(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、近年の携帯電話やパーソナルコンピュータ等の電子機器の薄型化及び小型化に伴って、電子機器内に搭載されるフレキシブルプリント配線板に実装される導電性補強板についても薄型化及び小型化が要求されている。しかしながら、小型化に伴ってフレキシブルプリント配線板との接着面積が減少するため、フレキシブルプリント配線板に対する導電性補強板の密着力が低下してしまうという問題があった。また、全体的な小型化に伴ってグランド用配線パターンが露出された開口も小さくなるため、導電性接着剤が当該開口に埋め込まれ難くなり、導電性接着剤とグランド用配線パターンとの接触不良を増加させる虞があった。さらには、一般的に導電性補強板の材料として用いられるステンレス製の板材の厚みの限界は0.1mm程度であるが、さらなる薄型化が要求されている。
【0007】
また、上記従来の導電性補強板は、ステンレス製等の板材を打ち抜き加工して所定の形状に形成されるため、材料ロスが多く発生してしまい、効率的に材料を用いることができなかった。また、このような導電性補強部材への導電性接着剤の塗布、導電性補強部材のフレキシブルプリント配線板への位置決め及び配置、及び、加熱・加圧等による導電性補強部材のフレキシブルプリント配線板への接着等の工程を経る必要があるため、生産性が低下するという問題があった。
【0008】
本発明は、上記の問題を鑑みてなされたものであり、薄型化及び小型化が可能であり、コストダウン及び生産性の向上を図ることが可能な導電性補強部材及びフレキシブルプリント配線板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の導電性補強部材は、配線パターンが形成されたベース部材の補強部位に、導電性粒子が分散された樹脂を主成分とするペースト状の補強材料を塗布及び固化されたことを特徴とする。
【0010】
上記の構成によれば、ペースト状の補強材料をベース部材の補強部位に塗布及び固化することによって、導電性補強部材を形成すると同時にベース部材の補強部位に設けることができる。これにより、導電性補強部材に接着剤を塗布してベース部材に貼り付ける工程を省くことができると共に、導電性補強板の打ち抜き時に発生する材料ロスを削減することができる。また、ペースト状の補強材料を直接補強部位に塗布するため、従来よりもグランド用配線パターンが露出された開口に補強材料が埋め込まれ易くなり、小型化されても導電性接着剤とグランド用配線パターンとの導通不良を軽減することができる。また、一般的なステンレス製の導電性補強部材ではなく、フレキシブルプリント配線板に直接塗布したペースト状の補強材料を固化して導電性補強部材を形成するため、導電性補強部材とフレキシブルプリント配線板との密着性を高くすると共に薄型化を図ることができる。さらには補強部位が複数あれば、印刷等により一度の塗布作業で全ての補強部位に対する塗布作業を完了することができる。この結果、上記の構成を有したフレキシブルプリント配線板は、薄型化及び小型化が可能であり、工程数及び材料ロスの削減によるコストダウン及び生産性が向上したものとなる。
【0011】
また、本発明の導電性補強部材は、等方導電層であってもよい。
【0012】
上記の構成によれば、導電性補強部材が等方導電層であるため、層厚方向および面方向の何れにも電気的な導電状態を確保することができる。これにより、導電性補強部材を介してグランド用配線パターンを外部グランドに接続できるだけでなく、導電性補強部材に電磁波シールド効果を発現させることができる。
【0013】
また、本発明の導電性補強部材において、前記導電性補強部材は、異方導電層と等方導電層との積層構造であってもよい。
【0014】
上記の構成によれば、導電性補強部材の全部を等方導電層で構成した場合よりも、材料コストを低減することができる。
【0015】
また、本発明の導電性補強部材において、前記積層構造は、前記ベース部材と前記等方導電層との間に前記異方導電層を配置した2層構造であってもよい。
【0016】
上記の構成によれば、ベース部材に異方導電性の補強材料を塗布した後、等方導電性の補強材料を塗布することによって、異方導電層及び等方導電層の厚みを容易に設定することができる。
【0017】
また、本発明の導電性補強部材は、前記ベース部材を外部に露出させる貫通穴を有していてもよい。
【0018】
上記の構成によれば、導電性補強部材とベース部材との接合面に存在する気泡を貫通穴を介して外部に排出することができるため、気泡による導電性補強部材とベース部材との接合力の低下を抑制することができる。
【0019】
また、本発明の導電性補強部材は、格子状又は網目状に形成されていてもよい。
【0020】
上記の構成によれば、導電性補強部材を板状に形成する場合と比較して、材料コストを低減することができる。さらに、格子状や網目状の隙間が貫通穴としての機能を有することによって、導電性補強部材とベース部材との接合面に存在する気泡を外部に排出することができるため、気泡による導電性補強部材とベース部材との接合力の低下を抑制することができる。
【0021】
また、本発明のフレキシブルプリント配線板は、上記に記載の導電性補強部材を備えたことを特徴とする。
【0022】
上記の構成によれば、ペースト状の補強材料をベース部材の補強部位に塗布及び固化することによって、導電性補強部材をベース部材の補強部位に設けることができる。これにより、導電性補強部材に接着剤を塗布してベース部材に貼り付ける工程を省くことができると共に、導電性補強板の打ち抜き時に発生する材料ロスを削減することができる。また、ペースト状の補強材料を直接補強部位に塗布するため、従来よりもグランド用配線パターンが露出された開口に補強材料が埋め込まれ易くなり、小型化されても導電性接着剤とグランド用配線パターンとの導通不良を軽減することができる。また、一般的なステンレス製の導電性補強部材ではなく、フレキシブルプリント配線板に直接塗布したペースト状の補強材料を固化して導電性補強部材を形成するため、導電性補強部材とフレキシブルプリント配線板との密着性を高くすると共に薄型化を図ることができる。さらには補強部位が複数あれば、印刷等により一度の塗布作業で全ての補強部位に対する塗布作業を完了することができる。この結果、上記の構成を有したフレキシブルプリント配線板は、薄型化及び小型化が可能であり、工程数及び材料ロスの削減によるコストダウン及び生産性が向上したものとなる。
【0023】
