特許第6871209号(P6871209)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 美津濃株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6871209-シューズ 図000002
  • 特許6871209-シューズ 図000003
  • 特許6871209-シューズ 図000004
  • 特許6871209-シューズ 図000005
  • 特許6871209-シューズ 図000006
  • 特許6871209-シューズ 図000007
  • 特許6871209-シューズ 図000008
  • 特許6871209-シューズ 図000009
  • 特許6871209-シューズ 図000010
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6871209
(24)【登録日】2021年4月19日
(45)【発行日】2021年5月12日
(54)【発明の名称】シューズ
(51)【国際特許分類】
   A43B 23/02 20060101AFI20210426BHJP
   A43C 1/02 20060101ALI20210426BHJP
【FI】
   A43B23/02 106
   A43B23/02 101Z
   A43C1/02
【請求項の数】5
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2018-167663(P2018-167663)
(22)【出願日】2018年9月7日
(65)【公開番号】特開2020-39477(P2020-39477A)
(43)【公開日】2020年3月19日
【審査請求日】2019年6月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005935
【氏名又は名称】美津濃株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】梶原 遥
【審査官】 粟倉 裕二
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第07941943(US,B2)
【文献】 米国特許出願公開第2015/0289595(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2017/0202310(US,A1)
【文献】 特開2017−136364(JP,A)
【文献】 特表2016−521184(JP,A)
【文献】 韓国公開実用新案第20−2013−0002605(KR,U)
【文献】 米国特許第3169325(US,A)
【文献】 特表2017−500954(JP,A)
【文献】 特開2008−142485(JP,A)
【文献】 特開2007−267948(JP,A)
【文献】 特開2006−305016(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A43B 23/02
A43B 13/14
A43C 1/00−1/06
A43C 11/00−11/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ソールおよびアッパーを備えたシューズであって、
前記アッパーは、
前記ソールの周縁部に固着された下側アッパー部と、
前記下側アッパー部よりも上方に配置された上側アッパー部と、
着用者の足の内甲側に対応する位置に配置され、前記下側アッパー部と前記上側アッパー部との上下方向の間に設けられた第1間隙部と、
少なくとも前記第1間隙部に配置され、前記下側アッパー部と前記上側アッパー部とを互いに緊締するための緊締部と、を有し、
前記下側アッパー部は、着用者の足の内甲側に対応する位置に配置され、着用者の足の内側縦アーチを下方から支持するための第1アーチ被覆部を含み、
前記第1間隙部は、着用者の足の内側縦アーチに対応する位置に配置された第1アーチ領域を含み、
前記緊締部は、少なくとも前記第1アーチ領域の上下方向の間隔が狭まるように該間隔を調整可能に構成されており、
前記緊締部により前記第1アーチ領域の上下方向の間隔が狭められた状態では、前記下側アッパー部および前記上側アッパー部が着用者の足の外周面に向かって接触する、シューズ。
【請求項2】
請求項1に記載のシューズにおいて、
