特許第6871183号(P6871183)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6871183放熱構造体およびそれを備えるバッテリー
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6871183
(24)【登録日】2021年4月19日
(45)【発行日】2021年5月12日
(54)【発明の名称】放熱構造体およびそれを備えるバッテリー
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/36 20060101AFI20210426BHJP
   H05K 7/20 20060101ALI20210426BHJP
   H01M 10/613 20140101ALI20210426BHJP
   H01M 10/625 20140101ALI20210426BHJP
   H01M 10/647 20140101ALI20210426BHJP
   H01M 10/6554 20140101ALI20210426BHJP
   H01M 10/6568 20140101ALI20210426BHJP
   H01M 10/6565 20140101ALI20210426BHJP
   H01M 50/20 20210101ALI20210426BHJP
【FI】
   H01L23/36 Z
   H05K7/20 F
   H01M10/613
   H01M10/625
   H01M10/647
   H01M10/6554
   H01M10/6568
   H01M10/6565
   H01M2/10 S
【請求項の数】9
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2018-4621(P2018-4621)
(22)【出願日】2018年1月16日
(65)【公開番号】特開2019-125665(P2019-125665A)
(43)【公開日】2019年7月25日
【審査請求日】2020年4月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000190116
【氏名又は名称】信越ポリマー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110973
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 洋
(74)【代理人】
【識別番号】110002697
【氏名又は名称】めぶき国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】清水 隆男
【審査官】 井上 弘亘
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−004783(JP,A)
【文献】 特開平09−321468(JP,A)
【文献】 国際公開第2005/083783(WO,A1)
【文献】 特開2015−207541(JP,A)
【文献】 特開2013−140740(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0318484(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/36
H01M 10/613
H01M 10/625
H01M 10/647
H01M 10/6554
H01M 10/6565
H01M 10/6568
H01M 50/20
H05K 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱源からの放熱を高める放熱構造体であって、
前記熱源からの熱を伝えるためのスパイラル状に巻回しながら進行する形状の熱伝導シートと、
前記熱伝導シートの環状裏面に備えられ、前記熱伝導シートに比べて前記熱源の表面形状に合わせて変形容易なクッション部材と、
を備え、
前記熱伝導シートの巻回しながら進行する方向に貫通する貫通路を有する放熱構造体。
【請求項2】
前記熱伝導シートの環状表面に密着層をさらに備え、
前記貫通路から径方向外側に向かって、前記クッション部材、前記熱伝導シート、前記密着層の順に構成されている請求項1に記載の放熱構造体。
【請求項3】
前記クッション部材は、前記熱伝導シートの前記環状裏面に沿ってスパイラル状に巻回しているスパイラル状クッション部材である請求項1または2に記載の放熱構造体。
【請求項4】
前記クッション部材は、その長さ方向に前記貫通路を有する筒状クッション部材であって、
前記熱伝導シートは、前記筒状クッション部材の外側面をスパイラル状に巻回している請求項1または2に記載の放熱構造体。
【請求項5】
冷却部材を流す構造を持つ筐体内に、1または2以上の熱源としてのバッテリーセルを備えたバッテリーであって、
前記熱源からの放熱を高める放熱構造体を備え、
前記放熱構造体に、
前記熱源からの熱を伝えるためのスパイラル状に巻回しながら進行する形状の熱伝導シートと、
前記熱伝導シートの環状裏面に備えられ、前記熱伝導シートに比べて前記熱源の表面形状に合わせて変形容易なクッション部材と、
を備え、
前記熱伝導シートの巻回しながら進行する方向に貫通する貫通路を有するバッテリー。
【請求項6】
前記放熱構造体は、前記熱伝導シートの環状表面に密着層をさらに備え、前記貫通路から径方向外側に向かって、前記クッション部材、前記熱伝導シート、前記密着層の順に構成されている請求項5に記載のバッテリー。
【請求項7】
前記クッション部材は、前記熱伝導シートの前記環状裏面に沿ってスパイラル状に巻回しているスパイラル状クッション部材であり、
前記放熱構造体を、少なくとも前記熱源と前記冷却部材との間に配置している請求項5または6に記載のバッテリー。