また、本発明のフレキシブルプリント配線板の製造方法は、配線パターンが形成されたベース部材の補強部位に、導電性粒子が分散された樹脂を主成分とするペースト状の補強材料を塗布及び固化することにより導電性補強部材を設けることを特徴とする。
【0024】
上記の製造方法によれば、ペースト状の補強材料をベース部材の補強部位に塗布及び固化することによって、導電性補強部材をベース部材の補強部位に設けることができる。これにより、導電性補強部材に接着剤を塗布してベース部材に貼り付ける工程を省くことができると共に、導電性補強板の打ち抜き時に発生する材料ロスを削減することができる。また、ペースト状の補強材料を直接補強部位に塗布するため、従来よりもグランド用配線パターンが露出された開口に補強材料が埋め込まれ易くなり、小型化されても導電性接着剤とグランド用配線パターンとの導通不良を軽減することができる。また、一般的なステンレス製の導電性補強部材ではなく、フレキシブルプリント配線板に直接塗布したペースト状の補強材料を固化して導電性補強部材を形成するため、導電性補強部材とフレキシブルプリント配線板との密着性を高くすると共に薄型化を図ることができる。さらには補強部位が複数あれば、印刷等により一度の塗布作業で全ての補強部位に対する塗布作業を完了することができる。この結果、薄型化及び小型化が可能であり、工程数及び材料ロスの削減によるコストダウン及び生産性を向上させることができる。
【0025】
また、本発明のフレキシブルプリント配線板の製造方法は、前記補強部位に対応した穴部を有した所定厚みの型枠部材を前記ベース部材に載置する工程と、前記ペースト状の補強材料を前記型枠部材を介して前記ベース部材に塗工する工程と、前記補強材料を固化する工程とを有していてもよい。
【0026】
また、本発明のフレキシブルプリント配線板の製造方法は、前記ペースト状の補強材料を吐出する吐出機構を、前記ベース部材に対して相対移動させることによって、当該ベース部材の前記補強部位に塗布する工程を有していてもよい。
【0027】
上記の製造方法によれば、型枠部材を用いた補強材料の塗工により所定厚みの導電性補強部材を安定してベース部材に設けることができる。特に、複数の補強部位が存在する場合、一度の塗工作業で全ての補強部位に所定厚みの導電性補強部材を設けることができるため、大量生産が可能になる。
【発明の効果】
【0028】
薄型化及び小型化が可能であり、工程数及び材料ロスの削減によるコストダウン及び生産性を向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の好適な実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0031】
(フレキシブルプリント配線板1の全体構成)
先ず、
図1を用いて、本実施形態のフレキシブルプリント配線板1について説明する。尚、このフレキシブルプリント配線板1は、リジット基板と組み合わせ、リジットフレキシブル配線板として用いてもよい。
【0032】
図1に示すように、フレキシブルプリント配線板1は、ベース部材110と、導電性補強部材135とを有している。具体的に、ベース部材110は、配線パターン115(信号用配線パターン115a・415a、グランド用配線パターン115b)及び貫通するスルーホール112aが形成されたベース層112と、ベース層112の上面及び下面にそれぞれ設けられた接着剤層113・413と、接着剤層113・413に接着された絶縁フィルム111・411と、を有している。そして、フレキシブルプリント配線板1は、ベース部材110の補強部位に、導電性補強部材135を備える。そして、ベース部材110における導電性補強部材135の対向位置に電子部品150が実装される。換言すれば、電子部品150が実装されるベース部材110の対向位置が補強部位となる。導電性補強部材135は、導電性粒子が分散された樹脂を主成分とするペースト状の補強材料を塗布及び固化されたものである。尚、フレキシブルプリント配線板1は、実装された電子部品150を含んだものとしてもよい。
【0033】
尚、ベース部材110への補強材料の塗布について、塗工方式は特に限定されない。例えば、補強材料の塗工方式として、スクリーン印刷、グラビア印刷方式、及び、インクジェット方式等を挙げることができる。
【0034】
本実施形態では、接着剤層113と、絶縁フィルム111とが、補強部位に、層方向へ貫通する有底孔113a・111aを夫々有している。従って、補強材料が塗布される前の段階では、フレキシブルプリント配線板1の補強部位において、グランド用配線パターン115bが露出された状態となる。即ち、ペースト状の補強材料が塗布され、固化される結果、補強材料は有底孔113a・111a内に埋め込まれることになる。これにより、グランド用配線パターン115bは、導電性補強部材135と電気的に接続され、導電性補強部材135を外部グランド部材に接触・接続させることによってグランド電位を得ることができる。図示しないが、この外部グランド部材とは、例えば、フレキシブルプリント配線板1が内蔵される電子機器の筐体等である。
【0035】
このように、ペースト状の補強材料をベース部材110の補強部位に塗布し、これを固化することによって、導電性補強部材135を形成すると同時にベース部材110の補強部位に設けることができる。これにより、導電性補強部材135に接着剤を塗布してベース部材110に貼り付ける工程を省くことができると共に、従来の導電性補強板の打ち抜き時に発生する材料ロスを削減することができる。また、ペースト状の補強材料を直接補強部位に塗布するため、従来よりもグランド用配線パターン115bが露出された開口に補強材料が埋め込まれ易くなり、小型化されても導電性接着剤とグランド用配線パターン115bとの導通不良を軽減することができる。また、一般的なステンレス製の導電性補強部材ではなく、フレキシブルプリント配線板1に直接塗布したペースト状の補強材料を固化して導電性補強部材135を形成するため、導電性補強部材とフレキシブルプリント配線板1との密着性を高くすると共に薄型化を図ることができる。さらには補強部位が複数あれば、印刷等により一度の塗布作業で全ての補強部位に対する塗布作業を完了することができる。この結果、上記の構成を有したフレキシブルプリント配線板1は、薄型化及び小型化が可能であり、工程数及び材料ロスの削減によるコストダウン及び生産性が向上したものとなる。以下、各構成を具体的に説明する。
【0036】
(ベース部材110)
