(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
卑金属が、バナジウム(V)、モリブデン(Mo)及びタングステン(W)、クロム(Cr)、セリウム(Ce)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)及びジルコニウム(Zr)、並びにこれらの混合物からなる群より選択される、請求項7に記載の触媒物品。
第2のSCR触媒が、アルミノシリケートモレキュラーシーブ、金属置換アルミノシリケートモレキュラーシーブ、アルミノホスフェート(AlPO)モレキュラーシーブ、金属置換アルミノホスフェート(MeAlPO)モレキュラーシーブ、シリコアルミノホスフェート(SAPO)モレキュラーシーブ及び金属置換シリコアルミノホスフェート(MeSAPSO)モレキュラーシーブ、並びにこれらの混合物からなる群より選択される小細孔モレキュラーシーブを含む、請求項7から10のいずれか一項に記載の触媒物品。
第2のSCR触媒が、ACO、AEI、AEN、AFN、AFT、AFX、ANA、APC、APD、ATT、CDO、CHA、DDR、DFT、EAB、EDI、EPI、ERI、GIS、GOO、IHW、ITE、ITW、LEV、KFI、MER、MON、NSI、OWE、PAU、PHI、RHO、RTH、SAT、SAV、SFW、SIV、THO、TSC、UEI、UFI、VNI、YUG及びZON、並びにこれらの混合物及び/又は連晶からなる骨格型の群より選択される小細孔モレキュラーシーブを含む、請求項7から11のいずれか一項に記載の触媒物品。
第2のSCR触媒が、AEI、AFX、CHA、DDR、ERI、ITE、KFI、LEV、及びSFWからなる骨格型の群より選択される小細孔モレキュラーシーブを含む、請求項7から12のいずれか一項に記載の触媒物品。
第2のSCR触媒が、AEL、AFO、AHT、BOF、BOZ、CGF、CGS、CHI、DAC、EUO、FER、HEU、IMF、ITH、ITR、JRY、JSR、JST、LAU、LOV、MEL、MFI、MFS、MRE、MTT、MVY、MWW、NAB、NAT、NES、OBW、PAR、PCR、PON、PUN、RRO、RSN、SFF、SFG、STF、STI、STT、STW、SVR、SZR、TER、TON、TUN、UOS、VSV、WEI及びWEN、並びにこれらの混合物及び/又は連晶からなる骨格型の群より選択される中細孔モレキュラーシーブを含む、請求項7から11のいずれか一項に記載の触媒物品。
第2のSCR触媒が、AFI、AFR、AFS、AFY、ASV、ATO、ATS、BEA、BEC、BOG、BPH、BSV、CAN、CON、CZP、DFO、EMT、EON、EZT、FAU、GME、GON、IFR、ISV、ITG、IWR、IWS、IWV、IWW、LTF、LTL、MAZ、MEI、MOR、MOZ、MSE、MTW、NPO、OFF、OKO、OSI、RON、RWY、SAF、SAO、SBE、SBS、SBT、SEW、SFE、SFO、SFS、SFV、SOF、SOS、STO、SSF、SSY、USI、UWY及びVET、並びにこれらの混合物及び/又は連晶からなる骨格型の群より選択される大細孔モレキュラーシーブを含む、請求項7から11のいずれか一項に記載の触媒物品。
モレキュラーシーブが、ACO、AEI、AEN、AFN、AFT、AFX、ANA、APC、APD、ATT、CDO、CHA、DDR、DFT、EAB、EDI、EPI、ERI、GIS、GOO、IHW、ITE、ITW、LEV、KFI、MER、MON、NSI、OWE、PAU、PHI、RHO、RTH、SAT、SAV、SFW、SIV、THO、TSC、UEI、UFI、VNI、YUG及びZON、並びにこれらの混合物及び/又は連晶からなる骨格型の群より選択される、請求項20又は請求項21に記載の触媒物品。
珪酸質担体が、(a)少なくとも100、(b)少なくとも200、(c)少なくとも250、(d)少なくとも300、(e)少なくとも400、(f)少なくとも500、(g)少なくとも750、及び(h)少なくとも1000のうちの少なくとも1つのシリカ対アルミナ比を有するシリカ又はゼオライトを含む、請求項25に記載の触媒物品。
担体上の白金の量に対する第1のSCR触媒の量の比が、これらの成分の重量に基づいて、(a)0:1〜300:1、(b)3:1〜300:1、(c)7:1〜100:1、及び(d)10:1〜50:1(比の各端点を含む)のうちの少なくとも1つの範囲内にある、請求項24から27のいずれか一項に記載の触媒物品。
白金が、白金の担体の重量+白金の重量+第1のSCR触媒の重量に対して、(a)0.01〜0.3%、(b)0.03〜0.2%、(c)0.05〜0.17%、及び(d)0.07〜0.15%のうちの少なくとも1つとして存在する、請求項24から27のいずれか一項に記載の触媒物品。
ただ1つのアンモニアスリップ触媒(ASC)を含み、(a)第2のゾーンがディーゼル酸化触媒(DOC)を含まないか、又は(b)DOCがアンモニアスリップ触媒に隣接してその下流に配置されていないかのいずれかである、請求項1から30のいずれか一項に記載の触媒物品。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形「a」、「an」及び「the」は、文脈から判断して明らかにそうでないと分かる以外は、複数の指示物を含む。したがって、例えば「触媒(a catalyst)」と言えば、2以上の触媒の混合物などを含む。
【0012】
「アンモニアスリップ」という用語は、SCR触媒を通過する未反応アンモニアの量を意味する。
【0013】
用語「担体」とは、触媒が固定されている材料を意味する。
【0014】
用語「低アンモニア貯蔵を有する担体」とは、担体1m
3当たり0.001mmol未満のNH
3を貯蔵する担体を通常意味する。
【0015】
