(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6871204
(24)【登録日】2021年4月19日
(45)【発行日】2021年5月12日
(54)【発明の名称】針の抗菌性の潤滑剤を備えた血液制御カテーテル
(51)【国際特許分類】
A61M 25/06 20060101AFI20210426BHJP
A61L 24/00 20060101ALI20210426BHJP
A61L 33/06 20060101ALI20210426BHJP
A61M 39/06 20060101ALI20210426BHJP
【FI】
A61M25/06 500
A61L24/00 210
A61L33/06 300
A61M39/06 122
【請求項の数】12
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2018-143811(P2018-143811)
(22)【出願日】2018年7月31日
(62)【分割の表示】特願2016-500755(P2016-500755)の分割
【原出願日】2014年3月6日
(65)【公開番号】特開2018-171511(P2018-171511A)
(43)【公開日】2018年11月8日
【審査請求日】2018年8月17日
【審判番号】不服2020-4033(P2020-4033/J1)
【審判請求日】2020年3月25日
(31)【優先権主張番号】13/793,569
(32)【優先日】2013年3月11日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】595117091
【氏名又は名称】ベクトン・ディキンソン・アンド・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】BECTON, DICKINSON AND COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】特許業務法人 谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】イーピン マー
【合議体】
【審判長】
内藤 真徳
【審判官】
角田 貴章
【審判官】
関谷 一夫
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2008/152849(WO,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2011/0301553(US,A1)
【文献】
特表2012−532681(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 25/06, 39/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
近位端、遠位端、およびそれらの間に延びる流体通路を有するカテーテルアダプタと、
遠位端および近位端を有するカテーテルであって、当該カテーテルの近位端が前記カテーテルアダプタの遠位端に結合され、前記流体通路と流体連通する内腔を有するカテーテルと、
前記流体通路内に配置され、これにより前記流体通路を前方室及び後方室に分割する隔壁であって、スリットを有する隔壁と、
基部、先端部、およびその間に延びる本体を有する針と、
前記針が前記カテーテルの前記遠位端を越えて延在するとき、前記隔壁の遠位端の遠位にある前記針の前記本体の外表面の少なくとも一部に適用されているある量の抗菌性潤滑剤であって、前記針が前記カテーテルの前記遠位端を越えて延在するとき、前記ある量の抗菌性潤滑剤が前記カテーテル及びカテーテルアダプタから間隔を介して配置され、前記針が前記隔壁の前記スリットを通して、近位に引き抜かれると、前記隔壁が前記針から前記抗菌性潤滑剤を除去し、それにより前記隔壁の遠位側に前記抗菌性潤滑剤を付着させ、さらにそれにより、前記前方室と前記後方室との間にさらなる物理的障壁を提供し、ここで過剰な抗菌性潤滑剤によって提供される障壁は、隔壁のすぐ近くの他の表面にさらに移動し、それにより隔壁を越えてカテーテルの内面に抗菌保護を提供する前記抗菌性潤滑剤と、
