(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記取得条件設定部は、前記加工の状態に基づいて、前記状態量取得条件として、前記加工に含まれる加工工程において取得する前記状態量及び当該状態量を取得するためのサンプリング周期の少なくともいずれかを前記加工単位毎に変化させるよう設定することを特徴とする請求項1に記載の加工情報記録装置。
工作機械で実行された加工の加工指令データ及び当該加工において取得された加工の状態を表す状態量のデータを記憶するデータベースを参照し、前記加工において前記状態量を取得した際の取得条件を表す状態量取得条件の有効性を評価する加工情報評価部と、
実行対象となる加工指令データに含まれる加工工程毎に、当該加工工程の加工内容及び前記加工情報評価部の評価結果に基づいて、当該加工工程に対する前記状態量取得条件を設定する取得条件設定部と、
前記取得条件設定部によって設定された前記加工工程毎の前記状態量取得条件に基づいて、前記実行対象となる加工指令データによりワークの加工を実行する加工実行部と、
前記加工実行部によって実行される前記ワークの加工の状態を表す状態量を取得する状態量取得部と、
を備え、
前記加工指令データは、加工の実行時における加工形状、加工方法及び使用される工具のうちの少なくとも一つが対応付けられた加工単位を構成要素とした階層構造を有する構造化データを含み、
前記取得条件設定部は、前記加工単位毎に前記状態量取得条件を設定可能であることを特徴とする加工情報記録装置。
工作機械で実行された加工の加工指令データ及び当該加工において取得された加工の状態を表す状態量のデータを記憶するデータベースを参照し、前記加工において前記状態量を取得した際の取得条件を表す状態量取得条件の有効性を評価する加工情報評価ステップと、
実行対象となる加工指令データに含まれる加工工程毎に、当該加工工程の加工内容及び加工情報評価部の評価結果に基づいて、当該加工工程に対する前記状態量取得条件を設定する取得条件設定ステップと、
前記取得条件設定ステップによって設定された前記加工工程毎の前記状態量取得条件に基づいて、前記実行対象となる加工指令データによりワークの加工を実行する加工実行ステップと、
前記加工実行ステップによって実行される前記ワークの加工の状態を表す状態量を取得する状態量取得ステップと、
を含み、
前記加工指令データは、加工の実行時における加工形状、加工方法及び使用される工具のうちの少なくとも一つが対応付けられた加工単位を構成要素とした階層構造を有する構造化データを含み、
前記取得条件設定ステップは、前記加工単位毎に前記状態量取得条件を設定可能としたことを特徴とする加工情報記録方法。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。
[第1実施形態]
[構成]
図1は、本発明の一実施形態に係る加工情報記録システムSのシステム構成を示す模式図である。
本実施形態に係る加工情報記録システムSでは、生産プロセスにおいて加工指令データに従って実行された加工時の加工実行データ(加工履歴のデータ)は、加工情報記録装置1によって取得され、加工情報データベース1Aに記憶(加工履歴として記録)される。本実施形態において、加工指令データは、階層構造を有する構造化データとして記述されており、加工の実行時において、加工形状、加工方法及び工具等が対応付けられた加工単位(WS:ワーキングステップ)を構成要素としている。
また、本実施形態に係る加工情報記録システムSでは、加工情報記録装置1が加工実行データを取得する際に、加工単位毎に、加工状態に応じて、加工状態を表す状態量及び状態量を取得するサンプリング周期等の状態量取得条件を変化させる。
したがって、本実施形態に係る加工情報記録システムSによれば、工作機械における加工情報をより適切に取得することができる。
【0018】
図1に示すように、加工情報記録システムSは、加工情報記録装置1と、CAD(Computer Aided Design)システム2と、CAM(Computer Aided Manufacturing)システム3と、CNC(Computerized Numerical Control)工作機械4と、周辺機器5と、計測器6と、を含んで構成される。また、加工情報記録装置1と、CADシステム2と、CAMシステム3と、CNC工作機械4と、計測器6とは、有線又は無線LAN等のネットワークあるいはUSB(Universal Serial Bus)ケーブル等の通信ケーブルによって通信可能に構成されている。なお、加工情報記録システムSを構成する各装置における時刻情報は同期されており、生成されるデータのタイムスタンプが、統一された時刻の基準に基づくものとされている。
【0019】
加工情報記録装置1は、設計データ、加工指令データ、加工実行データ、周辺機器のデータ、計測データの各データを対応付けて記憶するための加工情報データベース(加工情報DB)1Aを備えている。なお、本実施形態において、加工情報DB1Aには、加工情報記録装置1において処理が行われたケースの他、加工情報記録装置1以外で処理が行われたケースについても集約されたデータが記憶されている。
