特許第6871239号(P6871239)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6871239磁石埋込み型コアの製造方法、磁石埋込み型コアの製造装置及び製造治具
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6871239
(24)【登録日】2021年4月19日
(45)【発行日】2021年5月12日
(54)【発明の名称】磁石埋込み型コアの製造方法、磁石埋込み型コアの製造装置及び製造治具
(51)【国際特許分類】
   H02K 1/27 20060101AFI20210426BHJP
   H02K 15/02 20060101ALI20210426BHJP
【FI】
   H02K1/27 501D
   H02K15/02 K
【請求項の数】22
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2018-512012(P2018-512012)
(86)(22)【出願日】2017年4月10日
(86)【国際出願番号】JP2017014700
(87)【国際公開番号】WO2017179547
(87)【国際公開日】20171019
【審査請求日】2020年2月17日
(31)【優先権主張番号】PCT/JP2016/002009
(32)【優先日】2016年4月13日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】PCT/JP2016/004123
(32)【優先日】2016年9月9日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】PCT/JP2016/082291
(32)【優先日】2016年10月31日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】PCT/JP2017/012034
(32)【優先日】2017年3月24日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000170853
【氏名又は名称】黒田精工株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000144821
【氏名又は名称】アピックヤマダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001379
【氏名又は名称】特許業務法人 大島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】福山 修
(72)【発明者】
【氏名】村山 友章
(72)【発明者】
【氏名】西沢 哲也
(72)【発明者】
【氏名】池田 正信
(72)【発明者】
【氏名】中村 一雄
【審査官】 尾家 英樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−83811(JP,A)
【文献】 特開2007−110880(JP,A)
【文献】 特開2012−223024(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 1/27
H02K 15/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロータコアに軸線方向に沿って形成された両端開口の磁石挿入孔に対し、樹脂の充填により磁石片が埋め込まれた磁石埋込み型コアの製造方法であって、
一方の端面が載置台に当接するように前記ロータコアを載置台に載置する載置工程と、
固形状態の前記樹脂を前記磁石挿入孔に投入する樹脂投入工程と、
前記磁石挿入孔内において前記樹脂を溶融させる溶融工程と、
前記磁石片を前記磁石挿入孔に投入する磁石片投入工程と、
前記磁石挿入孔の前記載置台とは反対の側の開口を閉塞する閉塞工程と、
前記磁石挿入孔の前記載置台側の開口から前記載置台に形成されたバッファ室に流入した溶融状態の前記樹脂を前記閉塞工程後に加圧する樹脂加圧工程を含む磁石埋込み型コアの製造方法。
【請求項2】
前記樹脂加圧工程は、前記樹脂の加圧によって前記バッファ室の前記樹脂の少なくとも一部を前記磁石挿入孔に押し戻すことを伴う請求項1に記載の磁石埋込み型コアの製造方法。
【請求項3】
前記樹脂加圧工程は、前記バッファ室に移動可能に設けられた第1ピストンによって行う請求項1又は2に記載の磁石埋込み型コアの製造方法。
【請求項4】
前記磁石挿入孔は複数設けられており、前記バッファ室は前記磁石挿入孔毎に個別に設けられ、各バッファ室の溶融状態の前記樹脂を前記バッファ室毎の流体圧式の駆動装置によって加圧し、各駆動装置に対する流体圧の供給を共通のマニホールド通路から行う請求項1から3の何れか一項に記載の磁石埋込み型コアの製造方法。
【請求項5】
前記樹脂加圧工程は、前記磁石挿入孔の前記載置台の側の開口及び前記載置台とは反対側の開口の少なくとも何れか一方に連通する空気抜き通路によって前記磁石挿入孔の空気を外部に排出することを伴う請求項1から4の何れか一項に記載の磁石埋込み型コアの製造方法。
【請求項6】
前記バッファ室は、ロータコアの載置面に前記磁石挿入孔の開口面積より小さい開口面積をもって開口し、前記磁石挿入孔に連通している請求項1から5の何れか一項に記載の磁石埋込み型コアの製造方法。
【請求項7】
前記バッファ室の載置面に対する開口と前記磁石挿入孔の前記載置台側の開口との少なくとも一部がオーバラップしており、
前記バッファ室の樹脂がオーバラップ部分で前記磁石挿入孔の樹脂と繋がった状態で前記ロータコアを前記載置台から取り外す取外し工程を更に含む請求項1から6の何れか一項に記載の磁石埋込み型コアの製造方法。
【請求項8】
前記バッファ室の載置面に対する開口と前記磁石挿入孔の前記載置台側の開口とがオーバラップしておらず、前記両開口が前記載置面に形成された連通溝によって連通しており、
前記バッファ室の樹脂が前記連通溝の樹脂によって前記磁石挿入孔の樹脂と繋がった状態で前記ロータコアを前記載置台から取り外す取外し工程を更に含む請求項1から6の何れか一項に記載の磁石埋込み型コアの製造方法。
【請求項9】
前記載置台と前記ロータコアとの間にプレートを入れ、前記プレートに形成された貫通孔によって前記バッファ室の載置面に対する開口と前記磁石挿入孔の前記載置台側の開口とが連通しており、
前記バッファ室の樹脂が前記貫通孔の樹脂によって前記磁石挿入孔の樹脂と繋がった状態で前記ロータコアを前記プレートと共に前記載置台から取り外す取外し工程を更に含む請求項1から6の何れか一項に記載の磁石埋込み型コアの製造方法。
【請求項10】
ロータコアに軸線方向に沿って形成された両端開口の磁石挿入孔に対し、樹脂の充填により磁石片が埋め込まれた磁石埋込み型コアの製造装置であって、
前記ロータコアを載置され、当該ロータコアの前記磁石挿入孔に連通して溶融状態の樹脂を受容するバッファ室を含む載置台と、
前記載置台に載置された前記ロータコアを加熱することにより、前記磁石挿入孔内の固形状態の前記樹脂を溶融させる加熱装置と、
前記磁石挿入孔の前記載置台とは反対の側の開口を閉塞する閉塞部材と、
前記バッファ室の前記溶融状態の樹脂を加圧する樹脂加圧装置とを含む磁石埋込み型コアの製造装置。
【請求項11】
前記樹脂加圧装置は前記バッファ室に移動可能に設けられて前記バッファ室の前記溶融状態の樹脂を加圧する第1ピストンを含む請求項10に記載の磁石埋込み型コアの製造装置。
【請求項12】
前記載置台を載置される基台を更に含み、
前記樹脂加圧装置は、前記基台に設けられて前記第1ピストンを加圧する第2ピストンと、前記第2ピストンを駆動する駆動装置とを有する請求項11に記載の磁石埋込み型コアの製造装置。
【請求項13】
