特許第6871252号(P6871252)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6871252組織優先的プロモーターおよびその使用方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6871252
(24)【登録日】2021年4月19日
(45)【発行日】2021年5月12日
(54)【発明の名称】組織優先的プロモーターおよびその使用方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/82 20060101AFI20210426BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20210426BHJP
   A01H 5/00 20180101ALI20210426BHJP
   A01H 6/46 20180101ALI20210426BHJP
   A01H 6/54 20180101ALI20210426BHJP
   A01H 6/60 20180101ALI20210426BHJP
   A01H 6/20 20180101ALI20210426BHJP
   A01H 5/10 20180101ALI20210426BHJP
   A01H 1/00 20060101ALI20210426BHJP
【FI】
   C12N15/82 122Z
   C12N5/10ZNA
   A01H5/00 A
   A01H6/46
   A01H6/54
   A01H6/60
   A01H6/20
   A01H5/10
   A01H1/00 A
【請求項の数】39
【全頁数】75
(21)【出願番号】特願2018-532705(P2018-532705)
(86)(22)【出願日】2016年8月26日
(65)【公表番号】特表2018-537994(P2018-537994A)
(43)【公表日】2018年12月27日
(86)【国際出願番号】US2016049128
(87)【国際公開番号】WO2017112006
(87)【国際公開日】20170629
【審査請求日】2019年8月6日
(31)【優先権主張番号】62/271,230
(32)【優先日】2015年12月22日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500207899
【氏名又は名称】パイオニア ハイ−ブレッド インターナショナル, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】ダ シルバ コンセイソン, アレクサンドル
(72)【発明者】
【氏名】ゴードン−カム, ウィリアム ジェイムズ
(72)【発明者】
【氏名】クライン, セオドア ミッチェル
(72)【発明者】
【氏名】ラ ロータ, カルロス エム.
(72)【発明者】
【氏名】ロウ, キース エス.
【審査官】 平林 由利子
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2015/0096083(US,A1)
【文献】 国際公開第2013/005152(WO,A1)
【文献】 国際公開第03/008540(WO,A1)
【文献】 国際公開第2015/066636(WO,A1)
【文献】 国際公開第2015/066638(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00−15/90
C12N 1/00− 7/08
A01H 1/00−17/00
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号1のヌクレオチド配列を有する組織優先的調節エレメントを含む発現カセットであって、該調節エレメントが、胚の胚盤上皮、葉の表皮のアクセサリー細胞およびコルク細胞、並びに毛および毛先端において、目的の異種ポリヌクレオチドの発現をもたらす目的の異種ポリヌクレオチドに作動可能に連結している、発現カセット。
【請求項2】
前記発現カセットが、さらに、目的の遺伝子を含む、請求項1に記載の発現カセット。
【請求項3】
請求項2に記載の発現カセットを含むベクター。
【請求項4】
請求項2に記載の発現カセットを含む植物細胞。
【請求項5】
前記発現カセットの目的の異種ポリヌクレオチドが転写因子をコードする、請求項4に記載の植物細胞。
【請求項6】
前記転写因子が、植物代謝、器官の成長、幹細胞の成長、細胞の増殖刺激、器官形成、体細胞胚形成開始、または頂端分裂組織の成長に関与する、請求項5に記載の植物細胞。
【請求項7】
植物代謝、器官の成長、幹細胞の成長、細胞の増殖刺激、器官形成、体細胞胚形成開始、または頂端分裂組織の成長に関与する前記転写因子が、Wuschel(WUS)、BABYBOOM(ODP2(BBM))、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項6に記載の植物細胞。
【請求項8】
前記発現カセットの目的の遺伝子が、乾燥耐性、寒冷抵抗性、除草剤耐性、病原体耐性、または昆虫耐性を付与する遺伝子産物をコードする、請求項4に記載の植物細胞。
【請求項9】
前記発現カセットの目的の異種ポリヌクレオチドが、前記植物細胞において一時的に発現する、請求項4に記載の植物細胞。
【請求項10】
前記発現カセットの目的の遺伝子が、前記植物細胞のゲノムに安定的に組み込まれている、請求項4に記載の植物細胞。
【請求項11】
前記植物細胞が、単子葉植物または双子葉植物である、請求項4に記載の植物細胞。
【請求項12】
前記単子葉植物または双子葉植物が、トウモロコシ、ソルガム、イネ、ダイズ、コムギ、ワタ、およびアブラナ属(Brassica)からなる群から選択される、請求項11に記載の植物細胞。
【請求項13】
請求項2に記載の発現カセットを含む植物。
【請求項14】
前記発現カセットの目的の異種ポリヌクレオチドが、転写因子をコードする、請求項13に記載の植物。
【請求項15】
前記転写因子が、植物代謝、器官の成長、幹細胞の成長、細胞の増殖刺激、器官形成、体細胞胚形成開始、または頂端分裂組織の成長に関与する、請求項14に記載の植物。
【請求項16】
植物代謝、器官の成長、幹細胞の成長、細胞の増殖刺激、器官形成、体細胞胚形成開始、または頂端分裂組織の成長に関与する前記転写因子が、Wuschel(WUS)、BABYBOOM(ODP2(BBM))、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項15に記載の植物。
【請求項17】
前記発現カセットの目的の遺伝子が、乾燥耐性、寒冷抵抗性、除草剤耐性、病原体耐性、または昆虫耐性を付与する遺伝子産物をコードする、請求項13に記載の植物。
【請求項18】
前記発現カセットの目的の異種ポリヌクレオチドが、前記植物細胞において一時的に発現する、請求項13に記載の植物。
【請求項19】
前記発現カセットの目的の遺伝子が、前記植物細胞のゲノムに安定的に組み込まれている、請求項13に記載の植物。
【請求項20】
前記植物が、単子葉植物または双子葉植物である、請求項13に記載の植物。
【請求項21】
前記単子葉植物または双子葉植物が、トウモロコシ、ソルガム、イネ、ダイズ、コムギ、ワタ、およびアブラナ属(Brassica)からなる群から選択される、請求項20に記載の植物。
【請求項22】
前記発現カセットの目的の遺伝子を含む、請求項19に記載の植物の種子。
【請求項23】
植物または植物細胞中でポリヌクレオチドを発現する方法であって、組織優先的調節エレメントに作動可能に連結している目的の異種ポリヌクレオチドを含む発現カセットを前記植物また植物細胞に導入することを含み、該調節エレメントが、配列番号1のヌクレオチド配列を含み、該調節エレメントが、胚の胚盤上皮、葉の表皮のアクセサリー細胞およびコルク細胞、並びに毛および毛先端において、目的の異種ポリヌクレオチドの発現をもたらす目的の異種ポリヌクレオチドに作動可能に連結している、方法。
【請求項24】
前記発現カセットが、さらに、目的の遺伝子を含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記発現カセットの目的の異種ポリヌクレオチドが転写因子をコードする、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記転写因子が、植物代謝、器官の成長、幹細胞の成長、細胞の増殖刺激、器官形成、体細胞胚形成開始、または頂端分裂組織の成長に関与する、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
植物代謝、器官の成長、幹細胞の成長、細胞の増殖刺激、器官形成、体細胞胚形成開始、または頂端分裂組織の成長に関与する前記転写因子が、Wuschel(WUS)、BABYBOOM(ODP2(BBM))、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記発現カセットの目的の遺伝子が、乾燥耐性、寒冷抵抗性、除草剤耐性、病原体耐性、または昆虫耐性を付与する遺伝子産物をコードする、請求項24に記載の方法。
【請求項29】
前記発現カセットの目的の異種ポリヌクレオチドが、前記植物または前記植物細胞において一時的に発現する、請求項24に記載の方法。
【請求項30】
前記発現カセットの目的の遺伝子が、前記植物または前記植物細胞のゲノムに安定的に組み込まれている、請求項24に記載の方法。
【請求項31】
前記植物または前記植物細胞が、単子葉植物または双子葉植物である、請求項24に記載の方法。
【請求項32】
前記単子葉植物または双子葉植物が、トウモロコシ、ソルガム、イネ、ダイズ、コムギ、ワタ、およびアブラナ属(Brassica)からなる群から選択される、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
植物または植物細胞中で目的のポリヌクレオチドを発現させる方法であって、組織優先的調節エレメントに作動可能に連結している目的の異種ポリヌクレオチドを含む発現カセットを前記植物また植物細胞に導入することを含み、該調節エレメントが、配列番号1のヌクレオチド配列を含み、
該調節エレメントが、胚の胚盤上皮、葉の表皮のアクセサリー細胞およびコルク細胞、並びに毛および毛先端において、目的の異種ポリヌクレオチドの発現をもたらす目的の異種ポリヌクレオチドに作動可能に連結しており、
前記発現カセットの目的の異種ポリヌクレオチドが、植物代謝、器官の成長、幹細胞の成長、細胞の増殖刺激、器官形成、体細胞胚形成開始、または頂端分裂組織の成長に関与する転写因子をコードし、
植物代謝、器官の成長、幹細胞の成長、細胞の増殖刺激、器官形成、体細胞胚形成開始、または頂端分裂組織の成長に関与する前記転写因子が、Wuschel(WUS)、BABYBOOM(ODP2(BBM))、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、方法。
【請求項34】
前記発現カセットが、さらに、目的の遺伝子を含む、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記発現カセットの目的の遺伝子が、乾燥耐性、寒冷抵抗性、除草剤耐性、病原体耐性、または昆虫耐性を付与する遺伝子産物をコードする、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記発現カセットの目的の異種ポリヌクレオチドが、前記植物または前記植物細胞において一時的に発現する、請求項34に記載の方法。
【請求項37】
前記発現カセットの目的の遺伝子が、前記植物または前記植物細胞のゲノムに安定的に組み込まれている、請求項34に記載の方法。
【請求項38】
前記植物または前記植物細胞が、単子葉植物または双子葉植物である、請求項34に記載の方法。
【請求項39】
前記単子葉植物または双子葉植物が、トウモロコシ、ソルガム、イネ、ダイズ、コムギ、ワタ、およびアブラナ属(Brassica)からなる群から選択される、請求項38に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2015年12月22日に出願された米国仮特許出願第62/271230号の優先権を主張するものであり、その内容は全て参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
電子的に提出された配列表の参照
配列表の正式な写しは、2016年8月23日作成の「20160826_6870WOPCT_SeqList.txt」のファイル名を備え、162キロバイトのサイズを有するASCIIフォーマットの配列表としてEFS−Webを介して電子的に提出され、本明細書と同時に提出されている。このASCIIフォーマットの文書内に含まれる配列表は、本明細書の一部であり、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0003】
本開示は植物分子生物学の分野に関し、より詳しくは、植物の遺伝子発現の調節に関する。
【背景技術】
【0004】
植物宿主の異種DNA配列の発現は、植物宿主内で機能する作動可能に連結している調節要素の存在に依存している。プロモーター配列の選択は、異種DNA配列が生物内で何時何処で発現するかを決定するであろう。特定の組織または器官での発現が望まれる場合、組織優先的プロモーターを使用し得る。刺激に反応した遺伝子発現が望まれる場合、誘導性プロモーターが調節エレメントとして選択される。対照的に、植物の細胞全体で継続的な発現が望まれる場合、構成的プロモーターが使用される。コアプロモーター配列の上流および/または下流の付加的調節配列が、トランスジェニック植物などの植物の異種ヌクレオチド配列の発現レベルを変えるために、形質転換ベクターの発現コンストラクトに含有させることができる。
【0005】
植物の特定の組織または器官のDNA配列を発現させることが望ましい場合がよくある。例えば、細胞の増殖を促進する、形態形成遺伝子に作動可能に連結している組織優先的プロモーターの使用は、形質転換プロセスにおけるトランスジェニックイベントの効率的な回収に有用である。そのような組織優先的プロモーターはまた、植物の収穫量や病原体に対する耐性を増強するため、所望の植物組織において形質遺伝子および/または病原体耐性タンパク質を発現させるのに有用である。あるいは、所望の表現型を得るため、植物組織で天然DNA配列の発現を阻害することが望ましい場合もあろう。この場合、そのような阻害は、アンチセンス配列の発現が、天然DNA配列のmRNAの翻訳を妨げるRNAの転写産物を産生するように、アンチセンスヌクレオチド配列に作動可能に結合した組織優先型プロモーターを含む植物の形質転換によって行われ得るであろう。
【0006】
さらに、例えば細胞分化または細胞伸長などの、特定の成長または発達段階にある植物組織でDNA配列を発現させることが望ましいこともあり得る。そのようなDNA配列は、植物の成長プロセスを促進または阻害し、それによって植物の成長速度または構造に影響を及ぼすために使用され得る。
【0007】
組織優先的プロモーター、特に成長促進遺伝子の発現を制御する調節エレメントとして機能し得るプロモーターの単離および特徴付けが求められている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
植物の遺伝子発現を調節するための組成および方法が提供される。組成物は、受粉前、受粉中および受粉後に組織で活性を有するプロモーターのための新規なヌクレオチド配列を含む。より詳しくは、プロモーターは組織優先的発現を付与する。より詳しくは、本明細書において、PLTPプロモーターが提供される。本開示のいくつかの態様は、配列番号1〜27の少なくとも1つに記載のヌクレオチド配列、および配列番号1〜27の少なくとも1つに記載のヌクレオチド配列の断片を含む。また、作動可能に連結したヌクレオチド配列の組織優先的発現を駆動する、配列番号1〜27の少なくとも1つに記載の配列の機能的断片も含まれる。本開示の態様はまた、目的の異種ヌクレオチド配列に作動可能に連結した、PLTPプロモーターなどのプロモーターを含むDNAコンストラクトであって、プロモーターが植物細胞のヌクレオチド配列の発現を駆動することができ、かつ本明細書に開示のヌクレオチド配列の1つを含むDNAコンストラクトを含む。本開示の態様はさらに、上記のDNAコンストラクトをゲノム中に安定に導入した発現ベクター、および植物体または植物細胞を提供する。さらに、組成物は、そのような植物体の種子を含む。