【0020】
設計データは、製品形状データ及び工程設計データを含んでいる。製品形状データは、CADシステム3において生成される2次元又は3次元のCADデータであり、工程設計データは、CAMシステムにおいて生成される加工方法あるいは加工順序等が定義されたCAMデータである。
【0021】
加工指令データは、加工作業の基本パターンを表すワーキングステップの集合からなるデータである。本実施形態において、加工指令データは、階層構造を有する構造化データとして記述される。
加工実行データは、加工指令データに基づいて実行された加工の履歴を表すデータである。本実施形態において、加工実行データは、加工指令データに対応した階層構造を有する構造化データとして記述される。
周辺機器のデータは、バイス、チャックあるいはツーリング等、加工に用いられる周辺機器のデータである。
計測データは、音響センサ、温度センサあるいは寸法測定器等、CNC工作機械4の外部機器として設置された計測器によって計測されたデータである。
【0022】
図2は、加工指令データ及び加工実行データのデータ構造を示す模式図である。なお、
図2は、加工指令データ及び加工実行データの概念の一例を示しており、具体的な加工指令データ及び加工実行データの内容(階層化の形態及びデータの項目等)は、実際の加工内容に応じて種々異なるものとなる。
【0023】
図2に示すように、加工指令データには、加工対象物を表すワークピース(Workpiece)のデータと、加工順に第1番目〜第n番目(nは自然数)までの加工作業の基本パターン(加工単位)を表すワーキングステップ(WS)のデータとが含まれている。なお、加工指令データには、加工指令データを識別するIDが付されている。
また、各ワーキングステップのデータには、ポケット等の加工形状を表すフィーチャー(Feature)のデータと、加工方法を表すオペレーション(Operation)のデータとが含まれている。
【0024】
また、オペレーションのデータには、加工戦略(加工パスのパターン)を表すストラテジ(Strategy)のデータと、切削条件を表すテクノロジ(Technology)のデータと、加工に用いるCNC工作機械4の機能を表すマシンファンクション(Mchn.func)のデータと、加工に用いるツールを表すカッティングツール(Cutting tool)のデータとが含まれている。
さらに、テクノロジのデータには、ツールの送り速度を表すフィードレート(Feedrate)のデータと、主軸の回転速度(主軸回転)を表すスピンドルスピード(Spindle speed)のデータとが含まれている。
【0025】
また、
図2に示すように、加工実行データには、対応する加工指令データを識別する加工指令IDのデータと、加工結果を計測した計測データの記憶領域を示すリンク情報のデータと、加工順に第1番目〜第n番目までのワーキングステップ毎の加工の履歴を表す実行履歴(Exec Log)のデータとが含まれている。
また、実行履歴のデータには、温度等の加工環境を表すデータと、主軸負荷等の加工状態を表すデータとが含まれている。
【0026】
図3は、加工指令データを構成するワーキングステップのデータの一例を示す模式図である。
図3に示すように、1つのワーキングステップのデータは、加工指令データに階層的に含まれるものであり、加工形状を表すフィーチャー(Feature)のデータと、加工方法を表すオペレーション(Operation)のデータとについて、具体的な内容が記述されている。
【0027】
例えば、
図3においては、加工形状を表すフィーチャー(Feature)のデータとして、「ポケット1」の形状を表す「pocket_1」が記述されている。
また、加工方法を表すオペレーション(Operation)のデータとして、「荒加工」であることを表す「Pocket_rough_milling」が記述されている。また、加工戦略(加工パスのパターン)を表すストラテジ(Strategy)のデータとして、加工パスは往復パスであることを表す「Bidirectional」が記述されている。また、加工に用いるツールを表すカッティングツール(Cutting tool)のデータとして、所定種類のエンドミルを表す「R2_ball_endmill」が記述されている。
このように、加工指令データが構造化されていることにより、単純にGコード形式(非構造化形式)で加工指令が記述されている場合に比べ、加工全体の流れを把握することが容易となる。
【0028】
CADシステム2は、ユーザの操作に応じて、製品の形状を表す2次元又は3次元のCADデータを生成する。
CAMシステム3は、ユーザの操作に応じて、製品を加工するための加工方法(使用する加工技術の種類等)あるいは加工順序(製品を加工する際の加工経路等)を定義した工程設計データを生成する。
【0029】
