特許第6871249号(P6871249)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6871249
(24)【登録日】2021年4月19日
(45)【発行日】2021年5月12日
(54)【発明の名称】自動注射器
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/20 20060101AFI20210426BHJP
   A61M 5/315 20060101ALI20210426BHJP
【FI】
   A61M5/20 510
   A61M5/315 500
【請求項の数】9
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2018-527125(P2018-527125)
(86)(22)【出願日】2016年11月21日
(65)【公表番号】特表2018-535036(P2018-535036A)
(43)【公表日】2018年11月29日
(86)【国際出願番号】EP2016078242
(87)【国際公開番号】WO2017089254
(87)【国際公開日】20170601
【審査請求日】2019年11月8日
(31)【優先権主張番号】15196667.8
(32)【優先日】2015年11月27日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】397056695
【氏名又は名称】サノフィ−アベンティス・ドイチュラント・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【弁理士】
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン・ヴェントラント
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル・ハルムス
【審査官】 豊田 直希
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−194701(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/052224(WO,A1)
【文献】 国際公開第2015/071123(WO,A1)
【文献】 国際公開第2015/052221(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体薬剤を送達するための自動注射器であって:
シリンジを封止して薬剤を変位させるためのピストンを備えるシリンジを含むように配置されたハウジングであって、近位端、および注射部位に対して適用されるよう意図された遠位端を有する、ハウジングと;
ピストンとハウジングの近位端との間に配置され、ねじ付ロッド要素を受け入れて係合するねじ付内面を含む、プランジャユニットと;
ねじ付ロッド要素に固定された、引っ張られた弾性要素であって、該弾性要素とねじ付ロッド要素は、初期状態において回転しないように固定されている、弾性要素とを含み、
ここで、該弾性要素が回転可能に解放されると、ねじ付ロッド要素は第1の方向に回転して、プランジャユニットをハウジングの遠位端に向かって並進運動させ、それによってピストンをハウジングの遠位端へ向かって押圧して薬剤を変位させ
弾性要素およびねじ付ロッド要素は、回転しないようロッキング機構によって解放可能に固定され、ロッキング機構が係合解除されると、弾性要素は回転可能に解放され、
ロッキング機構は、ねじ付ロッド要素の第1の端部に設けられ、そして
ロッキング機構は、ねじ付ロッド要素に設けられた第1のロッキング要素、および第2のロッキング要素を含み、該第1および第2のロッキング要素は互いに解放可能に係合されるように構成される、前記自動注射器。
【請求項2】
弾性要素は、ねじ付ロッド要素に巻きつけた螺旋ばねである、請求項1に記載の自動注射器。
【請求項3】
プランジャユニットが回転しないように固定するための、案内部材をさらに含む、請求項1または2に記載の自動注射器。
【請求項4】
案内部材は、ハウジングの側壁に設けられ、プランジャユニットの突出部分と係合するよう配置された案内リブを含む、請求項3に記載の自動注射器。
【請求項5】
第2のロッキング要素は、ロッキング機構の手動操作を可能にするようにハウジングか
ら突出する、請求項に記載の自動注射器。
【請求項6】
第1のロッキング要素は、ねじ付ロッド要素の第1の端部に設けられた溝であり、第2のロッキング要素は可動の突出部であり、該突出部が第1の位置にあるとき、突出部は溝と係合され、突出部が第2の位置にあるとき、突出部は溝から係合解除される、請求項に記載の自動注射器。
【請求項7】
第1のロッキング要素は、ねじ付ロッド要素の第1の端部に設けられたスロットであり、第2のロッキング要素はフックあり、該フックが第1の向きにあるとき、フックはスロットと係合され、フックが第2の向きにあるとき、フックはスロットから係合解除される、請求項に記載の自動注射器。
【請求項8】
第2の向きは、回転可能なキャップを第1の向きから回転させることによって実現される、請求項に記載の自動注射器。
【請求項9】
シリンジの中に含まれる薬剤を含む、請求項1〜のいずれか1項に記載の自動注射器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体薬剤を使用者に送達するための自動注射器に関する。
【背景技術】
【0002】
自己投与する注射によって送達される現在の治療として、糖尿病(インスリン、新しいGLP−Aクラスの薬物の両方)、片頭痛、ホルモン治療、抗凝血などのための薬物が挙げられる。注射を施すことは、使用者および医療従事者にとって、精神的および肉体的両方に、多くのリスクおよび困難を与えるプロセスである。