上述のように、ベース部材110は、ベース層112、接着剤層113、絶縁フィルム111を有している。ベース層112の上面には、信号用配線パターン115aやグランド用配線パターン115bが形成されている。また、ベース層112の下面には、複数の信号用配線パターン415a・415aが形成されている。1つの信号用配線パターン415aは、ベース層112のスルーホール112aを介して上面側の信号用配線パターン115aに電気的に接続されている。また、別の信号用配線パターン415aは、半田401を介して電子部品150に電気的に接続される。これらの配線パターン115は、導電性材料をエッチング処理することにより形成される。グランド用配線パターン115bは、グランド電位を保つためのパターンのことを指す。
【0037】
接着剤層113・413は、信号用配線パターン115a・415aやグランド用配線パターン115bと絶縁フィルム111・411との間に介在する接着剤であり、絶縁性を保つと共に、絶縁フィルム111・411をベース層112に接着させる役割を有する。尚、接着剤層113・413の厚みは、10μm〜40μmであるが、特に限定される必要はなく適宜設定可能である。
【0038】
ベース層112と絶縁フィルム111・411は、いずれもエンジニアリングプラスチックからなる。例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、架橋ポリエチレン、ポリエステル、ポリベンズイミダゾール、ポリイミド、ポリイミドアミド、ポリエーテルイミド、ポリフェニレンサルファイドなどの樹脂が挙げられる。あまり耐熱性を要求されない場合は、安価なポリエステルフィルムが好ましく、難燃性が要求される場合においては、ポリフェニレンサルファイドフィルム、さらに耐熱性が要求される場合にはポリイミドフィルム、ポリアミドフィルム、ガラスエポキシフィルムが好ましい。尚、ベース層112の厚みは、10μm〜40μmであり、絶縁フィルム111の厚みは、10μm〜30μmであるが、特に限定される必要はなく適宜設定可能である。
【0039】
上述のように、上記の絶縁フィルム111・411および接着剤層113・413には、金型などによって、有底孔113a・111a・413a・411aが夫々形成されている。有底孔113a・111aは、複数の配線パターン115の中から選択されたグランド用配線パターン115bの一部領域を露出させるものである。有底孔413a・411aは、複数の配線パターン115の中から選択された信号用配線パターン415aの一部領域を露出させるものである。本実施形態の場合、グランド用配線パターン115bの一部領域が、外部に露出するように、絶縁フィルム111および接着剤層113における積層方向に有底孔113a・111aが夫々に形成されている。信号用配線パターン415aの一部領域が、外部に露出するように、絶縁フィルム411および接着剤層413における積層方向に有底孔413a・411aが夫々に形成されている。尚、有底孔113a・111a・413a・411aは、隣接する他の配線パターンを露出させないように適宜穴径が設定されている。
【0040】
(導電性補強部材135)
導電性補強部材135は、配線パターン115が形成されたベース部材110の補強部位に、導電性粒子が分散された熱硬化性樹脂等の樹脂を主成分とするペースト状の補強材料を塗布し、これを加熱加圧等することにより固化されて形成されたものである。即ち、ペースト状の補強材料は、樹脂成分に導電性粒子が添加されて形成される。
【0041】
尚、樹脂成分は、熱硬化性樹脂に限定されない。例えば、熱可塑性樹脂、及び、紫外線硬化性樹脂等を用いてもよい。また、樹脂成分は、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、及び、紫外線硬化性樹脂のうち何れか2以上の混合であってもよい。熱可塑性樹脂としては、ポリスチレン系、酢酸ビニル系、ポリエステル系、ポリエチレン系、ポリプロピレン系、ポリアミド系、ゴム系、アクリル系等が挙げられる。紫外線硬化性樹脂としては、エポキシアクリレート樹脂、ポリエステルアクリレート樹脂、及びそれらのメタクリレート変性品等が挙げられる。尚、硬化形態としては、熱硬化、紫外線硬化、電子線硬化などどれでもよく、硬化するものであればよい。また、ペースト状の補強材料の例を以下に挙げるが、これらに限定されるものではない。また、補強材料には、硬化剤を添加してもよい。また、補強材料には、消泡剤、増粘剤、粘着剤等の添加剤を添加してもよい。
【0042】
(導電性補強部材135:補強材料:樹脂成分)
補強材料における樹脂成分は、フェノール系、エポキシ系、ウレタン系、メラミン系、アルキド系などの熱硬化性樹脂で構成されることが好ましい。具体的に、樹脂成分は、アクリレート樹脂(アクリレートモノマー)、及び/又は、エポキシ樹脂を含んでいることが好ましく、アクリレートモノマー及びエポキシ樹脂のみからなるものであってもよい。また、アルキド樹脂、メラミン樹脂又はキシレン樹脂のうちの1種以上をアクリレート樹脂(アクリレートモノマー)、及び/又は、エポキシ樹脂にブレンドしたものであってもよい。
【0043】
また、アクリレートモノマー(アクリレート樹脂を構成するモノマー)の具体例としては、イソアミルアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、フェニルグリシジルエーテルアクリレートヘキサメチレンジイソシアネートウレタンプレポリマー、ビスフェノールAジグリシジルエーテルアクリル酸付加物、エチレングリコールジメタクリレート、及び、ジエチレングリコールジメタクリレート等が挙げられる。
【0044】
また、エポキシ樹脂について、構造等は特に限定されない。例えば、エポキシ樹脂は、分子内にエポキシ基を1個以上有するものであればよく、2種以上を併用することもできる。具体例としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、臭素化エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、グリシジルエーテル型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、複素環式エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0045】