CNC工作機械4は、数値制御によって動作を制御する数値制御装置を備え、数値制御装置の制御に従って、製品となる材料に対して切削あるいは研磨等の加工を行う。また、CNC工作機械4は、数値制御装置によって、動作状態に関する各種データ(サーボの位置や速度のデータ等)を取得する。
周辺機器5は、バイス、チャックあるいはツーリング等、加工に用いられる周辺機器である。
計測器6は、温度センサあるいは寸法測定器等、CNC工作機械4の外部機器として設置された計測器である。
【0030】
[加工情報記録装置1の構成]
次に、加工情報記録装置1の構成について説明する。
図4は、加工情報記録装置1の構成を示すブロック図である。
図4に示すように、加工情報記録装置1は、CPU(Central Processing Unit)11と、ROM12と、RAM13と、入力部14と、表示部15と、記憶部16と、通信部17とを備えている。
【0031】
CPU11は、記憶部16に記憶された各種プログラムを実行することにより、加工情報記録装置1全体を制御する。例えば、CPU11は、製品の加工を実行する処理(以下、「加工実行処理」と称する。)のためのプログラムを実行する。
【0032】
加工実行処理が実行される場合、CPU11には、機能的構成として、形状データ取得部11aと、工程設計データ取得部11bと、加工指令データ生成部11cと、ポストプロセッシング部11dと、状態監視部11eと、取得条件設定部及び取得制御部としても機能する実行管理部11fと、状態量取得部としても機能する加工モニタ部11gと、が形成される。
【0033】
形状データ取得部11aは、CADシステム2において生成された製品の形状を表す2次元又は3次元のCADデータ(製品形状データ)を取得し、加工情報DB1Aに記憶する。
工程設計データ取得部11bは、CAMシステムにおいて生成された工程設計データを取得し、加工情報DB1Aに記憶する。なお、工程設計データには、製品を加工する際の加工経路を示すCL(Cutter Location)データが含まれている。
【0034】
加工指令データ生成部11cは、工程設計データに基づいて、加工作業の基本パターンを表すワーキングステップを含む加工指令データを生成する。ワーキングステップが表す基本パターンとしては、例えば、ポケットの側面加工、ポケット形状、加工パスのパターン、径方向切り込み、軸方向切り込み、送り速度、主軸回転、アプローチパターン、リトラクトパターン等の各パターンを定義することができる。
【0035】
ポストプロセッシング部11dは、加工指令データに基づいて、ポストプロセッシング処理を実行し、CNC工作機械4の数値制御装置に応じたインタプリタを用いて、機械座標系上の加工パスを生成する。そして、ポストプロセッシング部11dは、機械座標系上の加工パスを表す加工指令データ及びCNCのパラメータのデータ(以下、適宜「数値制御用コマンドデータ」と称する。)をCNC工作機械4の数値制御装置に出力する。
【0036】
状態監視部11eは、数値制御装置によって制御されるCNC工作機械4の状態(例えば、工具の交換が必要であることを示すアラートの発生等)を監視する。
【0037】
実行管理部11fは、製品の加工を実行する加工実行処理(加工指令データに基づく加工処理)を管理する。例えば、実行管理部11fは、CNC工作機械4の数値制御装置から、CNC工作機械4のスタンバイが完了したことを示す信号を受信することに応じて、ポストプロセッシング部11dによって生成された加工パスに基づく加工の開始を指示したり、CNC工作機械4の数値制御装置からCNC工作機械4における加工が終了したことを示す信号を受信することに応じて、加工の終了を表示したりする。
【0038】
また、実行管理部11fは、加工実行処理において、加工モニタ部11gに対し、加工状態を表す状態量及び状態量を取得するサンプリング周期を含む状態量取得条件を指示し、加工指令データに基づいて実行された加工の履歴を表す加工実行データを取得する。さらに、実行管理部11fは、取得した加工実行データを加工情報DB1Aに逐次格納する。
本実施形態において、実行管理部11fは、加工状態(計測器6の計測結果や加工実行処理の状態を示す信号)に基づいて、加工単位毎に、加工状態を表す状態量及び状態量を取得するサンプリング周期等の状態量取得条件を変化させる。なお、加工状態として、計測器6による各種計測結果や、加工実行処理の状態を示す各種信号を参照することができるが、本実施形態においては、計測器6における音響センサの出力を参照するものとする。音響センサの出力を参照する場合、加工時における加工音に異常が発生した場合等を加工状態の変化として検出することができる。
【0039】
図5は、加工実行データの具体例を示す模式図である。
図5に示すように、加工実行データには、対応する加工指令データのIDと、加工の実行開始時刻と、加工の実行終了時刻と、第1番目〜第n番目のワーキングステップの実行情報とが含まれている。
【0040】
ワーキングステップの実行情報には、ワーキングステップのIDと、ワーキングステップの実行開始時刻と、ワーキングステップの実行終了時刻と、切削時間と、サンプル値へのポインタとが含まれている。