低アンモニア貯蔵を有する担体は好ましくは、AEI、ANA、ATS、BEA、CDO、CFI、CHA、CON、DDR、ERI、FAU、FER、GON、IFR、IFW、IFY、IHW、IMF、IRN、IRY、ISV、ITE、ITG、ITN、ITR、ITW、IWR、IWS、IWV、IWW、JOZ、LTA、LTF、MEL、MEP、MFI、MRE、MSE、MTF、MTN、MTT、MTW、MVY、MWW、NON、NSI、RRO、RSN、RTE、RTH、RUT、RWR、SEW、SFE、SFF、SFG、SFH、SFN、SFS、SFV、SGT、SOD、SSF、SSO、SSY、STF、STO、STT、SVR、SVV、TON、TUN、UOS、UOV、UTL、UWY、VET、VNIからなる群より選択される骨格型を有するモレキュラーシーブ又はゼオライトである。モレキュラーシーブ又はゼオライトは、より好ましくはBEA、CDO、CON、FAU、MEL、MFI、及びMWWからなる群より選択される骨格型を、さらに一層好ましくはBEA及びMFIからなる群より選択される骨格型を有する。
用語「か焼する」又は「か焼」とは、空気中又は酸素中で材料を加熱することを意味する。この定義は、IUPACのか焼の定義と一致するものである。この定義は、IUPACのか焼の定義と一致するものである。(IUPAC. Compendium of Chemical Terminology, 第2版(「Gold Book」). A. D. McNaught及びA. Wilkinsonによる編纂。Blackwell Scientific Publications, Oxford (1997). XMLオンライン改訂版: http://goldbook.iupac.org (2006-)、M. Nic, J. Jirat, B. Kosataにより作成; A. Jenkinsにより更新版が編纂される。ISBN 0-9678550-9-8. doi:10.1351/ goldbook.)金属塩を分解し、触媒内の金属イオンの交換を促進し、触媒を基材に接着させるために、か焼が行われる。か焼に用いられる温度は、か焼する材料中の成分によって決まり、通常、およそ1から8時間で約400℃から約900℃の間である。場合によっては、か焼は、約1200℃までの温度で実施することができる。本明細書に記載の方法を含む用途では、か焼は、通常約400℃から約700℃の温度でおよそ1から8時間、好ましくは約400℃から約650℃の温度でおよそ1から4時間実施される。
【0016】
用語「約」は、おおよそを意味し、この用語が結び付けられている値の、任意選択的に±25%、好ましくは±10%、さらに好ましくは±5%、又は最も好ましくは±1%の範囲を指す。
【0017】
さまざまな数値要素の1つ又は複数の範囲が提供される場合、その1つ又は複数の範囲は、別記されない限り、その値を含めることができる。
【0018】
用語「N
2選択性」は、アンモニアの窒素への変換率を意味する。
【0019】
「ディーゼル酸化触媒」(DOC)、「ディーゼル発熱触媒」(DEC)、「NOx吸収剤」、「SCR/PNA」(選択的触媒還元/受動的NOx吸着剤)、コールド・スタート触媒」(CSC)、及び「三元触媒」(TWC)という用語は、燃焼プロセスからの排気ガスを処理するために使用されるさまざまなタイプの触媒を記載するために使用される、当該技術分野において周知の用語である。
【0020】
用語「白金族金属」又は「PGM」は、白金、パラジウム、ルテニウム、ロジウム、オスミウム、及びイリジウムを指す。白金族金属は好ましくは、白金、パラジウム、ルテニウム又はロジウムである。
【0021】
用語「下流」及び「上流」は、排気ガスの流れが基材又は物品の入口端から出口端に向かう触媒又は基材の配向を表す。
【0022】
「第1」、「第2」という用語は、本明細書において一般的に使用され、同じ名前を有する特徴を区別するためのラベルであり、このような各特徴の数ついては、文脈がそうでないことを示さない限り、数値限定されない。例えば、「第1のSCR触媒」への言及は、「第2のSCR触媒」が存在しなければならないことを意味するものではない。
【0023】
特に第2のゾーンの第2の触媒に関して、本明細書で使用される「触媒化スートフィルター」とは、スートの酸化を触媒するのに適した触媒をいう。「触媒化スートフィルター」の基材は、特に第1のゾーンと第2のゾーンが同じ基材上に配置されている場合、フロースルー又はフィルター構造を有することができる。
【0024】
本明細書で使用される「片部」とは、用語「基材」と同義であり得る。
【0025】
本発明の第1の態様において、触媒物品は、入口及び出口端を含む基材と、第1のゾーンと、第2のゾーンとを含み、第1のゾーンは、白金族金属を含むアンモニアスリップ触媒(ASC)と、金属交換モレキュラーシーブ、バナジウム又は卑金属を含む第1のSCR触媒とを含み、第2のゾーンは、ディーゼル酸化触媒(DOC)、ディーゼル発熱触媒(DEC)、触媒化スートフィルター(CSF)、NOx吸収剤、選択的触媒還元/受動的NOx吸着剤(SCR/PNA)、コールド・スタート触媒(CSC)又は三元触媒(TWC)からなる群より選択される第2の触媒を含み、第1のゾーンが第2のゾーンに対して上流のガス流に配置されている。
【0026】
アンモニアスリップ触媒は、白金族金属と、金属交換モレキュラーシーブ、バナジウム、卑金属、卑金属酸化物又は混合酸化物を含む第1のSCR触媒とを含むアンモニア酸化触媒を含む。PGM触媒及びSCR触媒は、3タイプの二重層構成と1つのブレンドという、4つの構成のうちの1つとして存在することができる。
【0027】
第1の二重層構成は、最下層にアンモニア酸化触媒を、最上層にSCR触媒を有する。
【0028】
第2の二重層構成は、アンモニア酸化触媒を含む層の前の層にSCR触媒を有する。
【0029】
第3の二重層構成は、アンモニア酸化触媒を含む層の前の層にSCR触媒を有し、SCR触媒の一部もアンモニア酸化触媒の上の最上層に存在する。
【0030】
これらの二重層構成は、以下のように表すことができる。
【0031】
これらの構成の各々において、SCR触媒を有する層は、白金族金属、好ましくは白金又はパラジウム、より好ましくはパラジウムを含むこともできる。
【0032】
アンモニアスリップ触媒は、白金族金属を含む最下層と、最下層上に配置された第1のSCR触媒を含む最上層とを含んでもよい。
【0033】
第4の構成では、アンモニアスリップ触媒は、低アンモニア貯蔵を有する担体上の白金族金属(PGM)と第1のSCR触媒とのブレンドを含む。好ましくは、白金族金属は、白金、パラジウム又はこれらの混合物を含む。ブレンドは、MnO
2上にPd、Nb−Ce−Zr又はNbをさらに含むことができる。
【0034】
物品が2以上のASCを含む場合、これらのASC中のアンモニア酸化触媒及びSCR触媒は、同じであっても異なっていてもよい(すなわち、第1のASCのアンモニア酸化触媒は、残りのASCのアンモニア酸化触媒と異なる)。
