特許第6871190号(P6871190)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6871190
(24)【登録日】2021年4月19日
(45)【発行日】2021年5月12日
(54)【発明の名称】半導体装置および半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/822 20060101AFI20210426BHJP
   H01L 27/04 20060101ALI20210426BHJP
   H01L 21/316 20060101ALI20210426BHJP
【FI】
   H01L27/04 C
   H01L21/316 X
【請求項の数】6
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2018-48060(P2018-48060)
(22)【出願日】2018年3月15日
(65)【公開番号】特開2019-161096(P2019-161096A)
(43)【公開日】2019年9月19日
【審査請求日】2020年3月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108062
【弁理士】
【氏名又は名称】日向寺 雅彦
(74)【代理人】
【識別番号】100168332
【弁理士】
【氏名又は名称】小崎 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100146592
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100157901
【弁理士】
【氏名又は名称】白井 達哲
(74)【代理人】
【識別番号】100172188
【弁理士】
【氏名又は名称】内田 敬人
(72)【発明者】
【氏名】松下 景一
【審査官】 市川 武宜
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−166563(JP,A)
【文献】 特開2004−266010(JP,A)
【文献】 特開2001−044365(JP,A)
【文献】 特開2008−010881(JP,A)
【文献】 特開平09−260372(JP,A)
【文献】 特開2006−173595(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/822
H01L 21/316
H01L 27/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板上に設けられた第1電極と、
前記第1電極上に設けられ、窒化シリコンの結晶を含む第1絶縁膜と、
前記第1絶縁膜上に設けられ、酸化物を含む第2絶縁膜と、
前記第2絶縁膜上に設けられた第2電極と、
を含むMIMキャパシタ
を備えた半導体装置。
【請求項2】
前記第1絶縁膜は、1.6よりも大きく、1.85よりも小さい屈折率を有する請求項1記載の半導体装置。
【請求項3】
前記MIMキャパシタは、
前記第1電極上に設けられた第3絶縁膜をさらに含む
請求項1または2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記半導体基板は、窒化ガリウムを含む請求項1〜3のいずれか1つに記載の半導体装置。
【請求項5】
前記半導体基板に設けられたトランジスタと外部回路との間に設けられた整合回路をさらに備え、
前記整合回路は、前記MIMキャパシタを含む請求項4記載の半導体装置。
【請求項6】
半導体基板上に第1電極を形成し、
前記第1電極上に、窒化シリコンを含む第1絶縁膜を形成し、
前記第1絶縁膜中の窒化シリコンを熱処理して窒化シリコンを微結晶化し
前記第1絶縁膜上に、酸化物を含む第2絶縁膜を形成し、
前記第2絶縁膜上に第2電極を形成する
MIMキャパシタを含む半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、半導体装置および半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
マイクロ波モノリシックIC(Monolithic Microwave Integrated Circuit、MMIC)の出力向上の試みがなされている。このようなMMICでは、キャパシタを含むすべての素子の高耐圧化が必要となる。
【0003】
