(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記管状部材内に延在する内腔の中心軸が、前記管状部材の前記外面の中心軸からずれており、それにより、前記管状部材の厚さが、前記光ファイバを含む側において、反対側の前記管状部材の厚さより大きい、請求項1に記載の照明付きマイクロ手術器具。
前記湾曲遠位端の前記先端が、前記光ビームの近視野において前記光ビームを集束させ、前記光ビームの遠視野において前記光ビームを発散させるレンズを備える、請求項1に記載の照明付きマイクロ手術器具。
患者の眼内から硝子体を除去するように配置された管状部材であって、遠位先端と内部に延在する内腔とを有し、前記内腔が、前記管状部材の壁の内面によって画定され、前記遠位先端が、前記内腔内に硝子体を受け入れるように前記管状部材の前記壁を貫通して延在するポートを備える、管状部材と、
前記眼の中に光を送るように配置された光ファイバであって、光源から光ビームを受け取る近位端を含み、前記ポートに隣接して光を放射するように配置された遠位端をも含み、前記遠位端の一部が、前記管状部材の外面に形成された切欠き内に配置され、前記遠位端の一部が前記管状部材から離れるように向けられている、光ファイバと、
を備える硝子体切除カッタであって、
前記管状部材の前記外面が、該外面に形成された長手方向溝を含み、前記光ファイバが、前記長手方向溝内に前記管状部材に沿って延在し、前記切欠きが、前記長手方向溝の深さより大きい深さを有する、硝子体切除カッタ。
前記光ファイバの前記遠位端の前記先端が、前記光ビームの近視野において前記光ビームを集束させ、前記光ビームの遠視野において前記光ビームを発散させる、ボールレンズまたは屈折率分布型(GRIN)レンズを備える、請求項13に記載の硝子体切除カッタ。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下の詳細な説明を参照することにより、添付図面をより理解することができる。
【0013】
本開示の原理の理解を促進する目的で、ここで、図面に示す実施形態を参照し、実施形態について説明するために具体的な文言を使用する。それにも関わらず、本開示の範囲の限定は意図されていないことが理解されよう。記載する装置、器具、方法、および本開示の原理の任意のさらなる応用に対する任意の改変およびさらなる変更は、本開示が関連する技術分野の当業者には通常想到するように、十分に企図される。特に、1つの実施形態に関して記載する特徴、構成要素および/またはステップは、本開示の他の実施形態に関して記載する特徴、構成要素および/またはステップと組み合わせることができることが十分に企図される。簡単にするために、場合によっては、図面を通して同じ参照番号を用いて同じかまたは同様の部分を指す。
【0014】
本開示は、照明源に対して別個の切開部を形成する必要なしに、体腔内で行われている手術の間、体腔内に照明を提供する、方法およびシステムに関する。いくつかの例では、照明は、体腔内を別の手術用具の長さに沿って延在する光ファイバを通して提供される。たとえば、硝子体切除処置は、硝子体切除カッタを用いて患者の眼から硝子体を除去するために行い、硝子体切除カッタにより眼内に導入することができる。患者の眼に2つの切開部を形成するのではなく、硝子体切除カッタの一部に沿って光ファイバを配置することができる。光ファイバは遠位先端を有することができ、そこを通して、後眼房内に光が導入されるかまたは放射される。硝子体の除去は特に重要である可能性があり、それは、残留硝子体が、術後の網膜裂傷、網膜剥離をもたらす可能性があるためである。
【0015】
概して透明な硝子体を可視化するために、いくつかの実施態様は、近視野では照明を集中させ、網膜にホットスポットが形成されるのを防止するために遠視野では照明を拡散させることができる。硝子体は、その中に含まれる線維から光が散乱するために、可視化することができる。切断されている硝子体をよりよく可視化するために、硝子体切除カッタの切断部分に近接して照明を配置することができる。実施態様に応じて、硝子体切除カッタの遠位先端からのグレアの生成を最小限にするために、光ファイバは、硝子体切除カッタの主チューブから角度が付けられている湾曲遠位端を含むことができる。したがって、本開示の実施形態は、硝子体切除処置等の腔内処置のために改善された照明を提供するとともに、腔に入るのを可能にするために形成する必要のある切開部の数を最小限にする。本開示の実施形態によって提供される照明により、手術部位において、たとえば、硝子体切除カッタのポートにおいて、放射照度を高くすることができる。これは、硝子体内の線維の可視化を容易にするために、高い信号対雑音比またはコントラストを提供することができる。