また、アルキド樹脂、メラミン樹脂、及び、キシレン樹脂はそれぞれ樹脂改質剤として用いられるものであり、その目的を達成できるものであれば特に限定されない。
【0046】
(アクリレート樹脂、及び、エポキシ樹脂のいずれも含む場合の例)
樹脂成分に、アクリレート樹脂(アクリレートモノマー)、及び、エポキシ樹脂のいずれも含む場合、これらの総量を100重量%としたときアクリレート樹脂の下限は、5重量%が好ましく、20重量%がより好ましい。即ち、エポキシ樹脂の上限は、95重量%が好ましく、80重量%がより好ましい。また、アクリレート樹脂の上限は、95重量%が好ましく、80重量%がより好ましい。即ち、エポキシ樹脂の下限は、5重量%が好ましく、20重量%がより好ましい。
【0047】
また、アクリレート樹脂(アクリレートモノマー)、及び、エポキシ樹脂にアルキド樹脂、メラミン樹脂、キシレン樹脂のうちの1種以上をブレンドする場合、樹脂成分総量中のアクリレート樹脂及びエポキシ樹脂の割合を、60重量%以上とすることが好ましく、90重量%以上とすることがより好ましい。即ち、改質剤としてブレンドする樹脂の樹脂成分総量に対する割合は、40重量%未満とすることが好ましく、10重量%未満とすることがより好ましい。
【0048】
(エポキシ樹脂を含む場合の例)
樹脂成分にエポキシ樹脂を含む場合、エポキシ当量の下限は、200であることが好ましく、300であることがより好ましい。また、エポキシ当量の上限は、600であることが好ましく、500であることがより好ましい。また、エポキシ樹脂の加水分解性塩素濃度が200ppm以下であることが好ましく、50ppm以下であることがより好ましい。また、樹脂成分全体の加水分解性塩素濃度の上限は、1000ppm以下であることが好ましく、800ppm以下であることがより好ましい。
【0049】
また、樹脂成分におけるエポキシ樹脂の含有量は、20重量%以上であることが好ましく、30重量%以上であることがより好ましい。この場合、樹脂成分におけるエポキシ樹脂以外の樹脂成分としては、上記要件を満たさないエポキシ樹脂、アルキド樹脂、メラミン樹脂、キシレン樹脂等が挙げられ、これらを1種又は2種以上、樹脂成分中に好ましくは80重量%以下、より好ましくは70重量%以下の割合で併用することができる。
【0050】
(アクリレート樹脂を含む場合の例)
また、樹脂成分に、アクリレート樹脂を含む場合であって、アクリレート樹脂に、エポキシ樹脂、アルキド樹脂、メラミン樹脂、キシレン樹脂のうちの1種以上をブレンドする場合の配合比は、樹脂成分総量中のアクリレート樹脂以外の割合を80重量%未満とすることが好ましく、70重量%未満とすることがより好ましい。
【0051】
(導電性補強部材135:補強材料:導電性粒子)
導電性粒子の形状は特に限定されないが、樹枝状、球状、リン片状、繊維状等の従来から用いられているものが使用できる。また、粒径も制限されないが、通常は平均粒径で1〜50μm程度である。
【0052】
導電性粒子の材料としては、金、銀、銅、ニッケル、カーボン、ハンダ、アルミ等を用いることができる。また、これらのうちの単一の金属からなる金属粉のほか、2種以上の合金からなる金属粉や、これらの金属粉、樹脂ボール及びガラスビーズ等を単一の金属または2種以上の合金でコートしたものも使用でき、好ましい例としては銀コート銅粉が挙げられる。
【0053】
導電性粒子の材料にもよるが、導電性粒子の配合量の下限は、樹脂成分100重量部に対して5重量部とすることが好ましく、10重量部とすることがより好ましい。また、導電性粒子の配合量の上限は、樹脂成分100重量部に対して1800重量部とすることが好ましく、1600重量部とすることがより好ましい。
【0054】
具体的に、導電性粒子として銀コート銅粉を用いる場合は、接着性樹脂100重量部に対して下限は10重量部とするのが好ましく、さらに好ましくは20重量部とするのがよい。また、上限は400重量部とするのが好ましく、さらに好ましくは150重量部とするのがよい。
【0055】
また、導電性粒子としてニッケルフィラーを用いる場合は、接着性樹脂100重量部に対して下限は40重量部とするのが好ましく、さらに好ましくは100重量部とするのがよい。また、上限は400重量部とするのが好ましく、さらに好ましくは350重量部とするのがよい。
【0056】
尚、導電性補強部材135は、等方導電層であることが好ましい。換言すれば、導電性補強部材135が等方導電性を有していることが好ましい。これにより、層厚方向および面方向の何れにも電気的な導電状態を確保することができるため、導電性補強部材を介してグランド用配線パターン115bを外部グランドに接続できるだけでなく、導電性補強部材135に電磁波シールド効果を発現させることができる。しかしながら、これに限定されず、導電性補強部材135は、異方導電性を有した異方導電層であってもよい。
【0057】
導電性補強部材135を異方導電層とする場合、導電性粒子の樹脂成分への配合割合は、樹脂成分100重量部に対して下限は5重量部とするのが好ましく、上限は150重量部とするのが好ましい。また、導電性補強部材135を等方導電層とする場合、導電性粒子の樹脂成分への配合割合は、樹脂成分100重量部に対して下限は60重量部とするのが好ましく、上限は1800重量部とするのが好ましい。
【0058】
また、導電性粒子として、融点が180℃以下の低融点金属1種以上と、融点が800℃以上の高融点金属1種以上とを含む2種以上の金属を含め、補強材料を塗布した後の加熱により低融点金属が溶融し高融点金属と金属間化合物を形成するメタライズ化を発生させることが好ましい。上記2種以上の金属の存在形態は限定されないが、例えば、ある種の金属粉を他の種類の金属からなる金属粉と混合したもの、又はある種の金属粉を他の種類の金属でコートしたもの、あるいはこれらを混合したものが挙げられる。
【0059】
低融点金属及び高融点金属としては、単一の金属からなるものほか、2種以上の金属の合金を使用することもできる。低融点金属の好ましい例としては、インジウム(融点:156℃)単独、又は錫(融点:231℃)、鉛(融点:327℃)、ビスマス(融点:271℃)、又はインジウムのうちの1種又はこれらのうちの2種以上を合金にして融点180℃以下にしたものが挙げられる。また、高融点金属の好ましい例としては、金(融点:1064℃)、銀(融点:961℃)、銅(融点:1083℃)、又はニッケル(融点:1455℃)のうちの1種又は2種以上の合金が挙げられる。
【0060】