前記磁石挿入孔は複数設けられており、前記バッファ室は前記磁石挿入孔毎に個別に設けられ、前記駆動装置は流体圧式のものであり、前記第2ピストン及び当該第2ピストンのシリンダ室が前記バッファ室毎に個別に設けられ、
各シリンダ室に共通のマニホールド通路から流体圧が供給される請求項12に記載の磁石埋込み型コアの製造装置。
【請求項14】
前記載置台を載置される基台を更に含み、
前記樹脂加圧装置は、前記基台に設けられて前記バッファ室の前記溶融状態の樹脂を加圧する第3ピストンと、前記第3ピストンを駆動する駆動装置とを有する請求項10に記載の磁石埋込み型コアの製造装置。
【請求項15】
前記磁石挿入孔は複数設けられており、前記バッファ室は前記磁石挿入孔毎に個別に設けられ、前記駆動装置は流体圧式のものであり、前記第3ピストン及び当該第3ピストンのシリンダ室が前記バッファ室毎に個別に設けられ、
各シリンダ室に共通のマニホールド通路から流体圧が供給される請求項13に記載の磁石埋込み型コアの製造装置。
【請求項16】
前記バッファ室は、前記ロータコアの載置面に前記磁石挿入孔の開口面積より小さい開口面積をもって開口し、前記磁石挿入孔に連通している請求項10から15の何れか一項に記載の磁石埋込み型コアの製造装置。
【請求項17】
前記バッファ室の載置面に対する開口と前記磁石挿入孔の前記載置台側の開口とが一部オーバラップしている請求項10から16の何れか一項に記載の磁石埋込み型コアの製造装置。
【請求項18】
前記バッファ室の載置面に対する開口と前記磁石挿入孔の前記載置台側の開口とがオーバラップしておらず、前記載置面に前記両開口を連通する連通溝が形成されている請求項10から16の何れか一項に記載の磁石埋込み型コアの製造装置。
【請求項19】
前記載置台と前記ロータコアとの間に配置され、前記バッファ室と前記磁石挿入孔との連通する貫通孔を有するプレートを更に含む請求項10から16の何れか一項に記載の磁石埋込み型コアの製造装置。
【請求項20】
前記閉塞部材は、前記載置台とは反対側の前記磁石挿入孔の開口を外部に開放する空気抜き通路を有する請求項10から19の何れか一項に記載の磁石埋込み型コアの製造装置。
【請求項21】
前記載置台は、前記載置台側の前記磁石挿入孔の開口を外部に開放する空気抜き通路を有する請求項10から20の何れか一項に記載の磁石埋込み型コアの製造装置。
【請求項22】
ロータコアに軸線方向に沿って形成された両端開口の磁石挿入孔に対し、樹脂の充填により磁石片が埋め込まれた磁石埋込み型コアの製造治具であって、
前記ロータコアを軸線方向に挟む一対の挟持板と、
前記一対の挟持板を係脱可能に互いに連結する連結具とを含み、
前記一対の挟持板の一方には前記磁石挿入孔の一方の開口に連通するバッファ室及び当該バッファ室の樹脂を加圧するためのピストンが設けられ、
前記一対の挟持板の他方には前記磁石挿入孔の他方の開口に連通する樹脂及び磁石片の挿入孔が設けられている磁石埋込み型コアの製造治具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内部に磁石片が埋め込まれた磁石埋込み型コアの製造方法、磁石埋込み型コアの製造装置及び製造治具に関する。
【背景技術】
【0002】
回転電機の磁石埋込み型コアの製造に関して、ロータコアに軸線方向に沿って形成された複数の磁石挿入孔の各々に磁石片を挿入した後に、その磁石挿入孔に液状の樹脂を充填し、充填した樹脂を硬化させることにより、ロータコアに磁石片を固定する技術が開発されている。このように磁石片が磁石挿入孔内に樹脂によって固定されることにより、ロータコアの磁気的性能が安定し、回転電機のステータ側に形成される回転磁界にロータコアを安定的に追従させることが可能となる。
【0003】
この種の磁石埋込み型コアの製造方法に関しては、例えば、上型及び下型を備えたモールド金型において、ロータコアが中間型と共にモールド金型内に搬入され、下型には、筒状のポットとそのポット孔内にプランジャが昇降可能に設けられ、プランジャを上動させることによりポット内で溶融したモールド樹脂を圧送し、モールド樹脂が中間型と下型との間に形成されたランナ及びゲートを通じてロータコアにおける磁石挿入孔内に充填された後に加熱硬化する樹脂モールド方法が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014−79056号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載のような従来技術では、樹脂モールド後にモールド金型を型開きして、ロータコアを取り出す際に、ランナ等に硬化した樹脂が残留しているため、それらの不要な樹脂(以下、「不要樹脂」という。)は最終的にロータコアから分離されて廃棄される。したがって、磁石埋込み型コアの製造に際しては、樹脂材料コストの低減等の観点から、そのような不要樹脂の発生を抑制することが望ましい。
【0006】
本発明は、このような従来技術の課題を鑑みて案出されたものであり、樹脂による磁石片の固定において不要樹脂の発生を抑制することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一つの実施形態による磁石埋込み型コアの製造方法は、ロータコアに軸線方向に沿って形成された両端開口の磁石挿入孔に対し、樹脂の充填により磁石片が埋め込まれた磁石埋込み型コアの製造方法であって、一方の端面が載置台に当接するように前記ロータコアを載置台に載置する載置工程と、固形状態の前記樹脂を前記磁石挿入孔に投入する樹脂投入工程と、前記磁石挿入孔内において前記樹脂を溶融させる溶融工程と、前記磁石片を前記磁石挿入孔に投入する磁石片投入工程と、前記磁石挿入孔の前記載置台とは反対の側の開口を閉塞する閉塞工程と、前記磁石挿入孔の前記載置台側の開口から前記載置台に形成されたバッファ室に流入した溶融状態の前記樹脂を前記閉塞工程後に加圧する樹脂加圧工程とを含む。
【0008】
この方法によれば、固形状態の樹脂を磁石挿入孔に投入し、磁石挿入孔内で樹脂を溶融させるから、外部で溶融した樹脂を磁石挿入孔内に導くための樹脂通路が不要となり、不要樹脂の発生を抑制することが可能となる。更に、バッファ室に流入した溶融状態の樹脂が磁石挿入孔の一方の開口を閉塞した状態で加圧されるから、磁石挿入孔内の溶融状態の樹脂が加圧され、磁石挿入孔内の磁石片とロータコアとの間隙に溶融樹脂が良好に行き亘り、硬化した樹脂による磁石片の固定強度が安定し且つ向上する。
【0009】
上記磁石埋込み型コアの製造方法において、好ましくは、前記樹脂加圧工程は、前記樹脂の加圧によって前記バッファ室の前記樹脂の少なくとも一部を前記磁石挿入孔に押し戻すことを伴う。
【0010】
この方法によれば、磁石挿入孔内の磁石片とロータコアとの間隙に溶融樹脂が良好に行き亘ることがより確実になる。
【0011】
上記磁石埋込み型コアの製造方法において、好ましくは、前記樹脂加圧工程は、前記バッファ室に移動可能に設けられた第1ピストンによって行う。
【0012】
この方法によれば、第1ピストンによってバッファ室の溶融状態の樹脂の加圧が確実に行われる。
【0013】
上記磁石埋込み型コアの製造方法において、好ましくは前記磁石挿入孔は複数設けられており、前記バッファ室は前記磁石挿入孔毎に個別に設けられ、各バッファ室の溶融状態の前記樹脂を前記バッファ室毎の流体圧式の駆動装置によって加圧し、各駆動装置に対する流体圧の供給を共通のマニホールド通路から行う。
【0014】
この方法によれば、各バッファ室及び各磁石挿入孔の溶融状態の樹脂の加圧が互いに均等に行われる。
【0015】
上記磁石埋込み型コアの製造方法において、好ましくは、前記樹脂加圧工程は、前記磁石挿入孔の前記載置台の側の開口及び前記載置台とは反対側の開口の少なくとも何れか一方に連通する空気抜き通路によって前記磁石挿入孔の空気を外部に排出することを伴う。
【0016】