【0035】
第1のゾーン及び第2のゾーンは、同じ基材上に配置することができ、この場合、第1のゾーンが基材の入口側に配置され、第2のゾーンが基材の出口側に配置される。
【0036】
触媒物品は、第2の基材をさらに含むことができ、この場合、第1のゾーンは第1の基材上に配置され、第2のゾーンは第2の基材上に配置され、第1の基材が第2の基材の上流に配置される。
【0037】
触媒物品は、第1の片部と第2の片部とを含むことができ、この場合、第1のゾーンは第1の片部に配置され、第2のゾーンは第2の片部に配置され、第1の片部が第2の片部の上流に配置される。
【0038】
触媒物品は、第1の片部と第2の片部とを含むことができ、この場合、第1のゾーンの一部は第1の片部に配置され、第1のゾーンの残り部分と第2のゾーンは第2の片部に配置され、第1の片部が第2の片部の上流に配置される。触媒物品は、3つの第1の片部と1つの第2の片部とを含むことができ、この場合、第1のゾーンは第1の片部に配置され、第1のゾーンの残り部分と第2のゾーンは第2の片部に配置され、第1の片部が第2の片部の上流に配置される。
【0039】
これらの片部の各組み合わせにおいて、追加の触媒を第2の片部に、又は第2の片部の後ろの追加の片部に配置することもできる。
【0040】
ASC中のPGMの量は、触媒物品の組成に応じて変化し得る。例えば、PGMは、約0.1g/ft
3〜約5g/ft
3、好ましくは約0.1g/ft
3〜約1g/ft
3のレベルで存在し得る。いくつかの構成において、発熱を生じるのが望ましい場合、PGMは、約1g/ft
3〜約20g/ft
3、好ましくは約5g/ft
3〜約10g/ft
3のレベルで存在し得る。
【0041】
PGMは、Pt、Pd又は白金とパラジウムとの組み合わせであってもよい。
【0042】
PtとPdの双方が使用される場合、Pt:Pdの比は、約10:1から1:100の間、好ましくは約5:1から1:10の間とすることができる。
【0043】
アンモニア酸化触媒は、担体、好ましくは低アンモニア貯蔵を有する担体上の白金を含み得る。
【0044】
低アンモニア貯蔵を有する担体は、珪酸質担体であり得る。
【0045】
珪酸質担体は、(a)少なくとも100、(b)少なくとも200、(c)少なくとも250、(d)少なくとも300、(e)少なくとも400、(f)少なくとも500、(g)少なくとも750、及び(h)少なくとも1000のうちの少なくとも1つのシリカ対アルミナ比を有するシリカ又はゼオライトを含み得る。
【0046】
珪酸質担体は、BEA、CDO、CON、FAU、MEL、MFI又はMWW骨格型を有するモレキュラーシーブを含み得る。
【0047】
低アンモニア貯蔵を有する担体上の白金の量に対するSCR触媒の量の比は、これらの成分の重量に基づいて、0:1〜300:1、好ましくは3:1〜300:1、より好ましくは7:1〜100:1、最も好ましくは10:1〜50:1の範囲(比の各端点を含む)であってよい。
【0048】
第2のゾーンは、酸化触媒と第2のSCR触媒とのブレンドを含むことができる。
【0049】
触媒物品は、第2のSCR触媒をさらに含むことができ、第2のSCR触媒は、アンモニアスリップ触媒の上流又はアンモニアスリップ触媒と第2の触媒との間に配置される。
【0050】
第2のSCR触媒の一部は、アンモニアスリップ触媒と少なくとも部分的に重なっていてもよい。
【0051】
触媒物品は、第2のSCR触媒を含むことができ、この場合、第2のSCR触媒は、アンモニア酸化触媒と第2の触媒の間(すなわち、ASCの下流で、ディーゼル酸化触媒(DOC)、ディーゼル発熱触媒(DEC)、触媒化スートフィルター(CSF)、NOx吸収剤、選択的触媒還元/受動的NOx吸着剤(SCR/PNA)、コールド・スタート触媒(CSC)又は三元触媒(TWC)の上流)に配置される。
【0052】
SCR触媒
触媒物品は、1以上のSCR触媒を含むことができる。アンモニアスリップ触媒中に存在するSCR触媒は、第1のSCR触媒と呼ばれる。このSCR触媒は、二重層の一部としてASC中に、又は低アンモニア貯蔵を有する担体上のPtとのブレンド中に存在する。
【0053】
第1のSCR触媒は、金属交換モレキュラーシーブ、バナジウム又は卑金属であり得る。
【0054】
第1のSCR触媒は、好ましくはCu−SCR触媒、Fe−SCR触媒又は混合酸化物、より好ましくはCu−SCR触媒又は混合酸化物である。Cu−SCR触媒は、銅及びモレキュラーシーブを含む。Fe−SCR触媒は、鉄及びモレキュラーシーブを含む。モレキュラーシーブについては、以下でさらに説明する。
【0055】
銅又は鉄は、モレキュラーシーブの骨格内及び/又はモレキュラーシーブ内の(交換可能な)余分な骨格部位に配置されていてもよい。
【0056】
第1のSCR触媒は、好ましくは、銅及び小細孔モレキュラーシーブを含むCu−SCR触媒、又は鉄及び小細孔モレキュラーシーブを含むFe−SCR触媒である。
【0057】
小細孔モレキュラーシーブは、アルミノシリケート、アルミノホスフェート(AlPO)、シリコアルミノホスフェート(SAPO)又はこれらの混合物であり得る。
【0058】
小細孔モレキュラーシーブは、ACO、AEI、AEN、AFN、AFT、AFX、ANA、APC、APD、ATT、CDO、CHA、DDR、DFT、EAB、EDI、EPI、ERI、GIS、GOO、IHW、ITE、ITW、LEV、KFI、MER、MON、NSI、OWE、PAU、PHI、RHO、RTH、SAT、SAV、SIV、THO、TSC、UEI、UFI、VNI、YUG及びZON、並びにこれらの混合物及び/又は連晶からなる骨格型の群より選択することができる。好ましくは、小細孔モレキュラーシーブは、CHA、LEV、AEI、AFX、ERI、SFW、KFI、DDR、及びITEからなる骨格型の群より選択することができる。
【0059】
典型的には、低アンモニア貯蔵を有する担体上の白金の量に対する第1のSCR触媒の量の比は、これらの成分の重量に基づいて、(a)0:1〜300:1、(b)3:1〜300:1、(c)7:1〜100:1、及び(d)10:1〜50:1(端点を含む)のうちの少なくとも1つの範囲内とすることができる。
【0060】