【0003】
従来の注射デバイスは、一般に手動デバイスおよび自動注射器の2つのカテゴリに属する。従来の手動デバイスでは、使用者は力を加えて、たとえばプランジャを押し下げることによって、液体薬剤をデバイスから押し出す必要がある。手動デバイスの使用者にとって、多くの不利点が内在する。たとえば、使用者がプランジャを押し下げるのを止めた場合、総用量未満の液体薬剤しか送達されない。さらに、プランジャを押し下げるために必要な力は、高齢の使用者または器用さに問題のある使用者にとって不確実であり、それによって、注射の位置合わせをするとき、および/または液体薬剤の用量を投与する間に、揺れまたは震えをもたらすことがある。加えて、手動デバイスのボタンまたはプランジャの伸張が長すぎることがある。そのため、使用者の手が完全に伸張したボタンに届きづらいことがある。
【0004】
自動注射器は、使用者のために、注射治療の自己投与をより容易にすることを目的としている。自動注射器は、手動デバイスの薬剤送達にかかわる行動に、完全に、または部分的に取って代わるデバイスである。これらの行動は、シリンジの保護キャップの取り外し、患者の皮膚への針の挿入、薬剤の注射、針の取り外し、針の防護、およびデバイスの再利用の防止を含み得る。これによって手動デバイスの多くの不利点を克服する。注射する力/ボタンの伸張、手の震え、および不十分な用量を送達する可能性が軽減される。たとえばトリガボタン、または針が注射深さに達する動きなど、多くの手段によってトリガすることができる。
【0005】
いくつかの自動注射器におけるプランジャ装置が、液体薬剤をシリンジから押し出して使用者に送達するための力をかけるために提供される。通常これらのプランジャ装置は長手方向の形状であり、自動注射器のハウジング内で一定の空間を要する。したがって、自動注射器をより小型にできるプランジャ装置を備える、改善された自動注射器に対する要望が残っている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様によると、液体薬剤を送達するための自動注射器が提供され、自動注射器は:シリンジを封止して薬剤を変位させるピストンを備えるシリンジを含むように配置されたハウジングであって、近位端、および注射部位に適用されるよう意図された遠位端を有するハウジングと;ピストンとハウジングの近位端との間に配置され、ねじ付ロッド要素を受け入れて係合するねじ付内面を含むプランジャユニットと;ねじ付ロッド要素に固定された、引っ張られた弾性要素であって、この弾性要素とねじ付ロッド要素は、初期状態において回転しないように固定されている、弾性要素とを含み、ここで、弾性要素が回転可能に解放されると、ねじ付ロッド要素は第1の方向に回転して、プランジャユニットをハウジングの遠位端に向けて並進運動させ、それによってピストンをハウジングの遠位端に向けて押圧して薬剤を変位させる。
【0007】
ねじ付ロッド要素を受け入れて係合するための、ねじ付内面を有するプランジャユニットの構成は、自動注射器の全長を縮小させることができる。これは、より小型で携帯可能な自動注射器の利点をもたらす。
【0008】
弾性要素は、ねじ付ロッド要素に巻きつけた螺旋ばねであってよい。自動注射器は、プランジャユニットを回転させずに固定するための、案内部材を含んでよい。案内部材は、プランジャユニットが、ねじ付内面構成によって回転するのを防止し、それによってプランジャユニットは、確実にハウジングの遠位端に向かってのみ並進運動する。
【0009】
案内部材は、ハウジングの側壁に設けられ、プランジャユニットの突出部分と係合するよう配置された案内リブを含んでよい。
【0010】
弾性要素およびねじ付ロッド要素は、回転しないようにロッキング機構によって解放可能に固定され、ロッキング機構が係合解除されると、弾性要素は回転可能に解放される。
【0011】
ロッキング機構は、ねじ付ロッド要素の第1の端部に設けられる。
【0012】
ロッキング機構は、ねじ付ロッド要素に設けられた第1のロッキング要素、および第2のロッキング要素を含んでよく、第1および第2のロッキング要素は、互いに解放可能に係合されるように構成される。この配置によって、ロッキング機構を容易に作動させることができる。
【0013】
第2のロッキング要素は、ロッキング機構の手動操作を可能にするよう、ハウジングから突出してよい。
【0014】
第1のロッキング要素は、ねじ付ロッド要素の第1の端部に設けられた溝であってよく、第2のロッキング要素は、可動の突出部であってよい。突出部が第1の位置にあるとき、突出部は溝と係合され、突出部が第2の位置にあるとき、突出部は溝から係合解除される。この機構配置を用いることによって、突出部を動かすだけでプランジャ要素を解放することができる。これによって、プランジャを押圧するための伸張ボタンが必要なくなり、したがって使用者が完全に伸張したボタンに触れる試みに関連付けられた問題を防止する。
【0015】
第1のロッキング要素は、ねじ付ロッド要素の第1の端部に設けられたスロットであってよく、第2のロッキング要素は、フックであってよい。フックが第1の向きにあるとき、フックはスロットに係合され、フックが第2の向きにあるとき、フックはスロットから係合解除される。
【0016】
回転可能なキャップを第1の向きから回転させることによって、第2の向きが実現される。
【0017】
薬剤はシリンジの中に含まれる。
【0018】
本発明の別の態様によると、自動注射器のプランジャユニットを変位させる方法が提供される。プランジャユニットは、ねじ付ロッド要素を受け入れて係合するための、ねじ付内面を含む。ねじ付ロッド要素に固定され、引っ張られた弾性要素を解放したときに、ねじ付ロッド要素は第1の方向に回転し、プランジャユニットを横方向に変位させる。
【0019】
本発明のこれらおよび他の態様は、以下に記載の実施形態を参照することから明確、明瞭となろう。