この方法によれば、磁石挿入孔内の溶融状態の樹脂の加圧時に磁石挿入孔に空気が残留していても、空気抜き通路によって残留空気の排出が良好に行われ、磁石挿入孔内の磁石片とロータコアとの間隙の全てに溶融樹脂が満遍なく行き亘ることが、より確実になる。
【0017】
上記磁石埋込み型コアの製造方法において、好ましくは、前記バッファ室は、ロータコアの載置面に前記磁石挿入孔の開口面積より小さい開口面積をもって開口し、前記磁石挿入孔に連通している。
【0018】
この方法によれば、磁石挿入孔に投入された固形の樹脂及び磁石片がバッファ室に落ち込む不良を生じることがない。
【0019】
上記磁石埋込み型コアの製造方法において、好ましくは、前記バッファ室の載置面に対する開口と前記磁石挿入孔の前記載置台側の開口との少なくとも一部がオーバラップしており、前記バッファ室の樹脂がオーバラップ部分で前記磁石挿入孔の樹脂と繋がった状態で前記ロータコアを前記載置台から取り外す取外し工程を更に含む。
【0020】
この方法によれば、ロータコアが載置台から取り外された後にバッファ室に樹脂が残存することがなく、バッファ室から樹脂を取り除く手間が掛からない。
【0021】
上記磁石埋込み型コアの製造方法において、好ましくは、前記バッファ室の載置面に対する開口と前記磁石挿入孔の前記載置台側の開口とがオーバラップしておらず、前記ロータコアの径方向に離間しており、前記両開口が前記載置面に形成された連通溝によって連通しており、前記バッファ室の樹脂が前記連通溝の樹脂によって前記磁石挿入孔の樹脂と繋がった状態で前記ロータコアを前記載置台から取り外す取外し工程を更に含む。
【0022】
この方法によれば、ロータコアが載置台から取り外された後にバッファ室に樹脂が残存することがなく、バッファ室から樹脂を取り除く手間が掛からない。
【0023】
上記磁石埋込み型コアの製造方法において、好ましくは、前記載置台と前記ロータコアとの間にプレートを入れ、前記プレートに形成された貫通孔によって前記バッファ室の載置面に対する開口と前記磁石挿入孔の前記載置台側の開口とが連通しており、前記バッファ室の樹脂が前記貫通孔の樹脂によって前記磁石挿入孔の樹脂と繋がった状態で前記ロータコアを前記プレートと共に前記載置台から取り外す取外し工程を更に含む。
【0024】
この方法によれば、ロータコアが載置台から取り外された後にバッファ室に樹脂が残存することがなく、バッファ室から樹脂を取り除く手間が掛からない。
【0025】
本発明の一つの実施形態による磁石埋込み型コアの製造装置は、ロータコアに軸線方向に沿って形成された両端開口の磁石挿入孔に対し、樹脂の充填により磁石片が埋め込まれた磁石埋込み型コアの製造装置であって、前記ロータコアを載置され、当該ロータコアの前記磁石挿入孔に連通して溶融状態の樹脂を受容するバッファ室を含む載置台と、前記載置台に載置された前記ロータコアを加熱することにより、前記磁石挿入孔内の固形状態の前記樹脂を溶融させる加熱装置と、前記磁石挿入孔の前記載置台とは反対の側の開口を閉塞する閉塞部材と、前記バッファ室の前記溶融状態の樹脂を加圧する樹脂加圧装置とを含む。
【0026】
この構成によれば、固形状態の樹脂を磁石挿入孔に投入して磁石挿入孔内で樹脂を溶融させることができる。これにより、外部で溶融した樹脂を磁石挿入孔内に導くための樹脂通路が不要となり、不要樹脂の発生を抑制することが可能となる。更には、バッファ室に流入した溶融状態の樹脂が磁石挿入孔の一方の開口を閉塞した状態で加圧されるから、磁石挿入孔内の溶融状態の樹脂が加圧され、磁石挿入孔内の磁石片とロータコアとの間隙に溶融樹脂が良好に行き亘り、硬化した樹脂による磁石片の固定強度が安定し且つ向上する。
【0027】
上記磁石埋込み型コアの製造装置において、好ましくは、前記樹脂加圧装置は、前記バッファ室に移動可能に設けられて前記バッファ室の前記溶融状態の樹脂を加圧する第1ピストンを含む。
【0028】
この構成によれば、第1ピストンによってバッファ室の溶融状態の樹脂の加圧が確実に行われる。
【0029】
上記磁石埋込み型コアの製造装置において、好ましくは、前記載置台を載置される基台を更に含み、前記樹脂加圧装置は、前記基台に設けられて前記第1ピストンを加圧する第2ピストンと、前記第2ピストンを駆動する駆動装置とを有する。
【0030】
この構成によれば、流体圧駆動の第2ピストンによって第1ピストンを加圧することが行われる。第1ピストンと第2ピストンとを分離可能に構成することが可能であるので、基台に対して載置台が分離可能になる。
【0031】
上記磁石埋込み型コアの製造装置において、前記磁石挿入孔は複数設けられており、前記バッファ室は前記磁石挿入孔毎に個別に設けられ、前記駆動装置は流体圧式のものであり、前記第2ピストン及び当該第2ピストンのシリンダ室が前記バッファ室毎に個別に設けられ、各シリンダ室に共通のマニホールド通路から流体圧が供給される。
【0032】
この構成によれば、各バッファ室及び各磁石挿入孔の溶融状態の樹脂の加圧が互いに均等に行われる。
【0033】
上記磁石埋込み型コアの製造装置において、好ましくは、前記載置台を載置される基台を更に含み、前記樹脂加圧装置は、前記基台に設けられて前記バッファ室の前記溶融状態の樹脂を加圧する第3ピストンと、前記第3ピストンを駆動する駆動装置とを有する。
【0034】
この構成によれば、簡単な構造によってバッファ室の溶融状態の樹脂の加圧が確実に行われる。
【0035】
上記磁石埋込み型コアの製造装置において、前記磁石挿入孔は複数設けられており、前記バッファ室は前記磁石挿入孔毎に個別に設けられ、前記駆動装置は流体圧式のものであり、前記第3ピストン及び当該第3ピストンのシリンダ室が前記バッファ室毎に個別に設けられ、各シリンダ室に共通のマニホールド通路から流体圧が供給される。
【0036】
この構成によれば、各バッファ室及び各磁石挿入孔の溶融状態の樹脂の加圧が互いに均等に行われる。
【0037】
上記磁石埋込み型コアの製造装置において、好ましくは、前記バッファ室は、前記ロータコアの載置面に前記磁石挿入孔の開口面積より小さい開口面積をもって開口し、前記磁石挿入孔に連通している。
【0038】
この構成によれば、磁石挿入孔に投入された磁石片がバッファ室に落ち込む不良を生じることがない。
【0039】
上記磁石埋込み型コアの製造装置において、好ましくは、前記バッファ室の載置面に対する開口と前記磁石挿入孔の前記載置台側の開口とが一部オーバラップしている。
【0040】
この構成によれば、バッファ室の樹脂がオーバラップ部分で磁石挿入孔の樹脂と繋がった状態でロータコアを載置台から取り外すことができる。これにより、ロータコアが載置台から取り外された後にバッファ室に樹脂が残存することがなく、バッファ室から樹脂を取り除く手間が掛からない。
【0041】
上記磁石埋込み型コアの製造装置において、好ましくは、前記バッファ室の載置面に対する開口と前記磁石挿入孔の前記載置台側の開口とがオーバラップしておらず、前記載置面に前記両開口を連通する連通溝が形成されている。
【0042】
この構成によれば、バッファ室の樹脂が連通溝の樹脂によって磁石挿入孔の樹脂と繋がった状態でロータコアを載置台から取り外すことができる。これにより、ロータコアが載置台から取り外された後にバッファ室に樹脂が残存することがなく、バッファ室から樹脂を取り除く手間が掛からない。
【0043】
上記磁石埋込み型コアの製造装置において、好ましくは、前記載置台と前記ロータコアとの間に配置され、前記バッファ室と前記磁石挿入孔との連通する貫通孔を有するプレートを更に含む。
【0044】
この構成によれば、バッファ室の樹脂が連通孔の樹脂によって磁石挿入孔の樹脂と繋がった状態でロータコアを載置台から取り外すことができる。これにより、ロータコアが載置台から取り外された後にバッファ室に樹脂が残存することがなく、バッファ室から樹脂を取り除く手間が掛からない。
【0045】