【請求項8】
前記クッション部材は、その長さ方向に前記貫通路を有する筒状クッション部材であって、
前記熱伝導シートは、前記筒状クッション部材の外側面をスパイラル状に巻回しており、
前記放熱構造体を、少なくとも前記熱源と前記冷却部材との間に配置している請求項5または6に記載のバッテリー。
【請求項9】
前記クッション部材は、その長さ方向に前記貫通路を有する筒状クッション部材であって、
前記熱伝導シートは、前記筒状クッション部材の外側面をスパイラル状に巻回しており、
前記筒状クッション部材は前記貫通路に前記冷却部材を流すことができるように構成されており、
前記放熱構造体を、前記熱源と前記筐体との間、および/または前記熱源同士の間に配置している請求項5または6に記載のバッテリー。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放熱構造体およびそれを備えるバッテリーに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車、航空機、船舶あるいは家庭用若しくは業務用電子機器の制御システムは、より高精度かつ複雑化してきており、それに伴って、回路基板上の小型電子部品の集積密度が増加の一途を辿っている。この結果、回路基板周辺の発熱による電子部品の故障や短寿命化を解決することが強く望まれている。
【0003】
回路基板からの速やかな放熱を実現するには、従来から、回路基板自体を放熱性に優れた材料で構成し、ヒートシンクを取り付け、あるいは放熱ファンを駆動するといった手段を単一で若しくは複数組み合わせて行われている。これらの内、回路基板自体を放熱性に優れた材料、例えばダイヤモンド、窒化アルミニウム(AlN)、cBNなどから構成する方法は、回路基板のコストを極めて高くしてしまう。また、放熱ファンの配置は、ファンという回転機器の故障、故障防止のためのメンテナンスの必要性や設置スペースの確保が難しいという問題を生じる。これに対して、放熱フィンは、熱伝導性の高い金属(例えば、アルミニウム)を用いた柱状あるいは平板状の突出部位を数多く形成することによって表面積を大きくして放熱性をより高めることのできる簡易な部材であるため、放熱部品として汎用的に用いられている(特許文献1を参照)。
【0004】
ところで、現在、世界中で、地球環境への負荷軽減を目的として、従来からのガソリン車あるいはディーゼル車を徐々に電気自動車に転換しょうとする動きが活発化している。特に、フランス、オランダ、ドイツをはじめとする欧州諸国の他、中国でも、2040年までにガソリン車とディーゼル車から完全に電気自動車に切り替えることを宣言している。電気自動車の普及には、高性能バッテリーの開発の他、多数の充電スタンドの設置などの課題がある。特に、リチウム系の自動車用バッテリーの充放電機能を高めるための技術開発が大きな課題となっている。上記自動車バッテリーは、摂氏60度以上の高温下では充放電の機能を十分に発揮できないことが良く知られている。このため、先に説明した回路基板と同様、バッテリーにおいても、放熱性を高めることが重要視されている。
【0005】
バッテリーの速やかな放熱を実現するには、アルミニウム等の熱伝導性に優れた金属製の筐体に水冷パイプを配置し、当該筐体にバッテリーセルを多数配置し、バッテリーセルと筐体の底面との間に密着性のゴムシートを挟んだ構造が採用されている。以下、図を参照して説明する。
【0006】
図9は、従来のバッテリーの概略断面図を示す。図9のバッテリー100は、多数のバッテリーセル101を、アルミニウム若しくはアルミニウム基合金から成る筐体102の内底面103上に備える。筐体102の底部104には、冷却水を流すための水冷パイプ105が備えられている。バッテリーセル101は、底部104との間にゴムシート(例えば、室温硬化型シリコーンゴム製のシート)106を挟んで筐体102内に固定されている。このような構造のバッテリー100では、バッテリーセル101は、ゴムシート106を通じて筐体102に伝熱して、水冷によって効果的に除熱される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−243999
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、図9に示すような従来のバッテリー100の放熱構造には、次のような解決すべき課題がある。ゴムシート106は、アルミニウムやグラファイトと比べて熱伝導性が低いため、バッテリーセル101から筐体102に効率よく熱を移動させることが難しい。また、ゴムシート106に代えてグラファイト等のスペーサを挟む方法も考えられる。しかし、複数のバッテリーセル101の下面が平らではなく段差を有することから、バッテリーセル101とスペーサとの間に隙間が生じ、伝熱効率が低下する。かかる一例にもみられるように、バッテリーセルは種々の形態(段差等の凹凸あるいは表面状態を含む)をとり得ることから、バッテリーセルの種々の形態に順応可能であって高い伝熱効率を実現することの要望が高まっている。さらには、バッテリーセルの容器の材質をより軽量なものにすることが要望されており、バッテリーセルの軽量化に対応した放熱構造体が望まれている。これは、バッテリーセルのみならず、回路基板、電子部品あるいは電子機器本体のような他の熱源にも通じる。
【0009】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、熱源の種々の形態に順応可能であって、軽量でかつ放熱効率に優れる放熱構造体、および当該放熱構造体を備えるバッテリーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(1)上記目的を達成するための一実施形態に係る放熱構造体は、熱源からの放熱を高める放熱構造体であって、熱源からの熱を伝えるためのスパイラル状に巻回しながら進行する形状の熱伝導シートと、熱伝導シートの環状裏面に備えられ、熱伝導シートに比べて熱源の表面形状に合わせて変形容易なクッション部材とを備え、熱伝導シートの巻回しながら進行する方向に貫通する貫通路を有する。