を備え、
前記スリットは、三叉スリット構造を備え、
前記抗菌性潤滑剤は、水溶性の潤滑剤、ほとんどの注入液及び血液中で不溶性の潤滑剤、粘性ゲルの潤滑剤、または、固体の潤滑剤のうちの少なくとも1つを含み、
前記抗菌性潤滑剤は、抗菌剤を含む、
ことを特徴とするカテーテルアセンブリ。
【請求項2】
前記抗菌性潤滑剤は、ポリジメチルシロキサン、ポリトリフルオロプロピルメチルシロキサン、またはジメチルシロキサンとトリフルオロプロピルメチルシロキサンとの共重合体のような油性潤滑剤を含む、請求項1に記載のカテーテルアセンブリ。
【請求項3】
前記抗菌剤は、クロルヘキシジン二塩酸塩、グルコン酸クロルヘキシジン、クロルヘキシジン・アセテート、クロルヘキシジン・ジアセテート、トリクロサン、クロロキシレノール、塩化デカリニウム、塩化ベンゼトニウム、及び塩化ベンザルコニウムのうちの少なくとも一つである、請求項1に記載のカテーテルアセンブリ。
【請求項4】
前記抗菌性潤滑剤は、一時的な溶媒成分、アルコール成分、および抗菌剤のうちの少なくとも1つをさらに含む、請求項1に記載のカテーテルアセンブリ。
【請求項5】
前記抗菌性潤滑剤が水に不溶である、請求項4に記載のカテーテルアセンブリ。
【請求項6】
前記抗菌性潤滑剤が水溶性である、請求項4に記載のカテーテルアセンブリ。
【請求項7】
前記抗菌剤は、0.001%(重量/体積)から10.0%(重量/体積)までの範囲の量で存在する、請求項4に記載のカテーテルアセンブリ。
【請求項8】
前記抗菌剤は、クロルヘキシジン二塩酸塩、グルコン酸クロルヘキシジン、クロルヘキシジン・アセテート、クロルヘキシジン・ジアセテート、トリクロサン、クロロキシレノール、塩化デカリニウム、塩化ベンゼトニウム、及び塩化ベンザルコニウムのうち少なくとも一つである、請求項4に記載のカテーテルアセンブリ。
【請求項9】
前記アルコール成分は、1から6個の炭素原子を有する低級アルコールを含む請求項4に記載のカテーテルアセンブリ。
【請求項10】
前記アルコール成分は、前記抗菌性潤滑剤中に40%(重量/体積)に等しい量存在する、請求項4に記載のカテーテルアセンブリ。
【請求項11】
前記アルコール成分は、イソプロピルアルコールとエタノールの混合物を含む、請求項4に記載のカテーテルアセンブリ。
【請求項12】
前記抗菌性潤滑剤は、前記抗菌性潤滑剤中に20%(重量/体積)から95%(重量/体積)までの量存在する、アルコール成分を含む、請求項4に記載のカテーテルアセンブリ。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
本発明は、皮膚侵襲性器具のための潤滑剤に関する。特に、本発明は、感染を防ぐために、抗菌性潤滑剤がカテーテル装置の外表面に適用される方法およびシステムに関する。
【0002】
カテーテルは、一般に、種々の輸液療法のために使用されている。例えば、カテーテルは、生理食塩水、種々の薬剤、及びトータルな非経口栄養などの流体を患者へ注入し、また患者から血液を引き出すだけでなく、患者の血管系の様々なパラメータを監視するために使用される。
【0003】
カテーテルは、一般的に、静脈内カテーテルアセンブリの一部として、患者の血管系に導入される。カテーテルアセンブリは、一般に、カテーテルを支持するカテーテルアダプタを含み、カテーテルアダプタは、導入針を支持する針ハブに結合されている。導入針は、針のベベル部がカテーテルの先端を越えて露出するように、カテーテル内に延伸して配置される。針のベベル部は、患者の脈管構造内に針を挿入するための開口部を提供するように、患者の皮膚を穿刺するために使用される。カテーテルの挿入及び配置後、導入針はカテーテルから除去され、これにより患者への静脈内アクセスを提供する。