【0009】
さらなる態様は、植物体中でヌクレオチド配列を選択的に発現する方法であって、植物細胞をDNAコンストラクトで形質転換する工程と、前記植物細胞から形質転換された植物体を再生する工程とを含み、前記DNAコンストラクトは、PLTPプロモーターなどの本開示のプロモーターと、プロモーターに作動可能に連結した異種ヌクレオチド配列とを含み、プロモーターは、胚および葉細胞などの特定の組織または細胞種ヌクレオチド配列の転写を開始するが、根、雄穂および未成熟雌穂などの器官では発現しない方法を含む。このように、プロモーターは、組織優先的方法で、作動可能に連結したコード配列の発現の制御に有用である。
【0010】
プロモーターの転写開始領域の下流に、植物の表現型を改変する目的の配列が位置している。そのような改変には、植物の新しいもしくは変更した機能もしくは産物を提供するための、内因性産物生成の量、相対分布などの調節、または外因性発現産物の生成の調節が含まれる。例えば、除草剤、塩、寒冷、乾燥、病原体、線虫または昆虫に対する抵抗性または耐性を付与する遺伝子産物をコードする異種ヌクレオチド配列が包含される。
【0011】
さらなる態様では、安定に形質転換された植物における遺伝子の発現を調節する方法であって、(a)少なくとも1つのヌクレオチド配列に作動可能に結合した本開示のプロモーターを含むDNAコンストラクトで植物細胞を形質転換する工程と;(b)植物成長条件下で植物を成長させる工程と;(c)植物細胞から安定に形質転換された植物を再生する工程であって、連結したヌクレオチド配列の発現がその植物の表現型を変える工程とを含む方法が提供される。
【0012】
一態様において、本開示は、(a)配列番号1〜27の少なくとも1つに対し少なくとも70%の同一性を有する配列、(b)配列番号1〜27の少なくとも1つのヌクレオチド配列の断片もしくは多様体(ここで、配列は植物細胞で転写を開始する)、(c)(a)または(b)のポリヌクレオチドに相補的なポリヌクレオチド、および(d)配列番号1〜27の少なくとも1つからなる群から選択される配列の少なくとも100個の連続するヌクレオチドを含むポリヌクレオチドからなる群から選択されるヌクレオチド配列を有する組織優先的調節エレメントを含み、その調節エレメントは目的の異種ポリヌクレオチドに作動可能に連結している核酸分子を提供する。一態様において、組織優先的調節エレメントを含む本開示の核酸分子の調節エレメントを含む発現カセットが提供される。一態様において、発現カセットを含むベクターが提供される。一態様において、発現カセットを含む植物細胞が提供される。一態様において、発現カセットは、植物細胞のゲノムに安定に組み込まれる。一態様において、発現カセットは、植物細胞において一時的に発現する。一態様において、植物細胞は、単子葉植物または双子葉植物由来のものである。一態様において、単子葉植物または双子葉植物は、トウモロコシ、ソルガム、イネ、ダイズ、コムギ、ワタおよびアブラナ属(Brassica)からなる群から選択される。一態様において、発現カセットを含む植物が提供される。一態様において、植物は、単子葉植物または双子葉植物である。一態様において、単子葉植物または双子葉植物は、トウモロコシ、ソルガム、イネ、ダイズ、コムギ、ワタおよびアブラナ属(Brassica)からなる群から選択される。一態様において、発現カセットは、植物のゲノムに安定に組み込まれる。一態様において、発現カセットは、植物細胞において一時的に発現する。一態様において、発現カセットを含む、植物の種子が提供される。一態様において、目的の異種ポリヌクレオチドは、転写因子をコードする。一態様において、異種ポリヌクレオチドは、乾燥耐性、寒冷抵抗性、除草剤耐性、病原体耐性または昆虫耐性を付与する遺伝子産物をコードする。一態様において、目的の異種ポリヌクレオチドは、乾燥耐性、寒冷抵抗性、除草剤耐性、病原体耐性または昆虫耐性を付与する遺伝子産物をコードする。一態様において、異種ポリヌクレオチドは、植物代謝、器官の成長、幹細胞の成長、細胞の増殖刺激、器官形成、体細胞胚形成開始および頂端分裂組織の成長に関与する遺伝子産物をコードする。一態様において、異種ポリヌクレオチドは、植物代謝、器官の成長、幹細胞の成長、細胞の増殖刺激、器官形成、体細胞胚形成開始および頂端分裂組織の成長に関与する遺伝子産物をコードする。一態様において、異種ポリヌクレオチドは、WUSまたはODP2(BBM)である。一態様において、ポリヌクレオチドの発現は、前記植物の表現型を変える。一態様において、プロモーター活性を有する機能的断片を含む組み換えポリヌクレオチドを含み、その断片は配列番号1〜27の少なくとも1つからなる群から選択されるヌクレオチド配列由来のものである発現カセットが提供される。一態様において、調節エレメントは胚で発現する。一態様において、調節エレメントが葉で発現する植物細胞が提供される。一態様において、調節エレメントが胚および葉で発現する植物細胞が提供される。
【0013】
さらなる態様において、本開示は、植物または植物細胞中でポリヌクレオチドを発現する方法であって、調節エレメントを含む発現カセットを植物または植物細胞に導入することを含み、調節エレメントは、(a)配列番号1〜27の少なくとも1つのヌクレオチド配列、または配列番号1〜27の少なくとも1つに対し少なくとも70%の同一性を有する配列を含むヌクレオチド配列、(b)配列番号1〜27の少なくとも1つのヌクレオチド配列の断片または多様体を含むヌクレオチド配列(ここで、配列は植物細胞で転写を開始する)、および(c)(a)または(b)に相補的なヌクレオチド配列からなる群から選択されるヌクレオチド配列を含む方法を提供する。一態様において、調節エレメントは異種ポリヌクレオチドと作動可能に結合している。一態様において、目的の異種ポリヌクレオチドは、乾燥耐性、植物代謝、器官の成長、幹細胞の成長、細胞の増殖刺激、器官形成、体細胞胚形成開始および頂端分裂組織の成長に関与する遺伝子産物をコードする。一態様において、遺伝子産物は、非生物的ストレス耐性に関与している。一態様において、目的の異種ポリヌクレオチドは、乾燥耐性、寒冷抵抗性、除草剤耐性、病原体耐性または昆虫耐性を付与する遺伝子産物をコードする。一態様において、植物は、単子葉植物または双子葉植物である。一態様において、単子葉植物または双子葉植物は、トウモロコシ、ソルガム、イネ、ダイズ、コムギ、ワタおよびアブラナ属(Brassica)からなる群から選択される。
【0014】
さらなる態様において、本開示は、植物中で目的のポリヌクレオチドを発現させる方法であって、目的のポリヌクレオチドの発現を増大させることができる異種調節エレメントを植物細胞に導入することを含み、異種調節エレメントは、(a)配列番号1〜27の少なくとも1つのヌクレオチド配列を含むヌクレオチド配列、または配列番号1〜27の少なくとも1つに対し少なくとも95%の同一性を有する配列、(b)配列番号1〜27の少なくとも1つのヌクレオチド配列の少なくとも100bpの断片を含むヌクレオチド配列(ここで、ヌクレオチド配列は植物細胞で転写を開始する)、および(c)(a)または(b)に相補的なヌクレオチド配列からなる群から選択されるポリヌクレオチド配列を含む方法を提供する。一態様において、目的の異種ポリヌクレオチドは、器官の成長、幹細胞の成長、細胞の増殖刺激、器官形成、体細胞胚形成開始、頂端分裂組織の成長、およびこれらの組み合わせに関与するポリペプチドをコードする。一態様において、目的のポリヌクレオチドは、植物の内因性遺伝子である。一態様において、目的のポリヌクレオチドは、乾燥耐性、寒冷抵抗性、除草剤耐性、病原体耐性または昆虫耐性を付与するポリペプチドをコードする。一態様において、植物は、単子葉植物または双子葉植物である。一態様において、単子葉植物または双子葉植物は、トウモロコシ、ソルガム、イネ、ダイズ、コムギ、ワタおよびアブラナ属(Brassica)からなる群から選択される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、落射蛍光実体顕微鏡下のトウモロコシの未成熟胚の縦断面(一番下に胚軸、上に胚盤を有する)を示す。PLTP PRO::Zs−GREEN1::pinIIを発現する胚において、胚盤の表面の細胞で緑色の強い蛍光が観察された。
図2図2Aおよび図2Bは、ZS−GREEN1蛍光タンパク質の発現を駆動するトウモロコシのPLTPプロモーターを有するトランスジェニックカセットを含む植物におけるトウモロコシの葉の表皮を示す。2つの細胞種、気孔の孔辺細胞の側方に位置するアクセサリー細胞(図2A中、矢印で示す)および短細胞(コルク細胞とも呼ばれる、図2B中、矢印で示す)のみで蛍光が観察された。複合落射蛍光顕微鏡で撮像した。
図3図3は、PLTP PRO::ZS−GREEN1::pinIIを発現したトウモロコシ植物体の毛(silk hair)で緑色の蛍光が観察されたことを示す。落射蛍光実体顕微鏡で撮像した。
図4図4は、NOS PRO::ZM−WUS2::ZM−IN2−1 TERM+ZM−PLTP PRO::ZM−ODP2::OS−T28 TERM+ZM−PLTP PRO::ZS−GREEN1::PINII TERMを含むT−DNAで形質転換された接合未熟胚表面の多くの個々の成長中の体細胞胚で緑色の蛍光が観察されたことを示す。落射蛍光実体顕微鏡で撮像した。
図5図5は、天然プロモーター(ZM−PLTP)(配列番号1)による内因性トウモロコシリン脂質輸送タンパク質遺伝子の発現を示す。超並列末端固有配列解析(MPSS)に基づく転写レベルを、千万分率(PPTM)で示す。
図6図6は、天然プロモーター(ZM−PLTP1)(配列番号3)による内因性トウモロコシリン脂質輸送タンパク質ホモログ1遺伝子の発現を示す。超並列末端固有配列解析(MPSS)に基づく転写レベルを、千万分率(PPTM)で示す。
図7図7は、天然プロモーター(ZM−PLTP2)(配列番号4)による内因性トウモロコシリン脂質輸送タンパク質ホモログ2遺伝子の発現を示す。超並列末端固有配列解析(MPSS)に基づく転写レベルを、千万分率(PPTM)で示す。
図8図8は、天然プロモーター(ZM−FBP)(配列番号10)による内因性トウモロコシフルクトース−1,6−ビスホスファターゼタンパク質遺伝子の発現を示す。超並列末端固有配列解析(MPSS)に基づく転写レベルを、千万分率(PPTM)で示す。
図9図9は、天然プロモーター(ZM−RFP)(配列番号11)による内因性トウモロコシロスマン・フォールドNAD(P)結合ドメイン含有タンパク質遺伝子の発現を示す。超並列末端固有配列解析(MPSS)に基づく転写レベルを、千万分率(PPTM)で示す。
図10図10は、天然プロモーター(ZM−APMP)(配列番号12)による内因性トウモロコシアジポサイトプラズマ膜結合タンパク質様タンパク質遺伝子の発現を示す。超並列末端固有配列解析(MPSS)に基づく転写レベルを、千万分率(PPTM)で示す。
図11図11は、天然プロモーター(ZM−RfeSP)(配列番号13)による内因性トウモロコシRieske[2Fe−2S]鉄・硫黄ドメインタンパク質遺伝子の発現を示す。超並列末端固有配列解析(MPSS)に基づく転写レベルを、千万分率(PPTM)で示す。
図12図12は、天然プロモーター(ZM−CRR6)(配列番号14)による内因性トウモロコシクロロレスピラトリー還元6(Chlororespiratory reduction 6)遺伝子の発現を示す。超並列末端固有配列解析(MPSS)に基づく転写レベルを、千万分率(PPTM)で示す。
図13図13は、天然プロモーター(ZM−G3K)(配列番号15)による内因性トウモロコシD−グリセリン酸3−キナーゼ遺伝子の発現を示す。超並列末端固有配列解析(MPSS)に基づく転写レベルを、千万分率(PPTM)で示す。
図14図14は、天然プロモーター(ZM−CAB7)(配列番号16)による内因性トウモロコシクロロフィルa−b結合タンパク質7遺伝子の発現を示す。超並列末端固有配列解析(MPSS)に基づく転写レベルを、千万分率(PPTM)で示す。
図15図15は、天然プロモーター(ZM−UBR)(配列番号17)による内因性トウモロコシ紫外線B抑制性タンパク質遺伝子の発現を示す。超並列末端固有配列解析(MPSS)に基づく転写レベルを、千万分率(PPTM)で示す。
図16図16は、天然プロモーター(ZM−HBP)(配列番号18)による内因性トウモロコシSoulヘム結合ファミリータンパク質遺伝子の発現を示す。超並列末端固有配列解析(MPSS)に基づく転写レベルを、千万分率(PPTM)で示す。
図17図17は、天然プロモーター(ZM−PS1−N)(配列番号19)による内因性トウモロコシ光科学系I反応中心サブユニットpsi−Nタンパク質遺伝子の発現を示す。超並列末端固有配列解析(MPSS)に基づく転写レベルを、千万分率(PPTM)で示す。
図18図18は、天然プロモーター(ZM−SDR)(配列番号20)による内因性トウモロコシ短鎖デヒドロゲナーゼ/レダクターゼ遺伝子の発現を示す。超並列末端固有配列解析(MPSS)に基づく転写レベルを、千万分率(PPTM)で示す。
図19図19は、天然プロモーター(ZM−UBI)(配列番号31)による内因性トウモロコシユビキチン遺伝子の発現を示す。超並列末端固有配列解析(MPSS)に基づく転写レベルを、千万分率(PPTM)で示す。
図20図20は、天然プロモーター(ZM−LGL PRO)(配列番号25)による内因性トウモロコシ乳酸グルタチオンリアーゼ遺伝子の発現を示す。超並列末端固有配列解析(MPSS)に基づく転写レベルを、千万分率(PPTM)で示す。
図21図21は、天然プロモーター(ZM−LEA14−A PRO)(配列番号26)による内因性トウモロコシ後期胚発生蓄積タンパク質Lea−14−A遺伝子の発現を示す。超並列末端固有配列解析(MPSS)に基づく転写レベルを、千万分率(PPTM)で示す。
図22図22は、天然プロモーター(ZM−LEA34−D PRO)(配列番号27)による内因性トウモロコシ後期胚発生蓄積タンパク質Lea34−D遺伝子の発現を示す。超並列末端固有配列解析(MPSS)に基づく転写レベルを、千万分率(PPTM)で示す。
図23図23は、天然プロモーター(ZM−EF1A)(配列番号32)による内因性ダイズ伸長因子1A遺伝子の発現を示す。超並列末端固有配列解析(MPSS)に基づく転写レベルを、千万分率(PPTM)で示す。
図24図24は、天然プロモーター(ZM−LTP3)(配列番号21)による内因性ダイズ脂質輸送タンパク質3遺伝子の発現を示す。超並列末端固有配列解析(MPSS)に基づく転写レベルを、千万分率(PPTM)で示す。
図25図25は、5種のプロモーター、すなわち、Gm−フィトクロムP450プロモーター(P450 PRO);Gm−グリコシルヒドロラーゼプロモーター(GH PRO);Gm−ホメオドメイン/Startドメインタンパク質プロモーター(HSD PRO);Gm−LTP3プロモーター(LTP3 PRO);Gm−ストリクトシジンシンターゼ様1プロモーター(SSL1 PRO);WUSを発現しないネガティブコントロール(NEG CON)の中の1つの後にシロイヌナズナ(Arabidopsis)WUS遺伝子を有する発現カセットを含むT−DNAを導入するアグロバクテリウム(Agrobacterium)媒介形質転換が行われた後に体細胞胚を形成した、処理後未熟子葉の頻度によって測定された形質転換反応を示す。各プロモーターでは、ボックスの上端および下端は、データの上方および下方4分の1を示し、ボックス内の線はメジアン値を示す。P450 PROでは、2つの複製体のみが、この分析に含まれたため、メジアン値は算出されなかった。