【0020】
本発明の実施形態が、例示としてのみ、添付の図面を参照して説明される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1A】本発明の実施形態による、自動注射デバイスの側面図である。
図1B】本発明の実施形態による、自動注射デバイスの側面図である。
図2A】本発明の第1の実施形態による、初期状態にある自動注射デバイスの断面図である。
図2B図2AのA−Aラインに沿った、図2Aの自動注射デバイスの断面図である。
図3A】本発明の第1の実施形態による、最終状態にある自動注射デバイスの断面図である。
図3B図3AのA−Aラインに沿った、図3Aの自動注射デバイスの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
次に実施形態が詳細に参照され、それらの例が添付の図面に図示される。同様の数字は全体的に同様の要素を指す。
【0023】
プランジャ装置を備える自動注射器が提供される。プランジャ装置は、シリンジのピストンと自動注射器のハウジングの近位端との間にあるプランジャユニット、およびねじ付ロッド要素を含む。プランジャユニットとねじ付ロッド要素との両方には、ねじ付面が提供され、それによって、初期状態にあるねじ付ロッド要素は、ねじ装置を介してプランジャユニットの内側キャビティに受け入れられる。
【0024】
ねじ付ロッド要素は、引っ張られた螺旋ばねに固定して取り付けられる。螺旋ばねは、解放されたときに第1の方向に回転し、ねじ付ロッド要素も第1の方向に回転させる。ねじ付ロッド要素およびプランジャユニットのねじ装置によって、プランジャユニットをハウジングの遠位端に向かって並進運動させ、シリンジに含まれる液体薬剤を変位させるために、シリンジのピストンを押圧する。説明した自動注射器の構成により、小型化および携帯性を向上させることができる。
【0025】
本明細書に記載の薬物送達デバイスは、薬剤を患者に注射するように構成される。たとえば送達は、皮下、筋肉内、または静脈内であってよい。このようなデバイスは、患者、または看護士もしくは医師などの介護者によって操作され、様々なタイプの安全シリンジ、ペン型注射器、または自動注射器を含むことができる。デバイスは、使用前に封止されたアンプルに穴をあける必要のある、カートリッジベースのシステムを含むことができる。これらの様々なデバイスで送達される薬剤の容量は、約0.5ml〜約2mlの範囲であってよい。さらに別のデバイスは、一定時間(たとえば約5、15、30、60、または120分)患者の皮膚に接着させて「大」容量(通常約2ml〜約10ml)の薬剤を送達するように構成された、大容量デバイス(「LVD」)またはパッチポンプ(patch pump)を含むことができる。
【0026】
特定の薬剤との組合せで、本記載のデバイスは、必要とされる仕様内で動作するようにカスタマイズすることもできる。たとえば、デバイスは特定の時間(たとえば、自動注射器では約3〜約20秒、LVDでは約10分〜約60分)内に薬剤を注射するようにカスタマイズすることができる。他の仕様は、低レベルもしくは最低レベルの苦痛、または人的要因、貯蔵寿命、有効期限、生体適合性、環境問題などに関する特定の条件を含むことができる。このような差異は、たとえば約3cP〜約50cPである薬物の粘度範囲など、様々な要因によって生じ得る。その結果薬物送達デバイスは、多くの場合、約25〜約31ゲージの範囲にあるサイズの中空針を含む。一般的なサイズは、27および29ゲージである。
【0027】
本明細書に記載の送達デバイスは、1つまたはそれ以上の自動化機能も含むことができる。たとえば、針の挿入、薬剤の注射、および針の後退のうちの1つまたはそれ以上を自動化することができる。1つまたはそれ以上の自動化工程のためのエネルギーが、1つまたはそれ以上のエネルギー源によって提供される。エネルギー源は、たとえば機械的、空気圧、化学的、または電気的エネルギーを含むことができる。たとえば、機械的エネルギー源として、エネルギーを蓄積または解放するための、ばね、てこ、エラストマー、または他の機械的機構を挙げることができる。1つまたはそれ以上のエネルギー源は、単一のデバイスに一体化することができる。デバイスは、エネルギーをデバイスの1つまたはそれ以上の構成要素の動きに変換するための、ギア、バルブ、または他の機構をさらに含むことができる。
【0028】
自動注射器の1つまたはそれ以上の自動化機能は、起動機構を介して各々を起動させることができる。このような起動機構として、ボタン、レバー、ニードルスリーブ、または他の起動構成要素のうちの1つまたはそれ以上を含むことができる。自動化機能の起動は、1つの工程プロセスまたは複数の工程プロセスであってよい。すなわち、自動化機能を提供するために、使用者は1つまたはそれ以上の起動構成要素の起動を要することがある。たとえば1つの工程プロセスにおいて、薬剤を注射するために、使用者はニードルスリーブをその本体に対して押し下げることができる。他のデバイスでは、自動化機能の複数工程の起動が必要となり得る。たとえば使用者は、注射するために、ボタンを押し下げて、ニードルシールドを後退させることが必要となり得る。
【0029】
さらに、1つの自動化機能の起動が、1つまたはそれ以上の後続の自動化機能を起動させることができ、それによって起動シーケンスを形成する。たとえば第1の自動化機能の起動は、針の挿入、薬剤の注射、および針の後退のうちの少なくとも2つを起動させることができる。いくつかのデバイスは、1つまたはそれ以上の自動化機能を発生させるための工程の、特定のシーケンスを必要とすることもある。他のデバイスは、独立した工程のシーケンスを伴って動作してもよい。
【0030】