【0016】
図1は、例示的な実施形態による、全体として100で示す硝子体切除手術システムを示す。手術システム100は、ベースハウジングまたはコンソール102と、硝子体切除手術処置中のシステム動作および性能に関するデータを示す、関連ディスプレイ画面104とを含む。実施形態では、コンソール102は、可動式であり、たとえば、必要に応じて移動を容易にする車輪を含む。代替実施形態では、コンソール102は、車輪を含まない場合もある。コンソール102は、「ベースハウジング」と呼ぶことができ、執刀医が、眼科手術処置等の種々の手術処置を行うのを可能にするように協働する複数のサブシステムを含むことができる。コンソール102に、ハンドピースと呼ぶ照明付き硝子体切除プローブ112を取り付けることができ、それは、手術システム100の一部を形成することができる。照明付き硝子体切除プローブ112は、本明細書に記載する硝子体切除サブシステムの一部を形成することができる。
【0017】
図2は、手術システム100のブロック図であり、手術システム100は、コンソール102とそのいくつかのサブシステムとを含む。コンソール102は、コンピュータシステム103と、ディスプレイ画面104(
図1)と、たとえば、乳化または硝子体切除手術処置等、眼科手術処置を行うために合わせて使用される複数のサブシステムとを含む。コンピュータシステム103は、中央処理装置または中央プロセッサ等の1つまたは複数の処理デバイスと、情報またはデータ記憶システムとを含むことができる。データ記憶システムは、RAM(ランダムアクセスメモリ)、ROM(リードオンリメモリ)、フラッシュメモリ、ディスクベースハードドライブおよび/またはソリッドステートハードドライブ等、1つまたは複数のタイプのメモリを含むことができる。処理デバイスおよび記憶システムは、バスによって通信することができ、バスはまた、手術システム100の複数のサブシステムのうちの1つまたは複数との通信およびそれらの間の通信も可能にすることができる。
【0018】
たとえば、
図2の例示的な実施態様におけるサブシステムは、たとえば、フットペダル108を含む、フットペダルサブシステム106と、管146に接続する吸引真空室142および灌流ポンプ144を含む流体工学サブシステム140とを含む。手術システム100は、ハンドピース112を含むハンドピースサブシステム110と、電動の点滴(IV)ポール122を含むIVポールサブシステム120と、取付箇所125を含む照明サブシステム124(取付箇所125により、照明サブシステム124に含まれる光源にハンドピース112を結合することができる)とを含む。照明サブシステム124は、本明細書では光源124と呼ぶことができるが、光源は、照明サブシステム124のいくつかの構成要素のうちの1つの構成要素であり得る。手術システム100は、通信モジュール130を含む撮像および制御サブシステム126をさらに含む。他の実施形態では、さらにまたは別法として他の用具を含めることができる。手術中に異なるサブシステムの性能を最適化するために、それらの動作パラメータは、たとえば、行われている特定の処置、処置の異なる段階、執刀医の個人的な選好、処置が患者の前眼部で行われているかまたは後眼部で行われているか等によって、異なる。
【0019】
コンソール102内の種々のサブシステムは、それぞれのマイクロ手術器具または器具構成要素の動作および制御のための制御回路を備える。コンピュータシステム103は、眼科手術処置を適切に行い、ディスプレイ104を通してかつ/または結合された顕微鏡もしくはウェアラブルコンピューティングデバイスを通して、手術システム100の操作者に情報を適切に通信するように、種々のサブシステムの間の相互作用および関係を管理する。これを行うために、コンピュータシステム103は、中央プロセッサ等の1つまたは複数の処理デバイスとメモリとを含み、たとえば、乳化処置または硝子体切除等の手術処置を行うようにサブシステムを制御する命令によってプリプログラムされている。
【0020】