図26図26Aは、成熟培地に移し、胚の発生を完了させた体細胞胚の光学マイクロ写真を示し、図26Bはその対応する落射蛍光像を示す(下部の未熟子葉を、Gm−LTP3 PRO::At−WUSを含むT−DNAで形質転換させてから35日後の成熟培地上を示す)。矢印は、赤色の蛍光を発する体細胞子葉の1つを示し、スケールバーは、長さ2mmを示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本開示は、植物プロモーターに着目した組成物および方法、ならびにそれらの使用方法に関する。本開示の組成物は、ZM−PLTP(配列番号1)、ZM−PLTP1(配列番号3)、ZM−PLTP2(配列番号4)、SB−PLTP1(配列番号2)、SBPLTP2(配列番号5)、SB−PLTP3(配列番号6)、OS−PLTP1(杯列番号8)、OS−PLTP2(配列番号9)、SI−PLTP1(配列番号7)、ZM−FBP1(配列番号10)、ZM−RFP(配列番号11)、ZM−APMP(配列番号12)、ZM−RfeSP(配列番号13)、ZM−CRR6(配列番号14)、ZM−G3K(配列番号15)、ZM−CAB7(配列番号16)、ZM−UBR(配列番号17)、ZM−HBP(配列番号18)、ZM−PS1−N(配列番号19)、ZM−SDR(配列番号20)、OS−SDR(配列番号23)、SB−SDR(配列番号24)、ZM−SDR(長い)(配列番号22)、ZM−LGL(配列番号25)、ZM−LEA14−A(配列番号26)、ZM−LEA34−D (配列番号27)およびGM−LTP3(配列番号21)として知られる組織優先的プロモーターのためのヌクレオチド配列を含む。組成物はさらに、目的の異種ヌクレオチド配列に作動可能に連結した上記プロモーターのためのヌクレオチド配列を含むDNAコンストラクトを含む。特に、本開示は、配列番号1〜27に記載のヌクレオチド配列、ならびにその断片、多様体および相補体の少なくとも1つを含む核酸分子を提供する。配列番号1〜32の概要を表1に示した。
【0017】
【表1】
【0018】
【表2】
【0019】
本開示の調節配列には、植物において転写を開始させるヌクレオチドコンストラクトが含まれる。特定の態様では、PLTPプロモーターおよび他のプロモーターが組織優先的方法で転写を開始させる。そのような本開示のコンストラクトは、植物の発生的調節と関連した調節転写開始領域を含む。したがって、本開示の組成物は、植物プロモーター、より詳しくは、PLTPプロモーターおよび/または本明細書に記載の他のプロモーターに作動可能に連結した目的のヌクレオチド配列と、5’UTR配列とを含むDNAコンストラクトを含む。トウモロコシ、ソルガム、イネおよびエノコログサ属(Setaria)由来のPLTPプロモーターを含む配列は、本明細書では、配列番号1〜9として記載されている。
【0020】
本開示のプロモーターは、配列の発現に有用である。特定の態様では、本開示のプロモーター配列は、目的の配列の発現、特に組織優先的方法での発現に有用である。本開示のヌクレオチド配列はまた、その後の目的の植物における異種ヌクレオチド配列を発現するための発現ベクターの構築に、または他のプロモーターの単離用プローブとして使用される。特に、本開示は、目的のヌクレオチド配列に作動可能に結合した配列番号1〜27の少なくとも1つの記載のプロモーターヌクレオチド配列を含む単離されたDNAコンストラクトを提供する。
【0021】
本開示の態様は、配列番号1〜27の少なくとも1つに対し少なくとも70%の同一性を有する配列、配列番号1〜27の少なくとも1つのヌクレオチド配列の断片または多様体(ここで、配列は植物細胞で転写を開始する)、(a)または(b)のポリヌクレオチドに相補的なポリヌクレオチド、および配列番号1〜27の少なくとも1つからなる群から選択される配列の少なくとも100個の連続するヌクレオチドを含むポリヌクレオチドからなる群から選択されるヌクレオチド配列を有する調節エレメントを含み、その調節エレメントは目的の異種ポリヌクレオチドに作動可能に結合している核酸分子を含む。また、核酸を含む調節エレメントを含む発現カセット、発現カセットを含むベクター、および発現カセットを含む植物細胞も具体化されている。さらなる態様は、前記発現カセットが単子葉植物または双子葉植物からの植物細胞のゲノムに安定に組み込まれている植物細胞、および、トウモロコシ、ソルガム、イネ、ダイズ、コムギまたはアブラナ属(Brassica)など、綿単子葉植物であるか双子葉植物であるかを問わず、記載の発現カセットを含む植物を含む。また、組織優先的調節エレメントもまた具体化されている。
【0022】
記載の発現カセットがゲノムに安定に組み込まれている植物、発現カセットを含むその植物の種子(発現カセットを含む)、および目的の異種ポリヌクレオチドが転写因子をコードする植物もまた具体化されている。さらに、前記遺伝子または遺伝子産物が乾燥耐性、寒冷抵抗性、除草剤耐性、病原体耐性または昆虫耐性を付与する植物も具体化されている。前記ポリヌクレオチドの発現によって前記植物の表現型が変わった植物もまた具体化されている。また、プロモーター活性を有する機能的断片であって、配列番号1〜27からなる群から選択されるヌクレオチド配列に由来する断片を含む組み換えポリヌクレオチドを含む発現カセットも具体化されている。また、前記発現カセットが植物細胞中で一時的に発現する植物も具体化されている。さらに、異種ポリヌクレオチドがWUSまたはODP2(BBM)である植物も具体化されている。さらに、調節エレメントが胚、葉、または胚および葉で発現する植物細胞も具体化されている。
【0023】
さらなる態様は、植物または植物細胞中でポリヌクレオチドを発現させる方法であって、植物または植物細胞に調節エレメントを含む発現カセットを導入することを含み、前記調節エレメントが、配列番号1〜27の少なくとも1つのヌクレオチド配列、または配列番号1〜27の少なくとも1つに対し少なくとも70%の同一性を有する配列を含むヌクレオチド配列;配列番号1〜27の少なくとも1つのヌクレオチド配列の断片または多様体を含むヌクレオチド配列(ここで、配列は植物細胞で転写を開始する);および(a)もしくは(b)に相補的なヌクレオチド配列からなる群から選択されるヌクレオチド配列を含む方法を含む。
【0024】
態様はまた、調節エレメントが異種ポリヌクレオチドと作動可能に結合している方法、目的の異種ポリヌクレオチドが、乾燥耐性、植物代謝、器官発達、幹細胞の成長、細胞増殖刺激、器官形成、体細胞胚発生、頂端分裂組織の開始および発達に関与する遺伝子産物をコードする方法、前記遺伝子産物が非生物的ストレス耐性に関与している方法、目的の異種遺伝子が、乾燥耐性、寒冷抵抗性、除草剤耐性、病原体耐性または昆虫耐性を付与する遺伝子産物をコードする方法、ならびに、前記植物が単子葉植物または双子葉植物である方法を含む。
【0025】
さらなる態様は、植物中で目的のポリヌクレオチドを発現させる方法であって、目的のポリヌクレオチドの発現を増大させることができる調節エレメントを植物細胞に導入することを含み、前記異種調節エレメントは、配列番号1〜27の少なくとも1つのヌクレオチド配列を含むヌクレオチド配列、または配列番号1〜27の少なくとも1つに対し少なくとも95%の同一性を有する配列を含むヌクレオチド配列;配列番号1〜27の少なくとも1つのヌクレオチド配列の少なくとも100bpの断片を含むヌクレオチド配列;および(a)もしくは(b)に相補的なヌクレオチド配列(ここで、配列は植物細胞で転写を開始する)からなる群から選択されるポリヌクレオチド配列を含む方法を含む。
【0026】
また、目的のポリヌクレオチドが器官の発達、細胞の増殖刺激、器官形成、体細胞胚発生の開始、頂端分裂組織およびこれらの組み合わせに関与するポリペプチドをコードする方法であって、目的のポリヌクレオチドが植物の内因性遺伝子である方法、目的のポリヌクレオチドが乾燥耐性、寒冷抵抗性、除草剤耐性、病原体耐性または昆虫耐性を付与するポリペプチドをコードする方法、前記植物が双子葉植物または単子葉植物である方法、ならびに双子葉植物または単子葉植物がトウモロコシ、ソルガム、イネ、ダイズ、コムギ、ワタおよびアブラナ属(Brassica)からなる群から選択される方法も具体化されている。
【0027】
本開示は、単離された、または実質的に精製された核酸組成物を包含する。「単離された」または「精製された」核酸分子、あるいはその生物活性部分は、その天然の環境で見出される核酸分子またはタンパク質に通常付随または相互作用する構成要素を実質的または基本的に含んでいない。したがって、単離または精製された核酸分子またはタンパク質は、組み換え技術によって生成されたときには、他の細胞物質または培地を含んでおらず、また、化学的に合成された場合には、化学的前駆体も他の化学物質も実質的に含んでいない。「単離された」核酸は、その核酸が由来する生物のゲノムDNAにおいて、天然では核酸に隣接している配列(タンパク質コード配列を含む)(すなわち、核酸の5’および3’末端に位置する配列)を実質的に有していない。例えば、各種態様において、単離された核酸分子が含有する、その核酸が由来する生物のゲノムDNAにおいて、天然では核酸に隣接しているヌクレオチド配列は、約5kb、4kb、3kb、2kb、1kb、0.5kbまたは0.1kb未満であり得る。本開示の配列は、それぞれの転写開始部位にフランキングしている5‘末端側非翻訳領域から単離することができる。
【0028】
本開示のプロモーターヌクレオチド配列の断片および多様体もまた、本開示に包含されている。特に、配列番号1〜27の少なくとも1つのプロ−モータ配列の断片および多様体は、本開示のDNAコンストラクトに使用され得る。本明細書で使用する場合、用語「断片」は、核酸配列の一部を指す。調節配列の断片は、構成的方法で転写を駆動するなどの、転写開始の生物学的活性を保持している。ハイブリダイゼーションプローブとして有用なヌクレオチド配列の断片は、必ずしも生物学的活性を保持していないことがある。本明細書に開示の調節領域のヌクレオチド配列の断片は、少なくとも約20ヌクレオチド、約50ヌクレオチド、約100ヌクレオチドから、配列番号1〜27の少なくとも1つの完全長にまで及ぶ。
【0029】
プロモーターの生物活性部分は、本開示のプロモーター配列の一部を単離し、その部分のプロモーター活性を評価することによって調製することができる。プロモーターヌクレオチド配列の断片である核酸分子は、少なくとも約16個、50個、75個、100個、150個、200個、250個、300個、350個、400個、450個、500個、550個、600個、650個、700個もしくは800個のヌクレオチド、または最大で本明細書に開示の完全長の調節配列に存在する数のヌクレオチドを含む。
【0030】
本明細書で使用する場合、用語「多様体」は、本明細書に開示のプロモーターと実質的類似性を有する配列を意味するものである。多様体は、天然のポリヌクレオチドの1つ以上の内部部位における1つ以上のヌクレオチドの欠失および/もしくは付加、ならびに/または天然のポリヌクレオチドの1つ以上の部位における1つ以上のヌクレオチドの置換を含む。本明細書で使用する場合、「天然の」ヌクレオチド配列は、天然に存在するヌクレオチド配列を含む。ヌクレオチド配列では、天然に存在する多様体は、よく知られた分子生物学的手法、例えば、ポリヌクレアーゼ連鎖反応(PCR)や、本明細書で概説しているようなハイブリダイゼーション法を用いて同定することができる。
【0031】
多様体ヌクレオチド配列はまた、例えば、部位特異的変異誘発などを使用して生成されたものなど、合成的に作られたヌクレオチド配列を含む。一般に、これらの態様の特定のヌクレオチド配列の多様体は、本明細書の他の箇所に記載の配列アライメントプログラム(デフォルトパラメーターを使用)で測定したとき、その特定のヌクレオチド配列に対し少なくとも40%、50%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%もしくはそれ以上の配列同一性を有するであろう。生物学的に活性な多様体もまた、本態様に包含される。生物学的に活性な多様体としては、例えば、1つ以上のヌクレオチドの置換、欠失または挿入を有する、本態様の天然のプロモーター配列が挙げられる。プロモーターの活性は、ノーザンブロット解析、転写融合体で行うレポーター活性測定などの手法を用いて測定することができる。例えば、Sambrook,et al.,(1989)Molecular Cloning:A Laboratory Manual(2d ed.,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.)(以下、「Sambrook」)を参照されたい。この文献は参照によってその全体が本明細書に組み込まれる。あるいは、プロモーターの断片または多様体の制御下で生成される緑色蛍光タンパク質(GFP)または黄色蛍光タンパク質(YFP)などのレポーター遺伝子のレベルを測定することができる。例えば、Matz et al.(1999)Nature Biotechnology 17:969−973、米国特許第6,072,050号明細書(参照によりこの全体が本明細書に組み込まれる)、Nagai,et al.,(2002)Nature Biotechnology 20(1):87−90を参照されたい。多様体ヌクレオチド配列にはまた、DNAシャフリングなどの変異組み換え誘導法により生成される配列も包含される。そのような方法では、プロモーター用の1つ以上の異なるヌクレオチド配列が、新しいプロモーターを作り出すために操作され得る。このようにして、実質的な配列同一性を有し、インビトロまたはインビボで相同的に組み換えることができ配列領域を含む関連配列のポリヌクレオチドの集団から、組み換えポリヌクレオチドのライブラリーが作られる。そのようなDNAシャフリングのための戦略は当該技術分野で知られている。例えば、Stemmer,(1994)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 91:10747−10751、Stemmer,(1994)Nature 370:389 391、Crameri,et al.,(1997)Nature Biotech.15:436−438、Moore,et al.,(1997)J.Mol.Biol.272:336−347、Zhang,et al.,(1997)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 94:4504−4509、Crameri,et al.,(1998)Nature 391:288−291ならびに米国特許第5,605,793号明細書および同5,837,458明細書(これらの文献は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)を参照されたい。
【0032】
変異誘発およびヌクレオチド配列改変の方法は当該技術分野で知られている。例えば、Kunkel,(1985)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 82:488−492、Kunkel,et al.,(1987)Methods in Enzymol.154:367−382、米国特許第4,873,192号明細書、Walker and Gaastra,eds.(1983)Techniques in Molecular Biology (MacMillan Publishing Company,New York)および本明細書中に引用されている参考文献(これらの文献は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)を参照されたい。
【0033】
本開示のヌクレオチド配列は、他の生物、特には他の植物、より特には他の単子葉植物または双子葉植物から対応する配列を単離するために使用することができる。このようにして、PCR、ハイブリダイゼーションなどの方法は、本明細書に記載の配列に対する配列相同性に基づいてそのような配列を同定するのに使用することができる。本明細書に記載の全配列またはそれらの断片に対する配列同一性に基づいて単離された配列は、本開示に包含される。
【0034】