【0004】
血管内カテーテルおよびIVアクセス器具の使用に伴い、カテーテルに関連する血流感染が、患者内での微生物のコロニー形成によって引き起こされる。約250,000のカテーテル関連の血流感染症が、毎年米国の集中治療室で発生しており、これらの感染症は、病気や過剰な医療費の重要な原因である。金銭的コストに加えて、これらの感染症は、毎年20,000から100,000人のいずれかである死亡者数に関連している。
【0005】
医療関連感染(HAIs)を減少させるためのガイドラインにもかかわらず、カテーテルに関連する血流感染は、我々の医療システムを悩ませ続けている。最も一般的な10の病原体(任意の医療関連感染の84%を占める)は、コアグラーゼ陰性ブドウ球菌(15%)、黄色ブドウ球菌(15%)、エンテロコッカス種(12%)、カンジダ種(11%)、大腸菌(10%)、緑膿菌(8%)、肺炎桿菌(6%)、エンテロバクター種(5%)、アシネトバクター・バウマンニ(3%)、及びクレブシエラオキシトカ(2%)であった。抗菌剤に耐性のある病原性分離株(pathogenic isolates)の統合平均比率(pooled mean proportion)は、いくつかの病原体−抗菌剤の組み合わせに対し、HAIの種類によって大きく変動した。HAIの16%にも及ぶものが次の多剤耐性病原体に関連していた。すなわち、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(HAIの8%)、バンコマイシン耐性エンテロコッカス属フェシウム(4%)、カルバペネム耐性緑膿菌(2%)、基質特異性拡張型(extended−spectrum)セファロスポリン耐性肺炎桿菌(1%)、基質特異性拡張型セファロスポリン耐性大腸菌(0.5%)、および、カルバペネム耐性アシネトバクター・バウマニア、肺炎桿菌、クレブシエラ属オキシトカおよび大腸菌(0.5%)の抗菌薬耐性病原体である。
【0006】
種々の抗菌剤を染み込ませたカテーテルは、これらの感染を防止するために実施されている1つのアプローチである。しかしながらこれらのカテーテルは、満足できる結果をもたらしていない。たとえば、これらのカテーテルは、カテーテルアセンブリの内面と構成要素における病原体の増殖およびコロニー形成を防止するのにあまり効果がない。加えて、数種の細菌類はシステムにおける種々の抗菌物質に対する耐性を発達させてきてる。
【0007】
したがって、改善された抗菌能力を有する皮膚侵襲性器具のための技術の必要性がある。このような方法及びシステムは、本明細書に開示されている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の制約を克服するために、本発明は、患者内にカテーテル装置を完全に挿入すると、抗菌性潤滑剤が、患者のカテーテルと真皮層との間に介在されるように、カテーテル装置に適用される抗菌性潤滑剤のマトリックスに関する。
【0009】
いくつかの実施態様では、抗菌性製剤は、静脈カテーテルアセンブリの一部として導入針の外表面に適用される不溶性の潤滑材料(lubricant material)として提供される。潤滑剤材料は、針がカテーテルアセンブリの血液制御隔壁を通じて引き抜かれるときに、隔壁のスリットが針の外表面から潤滑材料の一部を、「スキージ」またはさもなければ除去するように塗布される。除去された潤滑材料は、隔壁の膜とスリットとに集まり、スリットと患者の血管系との間の物理的障壁を提供する。いくつかの例では、除去された潤滑剤材料の一部が、スリット内に堆積され、スリットを一層閉鎖またはシールする。
【0010】