さらに、コンソール102は、ユーザが、種々のサブシステム間のプリプログラムされた関係を制御するかまたは変更するように限られた範囲内で選択を行うのを可能にする、入力デバイスを含む。この実施形態では、入力デバイスは、コンソールに組み込むことができ、フットペダル108、画面で直接行われる選択に応答するタッチスクリーンデバイス、標準コンピュータキーボード、マウスまたはトラックボール等の標準ポインティングデバイスと、ボタン、つまみを含むことができ、または他の入力デバイスも企図される。入力デバイスを用いて、執刀医、科学者または他のユーザは、コンソール102の種々のサブシステム間の関係に影響を与えるパラメータを選択するかまたは調整することができる。たとえば、執刀医は、光源124によって提供される光の強度を増減させることができる。さらに、執刀医は、吸引(aspiration)/吸出(suction)パラメータまたは硝子体切断機構の振動パラメータ等、ハンドピース112の動作のための1つまたは複数のパラメータを変更することができる。したがって、ユーザ入力に基づいて、ユーザは、システムプログラマによってコンソールにコード化されたものから、関係を変更するかまたは調整することができる。
【0021】
ハンドピース112は、光源124から光を受け取るように構成されているため、執刀医は、2つの切開部を必要とすることなく、かつ眼の小さい境界内でまたは患者の別の腔もしくは部位において2つの別個のデバイスの操作および取扱いを必要とすることなく、ハンドピース112によってまたは略ハンドピース112によって行われる手術操作の態様を可視化することができる。
【0022】
図3は、
図1および
図2に示すハンドピース112に対応することができる例示的な硝子体切除プローブの部分断面図を示す。この例では、ハンドピース112は、第1ポート119Aおよび第2ポート119Bを通して交互に来る空気圧を受け取ることによって動作する空気圧駆動プローブであり得る。ハンドピース112は、その基本構成要素として、すべてハウジング158内に部分的に入れられている、外側切断チューブ152と、非断面側面図に示す内側切断チューブ154と、ここでは、往復運動する空気駆動ダイヤフラム156として示すプローブアクチュエータまたはモータとを備える、硝子体切除カッタ150を含む。ハウジング158は、プローブ近位端に、第1給気ポート119Aおよび第2給気ポート119Bとカッタ150から液体および組織物質の吸引を提供するための1つの吸出ポート162とを備えるエンドピース160を含む。
【0023】
動作時、空気圧は、ハンドピースサブシステム110から第1ポート119Aおよび第2ポート119Bに交互に向けられて、硝子体切除プローブ112を動作させる。ハンドピースサブシステム110内のオン・オフ空気圧駆動機構が、その2つの位置の間を非常に迅速に行き来して、第1ポート119Aおよび第2ポート119Bに交互に空気圧を提供する。単一のアクチュエータまたはモータがあるように示すが、他の実施形態は、2つのプローブアクチュエータまたはモータを含み、1つが、2つのポート119Aおよび119Bの各々に関連付けられる。
【0024】
図3は、カッタ150が、ハウジング158から延在し遠位端166を含むことを示す(
図4により詳細に示す)。外側切断チューブ152および内側切断チューブ154は、ともに、内部に中空ボアまたは内腔を備えた円筒状チューブであり得る。外側切断チューブ152は、組織受入れ外部ポート184を有し、内側切断チューブ154は、開放遠位端155を有する。概して、内側切断チューブ154は、プローブアクチュエータによって駆動されるように、外側切断チューブ152内で振動する。実施形態では、内側切断チューブ154は、ダイヤフラム156の両側に向けられた空気圧によって駆動される。動作の一例では、第1ポート119Aにおいて空気圧が上昇する場合、ダイヤフラム156は、遠位側に移動し、外側切断チューブ152に対して内側切断チューブ154を変位させ、それにより、内側切断チューブ154の遠位端155にある第1切刃157を、ポート184を越えて遠位方向に移動させる。これにより、外側切断チューブ152の組織受入れ出口ポート184内に吸引されている可能性がある任意の硝子体物質が切断される。その後、内側切断チューブ154の遠位端155を通して、硝子体を吸引することができる。第1ポート119Aにおける圧力を抜き、第2ポート119Bにおける圧力を上昇させることにより、ダイヤフラム156は近位側に移動し、硝子体は、ポート184を通って外側切断チューブ152の内腔に入ることができる。
【0025】