サンプル値へのポインタが示すサンプル値のデータには、加工指令データのID及びワーキングステップのIDを含む管理情報と、第1〜第nのサンプル値とが含まれている。
各サンプル値)には、例えば、タイムスタンプ(Time stamp)と、X軸モータ電流と、Y軸モータ電流と、Z軸モータ電流と、主軸負荷と、送り軸負荷と、機械の振動とを含む各種データが含まれている。
【0041】
図4に戻り、加工モニタ部11gは、実行管理部11fから指示された状態量取得条件に従って、加工状態を表す状態量をCNC工作機械4の数値制御装置から取得する。加工状態を表す状態量には、例えば、タイムスタンプ(Time stamp)と、X軸モータ電流と、Y軸モータ電流と、Z軸モータ電流と、主軸負荷と、送り軸負荷と、機械の振動とを含む各種データが含まれ、これらの中で、加工状態に応じて要求されるデータが逐次取得される。
【0042】
ROM12には、加工情報記録装置1を制御するための各種システムプログラムが予め書き込まれている。
RAM13は、DRAM(Dynamic Random Access Memory)等の半導体メモリによって構成され、CPU11が各種処理を実行する際に生成されるデータを記憶する。
入力部14は、キーボードあるいはマウス等の入力装置によって構成され、ユーザによる加工情報記録装置1への各種情報の入力を受け付ける。
【0043】
表示部15は、LCD(Liquid Crystal Display)等の表示装置によって構成され、加工情報記録装置1の各種処理結果を表示する。
記憶部16は、ハードディスクあるいはフラッシュメモリ等の不揮発性の記憶装置によって構成され、加工実行処理のためのプログラム等を記憶する。また、記憶部16には、加工情報DB1Aが記憶される。
通信部17は、有線又は無線LANやUSB等、所定の通信規格に基づいて信号処理を行う通信インターフェースを備え、加工情報記録装置1が他の装置との間で行う通信を制御する。
【0044】
[動作]
次に、加工情報記録システムSの動作を説明する。
[加工実行処理]
図6は、加工情報記録装置1が実行する加工実行処理の流れを説明するフローチャートである。
加工実行処理は、入力部14を介して、加工実行処理を起動させる指示が入力されることにより開始される。
ステップS1において、実行管理部11fは、加工状態に対する判定条件(状態量取得条件を変化させるための条件)及び変化後の状態量取得条件(ここではサンプリング周期とする)を設定する。本実施形態においては、加工状態に対する判定条件として、音響センサの出力が急激に変化したこと(周波数又は音量が設定された閾値以上変化したこと)を設定する。なお、ステップS1における設定は、オペレータが入力部14を介して入力することや、予め用意された設定ファイルを読み込んで入力すること等が可能である。
【0045】
ステップS2において、実行管理部11fは、加工指令データにおけるワーキングステップの実行を開始する。このとき、実行管理部11fは、加工指令データにおいて実行が終了していないワーキングステップを加工指令データに記述されている順番に1つ実行する。
ステップS3において、実行管理部11fは、音響センサの出力が加工状態に対する判定条件を充足するか否かの判定を行う。音響センサの出力が加工状態に対する判定条件を充足しない場合、ステップS3においてNOと判定されて、処理はステップS5に移行する。一方、音響センサの出力が加工状態に対する判定条件を充足する場合、ステップS3においてYESと判定されて、処理はステップS4に移行する。
【0046】
ステップS4において、実行管理部11fは、ステップS1において設定された変化後の状態量取得条件(サンプリング周期)に変更する。
ステップS5において、加工モニタ部11gは、状態量取得条件として設定されている加工状態を表す状態量を取得する。なお、取得された状態量は、加工実行データとして加工情報DB1Aに格納される。
【0047】
ステップS6において、実行管理部11fは、ワーキングステップの実行が終了したか否かの判定を行う。ワーキングステップの実行が終了していない場合、ステップS6においてNOと判定されて、処理はステップS5に移行する。一方、ワーキングステップの実行が終了した場合、ステップS6においてYESと判定されて、処理はステップS7に移行する。
【0048】
ステップS7において、実行管理部11fは、状態量取得条件(サンプリング周期)を初期設定(ステップS1の状態)に戻す。
ステップS8において、実行管理部11fは、加工指令データの実行が完了したか否かの判定を行う。加工指令データの実行が完了していない場合、ステップS8においてNOと判定されて、処理はステップS2に移行する。一方、加工指令データの実行が完了した場合、ステップS8においてYESと判定されて、加工実行処理は終了となる。
【0049】