【0011】
(2)別の実施形態に係る放熱構造体は、好ましくは、熱伝導シートの環状表面に密着層をさらに備え、貫通路から径方向外側に向かって、クッション部材、熱伝導シート、密着層の順に構成されている。
【0012】
(3)別の実施形態に係る放熱構造体では、好ましくは、クッション部材は、熱伝導シートの環状裏面に沿ってスパイラル状に巻回しているスパイラル状クッション部材である。
【0013】
(4)別の実施形態に係る放熱構造体では、好ましくは、クッション部材は、その長さ方向に貫通路を有する筒状クッション部材であって、熱伝導シートは、筒状クッション部材の外側面をスパイラル状に巻回している。
【0014】
(5)一実施形態に係るバッテリーは、冷却部材を流す構造を持つ筐体内に、1または2以上の熱源としてのバッテリーセルを備えたバッテリーであって、熱源からの放熱を高める放熱構造体を備え、放熱構造体に、熱源からの熱を伝えるためのスパイラル状に巻回しながら進行する形状の熱伝導シートと、熱伝導シートの環状裏面に備えられ、熱伝導シートに比べて熱源の表面形状に合わせて変形容易なクッション部材とを備え、熱伝導シートの巻回しながら進行する方向に貫通する貫通路を有する。
【0015】
(6)別の実施形態に係るバッテリーでは、好ましくは、放熱構造体は、熱伝導シートの環状表面に密着層をさらに備え、貫通路から径方向外側に向かって、クッション部材、熱伝導シート、密着層の順に構成されている。
【0016】
(7)別の実施形態に係るバッテリーでは、好ましくは、クッション部材は、熱伝導シートの環状裏面に沿ってスパイラル状に巻回しているスパイラル状クッション部材であり、放熱構造体を、少なくとも熱源と冷却部材との間に配置している。
【0017】
(8)別の実施形態に係るバッテリーでは、好ましくは、クッション部材は、その長さ方向に貫通路を有する筒状クッション部材であって、熱伝導シートは、筒状クッション部材の外側面をスパイラル状に巻回しており、放熱構造体を、少なくとも熱源と冷却部材との間に配置している。
【0018】
(9)別の実施形態に係るバッテリーでは、好ましくは、クッション部材は、その長さ方向に貫通路を有する筒状クッション部材であって、熱伝導シートは、筒状クッション部材の外側面をスパイラル状に巻回しており、筒状クッション部材は貫通路に冷却部材を流すことができるように構成されており、放熱構造体を、熱源と筐体との間、および/または熱源同士の間に配置している。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、熱源の種々の形態に順応可能であって、軽量でかつ放熱効率に優れる放熱構造体、および当該放熱構造体を備えるバッテリーを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1は、第1実施形態に係る放熱構造体および当該放熱構造体を備えるバッテリーの縦断面図(1A)および当該(1A)中のバッテリーセルによって放熱構造体を圧縮する前後の放熱構造体の形態変化の断面図(1B)をそれぞれ示す。
図2図2は、図1の放熱構造体の製造方法の一部を説明するための図を示す。
図3図3は、バッテリーセルの直下に放熱構造体を配置した状態の斜視図を示す。
図4図4は、第2実施形態に係る放熱構造体および当該放熱構造体を備えるバッテリーの縦断面図(4A)、バッテリーセルの直下に放熱構造体を配置した状態の斜視図(4B)および放熱構造体の平面図(4C)を、それぞれ示す。
図5図5は、第3実施形態に係る放熱構造体および当該放熱構造体を備えるバッテリーの縦断面図(5A)および当該放熱構造体に冷却部材が流れる状況の斜視図(5B)を、それぞれ示す。
図6図6は、第4実施形態に係る放熱構造体および当該放熱構造体を備えるバッテリーの縦断面図および当該放熱構造体に冷却部材が流れる状況の斜視図を示す。
図7図7は、第5実施形態に係る放熱構造体および当該放熱構造体を備えるバッテリーの縦断面図を示す。
図8図8は、図7の放熱構造体の製造状況の一部(8A)および当該(8A)の製造方法によって完成した放熱構造体の平面図(8B)をそれぞれ示す。
図9図9は、従来のバッテリーの概略断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
次に、本発明の各実施形態について、図面を参照して説明する。なお、以下に説明する各実施形態は、特許請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、また、各実施形態の中で説明されている諸要素及びその組み合わせの全てが本発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0022】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る放熱構造体および当該放熱構造体を備えるバッテリーの縦断面図(1A)および当該(1A)中のバッテリーセルによって放熱構造体を圧縮する前後の放熱構造体の形態変化の断面図(1B)をそれぞれ示す。
【0023】
バッテリー1は、図1に示すように、冷却部材15を接触させる筐体11内に複数のバッテリーセル20を備えた構造を有する。放熱構造体25は、熱源の一例であるバッテリーセル20の冷却部材15に近い側の端部(下端部)と冷却部材15に近い側の筐体11の一部(底部12)との間に備えられている。ここでは、1個の放熱構造体25は、2個のバッテリーセル20を載置しているが、放熱構造体25に載置するバッテリーセル20の個数は2個に限定されない。
【0024】