他の実施形態では、プローブアクチュエータは、ダイヤフラムの代わりにピストンモータを含むことができる。こうした実施形態では、カッタ150は、ピストンの移動によりカッタ150の内側切断チューブ154も移動するように配置される。さらに他の実施形態は、当業者には理解されるように、内側切断チューブ154を駆動する他のタイプの空気圧または電気モータを含む。
【0026】
カッタ150の長さにわたって延在しているのは、破線として示す光ファイバ170である。光ファイバ170の実施形態は、直径が約100ミクロン以下であり得る。光ファイバ170は、光源124(
図2)からの光を、取付箇所125(
図2)を通ってカッタ150の遠位端166まで伝達して、執刀医が眼から硝子体を取り除く際に見て観察するために操作領域を照明する。光ファイバ170は、ハウジング158を通って、内側切断チューブ154をダイヤフラムに結合するシャフト163に対して概して平行に、その後、管146(
図2)に沿って流体工学サブシステム140(
図2)まで伸びることができる。流体工学サブシステム140は、吸出ポート162によってハンドピース112に結合される。他の実施形態では、光ファイバ170は、ハウジング158の外面に沿って延在することができる。さらに他の実施形態では、光源124はハンドピース112自体の中に含まれ、それにより、光ファイバ170は、ハンドピース112とコンソール102との間に延在する必要をなくすことができる。
【0027】
ここで
図4を参照すると、そこには、硝子体切除カッタ150の遠位端166の詳細図が示されている。この詳細図は、ハンドピース112に含まれるように光ファイバ170のいくつかの態様をより明確に例示するために、断面で描かれている。
図4は、外側切断チューブ152および内側切断チューブ154を含む、硝子体切除カッタ150の遠位端166を示す。本明細書に示すように、内側切断チューブ154は、外側切断チューブ152の内腔171内で前後に振動することができる。
【0028】
図4に示すように、光ファイバ170は、外側切断チューブ152の管状部材の長さに沿って延在する。光ファイバ170の遠位端領域172は、外側切断チューブ152の壁内に形成された切欠き174内に配置される。切欠き174は、遠位端領域172にS字型カーブが形成されるのを可能にし、それにより、遠位端領域172の一部は、外側切断チューブ152の中心長手方向軸173から離れかつ外側切断チューブ152の外壁から離れるように湾曲する。湾曲した遠位端領域172は、手術中の執刀医に対する硝子体の可視性を向上させるように光を向ける。遠位端領域172のより近位の部分は、
図4に示すように、外側切断チューブ152によって支持されているが、遠位端領域172のより遠位の部分は、遠位端領域172を切欠き174に付着させかつ遠位端領域172によって占有されない切欠き174の部分を概して充填する不透明な接着材料176により、包囲される。
【0029】
遠位端領域172は、組織受入れポート184に近接して配置され、組織受入れポート184は、外側切断チューブ152の管状壁153を貫通する開口部であり得る。ポート184は、約5mm〜約1mmの範囲の直径を有することができる。管状壁153は、外面159Aおよび内面159Bを含む。ポート184は壁153を貫通して延在し、それにより、硝子体は、内側切断チューブ154の開放遠位端155において切刃157によって切断され吸引されるために、外側切断チューブ152の内腔171に入ることができる。そして、硝子体は、内側切断チューブ154の内腔175を通って眼の外に吸引される。このプロセスが、硝子体またはその一部を除去するために繰り返し行われる間、光は、遠位端領域172の最遠位部分において光ファイバ170のテーパ状遠位先端部分177から放射される。光は、ポート184の周囲の領域で硝子体を照明し、それにより、執刀医は、硝子体が除去されたときを見定めることができ、望ましい場合にさらに除去するようにカッタ150の遠位端を位置決めすることができる。
【0030】
図5は、
図4に示す破線によって識別されるカッタ150の一部の詳細図を示す。それは、光ファイバ170のさらなる詳細を示す。
図5に示すように、外側切断チューブ152の遠位端166は、ポート184に近接してかつその遠位側に切断部分192を含む。この部分192は、ポート184に向かって延在し、硝子体を切断するより鋭利な面を提供する、外側切断チューブ152の壁のテーパ状または角度付き部を備える。
【0031】