上記磁石埋込み型コアの製造装置において、好ましくは、前記閉塞部材は、前記載置台とは反対側の前記磁石挿入孔の開口を外部に開放する空気抜き通路を有する。
【0046】
この構成によれば、磁石挿入孔内の溶融状態の樹脂の加圧時に磁石挿入孔に空気が残留していても、空気抜き通路によって残留空気の排出が良好に行われ、磁石挿入孔内の磁石片とロータコアとの間隙に溶融樹脂が良好に行き亘ることが、より確実になる。
【0047】
上記磁石埋込み型コアの製造装置において、好ましくは、前記載置台は、前記載置台側の前記磁石挿入孔の開口を外部に開放する空気抜き通路を有する。
【0048】
この構成によれば、磁石挿入孔内の溶融状態の樹脂の加圧時に磁石挿入孔に空気が残留していても、空気抜き通路によって残留空気の排出が良好に行われ、磁石挿入孔内の磁石片とロータコアとの間隙に溶融樹脂が良好に行き亘ることが、より確実になる。
【0049】
本発明の一つの実施形態による磁石埋込み型コアの製造治具は、ロータコアに軸線方向に沿って形成された両端開口の磁石挿入孔に対し、樹脂の充填により磁石片が埋め込まれた磁石埋込み型コアの製造治具であって、前記ロータコアを軸線方向に挟む一対の挟持板と、前記一対の挟持板を係脱可能に互いに連結する連結具とを含む。
【0050】
この製造治具は、治具単体でロータコアを保持することができ、製造装置に対して着脱可能に構成することが可能であるから、製造装置の稼働率の向上に寄与する。
【0051】
上記磁石埋込み型コアの製造治具において、好ましくは、前記一対の挟持板の一方には前記磁石挿入孔の一方の開口に連通するバッファ室及び当該バッファ室の樹脂を加圧するためのピストンが設けられている。
【0052】
この構成によれば、基台にバッファ室やピストンを設ける必要がなくなり、基台の構造が簡単になる。
【0053】
上記磁石埋込み型コアの製造治具において、好ましくは、前記一対の挟持板の他方には前記磁石挿入孔の他方の開口に連通する樹脂及び磁石片の挿入孔が設けられている。
【0054】
この構成によれば、製造治具によってロータコアを保持した状態で、磁石挿入孔に樹脂及び磁石片を投入することができ、製造装置の稼働率を向上することができる。
【0055】
上記磁石埋込み型コアの製造治具において、好ましくは、前記一対の挟持板の他方には前記磁石挿入孔の他方の開口を閉塞する閉塞部が設けられている。
【0056】
この構成によれば、製造治具によってロータコアを保持し、且つ磁石挿入孔の他方の開口を閉塞することができ、製造装置の稼働率を向上することができる。
【発明の効果】
【0057】
このように本実施形態によれば、樹脂による磁石片の固定において不要樹脂の発生が抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0058】
図1】本発明の一つの実施形態に係る製造方法及び製造装置によって製造される埋込み磁石型ロータの一例を示す斜視図
図2】同磁石埋込み型ロータの縦断面図
図3】実施形態1による埋込み磁石型ロータの製造装置の樹脂及び磁石片の投入工程時の縦断面図
図4】実施形態1による埋込み磁石型ロータの製造方法の搬入工程を示す要部の縦断面図
図5】実施形態1による埋込み磁石型ロータの製造方法の樹脂投入工程を示す要部の縦断面図
図6】実施形態1による埋込み磁石型ロータの製造方法の磁石片投入工程の前半を示す要部の縦断面図
図7】実施形態1による埋込み磁石型ロータの製造方法の磁石片投入工程の後半を示す要部の縦断面図
図8】実施形態1による埋込み磁石型ロータの製造方法の閉塞工程の前半を示す要部の縦断面図
図9】実施形態1による埋込み磁石型ロータの製造方法の閉塞工程の後半及び溶融工程を示す要部の縦断面図
図10】実施形態1による埋込み磁石型ロータの製造方法の閉塞工程の後半及び溶融工程を示す要部の拡大縦断面図
図11】実施形態1による埋込み磁石型ロータの製造方法の樹脂加圧工程を示す要部の縦断面図
図12】実施形態1による埋込み磁石型ロータの製造方法の搬出工程を示す要部の縦断面図
図13】実施形態1による埋込み磁石型ロータの製造方法の取外し工程によって取り外された埋込み磁石型ロータを示す縦断面図
図14】実施形態2による埋込み磁石型ロータの製造装置の要部の縦断面図及び取外し工程を示す縦断面図
図15】実施形態3による埋込み磁石型ロータの製造装置の要部の縦断面図及び取外し工程を示す縦断面図
図16】本発明の一つの実施形態に係るロータコア保持具(製造治具)の断面図
図17】実施形態4による磁石埋込み型コアの製造装置の樹脂及び磁石片の投入工程時の縦断面図
図18】実施形態4による磁石埋込み型コアの製造装置の閉塞工程時の縦断面図
【発明を実施するための形態】
【0059】
本発明に係る好適な実施形態を、添付図面を参照して説明する。
【0060】
先ず、図1及び図2を参照して本発明の一つの実施形態に係る製造方法及び製造装置によって製造される埋込み磁石型ロータの一例について説明する。
【0061】
磁石埋込み型コア1は、モータ等の回転電機の構成部品であり、ロータコア2を含む。ロータコア2は、複数枚の電磁鋼板が公知の結合方法(かしめ結合、レーザ溶接等)により互いに結合された状態で積層された積層鉄心であり、平面視において略円環状をなし、中央に軸方向に貫通した軸孔3を有する。
【0062】
ロータコア2には複数の磁石挿入孔4が形成されている。各磁石挿入孔4は、略直方体状の空間をなし、ロータコア2を軸方向に貫通してロータコア2の両端面に開口している。図示例では、磁石挿入孔4がロータコア2の周方向の4箇所に等間隔に配置された例を示しているが、これに限らず、磁石挿入孔4の形状、数、及び配置等については種々の変更が可能である。
【0063】
各磁石挿入孔4には略直方体状の磁石片5が収容されている。磁石片5は、例えば、フェライト系の焼結磁石片や、ネオジム磁石片等の永久磁石(着磁前のものを含む)によって構成することができる。磁石片5の各部の寸法は、磁石挿入孔4の各部の寸法よりも小さく設定されている。これにより、磁石挿入孔4内において、ロータコア2と磁石片5との間に隙間ができる。この隙間には樹脂6が充填される。各磁石片5は隙間に充填された樹脂6によってロータコア2に対して固定される。樹脂6としては、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂を用いることができる。
【0064】
各磁石片5は、例えば、図1に示されているように、磁石挿入孔4において内側(ロータコア2の中心側)に偏倚して配置されており、ロータコア2の中心側に向いた外面5Aは当該外面5Aに対向する磁石挿入孔4の内面4Aに当接している。これにより、各磁石片5のロータコア2の径方向の配置位置が一様に決まり、磁石挿入孔4がロータコア2の周方向に等間隔に設けられることと相まって、磁石片5がロータコア2の回転方向のアンバランス要因になることがない。なお、各磁石片5は、図1に示されている位置と反対側(ロータコア2の外周側)に偏倚して配置してもよい。
【0065】
次に、図3を参照して実施形態1に係る磁石埋込み型コア1の製造装置10について説明する。
【0066】
製造装置10は、上下方向に延在する複数のタイバー12と、各タイバー12の下部に固定された平板状の固定プラテン16と、固定プラテン16の上方において各タイバー12に上下方向に移動可能に設けられた平板状の可動プラテン14とを含むプレス構造を有する。可動プラテン14は不図示の型締装置によって上下方向に駆動される。型締装置は、公知のトグルリンク式のものや送りねじ式であってよい。
【0067】