PCR法では、オリゴヌクレオチドプライマーを、任意の目的の植物から抽出したcDNAまたはゲノムDNAからの対応するDNA配列を増幅するPCR反応に使用するためのオリゴヌクレオチドプライマーを設計することができる。PCRプライマーを設計する方法およびPCRクローニングの方法は当該技術分野では一般に知られており、Sambrook(前出)に開示されている。Innis,et al.,eds.(1990)PCR Protocols:A Guide to Methods and Applications(Academic Press,New York)、Innis and Gelfand,eds.(1995)PCR Strategies(Academic Press,New York)、およびInnis and Gelfand,eds.(1999)PCR Methods Manual(Academic Press,New York)(これらの文献は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)も参照されたい。知られているPCR方法としては、限定はされないが、対合プライマーを使用する方法、単一の特異的プライマー、縮重プライマー、遺伝子特異的プライマー、ベクター特異的プライマー、部分的にミスマッチのプライマーなどを使用する方法が挙げられる。
【0035】
ハイブリダイゼーション手法では、既知のヌクレオチド配列の全てまたは一部を、選択した生物からのクローン化ゲノムDNA断片またはcDNAの集団(すなわち、ゲノムまたはcDNAライブラリー)に存在する他の対応するヌクレオチド配列に選択的にハイブリダイズするプローブとして使用する。ハイブリダイゼーションプローブは、ゲノムDNA断片、cDNA断片、RNA断片、または他のオリゴヌクレオチドであり得、32Pなどの検出用基または他の検出用マーカーで標識することができる。したがって、例えば、ハイブリダイゼーは、本開示の調節配列の基づく合成オリゴヌクレオチドを標識することによって作ることができる。ハイブリダイゼーション用プローブの調製方法、およびゲノムライブラリーの構築方法は、当該技術分野で一般に知られており、Sambrook(前出)に開示されている。
【0036】
例えば、本明細書に開示の全調節配列、またはその1つもしくはそれ以上の部分を、対応する双子葉植物の調節配列およびメッセンジャーRNAに特異的にハイブリダイズすることができるプローブとして使用することができる。様々な条件下で、特異的ハイブリダイゼーションを行うために、そのようなプローブは、調節配列に特有で、長さが一般に少なくとも約10ヌクレオチド長または少なくとも約20ヌクレオチド長の配列を含む。そのようなプローブは、PCRにより選択された植物からの対応する調節配列を増幅するために使用することができる。この手法は所望の生物からさらなるコード配列を単離するために、または、生物中のコード配列の存在を決定する診断アッセイとして使用することができる。ハイブリダイゼーション手法には、プレーティングしたDNAライブラリー(プラークまたはコロニー、例えば、Sambrook(前出)のハイブリダイゼーションスクリーニングが含まれる。
【0037】
そのような配列のハイブリダイゼーションは、ストリンジェントな条件下で行うことができる。「ストリンジェントな条件」または「ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件」という用語は、プローブが他の配列よりその標的配列により検出できる程度に(例えば、バックグラウンドの少なくとも2倍)ハイブリダイズする条件を意味するものである。ストリンジェントな条件は配列によって変わり、環境によっても異なるであろう。
ハイブリダイゼーションおよび/または洗浄条件のストリンジェンシー条件を制御することによって、プローブに100%相補的な標的配列を特定することができる(相同プロービング)。あるいは、ストリンジェンシー条件は、配列のミスマッチングにおける類似性の検出の度合いが低下するように調節することができる(非相同プロービング)。一般に、プローブの長さは約1000ヌクレオチド未満、最適には500ヌクレオチド未満である。
【0038】
通常、ストリンジェンシー条件は、pH7.0〜8.3で、塩濃度が約1.5M Naイオン、通常約0.01〜1.0M Naイオン濃度(または、他の塩)で、温度が、短いプローブ(例えば、10〜50ヌクレオチド)の場合に少なくとも約30℃、そして、長いプローブ(例えば、50ヌクレオチド超)の場合に少なくとも約60℃である条件である。ストリンジェンシー条件はまた、ホルムアミドなどの不安定化剤の添加により達成し得る。低ストリンジェンシー条件の例としては、30〜35%ホルムアミド、1M NaCl、1%SDS(ドデシル硫酸ナトリウム)の緩衝溶液による37℃でのハイブリダイゼーション、および1〜2×SSC(20×SSC=3.0M NaCl/0.3Mクエン酸三ナトリウム)による50〜55℃での洗浄が挙げられる。中ストリンジェンシー条件の例としては、40〜45%ホルムアミド、1.0M NaCl、1%SDSによる37℃でのハイブリダイゼーション、および0.5〜1×SSCによる55〜60℃での洗浄が挙げられる。高ストリンジェンシー条件の例としては、50%のホルムアミド、1M NaCl、1%SDSによる37℃でのハイブリダイゼーション、および0.1×SSCによる60〜65℃での少なくとも30分間の最終洗浄が挙げられる。ハイブリダイゼーションの時間は、概ね約24時間未満であり、通常約4〜約12時間である。洗浄時間は、少なくとも平衡に達することができるだけの時間であろう。
【0039】
特異性は、通常、ハイブリダイゼーション後の洗浄の関数であり、重要な因子は最終洗浄溶液のイオン強度と温度である。DNA−DNAハイブリッドでは、熱融解温度(T)は、Meinkoth and Wahl,(1984)Anal.Biochem 138:267 284の式:T=81.5℃+16.6(logM)+0.41(%GC)−0.61(%form)−500/L(ここで、Mは、1価のカチオンのモル濃度であり、%GCは、DNA中のグアノシンヌクレオチドおよびシトシンヌクレオチドのパーセンテージであり、%formは、ハイブリダイゼーション溶液中のホルムアミドのパーセンテージであり、そしてLは、塩基対中のハイブリッドの長さである)から概算することができる。Tは、相補的な標的配列の50%が完全に一致するプローブにハイブリダイズする温度(所定のイオン強度およびpHで)である。Tは、1%のミスマッチにつき約1℃低下する。したがって、T、ハイブリダイゼーション、および/または洗浄の条件は、所望の同一性の配列にハイブリダイズするように調整し得る。例えば、90%の同一性を有する配列が求められる場合、Tは、10℃低下し得る。一般に、ストリンジェントな条件は、所定のイオン強度およびpHでの特定の配列およびその相補物の熱融解温度(T)よりも約5℃低く選択される。しかしながら、厳しいストリンジェントな条件は、Tより1、2、3、または4℃低いハイブリダイゼーションおよび/または洗浄を使用することができ、中程度のストリンジェントな条件は、Tより6、7、8、9、または10℃低いハイブリダイゼーションおよび/または洗浄を使用することができ、低ストリンジェンシー条件は、Tより11、12、13、14、15、または20℃低いハイブリダイゼーションおよび/または洗浄を使用することができる。この式、ハイブリダイゼーションおよび洗浄の組成、ならびに所望されるTmを使用して、当業者は、ハイブリダイゼーションおよび/または洗浄溶液のストリンジェンシーにおけるバリエーションが本質的に記載されることを理解するであろう。所望されるミスマッチの程度が45℃(水溶液)または32℃(ホルムアミド溶液)よりも低いTを生じる場合、より高い温度を使用できるようにSSC濃度を増加させることが好ましい。核酸のハイブリダイゼーションについての広範な手引きは、Tijssen,(1993)Laboratory Techniques in Biochemistry and Molecular Biology−−Hybridization with Nucleic Acid Probes,Part I,Chapter 2(Elsevier,New York)、およびAusubel,et al.,eds.(1995)Current Protocols in Molecular Biology,Chapter 2(Greene Publishing and Wiley−Interscience,New York)(これらの文献は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に見出される。Sambrookもまた参照されたい。
【0040】
したがって、構成的プロモーター活性を有し、かつ本明細書中に開示される調節配列またはその断片にストリンジェントな条件下でハイブリダイズする単離された配列は、本開示に包含される。
【0041】
一般に、プロモーター活性を有し、かつ本明細書中に開示されるプロモーター配列にハイブリダイズする配列は、開示される配列と、少なくとも40%〜50%相同であり、約60%、70%、80%、85%、90%、95%〜98%以上相同である。すなわち、配列の配列類似性は、少なくとも約40%〜50%、約60%〜70%、および約80%、85%、90%、95%〜98%の配列類似性を共有する範囲にわたり得る。
【0042】
以下の用語を使用して、2つ以上の核酸またはポリヌクレオチドの間の配列の関係を記載する:(a)「参照配列」、(b)「比較ウィンドウ」、(c)「配列同一性」、(d)「配列同一性のパーセンテージ」、および(e)「実質的同一」。
【0043】
本明細書で使用する場合、「参照配列」は、配列比較の基準として使用される規定の配列である。参照配列は、特定の配列のサブセットまたはその全体、例えば、全長cDNAまたは遺伝子配列の断片、あるいは完全なcDNAまたは遺伝子配列であり得る。
【0044】
本明細書で使用する場合、「比較ウィンドウ」は、ポリヌクレオチド配列の連続した特定の断片をいい、ここで、比較ウィンドウにおけるポリヌクレオチド配列は、2つの配列の最適なアライメントのために、参照配列(これは付加も欠失も含まない)と比較して、付加または欠失(すなわち、ギャップ)を含み得る。一般に、比較ウィンドウは、少なくとも20の連続したヌクレオチド長であり、必要に応じて、30、40、50、100またはそれ以上であり得る。当業者は、ポリヌクレオチド配列中にギャップを含むことに起因する参照配列に対する高い類似性を回避するために、ギャップペナルティが通常導入され、適合した数から減算されることを理解している。
【0045】
比較のための配列のアライメント方法は、当該技術分野においてよく知られている。したがって、任意の2つの配列間のパーセント配列同一性の決定は、数学的アルゴリズムを使用して達成し得る。そのような数学的アルゴリズムの非限定的な例は、Myers and Miller,(1988)CABIOS 4:11−17のアルゴリズム、Smith,et al.,(1981)Adv.Appl.Math.2:482のアルゴリズム、Needleman and Wunsch,(1970)J.Mol.Biol.48:443−453のアルゴリズム、Pearson and Lipman,(1988)Proc.Natl.Acad.Sci.85:2444−2448のアルゴリズム、Karlin and Altschul,(1993)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:5873−5877において改変されたKarlin and Altschul,(1990)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 872:264のアルゴリズムである(これらの文献は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。
【0046】
これらの数学的アルゴリズムのコンピューター化インプリメンテーションは、配列同一性を決定するための配列の比較に利用され得る。このようなインプリメンテーションとしては、限定はされないが、PC/GeneプログラムのCLUSTAL(Intelligenetics,Mountain View,Calif.から入手可能)、ALIGNプログラム(Version 2.0)、ならびにGCG Wisconsin Genetics Software Package(登録商標)(Version 10)のGAP、BESTFIT、BLAST、FASTAおよびTFASTA(Accelrys Inc.,9685 Scranton Road,San Diego,Calif.,USAから入手可能)が挙げられる。これらのプログラムを使用するアライメントは、デフォルトパラメーターを使用して実行し得る。CLUSTALプログラムは、Higgins,et al.,(1988)Gene 73:237−244(1988)、Higgins,et al.,(1989)CABIOS 5:151−153、Corpet,et al.,(1988)Nucleic Acids Res.16:10881−90、Huang,et al.,(1992)CABIOS 8:155−65、およびPearson,et al.,(1994)Meth.Mol.Biol.24:307−331(これらの文献は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)によく説明されている。ALIGNプログラムは、Myers and Miller,(1988)(前出)のアルゴリズムに基づく。PAM120重み残基表、12のギャップ長ペナルティ、および4のギャップペナルティは、アミノ酸配列を比較する場合にALIGNプログラムで使用され得る。Altschul,et al.,(1990)J.Mol.Biol.215:403(この文献は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)のBLASTプログラムは、Karlin and Altschul(1990)(前出)のアルゴリズムに基づく。BLASTヌクレオチド検索を、BLASTNプログラム、スコア=100、ワード長=12を用いて実行し、本開示のタンパク質をコードするヌクレオチド配列に相同なヌクレオチド配列を得ることができる。BLASTタンパク質検索を、BLASTXプログラム、スコア=50、ワード長=3を用いて実行し、本開示のタンパク質またはポリペプチドに相同なアミノ酸配列を得ることができる。比較目的のためのギャップ化されたアライメントを得るために、Gapped BLAST(BLAST2.0における)を、Altschul,et.al.,(1997)Nucleic Acids Res.25:3389(この文献は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に記載されるように利用することができる。あるいは、PSI−BLAST(BLAST2.0における)を使用して、分子間の距離関係を検出する繰り返し検索を実行することができる。Altschul,et.al.,(1997)(前出)を参照されたい。BLAST、Gapped BLAST、PSI−BLASTを利用する場合、それぞれのプログラムのデフォルトパラメーター(例えば、ヌクレオチド配列に対するBLASTN、タンパク質に対するBLASTX)を使用し得る。国立生物工学情報センター(National Center for Biotechnology Information)のウェブサイト、http:www.ncbi.nlm.nih.govを参照されたい。アライメントはまた、目視によって手動的に実行し得る。
【0047】
特に明記しない限り、本明細書中に示される配列同一性/類似性の値は、GAP Version 10(次のパラメータを使用:ヌクレオチド配列の%同一性および%類似性は、GAP Weight 50およびLength Weight 3、ならびにnwsgapdna.cmpスコアリングマトリックスを使用し、アミノ酸配列の%同一性および%類似性は、GAP Weight 8およびLength Weight 2、ならびにBLOSUM62スコアリングマトリックスを使用する)、またはその等価の任意のプログラムを使用して得られた値を指す。本明細書で使用する場合、「等価のプログラム」は、問題の任意の2つの配列について、GAP Version 10によって作製されるその対応するアライメントと比較した場合、同一のヌクレオチドまたはアミノ酸残基の一致、および同一のパーセント配列同一性を有するアライメントを作製する、任意の配列比較プログラムである。
【0048】
