特許第6871244号(P6871244)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6871244カルダンシャフトトランスミッションを備えたモータサイクルのリア及び関連のモータサイクル
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6871244
(24)【登録日】2021年4月19日
(45)【発行日】2021年5月12日
(54)【発明の名称】カルダンシャフトトランスミッションを備えたモータサイクルのリア及び関連のモータサイクル
(51)【国際特許分類】
   B62M 17/00 20060101AFI20210426BHJP
   B60K 17/22 20060101ALI20210426BHJP
【FI】
   B62M17/00 D
   B60K17/22 Z
【請求項の数】12
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2018-516027(P2018-516027)
(86)(22)【出願日】2016年9月27日
(65)【公表番号】特表2018-530469(P2018-530469A)
(43)【公表日】2018年10月18日
(86)【国際出願番号】IB2016055769
(87)【国際公開番号】WO2017055996
(87)【国際公開日】20170406
【審査請求日】2019年6月7日
(31)【優先権主張番号】102015000056228
(32)【優先日】2015年9月29日
(33)【優先権主張国】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】515217546
【氏名又は名称】ピアッジオ エ チ.ソシエタ ペル アチオニ
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】特許業務法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ソアッティ,ピエトロ
【審査官】 中川 隆司
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭62−018382(JP,A)
【文献】 特開昭57−041282(JP,A)
【文献】 特開2010−083288(JP,A)
【文献】 実開昭56−150695(JP,U)
【文献】 特表2005−524569(JP,A)
【文献】 米国特許第05067580(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62M 17/00
B60K 17/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カルダンシャフトトランスミッションを備えたモータサイクルのリア(4)であって、
リアフレーム(12)と、
ヒンジ軸(X−X)の周りで前記リアフレーム(12)にヒンジ接続されたフォーク(16)であって、回転軸(Y−Y)の周りで前記モータサイクル(8)のリアホイール(24)の回転ピン(20)を回転可能に支持するフォーク(16)と、を備え、
前記フォーク(16)は、関連するエンジンのパワーテイクオフ(PTO)への接続に適した第一トランスミッションシャフト(28)と、前記リアホイール(24)に回転可能に接続されたピニオン(36)に取り付けられた少なくとも一つのファイナルシャフト(32)とを少なくとも備えるカルダンシャフトトランスミッションを支持し、前記第一トランスミッションシャフト(28)と前記ファイナルシャフト(32)との間には第一カルダンショイント(40)が介装されており、
前記ファイナルシャフト(32)の前記ピニオン(36)を支持するフローティングアーム(48)をさらに備え、前記フローティングアーム(48)は前記リアホイール(24)の前記回転軸(Y−Y)の周りで浮動し、
前記フローティングアーム(48)は、前記回転ピン(20)と同軸に配置され、前記ピニオン(36)を収容し且つ支持する少なくとも一つの内側端部(56)を有するカップ部(52)と、前記カップ部(52)に対して片持ち配置された外側付属部(60)と、を備え、
前記カップ部(52)は、前記リアホイール(24)の前記回転ピン(20)から回転可能に取り外され、
