の間に設けられて不純物の導入等によりポテンシャル勾配を形成した素子分離領域211とが示されている。素子分離領域211は、浅い側から深い側に211a、211b及び211cの3つの区域を有する。
【0015】
次に、
図11及び
図12は、
図10のXI-XI線及びXII-XII線の断面におけるポテンシャルを示す。横軸は
図10の画素201及び画素202に対応する位置を示し、縦軸は各一におけるポテンシャルを示している。
図10のXI-XI線の深さは、
図9におけるオーバーフローバリア層160に対応し、
図11に示す通り画素間の素子分離領域211にポテンシャルバリアが形成されて、画素間が分離されている。
【0016】
従って、この深さであれば、電荷を画素内に保持する作用が働く。これに対し、
図10のXII-XII線の深さは、
図10におけるオーバーフローバリア160よりも上方のエピタキシャル層170に対応する。この深さでは、
図12に示す通りポテンシャルバリアが十分に形成されておらず、結果として画素間が十分に分離されていないので、電荷が画素内に保持されるとは限らない。この結果、画素201における光電変換領域210の深部にて発生した信号電荷220は、
図10の矢印221に示すように画素201の信号として読み出される他に、矢印222に示すように隣接する画素202に流れ込み、画素202の信号として読み出される可能性がある。矢印222のように電荷が読み出された場合、混色が発生する。
【0017】
ここで、
図10に示す通り、素子分離領域211の深い区域211cのポテンシャルバリアは、エピタキシャル層170の形成前に半導体基板11にイオン注入等を行うことによって形成することができる。また、エピタキシャル層170を形成した後のイオン注入等により、素子分離領域211の浅い区域211aのポテンシャルバリアを形成することもできる。しかしながら、光電変換領域210が厚い場合、イオン注入等の一般的な方法では、エピタキシャル層170における深部となる中間の区域211bにおいて十分なポテンシャルバリアを形成することには障害がある。つまり、より深くイオン注入を行うためには注入エネルギーを高める必要があり、これに伴って注入の際のマスク層も厚くする必要がある。しかしながら、画素の微細化が進行し、十分に厚く且つ微細なマスクを形成することは難しくなっている。
【0018】
尚、素子分離領域は、イオン注入の他に、半導体層に酸化膜等を埋め込むことにより形成することもできる。しかしながら、このような素子分離領域についても、深さの増加及び微細化により実現は困難になっている。
【0019】
次に、半導体装置100における赤外感度低下と読み出し不良について説明する。
【0020】
図13、
図14、
図15及び
図16は、
図10における深さに対応するポテンシャルを示す。横軸は表面からの深さ、縦軸はポテンシャルを示しており、実線が光電変換領域210のポテンシャルであって、
図10のA-A線に対応する。尚、破線は光電変換領域210に隣接する素子分離領域211のポテンシャルである。
【0021】
光電変換領域210の深部にて発生した信号電荷を読み出すためには、
図13のように、深部から読出部側(浅い側)に向かって滑らかに電位勾配が形成されていることが望ましい。これに対し、
図14に示すように、基板側(深い側)に向かって低下する電位勾配が形成されてしまうと、電荷の一部を読み出すことができず、感度が低下する。また、
図15のように深部側から浅い側への電位勾配が小さいと、読出部側への電荷転送が困難になり、読み出し特性が悪化する。
【0022】
ここで、
図16に示すように、読出部側に向かって積極的に電位勾配を設けるために、読み出し側の電位を深くすることが考えられる。しかしながら、表面付近において読み出しのために越えるべきバリアが高くなるので、読み出し特性が悪化する。
【0023】
光電変換領域の厚さが大きくなると、望ましい電位勾配を形成することが難しくなり、結果として、読み出し特性の不良が発生しやすくなる。
【0024】
(固体撮像装置)
以上のことに対応する本開示の技術について、以下に説明する。
図1は、本開示の例示的固体撮像装置10の断面を模式的に示す図である。
【0025】
図1に示す通り、固体撮像装置10は、例えばシリコン基板である半導体基板11を用いて形成されている。半導体基板11上には第1導電形(ここではn型)の第1のエピタキシャル層12及び第1導電型の第2のエピタキシャル層13が順次積層されている。第1のエピタキシャル層12及び第2のエピタキシャル層13に跨がって(言い換えると、第1のエピタキシャル層12と第2のエピタキシャル層13との境界を横切り、第1のエピタキシャル層12と第2のエピタキシャル層13とに連続して)、不純物の導入により、光電変換領域14と、素子分離領域15とが形成されている。光電変換領域14は、第1のエピタキシャル層12に形成された光電変換領域第1層14aと、第2のエピタキシャル層13に形成された光電変換領域第2層14bとを有する。同様に、素子分離領域15は、第1のエピタキシャル層12に形成された素子分離領域第1層15aと、第2のエピタキシャル層13に形成された素子分離領域第2層15bとを有する。
【0026】
