特許第6871184号(P6871184)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6871184
(24)【登録日】2021年4月19日
(45)【発行日】2021年5月12日
(54)【発明の名称】半導体発光装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 33/48 20100101AFI20210426BHJP
   H01L 23/02 20060101ALI20210426BHJP
   H01L 23/08 20060101ALI20210426BHJP
【FI】
   H01L33/48
   H01L23/02 C
   H01L23/02 F
   H01L23/08 B
   H01L23/08 C
【請求項の数】2
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2018-15853(P2018-15853)
(22)【出願日】2018年1月31日
(65)【公開番号】特開2019-134094(P2019-134094A)
(43)【公開日】2019年8月8日
【審査請求日】2018年10月10日
【審判番号】不服2020-7261(P2020-7261/J1)
【審判請求日】2020年5月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000226242
【氏名又は名称】日機装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002583
【氏名又は名称】特許業務法人平田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】一ノ倉 啓慈
(72)【発明者】
【氏名】新関 彰一
【合議体】
【審判長】 山村 浩
【審判官】 吉野 三寛
【審判官】 近藤 幸浩
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−18873(JP,A)
【文献】 特開2002−75775(JP,A)
【文献】 特開2007−321191(JP,A)
【文献】 特開2016−4913(JP,A)
【文献】 特開2017−59716(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 33/48-33/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の熱膨張係数を有するセラミックを含む無機材質基板に半導体発光素子を搭載する第1のステップと、
前記第1の熱膨張係数よりも小さい第2の熱膨張係数を有する石英ガラスを含むガラス蓋を前記無機材質基板に搭載された前記半導体発光素子に被せる第2のステップと、
前記ガラス蓋を前記無機材質基板にAuSn共晶半田によって接合する第3のステップと、を含み、
前記AuSn共晶半田は、前記第1及び第2の熱膨張係数の差に基づいて発生する残留応力を解放する特性を有すると共に、160℃から210℃の温度で所定の時間にわたって熱処理を受けたAuSn共晶半田であり、20重量%のSnを含む、
半導体発光装置の製造方法。
【請求項2】
前記AuSn共晶半田は、200℃で12時間にわたって熱処理を受けたAuSn共晶半田である、
請求項1に記載の半導体発光装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体発光装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、紫外線を発光する半導体発光素子と、この半導体発光素子を収容するパッケージを含む半導体発光装置が提供されている。特に波長300nm以下の深紫外線を発光する半導体発光素子を有する半導体発光装置では、半導体発光素子を石英などのガラスで封止するガラス封止パッケージが用いられている(特許文献1参照。)。
【0003】
特許文献1に記載の半導体発光装置は、パッケージ基板上にLED素子を実装し、該LED素子に蛍光物質を混入したガラス蓋を被せ、前記LED素子の発光を波長変換して出射する半導体発光装置であって、前記パッケージ基板はセラミック等の無機材質基板であり、該無機材質基板上に前記LED素子をフリップチップ実装し、前記LED素子を蛍光物質を混入したガラス蓋で封止した構成を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012−69977号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載の半導体発光装置によれば、ガラス蓋を石英ガラスで形成すると、その熱膨張係数が、セラミック等から形成される無機材質基板の熱膨張係数よりも1桁程度小さいため、ガラス蓋を被せてLED素子を封止した後、ある時間が経過すると、前記熱膨張係数差による残留応力が前記ガラス蓋と前記無機材質基板との間に作用して前記ガラス蓋が前記無機材質基板から剥がれてしまうことがあった。