一般に、白金は、白金の担体の重量+白金の重量+ブレンド中の第1のSCR触媒の重量に対して、(a)0.01〜0.3%、(b)0.03〜0.2%、(c)0.05〜0.17%、及び(d)0.07〜0.15%のうちの少なくとも1つとして存在し得る。
【0061】
第2のSCR触媒は、卑金属、卑金属の酸化物、モレキュラーシーブ、金属交換モレキュラーシーブ又はこれらの混合物であり得る。卑金属は、バナジウム(V)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、クロム(Cr)、セリウム(Ce)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)及びジルコニウム(Zr)、並びにこれらの混合物からなる群より選択することができる。
【0062】
アルミナ、シリカ、ジルコニア、チタニア、セリア及びそれらの組み合わせなどの耐火性金属酸化物上に担持されたバナジウムからなるSCR組成物は、周知であり、自動車用途で商業的に広く使用されている。典型的な組成物は、米国特許第4010238号及び第4085193号に記載されており、これらの特許の全内容は参照により本明細書に援用される。商業的に、特に自動車用途において使用される組成物は、TiO
2であってその上にWO
3及びV
2O
5が各々5〜20重量%及び0.5〜6重量%の範囲の濃度で分散されているTiO
2を含む。
【0063】
第2のSCR触媒は、MnO
2上にNb−Ce−Zr又はNbを含んでもよい。これらの触媒は、結合剤及び促進剤として作用する、SiO
2及びZrO
2などの他の無機材料を含んでもよい。
【0064】
SCR触媒が卑金属である場合、触媒物品は、少なくとも1種の卑金属促進剤をさらに含んでもよい。本明細書で使用される場合、「促進剤」は、触媒に添加されたときに触媒の活性を増加させる物質を意味すると理解される。
【0065】
卑金属促進剤は、金属、金属の酸化物、又はこれらの混合物の形態であってもよい。少なくとも1種の卑金属触媒促進剤は、ネオジム(Nd)、バリウム(Ba)、セリウム(Ce)、ランタン(La)、プラセオジム(Pr)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、マンガン(Mn)、亜鉛(Zn)、ニオブ(Nb)、ジルコニウム(Zr)、モリブデン(Mo)、スズ(Sn)、タンタル(Ta)、ストロンチウム(Sr))、及びこれらの酸化物から選択することができる。少なくとも1種の卑金属触媒促進剤は、好ましくはMnO
2、Mn
2O
3、Fe
2O
3、SnO
2、CuO、CoO、CeO
2、及びこれらの混合物であり得る。少なくとも1種の卑金属触媒促進剤は、水溶液中の塩、例えば硝酸塩又は酢酸塩などの形態で触媒に添加してもよい。少なくとも1種の卑金属触媒促進剤及び少なくとも1種の卑金属触媒(例えば銅)は、酸化物担体材料上に水溶液から含浸されてもよく、酸化物担体材料を含むウオッシュコートに添加されてもよく、ウオッシュコートで予めコーティングされた担体に含浸されてもよい。
【0066】
SCR触媒は、モレキュラーシーブ又は金属交換モレキュラーシーブを含んでもよい。本明細書で使用されるように、「モレキュラーシーブ」とは、ガス又は液体の吸着剤として使用することができる、適切かつ均一なサイズの小さな細孔を含む準安定物質を意味すると理解される。細孔を通過するのに十分小さい分子は吸着され、大きい分子は吸着されない。モレキュラーシーブは、ゼオライトモレキュラーシーブ、非ゼオライトモレキュラーシーブ、又はこれらの混合物であってもよい。
【0067】
ゼオライトモレキュラーシーブは、国際ゼオライト協会(International Zeolite Association(IZA))が発表しているDatabase of Zeolite Structures(ゼオライト構造のデータベース)に列挙されている骨格構造のいずれか1つを有する微多孔アルミノシリケートである。骨格構造には、CHA、FAU、BEA、MFI、MOR型のものが含まれるが、これらに限定されない。これらの構造を有するゼオライトの非限定的な例には、チャバサイト、フージャサイト、ゼオライトY、超安定Y型ゼオライト、ベータゼオライト、モルデナイト、シリカライト、X型ゼオライト、及びZSM−5が含まれる。
【0068】
アルミノシリケートゼオライトは、少なくとも約5、好ましくは少なくとも約20のシリカ/アルミナモル比(SAR)(SiO
2/Al
2O
3と定義される)を有することができ、有効測定範囲は約10〜200である。
【0069】
SCR触媒のいずれも、小細孔、中細孔又は大細孔モレキュラーシーブ又はこれらの組み合わせを含んでもよい。「小細孔モレキュラーシーブ」は、四面体原子8個の最大環サイズを含むモレキュラーシーブである。「中細孔モレキュラーシーブ」は、四面体原子10個の最大環サイズを含むモレキュラーシーブである。「大細孔モレキュラーシーブ」は、四面体原子12個の最大環サイズを有するモレキュラーシーブである。
【0070】
第2のSCR触媒は、アルミノシリケートモレキュラーシーブ、金属置換アルミノシリケートモレキュラーシーブ、アルミノホスフェート(AlPO)モレキュラーシーブ、金属置換アルミノホスフェート(MeAlPO)モレキュラーシーブ、シリコアルミノホスフェート(SAPO)モレキュラーシーブ及び金属置換シリコアルミノホスフェート(MeAPSO)モレキュラーシーブ、並びにこれらの混合物からなる群より選択される小細孔モレキュラーシーブを含んでもよい。
【0071】
SCR触媒のいずれも、ACO、AEI、AEN、AFN、AFT、AFX、ANA、APC、APD、ATT、CDO、CHA、DDR、DFT、EAB、EDI、EPI、ERI、GIS、GOO、IHW、ITE、ITW、LEV、KFI、MER、MON、NSI、OWE、PAU、PHI、RHO、RTH、SAT、SAV、SFW、SIV、THO、TSC、UEI、UFI、VNI、YUG及びZON、並びにこれらの混合物及び/又は連晶からなる骨格型の群より選択される小細孔モレキュラーシーブを含んでもよい。好ましくは、小細孔モレキュラーシーブは、AEI、AFX、CHA、DDR、ERI、ITE、KFI、LEV、及びSFWからなる骨格型の群より選択される。
【0072】
