【実施例1】
【0023】
以下、図面を参照しながら実施例1を説明する。
図1は本発明の防水パッキンを含むワイヤハーネス端末部分の一実施形態を示す断面図である。また、
図2は
図1の防水コネクタ部分の拡大図、
図3は
図1の円A部分の拡大図である。
【0024】
<ワイヤハーネス1及び金属ケース2の構成について>
図1において、引用符号1は接続対象物との電気的な接続を行うワイヤハーネスを示す。また、引用符号2は接続対象物の金属ケースを示す。接続対象物は例えば車載機器の本体であり、この車載機器の本体に接続されるワイヤハーネス1は、自動車等の車両に配索されるものである。金属ケース2は、接続対象物を囲むとともに例えば車体等にアースされる構造を有する。金属ケース2におけるコネクタ取付壁3の内側4には、図示しない端子台が設けられる。コネクタ取付壁3には、端子台の位置に合わせて挿通孔5が貫通形成される。挿通孔5の開口部6の周縁には、シェル接続面7と、雌ネジ部8とが形成される。シェル接続面7と雌ネジ部8は、金属ケース2の外面9に形成される。ワイヤハーネス1は、一又は複数本の電線10(導電路)と、この電線10を覆うシールド手段11と、電線10の端末に設けられる防水コネクタ12とを備えて構成される。
【0025】
<電線10(導電路)について>
図1及び
図2において、電線10は、導電性を有する金属製の導体13と、この導体13を被覆する絶縁性の樹脂製の絶縁体14とを備えて構成される。電線10は、この一端から他端にかけて可撓性を有するものである。電線10は、本実施例においてシースの存在しないものが採用される(一例であるものとする)。電線10は、これにシースが存在しないことから、その分、軽量なものになるのは勿論である(電線10が長尺なものであれば、シースがあるものと比べ大幅に軽量化を図ることができるようになる)。導体13は、銅や銅合金、或いはアルミニウムやアルミニウム合金により断面円形に形成される。導体13に関しては、素線を撚り合わせてなる導体構造のものや、断面円形(丸形)になる棒状の導体構造(例えば丸単心となる導体構造であり、この場合、電線10自体も棒状となる)のものの、いずれであってもよいものとする。以上のような導体13は、この外面に絶縁性の樹脂材料からなる絶縁体14が押出成形される。絶縁体14は、熱可塑性樹脂材料を用いて導体13の外周面に押出成形される。絶縁体14は、断面円形状の被覆として形成される。絶縁体14は、所定の厚みを有して形成される。上記熱可塑性樹脂としては、公知の様々な種類のものが使用可能であり、例えばポリ塩化ビニル樹脂やポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂などの高分子材料から適宜選択される。尚、電線10に限らず例えばバスバー等を採用することも可能である。
【0026】
<シールド手段11について>
図1において、シールド手段11は、電線10を覆う筒状の編組15(シールド部材)と、編組15の筒状端末に設けられるシールドシェル16と、このシールドシェル16を上記筒状端末に固定するためのシールドリング17とを備えて構成される。編組15は、導電性を有する極細の金属素線を筒状に編んで形成される。編組15は、電線10よりも若干短い長さに形成される。尚、編組15に限らず金属箔や金属箔を含むシート部材であってもよいものとする。シールドシェル16は、導電性を有する金属製の部材であって、断面L字状の部分を環状にしたような形状に形成される。具体的には、上記筒状端末に固定される編組固定部18と、ボルト19にてコネクタ取付壁3のシェル接続面7に固定されるケース固定部20とを有して上記環状の部分に形成される。編組固定部18は、後述する防水パッキン24を構成する熱伝部材38のリアホルダ部44を囲むような大きさに形成される。編組15は、シールドシェル16及び金属ケース2を介してアースされる。シールドリング17は、編組固定部18との間で上記筒状端末を加締めにて挟み込めるような環状の部材に形成される。
【0027】
<防水コネクタ12の構成について>
図1及び