また、第2のエピタキシャル層13上には、読み出しゲート17が形成されている。更に、第1のエピタキシャル層12中における光電変換領域14の下方の領域に、余剰電荷を排出するためのオーバーフローバリア16が形成されている。
【0027】
ここで、第1のエピタキシャル層12の膜厚は、例えば3μm以上で且つ10μm以下である。また、第2のエピタキシャル層13の膜厚は、例えば1μm以上で且つ10μm以下である。第1のエピタキシャル層12及び第2のエピタキシャル層13は、その抵抗値がn型層の場合に例えばいずれも0.1Ω・cm以上で且つ100Ω・cm以下である。また、第2のエピタキシャル層13の抵抗値は、第1のエピタキシャル層12の抵抗値と同じであるか、それよりも小さくなるように形成されている。
【0028】
また、素子分離領域15は、その深さ方向の全体に亘って、光電変換領域14の中央部に対して十分に高いポテンシャルバリアを形成している。これに関し、
図2には、光電変換領域14、素子分離領域15等の不純物濃度分布を示している。
【0029】
具体的に、
図2において、n型の第1のエピタキシャル層12上に、n型の第2のエピタキシャル層13が形成されている。第1のエピタキシャル層12には、p型不純物層である素子分離領域第1層15aが形成されている。また、第2のエピタキシャル層13には、p型不純物層である素子分離領域第2層15bが形成されている。光電変換領域14については、素子分離領域15に囲まれた部分の第1のエピタキシャル層12及び第2のエピタキシャル層13をそのまま利用するのであっても良いし、n型の不純物、例えばリン、ヒ素等を導入して形成されていても良い。
【0030】
以上のように、光電変換領域14が厚くなった場合にも、その深さ方向の全体に亘って光電変換領域14の周囲にポテンシャルバリアを有する素子分離領域15を設けることにより、混色を抑制することができる。
【0031】
尚、第2のエピタキシャル層13の深部には、素子分離領域第1層15a及び光電変換領域第1層14aの下方に、p型不純物層であるオーバーフロードレイン16が形成されている。
【0032】
また、第2のエピタキシャル層13の抵抗値の調整と不純物注入により、オーバーフローバリア16から読出部(第2のエピタキシャル層13の上部)に向かって電荷を転送可能なポテンシャル勾配が形成されている。
【0033】
これについて、
図3及び
図4を参照して説明する。
【0034】
図3は、半導体基板11上に第1のエピタキシャル層12が形成され、更にその上に第2のエピタキシャル層13が形成された構造について、深さとn型不純物であるリン(P)の濃度との関係を示している。横軸が深さであって、第2のエピタキシャル層13の上面を原点とする。従って、浅い側から第2のエピタキシャル層13、第1のエピタキシャル層12、半導体基板11となる。ここでは、第2のエピタキシャル層13の濃度が異なる4つの曲線(a、b、c及びd)を示している。
【0035】
また、
図4は、
図3に示した第1のエピタキシャル層12及び第2のエピタキシャル層13に対して不純物注入を行い、光電変換領域14を形成した際の深さとポテンシャルとの関係を示す。不純物注入の条件(濃度、ドーズ量等)は一定であるが、第2のエピタキシャル層13の濃度の4水準に対応して、ポテンシャルのプロファイルが異なっている。ここで、
図3及び
図4のa、b、c及びdの符号が対応する。つまり、
図3において最もP濃度の高いaの場合が、
図4において最もポテンシャルの値の大きいaに対応している。b、c、dについてもそれぞれ同様である。このように、例えば2つのエピタキシャル層の不純物濃度を調整することにより、望ましいポテンシャル勾配を形成して、読み出し特性を改善することができる。
【0036】
これにより、望ましい読み出し特性を実現することができる。
【0037】
(固体撮像装置の製造方法)
次に、固体撮像装置10の製造方法について、
図5〜
図8を参照して説明する。
【0038】
初めに、
図5に示すように、半導体基板11上に、第1のエピタキシャル層12を成長させる。半導体基板11は、例えばシリコン基板であって、n型不純物としてのPの濃度が1×10
13〜1×10
18cm
−3である。また、第1のエピタキシャル層12は、例えば、CVD(Chemical Vapor Deposition)法を用い、n型不純物濃度が1×10
13〜1×10
16cm
−3となるようにシリコンにより形成する。
【0039】
ここで、半導体基板11の濃度ムラの影響を抑制するために、半導体基板11とエピタキシャル層12との間に、半導体基板11と同等のN型不純物濃度を有するエピタキシャル層を例えば膜厚1〜6μm程度に設けても良い(図示はしていない)。
【0040】
次に、
図6の工程を行う。まず、第1のエピタキシャル層12内に、オーバーフローバリア16、素子分離領域第1層15a及び光電変換領域第1層14aを形成する。このためには、例えば、フォトリソグラフィー技術を利用してマスクを作成し、イオン注入法を利用して不純物を導入する。
【0041】
オーバーフローバリア16を形成するには、例えば、p型不純物としてBを用い、注入エネルギー1000〜10000keVで且つドーズ量1×10
10〜1×10
13cm