いくつかの例において、潤滑材料は、さらに潤滑剤(lubricious agent)を含む。潤滑剤は、スリットと針の外表面との間の摩擦を低減する。このようにして、針は、隔壁のスリットをキャッチまたはさもなければ損傷を与えることなく、滑らかで連続的に、隔壁を通じて除去されることができる。潤滑材料の潤滑剤は、さらに、隔壁とスリットを通じて挿入された外部ルアー器具との間の摩擦を減少させることができる。抗菌性潤滑剤は、ルアー器具がスリットを通じて挿入されるときに、ルアー器具に移転されることがあり、それによって、そこに存在する病原体を殺す。いくつかの実施態様では、抗菌性潤滑剤は、さらに、カテーテルアセンブリ内での血栓の可能性を減少させる抗血栓剤を含む。
【0011】
本発明の上記および他の特徴および利点が得られる方法が容易に理解されるようにするために、上記で簡単に説明した本発明のより具体的な説明は、添付の図面に示されているその具体的な実施形態を参照して描写される。これらの図面は、本発明の典型的な実施形態のみを示し、したがって本発明の範囲を限定すると考えるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の代表的な実施形態による被覆された導入針を有するカテーテルアセンブリであって、カテーテルアダプタから引き出される前に配置された状態を示す断面図である。
【
図2】本発明の代表的な実施形態による被覆された導入針を有するカテーテルアセンブリであって、カテーテルから部分的に引き抜かれ、血液制御隔壁によって、誘導針上の抗菌性潤滑剤が導入針から部分的に除去された状態を示す断面図である。
【
図3】本発明の代表的な実施形態による血液制御隔壁を有するカテーテルアセンブリであって、導入針がカテーテルアダプタから抜き出された際に、血液制御隔壁によって導入針の外表面から除去された抗菌性材料によって被覆された状態を示す断面図である。
【
図4】本発明の代表的な実施形態による、導入針を除去した後における血液制御隔壁及び堆積した抗菌潤滑材料を示す断面端面図である。
【
図5】本発明の代表的な実施形態による、導入針の除去後の血液制御隔壁のスリットであって、残留した抗菌潤滑材料が血液制御隔壁のスリット内に堆積された状態を示す詳細な断面図である。
【
図6】本発明の代表的な実施形態による、抗菌組成物によって隔壁を潤滑する方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の現在好ましい実施形態が、図面を参照することによって最良に理解されるであろう。ここでの参照番号は同一または機能的に類似の要素を示す。図面に一般的に記載され描写された本発明の構成要素が、多種多様な異なる構成として配置及び設計され得ることは、容易に理解されるであろう。図面に示された以下のより詳細な説明は、クレームされた本発明の範囲を限定するものではなく、単に本発明の現在好ましい実施形態を代表することが意図されているものである。
【0014】
図1を参照すると、カテーテル器具アセンブリ10が示されている。一般的に、本発明によるカテーテル器具アセンブリ10は、注入療法処置または採血のような目的で、患者の血管系へのアクセスを提供する。いくつかの実施形態では、カテーテル器具システム10は、カテーテルチューブ40を支持するカテーテルアダプタ30を備えている。カテーテルチューブ40は、カテーテルアダプタ30から外向きに延び、且つこれと流体連通している。
【0015】
いくつかの実施形態では、カテーテル装置システム10は、導入針50を支持する針ハブ(図示せず)を備えている。導入針50は、針50の傾斜先端52がカテーテル先端部42を越えて延びるように、カテーテルアダプタ30及びカテーテルチューブ40を通じてねじ込みにより配置(threadedly positioned)されている。傾斜先端52は、患者の皮膚を貫通して患者の血管系へのアクセスを提供するための切断面を提供する。カテーテル40が完全に患者の体内に挿入されると、導入針50は除去され、それによってカテーテル40とカテーテルアダプタ30を介した患者20への静脈内アクセスを提供する。
【0016】