前記外側付属部(60)が、前記リアフレーム(12)と前記外側付属部(60)とに軸方向両端部(68、70)でそれぞれヒンジ接続されたリアクションロッド(64)を介装させることによって、前記リアフレーム(12)に機械的に接続される、リア(4)において、
前記フォーク(16)は、前記関連するリアホイール(24)の中心線面(M−M)に対して反対側で、前記回転ピン(20)に少なくとも部分的に同軸に配置されたフロントカバーパネル(26)を備え、
前記外側付属部(60)は、前記回転軸(Y−Y)と平行な軸方向に、前記カップ部(52)に対して突出し、前記フロントカバーパネル(26)から軸方向に出現する、第一セクション(72)と、前記関連するリアホイール(24)の前記中心線面(M−M)に向かって軸方向に凹んだ部分を含む第二セクション(76)と、を備える、ことを特徴とするリア(4)。
【請求項2】
前記第二セクション(76)は、前記フロントカバーパネル(26)の外側側壁(80)に対して略相補的形状であり、前記回転軸(Y−Y)の周りのその浮動運動において前記パネルと干渉しない、請求項1に記載のモータサイクルのリア(4)。
【請求項3】
前記フロントカバーパネル(26)は、前記回転軸(Y−Y)の周りで円錐台状であり、前記第二セクション(76)は、略直線で、前記円錐台状のパネルの母直線と平行である、請求項1又は2に記載のモータサイクルのリア(4)。
【請求項4】
前記外側付属部は、前記リアクションロッドが、前記関連するリアホイール(24)の前記中心線面(M−M)に平行に配置されるよう形状化されている、請求項1、2又は3に記載のモータサイクルのリア(4)。
【請求項5】
前記フォーク(16)は、前記リアホイール(24)のホイールリム(23)と対面するリアハウジング(25)を備え、前記リアハウジング(25)は、前記関連するリアホイール(24)の中心線面(M−M)の近傍に配置された連結面(30)で、前記フロントカバーパネル(26)に機械的に連結される、請求項1から4のいずれか1項に記載のモータサイクルのリア(4)。
【請求項6】
前記フォーク(16)は、前記フロントカバーパネル(26)に機械的に連結されたリアハウジング(25)を備え、前記フロントカバーパネル(26)及び前記リアハウジング(25)は、潤滑油又はグリースが存在していない濡れていない空間を包囲し、前記空間は、前記カップ部(52)と前記内側端部(56)とを内部に収容する、請求項1から5のいずれか1項に記載のモータサイクルのリア(4)。
【請求項7】
前記フォーク(16)は、前記フォーク(16)を前記リアフレーム(12)に接続する第一中空部(13)から、前記フォーク(16)を前記リアホイール(24)の前記回転ピン(20)に接続する第二中空部(14)まで、主延在軸(S−S)に沿って一体的に延在する中空の箱状構造を備える、請求項1から6のいずれか1項に記載のモータサイクルのリア(4)。
【請求項8】
前記リアクションロッド(64)は、前記リアクションロッド(24)の軸方向端部(68、70)間の距離の第一調整手段(84)を備える、請求項1から7のいずれか1項に記載のモータサイクルのリア(4)。
【請求項9】
前記外側付属部(60)は、前記回転軸(Y−Y)と、前記リアクションロッド(64)の対応する前記軸方向端部(70)のヒンジ点との間の距離の長さの第二調整手段(88)を備える、請求項1から8のいずれか1項に記載のモータサイクルのリア(4)。
【請求項10】
前記第一及び/又は第二調整手段(84、88)はネジ調整手段を備える、請求項8又は9に記載のモータサイクルのリア(4)。
【請求項11】
前記フォーク(16)は、前記フォーク(16)にヒンジ接続された第一端部(29)と、前記リアフレーム(12)にヒンジ接続された第二端部(31)とを有するサスペンション(27)に動作可能に接続される、請求項1から10のいずれか1項に記載のモータサイクルのリア(4)。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか1項に記載のリアを備えるモータサイクル(4)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カルダンシャフトトランスミッションを備えたモータサイクルのリア(後部)、及びこのリアを備える関連のモータサイクルに関する。
【背景技術】
【0002】
既知のように、カルダンシャフトトランスミッションを備えたモータサイクルは、変動(transitories)中、つまり加速及び解放(release)中、特にトリム(釣り合い、バランス;trim)の変化の影響を受け易い。