いくつかの送達デバイスは、安全シリンジ、ペン型注射器、または自動注射器のうちの1つまたはそれ以上の機能を含むことができる。たとえば送達デバイスは、(通常、自動注射器に見られるような)自動的に薬剤を注射するように構成された機械的エネルギー源と、(通常、ペン型注射器に見られるような)用量設定機構とを含むことができる。
【0031】
本開示のいくつかの実施形態によると、例示的な薬物送達デバイス10が図1Aおよび図1Bに示される。上述のようにデバイス10は、薬剤を患者の体内に注射するように構成されている。デバイス10は、注射される薬剤を含有するリザーバを一般的に有するハウジング11、および送達プロセスの1つまたはそれ以上の工程を容易にするために必要な構成要素を含む。デバイス10は、ハウジング11に取り外し可能に設置された、キャップアセンブリ12も含むことができる。通常、デバイス10を操作する前に、使用者はキャップ12をハウジング11から取り除く必要がある。
【0032】
示されるように、ハウジング11は実質的に円筒形で、長手方向軸Xに沿って実質的に一定の径を有する。ハウジング11は、遠位領域20および近位領域21を有する。「遠位」という用語は、注射部位に相対的により近い位置を指し、「近位」という用語は、注射部位から相対的により離れた位置を指す。
【0033】
デバイス10は、ハウジング11に連結されたニードルスリーブ13も含むことができ、ハウジング11に対するスリーブ13の動きを可能にする。たとえば、スリーブ13は長手方向軸Xに平行な長手方向に動くことができる。具体的には、スリーブ13の近位方向への動きは、針17がハウジング11の遠位領域20から延びるのを可能にする。
【0034】
針17の挿入は、いくつかの機構を介して行われる。たとえば、針17はハウジング11に対して固定されて位置し、最初は延ばされたニードルスリーブ13内に位置する。患者の体に接してスリーブ13の遠位端を置き、遠位方向にハウジング11を動かすことによる、スリーブ13の近位への動きは、針17の遠位端を露出させることになる。このような相対的な動きによって、針17の遠位端が患者の体内に延びるのを可能にする。針17は、患者がスリーブ13に対してハウジング11を手動で動かすことによって手動で挿入するので、このような挿入は「手動」挿入と呼ばれる。
【0035】
挿入の別の形態は、「自動化された」ものであり、それによって針17はハウジング11に対して動く。このような挿入は、スリーブ13の動きによって、またはたとえばボタン22など、別の起動形態によってトリガされる。図1Aおよび図1Bに示されるように、ボタン22はハウジング11の近位端に位置する。しかし他の実施形態において、ボタン22はハウジング11の側部に位置することができる。
【0036】
他の手動または自動化機能として、薬物注射もしくは針の後退、またはその両方を挙げることができる。注射は、薬剤をシリンジから針17を通して押し込むために、栓またはピストン23がシリンジ(図示せず)内の近位位置からシリンジ内の遠位位置に動かされるプロセスである。いくつかの実施形態において、デバイス10が起動される前に、駆動ばね(図示せず)が圧縮される。駆動ばねの近位端は、ハウジング11の近位領域21内に固定され、駆動ばねの遠位端は、ピストン23の近位面に圧縮力を加えるように構成される。起動の後、駆動ばねに蓄積されたエネルギーの少なくとも一部は、ピストン23の近位面に加えられる。この圧縮力は、ピストン23に作用して、ピストン23を遠位方向へ動かすことができる。このような遠位への動きは、シリンジ内の液体薬剤を圧縮して針17の外に押し出すよう作用する。
【0037】
注射の後、針17をスリーブ13内またはハウジング11内に後退させることができる。後退は、使用者がデバイス10を患者の体から取り除く際に、スリーブ13が遠位に動くときに生じ得る。これは、針17がハウジング11に対して固定された位置に残る際に生じ得る。スリーブ13の遠位端が針17の遠位端を越えて動き、針17が覆われた後で、スリーブ13はロックされる。このようなロックは、ハウジング11に対するスリーブ13の任意の近位への動きをロックすることを含み得る。
【0038】
針の後退の別の形態は、針17がハウジング11に対して動かされる場合に生じ得る。このような動きは、ハウジング11内のシリンジが、ハウジング11に対して近位方向に動かされる場合に生じ得る。この近位への動きは、遠位領域20に位置する後退ばね(図示せず)を使用することで実現できる。圧縮された後退ばねは、起動されるときに、シリンジを近位方向に動かすために十分な力をシリンジに加えることができる。十分後退した後、針17とハウジング11との間の任意の相対的な動きは、ロッキング機構によってロックされる。さらに、ボタン22またはデバイス10の他の構成要素が、必要に応じてロックされる。
【0039】
図2Aは、第1の実施形態による、初期状態にある自動注射デバイス10の断面図である。
【0040】
例示を目的として、図2Aは自動注射デバイス10の一部のみを示す。自動注射デバイス10は、ハウジング11を含む。ハウジング11は、シリンジ18を含むように配置される。シリンジ18は、中空注射針17と、シリンジ18を封止してシリンジ18内に含まれる液体薬剤16を変位させるためのピストン、ストッパ、または栓23とを含む。ハウジング11は、近位端、および液体薬剤の注射中に注射部位に対して適用されることを意図された遠位端を含む。
【0041】
プランジャユニット19は、ピストン23とハウジング11の近位端との間に配置される。プランジャユニット19は、ねじ付ロッド要素28を受け入れて係合するためのねじ付内面を含む。ねじ付ロッド要素28は、プランジャユニット19とハウジングの近位端との間に配置される。
【0042】
図2Aに示されるように、初期状態にあるねじ付ロッド要素28は、プランジャユニット19に受け入れられ、それによってプランジャユニット19の内側キャビティを満たす。引っ張られた弾性要素24が、ねじ付ロッド要素28に固定される。弾性要素24は最初に引っ張られ、それによって第1の方向に回転する傾向を有する。本実施形態において、弾性要素24は、ねじ付ロッド要素28に巻きつけた螺旋ばねである。
