(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記芳香族ポリアミド樹脂(A)は、ヘキサメチレンテレフタルアミド及びヘキサメチレンイソフタルアミドを含むことを特徴とする、請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
前記オレフィン系共重合体(B)は、エチレン−α−オレフィン共重合体;又は前記エチレン−α−オレフィン共重合体をα,β−不飽和ジカルボン酸及びα,β−不飽和ジカルボン酸誘導体のうち1種以上の化合物で変性させた変性エチレン−α−オレフィン共重合体;を含むことを特徴とする、請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
前記α,β−不飽和ジカルボン酸及びα,β−不飽和ジカルボン酸誘導体のうち1種以上の化合物は、マレイン酸、マレイン酸無水物、マレイン酸ヒドラジド、ジクロロマレイン酸無水物、不飽和化されたジカルボン酸、フマル酸、クエン酸、及びクエン酸無水物のうち1種以上を含むことを特徴とする、請求項6に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性樹脂は、ガラスや金属に比べて比重が低く、特に、熱可塑性樹脂のうちポリアミドは、耐熱性、耐磨耗性、耐薬品性などの優れた性能を有するので、電気電子製品、自動車部品を始めとした既存のガラスや金属の領域を迅速に代替している。
【0003】
そこで、金属のような外観で審美感を維持しながら、ポリアミドの優れた長所を有するためにポリアミド樹脂にめっき処理をする技術が開発されてきた。
【0004】
ポリアミド樹脂上にめっき処理をすることは、装飾性、耐腐食などを目的とするものであって、めっき後の外観特性及びめっき膜と樹脂との密着性(めっき性)が重要な特性である。
【0005】
このために、従来は、ポリアミド樹脂組成物に無機物を添加することによってめっき性を向上させていたが、衝撃強度の低下によって適用可能な用途に制約があった。他の例として、ポリアミド樹脂組成物にエポキシ基を有するポリオレフィンを添加したが、衝撃強度の改善には依然として限界があった。
【0006】
そこで、ポリアミド樹脂とアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(acrylonitrile−butadiene−styrene、ABS)樹脂又はポリカーボネート樹脂などをアロイすることによってめっき性を向上させる方法が提案されたが、アロイ樹脂の場合は耐熱性が低下するという問題がある。
【0007】
したがって、このような問題を解決するために、耐衝撃性、耐熱性などの物性が優秀に維持されながらも、めっき性を改善できるポリアミド樹脂組成物に対する開発が要求される。
【0008】
本発明の背景技術は、大韓民国公開特許第2010−0123178号などに開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、最適なポリアミド樹脂及び衝撃補強剤を用いることによって、めっき密着力が向上し、めっき性に優れた熱可塑性樹脂組成物及びこれから製造された成形品を提供することにある。
【0010】
本発明の他の目的は、最適な組み合わせを有する無機フィラーを添加することによって、優れた外観を確保することができ、耐衝撃性、耐熱性及びめっき性などの物性がさらに向上した熱可塑性樹脂組成物及びこれから製造された成形品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一つの観点は、熱可塑性樹脂組成物に関する。前記熱可塑性樹脂組成物は、(A)少なくとも2種の芳香族ジカルボン酸単位を含む芳香族ポリアミド樹脂約20重量%〜約70重量%;(B)オレフィン系共重合体約0.1重量%〜約20重量%;及び(C)無機フィラー約10重量%〜約60重量%を含むことを特徴とする。
【0012】
具体例において、前記芳香族ポリアミド樹脂(A)は、テレフタル酸及びイソフタル酸を芳香族ジカルボン酸単位として含んでもよい。
【0013】
具体例において、前記芳香族ポリアミド樹脂(A)は、前記テレフタル酸及び前記イソフタル酸を約6:約4〜約8:約2の重量比で含んでもよい。