【0003】
実際、カルダンシャフトトランスミッションは一般に、加速中、フォークのサスペンションが「開く」又は広がる傾向があり、これは、地面へのトルクの伝達、及び減速中のその閉鎖を促進する。変動中、つまり、トルクの供給からガスの閉鎖まで及びその逆(いわゆるオンオフ)の遷移中、フォークの連続的な開/閉は、限定的であっても、モータサイクルのトリムを犠牲にすることに加えて、運転者に対して不快感をもたらす。
【発明の概要】
【0004】
上記の問題を解決するために、現在のところ、既知の技術は、カルダンシャフトトランスミッションを備えたモータサイクル用の様々なリアサスペンションの解決策を採用してきた。
【0005】
例えば、上記の変動内でトリム及び負荷の変化をできるだけ制限する等の幾何形状を提供する解決策がある。
【0006】
しかし、これらの従来技術の解決策は、むしろ複雑な幾何形状の使用を含み、様々なアームは、一方では問題を低減するが、他方ではモータサイクルの重量を増大させるため、いくつかの欠点を伴う。
【0007】
加えて、これらの解決策にはフォークが自立型ではないことが必要とされ、言い換えると、一つ以上のこのようなアームを除去するとフォークが崩壊することになる。これは、このような連結部が故障又は破損した場合、フォークが使用不可能になり、車両は移動不可能になるため、それらは十分余裕をもって寸法化される。
【0008】
その上、リアの耐荷重構造内にジョイント及びヒンジがあることで、標準の単一部品のフォークに比べて必然的に剛性が低下する。
【0009】
EP1379428B1から、フローティングアームを用いることも知られており、フローティングアームは、フォークのサスペンションから、両端でフレーム及びレバレッジアームにヒンジ接続されたリアクションロッドによって、ファイナルトランスミッションシャフトのリアクショントルクを分離する機能を有する。この解決策は、フォークと共に変形可能な四角形を実現し、カルダンシャフトトランスミッションを備えたリア端部に一般的なトリムの変化を回避する利点を有する。実際には、カルダンシャフトトランスミッションのトルクリアクションはリアクションロッドによって吸収され、フォークが全体としてそれ自体のヒンジ軸の周りで振動し、モータサイクルのトリムを変化させることを防ぐ。
【0010】
EP’428の解決策は確かに信頼性があり機能的であるが、更に改善させることができる。
【0011】
実際、この解決策は、汎用性、ユーザによるモータサイクルの使用機能としての改良及びカスタマイズの可能性、機能不全、衝撃、落下の場合の機能の復元、及び一般論として、動作の経済性の観点でいくつかの制限を有する。
【0012】
これらの制限は、請求項1に記載のモータサイクルのリアによって克服される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
本発明の別の特徴及び利点は、実施形態のその好ましく非限定的な例についての以降の説明からより理解可能となる。
【0014】
図1】本発明によるモータサイクルのリアの側面図である。
【0015】
図2図1のモータサイクルのリアの部分断面側面図である。
【0016】
図3図1の断面III−IIIに沿った図1のモータサイクルのリアの断面図である。
【0017】
図4図1の矢印IV側からの図1のモータサイクルのリアの側面図である。
【0018】
図5図1のモータサイクルのリアのいくつかの部品の分解斜視図である。
【0019】
図6図1のモータサイクルのリアの分解斜視図である。
【0020】
以降の実施形態の間で共通の要素及び要素の部品は、同じ参照番号で示される。
【発明を実施するための形態】
【0021】
上記の図面を参照すると、参照番号4は全体的に、本発明によるカルダンシャフトトランスミッションを備えたモータサイクル8のリアの全体の概略を示す。
【0022】
本発明の目的のために、用語モータサイクルは、広い意味で、少なくとも二つのホイール(車輪)、つまり、一つのフロントホイール(前輪)と少なくとも一つのリアホイール(後輪)とを有する任意のモータサイクルを包含すると考えなければならないことは明確にされるべきである。従って、この定義は、例えば、フロントアクスル(前車軸)に二つの対の操舵輪、及びリアアクスル(後車軸)に一つの駆動輪という三つのホイールを有するモータサイクルも、フロントアクスルに単一の操舵輪、及びリアアクスルに二つの駆動輪を有するモータサイクルも含む。最終的に、モータサイクルのこの定義は、フロントアクスルに二つのホイール、及びリアアクスルに二つのホイールを有するいわゆる四輪車も含む。
