(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6871166
(24)【登録日】2021年4月19日
(45)【発行日】2021年5月12日
(54)【発明の名称】凍結針
(51)【国際特許分類】
A61B 18/02 20060101AFI20210426BHJP
【FI】
A61B18/02
【請求項の数】13
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-542894(P2017-542894)
(86)(22)【出願日】2016年2月12日
(65)【公表番号】特表2018-505741(P2018-505741A)
(43)【公表日】2018年3月1日
(86)【国際出願番号】US2016017828
(87)【国際公開番号】WO2016133826
(87)【国際公開日】20160825
【審査請求日】2018年12月17日
(31)【優先権主張番号】14/627,568
(32)【優先日】2015年2月20日
(33)【優先権主張国】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】506192652
【氏名又は名称】ボストン サイエンティフィック サイムド,インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】BOSTON SCIENTIFIC SCIMED,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】ラマドヒャニ,サティシュ
(72)【発明者】
【氏名】ザッシュマン,アンドリュー ケビン
(72)【発明者】
【氏名】ブリューイーズ,モデチャイ
(72)【発明者】
【氏名】ジョンソン,マーク ティモシー
【審査官】
宮部 愛子
(56)【参考文献】
【文献】
特表2011−514188(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2012/0065630(US,A1)
【文献】
国際公開第2005/000106(WO,A2)
【文献】
米国特許出願公開第2007/0149959(US,A1)
【文献】
特表2002−513615(JP,A)
【文献】
米国特許第6270476(US,B1)
【文献】
国際公開第2014/144626(WO,A2)
【文献】
米国特許出願公開第2006/0122590(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 18/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の解剖学的構造の標的部位に、またはその近くに配置される遠位部および長手方向軸を有する外管と、
前記外管の中に配置されるガス供給ラインであって、前記遠位部をおおって前記外管の外面に氷球を形成するために冷凍ガスを供給するように構成されるガス供給ラインと、
前記ガス供給ラインが膨張室で終端するように、前記遠位部の中に設置される膨張室と、
前記外管の内面に接触する熱交換螺旋と、
前記熱交換螺旋と前記ガス供給ラインの間に環状に画成されて、戻り流路に沿って前記膨張室から冷凍ガスを搬送するように適合される戻りガス流ルーメンと、
前記ガス供給ラインと同軸に配置されてそのガス供給ラインと接触するヒーターとを備え、
前記外管の前記外面に形成される前記氷球が、前記外管の前記長手方向軸に沿って対称の形状であるように、前記熱交換螺旋は、前記遠位部において均一の伝熱率を提供する凍結針であって、
前記熱交換螺旋は、前記熱交換螺旋の隣接したターンの間に軸方向に定められる螺旋ピッチを有し、
前記熱交換螺旋に沿った前記螺旋ピッチは、前記遠位部の第1の部分にわたる第1のピッチおよび前記遠位部の第2の部分にわたる第2のピッチを有し、前記遠位部の前記第1の部分は前記遠位部の前記第2の部分よりも遠位側に位置し、
前記第1のピッチは前記第2のピッチより大きく、よって、前記氷球が対称の形状を有するように、前記冷凍ガスは前記遠位部の前記第2の部分にわたって伝熱を強化する凍結針。
【請求項2】
前記熱交換螺旋は前記外管の軸と同軸に配置される請求項1に記載の凍結針。
【請求項3】