【0014】
具体例において、前記芳香族ポリアミド樹脂(A)は、ガラス転移温度が約110℃〜約135℃であってもよい。
【0015】
具体例において、前記芳香族ポリアミド樹脂(A)は、ヘキサメチレンテレフタルアミド及びヘキサメチレンイソフタルアミドを含んでもよい。
【0016】
具体例において、前記オレフィン系共重合体(B)は、エチレン−α−オレフィン共重合体;又は前記エチレン−α−オレフィン共重合体をα,β−不飽和ジカルボン酸及びα,β−不飽和ジカルボン酸誘導体のうち1種以上の化合物で変性させた変性エチレン−α−オレフィン共重合体を含んでもよい。
【0017】
具体例において、前記α,β−不飽和ジカルボン酸及びα,β−不飽和ジカルボン酸誘導体のうち1種以上の化合物は、マレイン酸、マレイン酸無水物、マレイン酸ヒドラジド(maleic hydrazide)、ジクロロマレイン酸無水物、不飽和化されたジカルボン酸、フマル酸、クエン酸、及びクエン酸無水物のうち1種以上を含んでもよい。
【0018】
具体例において、前記オレフィン系共重合体(B)は、マレイン酸無水物変性エチレン−オクテン共重合体(maleic anhydride modified ethylene−octene copolymer)を含んでもよい。
【0019】
具体例において、前記無機フィラー(C)は、炭酸カルシウム、タルク、マイカ及びウォラストナイトのうち1種以上を含む第1無機フィラー;ガラス繊維、ガラスビード及びガラスフレークのうち1種以上を含む第2無機フィラー;又はこれらの混合物を含んでもよい。
【0020】
具体例において、前記無機フィラーは、前記第1無機フィラー及び第2無機フィラーを約1:約1〜約1:約5の重量比で含んでもよい。
【0021】
本発明の他の観点は、前記熱可塑性樹脂組成物から製造された成形品に関する。
【0022】
具体例において、前記成形品は、JIS C6481に準じて、約10cm×約10cm×約3.2mmの試片に対して測定されためっき密着力が約1N/cm〜約15N/cmであってもよい。
【発明の効果】
【0023】
本発明に係る熱可塑性樹脂組成物は、少なくとも2種の芳香族ジカルボン酸を反復単位として含むポリアミド樹脂及び最適な衝撃補強剤を用いてめっき密着力が著しく向上し、めっきが容易であるという長所を有する。
【0024】
また、二つの種類の無機フィラーを組み合わせて添加することによって、優れた外観を確保しながらも、耐衝撃性、耐熱性及びめっき性が改善された熱可塑性樹脂組成物及びこれから製造された成形品を提供することができる。
【0025】
本発明の効果は、以上で言及した効果に制限されなく、言及していない他の効果は、特許請求の範囲の記載から当業者に明確に理解され得るだろう。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明を詳細に説明すると、次の通りである。
【0027】
本発明に係る熱可塑性樹脂組成物は、(A)少なくとも2種の芳香族ジカルボン酸単位を含む芳香族ポリアミド樹脂;(B)オレフィン系共重合体;及び(C)無機フィラー;を含む。
【0028】
(A)芳香族ポリアミド樹脂
本発明の一具体例に係る芳香族ポリアミド樹脂は、少なくとも2種の芳香族ジカルボン酸単位を含むものである。例えば、前記芳香族ポリアミド樹脂は、芳香族基を含む単量体から形成される共重合体、三元共重合体又はそれ以上の重合体であってもよく、ここで、共重合体という用語は、二つ以上のアミド及び/又はジアミド分子反復単位を有するポリアミドを意味する。
【0029】
具体的に、前記芳香族ポリアミド樹脂は、主鎖に芳香族化合物を含む構造であって、芳香族ジカルボン酸が約10モル%〜約100モル%含まれたジカルボン酸モノマーと、脂肪族又は脂環族ジアミンで構成されたモノマーとの縮重合によって製造され得る。ここで、前記脂肪族又は脂環族ジアミンモノマーは、炭素数が4〜20であってもよく、前記芳香族ジカルボン酸モノマーは、分子内に芳香族ベンゼン環が含有されているものであって、例えば、テレフタル酸又はイソフタル酸などであってもよいが、これに制限されない。言い換えると、前記芳香族ポリアミド樹脂は、反復単位がジカルボン酸単位及び脂肪族又は脂環族ジアミン単位からなり、前記ジカルボン酸単位は、芳香族ジカルボン酸単位を10モル%〜100モル%含んでもよい。