可動プラテン14の下底面には上型18が固定されている。上型18には上型18の下底面から下方に突出した複数のロッド19によって複数の閉塞部材20が固定されていると共にばね22によって上型18からコア押さえ部材24が吊り下げられている。各閉塞部材20は、ロータコア2の各磁石挿入孔4に対応して設けられており、対応する磁石挿入孔4の上側の開口を閉塞すべく、平面視で、磁石挿入孔4の平面形状より大きい略矩形の平面形状をしている。コア押さえ部材24には閉塞部材20が上下方向に嵌合する貫通孔26が形成されている。なお、各閉塞部材20は1個の磁石挿入孔4よりも少し大きい略矩形の平面形状をなしていてよい。また、閉塞部材20は、隣接する複数の磁石挿入孔4を包含する領域となる平面形状をなしていて、装置の簡素化を図ったものであってもよい。
【0068】
閉塞部材20及び後述する上部挟持板36には、図10に示されているように、磁石挿入孔4の上側の開口を外部に開放する空気抜き通路21及び37が形成されている。空気抜き通路21及び37は、通路断面積が小さく、空気の流れを自由に許し、溶融樹脂の流れに対しては大きい流路抵抗を与えるように構成されている。
【0069】
固定プラテン16の上面には下型(基台)30が固定されている。下型30の上面には製造治具である可搬式のロータコア保持具32が搬入・搬出可能に載置されている。
【0070】
ロータコア保持具32は上下一対の平板状の下部挟持板34及び上部挟持板36を含む。下部挟持板34は、ロータコア2を載置される載置台をなし、上部挟持板36との間にロータコア2を挟む。換言すると、下部挟持板34と上部挟持板36とは上下方向に相対向してロータコア2を上下から軸線方向に挟む。
【0071】
下部挟持板34及び上部挟持板36には各々ロータコア2の外周に係合する突部34A、36Aが形成されている。これにより、ロータコア2は、突部34A、36Aによって位置決めされた状態で、下部挟持板34と上部挟持板36とに上下から軸線方向に挟まれる。ここで云う位置決めは、ロータコア保持具32に対するロータコア2の配置位置が一義的に設定されることである。なお、突部34A、36Bと同様の効果を奏するために、図示しない抜き孔に挿入可能な突起によりロータコア2の位置決めが行われてもよい。
【0072】
下部挟持板34には可動係止爪38が取り付けられている。上部挟持板36には固定係止爪40が取り付けられている。可動係止爪38と固定係止爪40とは、連結具であり、互いに係脱可能に係合することにより、下部挟持板34と上部挟持板36とを当該両者間にロータコア2を挟んだ状態で互いに連結する。これにより、ロータコア保持具32は、ロータコア2を挟持した状態で、下型30に対して搬入及び搬出することができる。
【0073】
下部挟持板34及び下型30には互いに係合する凹部34B及び突部30Aが形成されている。下部挟持板34は凹部34Bと突部30Aとの係合によって下型30に対する配置位置を一義的に設定される。上部挟持板36及びコア押さえ部材24には互いに係合する突部36B及び凹部24Aが形成されている。上部挟持板36は突部36Bと凹部24Aとの係合によってコア押さえ部材24に対する配置位置を一義的に設定される。これにより、ロータコア保持具32の搬入位置が決められる。
【0074】
上部挟持板36には、ロータコア2の各磁石挿入孔4に整合する位置に、例えば、磁石挿入孔4より少し大きくて閉塞部材20が進入可能な挿入孔42が上下に貫通形成されている。挿入孔42はコア押さえ部材24に形成された貫通孔26と同等の大きさに形成されていてよい。挿入孔42と閉塞部材20との整合は、貫通孔26の外周の突起24B(図3参照)と挿入孔42の外周の凹部36C(図3参照)とが噛み合わされることにより(図10参照)、近接した位置での位置決めによって得られる。尚、挿入孔42と閉塞部材20との整合は、ロータコア保持具32の下型30に対する周方向の位置決めによって得てもよい。挿入孔42と磁石挿入孔4との整合はロータコア2のロータコア保持具32に対する周方向の位置決めによって得てもよい。
【0075】
各閉塞部材20及び下部挟持板34には、図10(A)及び(B)に示されているように、各磁石片5の外面5Aが対応する磁石挿入孔4の内面4Aに当接する側に各磁石片5をオフセットさせて配置するための突部20A及び34Cが形成されていてよい。図10(A)及び(B)は図10とは異なった部分の断面を局部的に示している。尚、突部20A及び34Cは、磁石挿入孔4の外側に当接する側に各磁石片5をオフセットさせて配置させることもできる。
【0076】
下部挟持板34は下部挟持板34上に載置されたロータコア2の各磁石挿入孔4の下側の開口に各々個別に連通するバッファ室(オバーフロー室)44を有する。各バッファ室44は、磁石挿入孔4毎に個別に設けられていて、磁石挿入孔4内において溶融した樹脂8の一部を受容するものであり、平面形状が円形または矩形で、下部挟持板34の上面がなす載置面35に磁石挿入孔4の開口面積より小さい開口面積をもって且つ対応する磁石挿入孔4の下側の開口に一部がオーバラップして開口している。バッファ室44の載置面35に対する開口面積が、磁石挿入孔4が載置面35に向けて開口する開口面積よりも小さいから、磁石挿入孔4に投入された磁石片5がバッファ室44に落ち込む不良を生じることがない。尚、バッファ室44は、複数の磁石挿入孔4にオーバラップした位置に設けてもよいし、複数の磁石挿入孔4とオーバラップせずに連通溝を介して連通させてもよい。
【0077】
各バッファ室44には下部フランジ46A(図10参照)を有する第1ピストン46が上下方向(軸線方向)に移動可能に嵌合している。各第1ピストン46は、バッファ室44毎に個別に設けられ、上方への移動によってバッファ室44が受容した溶融状態の樹脂8を加圧する樹脂加圧部材をなす。各第1ピストン46は、図10に示されているように、バッファ室44の下方に形成されたバッファ室44より大径のバッファ室44毎の個別のピストン室48とバッファ室44との肩部に下部フランジ46Aが係合することにより上限位置を規定され、ピストン室48に設けられた圧縮コイルばね50によって上方に向けて付勢されている。
【0078】
下型30には、各ピストン室48に対応してシリンダボア52が形成されている。各シリンダボア52には第2ピストン54が上下方向(軸線方向)に移動可能に嵌合している。各第2ピストン54のピストンロッド56は、図10に示されているように、下型30に形成された貫通孔58を貫通して下型30の上方に突出し、更に下部挟持板34に形成された貫通孔60を貫通してピストン室48に進入し、対応する第1ピストン46の下面に当接可能になっている。各シリンダボア52には第2ピストン54を下方に付勢する圧縮コイルばね62が設けられている。
【0079】
下型30は各第2ピストン54の下側に加圧室としてシリンダ室64を画定している。各シリンダ室64は、第2ピストン54毎、換言すると、バッファ室44毎の個別に設けられ、下型30に形成されたマニホールド通路66及び外部配管68によって油圧装置70に接続され、油圧装置70から圧力油を供給される。第2ピストン54は、油圧装置70からシリンダ室64に圧力油を供給されることにより圧縮コイルばね62のばね力に抗して上昇移動し、ピストンロッド56を介して第1ピストン46を上方へ向けて押圧(加圧)する。
【0080】
このように、溶融状態の樹脂8を加圧する樹脂加圧部材をなす第1ピストン46、第2ピストン54及びシリンダ室64がバッファ室44毎に個別に設けられた構成において、複数のシリンダ室64に共通のマニホールド通路66から圧力油を供給されることにより、複数のシリンダ室64の均等圧化が図られる。これにより、各バッファ室44及び各磁石挿入孔4における溶融状態の樹脂8の成形時の圧力(樹脂圧)が均等化され、ロータコア2の各磁石挿入孔4における均質な成形が可能となる。
【0081】
下型30には電気式ヒータ(加熱装置)72が埋め込まれている。
【0082】
次に、図4図13を参照して製造装置10を用いた実施形態1による磁石埋込み型コア1の製造方法を各工程順に説明する。
【0083】