また、低融点金属粉と高融点金属粉との配合比(重量比)は、8:2〜2:8の範囲内であることが好ましい。また、低融点金属としてはスズが含まれていることが好ましく、中でもスズ(Sn)とビスマス(Bi)の合金が好ましく、その合金比率がSn:Bi=80:20〜42:58であることが特に好ましい。
【0061】
このように、導電性粒子として、低融点金属粉と高融点金属粉とを用い、メタライズ化を発生させる場合には、補強材料にフラックスを添加することが好ましい。フラックスは、低融点金属粉と高融点金属粉とのメタライズ化を促進するものである。フラックスの例としては、塩化亜鉛、乳酸、クエン酸、オレイン酸、ステアリン酸、グルタミン酸、安息香酸、シュウ酸、グルタミン酸塩酸塩、アニリン塩酸塩、臭化セチルピリジン、尿素、ヒドロキシエチルラウリルアミン、ポリエチレングリコールラウリルアミン、オレイルプロピレンジアミン、トリエタノールアミン、グリセリン、ヒドラジン、ロジン等が挙げられる。例えば、ヒドロキシエチルラウリルアミンは、室温付近の反応性が低く160℃付近に活性温度を有しており、用途に応じて好適に用いられる。
【0062】
また、潜在性フラックスを添加してもよい。潜在性フラックスの例として、アミノアルコールに2−エチルヘキシル酸亜鉛を反応させて得られるブロック型フラックスが挙げられる。アミノアルコールの具体例としては、N−メチルジエタノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、N,N−ジエチルエタノールアミン、トリエタノールアミン、N,N−ジブチルエタノールアミン、N−メチル−N,N−ジエタノールアミン、又はポリエチレングリコールラウリルアミン、ポリエチレングリコールステアリルアミン、ポリエチレングリコールジオレイルアミン等のポリエチレングリコールアルキルアミン等が挙げられる。
【0063】
フラックスの使用量の下限は、樹脂100重量部に対して0.3重量部が好ましく、3重量部がより好ましく、5重量部がさらに好ましい。フラックスの使用量の上限は、樹脂100重量部に対して100重量部が好ましく、80重量部がより好ましく、15重量部がさらに好ましい。
【0064】
(導電性補強部材135:補強材料:硬化剤)
硬化剤としては、フェノール系硬化剤、イミダゾール系硬化剤、カチオン系硬化剤、ラジカル系硬化剤(重合開始剤)が挙げられるがこれに限定されない。また、これら硬化剤から選択された1種又は2種以上であってもよい。硬化剤の使用量の下限は、樹脂100重量部に対して0.5重量部が好ましく、3重量部がより好ましい。硬化剤の使用量の上限は、樹脂100重量部に対して40重量部が好ましく、20重量部がさらに好ましい。
【0065】
フェノール系硬化剤の例としては、ノボラックフェノール、ナフトール系化合物等が挙げられる。
【0066】
イミダゾール系硬化剤の例としては、イミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−エチル−4−メチル−イミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾリウムトリメリテイトが挙げられる。
【0067】
カチオン系硬化剤の例としては、三フッ化ホウ素のアミン塩、P−メトキシベンゼンジアゾニウムヘキサフルオロホスフェート、ジフェニルイオドニウムヘキサフルオロホスフェート、トリフェニルスルホニウム、テトラ−n−ブチルホスホニウムテトラフェニルボレート、テトラ−n−ブチルホスホニウム−o,o−ジエチルホスホロジチオエート等に代表されるオニウム系化合物が挙げられる。
【0068】
ラジカル系硬化剤(重合開始剤)の例としては、ジ−クミルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド等が挙げられる。
【0069】
(フェノール系硬化剤を用いる例)
上記のように、硬化剤として、フェノール系硬化剤を用いてもよく、さらに上記に挙げた他の硬化剤を1種以上添加してもよい。フェノール系硬化剤の使用量の下限は、樹脂成分100重量部に対して、0.3重量部が好ましい。フェノール系硬化剤の使用量の上限は、樹脂成分100重量部に対して、35重量部が好ましい。また、フェノール系硬化剤以外の硬化剤の使用量の下限は、樹脂成分100重量部に対して0.2重量部が好ましい。フェノール系硬化剤以外の硬化剤の使用量の上限は、樹脂成分100重量部に対して35重量部が好ましい。
【0070】
(導電性補強部材を有したフレキシブルプリント配線板の製造方法)
導電性補強部材を有したフレキシブルプリント配線板は、配線パターン115が形成されたベース部材110の補強部位に、導電性粒子が分散された樹脂を主成分とするペースト状の補強材料が塗布され、これが固化されることにより製造される。以下、製造方法について具体的に説明するがこれに限定されない。
【0071】
(塗布)
図2に示すように、先ず、補強部位に対応した穴部141を有した所定厚みの型枠部材140がベース部材110に載置される。
【0072】
尚、「型枠部材140がベース部材110に載置される」とは、ベース部材110に対して型枠部材140が位置決めされることを示す。即ち、型枠部材140の穴部141が、補強部位に位置決めされることを示し、型枠部材140がベース部材110に直接載置されることに限定されるものではない。
【0073】
次に、ペースト状の補強材料が型枠部材140を介してベース部材110に塗工される。例えば、ベース部材110への塗布は、スクリーン印刷方式によって行われてもよい。具体的に、
図3に示すように、型枠部材140上に載せた補強材料120を、スキージ142で押し付けながら移動させる。これにより、補強材料120が、穴部141から押し出され、穴部141に対応する補強部位に塗布されることになる。
【0074】
また、例えば、ベース部材110への塗布は、インクジェット印刷方式によって行われてもよい。具体的に、
図4に示すように、型枠部材140の上方において、補強材料を吐出する吐出機構143をベース部材110に対して相対移動させる。これにより、穴部141に対応する補強部位にのみ補強材料が塗布されることになる。また、補強部位の上方においてのみ吐出機構143が補強材料を吐出する制御を行えば、型枠部材140を不要とすることができる。
【0075】
(固化)
塗布された補強材料は、補強材料の硬化形態に応じて、加熱、プレス、紫外線照射、電子線照射等が行われて固化されることにより、導電性補強部材135が形成される。
【0076】