【0030】
具体例において、前記芳香族ジカルボン酸単位は、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,4−フェニレンジオキシ二酢酸、1,3−フェニレンジオキシ二酢酸、ジフェン酸、4,4’−オキシ二安息香酸、ジフェニルメタン−4,4’−ジカルボン酸、ジフェニルスルホン−4,4’−ジカルボン酸、4,4’−ビフェニルジカルボン酸、及びこれらの組み合わせなどから由来し得る。例えば、前記芳香族ジカルボン酸単位は、テレフタル酸及びイソフタル酸を含んでもよく、具体的に、テレフタル酸及びイソフタル酸が約6:約4〜約8:約2の重量比で含まれてもよい。前記芳香族ジカルボン酸単位として他の物質を組み合わせる場合、めっき性が著しく低下するおそれがあり、芳香族ジカルボン酸単位としてテレフタル酸及びイソフタル酸が前記範囲で含まれる場合、熱可塑性樹脂組成物のめっき密着力、めっき性などを著しく向上できるという臨界的意義を有する。
【0031】
具体例において、前記ジカルボン酸単位は、前記芳香族ジカルボン酸単位の他に、非芳香族ジカルボン酸から由来した単位をさらに含んでもよい。前記非芳香族ジカルボン酸は、脂肪族又は脂環族ジカルボン酸であってもよい。例えば、前記非芳香族ジカルボン酸は、マロン酸、ジメチルマロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、2−メチルアジピン酸、トリメチルアジピン酸、ピメリン酸、2,2−ジメチルグルタル酸、2,2−ジエチルコハク酸、アゼライン酸、セバシン酸、スベリン酸などの脂肪族ジカルボン酸;又は1,3−シクロペンタンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環族ジカルボン酸;などを含んでもよい。このような非芳香族ジカルボン酸から由来した単位は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いられてもよい。前記ジカルボン酸単位のうち、非芳香族ジカルボン酸単位の含有量は、約90モル%以下、例えば、80モル%以下、具体的に70モル%以下、さらに具体的に60モル%以下であってもよい。
【0032】
具体例において、前記脂肪族ジアミン単位は、炭素数4〜18の脂肪族アルキレンジアミンから由来したものであって、前記炭素数4〜18の脂肪族アルキレンジアミンとしては、1,6−ヘキサンジアミン、1,7−ヘプタンジアミン、1,8−オクタンジアミン、1,9−ノナンジアミン、1,10−デカンジアミン、1,11−ウンデカンジアミン、1,12−ドデカンジアミンなどの線形脂肪族アルキレンジアミン;1−ブチル−1,2−エタンジアミン、1,1−ジメチル−1,4−ブタンジアミン、1−エチル−1,4−ブタンジアミン、1,2−ジメチル−1,4−ブタンジアミン、1,3−ジメチル−1,4−ブタンジアミン、1,4−ジメチル−1,4−ブタンジアミン、2,3−ジメチル−1,4−ブタンジアミン、2−メチル−1,5−ペンタンジアミン、3−メチル−1,5−ペンタンジアミン、2,5−ジメチル−1,6−ヘキサンジアミン、2,4−ジメチル−1,6−ヘキサンジアミン、3,3−ジメチル−1,6−ヘキサンジアミン、2,2−ジメチル−1,6−ヘキサンジアミン、2,2,4−トリメチル−1,6−ヘキサンジアミン、2,4,4−トリメチル−1,6−ヘキサンジアミン、2,4−ジエチル−1,6−ヘキサンジアミン、2,2−ジエチル−1,7−ヘプタンジアミン、2,3−ジメチル−1,7−ヘプタンジアミン、2,4−ジメチル−1,7−ヘプタンジアミン、2,5−ジメチル−1,7−ヘプタンジアミン、2−メチル−1,8−オクタンジアミン、3−メチル−1,8−オクタンジアミン、4−メチル−1,8−オクタンジアミン、1,3−ジメチル−1,8−オクタンジアミン、1,4−ジメチル−1,8−オクタンジアミン、2,4−ジメチル−1,8−オクタンジアミン、3,4−ジメチル−1,8−オクタンジアミン、4,5−ジメチル−1,8−オクタンジアミン、2,2−ジメチル−1,8−オクタンジアミン、3,3−ジメチル−1,8−オクタンジアミン、4,4−ジメチル−1,8−オクタンジアミン、5−メチル−1,9−ノナンジアミンなどの分岐型脂肪族アルキレンジアミン;及びこれらの組み合わせなどを例示することができる。