【0006】
そこで、本発明は、前記ガラス蓋が前記無機材質基板から剥がれるのを抑制するため、前記ガラス蓋と前記無機材質基板との間に作用する両者の熱膨張係数差による残留応力を解放する接合部材によって、LED素子を封止するガラス蓋とLED素子を搭載した無機材質基板とを接合するようにした半導体発光装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決することを目的として、第1の熱膨張係数を有するセラミックを含む無機材質基板に半導体発光素子を搭載する第1のステップと、前記第1の熱膨張係数よりも小さい第2の熱膨張係数を有する石英ガラスを含むガラス蓋を前記無機材質基板に搭載された前記半導体発光素子に被せる第2のステップと、前記ガラス蓋を前記無機材質基板にAuSn共晶半田によって接合する第3のステップと、を含み、前記AuSn共晶半田は、前記第1及び第2の熱膨張係数の差に基づいて発生する残留応力を解放する特性を有すると共に、160℃から210℃の温度で所定の時間にわたって熱処理を受けたAuSn共晶半田であり、20重量%のSnを含む、半導体発光装置の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の半導体発光装置及びその製造方法によれば、LED素子を封止するガラス蓋が前記LED素子を搭載した無機材質基板から剥がれるのを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本発明の一実施の形態に係る半導体発光装置の構成を説明する分解図である。
図2図2は、半導体発光素子の積層構造の一例を概略的に示す説明図ある。
図3図3は、実装基板への半導体発光装置の実装の一例を示す説明図である。
図4図4は、図3に示す半導体発光装置の実装から一部を抜き出して説明する説明図である。
図5図5は、実験の手順を示すフローチャートである。
図6図6は、蓋部材の剥がれを目視確認した結果を示すグラフ図である。
図7図7は、温度とAuSn接合部材の線膨張係数との関係を示す図である。
図8図8は、温度とAuSn接合部材の体積膨張係数との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[実施の形態]
本発明の実施の形態について、図1を参照して説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、本発明を実施する上での好適な具体例として示すものであり、技術的に好ましい種々の技術的事項を具体的に例示している部分もあるが、本発明の技術的範囲は、この具体的態様に限定されるものではない。
【0011】
図1は、本発明の一実施の形態に係る半導体発光装置の構成を説明する分解図である。図1に示すように、半導体発光装置1は、紫外線等の所定の波長域の光を発光する半導体発光素子2と、電流の値によらずに電圧の値が一定となる定電圧素子4と、これら半導体発光素子2及び定電圧素子4を収容するパッケージ3とを備えて構成されている。
【0012】
半導体発光素子2には、例えば、トランジスタ、レーザダイオード(Laser Diode:LD)、発光ダイオード(Light Emitting Diode:LED)等が含まれる。本実施の形態では、半導体発光素子2として、紫外領域の波長の光(特に、中心波長が300nm以下の深紫外光)を発する発光ダイオードを例に挙げて説明する。半導体発光素子2の詳細については後述する。定電圧素子4には、例えば、ツェナーダイオードを用いることができる。
【0013】
(パッケージ3)
パッケージ3は、下地部を構成するパッケージ基板31と、このパッケージ基板31と接合する蓋部材32と、パッケージ基板31及び蓋部材32を互いに接合するAuSn接合部材33と、蓋部材32の下面とAuSn接合部材33との間に挿入されたシーリング部材34と、半導体発光素子2をパッケージ基板31に搭載する搭載部材35とを有して構成されている。AuSn接合部材33は、接合部材の一例である。
【0014】