例えば、補強材料の樹脂成分が熱硬化性樹脂である場合、導電性補強部材135は、補強材料が、プレヒート工程、プレス工程、及び、キュア工程を経て固化されることで形成される。プレヒート工程は、補強材料中のボイドを抜いたり、後のプレス工程における補強材料の変形を制限する等の目的で行われる低温での予備加熱である。例えば、プレヒート工程では、60℃〜120℃の雰囲気下において3〜5分間の加熱が行われる。プレス工程は、形成される導電性補強部材135を平滑化する目的で、プレヒート工程後に行われる。例えば、プレス工程では、平板等の平ら面で、補強材料が塗布されたフレキシブルプリント配線板に、0.3MPaの圧力が加えられる。キュア工程は、塗布された補強材料を十分に硬化を進行させる目的で、プレス工程後に行われる加熱である。例えば、キュア工程では、100〜160℃の雰囲気下において15〜30分間の加熱が行われる。尚、補強材料の樹脂成分が紫外線硬化樹脂を含んでいる場合、プレヒート工程の代わりに、もしくは、プレヒート工程に加えて、紫外線硬化工程を実施してもよい。
【0077】
尚、上記工程における温度、加熱時間、圧力値はこれに限定されない。また、固化する工程として、加熱のみを実施してもよい。例えば、補強材料が、熱硬化性樹脂に、低融点金属と高融点金属とを有した導電性粒子を分散させたものである場合、樹脂成分の硬化と金属粉のメタライズ化の双方に適した条件を選択することが好ましい。具体的な条件は組成等により異なるが、加熱温度の下限は、150℃が好ましく、160℃がより好ましい。加熱温度の上限は、200℃が好ましく、180℃がより好ましい。また、加熱時間の下限は、15分間が好ましく、30分間がより好ましい。加熱時間の上限は、120分間が好ましく、60分間がより好ましい。
【0078】
以上の詳細な説明では、本発明をより容易に理解できるように、特徴的部分を中心に説明したが、本発明は、以上の詳細な説明に記載する実施形態に限定されず、その他の実施形態にも適用することができ、その適用範囲は可能な限り広く解釈されるべきである。
【0079】
また、本明細書において用いた用語及び語法は、本発明を的確に説明するために用いたものであり、本発明の解釈を制限するために用いたものではない。また、当業者であれば、本明細書に記載された発明の概念から、本発明の概念に含まれる他の構成、システム、方法等を推考することは容易であると思われる。従って、請求の範囲の記載は、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲で均等な構成を含むものであるとみなされるべきである。また、本発明の目的及び本発明の効果を充分に理解するために、すでに開示されている文献等を充分に参酌することが望まれる。
【0080】
(変形例)
例えば、導電性補強部材が異方導電層と等方導電層との積層構造であってもよい。具体的に、
図5に示すように、フレキシブルプリント配線板201は、導電性補強部材235が異方導電層235aと等方導電層235bとの積層構造で形成されている。より具体的には、ベース部材210と等方導電層235bとの間に異方導電層235aを配置した2層構造である。また、補強材料が塗布されるベース部材210は、配線パターン215(信号用配線パターン215a、グランド用配線パターン215b)が形成されたベース層212と、ベース層212上に設けられた接着剤層213と、接着剤層213に接着された絶縁フィルム211と、を有している。そして、ベース部材210における導電性補強部材235の対向位置に電子部品250が実装される。換言すれば、電子部品250が実装されるベース部材210の対向位置が補強部位となる。
【0081】
また、接着剤層213と、絶縁フィルム211とが、補強部位に、層方向へ貫通する有底孔213a・211aを夫々有している。従って、補強材料が塗布される前の段階では、フレキシブルプリント配線板201の補強部位において、グランド用配線パターン215bが露出された状態となる。また、異方導電層235aの下部は、この有底孔213a・211aに埋め込まれている。
【0082】
このように、導電性補強部材235が、異方導電層235aと等方導電層235bとの積層構造であることにより、導電性補強部材の全部を等方導電層で構成した場合よりも、材料コストを低減することができる。また、ベース部材210に異方導電性の補強材料を塗布した後、等方導電性の補強材料を塗布することによって、異方導電層235a及び等方導電層235bの厚みを容易に設定することができる。
【0083】
さらに、異方導電層235aが有底孔213a・211aに埋め込まれ、その異方導電層235aに等方導電層235bが積層されることにより、異方導電層235aが埋め込まれる有底孔213a・211aにおいては層方向のみの導通を少なくとも確保し、等方導電層235bでは層厚方向および面方向の何れにも電気的な導電状態を確保することができる。これにより、導電性粒子をなるべく少なくしてコスト軽減を図ることができると共に、導電性補強部材235に電磁波シールド効果を発現させることができる。
【0084】
また、
図6に示すように、導電性補強部材は、ベース部材を外部に露出させる貫通穴を有していてもよい。具体的に、フレキシブルプリント配線板301は、ベース部材310と、ベース部材310上にペースト状の補強部材が塗布されて固化された導電性補強部材335とを有している。導電性補強部材335に形成された有底孔は、ピンホールを有する導電性補強部材3351を形成する貫通穴3351aであってもよいし、網目状の導電性補強部材3352を形成する貫通穴3352aであってもよいし、格子状の導電性補強部材3353を形成する貫通穴3353aであってもよい。尚、貫通穴はどのような形状であってもよく、単数であってもよい。
【0085】
このように、導電性補強部材335が貫通穴を有していることによって、導電性補強部材335とベース部材310との接合面に存在する気泡を貫通穴を介して外部に排出することができるため、気泡による導電性補強部材335とベース部材310との接合力の低下を抑制することができる。また、導電性補強部材を板状に形成する場合と比較して、材料コストを低減することができる。
【実施例】
【0086】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。また、実施例において、特に明記しない限り、「部」および「%」は重量基準である。
【0087】
(ペースト状の補強部材の作成)