【0033】
例えば、前記脂肪族ジアミン単位は、1,6−ヘキサンジアミン、1,7−ヘプタンジアミン、1,10−デカンジアミン、1,11−ウンデカンジアミン、1,12−ドデカンジアミン、1−ブチル−1,2−エタンジアミン、1,1−ジメチル−1,4−ブタンジアミン、1−エチル−1,4−ブタンジアミン、1,2−ジメチル−1,4−ブタンジアミン、1,3−ジメチル−1,4−ブタンジアミン、1,4−ジメチル−1,4−ブタンジアミン、2,3−ジメチル−1,4−ブタンジアミン、2−メチル−1,5−ペンタンジアミン、3−メチル−1,5−ペンタンジアミン、2,5−ジメチル−1,6−ヘキサンジアミン、2,4−ジメチル−1,6−ヘキサンジアミン、3,3−ジメチル−1,6−ヘキサンジアミン、2,2−ジメチル−1,6−ヘキサンジアミン、2,2,4−トリメチル−1,6−ヘキサンジアミン、2,4,4−トリメチル−1,6−ヘキサンジアミン、2,4−ジエチル−1,6−ヘキサンジアミン、2,2−ジエチル−1,7−ヘプタンジアミン、2,3−ジメチル−1,7−ヘプタンジアミン、2,4−ジメチル−1,7−ヘプタンジアミン、及び2,5−ジメチル−1,7−ヘプタンジアミンのうち1種以上のジアミンから由来したものであってもよい。
【0034】
具体例において、前記芳香族ポリアミド樹脂は、ヘキサメチレンテレフタルアミド及びヘキサメチレンイソフタルアミドからなるポリアミド、ヘキサメチレンテレフタルアミド及びヘキサメチレンアジポアミドからなるポリアミド又はヘキサメチレンテレフタルアミド及び2−メチルペンタメチレンテレフタルアミドからなるポリアミド、又はこれらの組み合わせを含んでもよい。例えば、前記芳香族ポリアミド樹脂としては、ヘキサメチレンテレフタルアミド及びヘキサメチレンイソフタルアミドからなるポリアミドを用いてもよい。前記芳香族ポリアミド樹脂を含む熱可塑性樹脂組成物は、めっき密着力及びめっき性を改善させながら、耐熱性及び耐衝撃性を優秀な水準に維持することができる。
【0035】
具体例において、前記芳香族ポリアミド樹脂のガラス転位温度(Tg)は、約110℃〜約135℃、例えば、約115℃〜約130℃であってもよい。前記範囲で、熱可塑性樹脂組成物の耐熱性、めっき性などが優秀になり得る。
【0036】
具体例において、前記芳香族ポリアミド樹脂の分子量は特に制限されなく、約25℃の硫酸溶液でウベローデ(Ubbelohde)粘度計で測定した固有粘度(intrinsic viscosity:IV)が約0.75dL/g以上、例えば、約0.75dL/g〜1.15dL/gであってもよい。
【0037】
具体例において、前記芳香族ポリアミド樹脂は、熱可塑性樹脂組成物全体の100重量%に対して、約20重量%〜約70重量%、例えば、約40重量%〜約60重量%で含まれてもよい。前記芳香族ポリアミド樹脂の含量が前記範囲を逸脱する場合、熱可塑性樹脂組成物の耐熱性、機械的強度などが低下するおそれがある。
【0038】
(B)オレフィン系共重合体
本発明の一具体例に係るオレフィン系共重合体は、熱可塑性樹脂組成物に導入され、前記樹脂組成物で製造された成形品上のめっき工程時、成形品とめっき膜との密着力(めっき性)などを向上させることができる。前記オレフィン系共重合体は、オレフィン系単量体の重合で得られた共重合体又はオレフィン系単量体及びアクリル系単量体の共重合体であってもよい。
【0039】
具体例において、前記オレフィン系単量体としては、炭素数1〜19(C1〜C19)のアルキレンを用いてもよい。例えば、前記オレフィン系単量体としては、エチレン、プロピレン、イソプロピレン、ブチレン、イソブチレン又はオクテンを用いてもよく、これらを単独で又は混合して用いてもよい。
【0040】
具体例において、前記アクリル系単量体としては、(メタ)アクリル酸アルキルエステル又は(メタ)アクリル酸エステルを用いてもよい。ここで、前記アルキルは、C1〜C10のアルキルを意味するものであって、前記(メタ)アクリル酸アルキルエステルの具体的な例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレートなどを例示することができ、具体的に、メチル(メタ)アクリレートを例示することができる。