−2の条件により注入を行う。素子分離領域第1層15aを形成するには、p型不純物としてBを用い、注入エネルギー50〜10000keVで且つドーズ量1×10
10〜1×10
13cm
−2の条件により注入を行う。同様に、光電変換領域第1層14aを形成するには、n型不純物としてPを用い、注入エネルギー100〜10000keVで且つドーズ量1×10
10〜1×10
13cm
−2の条件により注入を行う。但し、n型不純物としてPの代わりにAsを注入しても良いし、光電変換領域第1層14aのための不純物注入は行わず、第1のエピタキシャル層12が含有する不純物を利用して光電変換領域として機能させることも可能である。
【0042】
次に、
図7に示すように、第1のエピタキシャル層12上に第2のエピタキシャル層13を形成する。これは、第1のエピタキシャル層12と同様に形成すれば良い。但し、第2のエピタキシャル層13の不純物濃度は、第1のエピタキシャル層12の不純物濃度よりも高くすることが望ましい。ここでは、例えば1×10
10〜1×10
13cm
−3とする。
【0043】
次に、
図8に示すように、第2のエピタキシャル層13に素子分離領域第2層15b及び光電変換領域第2層14bを形成する。これらは、
図6の項程と同様に、例えばフォトリソグラフィー技術及びイオン注入技術を用いて形成する。
【0044】
素子分離領域第2層15bを形成するには、例えばp型不純物としてBを用い、注入エネルギー50〜10000keVで且つドーズ量1×10
10〜1×10
13cm
−2の条件により注入を行う。同様に、光電変換領域第2層14bを形成するには、n型不純物としてPを用い、注入エネルギー100〜10000keVで且つドーズ量1×10
10〜1×10
13cm
−2の条件により注入を行う。
【0045】
但し、n型不純物としてPの代わりにAsを注入しても良いし、光電変換領域第2層114bのための不純物注入は行わず、第2のエピタキシャル層13が含有する不純物を利用して光電変換領域として機能させることも可能である。
【0046】
この際、素子分離領域第2層15bを素子分離領域第2層15bと接続させて素子分離領域15を構成し、第1のエピタキシャル層12と第2のエピタキシャル層13とに跨がる範囲に素子分離領域15が設けられるようにする。また、光電変換領域第2層14bと光電変換領域第1層14aとにより、光電変換領域14を構成する。
【0047】
この後、第2のエピタキシャル層13上部に読み出し領域(図示せず)を形成し、更に、第2のエピタキシャル層13上に読み出しゲート17を形成する。
【0048】
このように、本実施形態の固体撮像装置の製造方法によると、比較的薄いエピタキシャル層を形成し、当該エピタキシャル層に素子分離領域及び光電変換領域をイオン注入により形成する。エピタキシャル層が薄いので、イオン注入を容易に行うことができる。このような工程を繰り返し、エピタキシャル層を積層して、各エピタキシャル層に形成した部分の素子分離領域及び光電変換領域を深さ方向に連続させる。
【0049】
このような製造方法を用いると、光電変換領域14が深くなっても、その深さ方向の全体に亘って光電変換領域14を囲むポテンシャルバリアを構成する素子分離領域15を容易に形成することができる。また、各エピタキシャル層及び/又は光電変換領域の不純物濃度を設定することにより、望ましいポテンシャル勾配を構成することができる。
【0050】
尚、本実施形態では第1及び第2の2層のエピタキシャル層を形成したが、これには限らず、3層以上のエピタキシャル層を形成しても良い。この場合、各エピタキシャル層に素子分離領域の一部及び光電変換領域の一部を形成し、積層されたエピタキシャル層に連続するように素子分離領域第及び光電変換領域を構成する。このようにすると、光電変換領域が更に深くなった場合、更に微細化した場合等にも、確実に素子分離領域を形成することができる。
【0051】
尚、このように3層以上のエピタキシャル層を設ける場合も、各エピタキシャル層に設けられた部分の光電変換領域(光電変換領域第1層等)の不純物濃度は、より深い側に隣接するエピタキシャル層に設けられた部分の光電変換領域の不純物濃度と同じであるか、又は、より高濃度であるようにするのが望ましい。それぞれの部分の光電変換領域の不純物濃度は、対応するエピタキシャル層自体の不純物濃度と、イオン注入等により導入された不純物濃度(導入を行う場合)とによって決定される。従って、基板の表面に近い側のエピタキシャル層ほど不純物濃度を高くするのは望ましい構成であるが、必須ではない。
【0052】
また、素子分離領域15について、本実施形態では不純物注入によるポテンシャルバリアにより実現している。しかしながら、これには限らず、例えば、エピタキシャル層に対して酸化膜、金属膜等を埋め込むことにより物理的に画素間を分離しても良い。このような素子分離領域についても、本開示のように複数層に分けて積層するように形成することで、微細に且つ深く形成することが容易になる。
【0053】
また、以上では、配線層を形成した面の側から光が入射する表面照射型の撮像装置として説明した。しかしながら、これには限られず、配線層を形成した面とは反対側から光を入射する裏面照射型の撮像装置であっても良い。