パッケージ基板31は、半導体発光素子2を搭載する。パッケージ基板31は、略直方体形状に形成されると共に、その上面に半導体発光素子2を搭載する凹部31aが形成されている。パッケージ基板31は、セラミックを含む無機材質基板である。具体的には、パッケージ基板31は、例えば、高温焼成セラミック多層基板(HTCC、High Temperature Co-fired Ceramic)により形成される。パッケージ基板31は、基板の一例である。
【0015】
蓋部材32は、パッケージ基板31の凹部31aを覆うように配置される。蓋部材32は、例えば、石英ガラスを含むガラス蓋である。蓋部材32の下面の縁部32aと、パッケージ基板31の上面の縁部31bとがAuSn接合部材33による半田付けにより面接触することにより、蓋部材32とパッケージ基板31とが接合して一体化し、蓋部材32及びパッケージ基板31で形成される内部空間を外部から気密に封止する。また、石英ガラスには、後述するAuSn半田プリフォームを仮付けする積層のメタライズ膜(不図示、以下、「積層メタライズ」ともいう。)が形成されている。一例として、積層メタライズは、1辺が約3.0mmの略正方形状の外形を有する。
【0016】
AuSn接合部材32は、蓋部材32を半導体発光素子2に被せて蓋部材32をパッケージ基板31に接合して半導体発光素子2を封止する。具体的には、AuSn接合部材33は、パッケージ基板31及び蓋部材32を半田付けにより接合する。AuSn接合部材33は、例えば、金(Au)と錫(Sn)とを主成分として含む合金であり、半田付けに利用される半田プリフォームを構成する。より具体的には、AuSn接合部材は、例えば、20重量%のSnを含むAuSn半田プリフォームである。一例として、AuSn半田プリフォームは、1辺が約3.0mmの略正方形状の外形を有する。
【0017】
また、AuSn接合部材33は、後述するように、パッケージ基板31と蓋部材32との熱膨張係数差に基づく残留応力を解放する接合部材である。以下、説明の便宜上、パッケージ基板31の熱膨張係数は、「第1の熱膨張係数」ともいう。また、蓋部材32の熱膨張係数は、「第2の熱膨張係数」ともいう。第2の熱膨張係数は、第1の熱膨張係数よりも約1桁程度小さい。
【0018】
シーリング部材34は、蓋部材32の下面とAuSn接合部材33との間に設けられた充填材である。
【0019】
搭載部材35には、例えば、スタッドバンプを用いることができる。半田付けやリードピンを用いてもよい。半導体発光素子2は、搭載部材35により、凹部31aの底面に搭載される。
【0020】
(半導体発光素子2)
図2は、図1に示す半導体発光装置1に含まれる半導体発光素子2の積層構造の一例を概略的に示す説明図である。図2に示すように、本実施の形態に係る半導体発光素子2は、透明基板21と、透明基板21上に形成されたAlGaN系の窒化物半導体層22と、電極23と、を有している。
【0021】
本実施の形態では、窒化物半導体層22は、透明基板21側から、AlNを含むバッファ層22a、n型AlGaNを含むnクラッド層22b、AlGaNを含む発光層22c、p型AlGaNを含むpクラッド層22d、p型GaNを含むコンタクト層22eを順次形成して構成されている。電極23は、コンタクト層22e上に形成されたアノード側電極部(p電極)23aと、nクラッド層22b上に形成されたカソード側電極部(n電極)23bと、を有している。なお、図2における各構成要素の寸法比は、必ずしも実際の半導体発光素子の寸法比と一致するものではない。
【0022】
(半導体発光装置1の実装基板への実装)
図3は、実装基板への半導体発光装置1の実装の一例を示す説明図である。図3に示すように、実装基板5上に、8行(図3の図示縦方向)及び15列(図3の図示横方向)の合計120個の半導体発光装置1が実装されている。互いに隣接する半導体発光装置1の間隔は、約1mmに調整されている。8行や15列(120個)は一例であり、実装基板5に実装される半導体発光装置1の数は、8行15列(120個)に限定されるものではない。実装基板5は、例えば、銅(Cu)を主成分として含んで構成されている。
【0023】
図4を参照して、実装基板5への半導体発光装置1の実装の詳細について説明する。図4は、図3に示す半導体発光装置1の実装から一部を抜き出して説明する説明図である。図4に示すように、半導体発光装置1は、それぞれ、例えば、鉛を含まない鉛フリー半田6により実装基板5上に半田付けにより固定される。鉛フリー半田6には、例えば、錫(Sn)、銀(Ag)及び銅(Cu)を主成分として含む錫−銀−銅半田プリフォームを用いることができる。
【0024】