切断部分192は、外側切断チューブ152の壁153の外面159Aに角度付き部193を備える。角度付き部193と平行部195の一部(平行面は、外側切断チューブ152の中心長手方向軸173に対して平行であると定義される)とは、処理面194を含む。処理面194は、光ファイバ170から放射される放射光196の反射によって発生する可能性があるいくつかの問題を最小限にする、アンチグレア面である。放射光196の複数の光線は、光ファイバ170から硝子体内に放射される光の概略的な方向を示すように図示されている。処理面194は、いくつかの実施形態では、角度付き部193の一部と平行部195の一部とを含むことができる。他の実施形態は、角度付き部193にのみ含まれる処理面194の一部を含むことができる。さらに他の実施形態は、ポート184に隣接するすべての露出面に対する処理を含むことができ、それにより、ポート184に隣接する露出面のすべてが処理面となる。
【0032】
たとえば、光線196Aおよび196Bによって表される光は、処理面194に入射することができる。切断部分192の角度付き部193との相互作用によってもたらされるグレアまたは非均一照明を防止するために、処理面194は、光線196Aおよび196Bによって表される光を吸収する吸収面であり得る。たとえば、処理面194の吸収面は、切断部分192の角度付き部193を機械的にまたは化学的に粗化することによって提供される粗面であり得る。他の実施形態では、処理面194は、処理面194に対する入射角度によって決まる所定角度で光を向けなおす鏡面であり得る。処理面194は、鏡面を提供するために、化学的にかつ/または機械的に研磨することができる。切断部分192の角度付き部193の角度Aはまた、光196と外側切断チューブ152の外面との相互作用によってもたらされるグレアも低減させることができる。角度Aは、約3度〜約30度の範囲とすることができる。
【0033】
図5に示すように、光ファイバ170の遠位端領域172は、第1部分172A(外側切断チューブ152の中心軸173に向かって切欠き174内に湾曲する、遠位端領域172の相対的に遠位ではない部分)と、第2部分172B(外側切断チューブ152の中心軸173から離れて、切欠き174から離れるようにまたは出るように湾曲する、遠位端領域172の相対的に遠位である部分)とを含む。遠位端領域172の実施形態は、約15mm〜5mm未満の範囲の長さを有することができる。遠位端領域172は、いくつかのより短い実施形態では、約3mmまたは4mmの長さを有することができる。第1部分172Aの湾曲により、第2部分172Bの湾曲が、外側切断チューブ152の全体的な直径を実質的に越えて突出することなく、外側切断チューブ152から離れるように湾曲することができる。第2部分172Bの湾曲は、光を、外側切断チューブ152から離れるように向ける。外側切断チューブ152から離れるように光196を向けることにより、照明される光ファイバ170は、生成するグレアをより少なくすることができ、眼内により均一な照明をもたらすことができる。
図5の例示する実施形態は、光線196Aおよび196Bを、処理面194に向けられているようにかつ処理面194と接触しているように示すが、他の実施形態では、光ファイバ170から放射される光196のいずれも、外側切断チューブ152の角度付き部193に入射しない。
【0034】
図示するように、第1部分172Aの底側197Aは、外側切断チューブ152の壁153の外面159Aと接触している。第1部分172Aは、壁153に形成された切欠き174内に位置することができる。明示的に示さないが、外側切断チューブ152に(切欠き174内に)第1部分172Aを接着剤で取り付けることができる。第1部分172Aの上側197Bは、不透明接着剤176と接触することができる。不透明接着剤176は、軟質または軟化状態で塗布することができるが後に硬化する、エポキシ樹脂または別の材料であり得る。不透明接着剤176は、概して、第2部分172Bを包囲し、第2部分172Bが中心軸173および外側切断チューブ152の外面159Aから離れるように湾曲する際にそれを支持する。第2部分172Bはまた、光が光ファイバ170から漏出するのをさらに防止するコーティング198によっても包囲される。コーティング198は、ホイルコーティング等の金属化コーティングであり得る。いくつかの実施形態では、コーティング198は、キャッピング構造によって提供され、それは、第2部分172Bのテーパから分離して形成され後にそれに取り付けられる。キャッピング構造を用いて、第2部分172Bのテーパ形状を提供することができる。光が、遠位端領域172の側部において漏出することが防止される一方で、第2部分172Bの先端は、遠位先端部分177からの光の放射を可能にする。第2部分172Bの先端部分177は、図示するようにポート184における放射照度を最大限にするためにポート184に隣接または近接して配置することができる。