MMICでは、絶縁膜として、窒化シリコン(Si)を用いたMIMキャパシタが用いられることがある。このようなMIMキャパシタを高電圧で用いると、寿命が短くなることが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5334199号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
実施形態は、MIMキャパシタを長寿命化した半導体装置および半導体装置の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態に係る半導体装置は、半導体基板上に設けられた第1電極と、前記第1電極上に設けられ、窒化シリコンの結晶を含む第1絶縁膜と、前記第1絶縁膜上に設けられ、酸化物を含む第2絶縁膜と、前記第2絶縁膜上に設けられた第2電極と、を含むMIMキャパシタを備える。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施形態に係る半導体装置を例示する断面図である。
図2図1の半導体装置の製造工程を例示するフローチャートである。
図3】変形例を例示する断面図である。
図4】比較例の半導体装置を例示する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施形態について説明する。
なお、図面は模式的または概念的なものであり、各部分の厚みと幅との関係、部分間の大きさの比率などは、必ずしも現実のものと同一とは限らない。また、同じ部分を表す場合であっても、図面により互いの寸法や比率が異なって表される場合もある。
なお、本願明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には、同一の符号を付して詳細な説明を適宜省略する。
【0009】
図1は、本実施形態に係る半導体装置を例示する断面図である。
図1に示すように、本実施形態の半導体装置10は、MIMキャパシタ20を備える。「MIM」とは、Metal Insulator Metalの略称であり、金属電極間に絶縁膜が設けられた構造を表している。つまり、MIMキャパシタとは、金属電極間に絶縁膜が設けられた構造を有する静電容量素子である。この例では、半導体装置10は、MMIC(Monolithic Microwave Integrated Circuit)である。MIMキャパシタ20は、半導体基板11上に設けられている。MIMキャパシタ20は、この例では、エアブリッジ配線13および配線14によって、半導体基板11に設けられている図示しない他の回路素子に電気的に接続されている。
【0010】
半導体基板11は、たとえば、Si、GaN、GaAs等の半導体材料で形成されている。半導体装置10を広い電圧範囲にわたって動作させるために、半導体基板11は、好ましくはGaNを含む。
【0011】
MIMキャパシタ20は、下部電極21と、第1絶縁膜22と、第2絶縁膜23と、上部電極24と、を含む。下部電極(第1電極)21は、半導体基板11上に設けられている。第1絶縁膜22は、下部電極21上に設けられている。第2絶縁膜23は、第1絶縁膜22上に設けられている。上部電極(第2電極)24は、第2絶縁膜23上に設けられている。下部電極21、第1絶縁膜22、第2絶縁膜23および上部電極24は、半導体基板11側からこの順に積層されている。
【0012】
下部電極21は、金属の膜が積層されてなる。下部電極21は、たとえば、Au、Pt、Tiをこの順に積層することによって構成されている。下部電極21は、たとえば600nm〜1μm程度の厚さを有する。
【0013】
第1絶縁膜22は、下部電極21を覆うように設けられている。第1絶縁膜22は、Si(以下では、単にSiNと表記する)膜である。第1絶縁膜22は、半導体基板11上にも設けられている。
【0014】
第1絶縁膜22には、半導体装置10の動作電圧に応じた電圧が印加され得る。第1絶縁膜22の厚さは、印加される電圧を考慮して決定される。第1絶縁膜22の厚さは、たとえば100nm〜300nm程度である。
【0015】
第1絶縁膜22は、熱処理することによって、微小な単結晶が生成、すなわち微結晶化されている。SiNである第1絶縁膜22は、微結晶化することによって、高電圧印加時に長寿命化が可能になる。ここで、第1絶縁膜22の寿命とは、経時的絶縁破壊TDDB(Time Dependent Dielectric Breakdown)によって表される時間である。
【0016】