半導体発光装置1、すなわち、半導体発光素子2を収容した状態のパッケージ3には、実装基板5への実装の前に、所定の時間にわたってアニール処理が施される。アニール処理とは、高温で放置する工程をいう。所定の時間は、好ましくは、12時間である。アニール処理は、熱処理の一例である。
【0025】
(実装の実験)
発明者らは、本実施の形態において、半導体発光装置1にアニール処理が施された場合、石英ガラスで形成された蓋部材32がパッケージ基板31から剥がれにくくなることを調べることを目的として、上述した実装において石英ガラスで形成された蓋部材32がパッケージ基板31から剥がれるか否かを調べる実験を行った。
【0026】
<実験1>
まず、発明者らは、半導体発光装置1にアニール処理を施して、実装基板5に半導体発光装置1を実装して、蓋部材32がパッケージ基板31から剥がれるか否かを調べた。図5を参照して実験の詳細を説明する。図5は、実験の手順を示すフローチャートである。まず、発明者らは、120個の半導体発光装置1を準備した(S1)。なお、実験1は、後述する実験2の予備試験ともいうべきものであり、実験2と比較して、蓋部材32がパッケージ基板31から剥がれ易い状態の半導体発光装置1を準備した。
【0027】
ここで、蓋部材32がパッケージ基板31から剥がれ易くするために、以下の構成を採用した。つまり、積層メタライズ膜のメタライズパターンの外形寸法をAuSu半田プリフォームの外形寸法(1辺約3.0mmの略正方形)よりも小さくすることで、パッケージ基板31の接合強度を所定の接合強度よりも小さくした。具体的には、蓋部材32の石英ガラスに形成されている積層メタライズ膜として、AuSu半田接続用の第1の積層メタライズ膜と、この第1の積層メタライズ膜の外形寸法と等しい寸法を有する、セラミックパケージの半田接続用の第2の積層メタライズ膜(不図示)を組み合わせたものを用いた。そして、無荷重の状態で、AuSu半田プリフォームを溶融して蓋部材32とパッケージ基板31とを接合した。第2の積層メタライズ膜は、焼成により縮小する性質を有している。そのため、第2のメタライズ膜が組み合わせられた積層メタライズ膜を用いて、接合時に積層メタライズ膜の外形寸法を縮小させることにより、パッケージ基板31の接合強度は、所定の接合強度よりも小さくできる。
【0028】
次に、これら半導体発光装置1に対して、160度、180度、200度及び220度の条件で12時間、空気雰囲気下でアニール処理を実施した(S2)。次に、鉛フリー半田6を使用して実装基板5に半導体発光装置1を実装した(S3)。次に、半導体発光装置1に対して−40度〜85度の範囲で温度の変化を繰り返す温度サイクル試験を1000サイクル実施した(S4)。次に、パッケージ基板31からの蓋部材32(石英ガラス)の剥がれを目視により確認した(S5)。なお、温度を示す場合、「度」は、摂氏(℃)を示す。
【0029】
図6は、蓋部材の剥がれを目視確認した結果を示すグラフ図である。図6の横軸は、アニール処理を実施した温度(度)(以下、「アニール温度」ともいう。)を示し、縦軸は、蓋部材32が剥がれている半導体発光装置1の個数(以下、「剥がれの個数」ともいう。)を示す。
【0030】
図7は、温度とAuSn接合部材の線膨張係数との関係を示す図である。図8は、温度とAuSn接合部材の体積膨張係数との関係を示す図である。なお、図7及び図8は、Microelectronics Reliability 52 (2012) 1306-1322から抜粋して引用したものであり、それぞれ当該文献に記載のFig.9(図9)のa及びbに対応する。また、図7及び図8には、当該文献のFig.9(図9)のa及びbからこの明細書に用いない情報を削除するとともに、英語表記の内容を日本語に翻訳する加工を施した。
【0031】
図6に示すように、剥がれの個数は、アニール温度が200度のときに、最小となった。ここで使用されるAuSn接合部材33は、Sn重量百分率が20%(以下、単に「Au−20%Sn」ともいう。)で残部がAuの共晶合金半田であ図6では、石英ガラスで形成された蓋部材32とセラミックで形成されたパッケージ基板31とをAuSn接合部材33で接合した後、図7に示すAuSn接合部材33の温度対線膨張係数の極小点、及び図8に示すAuSn接合部材33の温度対体積膨張率の不連続点である200度で12時間アニール処理をしたものが、AuSn接合部材33が蓋部材32及びパッケージ基板31の熱膨張係数差により生じる残留応力を十分に解放して蓋部材32の剥がれを最も抑制することができることを確認した。前記した残留応力の解放のメカニズムについては、現在検討中であるが、いまのところ不明である。
【0032】