前記外管は2.1ミリメートルの外径を有する請求項1に記載の凍結針。
【請求項4】
前記膨張室は、前記冷凍ガスを膨張させるように適合されて、前記戻り流ルーメンを流れる膨張冷凍ガスは、ガス供給ラインの中を流れる入来冷凍ガスを冷却するように適合される請求項1に記載の凍結針。
【請求項5】
前記熱交換螺旋は螺旋スプリングである請求項1に記載の凍結針。
【請求項6】
前記熱交換螺旋は、スズのコーティング付きの銅含有金属合金から作られている請求項5に記載の凍結針。
【請求項7】
前記熱交換螺旋は前記遠位部に熱交換表面積を有し、前記冷凍ガスの温度がそれぞれ−155℃と−150℃であるときに、前記外管が−150℃〜−145℃の温度に冷やされるように、前記熱交換表面積は前記冷凍ガスと前記外管の間に充分な伝熱を提供する請求項1に記載の凍結針。
【請求項8】
前記ガス供給ラインを実質的に囲んで、それによって前記外管の長さの一部にわたって前記戻りガス流ルーメンと前記外管の間に障壁を形成する断熱被覆を更に備え、前記断熱被覆は、前記ガス供給ラインと前記断熱被覆の内壁の間に環状隙間をつくるのに十分な内径を有し、前記環状隙間は、それを通って流れる冷凍ガスを受け入れるために前記戻りガス流ルーメンと流体連通する請求項1に記載の凍結針。
【請求項9】
前記断熱被覆の前記内径は1.32mmである請求項8に記載の凍結針。
【請求項10】
膨張冷凍ガスが露出領域にわたって前記外管に直接接触するように、前記断熱被覆は前記外管の前記長さの一部にわたって前記ガス供給ラインを囲み、前記露出領域は露出領域長を有し、前記露出領域長は所定のアスペクト比を有する氷球を生成するように適合される請求項8に記載の凍結針。
【請求項11】
前記断熱被覆の前記外壁と前記ガス供給ラインの間に画成される前記環状隙間は、前記戻りガス流ルーメンから前記環状隙間を流れる前記冷凍ガスに作用する背圧を最小化するのに十分な直径を有する請求項8に記載の凍結針。
【請求項12】
前記ガス供給ラインは前記外管の前記長手方向軸と同軸である請求項1に記載の凍結針。
【請求項13】
前記熱交換螺旋は、前記遠位部で前記外管の前記内面に接触する請求項1に記載の凍結針。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2015年2月20日に出願された米国特許出願番号第14/627,568号に優先権を主張する。そして、それの内容全体を参照によって本願明細書に引用したものとする。
【0002】
本開示は、一般的に対称な形状を有する氷球を形成するための凍結針に関する。
【背景技術】
【0003】
凍結外科システムは、一つ以上の凍結ガス源に連結している一つ以上の凍結針を備える。この種のシステムは、同一出願人による特許、米国特許第8,066,697号明細書に、そして公告された出願、米国特許出願公開第2010/0256620A1号明細書に記載されており、これにより、その開示全体を参照によって本願明細書に引用したものとする。この種の凍結外科システムにおいて、凍結ガスは、凍結ガス源から一つ以上の凍結針へ供給できる。凍結針は、凍結ガスの膨張により冷やされるかまたは加熱されることができて、それによって凍結針の近くの組織を冷凍するかまたは解凍する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
特定の実施形態は、遠位部を有する外管を備えた凍結針を含む。凍結針は、外管の中に同軸で配置されるガス供給ラインを有する。ガス供給ラインは、遠位部をおおって外管の外面に氷球を形成するために凍結ガスを供給するように構成できる。中心ガス供給ラインが膨張室で終端するように、凍結針は、遠位部の中に配置される膨張室を有することができる。凍結針は、外管の内面に接触する熱交換螺旋を有することができる。凍結針は、熱交換螺旋と中心ガス供給ラインの間に環状に画成され、凍結ガスを膨張室から近位部の方へ搬送するように適合される戻りガス流ルーメンを有することができる。氷球が大体対称の形状であるように、熱交換螺旋は遠位部に大体均一の冷却を提供できる。
【0005】
特定の実施形態において、氷球が大体対称の形状を有するように、熱交換螺旋は、遠位部の単位距離当たりの増加する表面積を有する。場合によっては、戻りガスルーメンは、膨張室から近位部の方への凍結ガスの螺旋形の戻り経路を提供する。