SCR触媒のいずれも、AEL、AFO、AHT、BOF、BOZ、CGF、CGS、CHI、DAC、EUO、FER、HEU、IMF、ITH、ITR、JRY、JSR、JST、LAU、LOV、MEL、MFI、MFS、MRE、MTT、MVY、MWW、NAB、NAT、NES、OBW、PAR、PCR、PON、PUN、RRO、RSN、SFF、SFG、STF、STI、STT、STW、SVR、SZR、TER、TON、TUN、UOS、VSV、WEI及びWEN、並びにこれらの混合物及び/又は連晶からなる骨格型の群より選択される中細孔モレキュラーシーブを含んでもよい。好ましくは、中細孔モレキュラーシーブは、FER、MFI、及びSTTからなる骨格型の群より選択される。
【0073】
SCR触媒のいずれも、AFI、AFR、AFS、AFY、ASV、ATO、ATS、BEA、BEC、BOG、BPH、BSV、CAN、CON、CZP、DFO、EMT、EON、EZT、FAU、GME、GON、IFR、ISV、ITG、IWR、IWS、IWV、IWW、JSR、LTF、LTL、MAZ、MEI、MOR、MOZ、MSE、MTW、NPO、OFF、OKO、OSI、RON、RWY、SAF、SAO、SBE、SBS、SBT、SEW、SFE、SFO、SFS、SFV、SOF、SOS、STO、SSF、SSY、USI、UWY及びVET、並びにこれらの混合物及び/又は連晶からなる骨格型の群より選択される大細孔モレキュラーシーブを含んでもよい。好ましくは、大細孔モレキュラーシーブは、BEA、MOR、及びOFFからなる骨格型の群より選択される。
【0074】
金属交換モレキュラーシーブは、モレキュラーシーブの外面又はチャネル、キャビティ若しくはケージ内の余分な骨格部位に堆積した、周期表のVB、VIB、VIIB、VIIIB、IB又はIIB族のうちの1つからの少なくとも1種の金属を有してもよい。金属は、0価の金属原子又はクラスター、単離されたカチオン、単核又は多核オキシカチオンを含むがこれらに限定されないいくつかの形態のうちの1つの形態で存在しても、又は拡大された(extended)金属酸化物として存在してもよい。好ましくは、金属は、鉄、銅、及びこれらの混合物又は組み合わせである。
【0075】
金属は、適切な溶媒中の金属前駆体の混合物又は溶液を用いて、ゼオライトと組み合わせることができる。用語「金属前駆体」は、ゼオライト上に分散されて触媒活性金属成分をもたらすことができる任意の化合物又は錯体を意味する。溶媒は、他の溶媒を使用することの経済面及び環境面の双方に因り、好ましくは水である。好ましい金属である銅を使用する場合、好適な錯体又は化合物には、限定されないが、無水及び水和硫酸銅、硝酸銅、酢酸銅、銅アセチルアセトネート、酸化銅、水酸化銅、及び銅アミンの塩(例えば[Cu(NH
3)
4]
2+)が含まれる。本発明は、特定の種類、組成又は純度の金属前駆体に限定されない。モレキュラーシーブを金属成分の溶液に添加して懸濁液を形成し、その後これを反応させて金属成分をゼオライト上に分散させることができる。金属は、モレキュラーシーブの外面だけでなく細孔チャネルにも分散されてもよい。金属は、イオン形態で、又は金属酸化物として分散されてもよい。例えば、銅は、銅(II)イオン、銅(I)イオン又は酸化銅として分散されてもよい。金属を含有するモレキュラーシーブを、懸濁液の液相から分離し、洗浄し、乾燥させることができる。その後、得られた金属含有モレキュラーシーブをか焼して、モレキュラーシーブ中に金属を固定することができる。
【0076】
好ましくは、1以上のSCR触媒が、Cu−SCR、Fe−SCR、バナジウム、混合酸化物、促進Ce−Zr又は促進MnO2を含む。Cu−SCR触媒は、銅及びモレキュラーシーブを含み、Fe−SCR触媒は、鉄及びモレキュラーシーブを含む。好ましくは、モレキュラーシーブは、アルミノシリケート、アルミノホスフェート(AlPO)、シリコアルミノホスフェート(SAPO)又はこれらの混合物である。第2のSCR触媒がアンモニアスリップ触媒と第2の触媒との間にある場合、第2のSCRは、促進Ce−Zr又は促進MnO
2を好ましくは含む。
【0077】
金属交換モレキュラーシーブは、モレキュラーシーブの外面又はチャネル、キャビティ若しくはケージ内の余分な骨格部位に配置されている、周期表のVB、VIB、VIIB、VIIIB、IB又はIIB族を約0.10重量%〜約10重量%の範囲で含有してもよい。好ましくは、余分な骨格金属は、約0.2重量%〜約5重量%の範囲の量で存在し得る。
【0078】
金属交換モレキュラーシーブは、触媒の総重量の約0.1重量%〜約20重量%の銅(Cu)又は鉄(Fe)を有する、銅又は鉄担持モレキュラーシーブであってもよい。より好ましくは、銅又は鉄は、触媒の総重量の約0.5%〜約15%存在する。最も好ましくは、銅又は鉄は、触媒の総重量の約1%〜約9%存在する。
【0079】
本明細書に記載の触媒は、様々なエンジンからの排気ガスのSCR処理において使用することができる。珪酸質担体上の白金と第1のSCR触媒とのブレンドを含む触媒の特性の1つは、第1のSCR触媒がCu−SCR又はFe−SCR触媒である場合、第1のSCR触媒が第1の層として存在し、アンモニアを貯蔵する層に担持された白金が第2のコーティングに存在し、NH
3を含むガスが第2のコーティングを通過する前に第1の層を通過する比較構成を含む触媒と比較して、約250℃から約350℃の温度でのアンモニアからのN
2収率の改善をもたらし得ることである。低アンモニア貯蔵を有する担体上の白金と第1のSCR触媒とのブレンドを含む触媒の別の特性は、第1のSCR触媒がCu−SCR触媒又はFe−SCR触媒である場合、第1のSCR触媒が第1の層として存在し、アンモニアを貯蔵する担体に担持された白金が第2のコーティングに存在し、NH
3を含むガスが第2のコーティングを通過する前に第1の層を通過する比較構成を含む触媒と比較して、NH
3からのN
2O生成を低減し得ることである。
【0080】
第1の構成では、触媒物品は、入口及び出口を有する基材と、(a)PGM及び第1のSCR触媒を含むアンモニア酸化触媒と、ディーゼル酸化触媒、ディーゼル発熱触媒(DEC)、NOx吸収剤、選択的触媒還元/受動NOx吸着剤(SCR/PNA)、コールド・スタート触媒(CSC)又は三元触媒(TWC)を含む第2のゾーンとを含み、第1のゾーンは、基材の入口側に配置され、第2のゾーンは基材の出口側に配置される。
図1は、ASCが排気ガス流内で物品の入口に配置され、DOC又は他の触媒のうちの1つが物品の出口に配置されている構成を示す。アンモニアスリップ触媒は、