放熱構造体25は、バッテリーセル20からの放熱を高める構造体である。放熱構造体25は、バッテリーセル20からの熱を伝えるためのスパイラル状に巻回しながら進行する形状の熱伝導シート30と、熱伝導シート30の環状裏面に備えられ、熱伝導シート30に比べてバッテリーセル20の表面形状に合わせて変形容易なクッション部材31とを備える。放熱構造体25は、熱伝導シート30の巻回しながら進行する方向に貫通する貫通路32を有する。また、放熱構造体25は、好ましくは、熱伝導シート30の環状表面に密着層34をさらに備え、貫通路32から径方向外側に向かって、クッション部材31、熱伝導シート30、密着層34の順に構成されている。ここでは、熱伝導シート30は、好ましくは、クッション部材31に比べて熱伝導性に優れる材料からなる。クッション部材31は、好ましくは、その長さ方向に貫通路32を有する筒状クッション部材である。熱伝導シート30は、当該筒状クッション部材の外側面をスパイラル状に巻回している。放熱構造体25は、バッテリーセル20を載置していない状態では略円筒形状を有しているが、バッテリーセル20を載置するとその重さで圧縮され扁平した形態になる。
【0025】
熱伝導シート30は、放熱構造体25の外側面をスパイラル状に巻回しながら略円筒の長さ方向に進行する帯状のシートである。熱伝導シート30は、金属、炭素若しくはセラミックスの少なくとも1つを含むシートであってバッテリーセル20からの熱を冷却部材15へと伝導させる機能を有する。なお、本願では、「断面」あるいは「縦断面」とは、バッテリー1の筐体11の内部14における上方開口面から底部12へと垂直に切断する方向の断面を意味する。
【0026】
次に、バッテリーの概略構成および放熱構造体25の構成部材について、より詳しく説明する。
【0027】
(1)バッテリーの構成の概略
この実施形態において、バッテリー1は、例えば、電気自動車用のバッテリーであって、多数のバッテリーセル20を備える。バッテリー1は、一方に開口する有底型の筐体11を備える。筐体11は、好ましくは、アルミニウム若しくはアルミニウム基合金から成る。バッテリーセル20は、筐体11の内部14に配置される。バッテリーセル20の上方には、電極(不図示)が突出して設けられている。複数のバッテリーセル20は、好ましくは、筐体11内において、その両側からネジ等を利用して圧縮する方向に力を与えられて、互いに密着するようになっている(不図示)。筐体11の底部12には、冷却部材15の一例である冷却水を流すために、1または複数の水冷パイプ13が備えられている。バッテリーセル20は、底部12との間に、放熱構造体25を挟むようにして筐体11内に配置されている。このような構造のバッテリー1では、バッテリーセル20は、放熱構造体25を通じて筐体11に伝熱して、水冷によって効果的に除熱される。なお、冷却部材15は、冷却水に限定されず、液体窒素、エタノール等の有機溶剤も含むように解釈される。冷却部材15は、冷却に用いられる状況下にて、液体であるとは限らず、気体あるいは固体でも良い。
【0028】
(2)熱伝導シート
熱伝導シート30は、好ましくは炭素を含むシートであり、さらに好ましくは炭素フィラーと樹脂とを含むシートである。本願でいう「炭素」は、グラファイト、グラファイトより結晶性の低いカーボンブラック、膨張黒鉛、ダイヤモンド、ダイヤモンドに近い構造を持つダイヤモンドライクカーボン等の炭素(元素記号:C)から成る如何なる構造のものも含むように広義に解釈される。熱伝導シート30は、この実施形態では、樹脂に、グラファイト繊維やカーボン粒子を配合分散した材料を硬化させた薄いシートとすることができる。グラファイト繊維やカーボン粒子に代えて、膨張黒鉛性のフィラーを用いても良い。膨張黒鉛は、化学反応を用いて鱗片状の黒鉛に物質を挿入した黒鉛層間化合物を急熱して層間の物質がガス化し、その時に生じたガスの放出によって黒鉛の層間が広がり、層の積み重なり方向に膨張した状態になった黒鉛をいう。また、熱伝導シート30は、メッシュ状に編んだカーボンファイバーであっても良く、さらには混紡してあっても混編みしてあっても良い。なお、グラファイト繊維、カーボン粒子、カーボンファイバーあるいは膨張黒鉛製のフィラーも、すべて、炭素フィラーの概念に含まれる。
【0029】
熱伝導シート30に樹脂を含む場合には、当該樹脂が熱伝導シート30の全質量に対して50質量%を超えていても、あるいは50質量%以下であっても良い。すなわち、熱伝導シート30は、熱伝導に大きな支障が無い限り、樹脂を主材とするか否かを問わない。樹脂としては、例えば、熱可塑性樹脂を好適に使用できる。熱可塑性樹脂としては、熱源の一例であるバッテリーセル20からの熱を伝導する際に溶融しない程度の高融点を備える樹脂が好ましく、例えば、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリアミドイミド(PAI)等を好適に挙げることができる。樹脂は、熱伝導シート30の成形前の状態において、炭素フィラーの隙間に、例えば粒子状に分散している。熱伝導シート30は、炭素フィラー、樹脂の他、熱伝導をより高めるためのフィラーとして、AlNあるいはダイヤモンドを分散していても良い。また、樹脂に代えて、樹脂よりも柔軟なエラストマーを用いても良い。
【0030】
熱伝導シート30は、また、上述のような炭素に代えて若しくは炭素と共に、金属および/またはセラミックスを含むシートとすることができる。金属としては、アルミニウム、銅、それらの内の少なくとも1つを含む合金などの熱伝導性の比較的高いものを選択できる。また、セラミックスとしては、AlN、cBN、hBNなどの熱伝導性の比較的高いものを選択できる。
【0031】
熱伝導シート30は、導電性に優れるか否かは問わない。熱伝導シート30の熱伝導率は、好ましくは10W/mK以上である。この実施形態では、熱伝導シート30は、アルミニウム、アルミニウム合金、銅あるいはステンレススチールの帯状の板であり、熱伝導性と導電性に優れる材料から成る。熱伝導シート30は、湾曲性(若しくは屈曲性)に優れるシートであるのが好ましく、その厚さに制約はないが、0.3〜5mmが好ましく、0.3〜1mmがより好ましい。ただし、熱伝導シート30の熱伝導率は、その厚さが増加するほど低下するため、シートの強度、可撓性および熱伝導性を総合的に考慮して、その厚さを決定するのが好ましい。