いくつかの実施形態では、カテーテルアダプタ30は、血液制御隔壁20をさらに備えている。血液制御隔壁20は、カテーテルアダプタ30の前方チャンバ32と後方のチャンバ34との間の血液および他の流体の流れを制御するための物理的障壁として設けられている。例えば、患者の静脈に傾斜先端52とカテーテル先端部42が挿入され且つ針50が除去されると、患者からの血液は、カテーテルチューブ40の管腔44を通って前方チャンバ32内に流入する。患者の血液は、隔壁20を迂回することが防止され、これによって前方チャンバ32内に血液が保持される。定位置の血液制御隔壁20がなければ、血液は、制御されない態様で後方室34に流れ、且つ開口部36から流出することになる。これは、患者の血液へのユーザの望ましくない暴露をもたらす。したがって、患者の血液への暴露からユーザーを保護するために、血液制御隔壁20は、カテーテルアダプタ30の流体通路38内に配置されている。
【0017】
いくつかの例において、血液制御隔壁20は、カテーテルアダプタ30の内面33に設けられた環状溝31内に着座する。いくつかの実施形態において、血液制御隔壁20は、流体通路38の内径よりも大きく、且つ環状溝31の直径よりも僅かに大きい外径を備えている。このようにして、血液制御隔壁20は、環状溝31内に着座され、流体通路38内における近位12および遠位14の方向への移動が防止される。他の例において、血液制御隔壁20の外周縁は、接着剤、プラスチック溶接、または(例えば、保持クリップのような)他の機械的接続を介して内面33に固定されている。
【0018】
血液制御隔壁20は、前方及び後方のチャンバ32及び34に流体通路38を分割することができる任意の構造的構成を備えていてもよい。例えば、いくつかの実施形態において、血液制御隔壁20は、ディスクを含む。他の実施形態において、血液制御隔壁20は、近位開口部22と、膜24を形成する先端キャップとを有するシリンダを備えている。いくつかの実施形態では、膜24は、膜24を通じた経路を形成するスリット26又は複数のスリットを備えている。スリット26は、隔壁20を通じた導入針50の通過を許容するように構成することができる。
【0019】
隔壁20の弾力性又は伸展性の性質によって、スリット26を伸展させ、これによって針50の通過を許容することが可能にされている。いくつかの例では、スリット26と針50の外面との間のシールまたはインターフェースは、針50が近位方向12に移動させたときにスリット26が前方チャンバ32から後方チャンバ34への流体の通過を防止するのに十分なように、緊密にされる。さらに、針50がスリット26を通じて近位方向12に移動したときに、前方チャンバ32内に位置する針50の部分の外表面54上に存在する血液が除去されるか、または外表面54から「スキージ」(squeegeed)される。スリット26から針50を完全に除去すると、スリット26は自ら閉じ、これによってさらに、前方チャンバ32内の流体が後方室34内へと通過するのを防止する。
【0020】
典型的には、導入針50は、針の除去中におけるシステム抵抗(system drag)を低減するのに役立つ油性潤滑剤で被覆されている。いくつかの実施形態において、潤滑剤は、抗菌性潤滑剤60を形成する抗菌剤をさらに含む。抗菌性潤滑剤60は、カテーテルアセンブリ10内での微生物および病原体のコロニー形成及び増殖を防ぐための手段として設けられている。いくつかの実施形態では、抗菌性潤滑剤60は、針50の外表面54の全体に適用される。いくつかの例では、抗菌性潤滑剤60は、前方チャンバ32内に配置された外表面54の部分に適用される。臨床使用時には、導入針がカテーテルから除去されると、針50がスリット26を通じて近位方向12に移動するのに伴い、抗菌性潤滑剤60の一部が除去されたり、外表面54から「スキージ」され、隔壁の表面及びスリット26内に抗菌の障壁を形成する。このようにして、抗菌性潤滑剤60は、カテーテルの流体の細菌汚染を防止するための障壁として作用する。
【0021】