【0006】
特定の実施形態は、冷凍手術の間に対称氷球を形成する方法を含む。方法は、本願明細書に記載されているような凍結針を備えた冷凍外科システムを提供することを含むことができる。方法は、ガス供給ラインを通して凍結ガスを供給するステップと、凍結ガスを膨張室で膨張させるステップと、遠位部において凍結ガスのために螺旋形の戻り経路を提供するステップであって、凍結ガスは、膨張室から近位部の方への方向で戻りガス流ルーメンを流れるステップと、氷球が大体対称の形状であるように遠位部をおおって外管の外面に氷球を形成するステップとを含む。
【0007】
以下の図面は、本発明の特定の実施形態を例示し、そのために本発明の範囲を制限しない。図面は、必ずしも一定の比率であるわけではなくて(そのように記載されない限り)、以下の詳細な記述の説明に関連しての使用を目的とする。本発明の実施形態は、添付図面に関連して以下に記載される。そこにおいて類似の符号は類似の要素を示す。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1B】
図1Aに示される凍結針の部分
30の拡大斜視図である。
【
図2】平面2−2に沿った
図1Aに示される凍結針の部分3の拡大断面正面図である。
【
図3】
図1Aに示される凍結針の部分3の拡大斜視図であり、外管はそこに収納される内部部品を例示するために図から削除されている。
【
図4】平面4−4に沿った
図3に示される凍結針の断面図である。
【
図5】
図1Aに示される凍結針の部分5の拡大斜視図であり、外管はそこに収納される内部部品を例示するために図から削除されている。
【
図6】
図2に示される凍結針の部分6の拡大斜視図である。
【
図7A】その遠位先端に形成される楕円体の氷球付きで例示される特定の実施形態による凍結針の正面図である。
【
図7B】その遠位先端に形成される球体氷球付きで例示される特定の実施形態による凍結針の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下の詳細な説明は、事実上例示的であって、いかなる形であれ本発明の範囲、適用性、または構成を制限することを目的としない。むしろ、以下の説明は、本発明の例示的な実施形態を実施するためにいくつかの実際的な具体例を提供する。構造、材料、寸法、および製造プロセスの実施例は、選択された要素のために提供され、そして他の全ての要素は、本発明の分野の当業者に知られているものを使用する。当業者は、述べられる実施例の多くが様々な適切な代替物を有することを認識するだろう。
【0010】
凍結外科システムは、標的組織(例えば、腫瘍)を凍結切除するために用いることができる。概して、この種のシステムは、一つ以上の凍結針、一つ以上の凍結ガス源、およびコントローラを含む。凍結ガス源は、ガス、例えばアルゴン、窒素、空気、クリプトン、CO2、CF4、キセノン、および各種の他のガスを供給できる。凍結外科システムは、一つ以上のセンサー、流量計、タイマー、アナログ/デジタル・コンバータ、有線または無線通信モジュールなどを有するコントローラを含むこともできる。加えて、コントローラは、凍結針に供給される凍結ガスの流量、温度、および圧力を調整することもできる。
【0011】
冷凍手術の間に、例えば、外科医は、患者の解剖学的構造の標的部位に、またはその近くに凍結針10を配置することによって、患者の解剖学的構造の標的部位を冷凍切除するために、
図1に示されるような一つ以上の凍結針を展開することができる。一つの実施例において、凍結針10はジュールトムソン効果を利用して、冷却または加熱を生じる。そのような場合、凍結ガスは、凍結針10においてより高い圧力からより低い圧力まで膨張する。凍結ガスの膨張は、凍結針10の先端の近くで組織を凍結切除するために必要な温度またはそれ以下の温度に結果としてなる。膨張した凍結ガスと凍結針10の外壁の間の伝熱は、氷球を形成し、その結果として組織を凍結切除するために使用できる。
【0012】