【0032】
(3)クッション部材
クッション部材31の重要な機能は変形容易性と回復力である。変形容易性は、バッテリーセル20の形状に追従するために必要な特性であり、特にリチウムイオンバッテリーなどの半固形物、液体的性状も持つ内容物などを変形しやすいパッケージに収めてあるようなバッテリーセル20の場合には、設計寸法的にも不定形または寸法精度があげられない場合が多い。このため、クッション部材31の変形容易性や追従力を保持するための回復力の保持は重要である。
【0033】
クッション部材31は、この実施形態では貫通路32を備える筒状クッション部材である。クッション部材31は、複数のバッテリーセル20の下端部が平坦でない場合でも、熱伝導シート30と当該下端部との接触を良好にする。さらに、貫通路32は、クッション部材31の変形を容易にするのに寄与し、熱伝導シート30とバッテリーセル20の下端部との接触を高める機能を有する。クッション部材31は、バッテリーセル20と底部12との間にあってクッション性を発揮させる機能の他に、熱伝導シート30に加わる荷重によって熱伝導シート30が破損等しないようにする保護部材としての機能も有する。この実施形態では、クッション部材31は、熱伝導シート30に比べて低熱伝導性の部材である。
【0034】
クッション部材31は、好ましくは、シリコーンゴム、ウレタンゴム、イソプレンゴム、エチレンプロピレンゴム、天然ゴム、エチレンプロピレンジエンゴム、ニトリルゴム(NBR)あるいはスチレンブタジエンゴム(SBR)等の熱硬化性エラストマー; ウレタン系、エステル系、スチレン系、オレフィン系、ブタジエン系、フッ素系等の熱可塑性エラストマー、あるいはそれらの複合物等を含むように構成される。クッション部材31は、熱伝導シート30を伝わる熱によって溶融あるいは分解等せずにその形態を維持できる程度の耐熱性の高い材料から構成されるのが好ましい。この実施形態では、クッション部材31は、より好ましくは、ウレタン系エラストマー中にシリコーンを含浸したもの、あるいはシリコーンゴムにより構成される。クッション部材31は、その熱伝導性を少しでも高めるために、ゴム中にAlN、cBN、hBN、ダイヤモンドの粒子等に代表されるフィラーを分散して構成されていても良い。クッション部材31は、その内部に気泡を含むものの他、気泡を含まないものでも良い。また、「クッション部材」は、柔軟性に富み、熱源の表面に密着可能に変形可能な部材を意味し、かかる意味では「ゴム状弾性体」と読み替えることもできる。さらに、クッション部材31の変形例としては、上記ゴム状弾性体ではなく、金属を用いて構成することもできる。例えば、クッション部材は、バネ鋼で構成することも可能である。さらに、クッション部材として、コイルバネを配置することも可能である。また、スパイラル状に巻いた金属をバネ鋼にしてクッション部材として熱伝導シート30の環状裏面に配置しても良い。
【0035】
(4)密着層
密着層34は、熱伝導シート30の環状表面にさらに備えることのできる層である。放熱構造体25は、貫通路32から径方向外側に向かって、クッション部材31、熱伝導シート30、密着層34の順に構成されている。第1実施形態および第2実施形態以降では、密着層34は、熱伝導シート30のみの表面に備えられているが、クッション部材31にも備えることができる。さらには、クッション部材31の表面に熱伝導シート30をスパイラル状に巻回した筒状体に、密着層34の一形態としての筒を被せても良い。
【0036】
密着層34は、上述のクッション部材31と同様の様々な種類の弾性体にて形成可能であるが、バッテリーセル20からの熱を速やかに熱伝導シート30に伝える必要から、熱伝導性に優れたシリコーンゴムを含むシートであるのが好ましい。密着層34をシリコーンゴムにて主に構成する場合、AlN、アルミニウム等の高熱伝導性のフィラーをシリコーンゴム中に分散させるのが好ましい。また、シリコーンゴム製の密着層34としては、粘着性を高めるために、二官能性のシリコーン生ゴムにシリコーンレジンを組み合わせたシリコーンゴムを例示できる。当該シリコーンレジンは、好適には、MQレジンを例示できる。MQレジンとは、Siの4本の結合手に酸素原子を結合させた構造の4方分岐型のQユニットだけを架橋させ、末端の反応性を止めるために、Siの1本の結合手に酸素原子を結合させた構造の一方分岐型のMユニットを加えたレジンである。また、シリコーンレジンとしては、水酸基を多く結合するものを使用した方が、シリコーンゴムの粘着性を高めることができるので好ましい。
【0037】
密着層34は、バッテリーセル20と熱伝導シート30との密着性、あるいは冷却部材15の周囲(底部12、筐体11の側壁など))と熱伝導シート30との密着性を高める機能を持つ。密着層34は、耐熱性および粘着性があれば特に硬度を問わないが、特にシリコーンゴムを主材とするシートであれば、ショアOO基準(ショアオーオー基準)にて60度以下、好ましくは40度以下、さらに好ましくは10度以下である。密着層34が低硬度であるほど、バッテリーセル20表面の凹凸を吸収しやすいからである。また、密着層34の厚さは、熱抵抗を過度に高くしないためには、好ましくは0.005〜0.5mm、より好ましくは0.01〜0.3mm、さらにより好ましくは0.02〜0.2mmである。一方、密着層34の厚さは、接着力を高めるには大きい方が好ましい。密着層34の接着力を高めると、放熱構造体25がバッテリーセル20の膨張および収縮に追従しやすくなるというメリットが得られる。特に、後述の放熱構造体25d(図8を参照)のように、熱伝導シート30のみならず放熱構造体25dの全体をスパイラル形状にした場合には、放熱構造体25d自体がバッテリーセル20の膨張と収縮に追従できる。密着層34の熱抵抗を低くすることと接着力を高めることの調和の観点では、密着層34の厚さは、好ましくは0.02〜1.0mm、さらに好ましくは0.05〜0.7mm、さらにより好ましくは0.1〜0.5mmである。ただし、密着層34の厚さは、バッテリーセル20表面の凹凸あるいはゴム硬度等の条件に応じて決定するのが好ましい。密着層34は、放熱構造体25側ではなく、放熱構造体25と接触するバッテリーセル20側等に備えても良い。なお、密着層34は、放熱構造体25あるいはバッテリー1にとって必須の構成ではなく、好適に備えることのできる追加的な構成である。これは、第2実施形態以降でも同様である。