いくつかの実施形態では、抗菌性潤滑剤は、ほとんどの注入液及び血液中で不溶性であり、したがって、採血、薬剤注入、TPN処置、ならびに生理食塩水およびヘパリンによるフラッシュのような複数の手順の間にわたって、隔壁表面に残留する。したがって、抗菌性潤滑剤は、長期的な抗菌保護を提供することができる。
【0022】
本発明における潤滑剤の配合は、1つ以上の潤滑剤と抗菌剤との、混合物または組合せから構成されている。混合物中に、抗菌剤は、均一かつ恒久的に潤滑剤マトリックス全体に分布している。
【0023】
いくつかの実施形態では、抗菌性潤滑剤60は、水溶性の潤滑剤、不溶性の潤滑剤、粘性ゲルの潤滑剤、固体の潤滑剤、および成形可能な潤滑剤のうちの少なくとも一つを含む。
【0024】
いくつかの実施形態では、抗菌性潤滑剤60は、油性潤滑剤を含む。油性潤滑剤は、ポリジメチルシロキサン、ポリトリフルオロプロピルメチルシロキサン(polytrifluoropropylmethyl siloxane)、またはジメチルシロキサンとトリフルオロプロピルメチルシロキサンとの共重合体であることができる。油性潤滑剤の粘度は、20cpから1,000,000cpにすることができる。いくつかの実施形態において、抗菌性潤滑剤の適用を容易にするために、非常に高い粘度の油性潤滑剤に溶媒が添加される。
【0025】
抗菌性潤滑剤60は、浸漬、ブラッシング、噴霧、または当技術分野で公知の任意の他の適合のための技術により、外表面54に適用されることができる。いくつかの実施形態では、過剰な抗菌性潤滑剤60が、カテーテルアセンブリ10に針50を組み立てる前に、外側面54に適用される。針50は、隔壁20を通じた拡大された経路を提供することにより、隔壁20を通ってカテーテル40内に挿入される。この方法では、抗菌性潤滑剤60は、組立中に外表面54から変位(displaced)しない。
【0026】
例えば、いくつかの実施形態では、スリット26を拡大された開放位置にバイアスするために、スレッダー(threader、図示せず)が、開口36内および隔壁のスリット26を通して挿入される。スリット26の拡大された開放位置は、導入針50の被覆された部分の直径よりも一般的に大きい。スレッダーによって導入針50の被覆された部分がスリット26に通され、傾斜先端42が、カテーテル先端部52を越えて延びるまで、カテーテル40の内腔44を通じて前進する。定位置に来ると、スレッダーは、スリット26とカテーテルアダプタ30から取り除かれる。隔壁20の弾性の性質によって、スリット26が外表面54の周りにその閉鎖位置を再構成することが可能にされる。
【0027】
抗菌性潤滑剤60は、一般に、患者内の感染症を引き起こす可能性がある種々の形態および菌種の細菌に対して有効な抗菌剤または殺生物剤を含む。本明細書で使用される用語
「殺生物剤」(biocidal agent)または「殺生剤」(biocide)は、望ましくない微生物を死滅させ、抑制し、かつ/またはその増殖、成長、コロニー形成、繁殖を防止する薬剤を指す。「生物」という用語は、微生物、細菌、波状細菌(undulating bacteria)、スピロヘータ、胞子、胞子形成生物、グラム陰性菌、グラム陽性菌、酵母、真菌、カビ、ウイルス、好気性生物、嫌気性生物およびマイコバクテリアを含むが、これらに限定されるものではない。このような生物の具体例としては、黒色アスペルギルス(Aspergillus niger)、黄色アスペルギルス(Aspergillus flavus)、黒色クモノスカビ(Rhizopus nigricans)、クラドスポリウム・ヘルバリウム(Cladosprorium herbarium)、有毛表皮糸状菌(Epidermophyton floccosum)、毛瘡白癬菌、ヒストプラズマ・カプスラーツムおよびその他の菌類;緑膿菌、大腸菌、プロテウス・ブルガリス、黄色ブドウ球菌、表皮ブドウ球菌(Staphylococcus epidermis)、大便連鎖球菌、クレブシエラ菌、アイロゲネス腸内菌(Enterobacter aerogenes)、ミラビリス変形菌、その他グラム陰性菌、およびその他グラム陽性菌、ミコバクチンおよびその他のバクテリア;サッカロミセス・セレヴィシエ、カンジダ・アルビカンスおよびその他の酵母菌を含む。加えて、微生物の芽胞類およびその他も本発明の範囲にある生物である。