先ず、図4に示されているように、可動プラテン14(図3参照)が上昇した状態下で、下部挟持板34及び上部挟持板36とでロータコア2を挟持し、可動係止爪38及び固定係止爪40によって下部挟持板34と上部挟持板36とが連結されたロータコア保持具32、つまり、ロータコア2をセットされたロータコア保持具32が下型30上に搬入される。尚、製造装置10(特にプレス構造)上での加熱時間の低減のため、ロータコア2は製造装置10外の加熱炉(不図示)によって予加熱されていてもよい。このような予加熱工程は、ロータコア保持具32にセットされた状態で行われてもよいし、セットしていない状態で行われてもよい。
【0084】
次に、樹脂投入工程として、図5に示されているように、樹脂投入装置80が上部挟持板36上にセットされる。樹脂投入装置80は、各磁石挿入孔4に対応する樹脂保持孔82を有する本体84と、樹脂保持孔82の下端開口を開閉する常閉式のシャッタ板86及びシャッタ保持板88と、各樹脂保持孔82に対応してシャッタ保持板88に取り付けられた筒状の樹脂ガイド部材90とを含む。この時の上部挟持板36に対する樹脂投入装置80の位置決めは、本体84に形成された凹部84Aに上部挟持板36の突部36Bが係合することにより行われる。
【0085】
各樹脂保持孔82には予め固形状態の樹脂(以下、固形樹脂7と云う)が投入されており、樹脂投入装置80が上部挟持板36上にセットされると、各樹脂ガイド部材90は上部挟持板36の対応する挿入孔42に挿入される。
【0086】
固形樹脂7は、磁石挿入孔4の上側の開口から磁石挿入孔4内に投入可能なものであればよく、未硬化(熱硬化性樹脂の場合は加熱による化学反応前)の粉末或いは比較的小径の顆粒状の原料樹脂や充填材(フィラーや添加剤等)を不図示の打錠機によって円柱状等の任意の形状に成形したものや、未硬化の粉末の原料樹脂を比較的大きい粒径の顆粒に成形したものである。このように成形されたものは樹脂粉末の飛散を防止する点で好適である。
【0087】
磁石挿入孔4毎の固形樹脂7の体積は、磁石挿入孔4の容積から磁石片5の体積を差引いた値より所定量(余剰部)だけ大きい。尚、固形樹脂7は、必ずしも固体からなるものに限定されず、少なくとも磁石挿入孔4への挿入時に一定の形を保持可能な状態(実質的に流動しない状態)であればよい。つまり、各磁石挿入孔4に対する固形樹脂7の投入量(容積)は、磁石片5が磁石挿入孔4に挿入された場合に、溶融した樹脂8(固形樹脂7が溶融したもので、以降、溶融樹脂8と云うことがある)が磁石挿入孔4から少し溢れ出る程度に設定されるのが好ましい。なお、後述する工程において磁石挿入孔4から溢れ出させた溶融樹脂8を全て磁石挿入孔4に戻すことができれば、磁石挿入孔4毎の固形樹脂7の体積は磁石挿入孔4の容積から磁石片5の体積を引いた量と同一でもよい。このことは、固形樹脂7の使用量を削減できる点で好ましい。
【0088】
樹脂投入装置80が上部挟持板36上にセットされた状態でシャッタ板86が開かれることにより、各樹脂保持孔82の固形樹脂7が樹脂ガイド部材90内を通過して対応する磁石挿入孔4に落下する。この場合、同図に示されているように、ガイド部材90の内周の形状が磁石挿入孔4の大きさより小さく構成され、位置合わせされることで、固形樹脂7が磁石挿入孔4の縁に引っかかって投下不良となるのを防止できる。
【0089】
電気式ヒータ72は常にオン状態であってよく、電気式ヒータ72の熱が下型30及び下部挟持板34を介してロータコア2に伝わることにより、各磁石挿入孔4に固形樹脂7が落下すると、各磁石挿入孔4内において固形樹脂7を加熱によって溶融させる溶融工程が開始される。尚、ロータコア2の予加熱工程を行うことで、固形樹脂7の加熱及び溶融を促進して成形時間を短縮することができる。
【0090】
樹脂投入工程が完了すれば、次に、磁石片投入工程として、図6に示されているように、樹脂投入装置80に代えて磁石片投入装置100が上部挟持板36の上方に配置される。磁石片投入装置100は、各磁石挿入孔4に対応する磁石片保持孔102を有する本体104と、磁石片保持孔102の下端開口を開閉する常閉式のシャッタ板106及びシャッタ保持板108と、各磁石片保持孔102に対応してシャッタ保持板108に取り付けられた筒状の磁石片ガイド部材110とを含む。磁石片投入装置100は、更に、本体104に立設された複数のガイドロッド114に案内されて本体104に対して上下方向に移動可能な可動板116と、可動板116から各磁石片保持孔102に向けて垂下されたプレッシャロッド118と、本体104上に設けられた電動機120と、上下方向に延在して電動機120によって回転駆動される送りねじ棒122と、可動板116に固定されて送りねじ棒122にねじ係合した送りナット124を含む。各磁石片保持孔102には予め磁石片5が投入されている。この時の上部挟持板36に対する磁石片投入装置100の位置決めは、本体104に形成された凹部104Aに上部挟持板36の突部36Bが係合することにより行われる。
【0091】
図7に示されているように、磁石片投入装置100が上部挟持板36上に降下されることにより、各磁石片ガイド部材110は上部挟持板36の対応する挿入孔42に挿入される。そして、シャッタ板106が開かれ、電動機120によって送りねじ棒122が回転駆動されることにより、可動板116が本体104に対して降下し、各プレッシャロッド118が対応する磁石片保持孔102の磁石片5を、磁石片ガイド部材110を通過させて磁石挿入孔4に押し込むことが行われる。この磁石片ガイド部材110も上述したガイド部材90と同じ趣旨により、磁石片5を円滑に磁石挿入孔4に挿入可能とすることができる。尚、プレッシャロッド118によって磁石片5を磁石挿入孔4に押し込む工程においては、図7に示されているように、磁石片5が固形樹脂7上に接触する高さまで押し込んでもよく、更にそれ以上押し込んで溶融樹脂8を磁石挿入孔4内に充填させる工程を開始してもよい。
【0092】
磁石片投入工程が完了すると、図8に示されているように、磁石片投入装置100が取り除かれ、閉塞工程として、可動プラテン14(図3参照)が降下されることにより、上型18が降下し、上部挟持板36がコア押さえ部材24に当接する。
【0093】
続いて、各閉塞部材20により、磁石挿入孔4の上側の開口が閉塞されると共に、磁石片5の挿入が行われる。本実施形態では、図9に示されているように可動プラテン14(図3参照)が降下されることにより、ばね22が撓み、各閉塞部材20が対応する挿入孔42に進入すると共に各磁石片5を閉塞部材20によって磁石挿入孔4に更に押し込むことが行われる。そして、ロータコア2が閉塞部材20に当接することにより、磁石挿入孔4の上側の開口が閉塞部材20によって閉塞される。このようにして、閉塞工程が行われる。
【0094】
この時には、図10に示されているように、溶融状態の樹脂(溶融樹脂)8の一部が各磁石挿入孔4の下側の開口から対応する第1ピストン46を圧縮コイルばね50のばね力に抗して押し下げつつ各バッファ室44に流入する。また、磁石挿入孔4内において磁石片5の側面を介して溶融樹脂8が充填されていく。この場合、先の工程で磁石挿入孔4の上側の開口が閉塞部材20によって閉塞されることで、磁石挿入孔4の上側から溶融樹脂8が溢れ出すことを防止できる。
【0095】
この後に、図11に示されているように、樹脂加圧工程として、油圧装置70から各シリンダ室64に油圧が供給されることにより、各第2ピストン54がピストンロッド56を介して対応する第1ピストン46を上方に向けて加圧する。これにより、各バッファ室44に流入した溶融樹脂8が加圧され、バッファ室44に流入した溶融樹脂8の少なくとも一部が対応する磁石挿入孔4に押し戻されると共に磁石挿入孔4の溶融樹脂8も加圧される。
【0096】