【0035】
図6A、
図6B、
図6Cおよび
図6Dは、それぞれ
図5の線6A、6Bおよび6Dに沿ったカッタ150の断面を示す。
図6Cは、代替実施態様を示す。
図6Aは、外側切断チューブ152の完全な断面を示す。図示する実施態様では、外側切断チューブ152は、壁153の外面159Aに形成された溝状部分または溝200を含む。いくつかの実施形態では、溝状部分または溝200は、外側切断チューブ152の壁153内に深い溝が延在するのではなく、外面159Aに平坦部を含む。いくつかの例では、溝状部分または溝200は、外側切断チューブ152の全長に沿ってまたは外側切断チューブ152の実質的な部分に沿って長手方向に延在する。溝200は、深絞り、レーザ切断、切断砥石、フライス削り、化学エッチング、放電加工等のさまざまな方法によって形成することができる。外側切断チューブ152は、溝200の形成を容易にするようにより大きい外径で形成することができる。溝200が形成された後、外側切断チューブ152を研削して最終的な外径を提供することができる。
【0036】
溝200により、光ファイバ170の直径の少なくとも一部を外側切断チューブ152の外径内に配置することができる。図示する例では、光ファイバ170の直径の約半分が、溝200内に配置される。図示するように、溝200は、直角の角を含むが、いくつかの実施形態は異なる輪郭を含むことができる。たとえば、溝200は、円形もしくは楕円形断面、または丸い角を有する略矩形断面を有することができる。図示するように、外側切断チューブ152の長さに沿って光ファイバ170を取り付けるために、溝200内に不透明接着剤176が含まれる。光ファイバ170は、長手方向溝200内に不透明接着剤176等の接着材料を塗布することにより、その中に固定することができる。別法として、いくつかの実施形態では、外側切断チューブ152に光ファイバ170をはんだ付けすることができる。他の実施形態では、外側切断チューブ152および光ファイバ170の周囲に熱収縮スリーブを配置して、これらの構成部品を互いに固定するように収縮させることができる。いくつかの実施形態では、光ファイバ170は、活性化熱エネルギーにさらされると構成部品を互いに接合するように使用することができる熱可塑性接着剤等のコーティングを含むことができる。いくつかの実施形態では、光ファイバ170および外側切断チューブ152の上にコーティングを施して、それらを互いに封止することができる。
【0037】
図6Aに示す実施態様では、光ファイバ170は、光ファイバ170を包囲しかつ保護するファイバクラッド203を含むことができる。クラッド203は、光ファイバ170からの光の漏出も防止する不透明な外部コーティングであり得る。クラッド203は、いくつかの実施形態では、コーティング198を提供するものと同じ材料のより薄い層であり得る。他の実施形態では、クラッド203およびコーティング198は、異なる材料から形成することができ、コーティング198は、クラッド203より薄くすることができる。たとえば、コーティング198は金属層であるが、クラッド203は不透明なポリマー材料であり得る。
【0038】
図6Aは、外側切断チューブ152に関連する2つの中心軸をさらに示す。外側切断チューブ152は、壁153の外面159Aおよび内面159Bを備える。外側切断チューブ152の壁153の外面159Aは中心軸173と関連し、内面159Bは、内面202によって画定される内腔171の中心においてオフセット内面軸202に関連する。中心軸173と内面軸202との間のオフセット204は、約0.001mm〜約0.025mmの範囲であり得る。軸173と軸202との間のオフセット204は、光ファイバ170によって占有される外側切断チューブ152の側の壁153に対する相対的に大きい厚さと、反対側の壁153の相対的に薄い部分とを提供する。これにより、壁153の材料のより多くが光ファイバ170の近くに存在することができ、それにより、より深い溝200およびより深い切欠き174(
図6B〜