図2に示すように、3つの二重層構成のうちの1つに存在し得る。
図3に示すように、アンモニアスリップ触媒はまた、低アンモニア貯蔵を有する担体上の白金族金属(PGM)と第1のSCR触媒とのブレンドとして存在することができ、白金族金属は、白金、パラジウム又はこれらの混合物を好ましくは含む。
【0081】
図4に示すように、別の構成では、触媒物品は、入口及び出口を有する基材と、(a)PGM及び第1のSCR触媒を含むアンモニア酸化触媒と、コーティング又は非コーティングフィルターを含む第2のゾーンと、SCR触媒とを含む。ASCは、上記のように、二重層又はブレンドとして存在してもよい。
図5は、第1のゾーン内のASCが、SCR触媒がアンモニア酸化触媒の入口側及び最上部を覆う二重層として構成されており、出口のASCが、SCR触媒がアンモニア酸化触媒の入口側を覆う二重層として構成されている構成を示す。
図6は、双方のASCが、SCR触媒がアンモニア酸化触媒の入口側及び最上部を覆う二重層として構成されており、出口のASCが、SCR触媒がアンモニア酸化触媒の入口側を覆う二重層として構成されている構成を示す。
【0082】
図7は、ASCがDOC又は別の触媒の前の排気ガス流中に配置され、ASCはSCRの入口側にアンモニアスリップ触媒を有する二重層であり、SCRはDOC又は別の触媒との間にある構成を示す。
【0083】
図8は、ASCがDOC又は他の触媒の前の排気ガス流中に配置され、ASCはSCRの入口側にアンモニアスリップ触媒を有する二重層であり、SCRの一部がアンモニア酸化触媒の最上部を覆い、SCRはDOC又は他の触媒との間にある構成を示す。好ましくは、第2のSCR触媒は、第1のSCR触媒と低アンモニア貯蔵を有する担体上の白金とのブレンドを含む第1の層を完全に覆う。
【0084】
図9は、DOC又は他の触媒の上流にある第2のSCR触媒の前の排気ガス流中にASCが配置されている構成を示しており、ASCは、アンモニア酸化触媒の前にSCR触媒を有する二重層である。図示されていないが、その他の構成では、ASC内のSCR触媒又はASCとの間のSCRのいずれかの一部が、アンモニア酸化層の最上部を覆ってもよい。
【0085】
別の構成では、触媒物品は、ただ1つのアンモニアスリップ触媒(ASC)を含み、(a)第2のゾーンがディーゼル酸化触媒(DOC)を含まないか、又は(b)DOCがアンモニアスリップ触媒に隣接してその下流に配置されていないかのいずれかである。
【0086】
別の構成では、触媒物品は、ASC触媒を含む第3のゾーンをさらに含み、この場合、第3のゾーンは、第1のゾーンと第2のゾーンの間に配置されている。第1のゾーン内のPGMは、発熱を生じさせるのに十分な量のパラジウムを含むことができる。
【0087】
上記構成の各々において、各ゾーンは、同じ基材上に配置することができ、又は各基材上に1つ以上のゾーンを有する2つ以上の基材があってもよい。排気システムにおいて、2つ以上の基材が使用される場合、1つ以上の基材が1つのハウジング又はケーシング内に、又は異なるハウジング又はケーシング内に配置され得る。
【0088】
触媒のための基材は、ハニカム構造、押出担体、金属基材又はSCRFなど、フロースルー又はフィルター構造を含む自動車用触媒を調製するために典型的に使用される任意の材料であってよい。基材は好ましくは、流路が流体の流れに対して開いているようにするため、基材の入口から出口面まで延在する微細で平行な複数のガス流路を有する。このようなモノリス担体は、断面積1平方インチ当たり約700以上の流路(又は「セル」)を含むことができるが、これよりはるかに少ないものを使用してもよい。例えば、担体は、約7〜600、より通常では約100〜400個のセル/平方インチ(「cpsi」)を有することができる。通路(流体入口から流体出口への実質的に真っ直ぐな通路)は、通路を流れるガスが触媒材料と接触するようにSCR触媒が「ウオッシュコート」としてコーティングされている壁によって画定される。モノリス基材の流路は、台形、長方形、正方形、三角形、正弦曲線、六角形、楕円形、円形等の任意の適切な断面形状とすることができる薄壁チャンネルである。本発明は、特定の基材の種類、材質又は形状に限定されない。
【0089】
セラミック基材は、例えばコーディエライト、コーディエライト−αアルミナ、α−アルミナ、炭化ケイ素、窒化ケイ素、ジルコニア、ムライト、スポジュメン、アルミナ−シリカマグネシア、ケイ酸ジルコニウム、シリマナイト、ケイ酸マグネシウム、ジルコン、ペタライト、アルミノシリケート、及びこれらの混合物等の任意の適切な耐火材料で作られていてもよい。
【0090】
ウォールフロー基材は、例えばコーディエライト及び炭化ケイ素から形成されるものなど、セラミック繊維複合材料から形成することもできる。このような材料は、排気流を処理する際に遭遇する環境、特に高温に耐えることができる。
【0091】
基材は、高多孔性基材であってもよい。「高多孔性基材」という用語は、約40%から約80%の空隙率を有する基材を指す。高多孔性基材は、好ましくは少なくとも約45%、より好ましくは少なくとも約50%の空隙率を有し得る。高多孔性基材は、好ましくは約5%未満、より好ましくは約70%未満の空隙率を有し得る。本明細書で使用される用語「空隙率」は、好ましくは水銀ポロシメトリーで測定した場合の、総空隙率を指す。
【0092】
好ましくは、基材は、高多孔性コーディエライト、金属基材、押出SCR、フィルター又はSCRFである。
【0093】
珪酸質担体上の白金と第1のSCR触媒とのブレンドを含むウオッシュコート(ここで、第1のSCR触媒は、好ましくはCu−SCR触媒又はFe−SCR触媒である)を、当該技術分野で既知の方法を用いて基材の入口側に適用することができる。ウオッシュコートの適用後、組成物を乾燥させ、任意選択的にか焼することができる。組成物が第2のSCRを含む場合、上述のように、別個のウオッシュコート中で、最下層を有する乾燥又はか焼物品のいずれかに第2のSCRを適用することができる。第2のウオッシュコートを適用した後、それを乾燥及びか焼してもよい。
【0094】
層を含む白金を有する基材を、300℃から1200℃、好ましくは400℃から700℃、さらに好ましくは450℃から650℃の範囲の温度で乾燥及びか焼してもよい。か焼は、好ましくは乾燥条件下で行われるが、水熱的に、すなわち、ある程度の水分含量の存在下で実施されてもよい。か焼は、約30分〜約4時間、好ましくは約30分〜約2時間、より好ましくは約30分〜約1時間実施することができる。