【0043】
第1のロッキング要素25は、ハウジング11の近位端近くの、ねじ付ロッド要素28の第1の端部に設けられる。本実施形態において、第1のロッキング要素は、ねじ付ロッド要素28の第1の端部に配置された溝25である。第1のロッキング要素は、第2のロッキング要素26と解放可能に係合するように構成される。
【0044】
本実施形態において、第2のロッキング要素26は可動の突出部であり、溝25は突出部26によって解放可能に当接され、それによってねじ付ロッド要素28および引っ張られた螺旋ばね24を、初期状態において回転しないよう保持する。したがって溝25および可動の突出部26は、ねじ付ロッド要素28および螺旋ばね24を初期状態において回転しないように固定するための、ロッキング機構を形成する。
【0045】
図2Aに示される初期状態において、可動の突出部26は、溝25と係合する第1の位置にある。可動の突出部26は、第1の位置から第2の位置に動かすことによって溝25から係合解除でき、それは図3Aに図示される。
【0046】
図には示されないが、本実施形態において、手動操作を可能にするように可動の突出部が注射デバイス10のハウジングから突出する。換言すると、使用者は突出した第2のロッキング要素26を介して、突出部26を第1の位置から第2の位置まで動かすことができる。
【0047】
案内部材27が、プランジャユニット19を回転しないように固定するために、ハウジング11の内面に設けられる。本実施形態において、図2Aに示されるように、案内部材27は、ハウジング11の側壁にプランジャユニット19の突出部分と係合するよう配置された、細長いリブを含む。
【0048】
図2Bは、図2AのA−Aラインに沿った、図2Aの自動注射デバイスの断面図である。図2Bは、円筒形状のハウジング11が内部に引っ張られた螺旋ばね24を含んでいるのを示している。初期状態において、引っ張られた螺旋ばね24は、きつく巻かれてばねエネルギーを蓄積する。
【0049】
図3に対してさらなる詳細が説明されるように、引っ張られた弾性要素24、すなわち螺旋ばねは、ロッキング機構(すなわち溝25および可動の突出部26)が係合解除されると回転可能に解放され、弾性要素24を第1の方向に回転させる。本実施形態における第1の方向は、時計回りの方向である。
【0050】
図3Aは、第1の実施形態による、最終状態にある自動注射デバイス10の断面図である。
【0051】
図3Aは、ロッキング機構が係合解除されたとき、すなわち第2のロッキング要素26がねじ付ロッド要素28の第1のロッキング要素25から係合解除されたときの、自動注射デバイス10の構成を示し、ねじ付ロッド要素28は、回転可能に解放された弾性要素24によってもたらされた駆動力を受けて回転する。
【0052】
本実施形態において、螺旋ばね24およびねじ付ロッド要素28は、第1の方向、すなわち時計回りに回転するように配置される。ねじ付ロッド要素28が、螺旋ばね24からの駆動力を受けて時計回りに回転すると、プランジャユニット19は、ねじ付ロッド要素とプランジャユニット19のねじ付内面との間のねじ係合によって、ハウジングの遠位端に向かって並進運動する。案内部材27は、プランジャユニット19が回転するのを防止し、それによってプランジャユニット19がハウジングの遠位端に向かって軸方向に並進運動するのを促進する。
【0053】
プランジャユニット19のねじ付内面の内側におけるねじ付ロッドの回転が、プランジャユニット19を、ハウジング11の遠位端に向かって並進運動させ、それによってピストン23を押圧し、シリンジ18に含まれる液体薬剤を注射針17の外へ変位させる。自動注射デバイス10は、ピストン23がプランジャユニット19からの押圧力を受けてシリンジ18の端部に達し、シリンジ18内の液体薬剤を投薬して、最終状態に到達する。
【0054】
図3Bは、図3AのA−Aラインに沿った、図3Aの自動注射デバイスの断面図である。最終状態において、螺旋ばね24は巻きを解かれ、蓄積されたばねエネルギーは解放されている。図2Bおよび図3Bを比較すると、弾性要素24が時計回り(すなわち第1の方向)に回転可能に解放されたのを見ることができる。
【0055】
第1の実施形態による自動注射デバイス10の、操作のシーケンスは以下のとおりである:
初期状態において、ねじ付ロッド要素28はプランジャユニット19に受け入れられ、それによってプランジャユニット19の内側キャビティを満たす。プランジャユニット19は、回転しないように案内部材27によって固定され、ねじ付ロッド要素28は引っ張られた弾性要素24と共に、回転しないようにロッキング機構によって固定される。
注射をトリガするため、自動注射デバイス10を、患者の皮膚などの注射部位に対して押圧する。たとえば患者または介護者などの使用者が、手の全てで自動注射デバイス10を把持し、自動注射デバイス10の遠位端を注射部位に対して押圧する。
注射部位に対して押圧するとき、自動注射デバイス10の引き込み可能スリーブがハウジング11の中に後退し、中空注射針17が露出し、注射する準備が整う。針17が注射部位に挿入された後、突出部26は、第1の位置(図2Aに示される)から第2の位置(図3Aに示される)に動くよう、手動で操作される。突出部26は、ねじ付ロッド要素28の溝25から係合解除され、ねじ付ロッド要素28は、回転可能に解放された弾性要素24によってもたらされた駆動力を受けて回転する。
【0056】
ねじ付ロッド要素28が、弾性要素24からの駆動力を受けて時計回りに回転すると、プランジャユニット19は、ねじ付ロッド要素とプランジャユニット19のねじ付内面との間のねじ係合によって、ハウジング11の遠位端に向かって並進運動する。
【0057】