第1絶縁膜22は、微結晶を含むことから、熱処理前よりも屈折率が小さい。熱処理後の屈折率は、1.6よりも大きく、1.85よりも小さい。なお、熱処理前のSiN膜は、アモルファス状態であり、その屈折率は、たとえば2程度である。屈折率は、たとえば、分光エリプソメトリー法等を用いて測定される。
【0017】
第1絶縁膜22は、熱処理で微結晶化されることによって、結晶粒界がリーク電流の経路となるため、リーク電流が増大する。
【0018】
なお、第1絶縁膜22は、熱処理によらず微結晶化されて、屈折率が1.6よりも大きく、1.85よりも小さくなったものであってもよい。
【0019】
第2絶縁膜23は、第1絶縁膜22を覆うように設けられている。第2絶縁膜23は、SiOやAl等の膜である。第2絶縁膜23は、熱処理されたSiNからなる第1絶縁膜22のリーク電流を阻止するために設けられる。したがって、好ましくは、第2絶縁膜23は、第1絶縁膜22をすべて覆うように設けられる。
【0020】
SiO等の酸化膜は、SiN膜よりも誘電率が低い。そのため、第2絶縁膜23の厚さは、MIMキャパシタ20の静電容量値を確保する観点から、動作電圧に応じて可能な限り薄く設定することが好ましい。
【0021】
上部電極24は、第2絶縁膜23上に設けられている。上部電極24は、平面視で下部電極21の位置に対応する位置に設けられている。上部電極24の面積は、下部電極21の面積よりも小さく設定されている。上部電極24は、金属の積層膜であり、たとえば、Ti、Pt、Auの膜がこの順で積層されている。上部電極24の厚さは、たとえば600nm〜1μm程度とされる。
【0022】
下部電極21には、配線14が接続されている。第1絶縁膜22には、下部電極21上の一部において開口部15が設けられており、配線14は、開口部15によって露出された下部電極21に接続されるように第1絶縁膜22上に設けられている。配線14は、たとえばAuである。
【0023】
上部電極24には、エアブリッジ配線13が接続されている。エアブリッジ配線13は、たとえばAuである。
【0024】
本実施形態の半導体装置の製造方法について説明する。
図2は、図1の半導体装置の製造工程を例示するフローチャートである。
図2に示すように、工程S1において、半導体基板11上に下部電極21用の金属膜が形成される。フォトレジストによるエッチング工程等を経て、所望の形状の下部電極21が形成される。
【0025】
工程S2において、たとえばプラズマCVD(Plasma-Enhanced Chemical Vapor Deposition、PECVD)法を用いて、第1絶縁膜22となるSiN膜を、下部電極21を含む半導体基板11上に、所望の膜厚で形成する。この場合のプラズマCVD形成温度は、300℃程度である。
【0026】
工程S3において、PECVD法によって形成されたSiN膜に対して、熱処理を行う。熱処理は、PECVD形成温度以上の温度で数分間にわたって行われる。熱処理温度は、たとえば400℃〜900℃程度である。
【0027】
工程S4において、PECVD法を用いて、第2絶縁膜23となるSiO膜を、熱処理されたSiN膜上に、所望の膜厚で形成する。
【0028】
工程S5において、第1絶縁膜22および第2絶縁膜23の一部に開口部15を形成し、下部電極21の一部を露出させる。
【0029】
工程S6において、第2絶縁膜23上に上部電極24を形成する。また、開口部15から露出された下部電極21に接続されるように、配線14を形成する。上部電極24と配線14とは、同時に形成されてもよいし、別工程において形成されてもよい。
その後、エアブリッジ配線13を上部電極24上に形成する。
【0030】
上述の製造工程は一例であり、一部の工程が入れ替わったり、他の工程に置き換えたりしてもよい。たとえば、上述の工程S4において、PECVD法に代えて、熱酸化法を用いることもできる。熱酸化法を用いる場合には、直前のSiN膜の熱処理工程を省略することができる。
【0031】
(変形例)
図3は、本変形例の半導体装置を例示する断面図である。
図3に示すように、本変形例の半導体装置110のMIMキャパシタ120は、第3絶縁膜25をさらに含む。第3絶縁膜25は、第2絶縁膜23上に設けられている。第3絶縁膜25上には、上部電極24が設けられている。つまり、第3電極25は、上部電極24と第2絶縁膜23との間に設けられている。第3絶縁膜25は、たとえば熱処理しないSiN膜である。第3絶縁膜25は、SiNに限らず、SiO等の酸化膜等であってもよいし、他の絶縁膜であってもよい。