図2において、防水コネクタ12は、上記の如く電線10の端末に設けられる。また、防水コネクタ12は、金属ケース2の挿通孔5に対し挿通されるような状態で組み付けられる。防水コネクタ12は、接続対象物との電気的な接続を行うために用いられる。このような防水コネクタ12は、端子21と、コネクタハウジング22と、ゴム栓23と、防水パッキン24とを備えて構成される。防水コネクタ12は、金属ケース2の内側4に水分を浸入させないようにするためにゴム栓23及び防水パッキン24を備える。本発明においては、防水コネクタ12自身に生じた熱を金属ケース2へ逃がし放熱するために防水パッキン24を備える。別な言い方をすれば、金属ケース2への熱移動を促進するために防水パッキン24を備える(上記熱移動については後述する)。
【0028】
<端子21について>
図1及び
図2において、端子21は、導電性を有する金属板をプレス加工して形成される。端子21は、図示の如く雄端子であって、電気接触部25と、電線接続部26と、中間部27とを有する。電気接触部25は、タブ状の部分に形成される。電気接触部25は、接続対象物の図示しない端子台に接続される部分に形成される。電気接触部25には、端子台との接続のためのボルト挿通孔28が形成される。電線接続部26は、電線10の端末から露出した導体13を圧着することができる部分に形成される。本実施例の電線接続部26は端子圧着部として形成される。端子圧着部としての電線接続部26は、通電時において発熱する部分になる。尚、絶縁体14の端部も圧着することができるようにしてもよいものとする。中間部27は、電気接触部25と電線接続部26とを繋ぐ部分に形成される。中間部27は、電気接触部25との連続部分がコネクタハウジング22に対し保持されるような部分に形成される。
【0029】
<コネクタハウジング22について>
図1及び
図2において、コネクタハウジング22は、絶縁性を有する樹脂製の部材であって、金属ケース2の挿通孔5に対し挿通されるようなサイズ、また、挿通孔5との間に隙間Sが生じるようなサイズに形成される。コネクタハウジング22は、前壁29と、この前壁29から後方に向かってのびる側壁30と、側壁30の内側に形成される端子収容室31とを有して図示形状に形成される。前壁29には、金属ケース2の内側4に向かって突出する端子保持部32が形成される。この端子保持部32には、端子21における中間部27と電気接触部25との連続部分が挿通される。側壁30の外面には、防水パッキン24が水密に密着するとともに後述する熱伝部材38が接触するパッキン密着面33が形成される。また、側壁30の外面で前壁29の近傍には、防水パッキン24が当接する部分としてパッキンストッパ34が形成される。側壁30の後端には、防水パッキン24を係止するためのパッキン係止部35が形成される。また、側壁30の内面で後端側には、ゴム栓23が水密に密着するゴム栓密着面36が形成される。
【0030】
<ゴム栓23について>
図1及び
図2において、ゴム栓23は、上記の如く金属ケース2の内側4に水分を浸入させないようにするために備えられる。ゴム栓23は、弾力性を有するゴム製のシール部材であって、環状に形成される。ゴム栓23は、端子21を圧着する前の電線10に対し予め組み付けられる。ゴム栓23には、電線10の外面に対し水密に密着する内周リップ部(符号省略)が形成される。また、ゴム栓23には、コネクタハウジング22のゴム栓密着面36に対し水密に密着する外周リップ部(符号省略)も形成される。ゴム栓23は特に限定するものでないが、主にシリコンやアクリルなどの材料が採用されるものとする。
【0031】
<防水パッキン24の構成について>
図1ないし
図3において、防水パッキン24は、コネクタハウジング22に組み付けられる。防水パッキン24は、上記の如く金属ケース2の内側4に水分を浸入させないようにするために備えられる。また、防水パッキン24は、上記の如く金属ケース2への熱移動を促進するために備えられる。防水パッキン24は、本発明の特徴を有する部材であって、パッキン本体37と、熱伝部材38とを備えて構成される。以下、防水パッキン24の上記構成について説明をする。
【0032】
<パッキン本体37について>
図1ないし