プランジャユニット19のねじ付内面の内側における、ねじ付ロッドの回転が、プランジャユニット19を、ハウジング11の遠位端に向かって並進運動させ、それによってピストン23を押圧し、シリンジ18に含まれる液体薬剤を注射針17の外へ変位させる。自動注射デバイス10は、ピストン23がプランジャユニット19からの押圧力を受けてシリンジ18の端部に達し、シリンジ18内の液体薬剤を患者に投薬して、最終状態に到達する。
【0058】
代替の実施形態において、案内部材はリブの代わりに、別の形状または形態で提供される。たとえば代替の実施形態において、案内部材は、プランジャユニットを回転させずに固定するために、ハウジングの内面に設けられた付属物であってもよい。
【0059】
代替の実施形態において、代替の弾性要素が螺旋ばねの代わりに設けられる。たとえばそのような実施形態において、ゴムバンドが弾性要素として使用される。
【0060】
代替の実施形態において、ロッキング機構は、ねじ付ロッド要素の第1の端部の代わりに、自動注射デバイスの別の箇所に設けられる。たとえばロッキング機構は、ハウジングの側面に設けられる。
【0061】
代替の実施形態において、第1および第2のロッキング要素は、他の構成で提供される。たとえばそのような実施形態において、第1のロッキング要素は、ねじ付ロッド要素の第1の端部に配置されたスロットであってよく、一方で第2のロッキング要素はフックである。この特定の代替実施形態において、フックが第1の向きにあるときにスロットと係合され、フックが第2の向きにあるときにスロットから係合解除される。さらに、フックを第1の向きから回転させることによって、第2の向きが実現される。
【0062】
特許請求の範囲が、本出願では特定の構成の組合せに対して構成されているが、本開示の範囲が、明示的もしくは暗黙的、もしくはそれらの任意の一般化のいずれかで、任意の請求項で現在請求している同じ発明に関するか否か、および本発明のように同じ技術的問題のいずれかもしくは全てを緩和するか否かにかかわらず、本明細書で開示された任意の新規の構成、または任意の新規の構成の組合せも含むことを理解されたい。本出願人はここで、このような構成および/または構成の組合せに対して、新しい特許請求の範囲が、本出願の手続き中、または本出願から派生する任意の別の出願の手続き中に構成される場合があることを、告示する。
【0063】
いくつかの実施形態が示され、説明されてきたが、特許請求の範囲でその範囲が規定された本発明の原理から逸脱することなく、これらの実施形態を変更できることを、当業者は理解されたい。
【0064】
用語「薬物」または「薬剤」は、本明細書において同意語として使用され、1つまたはそれ以上の医薬品有効成分または薬学的に許容されるその塩もしくは溶媒和物と、場合により、薬学的に許容される担体とを含む医薬製剤を示す。医薬品有効成分(「API」)とは、最も広範な言い方で、ヒトまたは動物に生物学的影響を及ぼす化学構造のことである。薬理学では、薬物または薬剤が、疾患の処置、治療、予防、または診断に使用され、またはそれとは別に、身体的または精神的健康を向上させるために使用される。薬物または薬剤は、限られた継続期間、または慢性疾患では定期的に、使用される。
【0065】
以下に説明されるように、薬物または薬剤は、1つまたはそれ以上の疾患を処置するための、様々なタイプの製剤の少なくとも1つのAPI、またはその組合せを含むことができる。APIの例としては、分子量が500Da以下である低分子;ポリペプチド、ペプチド、およびタンパク質(たとえばホルモン、成長因子、抗体、抗体フラグメント、および酵素);炭水化物および多糖類;ならびに核酸、二本鎖または一本鎖DNA(裸およびcDNAを含む)、RNA、アンチセンスDNAおよびRNAなどのアンチセンス核酸、低分子干渉RNA(siRNA)、リボザイム、遺伝子、およびオリゴヌクレオチドが含まれ得る。核酸は、ベクター、プラスミド、またはリポソームなどの分子送達システムに組み込まれる。1つまたはそれ以上の薬物の混合物もまた企図される。
【0066】
用語「薬物送達デバイス」は、薬物または薬剤をヒトまたは動物の体内に投薬するように構成されたあらゆるタイプのデバイスまたはシステムを包含するものである。それだけには限らないが、薬物送達デバイスは、注射デバイス(たとえばシリンジ、ペン型注射器、自動注射器、大容量デバイス、ポンプ、潅流システム、または眼内、皮下、筋肉内、もしくは血管内送達にあわせて構成された他のデバイス)、皮膚パッチ(たとえば、浸透圧性、化学的、マイクロニードル)、吸入器(たとえば鼻用または肺用)、埋め込み型デバイス(たとえば、薬物またはAPIコーティングされたステント、カプセル)、または胃腸管用の供給システムとすることができる。ここで説明される薬物は、たとえば24以上のゲージ数を有する、たとえば皮下針である針を含む注射デバイスでは特に有用であり得る。
【0067】
薬物または薬剤は、薬物送達デバイスで使用するように適用された主要パッケージまたは「薬物容器」内に含まれる。薬物容器は、たとえば、カートリッジ、シリンジ、リザーバ、または1つもしくはそれ以上の薬物の保存(たとえば短期または長期保存)に適したチャンバを提供するように構成された他の固体もしくは可撓性の容器とすることができる。たとえば、場合によって、チャンバは、少なくとも1日(たとえば1日から少なくとも30日まで)の間薬物を収納するように設計される。場合によって、チャンバは、約1ヶ月から約2年の間薬物を保存するように設計される。保存は、室温(たとえば約20℃)または冷蔵温度(たとえば約−4℃から約4℃まで)で行うことができる。場合によって、薬物容器は、投与予定の医薬製剤の2つまたはそれ以上の成分(たとえばAPIおよび希釈剤、または2つの異なるタイプの薬物)を別々に、各チャンバに1つずつ保存するように構成された二重チャンバカートリッジとすることができ、またはこれを含むことができる。そのような場合、二重チャンバカートリッジの2つのチャンバは、ヒトまたは動物の体内に投薬する前、および/または投薬中に2つまたはそれ以上の成分間で混合することを可能にするように構成される。たとえば、2つのチャンバは、これらが(たとえば2つのチャンバ間の導管によって)互いに流体連通し、所望の場合、投薬の前にユーザによって2つの成分を混合することを可能にするように構成される。代替的に、またはこれに加えて、2つのチャンバは、成分がヒトまたは動物の体内に投薬されているときに混合することを可能にするように構成される。