これにより、空気抜き通路21、37による空気排出のもとに、磁石挿入孔4内の磁石片5とロータコア2との間隙に溶融樹脂8が良好に行き亘らせることができ、溶融樹脂8の加熱による化学反応(硬化)を進行させることができる。この場合、適切に樹脂圧を加えた状態で硬化させることができるため、硬化した樹脂6による磁石片5の固定強度が安定し且つ向上する。
【0097】
所定の保圧時間経過後に、各シリンダ室64に対する油圧の供給が停止され、その後に、図12に示されているように、可動プラテン14(図3参照)が上昇されることにより、上型18が元の上昇位置に戻る。そして、搬出工程として、ロータコア保持具32を下型30から取り外すことが行われる。
【0098】
次に、溶融樹脂8の加熱による化学反応をさらに進行させる熱硬化工程として、ロータコア保持具32と共にロータコア2が不図示の加熱炉によって加熱され、溶融樹脂8の加熱による磁石挿入孔4及びバッファ室44の溶融樹脂8の硬化が更に進行する。これにより、製造装置10(特にプレス構造)上での加熱時間を短縮することができる。したがって、一台の製造装置10に対して複数のロータコア保持具32が準備されることにより、製造装置10の稼働率を向上することができる。
【0099】
なお、熱硬化工程は、ロータコア保持具32が下型30上に載置された図11に示されている状態でも、電気式ヒータ72による加熱によって行うことも可能であり、簡易な構成で硬化を完了できる。
【0100】
溶融樹脂8の硬化が完了した後に、取外し工程として、可動係止爪38と固定係止爪40とによる下部挟持板34と上部挟持板36との連結を解除し、ロータコア保持具32からロータコア2を取り外すことが行われる。ロータコア保持具32から取り外されたロータコア2は、図13に示されているように、バッファ室44で硬化した樹脂6Aがオーバラップ部分によって磁石挿入孔4で硬化樹脂6と繋がった状態で、下部挟持板34から取り外される。
【0101】
これにより、バッファ室44で硬化した樹脂6Aがロータコア保持具32側に残ることがなく、繰り返し使用されるロータコア保持具32の清掃作業が容易になる。つまり、バッファ室44から硬化した樹脂6Aを取り除く手間が掛からない。オーバラップ部分によって磁石挿入孔4の樹脂6と繋がっている樹脂6Aは、バリ除去を含む磁石埋込み型コア1の仕上げ工程において除去されればよい。尚、ロータコア2において、硬化樹脂6Aを残してよい場合には除去する必要はない。
【0102】
以上に説明したように、本実施形態では、固形状態の樹脂7を磁石挿入孔4に投入し、磁石挿入孔4内で溶融させた樹脂8をバッファ室44に流入させながら磁石片5を挿入させる際に、磁石挿入孔4の上側の開口を閉塞するため、磁石挿入孔4の上側から溶融樹脂8が溢れ出ることを適切に防止できる。また、閉塞された磁石挿入孔4において溶融樹脂8に加圧することができ、加熱加圧による成形も可能となる。また、外部で溶融した樹脂を磁石挿入孔4内に導くためのランナ等の樹脂通路が不要となり、不要樹脂の発生を抑制することが可能となる。尚、樹脂6Aの容積はランナ等によって生じる不要樹脂の容量に比して極僅かである。
【0103】
次に、図14を参照して実施形態2に係る磁石埋込み型コア1の製造装置10について説明する。なお、図14において、図3図13に対応する部分は、図3図13に付した符号と同一の符号を付けて、その説明を省略する。
【0104】
実施形態2では、図14(A)に示されているように、バッファ室44の載置面35に対する開口と磁石挿入孔4の下側の開口とがオーバラップしておらず、ロータコア2の径方向に離間しており、両開口が載置面35に形成された連通溝45によって連通している。
【0105】
磁石挿入孔4の溶融樹脂8の一部は連通溝45を通ってバッファ室44へ流れ、樹脂加圧工程ではバッファ室44の溶融樹脂8の一部が連通溝45を通って磁石挿入孔4へ流れる。
【0106】
硬化工程では、磁石挿入孔4及びバッファ室44の溶融樹脂8に加えて連通溝45の溶融樹脂8も硬化する。溶融樹脂8の硬化後の取外し工程では、図14(B)に示されているように、バッファ室44で硬化した樹脂6Aが連通溝45で硬化した樹脂によって磁石挿入孔4で硬化樹脂6と繋がった状態で、下部挟持板34から取り外される。
【0107】
これにより、実施形態2でも、バッファ室44で硬化した樹脂6Aがロータコア保持具32側に残ることがなく、繰り返し使用されるロータコア保持具32の清掃作業が容易になる。この場合も、バッファ室44から硬化した樹脂6Aを取り除く手間が掛からない。連通溝45の樹脂によって磁石挿入孔4の樹脂6と繋がっている樹脂6Aは、図14(C)に示されているように、バリ除去を含む磁石埋込み型コア1の仕上げ工程において除去されればよい。
【0108】
次に、図15を参照して実施形態3に係る磁石埋込み型コア1の製造装置10について説明する。なお、図15において、図3図13に対応する部分は、図3図13に付した符号と同一の符号を付けて、その説明を省略する。
【0109】
実施形態3では、図15(A)に示されているように、バッファ室44の全体が磁石挿入孔4にオーバラップするように設けられている。下部挟持板34と下部挟持板34上のロータコア2との間に平らなプレート130が下部挟持板34とロータコア2とに挟まれるようにして配置されている。プレート130には、磁石挿入孔4毎に、バッファ室44の載置面35に対する開口と磁石挿入孔4の下側の開口とを互いに連通する小径の貫通孔132が形成されている。
【0110】
磁石挿入孔4の溶融樹脂8の一部は貫通孔132を通ってバッファ室44へ流れ、樹脂加圧工程ではバッファ室44の溶融樹脂8の一部が貫通孔132を通って磁石挿入孔4へ流れる。
【0111】
硬化工程では、磁石挿入孔4及びバッファ室44の溶融樹脂8に加えて貫通孔132の溶融樹脂8も硬化する。溶融樹脂8の硬化後の取外し工程では、図15(B)に示されているように、プレート130と共にロータコア2をロータコア保持具32から取り外すことが行われる。これにより、バッファ室44で硬化した樹脂6Aが貫通孔132の樹脂によって磁石挿入孔4で硬化した樹脂6と繋がった状態で、下部挟持板34から取り外される。
【0112】
これにより、実施形態3でも、バッファ室44で硬化した樹脂6Aがロータコア保持具32側に残ることがなく、繰り返し使用されるロータコア保持具32の清掃作業が容易になる。この場合も、バッファ室44から硬化した樹脂6Aを取り除く手間が掛からない。貫通孔132の樹脂によって磁石挿入孔4の樹脂6と繋がっている樹脂6Aは、磁石埋込み型コア1の仕上げ工程において、図15(C)に示されているように、プレート130をロータコア2から分離することにより取り外されればよい。貫通孔132が小径であることにより、貫通孔132の樹脂を破断して行われるプレート130の分離は小さい荷重によって容易に行われる。
【0113】
次に、図16を参照してロータコア保持具32の他の実施形態について説明する。なお、図16において、図3図13に対応する部分は、図3図13に付した符号と同一の符号を付けて、その説明を省略する。
【0114】
この実施形態では、図16(A)に示されているように、ロータコア2上に載置する中間板33が載置されている。中間板33には磁石挿入孔4毎に挿入孔39が形成されている。各磁石挿入孔4に対する固形樹脂7及び磁石片5の投入は挿入孔39から行われる。
【0115】
上部挟持板36には磁石挿入孔4毎に挿入孔39に進入可能で、磁石挿入孔4の上側の開口を閉塞する閉塞部41が設けられている。
【0116】
図16(B)に示されているように、可動係止爪38と固定係止爪40との係合によって下部挟持板34と上部挟持板36とが連結されると、各閉塞部41が対応する挿入孔39に進入し、各閉塞部41がロータコア2の上面に当接することにより、各磁石挿入孔4の上側の開口が閉塞される。尚、磁石片5の挿入により磁石挿入孔4への樹脂充填も可能である。
【0117】