【0095】
排気システムは、本発明の第1の態様の触媒物品と、NH
3を排気ガス中に生成するか又はNH
3を排気ガスに導入するための手段とを備え得る。排気システムにおいて、2つ以上の基材が使用される場合、1つ以上の基材が1つのハウジング又はケーシング内に、又は異なるハウジング又はケーシング内に配置され得る。排気システムは、触媒化スートフィルター(CSF)をさらに含み得る。触媒化スートフィルターは、フィルターの前方に高PGM担持量を含む。高PGM担持量とは、5〜50mmのフィルターのほぼ前方の、5g/ft
3〜約20g/ft
3(好ましくは、ヘビーデューティーディーゼルエンジンでは少なくとも5g/ft
3、ライトデューティーディーゼルエンジンでは約10g/ft
3〜約20g/ft
3)の担持量を意味する。
【0096】
エンジンは、本発明の第1の態様の触媒物品と、NH
3を排気ガス中に生成するか又はNH
3を排気ガスに導入するための手段とを備える排気システムを含んでもよい。エンジンは、車両のディーゼルエンジン、固定発生源のディーゼルエンジン、又は船などの船舶のディーゼルエンジンであり得る。
【0097】
本発明の別の態様では、触媒において発熱をもたらす方法は、可燃性ガス、例えば炭化水素、一酸化炭素(CO)又は水素を含む排気ガスを本発明の第1の態様の触媒と接触させることを含む。
【0098】
本発明の別の態様では、排気ガス中のNH
3からのN
2Oの生成を低減する方法は、アンモニアを含む排気ガスを本発明の第1の態様の触媒物品と接触させることを含む。
【0099】
以下の実施例は本発明の単なる例示であり、当業者は本発明の精神及び特許請求の範囲内にある多くのバリエーションを認識するであろう。
【実施例】
【0100】
実施例1
アルミナ上のPGMを含むウオッシュコートを最初に基材上に配置して最下層を形成し、その後ウオッシュコートを乾燥させることにより、触媒物品をコージエライト基材(400cpsi)上に調製した。銅チャバザイト(Cu−CHA)(120g/ft
3Cu)を含むウオッシュコートを適用し、その後最上層を乾燥させることにより、最上層を最下層の上に配置した。最上層が乾いた後、物品をか焼した。
【0101】
3g/ft
3の担持量で、PGMとして白金のみを含有する参照触媒物品を調製した。PGMとしてPtとPdを含む試料を、1:5のPt:Pd比で、18g/ft
3の総PGM担持量で調製した。PGMとしてPtとPdを含む試料を、2:1のPt:Pd比で、18g/ft
3の総PGM担持量で調製した。
【0102】
試料はフレッシュな状態で試験し、かつ、100時間580℃での水熱エイジング後にも試験した。
【0103】
試料の1 ”x 1”コアは、温度が室温から150℃に上昇するにつれて、最初にN
2ガスを通過させた。すると、NH
3=500ppm、CO
2=4.5%、H
2O=5%、CO=200ppm、O
2=12%を含有し、残部がN
2であるガスが、SV=150000h
−1で試料の上を覆った一方、温度は10℃/分の速度で150℃から500℃に上昇した。NH
3、NO
X、N
2O、CO、及びCO
2の濃度は、システムの出口でFTIRによって測定した。
【0104】
図10及び
図11は、フレッシュ及びエイジング試料で200℃から500℃の、3つの試料のNH
3変換、N
2O選択性及びNOx選択性を示している。2:1の比のPtとPdを含む触媒は、Ptのみを有する参照触媒よりも、良好な低温NH
3変換を示した一方、1:5の比のPtとPdを含む触媒は、約350℃未満でNH
3変換を示した。2:1の比のPtとPdを含む触媒は、Ptのみを含む参照触媒又は1:5の比のPtとPdを含む触媒のいずれよりも、高いN
2O選択性を示した。3つの触媒は、同様のNOx選択性を示した。これらの結果は、フレッシュ及びエイジング試料の双方に当てはまる。
【0105】
図12及び13は、フレッシュ及びエイジング試料で150℃から500℃の、3つの試料のNO変換を示している。ここでも、Pt:Pdが2:1の混合物を用いたフレッシュ及びエイジング試料は同様の結果を示し、PGMとしてPtのみを含む参照触媒と同じかそれ以上の変換であった。
【0106】
図14及び15は、フレッシュ及びエイジング試料で150℃から500℃の、3つの試料のCO変換を示している。ここでも、Pt:Pdが2:1の混合物を用いたフレッシュ及びエイジング試料は同様の結果を示し、PGMとしてPtのみを含む参照触媒と同じかそれ以上の変換であった。
【0107】
図16〜18及び19〜21は、各々フレッシュ及びエイジング試料で150℃から500℃の、3の試料のHC変換を示す。ここでも、フレッシュ及びエイジング試料は、同様の結果を示した。PGMとしてPtのみを含有する参照試料は、約450℃〜500℃で約70%の最大HC変換を有した。しかし、PtとPdとの混合物を含有する両試料は、約375℃で約70%のHC変換と、500℃で90%以上のHC変換を示した。これは、ASC中のPtとPdとの混合物が、Pt単独の使用よりもはるかに多くの炭化水素を酸化することができることを実証している。
【0108】
実施例2
実施例1に記載のとおりに調製された触媒の試料を、ディーゼル酸化触媒(DOC)及び触媒化スートフィルター(CSF)と共に排気システムに配置した。触媒は、SCR:ASC:DOC:CSFの順序で排気システムに配置した。排気システムをエンジンに接続し、尿素をSCR触媒の前の排気ストリームに注入した。燃料噴射器の出口はまた、SCRの前のシステム内に配置されていた。450℃で1時間エンジンを運転させることによりシステムを調整し、その後、エンジン速度を低下させて、エンジン温度を約300℃で安定させた。温度が安定した後、SCR触媒の前の排気システムに燃料を注入し、CSFの後ろの温度を約450℃に上昇させた。CSFの後ろの温度を約15分間維持した後、排気システムへの燃料添加を停止し、温度を約300℃に戻した。
【0109】
SCRの入口、並びにASC、DOC及びCSFの出口の温度を測定した。これらの温度を、Ptのみを含有する参照触媒、1:5のPt:Pd担持量で18g/ft
3のPGMを含む触媒、及び2:1のPt:Pd担持量で18g/ft