前記第1間隙部は、着用者の足の内側縦アーチよりも前側に位置する足指に対応するように配置されかつ前記第1アーチ領域と連続する第1足指領域をさらに含み、
前記緊締部は、前記第1アーチ領域および前記第1足指領域における上下方向の各間隔が狭まるように該間隔を調整可能に構成されている、シューズ。
【請求項3】
請求項2に記載のシューズにおいて、
前記第1アーチ領域の上下方向の間隔は、前記第1足指領域の上下方向の間隔よりも大きい、シューズ。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のシューズにおいて、
前記アッパーは、着用者の足の外甲側に対応する位置に配置され、前記下側アッパー部と前記上側アッパー部との上下方向の間に設けられた第2間隙部をさらに有し、
前記下側アッパー部は、着用者の足の外甲側に対応する位置に配置され、着用者の足の外側縦アーチを側方から覆うための第2アーチ被覆部を含み、
前記第2間隙部は、着用者の足の外側縦アーチに対応する位置に配置された第2アーチ領域を含み、
前記緊締部は、前記第2間隙部において前記下側アッパー部と前記上側アッパー部とを緊締しかつ前記第2アーチ領域の上下方向の間隔が狭まるように該間隔を調整可能に構成されている、シューズ。
【請求項5】
請求項4に記載のシューズにおいて、
前記緊締部は、少なくとも1本の紐部を含み、該紐部の端部同士が前記上側アッパー部の後部の位置で互いに結ばれた状態となるように構成されている、シューズ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シューズに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、着用者の足に対するフィット性を高めたシューズとして、例えば特許文献1のようなシューズが提案されている。
【0003】
この特許文献1には、ソールと、ソールの上面に設けられた短ソックス上のアッパー(インナー)と、ソールに取付固定されかつアッパーの外側に配置された複数の短尺ベルトを含む締付材と、を備えたシューズが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第2832684号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のシューズでは、アッパーを締付材の短尺ベルトで強く締め付けた場合には、その締め付け力によりアッパーに対して過度な応力が集中してしまい、アッパーにしわが生じやすくなる。このしわの発生により、アッパーを着用者の足の外周面にフィットさせにくくなっていた。特に、締付材の短尺ベルトを締め付けた場合には、アッパーを、複雑な曲面形状を有する内側縦アーチの位置を含む着用者の足に対して適切にフィットさせることが困難となっていた。
【0006】
本発明は斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、少なくとも内側縦アーチを重点とする着用者の足に対するフィット感およびサポート性を向上させることができるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、本発明の第1の形態はソールおよびアッパーを備えたシューズに係るものであり、アッパーは、ソールの周縁部に固着された下側アッパー部と、下側アッパー部よりも上方に配置された上側アッパー部と、着用者の足の内甲側に対応する位置に配置され、下側アッパー部と上側アッパー部との上下方向の間に設けられた第1間隙部と、少なくとも第1間隙部に配置され、下側アッパー部と上側アッパー部とを互いに緊締するための緊締部と、を有している。下側アッパー部は、着用者の足の内甲側に対応する位置に配置され、着用者の足の内側縦アーチを下方から支持するための第1アーチ被覆部を含む。第1間隙部は、着用者の足の内側縦アーチに対応する位置に配置された第1アーチ領域を含む。そして、緊締部は、少なくとも第1アーチ領域の上下方向の間隔が狭まるように該間隔を調整可能に構成されており、緊締部により第1アーチ領域の上下方向の間隔が狭められた状態では、下側アッパー部および上側アッパー部が着用者の足の外周面に向かって接触することを特徴とする。
【0008】