【0023】
リア4は、リアフレーム12と、ヒンジ軸X−Xを画定する一つ以上のピン18の周りでこのフレーム12にヒンジ接続されたフォーク16とを備える。
【0024】
フォーク16とリアフレーム12との間の接続は、直接的、つまり、直接ヒンジ接続によって行うことも、レバー及び/又は小さな中間フレームの介装によって行うこともできることは明確にすべきである。
【0025】
フレーム12は任意の形状及びサイズを有することができ、例えば、格子又は箱形、ダイカスト等であってもよい。
【0026】
フレーム12は、単一部品であってもいくつかの部品であってもよく、一般にフォーク16と相互作用するフレーム12の部分は、運転者及び/又は搭乗者のサドルを支持する。
【0027】
フォーク16は、回転軸Y−Yの周りで、モータサイクル8の少なくとも一つのリアホイール24の回転ピン20を回転可能に支持する。
【0028】
フォーク16は、好ましくは中空の箱状構造である。
【0029】
特に、この中空の箱状構造は、フォーク16の支配的な延在軸S−Sに沿って、二つの中空部品に分割可能である。第一中空部品13は、前記ピン18に対応するリアフレーム12にフォーク16を接続する。第二中空部品14は、リアホイール24の回転ピン20にフォーク16を接続する。
【0030】
この中空部品13、14は、支配的な延在軸S−Sに従って互いに一体部品であることが好ましい(図1、2及び3)。
【0031】
言い換えると、フォーク16は、リアフレーム12にフォーク16を接続する第一中空部品13から、リアホイール24の回転ピン20にフォーク16を接続する第二中空部品14まで、主延在軸S−Sに沿って一体的に延在する中空の箱状構造を備える。
【0032】
このように、フォーク16が通常受ける曲げ及び捻り変形に対して、極めて堅固な箱状構造を実現でき、この剛性の増大はモータサイクルの運転精度を向上させる。
【0033】
一実施形態によると、中空部品13、14は、任意のガスケットの介装なしで互いに機械的に接続される。実際、好ましくは、フォークの中空の箱状構造は、第一中空部品13にも第二中空部品14にも対応しないオイルバス内にはない。
【0034】
一実施形態によると、フォーク16は、関連するリアホイール24の中心線面M−Mに対して反対側に、回転ピン20に少なくとも部分的に同軸に配置されたフロントカバーパネル26を備える。
【0035】
加えて、フォーク16は更にリアホイール24のホイールリム23と正対するリアハウジング25を含む。
【0036】
リアハウジング25が、リアホイールリム23の近傍に配置された連結面30に対応するフロントカバーパネル26に機械的に連結されることは注目すべきである。
【0037】
従って、連結面30は、フォークの組立及び分解を容易にするよう配置される。
【0038】
また、フロントカバーパネル26とリアハウジング25とが潤滑油又はグリースバスなしで容積部を取り囲むため、連結面30にはガスケットは存在しない。容積部は、カップ部52と内側端部56とを収容する。
【0039】
フォーク16は、フォーク16にヒンジ接続された第一端部29とリアフレーム12にヒンジ接続された第二端部31とを有するサスペンション27に動作可能に接続される。
【0040】
サスペンション27は任意の種類であってもよく、例えば、サスペンション27はバネ33とショックアブソーバ35とを備え、バネ33とショックアブソーバ35とは好ましくは互いに同軸である。
【0041】
フォーク16は、関連のエンジン(図示せず)のパワーテイクオフ(動力取出装置)への接続に適した少なくとも一つの第一トランスミッションシャフト28を備えるカルダンシャフトトランスミッションを支持する。
【0042】
エンジンは、任意の種類、例えば、吸熱型及び/又は電動型であってもよく、パワーテイクオフは一般にピニオン又はギアを備えることができる。
【0043】
カルダンシャフトトランスミッションは更に、リアホイール24に回転可能に接続されたピニオン36に取り付けられた少なくとも一つのファイナルシャフト(final shaft)32を備える。
【0044】
一般に、ピニオンは、リアホイール24と一体的に回転する、例えば、円錐対などの歯車と噛み合う。
【0045】
第一トランスミッションシャフト28とファイナルシャフト32との間に、第一カルダンショイント40が介装される。
【0046】