【0038】
図2は、図1の放熱構造体の製造方法の一部を説明するための図を示す。
【0039】
まず、クッション部材31を成形する。次に、密着層34を備える帯状の熱伝導シート30を、密着層34と反対側の面に接着剤あるいは接着シート等を供してクッション部材31の外側面にスパイラル状に巻く。このとき、クッション部材31の外側面が粘着性を有していれば、接着剤等は不要である。最後に、密着層34付きの帯状の熱伝導シート30のクッション部材31の両端からはみ出した部分があればカットする。こうして出来上がった放熱構造体25は、クッション部材31の外側面よりも密着層34および熱伝導シート30の各厚さ分だけ突出した形態を有する。ただし、後述の例のように、熱伝導シート30とクッション部材31、あるいは密着層34とクッション部材31とは、面一であっても良い。
【0040】
なお、密着層34は、放熱構造体25の製造工程の最後に形成しても良い。例えば、密着層34を備えていない帯状の熱伝導シート30をクッション部材31の外側面にスパイラル状に巻いた後に、少なくとも熱伝導シート30の表面に対して密着層34を形成するようにしても良い。密着層34の形成方法としては、少なくとも熱伝導シート30の表面に、硬化後に密着層34となる液状の硬化性組成物を塗布し、あるいは筒状の密着層34を、熱伝導シート30を巻いた後のクッション部材31の上から被せる方法などを例示できる。
【0041】
図3は、バッテリーセルの直下に放熱構造体を配置した状態の斜視図を示す。
【0042】
図3に示すように、筐体11内の各放熱構造体25は、2個のバッテリーセル20の電極21,22と反対側に位置する下端部と接触し、上下方向に圧縮された状態にある。放熱構造体25は、クッション部材31の外側面に熱伝導シート30をスパイラル状に巻いた構造を有しており、クッション部材31の変形に対して過度に拘束しない。
【0043】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態に係る放熱構造体および当該放熱構造体を備えるバッテリーについて説明する。第1実施形態と共通する部分については同じ符号を付して重複した説明を省略する。
【0044】
図4は、第2実施形態に係る放熱構造体および当該放熱構造体を備えるバッテリーの縦断面図(4A)、バッテリーセルの直下に放熱構造体を配置した状態の斜視図(4B)および放熱構造体の平面図(4C)を、それぞれ示す。
【0045】
第2実施形態に係る放熱構造体25aは、1個のバッテリーセル20を載置するのに十分な径を有する筒状体である点、および放熱構造体25aにおいて密着層34の外面とクッション部材31(筒状クッション部材)の外面とが面一となっている点において、第1実施形態に係る放熱構造体25と異なり、それら以外を共通とする。
【0046】
具体的には、この実施形態では、放熱構造体25aは、バッテリー1aの筐体11内において、バッテリーセル20と同じ個数だけ配置されている。また、密着層34付きの熱伝導シート30はクッション部材31の外側面から若干内方に食い込んで、密着層34の外表面とクッション部材31の外表面とが面一となっている。また、熱伝導シート30の表面とクッション部材31との表面とを面一とし、密着層34が外側にわずかに突出していても良い。放熱構造体25aの上にバッテリーセル20を載置したときに、放熱構造体25aは、第1実施形態に係る放熱構造体25と同様、バッテリーセル20の重みで上下方向に圧縮される。
【0047】
(第3実施形態)
次に、第3実施形態に係る放熱構造体および当該放熱構造体を備えるバッテリーについて説明する。前述の各実施形態と共通する部分については同じ符号を付して重複した説明を省略する。
【0048】
図5は、第3実施形態に係る放熱構造体および当該放熱構造体を備えるバッテリーの縦断面図(5A)および当該放熱構造体に冷却部材が流れる状況の斜視図(5B)を、それぞれ示す。
【0049】
この実施形態に係るバッテリー1bは、放熱構造体25bを、第1実施形態に係るバッテリー1に備える水冷パイプ13に代用して、筐体11に備える。すなわち、放熱構造体25bは、その貫通路内に冷却部材(冷却媒体と称しても良い)13を流す冷却管としての機能をも有する。図5(5A)に示すように、筐体11は、好ましくは、底部12の内底面に、放熱構造体25bを嵌め込む凹部を備える。ここでは、1個のバッテリーセル20は、1個の放熱構造体25bと接触するように筐体11内に配置されている。放熱構造体25bを構成するクッション部材31は、バッテリーセル20の重みで貫通路32を閉塞させないのに十分な硬度を有するのが好ましい。
【0050】
図5は、放熱構造体25bの両側に接続する流水用のパイプを省略しているが、放熱構造体25bの端部同士を流水用のパイプで接続すると、1個の放熱構造体25bの端部から冷却水等の冷却部材13を流し、複数の放熱構造体25bを経由する冷却経路を構築できる。また、一個の長い放熱構造体25bを用意して、その放熱構造体25bをスネーク状に往復するように配置することにより、放熱構造体25bの一端から他端に冷却水等の冷却部材を流すこともできる。すなわち、放熱構造体25bを水冷パイプそのものとして使用できる。