図6D)を提供することができる。より深い溝200により、外側切断チューブ152の全体的なゲージが、有効に、所望のゲージサイズと等価であるかまたはそれより小さいままであり得ることが可能である。たとえば、外側切断チューブ152は23ゲージ針であり得る。光ファイバ170の突出部分は、所望のゲージサイズ(たとえば、23ゲージ)を技術的に違背する可能性があるが、その違背は、カッタ150が、患者の眼内に挿入される際、所望のゲージサイズに適合して、所望のポートサイズまたはトロカールサイズを通して挿入されるのを可能にするために、十分小さいものであり得る。いくつかの実施形態では、オフセット204は、外側切断チューブ152の全長に沿って存在する。他の実施形態では、オフセット204は、外側切断チューブ152の遠位部分のみに存在することができる。
【0039】
理解を簡単にするために、
図6B、
図6Cおよび
図6Dは、光ファイバ170を含むカッタ150の一部のみの断面を示す。したがって、
図6Bは、
図5の線6B−6Bに沿った断面の部分のみを示す。
図6Bは、光ファイバ170が切欠き174の底部にあるとき、不透明接着剤176の一部が、光ファイバ170およびそのクラッド203の上を覆う可能性があることを示す。
図6Bでは、コーティング198の部分は、クラッド203の上に堆積するかまたは形成されるものとして示されている。いくつかの実施形態では、コーティング198は、クラッド203の一部のみを覆うことができる。他の実施形態では、コーティング198は、クラッド203が終了する場所で開始することができ、それにより、コーティング198の全長が光ファイバ170と直接接触して形成される。
【0040】
図6Cは、
図5の線6B−6Bによって示す断面の部分の代替実施形態を示す。
図6Cに示すように、光ファイバ170および周囲のコーティング198は、非円形状を有する。光ファイバ170の図示する実施形態は、円形断面ではなく、卵形(oval)または楕円形(elliptical)断面を有する。いくつかの実施形態では、楕円形または卵形の大部分は、外側切断チューブ152の半径に沿って向けられる。他の実施形態では、楕円形または卵形の大部分は、外側切断チューブ152の軸173を中心とする円周に沿って向けることができる。光ファイバ170のこの形状により、光ファイバ170全体を、壁153の外面159Aの切欠き174内に配置することができ、遠位部分172Bにおいて光ファイバ170の遠位先端から放射される前に光を集中させることができる。
図6Bおよび
図6Cと比較して
図6Aの断面から明らかであるように、切欠き174は、溝200より、外側切断チューブ152の壁153内を内面159Bに向かってさらに延在する。たとえば、溝200は、深さを約0.001mm〜約0.025の範囲とすることができ、切欠き174は、深さを約0.001mm〜約0.05mmの範囲とすることができる。
【0041】
図6Dは、
図5の線6D−6Dに沿って見た断面であり、光ファイバ170の遠位先端177は、外側切断チューブ152の軸173(
図6A)から離れかつ光ファイバ170自体の中心軸から離れるように角度が付けられているため、楕円形または卵形に見える。支持する不透明接着材料176は、遠位先端177を図示する軸外姿勢で維持して、遠位先端177から放射される光を、ポート184とは反対側で外側切断チューブ152の切断部分192から離れる方向に向ける。光ファイバ170の遠位先端177は、ポート184に近接して配置されて、カッタ150のポート184において硝子体内に最大量の光を提供する。
【0042】
ここで
図7A、
図7Bおよび
図7Cを参照すると、そこでは、光ファイバ170の遠位端領域172の第2部分172Bの遠位領域の断面が示されている。
図7A〜
図7Cは、遠位先端177の実施形態を示す。
図7Aに示す実施形態では、遠位先端177は、遠位先端177における光ファイバの屈折率の勾配によって提供される、屈折率分布型レンズすなわちGRINレンズ216を含む。遠位先端177に設けられるGRINレンズ216は、焦点208に放射光を集束させる。焦点208は、遠位先端177における勾配を制御することによって選択することができる。焦点208は、遠位先端177に対して、光が、ビームの遠視野では拡散する一方で近視野では集束し集中するようなものであり得る。
図7Aおよび
図7Bに示す図は、特に、焦点208に関して、必ずしも正確な尺度で描かれておらず、いくつかの実施形態では、遠位先端177から1ミリメートル以上離れている可能性がある。