このような処理により、加工情報記録システムSにおいては、加工指令データが階層構造を有する構造化データとして構成され、加工単位であるワーキングステップ毎に加工が実行される。そして、加工情報記録装置1が加工実行データを取得する際に、加工単位毎に、加工状態に応じて、加工状態を表す状態量を取得するサンプリング周期(状態量取得条件)が変更される。そのため、ワークの加工を実行している際に、加工単位毎に、加工実行データの取得方法をより適切なものに切り替えることができる。したがって、本実施形態に係る加工情報記録システムSによれば、工作機械における加工情報をより適切に取得することができる。
【0050】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態について説明する。
第1実施形態では、加工単位毎に、加工状態に応じて、加工状態を表す状態量及び状態量を取得するサンプリング周期等を変化させるものとした。これに対し、加工単位毎に、加工内容に対する判定条件に適合する場合にのみ、加工状態を表す状態量を取得することができる。この場合、加工情報記録システムSのシステム構成は、
図1に示す第1実施形態のシステム構成と同様となる。
以下、第1実施形態と異なる部分である加工情報記録装置1の実行管理部11fの構成及び加工実行処理について説明する。
【0051】
本実施形態において、実行管理部11fは、加工実行部としても機能し、製品の加工を実行する加工実行処理(加工指令データに基づく加工処理)を管理する。例えば、実行管理部11fは、CNC工作機械4の数値制御装置から、CNC工作機械4のスタンバイが完了したことを示す信号を受信することに応じて、ポストプロセッシング部11dによって生成された加工パスに基づく加工の開始を指示したり、CNC工作機械4の数値制御装置からCNC工作機械4における加工が終了したことを示す信号を受信することに応じて、加工の終了を表示したりする。
【0052】
また、実行管理部11fは、加工実行処理において、加工単位毎に、加工形状(ポケット等)及び使用される工具(特定のIDの工具等)が予め指定されたものであるか否かを判定する。そして、実行管理部11fは、実行される加工単位(ワーキングステップ)について、加工形状(ポケット等)及び使用される工具(特定のIDの工具等)が予め指定されたものである場合に、加工モニタ部11gに対し、取得する状態量及び状態量を取得するサンプリング周期を含む状態量取得条件を指示し、加工指令データに基づいて実行された加工の履歴を表す加工実行データを取得する。さらに、実行管理部11fは、取得した加工実行データを加工情報DB1Aに逐次格納する。
【0053】
[動作]
次に、加工情報記録システムSの動作を説明する。
[加工実行処理]
図7は、加工情報記録装置1が実行する加工実行処理の流れを説明するフローチャートである。
加工実行処理は、入力部14を介して、加工実行処理を起動させる指示が入力されることにより開始される。
【0054】
ステップS11において、実行管理部11fは、加工内容に対する判定条件(状態量の取得を実行するための条件)及び状態量の取得時における状態量取得条件(ここでは取得対象の状態量及び状態量のサンプリング周期とする)を設定する。本実施形態においては、加工内容に対する判定条件として、加工形状がポケットであるワーキングステップであること及びワーキングステップで使用される工具が特定のIDのものであることを設定する。また、状態量取得条件として、取得対象の状態量を主軸負荷とすること及び主軸負荷のサンプリング周期を設定する。なお、ステップS11における設定は、オペレータが入力部14を介して入力することや、予め用意された設定ファイルを読み込んで入力すること等が可能である。
【0055】
ステップS12において、実行管理部11fは、加工指令データにおけるワーキングステップの実行を開始する。このとき、実行管理部11fは、加工指令データにおいて実行が終了していないワーキングステップを加工指令データに記述されている順番に1つ実行する。
ステップS13において、実行管理部11fは、実行を開始するワーキングステップが加工内容に対する判定条件を充足するか否かの判定を行う。
実行を開始するワーキングステップが加工内容に対する判定条件を充足しない場合、ステップS13においてNOと判定されて、処理はステップS14に移行する。
一方、実行を開始するワーキングステップが加工内容に対する判定条件を充足する場合、ステップS13においてYESと判定されて、処理はステップS15に移行する。
【0056】
ステップS14において、実行管理部11fは、ワーキングステップの実行が終了したか否かの判定を行う。ワーキングステップの実行が終了していない場合、ステップS14においてNOと判定されて、ステップS14の処理が繰り返される。一方、ワーキングステップの実行が終了した場合、ステップS14においてYESと判定されて、処理はステップS17に移行する。
【0057】
ステップS15において、加工モニタ部11gは、状態量取得条件として設定されている加工状態を表す状態量(ここでは主軸負荷)を取得する。なお、取得された状態量は、加工実行データとして加工情報DB1Aに格納される。