【0041】
具体例において、前記オレフィン系共重合体は、エチレン−α−オレフィン共重合体;又は前記エチレン−α−オレフィン共重合体をα,β−不飽和ジカルボン酸又はα,β−不飽和ジカルボン酸誘導体のうち1種以上の化合物で変性させた変性エチレン−α−オレフィン共重合体;を含んでもよい。
【0042】
具体例において、前記α,β−不飽和ジカルボン酸及びα,β−不飽和ジカルボン酸誘導体のうち1種以上の化合物は、マレイン酸、マレイン酸無水物、マレイン酸ヒドラジド、ジクロロマレイン酸無水物、不飽和化されたジカルボン酸、フマル酸、クエン酸、クエン酸無水物、及びこれらの組み合わせなどであってもよく、例えば、マレイン酸又はマレイン酸無水物であってもよい。
【0043】
具体例において、前記オレフィン系共重合体として、マレイン酸無水物変性エチレン−オクテン共重合体を用いてもよい。この場合、熱可塑性樹脂組成物の相溶性、めっき密着力などをさらに向上させることができる。
【0044】
具体例において、前記オレフィン系共重合体は、熱可塑性樹脂組成物全体の100重量%に対して、約0.1重量%〜約20重量%、例えば、約3重量%〜約18重量%で含まれてもよい。前記オレフィン系共重合体の含量が約0.1重量%未満である場合は、熱可塑性樹脂組成物のめっき性やめっき密着力の改善が難しくなるおそれがあり、前記オレフィン系共重合体の含量が約20重量%を超える場合は、非経済的であり、熱可塑性樹脂組成物の衝撃強度向上効果がそれ以上増加しなくなり、むしろ、耐熱性、剛性などの他の物性を低下させるおそれがある。
【0045】
(C)無機フィラー
本発明の一具体例に係る無機フィラーは、熱可塑性樹脂組成物の優れた外観及びめっき密着力を同時に確保し、所望の水準の機械的強度を確保するために添加され得る。
【0046】
具体例において、前記無機フィラーは、第1無機フィラー、第2無機フィラー又はこれらの混合物を含んでもよい。本発明の明細書において、無機フィラーをそれぞれ「第1」及び「第2」と命名して区別した理由は、無機フィラーの種類を区分するために過ぎなく、これらの用語が権利範囲の解釈に影響を与えることはない。
【0047】
具体例において、第1無機フィラーは、炭酸カルシウム、タルク、マイカ、ウォラストナイト、及びこれらの組み合わせなどを含んでもよく、例えば、炭酸カルシウムなどを含んでもよい。
【0048】
前記炭酸カルシウムは、非晶質炭酸カルシウム、アラゴナイト(aragonite)又はカルサイト(calcite)などの構造を有してもよく、炭酸カルシウムの平均粒径は約0.05μm〜約300μmであってもよい。
【0049】
ここで、粒子の粒径に関しては、計測法によって数値化して集団の平均の大きさを表現する方法があるが、汎用的に用いられるものとしては、分布の最大値を示すモード直径、積分分布曲線の中央値に相当するメジアン径、各種の平均直径(数平均、長さ平均、面積平均、質量平均、体積平均など)などがある。本発明においては、特別に言及しない限り、平均粒径とは、数平均粒径であり、D50(分布率が50%となる地点の粒径)を測定したものを意味する。
【0050】
具体例において、第2無機フィラーは、ガラス繊維、ガラスビード、ガラスフレーク、及びこれらの組み合わせなどを含んでもよく、例えば、ガラス繊維などを含んでもよい。
【0051】
前記ガラス繊維は、当業界で用いられる通常のものであって、直径が約8μm〜約20μmで、長さが約1.5mm〜約8mmであってもよい。ガラス繊維の直径が前記範囲である場合、優れた強度補強の効果を具現することができ、ガラス繊維の長さが前記範囲である場合、押出機などの加工機器に投入することが容易になり、熱可塑性樹脂組成物の強度補強効果も大きく改善され得る。
【0052】
前記ガラス繊維は、炭素繊維、玄武岩繊維、バイオマス(biomass)から製造された繊維、これらの組み合わせなどの繊維と共に混合したものであってもよい。前記バイオマスとは、植物や微生物などをエネルギー源として用いる生物体を意味する。
【0053】