【0028】
本発明での使用に適した抗菌剤または殺生物剤としては、フェノール、第四級アンモニウム塩、グアニジン、タウロリジン、パラクロロメタキシレノール、スルファジアジン銀、酸化銀、硝酸銀、ピリジニウム、塩化ベンザルコニウム、セトリミド、塩化ベンゼトニウム(benethonium chloride)、塩化セチルピリジニウム、デカリニウムアセテート、塩化デカリニウム、及びクロロキシレノールを含むが、これらに限定されるものではない。さらに、いくつかの実施形態では、潤滑剤60は、クロルヘキシジン基(chlorhexidine base)、グルコン酸クロルヘキシジン、クロルヘキシジン・アセテート、塩酸クロルヘキシジン、クロルヘキシジン二塩酸塩、ジブロモプロパミジン(dibromopropamidine)、ハロゲン化ジフェニルアルカン類、カルバニリド、サリチルアニリド、テトラクロロサリチルアニド、トリクロロカルバニリドおよびそれらの混合物から選択された抗菌剤を含む。またさらに、いくつかの実施形態では、潤滑剤60は、クロルヘキシジン二塩酸塩、グルコン酸クロルヘキシジン、クロルヘキシジン・アセテート、クロルヘキシジン・ジアセテート、トリクロサン、クロロキシレノール、塩化デカリニウム、塩化ベンゼトニウム、塩化ベンザルコニウムおよびそれらの組み合わせから選択された抗菌剤を含む。抗菌剤は、潤滑剤内または液状材内において不溶性の固体粒子であることができる。抗菌剤は、導入針への適用の前に、潤滑剤内で良く混合される。
【0029】
いくつかの実施形態においては、潤滑剤60は、1以上の抗菌剤を潤滑剤60の約0.01%(重量/体積)から約10.0%(重量/体積)の量で含む。他の実施形態では、潤滑剤60は、1以上の抗菌剤を潤滑剤60の約0.
001%(重量/体積)から約5.0%(重量/体積)の量で含む。
さらに、他の実施形態では、潤滑剤60は、1以上の抗菌剤を潤滑剤60の約0.01%(重量/体積)から約10.0%(重量/体積)の量で含む。
【0030】
いくつかの実施形態では、潤滑剤60はさらに、テトラヒドロフラン(THF)、メチルエチルケトン(MEK)およびヘキサン類溶液などの1以上の不安定(fugitive)溶媒を含む。いくつかの実施形態では、潤滑剤60はその70%(重量/体積)にほぼ等しい量の不安定溶媒を含む。他の実施形態では、潤滑剤60は2以上の不安定溶媒を含む。
【0031】
他の実施形態においては潤滑剤60は1つ以上のアルコール成分を含む。適切なアルコール成分は、概して1および6の間の炭素(C1〜C6)を有する低級アルコールを含む。いくつかの実施形態では、潤滑剤60は、エチル・アルコール、イソプロパノール、プロパノールおよびブタノールから成る群から選択されたアルコール成分を含む。他の実施形態では、潤滑剤60は、例えば約1:10から約1:1の比率のイソプロピル・アルコールおよびエチル・アルコールの混合物など、2以上の低級アルコール成分を含むものである。さらに、いくつかの実施形態では、潤滑剤60は3以上のアルコール成分を含む。
【0032】
いくつかの実施形態では、潤滑剤60は、その40%(重量/体積)にほぼ等しい量のアルコール成分を含む。他の実施形態では、潤滑剤60は、ほぼ20%(重量/体積)からほぼ95%(重量/体積)のアルコール成分を含む。
【0033】
いくつかの実施形態では、抗菌性潤滑剤60は、さらに、シリコンオイル等の潤滑剤を含む。いくつかの実施形態では、導入針50は、針50とカテーテル先端部42、ならびに針50と隔壁20の間の粘着を減少させるために高粘度の抗菌性潤滑剤60で被覆(coat)されている。
図2に示すように、カテーテル40および隔壁20から針50を引き抜く際に、隔壁20のスリット26が、針50の外表面54を摩擦し、それによって余分な潤滑剤60を除去する。