この第1の形態において、緊締部により第1アーチ領域の上下方向の間隔が狭められた場合には、下側および上側アッパー部の各々が内側縦アーチの位置を含む着用者の足の外周面に向かって接近するようになる。かかる場合において、第1アーチ領域はその上下方向の間隔が相対的に小さくなるように変位するに過ぎないことから、下側および上側アッパー部の各々に対する過度な応力集中が抑制される。このため、下側および上側アッパー部の各々にしわ等が生じにくくなる。その結果、下側および上側アッパー部を、内側縦アーチの位置を含む着用者の足の外周面にフィットさせやすくなる。特に、内甲側に位置する下側アッパー部の第1アーチ被覆部を、複雑な湾曲形状となる着用者の足の内側縦アーチに対して下方からフィットさせやすくなる。そして、内側縦アーチを重点とする着用者の足を、下側アッパー部および上側アッパー部によりシューズ内でずれないように安定的に支持することが可能となる。したがって、第1の形態では、少なくとも内側縦アーチを重点とする着用者の足に対するフィット感およびサポート性を向上させることができる。
【0009】
第2の形態は、第1の形態において、第1間隙部は、着用者の足の内側縦アーチよりも前側に位置する足指に対応するように配置されかつ第1アーチ領域と連続する第1足指領域をさらに含み、緊締部は、第1アーチ領域および第1足指領域における上下方向の各間隔が狭まるように該各間隔を調整可能に構成されていることを特徴とする。
【0010】
この第2の形態では、緊締部により第1アーチ領域および第1足指領域の双方における上下方向の間隔を狭めることにより、下側および上側アッパー部を、足指から内側縦アーチに亘る部位を含む着用者の足の外周面にフィットさせやすくなる。そして、着用者の足において足指から内側縦アーチに亘る部位を、下側アッパー部および上側アッパー部によりシューズ内でずれないように安定的に支持することが可能となる。したがって、第2の形態では、足指および内側縦アーチを重点とする着用者の足に対するフィット感およびサポート性を向上させることができる。
【0011】
第3の形態は、第2の形態において、第1アーチ領域の上下方向の間隔は、第1足指領域の上下方向の間隔よりも大きいことを特徴とする。
【0012】
この第3の形態では、第1アーチ領域の上下方向の間隔を狭めるための調整量が相対的に大きくなる。このため、内側縦アーチを重点とする着用者の足に対するフィット感およびサポート性を向上させることができる。
【0013】
第4の形態は、第1〜第3のいずれか1つの形態において、アッパーは、着用者の足の外甲側に対応する位置に配置され、下側アッパー部と上側アッパー部との上下方向の間に設けられた第2間隙部をさらに有している。下側アッパー部は、着用者の足の外甲側に対応する位置に配置され、着用者の足の外側縦アーチを側方から覆うための第2アーチ被覆部を含む。第2間隙部は、着用者の足の外側縦アーチに対応する位置に配置された第2アーチ領域を含む。そして、緊締部は、第2間隙部において下側アッパー部と上側アッパー部とを緊締しかつ第2アーチ領域の上下方向の間隔が狭まるように該間隔を調整可能に構成されていることを特徴とする。
【0014】
この第4の形態では、緊締部により第2アーチ領域の上下方向の間隔が狭められた場合には、下側および上側アッパー部の各々が外側縦アーチの位置を含む着用者の足の外周面に向かって接近するようになる。かかる場合において、第2アーチ領域はその上下方向の間隔が相対的に小さくなるように変位するに過ぎないことから、外甲側において下側および上側アッパー部の各々に対する過度な応力集中が抑制される。このため、外甲側において下側および上側アッパー部の各々にしわ等が生じにくくなる。その結果、下側および上側アッパー部を、外甲側において着用者の足の外周面にフィットさせやすくなる。特に、外甲側に位置する下側アッパー部の第2アーチ被覆部を、着用者の足の外側縦アーチを構成する各骨の一部が外甲側に向かって突出する部位をその側方から包み込むようにフィットさせやすくなる。したがって、第4の形態では、外側縦アーチを含めた着用者の足に対するフィット感を向上させることができる。
【0015】
第5の形態は、第4の形態において、緊締部は、少なくとも1本の紐部を含み、該紐部の端部同士が上側アッパー部の後部の位置で互いに結ばれた状態となるように構成されていることを特徴とする。
【0016】
この第5の形態では、第1および第2間隙部に配置された紐部を一般的なシューズのように縛ることができる。
【発明の効果】
【0017】