ステップS16において、実行管理部11fは、ワーキングステップの実行が終了したか否かの判定を行う。ワーキングステップの実行が終了していない場合、ステップS16においてNOと判定されて、処理はステップS15に移行する。一方、ワーキングステップの実行が終了した場合、ステップS16においてYESと判定されて、処理はステップS17に移行する。
【0058】
ステップS17において、実行管理部11fは、加工指令データの実行が完了したか否かの判定を行う。加工指令データの実行が完了していない場合、ステップS17においてNOと判定されて、処理はステップS12に移行する。一方、加工指令データの実行が完了した場合、ステップS17においてYESと判定されて、加工実行処理は終了となる。
【0059】
このような処理により、本実施形態の加工情報記録システムSにおいては、加工指令データが階層構造を有する構造化データとして構成され、加工単位であるワーキングステップ毎に加工が実行される。そして、加工情報記録装置1が加工実行データを実行する際に、加工単位毎に、加工内容に対する判定条件に適合する場合にのみ、状態量取得条件に設定された状態量が、設定されたサンプリング周期で取得される。そのため、ワークの加工を実行している際に、加工単位毎に、目的とする加工実行データを選択して取得することができる。したがって、本実施形態に係る加工情報記録システムSによれば、工作機械における加工情報をより適切に取得することができる。
【0060】
[第3実施形態]
次に、本発明の第3実施形態について説明する。
本実施形態の加工情報記録システムSは、加工指令データのワーキングステップ毎に、状態量取得条件を自動的に設定する点で、第1実施形態及び第2実施形態と異なっている。加工情報記録システムSのシステム構成は、
図1に示す第1実施形態のシステム構成と同様となる。
以下、第1実施形態及び第2実施形態と異なる部分である加工情報記録装置1の構成及び加工情報記録システムSの動作について説明する。
【0061】
[加工情報記録装置1の構成]
図8は、本実施形態に係る加工情報記録装置1の構成を示すブロック図である。
本実施形態に係る加工情報記録装置1は、加工実行処理及び過去に取得された加工実行データの有効性を評価する処理(以下、「加工情報評価処理」と称する。)を実行する。
【0062】
加工実行処理及び加工情報評価処理が実行される場合、CPU11には、機能的構成として、形状データ取得部11aと、工程設計データ取得部11bと、加工指令データ生成部11cと、ポストプロセッシング部11dと、状態監視部11eと、実行管理部11fと、加工モニタ部11gと、加工情報評価部11hと、が形成される。
これらのうち、加工情報評価部11h及び実行管理部11f以外の構成については、
図4に示す第1実施形態のブロック図と同様である。
【0063】
加工情報評価部11hは、加工情報DB1Aに記録された加工実行データを参照し、各加工実行データとして有効な情報が取得されたか否かを判定する(加工実行データを評価する)。このとき、加工情報評価部11hは、加工単位(ワーキングステップ)毎に有効な情報が取得されたか否かを判定する。有効な情報であるか否かについては、オペレータの判断結果の入力を受け付けて判定したり、取得された情報が設定された閾値(例えば、異常を検出するための閾値等)を超えているか否かによって自動的に判定したり、あるいは、これらの組み合わせによって判定したりすることができる。
そして、加工情報評価部11hは、有効な情報が取得されたと判定した加工実行データの状態量取得条件を有効な情報取得方法(以下、「有効情報取得方法」とも称する。)として加工情報DB1Aに記憶する。本実施形態においては、有効情報取得方法として、加工形状、加工方法、工具、取得する状態量及び状態量のサンプリング周期が記憶される。
【0064】
また、本実施形態において実行管理部11fは、製品の加工を実行する加工実行処理(加工指令データに基づく加工処理)を管理する。例えば、実行管理部11fは、CNC工作機械4の数値制御装置から、CNC工作機械4のスタンバイが完了したことを示す信号を受信することに応じて、ポストプロセッシング部11dによって生成された加工パスに基づく加工の開始を指示したり、CNC工作機械4の数値制御装置からCNC工作機械4における加工が終了したことを示す信号を受信することに応じて、加工の終了を表示したりする。
【0065】
また、実行管理部11fは、加工実行処理において、加工情報DB1Aに記憶された有効情報取得方法を参照し、加工指令データにおける加工単位(ワーキングステップ)毎に、適合する有効情報取得方法を検索する。
そして、実行管理部11fは、適合する有効情報取得方法が検索された場合、その加工単位(ワーキングステップ)の状態量取得条件を、有効情報取得方法に設定する。なお、実行管理部11fは、適合する有効情報取得方法が検索されない場合、予め設定した標準の状態量及びサンプリング周期を状態量取得条件として設定することができる。このようにして、実行管理部11fは、全ての加工単位(ワーキングステップ)毎に、状態量取得条件を自動的に設定する。
【0066】