第一トランスミッションシャフト28は更に、第二カルダンショイント44を介して、パワーテイクオフに動作可能に接続できる。
【0047】
フォーク16は、カルダンシャフトトランスミッションを少なくとも部分的に内部に収容する中空の箱状構造である。
【0048】
リア4は、ファイナルシャフト32のピニオン36を支持するフローティングアーム(浮動アーム)48も含む。
【0049】
アーム48は、リアホイール24の回転軸Y−Yの周りを浮動する。
【0050】
例えば、回転軸Y−Yの周りのフローティングアーム48の回転運動は、適切なベアリング50によってガイドされる。
【0051】
一実施形態によると、フローティングアーム48は、回転ピン20と同軸に配置され、ピニオン36を収容し支持する少なくとも一つの内側端部56を有するカップ部52と、カップ部52に対して片持ち配置された外側付属部60とを備える。
【0052】
カップ部52は、内側端部56及び外側付属部60と一体化している。
【0053】
カップ部52は、リアホイール24の回転ピン20から回転可能に外される。
【0054】
有利には、カップ部52は、オイル又は潤滑グリースを収容し、特別なガスケットが設けられて、潤滑剤を内部に保持する閉じた部分である。カップ部52及び内側端部56に収容される潤滑剤の量は、例えば、EP1379428B1等の従来の解決策で収容される量に比べて極めて少ない。
【0055】
外側付属部60は、ネジ接続手段61によってカップ部52に機械的に接続され、カップ部52から流体的に分離される。
【0056】
従って、外側付属部60は、カップ部52内のオイルバスにはなく、カップ部52の外部に配置される。
【0057】
有利には、フォーク16の中空部品13、14を共に一体部品として実現することもできる(図3)。
【0058】
このように、運転精度を向上させる極めて堅固な箱状構造を実現できる。
【0059】
本発明の連結面30が、ホイールの回転軸Y−Yに直交し、支配的な延在軸S−Sに沿って通過するフォークの中央面に沿って配置されないということは注目されるべきである。中央面上でのこの配置は、例えば、EP1379428に存在し、そこでは、カバーの連結面は、アーム26が挿入されるラジアル開口部19を通過する。アーム26のこの中央配置は、捻り及び曲げ剛性を低減した二つのカバーの実現を強いる。
【0060】
代わりに、本発明では、カバー25、26の連結面30を有する略一体型のフォーク構造を作製することができ、この連結面30は、フォークに対して中央ではなく、リアホイール24の中心線面M−Mに向かってシフトされている。剛性を向上させたこの構造は、外側付属部60がフォークのカバーを半径方向には通過しないが、外側付属部60が、軸方向に、つまり、回転軸Y−Yに平行にカップ部52に対して突出し、フロントカバーパネル26から軸方向に突出するということによって可能になる。
【0061】
特に、メンテナンスにおいて、従来技術の解決策のように、オイルで充填された中空フォークの端部を全て分解する必要はない。このような分解は、第一に、中空フォークの構造を変形させる傾向がある。本発明の場合、代わりに、外側付属部60を分解した後、リアハウジング25及び/又はフロントカバーパネル26を取り外し、その後、カップ部52と内側端部56とを備えるフローティングアーム48を引っ張り出すことで十分となる。
【0062】
明らかに、カバー25、26がオイルバスを含まないため、このような分解は特に容易である。
【0063】
当然のことながら、例えば、EP1379428B1などの従来技術の解決策において、トランスミッションに内部保守を実行するには、フォークの、必ずいくつかの部品から構成されなければならないカバーを完全に分解する必要がある。実際、リアクションロッドに接続された付属部は内部に且つオイルバス内にあり、フロントカバーパネルを半径方向に通過し、トランスミッションボックスをまず二つに分割し、分解することなく取り外すことはできない。
【0064】
本発明の解決策では、代わりに、付属部60は明確に外部にあり、オイルバス内にはなく、外側から容易に取り外すことができる。例えば、リアハウジング25を取り外し、カップ部52と内側端部56とを備えるフローティングアーム48を引っ張り出すことで十分である。本発明のフォーク16の構造は一体的であり、より高い剛性とより高い運転精度を提供できる。
【0065】