以上説明したように、本発明によると、少なくとも内側縦アーチを重点とする着用者の足に対するフィット感およびサポート性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、実施形態に係るシューズを示す平面図である。
図2図2は、実施形態に係るシューズを、足の骨格構造と併せて内甲側から見て示す側面図である。
図3図3は、実施形態に係るシューズを、足の骨格構造と併せて外甲側から見て示す側面図である。
図4図4は、図1のIV−IV線断面図である。
図5図5は、紐部を緩めた状態の図4相当図である。
図6図6は、実施形態に係るシューズの変形例1を示す平面図である。
図7図7は、実施形態に係るシューズの変形例1を内甲側から見て示す斜視図である。
図8図8は、実施形態に係るシューズの変形例1を外甲側から見て示す斜視図である。
図9図9は、実施形態に係るシューズの変形例2を示す図1相当図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。以下の実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0020】
図1図3は、本発明の実施形態に係るシューズSの全体を示している。このシューズSは、例えばランニング用や各種競技用のスポーツシューズ、日常使用のスニーカーおよびリハビリ用シューズとして使用される。
【0021】
ここで、シューズSは、左足用シューズのみを例示している。右足用シューズは、左足用シューズと左右対称になるように構成されているので、以下の説明では左足用シューズのみについて説明し、右足用シューズの説明は省略する。
【0022】
また、以下の説明において、上側および下側とはシューズSの上下方向の位置関係を表し、前方(前側)および後方(後側)とはシューズSの前後方向の位置関係を表し、内甲側および外甲側とはシューズSの足幅方向の位置関係を表すものとする。
【0023】
(ソール)
図2図4に示すように、シューズSは、ソール1を備えている。ソール1は、アウトソール1aおよびミッドソール1bを有している。
【0024】
アウトソール1aは、着用者の足Fの前足部から後足部に亘る範囲に対応して配設されている。アウトソール1aは、ミッドソール1bよりも高硬度の硬質弾性部材で構成されており、例えばエチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)等の熱可塑性樹脂、ポリウレタン(PU)等の熱硬化性樹脂、またはブタジエンラバーやクロロプレンラバー等のラバー素材が適している。
【0025】
ミッドソール1bは、着用者の足Fの足裏面を支持するように構成されている。ミッドソール1bは、軟質の弾性材からなり、例えばエチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)等の熱可塑性合成樹脂やその発泡体、ポリウレタン(PU)等の熱硬化性樹脂やその発泡体、ブタジエンラバーやクロロプレンラバー等のラバー素材やその発泡体などが適している。ミッドソール1bは、接着剤などによりアウトソール1aの上側に積層配置されている。
【0026】
(アッパー)
次に、図1図5に示すように、シューズSは、着用者の足Fを覆うためのアッパー2を備えている。
【0027】
アッパー2の上部には、着用者の足Fを挿入するための足挿入部2aが設けられている。足挿入部2aは、後述する後側アッパー部4の上端部および後述する上側アッパー部10の後端部により構成されている。
【0028】
(前側および後側アッパー部)
アッパー2は、前側および後側アッパー部3,4を有している。前側および後側アッパー部3,4の各々は、例えば、編物、織物、不織布、合成皮革、人工皮革、天然皮革などにより構成されている。
【0029】
前側アッパー部3は、着用者の足指に対応する位置に配置されている。前側アッパー部3の下端部は、ソール1(ミッドソール1b)前部の周縁部に固着されている。
【0030】
後側アッパー部4は、着用者の足Fの踵部に対応する位置に配置されている。後側アッパー部4の下端部は、ソール1(ミッドソール1b)後部の周縁部に固着されている。
【0031】
(下側アッパー部)
図1図5に示すように、アッパー2は、下側アッパー部5,5を有している。下側アッパー部5,5は、前側および後側アッパー部3,4と同様に、編物、織物、不織布、合成皮革、人工皮革、天然皮革などにより構成されている。
【0032】