前記ガラス繊維は、断面が円形、楕円形、矩形又は二つの円形が連結された亜鈴形であってもよい。
【0054】
前記ガラス繊維は、断面のアスペクト比が約1.5未満であってもよく、例えば、断面のアスペクト比が1である円形断面ガラス繊維であってもよい。このとき、前記アスペクト比は、ガラス繊維の断面で最も小さい直径に対する最も長い直径の比率と定義される。前記断面のアスペクト比の範囲を有するガラス繊維を用いる場合、価格的な側面で製品の単価を低下させることができ、断面が円形であるガラス繊維を用いて寸法安定性及び外観を良好にすることができる。
【0055】
前記ガラス繊維は、樹脂との反応を防止し、含浸度を向上させるために、所定のサイジング剤で表面処理することができる。前記ガラス繊維の表面処理は、ガラス繊維の製造時又は後工程で行われてもよい。
【0056】
本発明では、二つの種類の無機フィラーを用いることによって、外観特性及びめっき性を同時に向上させることができる。
【0057】
具体的に、前記無機フィラーは、前記第1無機フィラー及び第2無機フィラーを約1:約1〜約1:約5の重量比、例えば、約1:約1.5〜約1:約4の重量比で含んでもよい。前記範囲で、熱可塑性樹脂組成物の外観特性、機械的強度、めっき密着力などが優秀になり得る。
【0058】
具体例において、前記無機フィラーは、熱可塑性樹脂組成物全体の100重量%に対して、約10重量%〜約60重量%、例えば、約20重量%〜約55重量%で含まれてもよい。前記無機フィラーの含量が前記範囲を逸脱する場合、熱可塑性樹脂組成物の外観特性、機械的強度、めっき密着力などが低下するおそれがある。
【0059】
本発明の一具体例に係る熱可塑性樹脂組成物は、その用途に応じて選択的に添加剤をさらに含んでもよい。前記添加剤は、難燃剤、滑剤、可塑剤、熱安定剤、酸化防止剤、光安定剤、着色剤などをさらに含んでもよく、最終成形品の特性に応じて2種以上混合したものであってもよい。
【0060】
前記難燃剤は、燃焼性を減少させる物質であって、ホスフェート化合物、ホスファイト化合物、ホスホネート化合物、ポリシロキサン、ホスファゼン化合物、ホスフィネート化合物又はメラミン化合物のうち少なくとも一つを含んでもよいが、これに限定されることはない。
【0061】
前記滑剤は、加工・成形・押出中に熱可塑性樹脂組成物と接触する金属表面を潤滑させ、樹脂組成物の流れ又は移動を促進する物質であって、通常的に用いられる物質であってもよい。
【0062】
前記可塑剤は、熱可塑性樹脂組成物の柔軟性、加工作業性又は膨張性を増加させる物質であって、通常的に用いられる物質であってもよい。
【0063】
前記熱安定剤は、高温で混練又は成形する場合、熱可塑性樹脂組成物の熱的分解を抑制する物質であって、通常的に用いられる物質であってもよい。
【0064】
前記酸化防止剤は、熱可塑性樹脂組成物と酸素との化学的反応を抑制又は遮断させることによって、樹脂組成物が分解され、固有物性が喪失することを防止する物質であって、フェノール型、ホスファイト型、チオエーテル型又はアミン型酸化防止剤のうち少なくとも一つを含んでもよいが、これに限定されることはない。
【0065】
前記光安定剤は、紫外線から熱可塑性樹脂組成物が分解され、色が変わったり機械的性質が喪失することを抑制又は遮断させる物質であって、酸化チタンであることが好ましい。
【0066】
前記着色剤は、通常的な顔料又は染料であってもよい。
【0067】
具体例において、前記添加剤は、前記(A)+(B)+(C)からなる熱可塑性樹脂組成物の約100重量部に対して、約1重量部〜約15重量部で含まれてもよい。
【0068】
本発明の一具体例に係る熱可塑性樹脂組成物は、樹脂組成物を製造する公知の方法によって製造され得る。例えば、本発明の一具体例に係る熱可塑性樹脂組成物は、本発明の構成成分とその他の添加剤とを同時に混合した後、これらを押出機内で溶融・押出する方法によってペレットの形態で製造され得る。
【0069】
本発明に係る成形品は、上述した熱可塑性樹脂組成物から製造され得る。本発明の熱可塑性樹脂組成物は、耐熱性、耐衝撃性及びめっき性に優れ、優れた耐熱性、耐衝撃性及びめっき性が要求される成形品に制限なく適用可能である。具体的に、本発明に係る成形品は、自動車用内装材又は外装材などとして用いられてもよく、特に、前記成形品上にめっきされ、自動車用テールトリム(tail trim)部品などとして金属の代わりに用いられてもよい。