GAPプログラムは、NeedlemanおよびWunschのアルゴリズム(前出)を使用して、マッチ数を最大化しギャップ数を最小化する2つの完全な配列のアライメントを見出す。GAPは全ての可能なアライメントを考慮し、マッチした塩基の最大数と最小のギャップ数を有するアライメント作製する。これにより、マッチした塩基の単位におけるギャップクリエーションペナルティおよびギャップ伸長ペナルティの提示が可能になる。GAPは、挿入される各ギャップにマッチするギャップクリエーションペナルティ数を得る必要がある。ゼロより大きいギャップ伸長ペナルティを選択するなら、GAPはさらに、挿入される各ギャップに対し、ギャップ伸長ペナルティのギャップ倍長の長さを得る必要がある。GCG Wisconsin Genetics Software Package(登録商標)のVersion 10におけるデフォルトのギャップクリエーションペナルティ値およびギャップ伸長ペナルティ値は、それぞれ8および2である。ヌクレオチド配列では、デフォルトギャップクリエーションペナルティは50であり、一方、デフォルトギャップ伸長ペナルティは3である。ギャップクリエーションペナルティおよびギャップ伸長ペナルティは、0〜200からなる整数の群から選択される整数で表すことができる。したがって、例えば、ギャップクリエーションペナルティおよびギャップ伸長ペナルティは、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65またはそれ以上であり得る。
【0049】
GAPは、最良のアライメントファミリーの1メンバーを示す。このファミリーには多くのメンバーが存在し得るが、より良好なクオリティを有するメンバーは他に存在しない。GAPは4つの性能指数:クオリティ、率(Ratio)、同一性および類似性を表示する。クオリティは、配列をアラインするために最大化された量である。率(Ratio)は、クオリティを短い断片中の塩基数で除したものである。パーセント同一性は、実際に一致している記号のパーセントである。パーセント類似性は、類似している記号のパーセントである。ギャップに向かい合っている記号は無視する。1対の記号のスコアリングマトリクス値が類似性閾値の0.50より大きいかまたは等しいとき、類似性のスコアが付けられる。GCG Wisconsin Genetics Software Package(登録商標)のVersion 10で使用されるスコアリングマトリクスは、BLOSUM62である(Henikoff and Henikoff,(1989)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:10915(この文献は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)を参照)。
【0050】
2つの核酸またはポリペプチド配列と関連する「配列同一性」または「同一性」は、本明細書で使用する場合、ある比較ウィンドウに最大の対応でアラインしたときに同じである2つの配列の残基をいう。配列同一性のパーセンテージをタンパク質に関して使用する場合、同一でない残基位置が、しばしば保存的アミノ酸置換により異なることが認識される。ここで、アミノ酸残基は、類似の化学特性(例えば、電荷または疎水性)を有する他のアミノ酸残基で置換され、それゆえ、分子の機能特性が変化しない。配列が保存的置換で異なる場合、パーセント配列同一性は、置換の保存的性質について補正するように上方に調整され得る。そのような保存的置換により異なる配列は、「配列類似性」または「類似性」を有するといわれる。この調整を行う手段は、当業者にはよく知られている。通常、これは、全体的なミスマッチではなく一部として保存的置換のスコア付けを行い、それにより、配列同一性のパーセンテージを増加させることを含む。したがって、例えば、同一のアミノ酸に1のスコアを与え、非保存的置換に0のスコアを与える場合、保存的置換には0と1との間のスコアを与える。保存的置換のスコア付けは、例えば、プログラムPC/GENE(Intelligenetics、Mountain View、Calif.)において実行されるように算出される。
【0051】
本明細書で使用する場合、「配列同一性のパーセンテージ」は、比較ウィンドウに最適にアラインされた2つの配列を比較することにより決定される値を意味し、ここで、比較ウィンドウにおけるポリヌクレオチド配列の部分は、二つの配列の最適なアライメントについて、参照配列(これは、付加も欠失も含まない)と比較した場合に、付加または欠失(すなわち、ギャップ)を含み得る。パーセンテージは、同一の核酸塩基またはアミノ酸残基が、両方の配列において現れる位置の数を決定してマッチした位置の数を得、そのマッチした位置の数を、比較ウィンドウにおける位置の総数によって除し、そして、その結果に100を乗じて、配列同一性のパーセンテージを得ることにより算出される。
【0052】
ポリヌクレオチド配列の「実質的同一性」という用語は、ポリヌクレオチドが、標準的なパラメータを使用するアライメントプログラムを使用して参照配列と比較して、少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、そして最も好ましくは少なくとも95%の配列同一性を有する配列を含むことを意味する。当業者は、これらの値が、コドンの縮重、アミノ酸類似性、リーディングフレームの位置決めなどを考慮することにより、2つのヌクレオチド配列によってコードされるタンパク質の対応する同一性を決定するために適切に調整され得ることは認識していよう。これらの目的のためのアミノ酸配列の実質的同一性は、通常、少なくとも60%、70%、80%、90%、および少なくとも95%の配列同一性を意味する。
【0053】
ヌクレオチド配列が実質的に同一である別の指標は、二つの分子が、ストリンジェントな条件下で、互いにハイブリダイズするか否かである。一般に、ストリンジェントな条件は、所定のイオン強度およびpHにおいて、特定の配列に対するTよりも約5℃低く選択される。しかしながら、ストリンジェントな条件は、Tより約1℃〜約20℃低い範囲の温度を含み、本明細書中の他で限定されるように、所望するストリンジェンシーの程度により変わる。ストリンジェントな条件下で互いにハイブリダイズしない核酸は、それらがコードするポリペプチドが実質的に同一であるならば、なお実質的に同一である。
これは、例えば、核酸のコピーが、遺伝コードにより許容される最大のコドン縮重を用いて作製される場合に、起こり得る。2つの核酸配列が、実質的に同一である1つの指標は、第1の核酸によりコードされるポリペプチドが、第2の核酸によりコードされるポリペプチドと、免疫学的に交差反応性であることである。
【0054】
本明細書に開示される調節配列、ならびにその多様体および断片は、植物の遺伝子操作、例えば、形質転換植物またはトランスジェニック植物の作製において、目的の表現型を発現させるのに有用である。本明細書で使用する場合、「形質転換植物」および「トランスジェニック植物」という用語は、ゲノム内に異種ポリヌクレオチドを含む植物を指す。一般に、異種ポリヌクレオチドは、そのポリヌクレオチドが何世代にもわたって伝えられるように、トランスジェニックまたは形質転換植物のゲノムに安定に組み込まれる。異種ポリヌクレオチドは、ゲノムに単独で、または組み換えDNAコンストラクトの一部として組み込まれ得る。本明細書で使用する場合、用語「トランスジェニックの」には、異種核酸の存在によってその表現型が改変されたあらゆる細胞、細胞系、組織、植物部または植物体が、それらの最初に改変されたトランスジェニック体も、その最初のトランスジェニック体から有性交配または無性繁殖によって作られたものも、含まれることは理解されるべきである。
【0055】
トランスジェニック「イベント」は、目的の遺伝子を含む核酸発現カセットなどの異種DNAコンストラクトで植物細胞を形質転換し、植物体のゲノムへ導入遺伝子を挿入することによって植物体集団を再生し、そして、特定のゲノム位置への挿入によって特徴付けられた特定の植物体を選択することによって作製される。イベントは、挿入遺伝子の発現によって、表現型で特徴付けられる。遺伝子レベルでは、イベントは植物体の遺伝子構造の一部である。用語「イベント」はまた、形質転換体と他の植物との間の有性交配によって作製された子孫をいい、その子孫は異種DNAを含む。
【0056】
本明細書で使用する場合、植物という用語は、植物体、植物器官(例えば、葉、茎、根など)、植物細胞、植物プロトプラスト、植物を再生可能な植物細胞組織培養物、植物カルス、植物塊(plant clump)、および植物体または植物体の部分、例えば、胚、花粉、胚珠、種子、葉、花、枝、果実、仁、雄穂、穂軸、サヤ、葉柄、根、根冠、葯など)中の無傷の植物細胞を含む。穀粒は、それらの種の栽培または繁殖と異なる目的で栽培業者が生産する成熟種子を意味するものである。再生植物の子孫、多様体および変異体もまた、それらの一部が導入遺伝子を含むなら、本開示に含まれる
【0057】
本開示は、限定はされないが、単子葉植物および双子葉植物などの、任意の植物種の形質転換に使用することができる。植物種の例としては、トウモロコシ(トウモロコシ(Zea mays))、アブラナ属(Brassica)種(例えば、セイヨウアブラナ(B.napus)、ブラッシカ・ラパ(B.rapa)、カラシナ(B.juncea))、特に、種子油源として有用なアブラナ属(Brassica)種、アルファルファ(ムラサキウマゴヤシ(Medicago sativa))、イネ(イネ(Oryza sativa))、ライムギ(ライムギ(Secale cereale))、ソルガム(モロコシ(Sorghum bicolor)、モロコシ(Sorghum vulgare))、キビ(例えば、トウジンビエ(トウジンビエ(Pennisetum glaucum))、キビ(キビ(Panicum miliaceum))、アワ(アワ(Setaria italica))、シコクビエ(シコクビエ(Eleusine coracana)))、ヒマワリ(ヒマワリ(Helianthus annuus))、ベニバナ(ベニバナ(Carthamus tinctorius))、コムギ(パンコムギ(Triticum aestivum))、ダイズ(ダイズ(Glycine max))、タバコ(タバコ(Nicotiana tabacum))、ジャガイモ(ジャガイモ(Solanum tuberosum))、ラッカセイ(ラッカセイ(Arachis hypogaea))、ワタ(海島綿(Gossypium barbadense)、ワタ(Gossypium hirsutum))、サツマイモ(サツマイモ(Ipomoea batatus))、キャッサバ(キャッサバ(Manihot esculenta))、コーヒー(コーヒーノキ属(Coffea)種)、ココナッツ(ココヤシ(Cocos nucifera))、パイナップル(パイナップル(Ananas comosus))、カンキツ樹(ミカン属(Citrus)種)、ココア(カカオ(Theobroma cacao))、チャ(チャノキ(Camellia sinensis))、バナナ(バショウ属(Musa)種)、アボカド(アボカド(Persea americana))、イチジク(イチジク(Ficus casica))、グアバ(グアバ(Psidium guajava))、マンゴー(マンゴー(Mangifera indica))、オリーブ(オリーブ(Olea europaea))、パパイア(パパイア(Carica papaya))、カシュー(カシュー(Anacardium occidentale))、マカダミア(マカダミア(Macadamia integrifolia))、アーモンド(アーモンド(Prunus amygdalus))、テンサイ(テンサイ(Beta vulgaris))、サトウキビ(サトウキビ属(Saccharum)種)、アワ(Setaria italica)、カラスムギ、オオムギ、野菜類、観賞植物および球果植物が挙げられる。
【0058】
野菜類としては、トマト(トマト(Lycopersicon esculentum))、レタス(例えば、レタス(Lactuca sativa))、サヤマメ(インゲンマメ(Phaseolus vulgaris))、ライマメ(ライマメ(Phaseolus limensis))、エンドウマメ(レンリソウ属(Lathyrus)種)、ならびに、キュウリ(キュウリ(C.sativus))、カンタロープ(ククミス・カンタルペンシス(C.cantalupensis))、およびマスクメロン(メロンC.melo))などのキュウリ属(Cucumis)に属するものが挙げられる。観賞植物としては、アザレア(ツツジ属(Rhododendron)種)、アジサイ(アジサイ(Macrophylla hydrangea)、ハイビスカス(ブッソウゲ(Hibiscus rosasanensis))、バラ(バラ属(Rosa)種)、チューリップ(チューリップ属(Tulipa)種)、ラッパズイセン(スイセン属(Narcissus)種)、ペチュニア(ツクバネアサガオ(Petunia hybrida))、カーネーション(カーネーション(Dianthus caryophyllus))、ポインセチア(ポインセチア(Euphorbia pulcherrima))、およびキクが挙げられる。
【0059】
本開示を実施するにあたり使用可能な球果植物としては、例えば、テーダマツ(テーダマツ(Pinus taeda))、スラッシュパイン(スラッシュパイン(Pinus elliotii))、ポンデローサマツ(ポンデローサマツ(Pinus ponderosa))、ロッジポールパイン(コントルタマツ(Pinus contorta))、およびモントレーパイン(ラジアータパイン(Pinus radiata))などのマツ;ダクラスファー(ベイマツ(Pseudotsuga menziesii));アメリカツガ(カナダツガ(Tsuga canadensis));ベイトウヒ(カナダトウヒ(Picea glauca));セコイア(セコイア(Sequoia sempervirens));ヨーロッパモミ(アビエス・アマビリス(Abies amabilis))およびバルサムモミ(バルサムモミ(Abies balsamea))などのトゥルーモミ;ならびにベイスギ(ベイスギ(Thuja plicata))およびイエローシーダー(イエローシーダー(Chamaecyparis nootkatensis))などのシーダーが挙げられる。特定の態様において、本開示の植物は、作物(例えば、トウモロコシ、アルファルファ、ヒマワリ、アブラナ属(Brassica)、ダイズ、ワタ、ベニバナ、ラッカセイ、ソルガム、コムギ、キビ、タバコなど)である。一態様においては、トウモロコシ植物およびダイズ植物が好ましく、他の態様においては、トウモロコシ植物が好ましい。
【0060】
目的の他の植物としては、目的の種子を提供する穀物植物、油糧種子植物およびマメ科植物が挙げられる。目的の種子としては、トウモロコシ、コムギ、オオムギ、イネ、ソルガム、ライムギなどの穀物の種子が挙げられる。油糧種子植物としては、ワタ、ダイズ、ベニバナ、アブラナ属(Brassica)、トウモロコシ、アルファルファ、パーム、ココナッツなどが挙げられ、マメ科植物としては、マメおよびエンドウマメが挙げられる。マメとしては、グアー、イナゴマメ、コロハ、ダイズ、インゲンマメ、ササゲ、リョクトウ、ライマメ、ソラマメ、レンズマメ、ヒヨコマメなどが挙げられる。
【0061】
本明細書で使用する場合、PLTPは「リン脂質転移タンパク質」遺伝子を指し、それはパブリックunigeneセット5b.60における遺伝子GRZM2G101958_T01に対応し、トウモロコシ染色体10の遺伝的位置28.95cMおよび物理的位置3833396−3834547塩基に位置する。この遺伝子は、胚、カルス、気孔孔辺細胞にフランキングしているアクセサリー細胞、トウモロコシの毛で、かつ干ばつストレス下、低温下および凍結後に発現する。ここでは、根、雌穂(葯および花粉を含む)、未熟雄穂または仁で発現することはない。ここでは、本明細書に開示されるPLTP配列は、ZM−PLTP(配列番号1)、ZM−PLTP1(配列番号3)、ZM−PLTP2(配列番号4)、SB−PLTP1(配列番号2)、SB−PLTP2(配列番号5)、SB−PLTP3(配列番号6)、OS−PLTP1(配列番号8)、OS−PLTP2(配列番号9)、およびSI−PLTP1(配列番号7)、ならびにそれらの多様体および断片である。