各下側アッパー部5は、着用者の足Fの内甲側および外甲側の各々に対応する位置に配置されている。各下側アッパー部5は、着用者の足指から踵部に亘る範囲に対応するように前後方向に延びている(図2および図3参照)。各下側アッパー部5は、下端部がソール1(ミッドソール1b)の周縁部に固着されている。
【0033】
各下側アッパー部5は、前側および後側アッパー部3,4の各々と一体形成されている。具体的に、各下側アッパー部5は、前端部が前側アッパー部3の後端部と連続するように前側アッパー部3と一体形成されている。また、各下側アッパー部5は、後端部が後側アッパー部4の前端部と連続するように後側アッパー部4と形成されている。
【0034】
なお、図1図3の破線L1,L1は、前側アッパー部3と下側アッパー部5,5との境界部を仮想的に示すものである。また、図2および図3の破線L2,L2は、後側アッパー部4と下側アッパー部5,5との境界部を仮想的に示すものである。
【0035】
(第1足指被覆部および第1アーチ被覆部)
図2に示すように、内甲側に位置する下側アッパー部5は、第1足指被覆部6および第1アーチ被覆部7を有している。第1足指被覆部6および第1アーチ被覆部7は、前後方向において互いに連続している。なお、図1図3の破線L3は、第1足指被覆部6と第1アーチ被覆部7との境界部を仮想的に示すものである。
【0036】
第1足指被覆部6は、例えば、着用者の足Fの拇趾末節骨DPから拇趾中足骨MT1の遠位骨頭近傍に亘る範囲に対応する位置に配置されている。
【0037】
第1アーチ被覆部7は、着用者の足Fの拇趾中足骨MT1の遠位骨頭近傍から踵骨HLの前後方向略中央に亘る範囲に対応する位置に配置されている。また、第1アーチ被覆部7の上端部は、着用者の足Fの拇趾中足骨MT1、内側楔状骨CM、舟状骨NB、距骨TB、および踵骨HLの各々の下部側を繋ぐ曲線に沿って連続するように形成されている。そして、図4に示すように、第1アーチ被覆部7は、着用者の足Fの内側縦アーチMAを下方から支持するように構成されている。なお、一般的に、内側縦アーチMAは、拇趾中足骨MT1、内側楔状骨CM、舟状骨NB、距骨TB、および踵骨HLにより構成される部位(いわゆる土踏まず)に相当する。
【0038】
(第2足指被覆部および第2アーチ被覆部)
図3に示すように、外甲側に位置する下側アッパー部5は、第2足指被覆部8および第2アーチ被覆部9を有している。第2足指被覆部8および第2アーチ被覆部9は、前後方向において互いに連続している。なお、図1図3の破線L4は、第2足指被覆部8と第2アーチ被覆部9との境界部を仮想的に示すものである。
【0039】
第2足指被覆部8は、着用者の足Fの拇趾末節骨DPから小趾中足骨MT5の遠位骨頭近傍に亘る範囲に対応する位置に配置されている。
【0040】
第2アーチ被覆部9は、着用者の足Fの小趾中足骨MT5の遠位骨頭近傍(MP関節近傍)から踵骨HLの前後方向略中央に亘る範囲に対応する位置に配置されている。また、第2アーチ被覆部9の上端部は、着用者の足Fの小趾中足骨MT5、立方骨CB、および踵骨HLの各々を繋ぐ曲線に沿って連続するように形成されている。そして、図4に示すように、第2アーチ被覆部9は、着用者の足Fの外側縦アーチLAを側方から覆うように構成されている。より具体的に、第2アーチ被覆部9は、着用者の足Fの外側縦アーチLAを構成する各骨の一部が外甲側に向かって突出する部位を覆うように構成されている。なお、一般的に、外側縦アーチLAは、小趾中足骨MT5、立方骨CB、および踵骨HLにより構成される部位に相当する。
【0041】
(上側アッパー部)
図1図5に示すように、アッパー2は、上側アッパー部10を有している。上側アッパー部10は、前側および後側アッパー部3,4と同様に、編物、織物、不織布、合成皮革、人工皮革、天然皮革などにより構成されている。
【0042】
上側アッパー部10は、下側アッパー部5,5よりも上方に配置されている。上側アッパー部10は、着用者の足指から甲部に亘る範囲に対応する位置に配置されている。上側アッパー部10は、前端部が前側アッパー部3の後端部と連続するように前側アッパー部3と一体形成されている。なお、図1図3の破線L5は、前側アッパー部3と上側アッパー部10との境界部を仮想的に示すものである。
【0043】
(第1間隙部)
図1および図2に示すように、アッパー2は、第1間隙部11を有している。第1間隙部11は、着用者の足Fの内甲側に対応する位置に配置されている。第1間隙部11は、下側アッパー部5と上側アッパー部10との上下方向の間に配設されている。