図3において、パッキン本体37は、上記ゴム栓23と同様に弾力性を有するゴム製のシール部材である。材料は主にシリコンやアクリルなどが採用されるが、熱伝導率を向上させる目的として例えば導電性のゴム材を採用してもよいものとする。パッキン本体37は、組み付け先のコネクタハウジング22に合わせて(具体的にはパッキン密着面33に合わせて)筒状の部材に形成される。パッキン本体37の外面39には、環状の外周リップ部40が一つ形成される。また、パッキン本体37の内面41にも環状の内周リップ部42が一つ形成される。外周リップ部40は、外面39から外側に突出する部分に形成される。また、外周リップ部40は、断面山形形状に形成される。外周リップ部40は、外面39をこの周方向に一周するように形成される。内周リップ部42は、内面41から内側に突出する部分に形成される。また、内周リップ部42は、断面山形形状に形成される。内周リップ部42は、内面41をこの周方向に一周するように形成される。本実施例の外周リップ部40及び内周リップ部42は、これらの大きさや形状が若干異なるものの図中上下方向の同じ位置に形成される。尚、パッキン本体37の外面39に関しては、挿通孔5との間に微小な隙間が生じるように形成されるものとする。
【0033】
<熱伝部材38について>
図1ないし
図3において、熱伝部材38は、パッキン本体37に対し一体化する部材である。別な言い方をすれば、熱伝部材38は、パッキン本体37にインサート成形される部材である。また、熱伝部材38は、パッキン本体37よりも熱伝導性が高い部材である。熱伝部材38は、上記端子圧着部などに生じる熱がコネクタハウジング22を介して金属ケース2に伝わり易くなるようにするための部材である。すなわち、熱伝部材38は、金属ケース2への熱移動を促進するための部材である。熱伝部材38は、本実施例において金属製の部材である。熱伝部材38は、有底の筒形状に形成される。尚、熱伝部材38は熱伝導性が高いのであれば樹脂製であってもよいものとする。また、熱伝部材38は上記有底の筒形状に限らず、後述する熱伝部材本体43のみの筒形状であってもよいものとする。熱伝部材38は、熱伝部材本体43と、リアホルダ部44とを有する。
【0034】
<熱伝部材本体43について>
図1ないし
図3において、熱伝部材本体43は、パッキン本体37に対し一体化する筒形状の部分に形成される。熱伝部材本体43は、先端部45と、基端部46と、湾曲部47と、接点部48とを有して図示のような断面形状に形成される。先端部45は、筒形状の熱伝部材本体43の開口部分であって、コネクタハウジング22のパッキンストッパ34に当接する部分(引っ掛かる部分)に形成される。基端部46は、リアホルダ部44に連続する部分であって、コネクタハウジング22のパッキン密着面33(側壁30の外面で後端側)に装着される部分に形成される。また、基端部46は、後述するバネ性の生じない部分に形成される。湾曲部47及び接点部48は、先端部45と基端部46との間に配置形成される。湾曲部47は、断面波形となるような形状の部分に形成される。湾曲部47は、上記形状により接点部48が相対的に移動するようなバネ性を有する部分に形成される。接点部48は、湾曲部47の上記形状を利用して形成される。接点部48は、パッキン本体37の外面39及び内面41の各一部から露出して金属ケース2の挿通孔5及びコネクタハウジング22のパッキン密着面33に接する部分に形成される。接点部48の接触により上記端子圧着部などに生じる熱は、コネクタハウジング22→パッキン本体37の内面41に露出する接点部48→パッキン本体37の外面39に露出する接点部48→金属ケース2の挿通孔5の経路で伝わり、最終的に金属ケース2の大きな表面積の部分にて放熱される。熱伝部材本体43は、コネクタハウジング22及び挿通孔5に接触する状態が熱の移動を効果的に行えるものとする。尚、例えばコネクタハウジング22及び挿通孔5のいずれか一方に熱伝部材本体43が接触したりする場合であっても熱の移動を行えるのは勿論である(単なるパッキンのみの場合(従来例の場合)と比べれば効果が得られるのは勿論である)。
【0035】
<リアホルダ部44について>