【0062】
本明細書で使用する場合、LTP3は、ダイズ染色体の物理的位置47778536〜4776537に位置する、Genbankアクセッション番号XM−0066066884.2に対応する脂質転移タンパク質3遺伝子を指す。この遺伝子は、胚、成長中の種子および培養細胞で発現する。ここでは、根、茎、分裂組織または再生構造体(花または鞘)で発現することはない。ここでは、LTP3配列は、GM−LTP3(配列番号21)、ならびにその多様体および断片である。
【0063】
本開示は、PLTPプロモーターなどの植物プロモーターについての組成物および方法、ならびにそれらの使用方法に関する。組成物は、ZM−PLTP、ZM−PLTP1、ZM−PLTP2、SB−PLTP、SBPLTP2、SB−PLTP3、OS−PLTP、OS−PLTP2、SI−PLTP、ZM−FBP1、ZM−RFP、ZM−APMP、ZM−RfeSP、ZM−CRR6、ZM−G3K、ZM−CAB7、ZM−UBR、ZM−HBP、ZM−PS1−N、ZM−SDR、GM−LTP3、OS−SDR、SB−SDR、ZM−SDR(長い)、ZM−LGL、ZM−LEA−14−AおよびLEA−34−Dとして知られる組織優先的プロモーターのためのヌクレオチド配列を含む(本明細書の表1を参照)。本開示のいくつかの態様では、配列番号1〜27の少なくとも1つに記載のヌクレオチド配列、および配列番号1〜27の少なくとも1つに記載のヌクレオチド配列の断片を含む。また、作動可能に連結したヌクレオチド配列の組織優先的発現を駆動する、配列番号1〜27の少なくとも1つに記載の配列の機能的断片も含まれる。表1は、配列番号1〜27の概要を示す。本開示のいくつかの態様は、同じ発現カセットにおいて、および植物または植物細胞中で目的のポリヌクレオチドを発現する本明細書に記載の方法において、配列番号1〜27に記載のヌクレオチド配列の2つ以上を使用することを含む。
【0064】
本開示の調節配列によって発現する異種のコード配列が、植物の表現型の改変に使用され得る。目的の表現型の様々な変化としては、植物における遺伝子発現の改変、植物の病原体または昆虫に対する防御機構の改変、植物の除草剤に対する耐性の増大、環境ストレスに応答する植物の成長の改変、塩、温度(高温および低温)、乾燥に対する植物の応答の調節などが挙げられる。これらの結果は、適切な遺伝子産物を含む目的の異種ヌクレオチド配列の発現によって得ることができる。特定の態様では、目的の異種ヌクレオチド配列は、その発現レベルが植物または植物の部分で増大する内因性の植物配列である。結果は、1つ以上の内因性遺伝子産物、特に、ホルモン、レセプター、シグナル伝達分子、酵素、トランスポーターまたは補因子の発現の改変を提供することによって、あるいは、植物の栄養摂取に影響を及ぼすことによって得ることができる。本明細書に開示されるプロモーターによる組織優先的発現が、発現を変えることができる。これらの変化は、形質転換された植物の表現型を変化させる。いくつかの態様では、発現パターンが組織優先的であるので、発現パターンは様々なタイプのスクリーニングに有用である。
【0065】
本開示の目的のヌクレオチド配列の一般的な種類としては、例えば、ジンクフィンガーなどの情報に関与する遺伝子、キナーゼなどの伝達に関与する遺伝子、および熱ショックタンパク質などのハウスキーピングに関与する遺伝子が挙げられる。導入遺伝子のより具体的な種類としては、例えば、農学上の重要な形質、昆虫耐性、病気抵抗性、除草剤耐性、環境ストレス耐性(寒冷、塩、乾燥などに対する抵抗性の変化)および穀粒特性をコードする遺伝子が挙げられる。導入遺伝子のさらに他の種類としては、植物およびその他の真核生物、ならびに原核生物由来の酵素、補因子およびホルモンなどの外因性産物の発現を誘発する遺伝子が挙げられる。いかなる目的の遺伝子も本開示のプロモーターに作動可能に連結し、植物で発現し得ることは認識されている。
【0066】
穀粒の品質に影響する農学的に重要な形質、例えば、油(飽和および不飽和)の量および種類、必須アミノ酸の品質および量、セルロース、デンプンおよびタンパク質の含有量などは、本態様の方法を用いて遺伝子学的に改変することができる。穀粒形質の改変としては、限定はされないが、オレイン酸(飽和および不飽和)含有量の増加、リシンおよび硫黄濃度の上昇、必須アミノ酸の提供、およびデンプンの改質などが挙げられる。トウモロコシにおけるホルドチオニンタンパク質の改変が、米国特許第5,990,389号明細書、同第5,885,801号明細書、同第5,885,802号明細書および同第5,703,049(これらの文献は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に記載されている。他の例は、1996年3月20日出願の米国特許第5,850,016号明細書に記載のダイズ2Sアルブミンによりコードされるリシンおよび/または硫黄リッチの種子タンパク質、およびWilliamson,et al.,(1987)Eur.J.Biochem 165:99−106に記載のオオムギ由来のキモトリプシン阻害剤であり、これらの開示は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0067】
昆虫耐性遺伝子は穀粒収穫量の大幅な低下をもたらす根切り虫、ヨトウムシ、ヨーロッパアワノメイガなどの害虫に対する耐性をコードし得る。このような遺伝子としては、例えば、バチルス・チューリンギエンシス(Bacillus thuringiensis)毒性タンパク質遺伝子(米国特許第5,366,892号明細書、同第5,747,450号明細書、同第5,736,514号明細書、同第5,723,756号明細書、同第5,593,881号明細書、およびGeiser,et al.,(1986)Gene 48:109(これらの開示は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる))などが挙げられる。病気抵抗性形質をコードする遺伝子としては、例えば、解毒遺伝子、例えばフモニシンに対する解毒遺伝子(米国特許第5,792,931号明細書)、非病原性(avr)および病気抵抗性(R)遺伝子(Jones,et al.,(1994)Science 266:789、Martin,et al.,(1993)Science 262:1432、およびMindrinos,et al.,(1994)Cell 78:1089)が挙げられる(これらの文献は参照によってその全体が本明細書に組み込まれる)。
【0068】
除草剤耐性形質としては、アセト乳酸合成酵素(ALS)の働きを阻害するように作用する除草剤、特に、スルホニル尿素系除草剤に対する抵抗性をコードする遺伝子(例えば、そのような耐性に導く変異、特にS4および/またはHra変異を含むアセト乳酸合成酵素(ALS)遺伝子)、グルタミン合成酵素の働きを阻害するように作用する除草剤、例えば、ホスフィノスリシンもしくはバスタ(例えば、bar遺伝子)、グリホサートに対する耐性をコードする遺伝子(例えば、EPSPS遺伝子およびGAT遺伝子;例えば、米国特許出願公開第2004/0082770号明細書および国際公開第03/092360号パンフレットを参照)、あるいは当該技術分野で知られる他のそのような遺伝子を挙げることができる。bar遺伝子は除草剤bastaに対する耐性をコードし、nptII遺伝子は抗生物質カナマイシンおよびgeneticinに対する耐性をコードし、ALS遺伝子変異体は除草剤クロロスルフロンに対する耐性をコードする。
【0069】
グリホサート耐性は、変異5−エノールピルビル−3−ホスホシキメート合成酵素(EPSP)およびaroA遺伝子により付与される。例えば、Shah,et al.の米国特許第4,940,835号明細書を参照されたい。この文献はグリホサート耐性を付与し得るEPSPSの形態のヌクレオチド配列を開示している。Barry,et al.の米国特許第5,627,061号明細書にもまた、EPSPS酵素をコードする遺伝子が記載されている。例えば、また、米国特許第6,248,876B1号明細書号明細書、同第6,040,497号明細書、同第5,804,425号明細書、同第5,633,435号明細書、同第5,145,783号明細書、同第4,971,908号明細書、同第5,312,910号明細書、同第5,188,642号明細書、同第4,940,835号明細書、同第5,866,775号明細書、同第6,225,114B1号明細書、同第6,130,366号明細書、同第5,310,667号明細書、同第4,535,060号明細書、同第4,769,061号明細書、同第5,633,448号明細書、同第5,510,471号明細書、米国再発行特許第36,449号明細書、同第37,287E号明細書および米国特許第5,491,288号明細書、ならびに国際公開第97/04103号パンフレット、同第97/04114号パンフレット、同第00/66746号パンフレット、同第01/66704号パンフレット、同第00/66747号パンフレットおよび同第00/66748号パンフレットもまた参照されたい。これらの文献は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。グリホサート耐性はまた、米国特許第5,776,760号明細書および同第5,463,175号明細書(これらの文献は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)により詳しく記載されているように、グリホサートオキシドレダクターゼ酵素をコードする遺伝子を発現する植物に付与される。さらにグリホサート耐性は、グリホサートN−アセチルトランスフェラーゼをコードする遺伝子の過剰発現によって植物に付与され得る。例えば、米国特許出願第11/405,845号明細書および同第10/427,692号明細書(これらの文献は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)を参照されたい。
【0070】
不稔性遺伝子はまた、DNAコンストラクトにおいてコードされ、物理的な雄穂除去に代わる方法として提供され得る。そのような方法に使用される遺伝子の例としては、雄性組織優先的遺伝子、および米国特許第5,583,210号明細書(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に記載されているQMなどの雄性不稔性表現型を有する遺伝子が挙げられる。他の遺伝子としては、キナーゼ、および雄性または雌性の配偶体の成長に有害な化合物をコードするものが挙げられる。
【0071】
商業的形質もまた、例えばエタノール産生用デンプンを増加させ得る、またはタンパク質を発現させ得る遺伝子もしくは遺伝子群でコードされ得る。形質転換植物の他の重要な商業利用は、米国特許第5,602,321号明細書(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に記載されているようなポリマーおよびバイオプラスチックの生成である。β−ケトチオラーゼ、PHB酵素(ポリヒドロキシ酪酸合成酵素)、およびアセトアセチル−CoA還元酵素(Schubert,et al.,(1988)J.Bacteriol.170:5837−5847を参照。この文献は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)などの遺伝子は、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)の発現を促進する。
【0072】
外因性産物としては、植物酵素および植物性産物、ならびに、原核生物および他の真核生物などの他のソースからのものが挙げられる。そのような産物としては、酵素、補因子、ホルモンなどが挙げられる。
【0073】
他の利用可能な遺伝子およびそれらの関連する表現型の例としては、ウイルス外皮タンパク質および/もしくはRNAをコードする遺伝子、またはウイルス耐性を付与する他のウイルスもしくは植物遺伝子、真菌耐性を付与する遺伝子、収穫量増大を促進する遺伝子、ならびに、寒冷、乾燥によって生ずる脱水、熱および塩分などのストレス、有毒な金属もしくは微量元素などに対する耐性を与える遺伝子が挙げられる。
【0074】
一態様では、プロモーターは、器官の成長、幹細胞、頂端分裂組織の開始および成長に関与する導入遺伝子、例えばWuschel(WUS)遺伝子の発現に使用される。Pioneer Hi−Bred Internationalによる米国特許第7,348,468号明細書、同第7,256,322号明細書、2007年11月22日公開の米国特許出願公開第2007/0271628号明細書、Laux et al.(1996)Development 122:87−96、およびMayer et al.(1998)Cell 95:805−815を参照されたい。WUSの調節により、細胞増殖刺激、器官形成および体細胞胚発生などの植物および/または植物組織の表現型が調節されることが期待される。WUSはまた、体細胞胚発生による形質転換の改善に使用することができる。シロイヌナズナ属(Arabidopsis)WUSの発現は、栄養組織において、体細胞胚に分化し得る幹細胞を誘導することができる(Zuo,et al.(2002)Plant J 30:349−359)。これに関連して、MYB118遺伝子(米国特許第7,148,402号明細書を参照)、MYB115遺伝子(Wang et al.(2008)Cell Research 224−235を参照)、BABYBOOM遺伝子(BBM;Boutilier et al.(2002)Plant Cell 14:1737−1749を参照)、CLAVATA遺伝子(例えば、米国特許第7,179,963号明細書を参照)またはWOX遺伝子(van der Graaff et al.,2009,Genome Biology 10:248、Dolzblasz et al.,2016,Mol.Plant 19:1028−39)もまた興味深い。
【0075】
実例として、以下は、本開示の調節配列に関連して使用することができる他の遺伝子の種類の例の一覧であるが、これらに限定することを意図するものではない。
【0076】
1.昆虫または病気に対する抵抗性を付与し、かつコードする導入遺伝子:
(A)植物の病気抵抗性遺伝子。植物防御は、植物中の病気抵抗性遺伝子(R)産物と病原体中の対応する非病原性(Avr)遺伝子産物との間の特異的相互作用によってしばしば活性化される。特定の病原体種に耐性を示す植物を設計するために、植物種をクローン化された抵抗性遺伝子で形質転換することができる。例えば、Jones,et al.,(1994)Science 266:789(クラドスポリウム・フルブム(Cladosporium fulvum)に対する耐性を付与するトマトCf−9遺伝子のクローニング)、Martin,et al.,(1993)Science 262:1432(タンパク質キナーゼをコードするトマト斑葉細菌病菌(Pseudomonas syringae pv.tomato)に耐性を付与するためのトマトPto遺伝子)、Mindrinos,et al.,(1994)Cell 78:1089(シュードモナス・シリンガエ(Pseudomonas syringae)に対する耐性を付与するシロイヌナズナ属(Arabidopsis)RSP2遺伝子)、McDowell and Woffenden,(2003)Trends Biotechnol.21(4):178−83およびToyoda,et al.,(2002)Transgenic Res.11(6):567−82を参照されたい。これらの文献は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。病気抵抗性植物は、野生型植物と比較して病原性に対する抵抗性がより高いものである。
【0077】