外側付属部60は、リアフレーム12にリアクションロッド64を介して機械的に接続されており、リアクションロッド64はその軸方向の両端68、70において、端部68でリアフレーム12にヒンジ接続され、端部70で外側付属品60にヒンジ接続されている。
【0066】
リアクションロッド64は、フローティングアーム48によってピニオン36のリアクショントルクを受け取り、リアクショントルクをリアフレーム12に放出する剛性要素である。
【0067】
言い換えると、リアクションロッド64は、各々軸方向端部68、70において、リアフレーム12とフローティングアーム48に二重にヒンジ接続された堅固な接続ロッドである。
【0068】
このように、カルダンシャフトトランスミッションのファイナルシャフト32のリアクショントルクは、フローティングアーム48を介してリアホイール24のサスペンションから分離される。
【0069】
有利には、外側付属部60は、軸方向、つまり、回転軸Y−Yに平行にカップ部52に対して突出し、フロントカバーパネル26から軸方向に出現する第一セクション72と、関連のリアホイール24の中心線面M−Mに向かって軸方向に凹む部分を含む第二セクション76とを備える。
【0070】
一実施形態によると、第二セクション76は、フロントカバーパネル26の外側側壁80に対して略相補的形状である。
【0071】
特に、第二セクション76は、フロントカバーパネル26の外側側壁80に対して相補的形状であり、回転軸Y−Yの周りのその浮動運動においてパネルに干渉しない。
【0072】
例えば、フロントカバーパネル26は、回転軸Y−Yの周りで円錐台状であり、第二セクション76は略直線で、円錐台状パネルの母直線に平行である。
【0073】
外側付属部60は、リアクションロッドが関連のリアホイール24の中心線面M−Mに平行に配置されるように形状化されている。
【0074】
一実施形態によると、リアクションロッド64は、リアクションロッド64の長さ、つまり、リアクションロッド64の軸方向端部68、70間の距離の第一調整手段84を備える。
【0075】
一実施形態によると、外側付属部60は、外側付属部60の長さ、つまり、回転軸Y−Yと、リアクションロッド64の対応する軸方向端部70のヒンジ点との間の距離の第二調整手段88を備える。
【0076】
例えば、リアクションロッド64及び/又は外側付属部60の長さの第一及び第二調整手段84、88は、ネジ調整手段を備える。
【0077】
理解されるように、フォークの瞬間的な回転の中心は、第一及び第二直線のリアホイール24の中心線面M−M上の突出部の交差点によって与えられる。特に、第一直線は、中心線面M−M上の回転軸Y−Yの突出部を通過し、中心線面M−M上のフォーク16のヒンジ軸X−Xを通過する。第二直線は、リアクションロッド64の軸方向端部68、70の中心線面M−Mの突出部を接続する。
【0078】
リアクションロッド64は、第一及び第二直線が平行で、瞬間的な回転の中心で互いに交差するように配向される。その上、リアクションロッドは、瞬間的な回転の中心が、モータサイクルの前方側から明らかな、リアホイール24と反対側に配置されるように配向される。
【0079】
リアクションロッドは、フォーク16より上、つまり、フォーク16に対して地面と反対側、または、フォーク16より下、つまり、地面とフォーク16との間のいずれかに配置されてもよい。
【0080】
明細書から理解できるように、本発明は従来技術に存在する欠点を克服可能である。
【0081】
特に、既知の解決策で必要とされる外側ベローズを除去できるので、モータサイクルのリアは魅力的な外観を有する。
【0082】
その上、ベローズは切断されるとオイルが漏れる「弱い」要素であるので、この利点は技術的で高信頼性でもある。
【0083】
その上、オイル漏れの高い危険性があるので、ベローズは下方に配置できないという別の制限をもたらし、従って、ホイールの回転ピンより下方に外側付属品及びリアクションロッドを配置するために、ベローズは外側付属部及び関係するリアクションロッドの回転を不可能にする。本発明の解決策は、ホイールの回転ピンより上に常に示されているが、その配置は限定されない。従って、添付の図面に対して外側付属部とリアクションロッドとを180°回転させた実施形態、つまり、ホイールの回転ピンとフォークのピンとを結合する軸に対して、外側付属部とリアクションロッドとが鏡面の関係である実施形態も可能である。
【0084】
リアクションロッドと外側付属部との低いこの配置は、例えば、リアの重心を下げるために有用となり得る。
【0085】