フェノキシ樹脂(三菱化学社製、商品名「JER1256」、ビスフェノールA型フェノキシ樹脂、重量平均分子量:50000)6.7重量部と、ヘキサメチレンジイソシアネート系ポリイソシアネート化合物(イソシアヌレートタイプ、NCO%:23.1重量%)4.4重量部と、ブチルカルビトールとを混合してワニスを調製した。上記ワニス(固形分:11.1重量部)に、フレーク状銀コート銅粉(平均粒子径:8μm〜10μm、銀コート量:15重量%、アスペクト比:45)100重量部と、トリエタノールアミン2重量部と、リン含有有機チタネート(ビス(ジオクチルパイロホスフェート)オキシアセテートチタネート)2重量部と消泡剤とを加えて、等方導電性のペースト状の補強部材となる等方導電性ペーストを得た。
【0088】
また、フレーク状銀コート銅粉(平均粒子径:8μm〜10μm、銀コート量:15重量%、アスペクト比:45)15重量部以外は、上記の等方導電性ペーストと同様の組成である異方導電性のペースト状の補強部材である異方導電性ペーストを得た。
【0089】
(ベース部材110・210の作成)
図7に示すように、フレキシブルプリント配線板用の表面保護フィルムである37.5μm厚のCVL(cover lay)に、開口径が0.2,0.3,0.5,1.0mmの有底孔111a・113aを形成した。そして、これらの各CVLと、銅箔及び基材を備えたCCL(copper clad laminate)とを貼り合せることによって、開口径が0.2,0.3,0.5,1.0mmの有底孔111a・113aを有したベース部材110をそれぞれ作成した。また、
図8に示すように、ベース部材110の作成方法と同様にして、開口径が0.2,0.5,1.0mmの有底孔211a・213aを有したベース部材210をそれぞれ作成した。
【0090】
(実施例1)
図7に示すように、ベース部材110のベース層112上には、テスト用配線パターン116を設けた。テスト用配線パターン116は、一部領域(一方のテスト用配線パターン116)が有底孔111a・113aにおいて露出されると共に、他の一部領域が絶縁フィルム111と接着剤層113とが積層されずに露出される(他方のテスト用配線パターン116)。即ち、
図7に示される2つのテスト用配線パターン116・116は、ベース層112上において電気的に接続されている。そして、開口径が0.2mmの有底孔111a・113aを有したベース部材110上に、40μmの厚みで等方導電性ペーストを塗布し、有底孔111a・113aに等方導電性ペーストを埋め込んだフレキシブルプリント配線板1を作成した。そして、等方導電性ペーストを160℃で30分間加熱して固化することによって、一方のテスト用配線パターン116に接続される導電性補強部材135を備えた実施例1のフレキシブルプリント配線板1とした。この後、一方のテスト用配線パターン116が接続される導電性補強部材135と他方のテスト用配線パターン116との電気抵抗値を測定した。測定は、リフロー前のタイミングで実施すると共に、260℃で10秒間のリフローを1回、3回、5回行った後のタイミングでそれぞれ実施した。測定結果を表1に示す。尚、表1中の「オリジナル」は、リフロー前を意味する。
【0091】
この結果、
図10における「丸印」の折れ線グラフで示すように、実施例1における開口径(グランド径)が0.2mmの有底孔111a・113aを有したフレキシブルプリント配線板1は、リフロー前の抵抗値が61.0mΩ、1回のリフロー後の抵抗値が25.6mΩ、3回のリフロー後の抵抗値が25.4mΩ、5回のリフロー後の抵抗値が26.4mΩであることが判明した。
【0092】
(実施例2〜4)
実施例1と同様にして、開口径が0.3mmの有底孔111a・113aを有したフレキシブルプリント配線板1(実施例2)と、開口径が0.5mmの有底孔111a・113aを有したフレキシブルプリント配線板1(実施例3)と、開口径が1.0mmの有底孔111a・113aを有したフレキシブルプリント配線板1(実施例4)とについて、導電性補強部材135とテスト用配線パターン116との電気抵抗値をそれぞれ測定した。
【0093】
この結果、実施例2のフレキシブルプリント配線板1は、
図10における「三角印」の折れ線グラフで示すように、リフロー前の抵抗値が55.4mΩ、1回のリフロー後の抵抗値が24.0mΩ、3回のリフロー後の抵抗値が24.8mΩ、5回のリフロー後の抵抗値が23.8mΩであることが判明した。また、実施例3のフレキシブルプリント配線板1は、
図10における「四角印」の折れ線グラフで示すように、リフロー前の抵抗値が27.0mΩ、1回のリフロー後の抵抗値が12.4mΩ、3回のリフロー後の抵抗値が11.2mΩ、5回のリフロー後の抵抗値が11.4mΩであることが判明した。また、実施例4のフレキシブルプリント配線板1は、
図10における「ダイヤ印」の折れ線グラフで示すように、リフロー前の抵抗値が27.2mΩ、1回のリフロー後の抵抗値が10.8mΩ、3回のリフロー後の抵抗値が10.8mΩ、5回のリフロー後の抵抗値が10.6mΩであることが判明した。
【0094】
(実施例5〜7)
図8に示すように、ベース部材210のベース層212上には、テスト用配線パターン216を設けた。テスト用配線パターン216は、一部領域(一方のテスト用配線パターン216)が有底孔211a・213aにおいて露出されると共に、他の一部領域が絶縁フィルム211と接着剤層213とが積層されずに露出される(他方のテスト用配線パターン116)。即ち、
図8に示される2つのテスト用配線パターン216・216は、ベース層212上において電気的に接続されている。そして、開口径が0.2mmの有底孔211a・213aを有したベース部材210上に、10μmの厚みで異方導電性ペーストを塗布して、有底孔211a・213aに異方導電性ペーストを埋め込んだ後、30μmの厚みで等方導電性ペーストを塗布したフレキシブルプリント配線板201を作成した。そして、異方導電性ペースト及び等方導電性ペーストを160℃で30分間加熱して固化することによって、異方導電性の導電性補強部材235aと、一方のテスト用配線パターン216が接続される等方導電性の等方導電層235bとを積層構造で備えた実施例5のフレキシブルプリント配線板201とした。
【0095】
また、実施例5のフレキシブルプリント配線板201と同様にして、開口径が0.5mmの有底孔211a・213aを有したフレキシブルプリント配線板201(実施例6)と、開口径が1.0mmの有底孔211a・213aを有したフレキシブルプリント配線板201(実施例7)とを作成した。そして、これらの実施例5・6・7のフレキシブルプリント配線板201について、一方のテスト用配線パターン216が接続される等方導電層235bと他方のテスト用配線パターン216との電気抵抗値を測定した。