(B)バチルス・チューリンギエンシス(Bacillus thuringiensis)タンパク質、その誘導体、またはそれをモデルとした合成ポリペプチド。例えば、Geiser,et al.,(1986)Gene 48:109を参照されたい。これには、Btデルタ−エンドトキシン遺伝子のクローニングおよびヌクレオチド配列が開示されている。また、デルタ−エンドトキシン遺伝子をコードするDNA分子は、ATCCアクセッション番号40098、67136、31995および31998で、American Type Culture Collection(Rockville,MD)から購入することができる。遺伝子組み換えが行われているバチルス・チューリンギエンシス(Bacillus thuringiensis)導入遺伝子の他の例は、以下の特許および特許出願で与えられており、この目的のために参照により本明細書に組み込まれる:米国特許第5,188,960号明細書、同第5,689,052号明細書、同第5,880,275号明細書、国際公開第91/14778号パンフレット、同第99/31248号パンフレット、同第01/12731号パンフレット、同第99/24581号パンフレット、同第97/40162号パンフレットおよび米国特許出願第10/032,717号明細書、同第10/414,637号明細書および同第10/606,320号明細書(これらの文献は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。
【0078】
(C)エクジステロイドホルモンおよび幼若ホルモンなどの昆虫特異的ホルモンまたはフェロモン。例えば、クローン化された幼若ホルモンエステラーゼ、すなわち幼若ホルモンの付活性化剤のバキュロウイルス発現に関するHammock,et al.,(1990)Nature 344:458による開示を参照されたい。この文献は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0079】
(D)発現すると、その作用を受けた害虫の生理機能を破壊する昆虫特異的ペプチド。例えば、Regan,(1994)J.Biol.Chem.269:9(発現クローニングは昆虫利尿ホルモン受容体のDNAコードを得る)、Pratt,et al.,(1989)Biochem.Biophys.Res.Comm.163:1243(アロスタチンがディプロプテラ・プンクタータ(Diploptera puntata)で特定されている)、Chattopadhyay,et al.,(2004)Critical Reviews in Microbiology 30(1):33−54、Zjawiony,(2004)J Nat Prod 67(2):300−310、Carlini and Grossi−de−Sa,(2002)Toxicon 40(11):1515−1539、Ussuf,et al.,(2001)Curr Sci.80(7):847−853およびVasconcelos and Oliveira,(2004)Toxicon 44(4):385−403の開示を参照されたい。これらの文献は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。Tomalski,et al.の米国特許第5,266,317号明細書(この文献は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)も参照されたい。これには、昆虫特異的毒素をコードする遺伝子が開示されている。
【0080】
(E)モノテルペン、セスキテルペン、ステロイド、ヒドロキサム酸、フェニルプロパノイド誘導体、または殺虫活性を有する他のタンパク質分子に関与する酵素。
【0081】
(F)生物活性分子の改変、例えば翻訳後の改変などに関与する酵素、例えば、解糖酵素、タンパク質分解酵素、脂質分解酵素、ヌクレアーゼ、シクラーゼ、トランスアミナーゼ、エステラーゼ、加水分解酵素、ホスファターゼ、キナーゼ、ホスホリラーゼ、ポリメラーゼ、エラスターゼ、キチナーゼおよびグルカナーゼ(天然であるか合成であるかを問わない)。例えば、Scott,et al.の名前によるPCT出願の国際公開第93/02197号パンフレットを参照されたい。これには、カラーゼ遺伝子のヌクレオチド配列が開示されており、この文献は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。キチナーゼをコードする配列を含むDNA分子は、例えば、ATCCからアクセッション番号39637および67152で入手することができる。また、Kramer,et al.,(1993)Insect Biochem.Molec.Biol.23:691(これはタバコ鉤虫キチナーゼをコードするcDNAのヌクレオチド配列を教示している)およびKawalleck,et al.,(1993)Plant Molec.Biol.21:673(これはパセリubi4−2ポリユビキチン遺伝子を提供している)、米国特許出願第10/389,432号明細書、同第10/692,367号明細書、および米国特許第6,563,020号明細書を参照されたい。これらの文献は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる
【0082】
(G)シグナル伝達を刺激する分子。例えば、マング・ビーン・カルモジュリンcDNAクローンのヌクレオチド配列のBotella,et al.,(1994)Plant Molec.Biol.24:757、およびGriess,et al.,(1994)Plant Physiol.104:1467(これは、トウモロコシカルモジュリンcDNAクローンを提供している)の開示を参照されたい。これらの文献は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0083】
(H)疎水性モーメントペプチド。PCT出願の国際公開第95/16776号パンフレットおよび米国特許第5,580,852号明細書(真菌植物病原体を阻害するタキプレシンのペプチド誘導体の開示)およびPCT出願の国際公開第95/18855号パンフレットおよび米国特許第5,607,914号明細書(病気抵抗性を付与する合成抗微生物ペプチドを教示)を参照されたい。これらの文献は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0084】
(I)膜透過酵素、チャネルフォーマーまたはチャネルブロッカー。例えば、Jaynes,et al.,(1993)Plant Sci.89:43による、トランスジェニックタバコ植物にシュードモナス・ソラナセアラム(Pseudomonas solanacearum)に対する耐性を与えるセクロピン−ベータ溶解性ペプチドアナログ異種発現の開示を参照されたい。この文献は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0085】
(J)ウイルス侵入性タンパク質またはそれから誘導される複合毒素。例えば、形質転換植物細胞中のウイルス外皮タンパク質の蓄積は、外皮タンパク質遺伝子が由来するウイルスおよび関連ウイルスによって引き起こされるウイルスの感染および/または病気の進行に対する耐性を付与する。例えば、Beachy,et al.,(1990)Ann.Rev.Phytopathol.28:451を参照されたい。この文献は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。外皮タンパク質が介在する、アルファルファモザイクウイルス、キュウリモザイクウイルス、タバコ条斑ウイルス、ジャガイモウイルスX、ジャガイモウイルスY、タバコエッチウイルス、タバコ茎壊疽ウイルス、およびタバコモザイクウイルス.Idに対する耐性が、形質転換された植物に付与された。
【0086】
(K)昆虫特異的抗体またはそれから誘導される抗毒素。したがって、例えば、昆虫の消化管の重要な代謝機能を標的とした抗体は、その作用を受けた酵素を不活性化し、昆虫を死滅させるであろう。Cf.Taylor,et al.,Abstract ♯497,SEVENTH INT’L SYMPOSIUM ON MOLECULAR PLANT−MICROBE INTERACTIONS(Edinburgh,Scotland,1994)(一本鎖抗体断片の生成による、トランスジェニックタバコの酵素不活性化)。この文献は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0087】
(L)ウイルス特異的抗体。例えば、Tavladoraki,et al.,(1993)Nature 366:469を参照されたい。この文献には、組み換え抗体遺伝子を発現するトランスジェニック植物がウイルスの攻撃から保護されることが示されており、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0088】
(M)病原体または寄生生物により天然に産生する発達阻害タンパク質。したがって、例えば、真菌エンド−アルファ−1,4−D−ポリガラクツロナーゼは、植物細胞壁ホモ−アルファ−1,4−D−ガラクツロナーゼを可溶化することによって真菌のコロニー形成および植物に養分放出を促進する。Lamb,et al.,(1992)Bio/Technology 10:1436を参照されたい。この文献は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。マメエンドポリガラクツロナーゼタンパク質をコードする遺伝子のクローニングおよび特徴付けは、Toubart,et al.,(1992)Plant J.2:367に記載されている。この文献は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0089】
(N)植物により天然に作られる発達阻害タンパク質。例えば、Logemann,et al.,(1992)Bio/Technology 10:305(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)は、オオムギリボソーム不活性化遺伝子を発現するトランスジェニック植物体が、真菌性の病気に対し高い抵抗性を有することを示した。
【0090】
(O)全身獲得抵抗性(SAR)応答に関与する遺伝子および/または病因関連遺伝子。Briggs,(1995)Current Biology 5(2):128−131、Pieterse and Van Loon,(2004)Curr.Opin.Plant Bio.7(4):456−64およびSomssich,(2003)Cell 113(7):815−6(これらの文献は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。
【0091】
(P)抗真菌遺伝子(Cornelissen and Melchers,(1993)Pl.Physiol.101:709−712およびParijs,et al.,(1991)Planta 183:258−264およびBushnell,et al.,(1998)Can. J.of Plant Path.20(2):137−149)。また、米国特許出願第09/950,933号明細書(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)を参照されたい。
【0092】
(Q)フモニシン、ビューベリシン、モニリホルミンおよびゼアラレノン、ならびにそれらの構造的に関連する誘導体などに対する解毒遺伝子。例えば、米国特許第5,792,931号明細書(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)を参照されたい。
【0093】
(R)シスタチン、およびシステインプロテイナーゼインヒビター。米国特許出願第10/947,979号明細書(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)を参照されたい。
【0094】
(S)デフェンシン遺伝子。国際公開第03/000863号パンフレットおよび米国特許出願第10/178,213号明細書(参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる)を参照されたい。
【0095】
(T)線虫に対する耐性を付与する遺伝子。国際公開第03/033651号パンフレット、およびUrwin,et. al.,(1998)Planta 204:472−479、Williamson(1999)Curr Opin Plant Bio.2(4):327−31(参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる)を参照されたい。
【0096】
(U)真菌コレトトリクム・グラミニコラ(Colletotrichum graminicola)によって引き起こされる炭疽病による茎腐病に対する耐性を付与する、rcg1などの遺伝子。Jung,et al.,Generation−means analysis and quantitative trait locus mapping of Anthracnose Stalk Rot genes in Maize,Theor.Appl.Genet.(1994)89:413−418、および米国仮特許出願第60/675,664号明細書を参照されたい。これらの文献は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0097】
2.除草剤に対する耐性を付与する導入遺伝子、例えば:
(A)イミダゾリノンまたはスルホニル尿素などの、成長点または分裂組織を阻害する除草剤。このカテゴリーの遺伝子の例は、例えば、Lee,et al.,(1988)EMBO J.7:1241およびMiki,et al.,(1990)Theor. Appl.Genet.80:449にそれぞれ記載されているような変異ALSおよびAHAS酵素である。また、米国特許第5,605,011号明細書、同第5,013,659号明細書、同第5,141,870号明細書、同第5,767,361号明細書、同第5,731,180号明細書、同第5,304,732号明細書、同第4,761,373号明細書、同第5,331,107号明細書、同第5,928,937、同第5,378,824号明細書、および国際公開第96/33270号明細書も参照されたい。これらの文献は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0098】