図1A〜1Bおよび2に示すように、凍結針10の構成要素は、外管12(例えば、トロカール)の中に設置される。外管12は、展開の間に患者の組織を貫通するために凍結針10の遠位部20に配置した遠位作動ヘッド16を有することができる。外管12は、患者の組織における展開を可能にするために実質的に細い断面でありえる。一実施例において、外管12は約2.1ミリメートルの外径を有する。外管12の他の寸法も考えられる。例えば、外管12は、約1.5ミリメートル〜約2.4ミリメートルの外径を有することができる。上記したように、外管12は、患者の解剖学的構造の標的部位またはその近くに配置される遠位部20を有することができる。外管12は、凍結針10の遠位部20と近位部30の間に配置される中間部24を有することもできる。加えて、外管12は長手方向軸34を有する。
【0013】
図2に示されるように、凍結針10は、高圧ガスを遠位作動ヘッド16に供給するためにその長さに沿って実質的に伸びるガス供給ライン38を含む。ガス供給ライン38は、外管12の中に同軸/同心で配置できる。ガス供給ライン38は、遠位部20をおおって外管12の外面40に氷球を形成するために凍結ガスを供給するように構成できる。場合によっては、ガス供給ライン38は毛細管でありえる。
図1Bを参照すると、ガス供給ライン38は、凍結針10の近位部30に配置されて第1の端部52で凍結ガス源(図示せず)に且つ第2の端部54で毛細管に作動可能に連結する近位熱交換器50を備える。近位熱交換器50は、凍結ガス源からの凍結ガスを中間部および/または遠位部に供給する前に予冷できる。
【0014】
図1Bを続けて参照すると、近位熱交換器50は、中心コア58に巻付けられる中空螺旋形管56でありえる。近位熱交換器50の螺旋形管56は、巻付けられない熱交換器と比較して、螺旋形管56の単位長さ当たりの増加した熱交換表面積を提供する。螺旋形管56は黄銅から作ることができる。ステンレス鋼のような他の金属も考えられる。
図1Aに示される実施形態において、近位熱交換器50は、遠位作動ヘッド16から遠くに配置される。例えば、近位熱交換器50は、ハンドル(図示せず)に配置できる。そのような場合、断熱外側カバー(図示せず)は、オペレータ(例えば、外科医)による手動展開(例えば、ハンドルを握ることによる)を容易にするように、近位熱交換器50をおおって配置できる。断熱外側カバーは、熱収縮性プラスチック膜から作ることができる。場合によっては、中心コア58は、遠位作動ヘッド16と比較して実質的に堅くすることができる。この種の実施形態は、軟組織を貫通するために実質的に柔軟な遠位作動ヘッド16および凍結ガスを予冷するために近位熱交換器50を有する実質的に堅いハンドルを備えた凍結針10を提供する際に有益でありえる。
【0015】
図2を参照すると、遠位部20は、第1の部分60および第2の部分70を有することができる。ガス供給ライン38が膨張室72で終端するように、凍結針10は、遠位部20の第1の部分60の中に膨張室72を含むことができる。場合によっては、ガス供給ライン38(例えば、毛細管)は、ジュールトムソン開口部74で終端できる。ジュールトムソン開口部74は膨張室72の近くに配置できる。ガス供給ライン38を通して供給される高圧凍結ガスは、ジュールトムソン開口部74を通ってガス供給ライン38を出て、膨張室72において膨張する。凍結ガスが膨張室72において膨張するにつれて、それは急速に冷却して、外管12の外面40をおおっていろいろな形状および/またはサイズの氷球を形成する。凍結ガスの膨張は、膨張するときに、凍結ガスが入って来る凍結ガスより冷たいような具合でありえる。
【0016】
図2を続けて参照すると、凍結針10は、熱交換螺旋100と中心ガス供給ライン38の間に環状に画成される戻りガス流ルーメン78を備える。戻りガス流ルーメン78は、凍結ガスを
図2に示される戻り流路79に沿って凍結針10の膨張室72から近位部30の方へ搬送できる。戻りガス流ルーメン78は、ガス供給ライン38と凍結針10の外管12の内壁102の間に凍結ガスの戻り経路に沿って画成される。後述するように特定の実施形態において、戻りガス流ルーメン78は螺旋形をしている。ここで
図4および5を参照すると、作動中に、凍結ガスは膨張室72において膨張し、そして膨張凍結ガスは戻り流ルーメンを流れて、それによってガス供給ライン38を通って流れる入来凍結ガスを冷やす。膨張ガスは、外管12の端の近くで大気にその後排出されることができる。
【0017】