【0044】
第1間隙部11は、第1足指領域11aおよび第1アーチ領域11bを含んでいる。第1足指領域11aおよび第1アーチ領域11bは、前後方向において互いに連続している。
【0045】
第1足指領域11aは、例えば、着用者の足Fの拇趾末節骨DPから拇趾中足骨MT1の遠位骨頭近傍に亘る範囲に対応する位置に配置されている。
【0046】
第1アーチ領域11bは、着用者の足Fの拇趾中足骨MT1の遠位骨頭近傍(MP関節近傍)から踵骨HLの前後方向略中央に亘る範囲に対応する位置に配置されている。すなわち、第1アーチ領域11bは、着用者の足Fの内側縦アーチMAに対応する位置に配置されている。また、第1アーチ領域11bは、第1アーチ被覆部7と隣接している。さらに、第1アーチ領域11bは、上下方向の間隔が第1足指領域11aの上下方向の間隔よりも大きくなるように形成されている。
【0047】
(第2間隙部)
図1および図3に示すように、アッパー2は、第2間隙部12を有している。第2間隙部12は、着用者の足Fの外甲側に対応する位置に配置されている。第2間隙部12は、下側アッパー部5と上側アッパー部10との上下方向の間に設けられている。
【0048】
第2間隙部12は、第2足指領域12aおよび第2アーチ領域12bを含んでいる。第2足指領域12aおよび第2アーチ領域12bは、前後方向において互いに連続している。
【0049】
第2足指領域12aは、着用者の足Fの拇趾末節骨DPから小趾中足骨MT5の遠位骨頭近傍に亘る範囲に対応する位置に配置されている。
【0050】
第2アーチ領域12bは、着用者の足Fの小趾中足骨MT5の遠位骨頭近傍(MP関節近傍)から踵骨HLの前後方向略中央に亘る範囲に対応する位置に配置されている。すなわち、第2アーチ領域12bは、着用者の足Fの外側縦アーチLAに対応する位置に配置されている。また、第2アーチ領域12bは、第2アーチ被覆部9と隣接している。さらに、第2アーチ領域12bは、上下方向の間隔が第2足指領域12aの上下方向の間隔よりも大きくなるように形成されている。
【0051】
(緊締部)
図1図5に示すように、アッパー2は、緊締部20を有している。緊締部20は、第1足指領域11aおよび第1アーチ領域11bにおける上下方向の各間隔が狭まるように該各間隔を調整可能に構成されている。また、緊締部20は、第2アーチ領域12bおよび第2足指領域12aにおける上下方向の各間隔が狭まるように該各間隔を調整可能に構成されている。
【0052】
この実施形態において、緊締部20は、孔部21a,21aと、孔部21b,21b,…と、環状部22a,22a,…と、環状部22b,22b,…と、環状部22c,22cと、1本の紐部23とにより構成されている。
【0053】
孔部21a,21aおよび孔部21b,21bの各々は、略円形状に貫通形成されている。孔部21a,21aおよび孔部21b,21bの各々は、上側アッパー部10の周縁部寄りに配置されている。孔部21a,21aは、上側アッパー部10の前部寄りに配置されている。孔部21b,21bは、上側アッパー部10の孔部寄りに配置されている。
【0054】
環状部22a,22a,…は、各下側アッパー部5の上端部に設けられている。各環状部22aは、略前後方向に沿って貫通した略筒状に形成されている。環状部22a,22a,…は、略前後方向において互いに間隔をあけて配置されている。
【0055】
環状部22b,22b,…は、上側アッパー部10における足幅方向の周縁部に設けられている。各環状部22bは、略前後方向に沿って貫通した略筒状に形成されている。環状部22b,22b,…は、略前後方向において互いに間隔をあけて配置されている。
【0056】
環状部22c,22cは、後側アッパー部4における上側の前端部に配置されている。各環状部22cは、略上下方向に沿って貫通した略筒状に形成されている。
【0057】
紐部23は、その中間部が上側アッパー部10の前部下方に位置した状態で孔部21a,21aに挿通されている。紐部23は、各孔部21aから前側アッパー部3の近傍に位置する各環状部22aに向かって架け渡されるように環状部22a,22aに挿通されている。紐部23は、環状部22aと環状部22bとに交互に架け渡されるように各環状部22aおよび各環状部22bに挿通されている。紐部23は、足挿入部2a近傍に位置する各環状部22bから各環状部22cに向かって架け渡されるように環状部22c,22cに挿通されている。紐部23は、各環状部22cから各孔部21bに向かって架け渡されるように孔部21b,21bに挿通されている。そして、紐部23の端部同士は、上側アッパー部10の後部近傍で互いに結ばれた状態となっている。