【0043】
同様に、
図7Bは、ポート184に近接して最大照明を提供するように放射光を集束させるように遠位先端177に配置された、ボールレンズ等の光学レンズ210を示す。光学レンズ210は、遠位先端177に追加の光ファイバ材料を備えることができ、または、光ファイバ170、特にその遠位端領域172の製造中に遠位先端177に取り付けられる予め形成されたレンズであり得る。光学レンズ210は、執刀医が硝子体を可視化し除去するのをより可能にするようにポート184の正面において硝子体の照明を最大限にするために、遠位先端177により近づくかまたはさらに遠ざかるように移動させることができる焦点208を提供する。
【0044】
図7Cは、傾斜端を含む遠位先端177の実施形態を示す。傾斜端は、傾斜角度Bで形成されて、ファイバ端から漏出する光が外側切断チューブ152から離れるように屈折するのを可能にする。
図7Aおよび
図7Bに示すように、遠位先端177は、遠位端領域172内に延在する中心軸に対して実質的に直交することができるが、
図7Cに示すように、遠位先端177の傾斜端は、数度、直角から外れることができる。たとえば、傾斜角度Bは、約2度〜約15度の範囲とすることができる。他の実施形態では、傾斜角度Bは、約15度〜約45度の範囲とすることができる。遠位先端177の傾斜端は、放射光196を外側切断チューブ152から離れるように、特に突出する切断部分192の外面から離れるように向けて、そこから反射される光の量を低減させるように、外側切断チューブ152から離れるように傾斜させることができる。他の実施形態では、傾斜角度Bは、外側切断チューブ152に向かって角度を付けることができる。こうした実施形態では、第2遠位部分172Bの湾曲は、傾斜角度Bが光196を外側切断チューブ152に向けるより、外側切断チューブ152から離れるように放射光196を向けることができる。いくつかの実施形態では、傾斜端を含む遠位先端177は、外側切断チューブ152から離れるように湾曲していない場合がある(代わりに、外側切断チューブ152から離れるように光を屈折させるような傾斜端に頼ることができる)。
【0045】
図7A、
図7Bおよび
図7Cは、遠位先端177から離れた距離に配置される焦点208を示すが、他の実施形態は、このように放射光を集束させない場合がある。他の実施形態は、光を任意の点に集束させずに、遠位先端からの光の制御された分散をもたらすことができる。
【0046】
本開示の実施形態は、本明細書に記載する硝子体切除カッタ150のような照明付き手術デバイスを用いて手術処置を行う方法を含むことができる。眼科の例では、執刀医は、患者の眼内に切開部を形成することができる。そして、執刀医は、切開部から硝子体切除カッタ150を挿入することができる。いくつかの実施形態では、切開部内にトロカールカニューレを配置することができ、そこを通してカッタ150を前進させることができる。そして、執刀医は、光源に電力を供給することにより、照明サブシステムに電力を供給し、硝子体を除去する間、カッタ150のポート184の周囲で硝子体を照明することができる。照明により、執刀医は、硝子体をより有効にかつ安全に除去するために硝子体をよりよく見ることを可能にすることができる。硝子体の所望の部分が除去された後、眼からカッタ150を取り除くことができる。
【0047】
本明細書に記載した原理を使用することにより、術者は、手術部位を見ているときによりよい体験をすることができる。特に、術者は、硝子体カッタのポートに近接する領域において硝子体およびその中の硝子体線維を照明することによって、透明な硝子体を可視化することがより可能であり得る。照明の焦点または照明の領域は、光と硝子体カッタの外側切断チューブの遠位端との間の相互作用によりグレアがもたらされるのを制限しまたは防止するように制御することができる。焦点はまた、硝子体の可視化をより困難にするのに十分な光を反射する可能性がある網膜の輝点が現れるのを制限または防止することも可能である。
【0048】
当業者であれば、本開示によって包含される実施形態が、上述した特定の例示的な実施形態に限定されないことを理解するであろう。それに関して、例示的な実施形態を示し記載したが、上述した開示では、広範囲の変更、変化および置換が企図される。こうした変形は、本開示の範囲から逸脱することなく上述したことに対して行うことができることが理解される。したがって、添付の特許請求の範囲は、広くかつ本開示に一貫するように解釈されることが適切である。