図2に戻って参照すると、場合によっては、ヒーター80は、組織を焼灼させるために、または他のために、凍結針10の遠位部20で、またはその近くで組織を解凍するために、組織を凍結切除した後に凍結針10の離脱を容易にするように遠位部20の近くの外管12の中に任意に設けることができる。この例示的実施形態に示すように、電気ヒーター80は、凍結針10の遠位部20の加熱を容易にするために、ガス供給ライン38および外管12と同軸で設けられる。あるいは、電気ヒーター80は、凍結針10の遠位部20を加熱するために凍結針10の他の場所に配置できる。電気ヒーター80は抵抗加熱器でありえて、そこにおいて、電気ヒーター80は、それを通る電流の流れおよび電気ヒーター80の電気抵抗と比例した熱を発生させる。そのような場合、以前に言及されたように、コントローラ(図示せず)は、凍結針10の中の電気ヒーター80への電流の流れを供給し、そして/または調整する(例えば、ホイートストリンブリッジ、電流計、または電圧計によって)ことができる。
図2に示される実施形態において、電気ヒーター80は、ガス供給管のまわりに螺旋コイル(例えば、約50巻き〜約200巻き)で巻回される金属ワイヤ(例えば、銅)から成る。例えば、ワイヤは、ワイヤの隣接するコイルの間にごくわずかなピッチで巻回される。加えて、ワイヤは、ガス供給管の外面40と実質的に接触できる。電気ヒーター80が本願明細書に例示されるが、凍結針10の遠位部20を加熱する代替方法も考えられる。例えば、遠位部20は、凍結ガス源により供給される高圧ヘリウムのような加熱ガス(例えば、冷却ガスの液化によって得られる温度より低い逆転温度を有する凍結ガス)を使用してその代わりに加熱されることができる。あるいは、凍結針10の遠位部20は加熱されないことがありえて/または周囲は組織解凍されないことがありえる。
【0018】
上記したように、凍結ガスの温度は、第2の部分70より遠位部20の第1の部分60においてより冷たい(ジュールトムソン効果による)ことがありえて、そして凍結ガスと外管12の間の伝熱は、第2の部分70より第1の部分60を通じて高いことがありえる。これは、非対称の形状(例えば、第2の部分70の方へ大体テーパー状になっている氷球による洋ナシ形)を有する氷球に結果としてなることがありえる。非対称の氷球形成を防止するために、
図2および3に示されるように、一実施例で、凍結針10は、凍結ガスと外管12の間の熱交換を強化するように構成されるコイルから成る熱交換螺旋100を含む。熱交換螺旋100は、外管12の内壁102に接触して、外管12と同軸で配置される。おそらく最もよく
図2に示すように、熱交換螺旋100のコイルは、外管12の内壁102と接触していて、ヒーター80またはガス供給ライン38(例えば、毛細管)と接触しない。これらのコイルは、外管12の内壁102にフィンとして効果的に作用し、そして外管12への伝熱を向上させて
、外管12の長手方向軸34に関する対称の形状を有する氷球を形成する。
【0019】
図2および3を続けて参照すると、外管12の内壁102における熱交換螺旋100の存在は、戻りガスが膨張室72から凍結針10の近位部30の方へ越えて流れる表面積を増加させる。さらに、凍結ガスは、螺旋通路に沿って膨張室72から凍結針10の近位部30の方へ流れて、熱交換を強化するという結果になる。この種の実施形態は、膨張した凍結ガスと外管12の間のより大きい伝熱に結果としてなり、従って後述するように所望の氷球の形状およびサイズ(例えば、球体または楕円体のような対称形状)を提供する。熱交換螺旋100は、伝熱が凍結ガスから凍結針10の外管12へと発生する表面積を増加させることによって遠位部20を通しての伝熱を強化する。例えば、凍結ガス温度が約−155℃であるときに、外管12が約−150℃の温度に均一に冷やされるように、熱交換螺旋100は、遠位部20で熱交換表面積を提供することができて、凍結ガスと外管12の間の伝熱を可能にする。他の温度も考えられる。例えば、凍結ガス温度が約−155℃〜約−150℃であるときに、外管12は、約−145℃〜約−150℃のいかなる温度にも冷やすことができる。
【0020】
氷球(