3のPGMを含む触媒について、それぞれ
図22−24に示す。
図22は、PGMとしてPtのみを含有する触媒の使用により、ASCの出口温度が約1250秒で最大約350℃に達し、その後約1600秒で約300℃に低下したことを示している。しかし、PtとPdの組み合わせを使用する両方のシステムでは、ASCの出口温度は、約1250秒で最大約390℃に達し、この温度は約2200秒まで約390℃にとどまり、これら両方の触媒が発熱を生じたことを示している。この安定した発熱は、PGMとしてPtのみを含有する参照触媒では観察されなかった。このことは、ASCの前のSCRを使用した場合、SCRが安定した発熱を生じなかったことを実証している。これらの結果はまた、本明細書に記載の触媒物品が、参照システムによって提供されるよりも良好な発熱を生じさせることができることを示している。
【0110】
発熱が生じることにより、再生される硫黄をCu SCR触媒などの触媒が受け得る温度、又はSCR反応効率が高められる温度まで触媒を加熱することができ、低負荷運転又はコールド・スタートにおける、より良好な性能につながる。ASCがシステム内で先頭にある場合、発熱が生じることにより、触媒がそれ自体を再生させることを可能にする。
【0111】
触媒中にPGMが存在すると、触媒上に蓄積し、排気ガス温度を上昇させる事象中に放出されて燃焼する可能性がある炭化水素又は他の反応性種の酸化に起因する、触媒システムにおける高発熱反応の危険性が低減される。
【0112】
実施例3:ASCでの発熱生成
上述のアンモニアスリップ触媒は、排気後処理システム内で先頭に配置される。従来のシステムでは、実施例2に示すように、SCR触媒がこの位置に配置される。あるいは、アンモニアスリップ触媒は、発熱がアンモニアスリップ触媒の上流で生じないような位置に配置される。
【0113】
発熱が生じることにより、再生される硫黄をCu SCR触媒などの触媒が受け得る温度、又はSCR反応効率が高められる温度まで触媒を加熱することができ、低負荷運転又はコールド・スタートにおける、より良好な性能につながる。ASCがシステム内で先頭にある場合、発熱が生じることにより、触媒がそれ自体を再生させることを可能にする。
【0114】
触媒中にPGMが存在すると、触媒上に蓄積し、排気ガス温度を上昇させる事象中に放出されて燃焼する可能性がある炭化水素又は他の反応性種の酸化に起因する、触媒システムにおける高発熱反応の危険性が低減される。白金族金属を触媒に組み込むことにより、排気ラインに直接噴射されるか、又はエンジンからASC自体に供給される炭化水素を反応させることによって発熱を生じさせることができる。発熱が生じることにより、再生される硫黄をCu SCR触媒などの触媒が受け得る温度、又はSCR反応効率が高められる温度まで触媒を加熱することができ、低負荷運転又はコールド・スタートにおける、より良好な性能につながる。PGMとしてのPdの使用は、発熱生成におけるその良好な性能と、比較的劣っているアンモニア酸化特性がゆえに、特に有用である。
【0115】
実施例4:HC貯蔵に比較的影響されないシステム
アンモニアスリップ触媒は、排気後処理システム内で先頭であるか、又は大量の炭化水素がアンモニアスリップ触媒に到達する位置に配置される。本発明は、代わりにSCR触媒が同じ位置に配置される従来のシステム設計と比較される。
【0116】
大量の炭化水素の貯蔵は、システムが熱くなるにつれての速い炭化水素の放出と組み合わせて、触媒において非常に高い温度をもたらす大きな発熱をもたらすことができる。このような非常に高い温度は、触媒を失活させ得る。場合によっては、生成された大きな発熱によって、触媒が溶融することさえある。PGMの存在は、炭化水素が非常に高い発熱を引き起こすレベルで存在する前に燃焼させることによって、非常に大きな発熱の生成の危険性を低減することができる。白金族金属を触媒に組み込むことによって、触媒に到達する炭化水素の多くは、一般的に起こるようにSCR触媒骨格内にトラップされるのではなく、酸化される。トラップされた炭化水素が反応して、突然排気ガス後処理システムを停止させるような非常に高い温度をもたらす熱暴走事象(runaway exothermal event)の危険性が、これによって低減されるであろう。
【0117】
実施例5:非常に優れたスリップ制御を有するシステム
アンモニアスリップ触媒は、尿素(又は他のNH
3源)の注入点の後に配置される。従来のシステムでは、SCR触媒がこの位置に配置される。
【0118】
ASCをシステムのかなり前方に配置することにより、アンモニアスリップのリスクが低減されるため、アンモニア注入の制御がより容易になる。これは、アンモニアスリップ触媒が従来のSCRT又はCCRTシステムの上流に配置される場合のように、触媒のサイズが非常に限定されている場合に特に有用である。このシステムは、N
2O生成を低減させることができる。アンモニアは、DOC又はCSFに反応してN
2Oを生成し得る。アンモニアスリップを最小化することによって、DOC又はCSF上のアンモニアの反応によって生成され得るN
2Oの量も削減される。
【0119】
このシステムの利点は、以下である:(1)NH
3の過量供与が可能であり、(2)さほど厳密な供与計画は必要なく、(3)NH
3を(DOC又はCSFで)スリップさせることによって、下流のl構成要素でN
2Oの生成が比較的少なくなる。
【0120】
実施例6:SCR触媒へのPGMの組み込み
上記の例の各々の場合、ASCは、白金族金属を含む最下層と第1のSCR触媒を含む最上層とを有する二重層触媒ではなく、PGMとSCR触媒との混合物である単層触媒である。
【0121】
2つの触媒の混合物の使用は、製造コストを低減するだけでなく、システム内の背圧を低下させる。好ましくは、アンモニアスリップ触媒は、低アンモニア貯蔵を有する担体上の白金とSCR触媒とのブレンドを含む。
【0122】
本明細書に記載の触媒物品は、コールド・スタート時に特に有用であり、その温度は、PGMがアンモニアを酸化してシステムのSCR活性を低下させるために一般に必要とされる温度よりも低い。例えば、アンモニアのPd酸化は一般に、約400℃の温度までは重要ではなく、典型的なコールド・スタート温度より上である。
【0123】
先の実施例は単に例示として意図されており、以下の特許請求の範囲により本発明の範囲が規定されるものである。