加えて、カルダンシャフトトランスミッションの潤滑性も改善し、実際、フローティングアームは、カルダンシャフトトランスミッションを収容するカバーに対して外側に存在しており、その結果、カバー内のオイルの流れに何の影響を及ぼさない。従って、要約すると、潤滑油の流れは何ら変化せず、フローティングアームとカバーとの間の関連のガスケット又はシールが除去されるので、漏れ及び浸出の危険性が回避される。
【0086】
その上、フローティングアームは、例えば、EP’428等の既知の解決策のように固定角度位置を有しておらず、この解決策において、フローティングアームの角度位置は、カバーに形成されたスロットの角度延長によって与えられ、アーム自体がカバーから出てリアクションロッドを支持できる。
【0087】
本発明において、フローティングアームはカバーに対して外部にあるので、カバーに対するフローティングアームの角度位置に、もはや幾何学的制約はない。従って、ユーザは、リアの、従って車両のダイナミクス(動作状態)を変更するために、カバーに対するフローティングアームの角度固定位置を自由に修正する可能性を有する。実際、リアの瞬間的な回転の中心は、フォークの支配的な延長軸と、リアクションロッドによって特定される方向との間の交差点によって与えられる。従って、フローティングアームの角度配向を変更すると、フォークの瞬間的な回転中心の位置、従って、モータサイクルの動的挙動も変化する。
【0088】
この変化は、自動車修理工場内での調整作業を必ずしも要求せず、ユーザによって行うこともできる。リアクションロッドを置き換え、例えば、リアクションロッドの回転の関数としてその長さを修正することもできる。
【0089】
リアクションロッドには、長さの第一調整手段が設けられていてもよく、これにより、ロッド自体を異なる長さのものと置き換える必要なく、フローティングアームの位置に対するロッドの長さを調整することができる。
【0090】
例えば、ロッドの長さとフローティングアームの静止位置の選択は、モータサイクルの種類又は特定の用途(例えば、路上用又はオフロード用)に応じて変更でき、その場合、フォークの瞬間的な回転中心を、さらに大きく修正することが有利な場合もある。言い換えると、ユーザは、負荷(搭乗者及び/又は荷物の有無)、ルート、地形(地域)等に応じて、モータサイクルのトリムを任意に変更できる。
【0091】
静止位置は、静的な状態で、カルダンシャフトトランスミッションのファイナルシャフトに伝達されるトルクがない位置を意味する。
【0092】
負荷(搭乗者及び/又は荷物の有無)、ルート、地形等に応じて、任意にモータサイクルのトリムを変更できるという観点から常に、外側付属部の長さの第二調整手段の挿入を実現することも明らかに可能である。
【0093】
リアのサスペンションの校正、例えば、ショックアブソーバ、よってバネのプレロード(予負荷)の校正の変化の関数として、さらにショックアブソーバの伸長及び/又は圧縮における制動の変化の関数としても、フローティングアームの静止位置を変更することを任意に行うことができる。
【0094】
その上、本発明によって、衝撃又は落下の場合、トランスミッションアセンブリ全体を交換する必要なしに、リアクションロッド及び/又はフローティングアームを容易に素早く交換することができる。
【0095】
更に、理解されるように、本発明によるリアの解決策は、サスペンションからフローティングアームを介して正確に、(カルダン型の)ファイナルトランスミッションシャフトのリアクショントルクを分離でき、このように、加速及び解放中のモータサイクルのトリムの変化は最小まで低減される。
【0096】
最終的に、本発明によるリアの幾何形状のおかげで、フォークは、リアクションロッド及び/又はフローティングアームが偶発的に破損した場合でも崩壊せず、サスペンションによって支持されたままである。従って、モータサイクルは運転可能なままである。
【0097】
その上、明らかに、フローティングアームの付属物が外部にありオイルバス内には存在しないことにより、極めて容易に外部からそれを除去できる。
【0098】
加えて、フォークの一体型構造を実現し、既知の解決策より高い曲げ及び捻れ剛性、及びより高い運転精度を提供できる。
【0099】
当業者は、偶発的及び特定の必要性を満たすために、上記のリアに様々な修正及び変更を行うことができるが、全ては以降の請求項によって定義されるように本発明の範囲内に含まれる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6