図7Aおよび7Bに最もよく示される)が大体対称形であるように、熱交換螺旋100は、遠位部20の全長104にわたって大体均一の冷却を提供できる。例えば、凍結ガスと外管12間の伝熱率が、遠位部20の全長104にわたってほぼ一定であるように、熱交換螺旋100は、遠位部20の全長104にわたって外管12を均一に冷やすのを容易にすることができる。上記したように、第1の部分60を通じて戻り流ルーメンを流れる凍結ガスは、ジュールトムソン開口部の近くの凍結ガスの急速な膨張と付随する第1の部分60で発生する急速な冷却のため、第2の部分70を通じて戻り流ルーメンを流れる凍結ガスより低い温度でありえる。そのような場合、第1の部分60にわたる凍結ガスと外管12間の伝熱率が、第2の部分70にわたる凍結ガスと外管12間の伝熱率におおよそ等しいように、熱交換螺旋100は、第2の部分70にわたる凍結ガスと外管12間の伝熱を増加させることができる。この種の実施形態は、対称の形状を有する氷球を生成するのを容易にして、非対称の形状(例えば、洋ナシ形)を有する氷球の形成を防止できる。
【0021】
図3に示されるように、熱交換螺旋100は螺旋ピッチを有する。螺旋ピッチは、対称の形状(例えば、楕円体または球体)を有する氷球150を生成するように構成できる。例えば、図示するように、コイルは可変螺旋ピッチを有することができる。
図3において、2つの螺旋ピッチ、すなわち遠位部20の第1の部分60にわたる第1のピッチ
110および遠位部20の第2の部分70にわたる第2のピッチ
108が示される。熱交換螺旋100の隣接するコイルが、第2の部分70より第1の部分60においてさらに離れて配置されるように、第1のピッチ
110は、第2のピッチ
108より大きいことがありえる。例えば、熱交換螺旋100は、第2の部分70より第1の部分60の単位長さ当たりのより少ないコイルを有することができる。図示の実施形態では、熱交換螺旋100は、遠位部20の第1の部分60の単位長さ当たりの表面積と比較して、遠位部20の第2の部分70の単位長さ当たりのより大きい表面積を有する。凍結ガスが、第1の部分60より第2の部分70でより高い温度を有するとき、氷球150(
図7Aおよび7Bに最もよく示される)が大体対称の形状を有するように、第2の部分70の増加した表面積は、ほぼ等しい凍結ガスと外管12の間の伝熱率を促進する。あるいは、螺旋ピッチは遠位部20の全長104にわたって一定でありえる。
【0022】
本願明細書に例示される実施形態において、熱交換螺旋100はコイル状スプリングである。熱交換螺旋100はスズコート銅から作ることができる。所望の螺旋ピッチの螺旋形状に形成されるように充分な弾性および/または展性を有する他の金属および合金(例えば、ステンレス鋼)も考えられる。
【0023】
図2に戻って参照し、そしてここで
図4を参照すると、凍結針10は、遠位部20以外の位置に配置可能な断熱被覆120を備える。断熱被覆120は、外管12に当接して、膨張室72から戻る膨張凍結ガスが外管12と接触するのを防止する。例えば、氷球150が従って外管12の露出領域(例えば、外管12と戻りガス流ルーメン78の間に配置される断熱被覆120を有しない外管12の領域)に形成されるように、冷たい戻りガスは、意図された標的部位以外の患者の体の部位との接触を回避する。
図2に示される例示の実施形態において、遠位部20の全長104は露出される。この露出領域長140にわたって、膨張凍結ガスは凍結針10の外管12に接触して、氷球150を形成する。断熱被覆は、この実施形態において、凍結針10の中間部24の全長にわたって配置される。中間部24の全長にわたって、凍結ガスは外管12に接触するのを防止され、それによって中間部24を囲む組織の冷却および/またはその上にある氷球形成を防止する。
【0024】
場合によっては、外管12の露出領域長140(
図2に最もよく示される)は、氷球の形状を決定できる。例えば、
図7Aおよび7Bは、それぞれ、凍結針10の遠位部20にわたって形成される楕円および球形の氷球150を例示する。一実施例において、外管12の露出領域長140が約34ミリメートルであるときに、氷球150は、
図7Aに示されるような実質的に楕円の形状を有することができる。別の実施例では、外管12の露出領域長140が約18ミリメートルであるときに、氷球150は、
図7Bに示されるような実質的に球体形状を有することができる。