【0051】
(第4実施形態)
次に、第4実施形態に係る放熱構造体および当該放熱構造体を備えるバッテリーについて説明する。前述の各実施形態と共通する部分については同じ符号を付して重複した説明を省略する。
【0052】
図6は、第4実施形態に係る放熱構造体および当該放熱構造体を備えるバッテリーの縦断面図および当該放熱構造体に冷却部材が流れる状況の斜視図を示す。
【0053】
この実施形態に係るバッテリー1cは、放熱構造体25cをバッテリーセル20の下端部ではなくバッテリーセル20と筐体11の内部14の内側面との隙間、およびバッテリーセル20同士の隙間に備える。図6では、放熱構造体25cの長さ方向を紙面表裏方向となるようにして複数個配置している。しかし、1個の長い放熱構造体25cをスネーク状に往復するように配置して、上記隙間に配置しても良い。その場合、放熱構造体25cは、上記隙間の数だけで足りる。さらには、1個の長い放熱構造体25cを1つの隙間にスネーク状に配置して、その隣の隙間にてスネーク状に配置するという形式ですべての隙間に配置するようにすれば、放熱構造体25cの数は1個のみで足りる。
【0054】
なお、放熱構造体25cは、図6では、バッテリーセル20の下端部と筐体11の底部12の内底面との間に配置されていないが、配置するようにしても良い。また、放熱構造体25cは、1個のバッテリーセル20の外周を巻くように配置されていても良い。その際に、放熱構造体25cは、バッテリーセル20の外周を巻回してから続いて隣のバッテリーセル20の外周を巻回するようにしても良い。放熱構造体25cは、先に説明した放熱構造体25bと同様、冷却部材15を貫通路32に流して用いられている。しかし、第1実施形態のように筐体11の底部12等に水冷パイプ13を配置し、放熱構造体25cに冷却部材15を流さなくても良い。
【0055】
(第5実施形態)
次に、第5実施形態に係る放熱構造体および当該放熱構造体を備えるバッテリーについて説明する。前述の各実施形態と共通する部分については同じ符号を付して重複した説明を省略する。
【0056】
図7は、第5実施形態に係る放熱構造体および当該放熱構造体を備えるバッテリーの縦断面図を示す。図8は、図7の放熱構造体の製造状況の一部(8A)および当該(8A)の製造方法によって完成した放熱構造体の平面図(8B)をそれぞれ示す。
【0057】
第5実施形態に係るバッテリー1dは、第1実施形態に係るバッテリー1内に配置される放熱構造体25と異なる放熱構造体25dを備え、その他についてはバッテリー1と共通した構造を有する。この実施形態に用いられる放熱構造体25dは、クッション部材31を、筒状クッション部材とせずに、熱伝導シート30の裏側に備えられる帯状のクッション部材であって熱伝導シート30と共にスパイラル状に巻回されているスパイラル状のクッション部材とする。
【0058】
上述のスパイラル状のクッション部材31(「スパイラル状クッション部材」ともいう)を備える放熱構造体25dの製造方法の一例は、次の通りである。
【0059】
まず、略同等の幅を持つ密着層34、熱伝導シート30およびクッション部材31の三層からなる積層体40を製造する。次に、積層体40をスパイラル状(コイル状と称しても良い)に、一方向に進行するように巻回する。こうして、積層体40をスパイラル状に巻回した細長い形状の放熱構造体25dが完成する。なお、密着層34は、最後に熱伝導シート30上に塗布して形成するようにしても良い。
【0060】
放熱構造体25dは、その長さ方向に貫通する貫通路33を備えているが、第1実施形態に係る放熱構造体25と異なり、放熱構造体25dの外側面方向にも貫通している。このため、放熱構造体25dの貫通路33は、冷却水等の冷却部材15を流すのに適してはいない。しかし、放熱構造体25dの形状そのものがスパイラル状であるため、上述の放熱構造体25に比べて、放熱構造体25dの長さ方向(図8(8B)の白矢印方向)に伸縮容易である。
【0061】
放熱構造体25dは、バッテリーセル20と筐体11の底部12との間のみならず、第4実施形態に係るバッテリー1cと同様に、バッテリーセル20と筐体11の内側面との隙間、および/またはバッテリーセル20同士の隙間にも配置可能である。さらに、1本の長い放熱構造体25dを用意して、1個のバッテリーセル20の外周を巻き、あるいは1個のバッテリー20の外周を巻いた後、その隣のバッテリーセル20の外周を巻くというように、複数のバッテリー20を連続して巻回することもできる。
【0062】
(各実施形態の作用・効果)
以上説明したように、放熱構造体25,25a,25b,25c,25d(放熱構造体を総称する場合には、「放熱構造体25等」とも称する。)は、バッテリーセル20からの放熱を高める放熱構造体であって、バッテリーセル20からの熱を伝えるためのスパイラル状に巻回しながら進行する形状の熱伝導シート30と、熱伝導シート30の環状裏面に備えられ、熱伝導シート30に比べてバッテリーセル20の表面形状に合わせて変形容易なクッション部材31とを備え、熱伝導シート30の巻回しながら進行する方向に貫通する貫通路32,33を有する。また、バッテリー1,1a,1b,1c,1d(バッテリーを総称する場合には、「バッテリー1等」とも称する。)は、冷却部材15を流す構造を持つ筐体11内に1または2以上のバッテリーセル20を備えると共に、バッテリーセル20と接するように上記放熱構造体25等を備える。
【0063】
このため、放熱構造体25等は、熱伝導シート30の裏面側に配置されているクッション部材31および貫通路32,33に起因して、バッテリーセル20の種々の形態に順応可能で放熱効率にも優れた構造体となる。また、放熱構造体25等は、貫通路32,33に起因してより軽量になる。
【0064】