【実施例】
【0070】
以下、実施例を通じて本発明をより具体的に説明するが、これらの各実施例は、説明の目的のためのものに過ぎなく、本発明を制限するものと解釈してはならない。
【0071】
下記の実施例及び比較例の熱可塑性樹脂組成物に用いられた構成成分は、下記の通りである。
【0072】
(a)ポリアミド樹脂
(a−1)ソルベイ株式会社(Solvay Advanced Polymers L.L.C.)のヘキサメチレンテレフタルアミド及びヘキサメチレンイソフタルアミドからなるポリアミド製品であるA1007を用いた。
【0073】
(a−2)デュポン株式会社(DuPont)のヘキサメチレンテレフタルアミド及び2−メチルペンタメチレンテレフタルアミドからなるポリアミド製品であるHTN 501を用いた。
【0074】
(a−3)ソルベイ株式会社のヘキサメチレンテレフタルアミド及びヘキサメチレンアジポアミドからなるポリアミド製品であるA6000を用いた。
【0075】
(b)オレフィン系共重合体
(b−1)デュポン株式会社のFusabond N493Dを用いた。
【0076】
(b−2)旭化成株式会社(Asahi Kasei Corporation)のTuftec M1913を用いた。
【0077】
(c)無機フィラー
(c−1)ドンファ素材株式会社(Dongwha Materials Corp.)の炭酸カルシウム製品であるKRISTON−SSを用いた。
【0078】
(c−2)日本電気硝子株式会社(Nippon Electric Glass Co.,Ltd.)のガラス繊維製品であるT−251H(直径10μm、チョップの長さ3mm)を用いた。
【0079】
実施例1〜
4及び比較例1〜5
下記の表1に記載した成分を混合器に投入して乾式混合した。その次に、これを、L/Dが45で、Φが44mmである二軸押出機に投入し、押出機を通じてペレット形態の熱可塑性樹脂組成物を製造した。製造されたペレットを330℃に設定された10oz射出成形機を用いて射出成形し、物性評価のための試片を製造した。
【0080】
表1に記載した各成分の含量は、重量%を基準にして記載した。
【0081】
【表1】
【0082】
前記実施例1〜
4及び比較例1〜5の熱可塑性樹脂組成物に対して、めっき密着力、エッチング後の粗さ(Ra)、めっき膨れ、衝撃強度及び熱変形温度を測定し、めっき性、耐衝撃性及び耐熱性を評価した。評価項目の評価方法は下記の通りであり、各項目の評価結果は表2に記載した。
【0083】
<物性評価方法>
(1)めっき密着力(N/cm):JIS C6481に準じて10cm×10cm×3.2mmの試片を用いてめっき密着力を測定した。
【0084】
(2)エッチング後の粗さ(nm):ISO 468に準じて10cm×10cm×3.2mmの試片を用いて測定した。
【0085】
(3)高温めっき膨れ(blister)(有/無):250℃で7日間10cm×10cm×3.2mmの試片を放置した後、膨れの有無を確認した。
【0086】
(4)アイゾット衝撃強度(kgf・cm/cm):1/8”ノッチ付き試片に対してASTM D256に準じて測定した。
【0087】
(5)熱変形温度(℃):6.4mmの試片をASTM D648に準じて18.56kgf/cm
2の条件で測定した。
【0088】
【表2】
【0089】
前記表1及び表2から、実施例1〜
4による熱可塑性樹脂組成物の場合、めっき性、耐衝撃性及び耐熱性の全てにおいて優れることが分かる。
【0090】
したがって、前記実験を通じて、本発明の構成成分の組み合わせ及びその成分間の含量比率において著しく優れためっき性、耐衝撃性及び耐熱性が表れ、その臨界的意義が立証された。
【0091】
本発明の権利範囲は、上述した実施例に限定されるものではなく、添付の特許請求の範囲内で多様な形態の実施例に具現可能である。特許請求の範囲で請求する本発明の要旨を逸脱することなく、当該発明の属する技術分野で通常の知識を有する者であれば誰でも変形可能な多様な範囲まで本発明の特許請求の範囲に記載の範囲内にあるものと見なす。