【0058】
ここで、図5に示すように、紐部23が緩められた状態では、第1および第2間隙部11,12の各々における上下方向の間隔が相対的に大きくなる。かかる状態では、下側アッパー部5,5および上側アッパー部10の各々が着用者の足Fから離れた状態となる。
【0059】
一方、図1図4に示すように、紐部23が引き締められた状態では、第1および第2間隙部11,12の各々における上下方向の間隔が相対的に小さくなる。かかる状態では、下側アッパー部5,5および上側アッパー部10の各々が内側縦アーチMAおよび外側縦アーチLAの位置を含む着用者の足Fの外周面に向かって接触した状態となる。具体的に、第1アーチ被覆部7が着用者の足Fの内側縦アーチMAを下方から支持した状態となる一方、第2アーチ被覆部9が着用者の足Fの外側縦アーチLAを側方から支持した状態となる。
【0060】
[実施形態の作用効果]
以上のように、シューズSにおいて、緊締部20により第1アーチ領域11bの上下方向の間隔が狭められた場合には、下側および上側アッパー部5,10の各々が内側縦アーチMAの位置を含む着用者の足Fの外周面に向かって接近するようになる(図4参照)。かかる場合において、第1アーチ領域11bはその上下方向の間隔が相対的に小さくなるように変位するに過ぎないことから、下側および上側アッパー部5,10の各々に対する過度な応力集中が抑制される。このため、下側および上側アッパー部5,10の各々にしわが生じにくくなる。その結果、下側および上側アッパー部5,10を、内側縦アーチMAの位置を含む着用者の足Fの外周面にフィットさせやすくなる。特に、内甲側に位置する下側アッパー部5の第1アーチ被覆部7を、複雑な湾曲形状となる着用者の足Fの内側縦アーチMAに対して下方からフィットさせやすくなる。そして、内側縦アーチMAを重点とする着用者の足Fを、下側アッパー部5、5および上側アッパー部10によりシューズS内でずれないように安定的に支持することが可能となる。したがって、シューズSでは、少なくとも内側縦アーチMAを重点とする着用者の足Fに対するフィット感およびサポート性を向上させることができる。
【0061】
また、緊締部20は、第1足指領域11aおよび第1アーチ領域11bにおける上下方向の各間隔が狭まるように該各間隔を調整可能に構成されている。このため、緊締部20により第1足指領域11aおよび第1アーチ領域11bの双方における上下方向の間隔を狭めることにより、下側および上側アッパー部5,10を、足指から内側縦アーチMAに亘る部位を含む着用者の足Fの外周面にフィットさせやすくなる。そして、着用者の足Fにおいて足指から内側縦アーチMAに亘る部位を、下側アッパー部5、5および上側アッパー部10によりシューズS内でずれないように安定的に支持することが可能となる。したがって、シューズSでは、足指および内側縦アーチMAを重点とする着用者の足Fに対するフィット感およびサポート性を向上させることができる。
【0062】
また、緊締部20は、第2間隙部12において下側アッパー部5と上側アッパー部10とを緊締しかつ第2アーチ領域12bの上下方向の間隔が狭まるように該間隔を調整可能に構成されている。かかる構成において、緊締部20により第2アーチ領域12bの上下方向の間隔が狭められた場合には、下側および上側アッパー部5,10の各々が外側縦アーチLAの位置を含む着用者の足Fの外周面に向かって接近するようになる。かかる場合において、第2アーチ領域12bはその上下方向の間隔が相対的に小さくなるように変位するに過ぎないことから、外甲側において下側および上側アッパー部5,10の各々に対する過度な応力集中が抑制される。このため、外甲側において下側および上側アッパー部5,10の各々にしわ等が生じにくくなる。その結果、下側および上側アッパー部5,10を、外甲側において着用者の足Fの外周面にフィットさせやすくなる。特に、外甲側に位置する下側アッパー部5の第2アーチ被覆部9を、着用者の足Fの外側縦アーチLAを構成する各骨の一部が外甲側に向かって突出する部位をその側方から包み込むようにフィットさせやすくなる。したがって、シューズSでは、外側縦アーチLAを含めた着用者の足Fに対するフィット感を向上させることができる。
【0063】