実行管理部11fは、加工モニタ部11gに対し、このように設定した加工単位(ワーキングステップ)毎の状態量取得条件を指示し、加工指令データに基づいて実行された加工の履歴を表す加工実行データを取得する。さらに、実行管理部11fは、取得した加工実行データを加工情報DB1Aに逐次格納する。
【0067】
[動作]
次に、加工情報記録システムSの動作を説明する。
[加工情報評価処理]
図9は、加工情報記録装置1が実行する加工情報評価処理の流れを説明するフローチャートである。
加工情報評価処理は、入力部14を介して、加工情報評価処理を起動させる指示が入力されることにより開始される。
ステップS21において、加工情報評価部11hは、加工情報DB1Aに記憶されている加工実行データを加工単位(ワーキングステップ)毎に1つ取得する。
ステップS22において、加工情報評価部11hは、取得した加工実行データにおける加工単位を評価する。
【0068】
ステップS23において、加工情報評価部11hは、取得した加工実行データにおける加工単位の状態量取得条件が有効情報取得方法であるか否かの判定を行う。取得した加工実行データにおける加工単位の状態量取得条件が有効情報取得方法でない場合、ステップS23においてNOと判定されて、処理はステップS21に移行する。一方、取得した加工実行データにおける加工単位の状態量取得条件が有効情報取得方法である場合、ステップS23においてYESと判定されて、処理はステップS24に移行する。
【0069】
ステップS24において、加工情報評価部11hは、取得した加工実行データにおける加工単位の状態量取得条件を有効情報取得方法として加工情報DB1Aに記憶する。
ステップS25において、加工情報評価部11hは、加工情報DB1Aに記憶されている全ての加工実行データについて評価が終了したか否かの判定を行う。加工情報DB1Aに記憶されている全ての加工実行データについて評価が終了していない場合、ステップS25においてNOと判定されて、処理はステップS21に移行する。一方、加工情報DB1Aに記憶されている全ての加工実行データについて評価が終了した場合、ステップS25においてYESと判定されて、加工情報評価処理は終了となる。
【0070】
[加工実行処理]
図10は、加工情報記録装置1が実行する加工実行処理の流れを説明するフローチャートである。
加工実行処理は、入力部14を介して、加工実行処理を起動させる指示が入力されることにより開始される。
ステップS31において、実行管理部11fは、実行対象となる加工指令データを取得する。
ステップS32において、実行管理部11fは、加工指令データに含まれるワーキングステップを加工指令データに記述されている順番に1つ取得する。
ステップS33において、実行管理部11fは、加工情報DB1Aを参照し、取得したワーキングステップに適合する有効情報取得方法を検索する。
【0071】
ステップS34において、実行管理部11fは、取得したワーキングステップに適合する有効情報取得方法が検索されたか否かの判定を行う。取得したワーキングステップに適合する有効情報取得方法が検索されない場合、ステップS34においてNOと判定されて、処理はステップS32に移行する。なお、この場合、取得したワーキングステップには、標準の状態量取得条件が設定される。一方、取得したワーキングステップに適合する有効情報取得方法が検索された場合、ステップS34においてYESと判定されて、処理はステップS35に移行する。
【0072】
ステップS35において、実行管理部11fは、取得したワーキングステップの状態量取得条件として、検索された有効情報取得方法を設定する。
ステップS36において、実行管理部11fは、実行対象となる加工指令データに次のワーキングステップが含まれているか否かの判定を行う。実行対象となる加工指令データに次のワーキングステップが含まれている場合、ステップS36においてYESと判定されて、処理はステップS32に移行する。一方、実行対象となる加工指令データに次のワーキングステップが含まれていない場合、ステップS36においてNOと判定されて、処理はステップS37に移行する。
【0073】
ステップS37において、実行管理部11fは、加工指令データにおいて実行が終了していないワーキングステップを加工指令データに記述されている順番に1つ取得する。
ステップS38において、実行管理部11fは、取得したワーキングステップを実行すると共に、実行されたワーキングステップに設定された有効情報取得方法に従って状態量を取得する。
【0074】
ステップS39において、実行管理部11fは、ワーキングステップの実行が終了したか否かの判定を行う。ワーキングステップの実行が終了していない場合、ステップS39においてNOと判定されて、処理はステップS38に移行する。一方、ワーキングステップの実行が終了した場合、ステップS39においてYESと判定されて、処理はステップS40に移行する。
【0075】
ステップS40において、実行管理部11fは、加工指令データの実行が完了したか否かの判定を行う。加工指令データの実行が完了していない場合、ステップS40においてNOと判定されて、処理はステップS37に移行する。一方、加工指令データの実行が完了した場合、ステップS40においてYESと判定されて、加工実行処理は終了となる。