【0096】
この結果、実施例5・6・7のフレキシブルプリント配線板201は、リフロー前の抵抗値がそれぞれ144.5mΩ、36.3Ω、25.8mΩであることが判明した。
【0097】
(比較例1〜4)
図9に示すように、ベース部材110のベース層112上には、テスト用配線パターン116を設けた。テスト用配線パターン116は、一部領域(一方のテスト用配線パターン116)が有底孔111a・113aにおいて露出されると共に、他の一部領域が絶縁フィルム111と接着剤層113とが積層されずに露出される(他方のテスト用配線パターン116)。即ち、
図9に示される2つのテスト用配線パターン116・116は、ベース層112上において電気的に接続されている。そして、開口径が0.2mmの有底孔111a・113aを有したベース部材110上に、等方導電性接着部材(タツタ電線社製、CBF−300−W6)を介して0.1mm厚のステンレス製のSUS部材を載置し、加熱及び加圧することによって、40μm厚の等方導電性接着剤層により一方のテスト用配線パターン116が接続されるSUS部材が取り付けられたフレキシブルプリント配線板101を比較例1として作成した。また、比較例1と同様にして、開口径が0.3、0.5、1.0mmの有底孔111a・113aを有したフレキシブルプリント配線板301を比較例2・3・4として作成した。そして、各比較例1〜4について、実施例1と同様にして、一方のテスト用配線パターン116が接続されるSUS部材と他方のテスト用配線パターン116との電気抵抗値をそれぞれ測定した。
【0098】
この結果、比較例1のフレキシブルプリント配線板101は、
図11における「丸印」の折れ線グラフで示すように、リフロー前の抵抗値が139.0mΩ、1回のリフロー後の抵抗値が187.0mΩ、3回のリフロー後の抵抗値が300.0mΩ、5回のリフロー後の抵抗値が377.0mΩであることが判明した。比較例2のフレキシブルプリント配線板301は、
図11における「三角印」の折れ線グラフで示すように、リフロー前の抵抗値が64.0mΩ、1回のリフロー後の抵抗値が87.0mΩ、3回のリフロー後の抵抗値が121.0mΩ、5回のリフロー後の抵抗値が144.0mΩであることが判明した。
【0099】
また、比較例3のフレキシブルプリント配線板1は、
図11における「四角印」の折れ線グラフで示すように、リフロー前の抵抗値が45.0mΩ、1回のリフロー後の抵抗値が60.0mΩ、3回のリフロー後の抵抗値が68.0mΩ、5回のリフロー後の抵抗値が65.0mΩであることが判明した。比較例4のフレキシブルプリント配線板1は、
図11における「ダイヤ印」の折れ線グラフで示すように、リフロー前の抵抗値が34.0mΩ、1回のリフロー後の抵抗値が41.0mΩ、3回のリフロー後の抵抗値が42.0mΩ、5回のリフロー後の抵抗値が39.0mΩであることが判明した。
【0100】
【表1】
【0101】
(評価:実施例1〜4・比較例1〜4)
実施例1の電気抵抗値は、オリジナル、1回のリフロー後、3回のリフロー後、5回のリフロー後の電気抵抗値は、比較例1のオリジナル、1回のリフロー後、3回のリフロー後、5回のリフロー後の電気抵抗値よりもそれぞれ高い。同様に、実施例2・3・4の電気抵抗値は、比較例2・3・4の電気抵抗値よりもそれぞれ高い。これにより、実施例1〜4のように有底孔111a・113aに等方導電性ペーストを埋め込んだフレキシブルプリント配線板の方が、比較例1〜4のSUS部材と等方導電性部材とを用いたフレキシブルプリント配線板よりも、グランド効果がよいといえる。
【0102】
実施例1〜4は、リフロー回数が増えても電気抵抗値が殆ど増加しないのに対し、比較例2、3は、リフロー回数が増えるのに従って電気抵抗値が大きく増加している。これにより、有底孔の開口径が0.2mm〜0.3mmの範囲において、有底孔111a・113aに等方導電性ペーストを埋め込んだフレキシブルプリント配線板の方が、SUS部材と等方導電性部材とを用いたフレキシブルプリント配線板よりも、グランド効果が大幅によいといえる。
【0103】
また、実施例1〜4は、オリジナルからリフローを行ったときに、電気抵抗値が低下するのに対し、比較例1〜4は増加している。これにより、有底孔の開口径が0.2mm〜1.0mmの範囲において、有底孔111a・113aに等方導電性ペーストを埋め込んだフレキシブルプリント配線板の方が、SUS部材と等方導電性部材とを用いたフレキシブルプリント配線板よりも、リフローを行った後のグランド効果がよいといえる。
【0104】
(評価:実施例5〜7)
実施例5〜7は、等方導電性ペースト(厚み:30μm)と異方導電性ペースト(厚み:10μm)とを積層したフレキシブルプリント配線板であり、実施例1〜4における等方導電性ペースト(厚み:40μm)のフレキシブルプリント配線板と同一の厚みである。従って、実施例5〜7のフレキシブルプリント配線板は、実施例1〜4における等方導電性ペースト(厚み:40μm)の一部の層(厚み:10μm)を異方導電性ペーストに置き換えた構成であると言える。
【0105】
実施例1〜4の等方導電性ペーストの一部を異方導電性ペーストに置き換えた実施例5〜7のオリジナルの電気抵抗値は、144.5mΩ(開口径0.2mm)、36.3mΩ(開口径0.5mm)、25.8mΩ(開口径1.0mm)である。これに対し、実施例1・3・4におけるオリジナルの抵抗値は、61.0mΩ(開口径0.2mm)、27.0mΩ(開口径0.5mm)、27.2mΩ(開口径1.0mm)である。これにより、実施例5・6・7及び実施例1・3・5を対比すると、開口径が1.0mm及び0.5mmにおいては略同じ抵抗値を示す一方、開口径が0.2mmにおいては大きく異なる抵抗値を示すことから、等方導電性ペーストと異方導電性ペーストとを組み合わせることによって、0.5mm未満、特に0.2mm以下の開口径において信号用配線パターンおよびグランド配線パターンとの静電容量をコントロールすることで、回路基板のインピーダンスをコントロールすることが可能であることが判明した。
【0106】
尚、実施例5のフレキシブルプリント配線板は、比較例1(0.2mmの開口径)の抵抗値(139.0mΩ)と略同じ抵抗値(144.5mΩ)であるが、一般的には抵抗値の規格は1Ω以下であるため問題にはならない。