また、放熱構造体25等は、熱伝導シート30の環状表面に密着層34をさらに備え、貫通路32,33から径方向外側に向かって、クッション部材31、熱伝導シート30、密着層34の順に構成されている。このため、熱伝導シート30が金属や炭素等の比較的合成の高い材料で構成している場合に、密着層34を介してバッテリーセル20の表面に熱伝導シート30を接するようにすると、バッテリーセル20から熱伝導シート30への熱伝導性をより高めることができる。
【0065】
また、放熱構造体25dにおいて、クッション部材31は、熱伝導シート30の環状裏面に沿ってスパイラル状に巻回しているスパイラル状クッション部材である。バッテリー1dは、放熱構造体25dを、少なくともバッテリー20と冷却部材15との間に配置している。放熱構造体25dは、筐体11の内側面とバッテリーセル20との間および/またはバッテリーセル20同士の間に配置されていても良い。放熱構造体25dは、その全体がスパイラル形状になっているので、バッテリーセル20の種々のサイズに、より適応しやすい。より具体的には、次のとおりである。剛性の高い熱伝導シート30を備える場合でも、低荷重で熱伝導シート30を変形させ、バッテリーセル20の表面に追従・密着させることができる。さらに、部分的に異なる量の変形量であっても、密着追従性が良くなる。また、クッション部材31もスパイラル状に切れているので、1回転ずつのスパイラルが概略独立しているかのような変形を起こすことができる。したがって、放熱構造体25dは、局所的な変形の自由度を高くできる。加えて、放熱構造体25dは、貫通路33のみならず、貫通路33から側面にも貫通するスパイラル状の貫通溝を備えているので、より軽量になる。
【0066】
また、放熱構造体25,25a,25b,25cを構成するクッション部材31は、その長さ方向に貫通路32を有する筒状クッション部材であって、熱伝導シート30は、筒状クッション部材の外側面をスパイラル状に巻回している。バッテリー1,1a,1b,1cは、かかる放熱構造体25,25a,25b,25cをバッテリーセル20に接触させて筐体11に備える。熱伝導シート30は、筒状クッション部材の外側面を部分的に覆っていて、かつスパイラル状に筒状クッション部材の長さ方向に巻回している。バッテリー1,1a,1b,1cは、放熱構造体25,25a,25b,25cを、少なくともバッテリー20と冷却部材15との間に配置している。このため、放熱構造体25,25a,25b,25cは、熱伝導シート30による拘束を受けにくく、バッテリーセル20の表面の凹凸等に追従して変形可能となる。
【0067】
また、バッテリー1,1a,1b,1cでは、クッション部材31は、その長さ方向に貫通路32を有する筒状クッション部材であって、熱伝導シート30は、筒状クッション部材の外側面をスパイラル状に巻回しており、筒状クッション部材は貫通路32に冷却部材15を流すことができるように構成されている。バッテリー1,1a,1b,1cは、放熱構造体25,25a,25b,25cを、バッテリーセル20と筐体11との間、および/またはバッテリーセル20同士の間に配置している。このため、放熱構造体25,25a,25b,25cは、水冷パイプ(冷却パイプとも称する)としての機能を併せ持つため、バッテリー1,1a,1b,1cの筐体11に水冷パイプ13を備えなくとも良い。このことは、バッテリー1,1a,1b,1cのさらなる軽量化にも寄与する。
【0068】
(その他の実施形態)
上述のように、本発明の好適な各実施形態について説明したが、本発明は、これらに限定されることなく、種々変形して実施可能である。
【0069】
例えば、熱源は、バッテリーセル20のみならず、回路基板や電子機器本体などの熱を発する対象物を全て含む。例えば、熱源は、キャパシタおよびICチップ等の電子部品であっても良い。同様に、冷却部材15は、冷却用の水のみならず、有機溶剤、液体窒素、冷却用の気体であっても良い。また、放熱構造体25等は、バッテリー1等以外の構造物、例えば、電子機器、家電、発電装置等に配置されていても良い。
【0070】
また、放熱構造体25dにおけるスパイラル状のクッション部材31は、熱伝導シート30の幅と同一に限定されず、熱伝導シート30の幅に対して大きくても、あるいは小さくても良い。放熱構造体25bは、底部12に嵌め込み若しくは埋設される形態に限定されず、底部12の内底面上に配置され、あるいは筐体11の内側面に嵌め込み、埋設等の形態で配置されていても良い。密着層34は、熱伝導シート30の表側の面の全面ではなく、バッテリーセル20等の熱源との接触領域のみに形成しても良い。例えば、熱伝導シート30と筐体11の底部12との間に密着層34を備えず、熱伝導シート30とバッテリーセル20との接触領域に密着層34を備えるようにできる。
【0071】
また、上述の各実施形態の複数の構成要素は、互いに組み合わせ不可能な場合を除いて、自由に組み合わせ可能である。例えば、第5実施形態に係る放熱構造体25dを、第3実施形態に係る放熱構造体25bに代えて配置しても良い。その場合、冷却部材15は、筐体11の底部12や側壁に別途流す必要がある。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明に係る放熱構造体は、例えば、自動車用バッテリーの他、自動車、工業用ロボット、発電装置、PC、家庭用電化製品などの各種電子機器にも利用することができる。また、本発明に係るバッテリーは、自動車用のバッテリー以外に、家庭用の充放電可能なバッテリー、PC等の電子機器用のバッテリーにも利用できる。
【符号の説明】
【0073】
1,1a,1b,1c,1d・・・バッテリー、11・・・筐体、15・・・冷却部材、20・・・バッテリーセル(熱源の一例)、25,25a,25b,25c,25d・・・放熱構造体、30・・・熱伝導シート、31・・・クッション部材、32,33・・・貫通路、34・・・密着層。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9