【0068】
本明細書において説明される薬物送達デバイス内に含まれる薬物または薬剤は、数多くの異なるタイプの医学的障害の処置および/または予防に使用される。障害の例としては、たとえば、糖尿病、または糖尿病性網膜症などの糖尿病に伴う合併症、深部静脈血栓塞栓症または肺血栓塞栓症などの血栓塞栓症が含まれる。障害の別の例としては、急性冠症候群(ACS)、狭心症、心筋梗塞、がん、黄斑変性症、炎症、枯草熱、アテローム性動脈硬化症および/または関節リウマチがある。APIおよび薬物の例としては、たとえば、それだけには限らないが、ハンドブックのRote Liste 2014、主グループ12(抗糖尿病薬物)または主グループ86(腫瘍薬物)、およびMerck Index、第15版などに記載されているものがある。
【0069】
1型もしくは2型の糖尿病、または1型もしくは2型の糖尿病に伴う合併症の処置および/または予防のためのAPIの例としては、インスリン、たとえばヒトインスリン、またはヒトインスリン類似体もしくは誘導体、グルカゴン様ペプチド(GLP−1)、GLP−1類似体もしくはGLP−1受容体アゴニスト、またはその類似体もしくは誘導体、ジペプチジルペプチダーゼ−4(DPP4)阻害剤、または薬学的に許容されるその塩もしくは溶媒和物、またはそれらの任意の混合物が含まれる。本明細書において使用される用語「類似体」および「誘導体」は、元の物質と構造的に十分に類似しており、それによって同様の機能または活性(たとえば治療効果性)を有することができる任意の物質を指す。特に、用語「類似体」は、天然のペプチドの構造、たとえばヒトのインスリンの構造から、天然のペプチド中に見出される少なくとも1つのアミノ酸残基を欠失させるおよび/もしくは交換することによって、ならびに/または少なくとも1つのアミノ酸残基を付加することによって式上で得られる分子構造を有するポリペプチドを指す。付加および/または交換されるアミノ酸残基は、コード可能なアミノ酸残基、または他の天然の残基もしくは完全に合成によるアミノ酸残基とすることができる。インスリン類似体は「インスリン受容体リガンド」とも呼ばれる。特に、用語「誘導体」は、1つまたはそれ以上の有機置換基(たとえば、脂肪酸)が1つまたはそれ以上のアミノ酸に結合している、天然のペプチドの構造、たとえばヒトのインスリンの構造から式上で得られる分子構造を有するポリペプチドを指す。場合により、天然のペプチド中に見出される1つまたはそれ以上のアミノ酸が、欠失され、かつ/もしくはコード不可能なアミノ酸を含む他のアミノ酸によって置換されていてもよく、または、コード不可能なアミノ酸を含むアミノ酸が、天然のペプチドに付加されていてもよい。
【0070】
インスリン類似体の例としては、Gly(A21),Arg(B31),Arg(B32)ヒトインスリン(インスリングラルギン);Lys(B3),Glu(B29)ヒトインスリン(インスリングルリジン);Lys(B28),Pro(B29)ヒトインスリン(インスリンリスプロ);Asp(B28)ヒトインスリン(インスリンアスパルト);B28位におけるプロリンがAsp、Lys、Leu、Val、またはAlaで置き換えられており、B29位において、LysがProで置換されているヒトインスリン;Ala(B26)ヒトインスリン;Des(B28−B30)ヒトインスリン;Des(B27)ヒトインスリンおよびDes(B30)ヒトインスリンがある。
【0071】
インスリン誘導体の例としては、たとえば、B29−N−ミリストイル−des(B30)ヒトインスリン;Lys(B29)(N−テトラデカノイル)−des(B30)ヒトインスリン(インスリンデテミル、Levemir(登録商標))、B29−N−パルミトイル−des(B30)ヒトインスリン;B29−N−ミリストイルヒトインスリン;B29−N−パルミトイルヒトインスリン;B28−N−ミリストイルLysB28ProB29ヒトインスリン;B28−N−パルミトイル−LysB28ProB29ヒトインスリン;B30−N−ミリストイル−ThrB29LysB30ヒトインスリン;B30−N−パルミトイル−ThrB29LysB30ヒトインスリン;B29−N−(N−パルミトイル−γ−グルタミル)−des(B30)ヒトインスリン;B29−N−ω−カルボキシヘプタデカノイル−γ−L−グルタミル−des(B30)ヒトインスリン(インスリンデグルデク、Tresiba(登録商標))、B29−N−(N−リトコリル−γ−グルタミル)−des(B30)ヒトインスリン;B29−N−(ω−カルボキシヘプタデカノイル)−des(B30)ヒトインスリン、およびB29−N−(ω−カルボキシヘプタデカノイル)ヒトインスリンがある。
【0072】