【0076】
このような処理により、加工情報DB1Aに記憶されている加工実行データにおいて、適切な内容の状態量が取得されている場合の状態量取得条件を、加工単位で有効情報取得方法として抽出して記憶することができる。そして、以後の加工指令データの実行において、加工単位で適切な有効情報取得方法(状態量取得条件)を設定して、状態量を取得することができる。したがって、本実施形態に係る加工情報記録システムSによれば、工作機械における加工情報をより適切に取得することができる。
【0077】
なお、本発明は、上述の実施形態及び変形例に限定されるものではなく、種々の変更及び変形等が可能である。
例えば、上述の各実施形態の構成を組み合わせて実施することが可能である。一例として、第1実施形態と第2実施形態とを組み合わせることで、以下のような構成とすることができる。即ち、ワークの加工単位毎に、加工内容に対する判定条件に適合するか否かを判定し、判定条件に適合する場合に、ワークの加工状態に基づいて、取得する状態量及びサンプリング周期を変化させて、状態量取得条件を適宜設定することが可能である。また、第1実施形態及び第2実施形態と第3実施形態とを組み合わせることで、以下のような構成とすることも可能である。即ち、ワークの加工単位毎に、加工内容に対する判定条件に適合するか否かを判定し、判定条件に適合する場合に、第3実施形態において加工単位毎に設定した状態量取得条件(有効情報取得条件又は標準の状態量取得条件)を初期値として、ワークの加工を実行することができる。そして、加工単位毎に、ワークの加工状態に基づいて、取得する状態量又はサンプリング周期をさらに変化させて、状態量取得条件を適宜設定することができる。
【0078】
また、上述の実施形態において、加工情報DB1Aを加工情報記録装置1が備えるものとしたが、これに限られない。即ち、加工情報DB1Aを加工情報記録装置1がネットワークを介して通信可能な他の装置に備えることとしてもよい。また、加工情報DB1Aに記憶される加工指令データあるいは加工実行データ等の内容は一例として示したものであり、生産プロセスにおける各種加工工程に対応するデータを記憶して管理することができる。
【0079】
以上説明した実施形態の加工情報記録システムSの機能の全部又は一部は、ハードウェア、ソフトウェア又はこれらの組合せにより実現することができる。ここで、ソフトウェアによって実現されるとは、プロセッサがプログラムを読み込んで実行することにより実現されることを意味する。ハードウェアで構成する場合、加工情報記録システムSの機能の一部又は全部を、例えば、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、ゲートアレイ、FPGA(Field Programmable Gate Array)、CPLD(Complex Programmable Logic Device)等の集積回路(IC)で構成することができる。
【0080】
加工情報記録システムSの機能の全部又は一部をソフトウェアで構成する場合、加工情報記録システムSの動作の全部又は一部を記述したプログラムを記憶した、ハードディスク、ROM等の記憶部、演算に必要なデータを記憶するDRAM、CPU、及び各部を接続するバスで構成されたコンピュータにおいて、演算に必要な情報をDRAMに記憶し、CPUで当該プログラムを動作させることで実現することができる。
【0081】
これらのプログラムは、様々なタイプのコンピュータ可読媒体(computer readable medium)を用いて格納され、コンピュータに供給することができる。コンピュータ可読媒体は、様々なタイプの実体のある記録媒体(tangible storage medium)を含む。コンピュータ可読媒体の例は、磁気記録媒体(例えば、フレキシブルディスク、磁気テープ、ハードディスクドライブ)、光磁気記録媒体(例えば、光磁気ディスク)、CD−ROM(Read Only Memory)、CD−R、CD−R/W、DVD−ROM(Digital Versatile Disk)、DVD−R、DVD−R/W、半導体メモリ(例えば、マスクROM、PROM(Programmable ROM)、EPROM(Erasable PROM)、フラッシュメモリ、RAM(Random Access Memory))を含む。
また、これらのプログラムは、ネットワークを介してユーザのコンピュータにダウンロードされることにより配布されてもよい。
【0082】
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、前述した実施形態は、本発明を実施するにあたっての具体例を示したに過ぎない。本発明の技術的範囲は、前記実施形態に限定されるものではない。本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能であり、それらも本発明の技術的範囲に含まれる。