図6より明らかなように、アニール温度は、前記した200度において、最も残留応力が解放されることが確認できたが、160度から210度の範囲であっても、所定の効果を奏することができることを確認できた。なお、AuSn接合部材33は、他の共晶半田部材に替えることができる。
【0033】
<実験2>
次に、発明者らは、別の120個の半導体発光装置1に対して上述した実験1と同様の手順(ステップS1〜S5)で実験を行った。実験2では、実験1と比較して蓋部材32とパッケージ基板31とを所定の強度で接合した半導体発光装置1を準備した。なお、ステップS2において、アニール処理は、残留応力の解放に最も効果的であった200度で実施した。また、ステップS4において、温度サイクル試験の回数は、2000サイクルとした。
【0034】
この結果、前記温度サイクル後において、パッケージ基板31から蓋部材32(石英ガラス)が剥がれた半導体発光装置1が1つもなかったことを確認した。
【0035】
<実験3(比較例)>
次に、発明者らは、比較例として、半導体発光装置1にアニール処理を施さずに、実装基板5に半導体発光装置1を実装した例で、蓋部材32がパッケージ基板31から剥がれるか否かを調べた。具体的には、上述したステップにおいて、ステップ2、ステップ5及びステップ6を除く手順で実験を実施した。すなわち、半導体発光装置1を準備し(S1)、実装基板5に半導体発光装置1を実装し(S3)、半導体発光装置1に温度サイクル試験を1000サイクル実施し(S4)、蓋部材32(石英ガラス)の剥がれを目視により確認した(S5)。
【0036】
その結果、半導体発光装置1が実装された状態で実装基板5を室温(例えば、25度)で14日保管したとき、全120個の約13%に相当する16個の半導体発光装置1において、蓋部材32がパッケージ基板31から剥がれた。また、さらに実装基板5を室温で継続して保管したとき(例えば、約6ヵ月程度)、全数に当たる120個の半導体発光装置1において、蓋部材32がパッケージ基板31から剥がれた。
【0037】
(実施の形態の作用及び効果)
以上説明したように、本発明の実施の形態に係る半導体発光装置1は、半導体発光素子2と、半導体発光素子2を収容するパッケージ3とを備え、パッケージ3は、半導体発光素子2を搭載するパッケージ基板31と、ガラスで形成された蓋部材32と、パッケージ基板31及び蓋部材32を接合する接合部材とを備え、接合部材は、パッケージ基板31蓋部材32との熱膨張係数差に基づく残留応力を解放する接合部材である。この結果、蓋部材32及びパッケージ基板31の熱膨張係数差により生じる残留応力が解放されて、蓋部材32がパッケージ基板31から剥がれることを抑制することが可能となる。
【0038】
(実施形態のまとめ)
次に、以上説明した実施の形態から把握される技術思想について、実施の形態における符号等を援用して記載する。ただし、以下の記載における各符号等は、特許請求の範囲における構成要素を実施の形態に具体的に示した部材等に限定するものではない。
【0039】
[1]第1の熱膨張係数を有し、半導体発光素子(2)を搭載した基板と、前記第1の熱膨張係数よりも小さい第2の熱膨張係数を有し、前記半導体発光素子(2)に被せられる蓋部材(32)と、前記蓋部材(32)を前記半導体発光素子(2)に被せて前記蓋部材(32)を前記基板に接合して前記半導体発光素子(2)を封止する接合部材と、を含み、前記接合部材は、共晶合金半田よりなる、半導体発光装置(1)。
[2]前記基板は、セラミックを含む無機材質基板であり、前記蓋部材(32)は、石英ガラスを含むガラス蓋であり、前記共晶合金半田は、AuSn半田である、前記[1]に記載の半導体発光装置(1)。
[3]前記AuSn半田は、20重量%のSnを含む、前記[2]に記載の半導体発光装置(1)。
[4]前記AuSn半田を160℃から210℃の温度で所定の時間にわたって熱処理する、前記[2]又は[3]に記載の半導体発光装置(1)の製造方法。
[5]前記AuSn半田を200℃で12時間にわたって熱処理する、前記[4]に記載の半導体発光装置(1)の製造方法。
【符号の説明】
【0040】
1…半導体発光装置
2…半導体発光素子
20…バッファ層
21…透明基板
22…窒化物半導体層
22a…バッファ層
22b…nクラッド層
22c…発光層
22d…pクラッド層
22e…コンタクト層
23…電極
23a…アノード側電極部(p電極)
23b…カソード側電極部(n電極)
3…パッケージ
31…パッケージ基板
32…蓋部材
33…AuSn接合部材
34…シーリング部材
35…搭載部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8