GLP−1、GLP−1類似体およびGLP−1受容体アゴニストの例としては、たとえば、リキシセナチド(Lyxumia(登録商標)、エキセナチド(エキセンディン−4、Dyetta(登録商標)、Bydureon(登録商標)、アメリカドクトカゲの唾液腺によって産生される39アミノ酸ペプチド)、リラグルチド(Victoza(登録商標))、セマグルチド、タスポグルチド、アルビグルチド(Syncria(登録商標))、デュラグルチド(Trulicity(登録商標))、rエキセンディン−4、CJC−1134−PC、PB−1023、TTP−054、ラングレナチド/HM−11260C、CM−3、GLP−1エリゲン(Eligen)、ORMD−0901、NN−9924、NN−9926、NN−9927、ノデキセン(Nodexen)、ビアドール(Viador)−GLP−1、CVX−096、ZYOG−1、ZYD−1、GSK−2374697、DA−3091、MAR−701、MAR709、ZP−2929、ZP−3022、TT−401、BHM−034、MOD−6030、CAM−2036、DA−15864、ARI−2651、ARI−2255、エキセナチド−XTENおよびグルカゴン−Xtenがある。
【0073】
オリゴヌクレオチドの例としては、たとえば:家族性高コレステロール血症の処置のためのコレステロール低下アンチセンス治療薬である、ミポメルセンナトリウム(Kynamro(登録商標))がある。
【0074】
DPP4阻害剤の例としては、ビルダグリプチン、シタグリプチン、デナグリプチン、サキサグリプチン、ベルベリンがある。
【0075】
ホルモンの例としては、ゴナドトロピン(フォリトロピン、ルトロピン、コリオンゴナドトロピン、メノトロピン)、ソマトロピン(ソマトロピン)、デスモプレシン、テルリプレシン、ゴナドレリン、トリプトレリン、ロイプロレリン、ブセレリン、ナファレリン、およびゴセレリンなどの、脳下垂体ホルモンまたは視床下部ホルモンまたは調節性活性ペプチドおよびそれらのアンタゴニストが含まれる。
【0076】
多糖類の例としては、グルコサミノグリカン、ヒアルロン酸、ヘパリン、低分子量ヘパリン、もしくは超低分子量ヘパリン、またはそれらの誘導体、または上述の多糖類の硫酸化形態、たとえば、ポリ硫酸化形態、および/または、薬学的に許容されるそれらの塩が含まれる。ポリ硫酸化低分子量ヘパリンの薬学的に許容される塩の例としては、エノキサパリンナトリウムがある。ヒアルロン酸誘導体の例としては、ハイランG−F20(Synvisc(登録商標))、ヒアルロン酸ナトリウムがある。
【0077】
本明細書において使用する用語「抗体」は、免疫グロブリン分子またはその抗原結合部分を指す。免疫グロブリン分子の抗原結合部分の例には、抗原を結合する能力を保持するF(ab)およびF(ab’)フラグメントが含まれる。抗体は、ポリクローナル、モノクローナル、組換え型、キメラ型、非免疫型またはヒト化、完全ヒト型、非ヒト型(たとえばネズミ)、または一本鎖抗体とすることができる。いくつかの実施形態では、抗体はエフェクター機能を有し、補体を固定することができる。いくつかの実施形態では、抗体は、Fc受容体と結合する能力が低く、または結合することはできない。たとえば、抗体は、アイソタイプもしくはサブタイプ、抗体フラグメントまたは変異体とすることができ、これはFc受容体との結合を支持せず、たとえば、突然変異した、または欠失したFc受容体結合領域を有する。用語の抗体はまた、四価二重特異性タンデム免疫グロブリン(TBTI)および/または交差結合領域の配向性を有する二重可変領域抗体様結合タンパク質(CODV)に基づく抗体結合分子を含む。
【0078】
用語「フラグメント」または「抗体フラグメント」は、全長抗体ポリペプチドを含まないが、抗原と結合することができる全長抗体ポリペプチドの少なくとも一部分を依然として含む、抗体ポリペプチド分子(たとえば、抗体重鎖および/または軽鎖ポリペプチド)由来のポリペプチドを指す。抗体フラグメントは、全長抗体ポリペプチドの切断された部分を含むことができるが、この用語はそのような切断されたフラグメントに限定されない。本発明に有用である抗体フラグメントは、たとえば、Fabフラグメント、F(ab’)2フラグメント、scFv(一本鎖Fv)フラグメント、直鎖抗体、単一特異性抗体フラグメント、または二重特異性、三重特異性、四重特異性および多重特異性抗体(たとえば、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ)などの多重特異性抗体フラグメント、一価抗体フラグメント、または二価、三価、四価および多価抗体などの多価抗体フラグメント、ミニボディ、キレート組換え抗体、トリボディまたはバイボディ、イントラボディ、ナノボディ、小モジュラー免疫薬(SMIP)、結合ドメイン免疫グロブリン融合タンパク質、ラクダ化抗体、およびVHH含有抗体を含む。抗原結合抗体フラグメントのさらなる例が当技術分野で知られている。
【0079】
用語「相補性決定領域」または「CDR」は、特異的抗原認識を仲介する役割を主に担う重鎖および軽鎖両方のポリペプチドの可変領域内の短いポリペプチド配列を指す。用語「フレームワーク領域」は、CDR配列ではなく、CDR配列の正しい位置決めを維持して抗原結合を可能にする役割を主に担う重鎖および軽鎖両方のポリペプチドの可変領域内のアミノ酸配列を指す。フレームワーク領域自体は、通常、当技術分野で知られているように、抗原結合に直接的に関与しないが、特定の抗体のフレームワーク領域内の特定の残基が、抗原結合に直接的に関与することができ、またはCDR内の1つまたはそれ以上のアミノ酸が抗原と相互作用する能力に影響を与えることができる。
【0080】
抗体の例としては、アンチPCSK−9mAb(たとえばアリロクマブ)、アンチIL−6mAb(たとえばサリルマブ)、およびアンチIL−4mAb(たとえばデュピルマブ)がある。
【0081】
本明細書において説明される任意のAPIの薬学的に許容される塩もまた、薬物送達デバイスにおける薬物または薬剤の使用に企図される。薬学的に許容される塩は、たとえば酸付加塩および塩基性塩である。
【0082】
API、形成、装置、方法、システム、および本明細書で説明した実施形態の様々な構成要素の変更(追加および/または除外)が、このような変更および全てのその均等物を包含する本発明の全範囲および趣旨から逸脱することなく成されることを、当業者は理解するであろう。
図1A
図1B
図2A
図2B
図3A
図3B