また、緊締部20は、少なくとも1本の紐部23を含み、該紐部23の端部同士が上側アッパー部10の後部の位置で互いに結ばれた状態となるように構成されている。かかる構成により、第1および第2間隙部11,12に配置された紐部23を一般的なシューズSのように縛ることができる。
【0064】
[実施形態の変形例1]
上記実施形態では、ソール1がアウトソール1aおよびミッドソール1bを有する形態を示したが、この形態に限られない。例えば、図6図8に示したシューズSの変形例1のように、アウトソール1aからなるソール1を備えたクリーツシューズとしてもよい。
【0065】
また、上記実施形態では、緊締部20を、孔部21a,21aと、孔部21b,21b,…と、環状部22a,22a,…と、環状部22b,22b,…と、環状部22c,22cと、1本の紐部23とにより構成した形態を示したが、この形態に限られない。例えば、図6図8に示したシューズSの変形例1のように、環状部22a,22a,…に代えて孔部24a,24a,…を適用しかつ環状部22b,22b,…に代えて孔部24b,24b,…を適用してもよい。このような変形例1であっても、上記実施形態と同様に、緊締部20としての機能を果たすことができる。
【0066】
[実施形態の変形例2]
上記実施形態では、上側アッパー部10が前側アッパー部3と一体形成された形態を示したが、この形態に限られない。例えば、図9に示したシューズSの変形例1のように、上側アッパー部10と前側アッパー部3とを分離した形態としてもよい。かかる形態では、上側アッパー部10を、前側アッパー部3および下側アッパー部5、5に対して着脱可能に取り付けることができる。
【0067】
[その他の実施形態]
上記実施形態では、第1間隙部11が第1足指領域11aおよび第1アーチ領域11bを含む形態を示したが、この形態に限られず、第1間隙部11が第1アーチ領域11bのみからなる形態としてもよい。かかる形態では、第1足指領域11aに対応する位置において、下側アッパー部5の上端部と上側アッパー部10の周縁部が互いに連続するように形成されていればよい。
【0068】
また、上記実施形態では、第2間隙部12が第2足指領域12aおよび第2アーチ領域12bを含む形態を示したが、この形態に限られない。すなわち、第2間隙部12が第2アーチ領域12bのみからなる形態としてもよい。かかる形態では、第2足指領域12aに対応する位置において、下側アッパー部5の上端部と上側アッパー部10の周縁部が互いに連続するように形成されていればよい。
【0069】
また、上記実施形態では、アッパー2が第1間隙部11および第2間隙部12を有する形態を示したが、この形態に限られず、アッパー2が第1間隙部11のみを有する形態としてもよい。
【0070】
また、上記実施形態では、緊締部20を構成する一要素として紐部23を適用した形態を示したが、この形態に限られない。例えば、紐部23に代えて、図示しないベルトまたはワイヤなどの部材を適用してもよい。
【0071】
また、上記実施形態では、緊締部20が環状部22c,22cを含む形態を示したが、この形態に限られない。すなわち、緊締部20が環状部22c,22cを含まない形態としてもよい。かかる形態では、紐部23を、足挿入部2a近傍に位置する環状部22aまたは環状部22bから各孔部21bに架け渡すようにすればよい。
【0072】
以上、本発明についての実施形態を説明したが、本発明は上述の実施形態のみに限定されず、発明の範囲内で種々の変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明は、例えばランニング用や各種競技用のスポーツシューズ、日常使用のスニーカーおよびリハビリ用シューズとして産業上の利用が可能である。
【符号の説明】
【0074】
S:シューズ
1:ソール
2:アッパー
3:前側アッパー部
4:後側アッパー部
5:下側アッパー部
6:第1足指被覆部
7:第1アーチ被覆部
8:第2足指被覆部
9:第2アーチ被覆部
10:上側アッパー部
11:第1間隙部
12:第2間隙部
11a:第1足指領域
11b:第1アーチ領域
12a:第2足指領域
12b:第2アーチ領域
20:緊締部
23:紐部
F:足
DP:拇趾末節骨
MT1:拇趾中足骨
MT5:小趾中足骨
CM:内側楔状骨
NB:舟状骨
TB:距骨
CB:立方骨
HL:踵骨
MA:内側縦アーチ
LA:外側縦アーチ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9