【0034】
いくつかの実施形態では、抗菌性潤滑剤60は、抗血栓剤を含む。抗血栓剤は、カテーテルアセンブリ10内での血液凝固の可能性を減少させるために提供されている。いくつかの例では、抗血栓剤は、前方チャンバ32内または抗菌性潤滑剤60によって被覆された任意の表面上での血液凝固の可能性を減少させるために提供されている。
【0035】
図2を参照すると、導入針50が部分的に引き抜かれた状態のカテーテルアセンブリ10が示されている。いくつかの実施形態では、針50が隔壁20のスリット26を通じて近位方向12に引き出されるに従って、過剰な抗菌性潤滑剤60が、外表面54から「スキージ」されまたは除去される。過剰な潤滑剤60は前方室32内に収集され、それによって、膜24と前方室32との間の障壁を提供する。この障壁は、潤滑剤の近傍および/またはこれに接触する微生物を殺し、膜24上及び一般的に前方室32内の微生物の増殖およびコロニー形成を防止する。
【0036】
隔壁20から導入針50を完全に抜去すると、
図3に示すように、スリット26は自ら閉じ、これによって前後のチャンバ32と34との間に、さらなる物理的な障壁を提供する。過剰な抗菌性潤滑剤60により提供される障壁は、隔壁に近接した他の表面にさらに移行することがあり、これによって、このように、隔壁を越えてカテーテルの内側表面に抗菌性の保護を提供する。
【0037】
いくつかの実施形態では、
図4に示すように、血液を制御する隔壁20のスリット26は、三叉スリット構造を備える。針50を抜去した後に、過剰な抗菌性潤滑剤60は膜24の上に堆積され、それによってスリット26を覆う。抗菌性潤滑剤60は、膜24の上の病原体のコロニー形成および増殖を防ぐことができる。
【0038】
いくつかの実施形態では、過剰な抗菌性潤滑剤60がスリット26内に移動し、それによって
図5に示すように、スリット26のギャップ又は開口部を充填する。このように、過剰な抗菌性潤滑剤60は、隔壁20が前後のチャンバ32と34との間の流体の流れを防止するのを補助する。
【0039】
本発明のいくつかの実装は、さらに、
図6で概説されるような、針の抗菌性潤滑を伴った血液制御カテーテルの隔壁を潤滑する方法を含む。いくつかの例では、隔壁潤滑の第1段階は、導入針の外表面に抗菌性潤滑剤を適用することを含む(ステップ100)。被覆された針は、次に、カテーテルアセンブリ内に配置された隔壁のスリットを通じて挿入される(ステップ200)。いくつかの例では、拡大された開口部を提供するために、スレッダーがまず隔壁のスリットに挿入される。このようにして、装置の組み立て中に抗菌性潤滑剤が排除されることが防止される。スレッダーは、カテーテルアセンブリ内に配置されると、スリットから削除され、器具は使用する準備が整う。
【0040】
針が隔壁とカテーテルアセンブリ装置から引き抜かれるに従い、隔膜が被覆される(ステップ300)。針が引き抜かれるに従い、隔壁のスリットは、針の外表面から過剰な抗菌性潤滑剤をスキージする。この過剰な抗菌性潤滑剤は、隔壁の膜とスリット部分の上に堆積される。いくつかの例では、過剰な抗菌性潤滑剤は、カテーテルアセンブリ装置の前方チャンバ内に堆積され、隔壁と患者の血管系との間に追加の障壁を形成する。
【0041】
本発明は、本明細書に広く記載され以下に特許を請求されたその構造、方法、または他の本質的な特徴とから逸脱することなく、他の特定の形態で実施することができる。例えば、本発明は、針、外科用メス、トロカール、内視鏡、ストーマ装具、及びこれらに類似の装置のような、任意の皮膚侵襲的な装置に適用することができる。記載された実施形態は、あらゆる点において、例示であり、かつ限定的ではないものとして解釈されるべきである。本発明の範囲は、従って、前述の説明によってではなく、添付の特許請求の範囲によって示される。特許請求の範囲の均等の意味および範囲内に入るすべての変更は、その範囲内に包含されるものである。