【0032】
本実施形態の半導体装置10,110の効果について、比較例の半導体装置と比較しつつ、説明する。
図4は、比較例の半導体装置を例示する断面図である。
図4に示すように、比較例の半導体装置210は、MIMキャパシタ220を有する。このMIMキャパシタ220は、下部電極21と、熱処理しないSiNからなる絶縁膜222と、上部電極24と、を含む。絶縁膜222は、他の絶縁膜を介さずに、下部電極21と上部電極24との間に設けられている。
【0033】
SiN膜はMIMキャパシタの絶縁膜のみならず、トランジスタの電極や半導体表面を保護するためのパッシベーション膜と共用できる。そのため、MIMキャパシタの絶縁膜形成工程とパッシベーション膜形成工程とを共通化することができ、工程数を減らすことができる。そのため、SiN膜は、一般的に使用されている。
【0034】
SiN膜は、PECVD法を用いて形成される。PECVD法で形成したSiN膜は、寿命TDDBが短いことが知られている。比較例の半導体装置210のように、半導体基板11にGaNのようなワイドバンドギャップ半導体材料を用いてMMICを高耐圧化することができるが、熱処理しないSiN膜を用いたMIMキャパシタ220では、MIMキャパシタ220を整合回路等に用いることが困難である。
【0035】
一方、本実施形態およびその変形例の半導体装置10,110では、製造工程の項で詳述したように、PECVD形成温度(約300℃)以上の温度、たとえば400℃〜900℃で、数分間の熱処理をしている。この熱処理によって、SiN膜は、微結晶化され、高密度化されるため、MIMキャパシタ120の破壊寿命TDDBを長くすることができる。
【0036】
ところで、熱処理したSiN膜を用いたMIMキャパシタ20,120は、破壊寿命TDDBが長くなる一方で、膜中のSiNの結晶の境界を流れる電流が増加する。これにより、MIMキャパシタ20,120のリーク電流が増加する。
【0037】
本実施形態およびその変形例の半導体装置10,110では、上部電極24と熱処理されたSiNを含む第1絶縁膜22との間に、第2絶縁膜23を有している。第2絶縁膜23は、たとえば酸化膜であり、リーク電流を小さくすることができる。つまり、第2絶縁膜23は、第1絶縁膜22のリーク電流を阻止することができる。
【0038】
第1絶縁膜22であるSiNの熱処理プロセスは、標準的なプロセスであり、適用が容易であり。また、加熱に要する時間も数分と短時間であり、スループットへの影響が非常に小さい。また、第3絶縁膜23は、SiOやAl等の標準的な酸化膜形成プロセスを用いて形成することができる。したがって、少ない工程の追加で半導体装置10,110を製造することができる。
【0039】
実施形態の半導体装置10は、電源電圧を供給されて動作する。半導体基板11をGaNとすることによって、電源電圧を、たとえば20V〜50Vとすることができる。
【0040】
MMICである実施形態の半導体装置10では、20V〜50Vで動作するトランジスタの入力や出力と他の回路や外部回路との間に、整合回路としてMIMキャパシタ20を用いる場合がある。したがって、MIMキャパシタ20には、20V〜50Vの電圧が印加され得る。
【0041】
本実施形態の半導体装置10は、MIMキャパシタ20を有しており、このMIMキャパシタ20は、上述したとおり熱処理したSiN膜である第1絶縁膜22を含んでいる。リーク電流防止のため、第1絶縁膜22上には第2絶縁膜23が設けられているので、高電圧で動作するトランジスタ等の入出力に接続された整合回路に用いられても、十分な特性を有し、寿命TDDBを確保することができる。
【0042】
以上説明した実施形態によれば、MIMキャパシタを長寿命化した半導体装置および半導体装置の製造方法を実現することができる。
【0043】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他のさまざまな形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明およびその等価物の範囲に含まれる。また、前述の各実施形態は、相互に組み合わせて実施することができる。
【符号の説明】
【0044】
10,110 半導体装置、11 半導体基板、12 エアブリッジ配線、14 配線、15 開口部、20,120 MIMキャパシタ、21 下部電極、22 第1絶縁膜、23 第2絶縁膜、24 上部電極、25 第3絶縁膜
図1
図2
図3
図4