これにより、ロータコア保持具32単体で、樹脂投入工程、磁石片投入工程、溶融工程を行うことができる。更にはピストン室48に連通孔49からピストン室48に押し棒(不図示)を進入させ、押し棒によって第1ピストン46を押すことにより、樹脂加圧工程も行うことができる。この場合には製造装置10を必要としない。
【0118】
次に、図17及び図18を参照して実施形態4に係る磁石埋込み型コア1の製造装置10について説明する。なお、図17及び図18において、図3図13に対応する部分は、図3図13に付した符号と同一の符号を付けて、その説明を省略する。
【0119】
実施形態4では、図17に示されているように、ロータコア保持具32が省略され、載置台として、下型30上に載置板140が設けられている。載置板140上にはロータコア2が載置される。載置板140には磁石挿入孔4毎に実施形態1のバッファ室44と同等のバッファ室142が形成されている。載置板140には電気式ヒータ144が埋め込まれている。載置板140は上述したような一連の工程を所定回数行った後に交換されればよく、簡易な構成の装置を用いた生産が可能になる。
【0120】
下型30には、各バッファ室142に対応してシリンダボア53が形成されている。各シリンダボア53には第3ピストン55が上下方向(軸線方向)に移動可能に嵌合している。各第3ピストン55のピストンロッド57は対応するバッファ室142に進入してバッファ室142を昇降可能で、バッファ室142の溶融樹脂8を直接加圧するように構成されている。シリンダボア52には第3ピストン55を下方に付勢する圧縮コイルばね63が設けられている。
【0121】
下型30は各第3ピストン55の下側に加圧室としてシリンダ室65を画定している。各シリンダ室65は、第3ピストン55毎、換言すると、バッファ室142毎に個別に設けられ、下型30に形成されたマニホールド通路67及び外部配管68によって油圧装置70に接続され、油圧装置70から圧力油を供給される。
【0122】
図18に示されているように、可動プラテン14が降下されることにより、ロータコア2が閉塞部材20に当接し、各磁石挿入孔4の上側の開口が対応する閉塞部材20によって閉塞される。
【0123】
溶融工程によって各磁石挿入孔4の固形樹脂7は溶融しており、磁石挿入孔4内の溶融樹脂8の一部はバッファ室142に流入している。樹脂加圧工程として、油圧装置70から各シリンダ室65に油圧が供給されることにより、各第3ピストン55が上方に向けて加圧され、ピストンロッド57によってバッファ室142の溶融樹脂8が加圧される。
【0124】
これにより、実施形態4においても、実施形態1と同等の作用、効果が得られる。実施形態4においても、溶融状態の樹脂8を加圧する樹脂加圧部材をなす第3ピストン55及びシリンダ室65がバッファ室142毎に個別に設けられた構成において、複数のシリンダ室65に共通のマニホールド通路67から圧力油を供給されることにより、複数のシリンダ室65の均等圧化が図られる。これにより、バッファ室142及び各磁石挿入孔4内における溶融状態の樹脂8の成形時の圧力(樹脂圧)が均等化され、ロータコア2の各磁石挿入孔4における均質な成形が可能となる。
【0125】
なお、本実施形態では、閉塞部材20を相対的に昇降可能に有し可動プラテン14側に組み付けられたコア押さえ部材24でロータコア2を用いて挟持する構成について説明したが、平板状のコア押さえ部材24を設けることで、ロータコア2を直接閉塞してもよい。換言すれば、平板状のコア押さえ部材24を閉塞部材20として機能させることができる。これによれば、簡易な構成により、上述した製造方法と同等の作用効果を奏することができる。
【0126】
以上、本発明を特定の実施形態に基づいて説明したが、これらの実施形態はあくまでも例示であって、本発明はこれらの実施形態によって限定されるものではない。
【0127】
例えば、溶融工程は、樹脂投入直後から樹脂が加熱されることで、樹脂の溶融が始まる設定としてもよいが、磁石片投入工程と同時に行われても、磁石片投入工程の前或いは磁石片投入工程の後に行われてもよい。
【0128】
上記実施形態では、樹脂6として、熱硬化性樹脂を用いる例を示したが、これに限らず、熱可塑性樹脂を用いることも可能である。熱可塑性樹脂を用いる場合には、熱硬化性樹脂における熱硬化工程の代わりに、冷却による硬化工程が実施される。固形樹脂は、ペレット、パウダーや顆粒状のものであってもよい。
【0129】
上記実施形態では、磁石挿入孔4において磁石片5を内側に偏倚して配置した例を示したが、これに限らず、磁石挿入孔4における磁石片5の位置は適宜変更することが可能である。例えば、平面視における磁石挿入孔4の中央に磁石片5を配置してもよい。電気式ヒータはコア押さえ部材24にも設けられてもよい。プレス機構は、可動側が上下に反転し、可動側が下側にあってもよい。この場合には、上側に固定プラテン16が配置され、下側に可動プラテン14が配置され、可動プラテン14上に下型30が配置される。
【0130】
バッファ室44、142の溶融状態の樹脂8の加圧は、流体圧式のものに限られることはなく、電動式、電歪式、機械式等であってもよい。
【0131】
図10に示されているように、下部挟持板34側の磁石挿入孔4の開口を外部に開放する空気抜き通路43が下部挟持板34に設けられてもよい。
【0132】
上記実施形態に示した本発明に係る磁石埋込み型コアの製造方法の各構成要素は、必ずしも全てが必須ではなく、少なくとも本発明の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜取捨選択することが可能である。
【符号の説明】
【0133】
1 :磁石埋込み型コア
2 :ロータコア
3 :軸孔
4 :磁石挿入孔
4A :内面
5 :磁石片
5A :外面
6 :硬化樹脂
6A :樹脂
7 :固形樹脂
8 :溶融樹脂
10 :製造装置
12 :タイバー
14 :可動プラテン
16 :固定プラテン
18 :上型
19 :ロッド
20 :閉塞部材
20A :突部
21 :空気抜き通路
22 :ばね
24 :コア押さえ部材
24A :凹部
24B :突部
26 :貫通孔
30 :下型(基台)
30A :突部
32 :ロータコア保持具(製造治具)
33 :中間板
34 :下部挟持板(載置台)
34A :突部
34B :凹部
34C :突部
35 :載置面
36 :上部挟持板
36A :突部
36B :突部
36C :凹部
37 :空気抜き通路
38 :可動係止爪
39 :挿入孔
40 :固定係止爪
41 :閉塞部
42 :挿入孔
43 :空気抜き通路
44 :バッファ室
45 :連通溝
46 :第1ピストン
46A :下部フランジ
48 :ピストン室
49 :連通孔
50 :圧縮コイルばね
52 :シリンダボア
53 :シリンダボア
54 :第2ピストン
55 :第3ピストン
56 :ピストンロッド
57 :ピストンロッド
58 :貫通孔
60 :貫通孔
62 :圧縮コイルばね
63 :圧縮コイルばね
64 :シリンダ室(加圧室)
65 :シリンダ室(加圧室)
66 :マニホールド通路
67 :マニホールド通路
68 :外部配管
70 :油圧装置
72 :電気式ヒータ
80 :樹脂投入装置
82 :樹脂保持孔
84 :本体
84A :凹部
86 :シャッタ板
88 :シャッタ保持板
90 :樹脂ガイド部材
100 :磁石片投入装置
102 :磁石片保持孔
104 :本体
104A :凹部
106 :シャッタ板
108 :シャッタ保持板
110 :磁石片ガイド部材
112 :電気式ヒータ
114 :ガイドロッド
116 :可動板
118 :プレッシャロッド
120 :電動機
122 :送りねじ棒
124 :送りナット
130 :プレート
132 :貫通孔
140 :載置板(載置台)
142 :バッファ室
144 :電気式ヒータ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18