図1及び
図2において、リアホルダ部44は、コネクタハウジング22の側壁30の後端側を覆う部分に形成される。リアホルダ部44は、従来例のリアホルダー119(
図7参照)と同じ機能を発揮する部分に形成される。このようなリアホルダ部44の底壁49には、金属ケース2の外側に向かって突出する電線保持部50が形成される。電線保持部50は、底壁49の中央位置に配置される。電線保持部50は、電線10を挿通することができるように形成される。底壁49には、電線保持部50よりも外側の位置に被係止部51が形成される。被係止部51は、上記側壁30の後端のパッキン係止部35にて係止される部分に形成される。
【0036】
防水パッキン24は、リアホルダ部44が一体化する構造であることから、端子21を圧着する前の電線10に対し組み付けられるようになる。具体的には、ゴム栓23よりも先に組み付けられるようになる。
【0037】
<防水パッキン24の効果について>
以上、
図1ないし
図3を参照しながら説明してきたように、本発明の一実施形態である防水パッキン24によれば、防水機能を持たせるための単なるパッキンではなく、一体化した熱伝部材38にて熱伝導性を高めることができる。別な言い方をすれば、パッキン本体37の外面39及び内面41方向(肉厚方向)の熱伝導効率を従来例よりも高めることができる。また、防水パッキン24によれば、熱伝部材38のバネ性による反力にて、パッキン本体37はこの硬度に関係なく高い反発力を有し、結果、従来例よりもシール性を高めることができる。また、上記反力にて、高温によるパッキン材の「へたり」に対し影響を少なくし、結果、安定したシール性を確保することもできる。また、上記反力にて、組み付け先であるコネクタハウジング22の振動による揺動を抑制することもできる。
【0038】
<防水コネクタ12及びワイヤハーネス1の効果について>
また、本発明の一実施形態である防水コネクタ12及びワイヤハーネス1によれば、構成に上記防水パッキン24を含むことから、熱伝導性の高いより良いものを提供することができる。また、防水パッキン24により防水コネクタ12側の温度上昇を抑制することができることから、耐熱性のある電線やハウジング材料を使用する必要がなく、コスト低減に寄与することもできる。
【実施例2】
【0039】
以下、図面を参照しながら実施例2を説明する。
図4は本発明の防水パッキンを含むワイヤハーネス端末部分の他の実施形態を示す断面図である。また、
図5は
図4の防水コネクタ部分の拡大図、
図6は
図4の円B部分の拡大図である。尚、上記実施例1と基本的に同じ構成部材には同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0040】
<ワイヤハーネス1及び金属ケース2の構成について>
図4において、ワイヤハーネス1は、電線10と、この電線10を覆うシールド手段11と、電線10の端末に設けられる防水コネクタ12とを備えて構成される。金属ケース2は、コネクタ取付壁3を有する。コネクタ取付壁3には挿通孔5が貫通形成される。挿通孔5の開口部6の周縁には、シェル接続面7と、雌ネジ部8とが形成される。シェル接続面7と雌ネジ部8は、金属ケース2の外面9に形成される。
【0041】
<防水コネクタ12及び防水パッキン24について>
図4ないし
図6において、防水コネクタ12は、端子21と、コネクタハウジング22と、ゴム栓23と、防水パッキン24とを備えて構成される。実施例2の防水コネクタ12は実施例1のものと比べて防水パッキン24のみが若干異なっている。具体的には、接点部48がパッキン本体37の外面39及び内面41から二つずつ露出して金属ケース2の挿通孔5及びコネクタハウジング22のパッキン密着面33に接する点が異なっている。実施例2は、接点部48の接触箇所が実施例1よりも増えている。また、接点部48の配置が図中上下方向に異なっている。
【0042】
<効果について>
以上、
図4ないし
図6を参照しながら説明してきたように、実施例2も実施例1と同様の効果を奏するのは勿論である。
【0043】
この他、本発明は本発明の主旨を変えない範囲で種々変更実施可能なことは勿論である。