図7Aおよび7Bの両方において形成された氷球150は対称の形状であるが、外管12の露出領域長140(例えば、断熱被覆120によってカバーされない)は、氷球150形状のアスペクト比160に影響する。例えば、より短い露出領域長は、球体氷球150を生じ、そしてより長い露出領域長は楕円体氷球を生じる。断熱被覆120の長さを短縮するかまたは伸ばすことによって、さまざまな対称の形状を得ることができる。露出領域長140は、したがって氷球150のアスペクト比160を変えるために変化できる。
図7Aおよび7Bに示されるように、氷球150のアスペクト比160は、凍結針10の長手方向に沿って測定される氷球150の長さ162と凍結針10の長手方向に対して垂直な方向において測定される氷球150の幅164の比率として定義できる。図示するように、約1のアスペクト比160は、球体氷球150を意味する。
【0025】
いくつかの典型的なケースにおいて、本願明細書に開示される熱交換螺旋100は、戻りガス流ルーメン78の膨張凍結ガスの流れに対する更なる抵抗を生じさせることができる。そのような場合、凍結針10の寸法は、過剰な流れ抵抗および/または背圧が凍結針10において発生するのを防止するように構成できる。ここで
図5および6を参照すると、断熱被覆120は、遠位部20から近位部30の方への膨張凍結ガスの戻り流を可能にするのに適している寸法を有することができる。例えば、断熱被覆120は、
図5および6に最もよく示すように、ガス供給ライン38と断熱被覆120の外壁の間に環状隙間をつくるのに十分な内径170を有することができる。環状隙間は、そこを通って流れる凍結ガスを受け入れるために、戻りガス流ルーメン78と流体連通する。一実施例において、断熱被覆120の内径170は約1.32mmである。他の実施例において、断熱被覆120は、約0.5ミリメートル〜約2ミリメートルの内径170を有することができる。一実施例において、外管12の外径が約2.1ミリメートルであるときに、断熱被覆120は、約1.0ミリメートル〜約1.4ミリメートルの内径170を有することができる。別の実施例において、外管12の外径が約1.5ミリメートルであるときに、断熱被覆120は、約0.72ミリメートルの内径170を有することができる。別の実施例において、外管12の外径が約2.4ミリメートルであるときに、断熱被覆120は、約1.25ミリメートル〜約1.7ミリメートルの内径170を有することができる。断熱被覆120の内径170は、従って、戻りガス流ルーメン78から環状隙間の中を流れる膨張凍結ガスに作用する背圧を最小化するために十分に大きいことがありえる。そのような場合、背圧は、膨張凍結ガスの圧力ができるだけ低く降下する(例えば、0ゲージ)ことができるために最小化されて、それは、より低いガス温度およびより大きい氷球に結果としてなる。断熱被覆120の内径170を最大にすることは、凍結針10の全体背圧を最小化するのを助ける。
【0026】
特定の実施形態は、冷凍手術の間に対称の形状を有する氷球を形成する方法を含む。方法は、本願明細書に開示されるような冷凍外科システムを提供するステップと、ガス供給ライン38を通して冷凍ガスを供給するステップと、膨張室72の冷凍ガスを膨張させるステップと、遠位部20の冷凍ガスに螺旋形の戻り経路を提供するステップであって、冷凍ガスは膨張室72から近位部30の方への方向に戻りガス流ルーメン78を流れるステップと、氷球150が大体対称の形状を有するように、遠位部20にわたって外管12の外面40に氷球150を形成するステップとを含むことができる。
【0027】
本願明細書に開示される冷凍針10の実施形態は、いくつかの利点を提供できる。冷凍針10は、実質的に対称の氷球が望ましい形状を有するように構成できる。望ましい氷球特徴(例えば、対称、サイズ、および形状)が、より小さい針外管12の直径によって得られることが可能であるように、冷凍針10は、その遠位部20の部分にわたって伝熱を強化できる。さらに、より小さい針外管12の直径のため、針ハンドルに加わる重量およびトルクも最小化されて、冷凍手術の間に冷凍針10を容易に展開可能にする。
【0028】
このように、均一に分散された冷却を備えた冷凍針10の実施形態が開示される。本実施形態が、特定の開示された実施形態に関してかなり詳細に記載されたけれども、開示された実施形態は、例証のために提示されるものであり、限定のためではない。当業者は、各種の変化、改作、および変更が本発明の精神を逸脱しない範囲でなされることができると認めるだろう。