(B)グリホサート(それぞれ5−エノールピルビル−3−ホスホシキメート合成酵素(EPSP)遺伝子およびaroA遺伝子により耐性が付与される)、ならびに、グルホシネート(ホスフィノトリシンアセチルトランスフェラーゼ(PAT)遺伝子およびストレプトマイセス・ハイグロスコピカス(Streptomyces hygroscopicus)ホスフィノトリシンアセチルトランスフェラーゼ(bar)遺伝子)およびピリジノキシプロピオン酸またはフェノキシプロピオン酸およびシクロヘキソン(cycloshexon)(ACC酵素インヒビターをコードする遺伝子)などの他のホスホノ化合物。例えば、Shah,et al.の米国特許第4,940,835号明細書を参照されたい。これには、グリホサート耐性を付与し得るEPSPSの形態のヌクレオチド配列が開示されている。Barry,et al.の米国特許第5,627,061号明細書にもまた、EPSPS酵素をコードする遺伝子が記載されている。また、米国特許第6,566,587号明細書、同第6,338,961号明細書、同第6,248,876B1号明細書、同第6,040,497号明細書、同第5,804,425号明細書、同第5,633,435号明細書、同第5,145,783号明細書、同第4,971,908号明細書、同第5,312,910号明細書、同第5,188,642号明細書、同第4,940,835号明細書、同第5,866,775号明細書、同第6,225,114B1号明細書、同第6,130,366号明細書、同第5,310,667号明細書、同第4,535,060号明細書、同第4,769,061号明細書、同第5,633,448号明細書、同第5,510,471号明細書、米国再発行特許第36,449号明細書、同第37,287Eおよび米国特許第5,491,288号明細書、ならびに欧州特許第1173580号明細書、国際公開第01/66704号パンフレット、欧州特許第1173581号明細書および同第1173582号明細書を参照されたい。これらの文献は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。グリホサート耐性はまた、米国特許第5,776,760号明細書および同第5,463,175号明細書(これらの文献は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)により詳しく記載されているグリホサートオキシドレダクターゼ酵素をコードする遺伝子を発現する植物にも付与される。グリホサート耐性はさらに、グリホサートNアセチルトランスフェラーゼをコードする遺伝子の過剰発現により植物に付与することができる。例えば、米国特許出願第11/405,845号明細書、同第10/427,692号明細書、およびPCT出願第US01/46227号明細書を参照されたい。これらの文献は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。変異aroA遺伝子をコードするDNA分子は、ATCCアクセッション番号39256で得ることができ、その変異遺伝子のヌクレオチド配列はComaiの米国特許第4,769,061号明細書に開示されている。この文献は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。Kumada,et al.の欧州特許出願第0 333 033号明細書、およびGoodman,et al.の米国特許第4,975,374号明細書(これらの文献は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)には、L−ホスフィノトリシンなどの除草剤に対する耐性を付与するグルタミン合成酵素遺伝子のヌクレオチド配列が開示されている。ホスフィノトリシンアセチルトランスフェラーゼ遺伝子のヌクレオチド配列は、Leemans,et al.の欧州特許第0 242 246号明細書および同第0 242 236号明細書、ならびにDe Greef,et al.,(1989)Bio/Technology 7:61(これらの文献は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に示されており、そこには、ホスフィノトリシンアセチルトランスフェラーゼ活性をコードするキメラbar遺伝子を発現するトランスジェニック植物の作製について記載されている。また、米国特許第5,969,213号明細書、同第5,489,520号明細書、同第5,550,318号明細書、同第5,874,265号明細書、同第5,919,675号明細書、同第5,561,236号明細書、同第5,648,477号明細書、同第5,646,024号明細書、同第6,177,616B1号明細書および同第5,879,903号明細書を参照されたい。これらの文献は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。セトキシジムおよびハロキシホップなどのフェノキシプロピオン酸およびシクロスヘキソンに対する耐性を付与する遺伝子の例は、Marshall,et al.,(1992)Theor.Appl.Genet.83:435(この文献は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に記載されているAcc1−S1、Acc1−S2およびAcc1−S3の遺伝子である。
【0099】
(C)トリアジン(psbA遺伝子およびgs+遺伝子)およびベンゾニトリル(ニトリラーゼ遺伝子)などの、光合成を阻害する除草剤。Przibilla,et al.,(1991)Plant Cell 3:169(この文献は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)には、クラミドモナス属(Chlamydomonas)の変異psbA遺伝子をコードするプラスミドによる形質転換が記載されている。ニトリラーゼ遺伝子のヌクレオチド配列はStalkerの米国特許第4,810,648号明細書(この文献は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に開示されており、これらの遺伝子を含有するDNA分子は、ATCCアクセッション番号53435、67441および67442で入手可能である。グルタチオンS−トランスフェラーゼをコードするDNAのクローニングおよび発現は、Hayes,et al.,(1992)Biochem.J.285:173に記載されている。この文献は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0100】
(D)アセトヒドロキシ酸合成酵素は、この酵素を発現する植物を様々な種類の除草剤に対して耐性にすることが見出され、各種の植物に導入されている(例えば、Hattori,et al.,(1995)Mol Gen Genet 246:419(この文献は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)を参照されたい)。除草剤に対する耐性を付与する遺伝子としては、ラットシトクロムP4507A1のキメラタンパク質および酵母NADPH−シトクロムP450オキシドレダクターゼをコードする遺伝子(Shiota,et al.,(1994)Plant Physiol.106(1):17−23)、グルタチオンレダクターゼおよびスーパーオキシド・ジスムターゼの遺伝子(Aono,et al.,(1995)Plant Cell Physiol 36:1687)、および様々なホスホトランスフェラーゼ(Datta,et al.,(1992)Plant Mol Biol 20:619)が挙げられる。これらの文献は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0101】
(E)プロトポルフィリノーゲンオキシダーゼ(protox)は、葉緑素の生成に必要であり、葉緑素はあらゆる植物の生存に必要である。protox酵素は、様々な除草性化合物の標的として働く。これらの除草剤はまた、存在する異なる種類の植物全ての成長を阻害し、それら全体を破壊する。これらの除草剤に対し耐性を有する改変protox活性を含む植物の成長は、米国特許第6,288,306B1号明細書、同第6,282,837B1号明細書、同第5,767,373号明細書、および国際公開第01/12825号パンフレットに記載されている。これらの文献は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0102】
3.粒子特性の改変、またはそれに寄与する導入遺伝子。例えば:
(A)例えば、以下による脂肪酸の改変:
(1)植物のステアリン酸含有量を増大させるステアロイル−ACP不飽和化酵素の下方制御。Knultzon,et al.,(1992)Proc.Natl.Acad. Sci.USA 89:2624および国際公開第99/64579号明細書(トウモロコシの脂質プロファイルを改変するデサチュラーゼの遺伝子)を参照されたい。これらの文献は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
(2)FAD−2遺伝子の改変によるオレイン酸の増大および/またはFAD−3遺伝子の改変によるリノレン酸の低減(米国特許第6,063,947号明細書、同第6,323,392号明細書、同第6,372,965号明細書、および国際公開第93/11245号パンフレットを参照されたい(これらの文献は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる))。
(3)国際公開第01/12800号パンフレット(この文献は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に記載されているような共役リノレン酸またはリノール酸含有量の改変。
(4)LEC1、AGP、Dek1、Superal1、mi1ps、lpa1、lpa3、hptまたはhggtなどの種々のlpa遺伝子。例えば、国際公開第02/42424号パンフレット、同第98/22604号パンフレット、同第03/011015号パンフレット、米国特許第6,423,886号明細書、同第6,197,561号明細書、同第6,825,397、米国特許出願第2003/0079247号明細書、同第2003/0204870号明細書、国際公開第02/057439号パンフレット、同第03/011015号パンフレット、およびRivera−Madrid,et. al.,(1995)Proc.Natl.Acad.Sci.92:5620−5624を参照されたい。これらの文献は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0103】
(B)例えば、以下によるリン含有量の改変:
(1)フィターゼをコードする遺伝子の導入は、フィチン酸の分解を増強し、形質転換した植物により多くの遊離リン酸を加えることになろう。例えば、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)フィターゼ遺伝子のヌクレオチド配列の開示については、Van Hartingsveldt,et al.,(1993)Gene 127:87を参照されたい。この文献は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
(2)フィターゼ含有量を減少させる遺伝子の上方制御。トウモロコシでは、これは、例えば、Raboy,et al.,(1990)Maydica 35:383に記載されるように、低濃度のフィチン酸で特徴付けられるトウモロコシ変異体で同定されるLPAアレルなどの1つ以上のアレルと関連するDNAをクローニングし、その後、再導入することによって、かつ/または国際公開第02/059324号パンフレット、米国特許出願第2003/0009011号明細書、国際公開第03/027243号パンフレット、米国特許出願第2003/0079247号明細書、国際公開第99/05298号パンフレット、米国特許第6,197,561号明細書、米国特許第6,291,224号明細書、米国特許第6,391,348号明細書、国際公開第2002/059324号パンフレット、米国特許出願第2003/0079247号明細書、国際公開第98/45448号パンフレット、国際公開第99/55882号パンフレット、国際公開第01/04147号パンフレット(これらの文献は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に記載されるように、イノシトールキナーゼ活性を変えることによって行い得るであろう。
【0104】
(C)例えば、デンプンの分枝パターンに作用する酵素の遺伝子、またはNTRおよび/もしくはTRXなどのチオレドキシンを改変する遺伝子を変えること(米国特許第6,531,648号明細書を参照されたい(この文献は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる))、ならびに/またはcs27、TUSC27もしくはen27などのガンマゼインノックアウトもしくは変異体(米国特許第6,858,778号、米国特許出願公開第2005/0160488号および同第2005/0204418号を参照されたい(これらの文献は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる))によって得られる炭水化物の改変。Shiroza,et al.,(1988)J.Bacteriol.170:810(ストレプトコッカス・ミュータンス(Streptococcus mutans)フルクトシルトランスフェラーゼ遺伝子のヌクレオチド配列)、Steinmetz,et al.,(1985)Mol.Gen.Genet.200:220((バチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)レバンスクラーゼ遺伝子のヌクレオチド配列)、Pen,et al.,(1992)Bio/Technology 10:292(バチルス・リケニフォルミス(Bacillus licheniformis)アルファ−アミラーゼを発現するトランスジェニック植物の作出)、Elliot,et al.,(1993)Plant Molec.Biol.21:515(トマトインベルターゼ遺伝子のヌクレオチド配列)、Sogaard,et al.,(1993)J.Biol.Chem.268:22480(オオムギアルファ−アミラーゼ遺伝子の部位特異的変異誘発)、およびFisher,et al.,(1993)Plant Physiol.102:1045(トウモロコシ内胚乳デンプン分枝酵素II)、国際公開第99/10498号パンフレット(UDP−D−キシロース4−エピメラーゼ、Fragile1および2、Ref1、HCHL、C4Hの改変による消化性の改善ならびに/またはデンプン抽出)、米国特許第6,232,529号明細書(デンプンレベルの改変による高脂肪種子の作出方法(AGP))を参照されたい。これらの文献は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。上記の脂肪酸修飾遺伝子を使用して、デンプンと油の経路の相互関係によってデンプン含有量および/または組成に影響を及ぼすこともできる。
【0105】
(D)トコフェロールまたはトコトリエノールの改変などの、抗酸化物質の含有量または組成の改変。例えば、米国特許第6,787,683号明細書、米国特許出願第2004/0034886号明細書および国際公開第00/68393号パンフレット(フィチルプレニルトランスフェラーゼ(ppt)の改変による抗酸化物質レベルの操作を含む)、国際公開第03/082899号パンフレット(ホモゲンチシン酸ゲラニルゲラニルトランスフェラーゼ(hggt)の変更による)を参照されたい。これらの文献は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0106】
(E)種子の必須アミノ酸の改変。例えば、米国特許第6,127,600号明細書(種子中の必須アミノ酸の蓄積を増加させる方法)、米国特許第6,080,913号明細書(種子中の必須アミノ酸の蓄積を増加させるバイナリ方法)、米国特許第5,990,389号明細書(高リシン)、国際公開第99/40209号パンフレット(種子中のアミノ酸組成の改変)、国際公開第99/29882号パンフレット(タンパク質のアミノ酸の改変方法)、米国特許第5,850,016号明細書(種子中のアミノ酸組成の改変)、国際公開第98/20133号パンフレット(必須アミノ酸レベルを高めたタンパク質)、米国特許第5,885,802号明細書(高メチオニン)、米国特許第5,885,801号明細書(高トレオニン)、米国特許第6,664,445号明細書(植物アミノ酸生合成酵素)、米国特許第6,459,019号明細書(リシンおよびトレオニンの増加)、米国特許第6,441,274号明細書(植物トリプトファン合成酵素ベータサブユニット)、米国特許第6,346,403号明細書(メチオニン代謝酵素)、米国特許第5,939,599号明細書(高硫黄)、米国特許第5,912,414号明細書(メチオニンの増加)、国際公開第98/56935号パンフレット(植物アミノ酸生合成酵素)、国際公開第98/45458号パンフレット(より高い割合で必須アミノ酸を含む改変種子タンパク質)、国際公開第98/42831号パンフレット(リシンの増加)、米国特許第5,633,436号明細書(含硫アミノ酸含有量の増加)、米国特許第5,559,223号明細書(植物の栄養価を改善するためにプログラム可能なレベルの必須アミノ酸を含有する、定義済み構造を持つ合成貯蔵タンパク質)、国際公開第96/01905号パンフレット(トレオニンを増加)、国際公開第95/15392号パンフレット(リシンの増加)、米国特許出願公開第2003/0163838号明細書、米国特許出願公開第2003/0150014号明細書、米国特許出願公開第2004/0068767号明細書、米国特許第 6,803,498号明細書、国際公開第01/79516号パンフレットおよび国際公開第00/09706(CesA:セルロース合成酵素)、米国特許第6,194,638号明細書(ヘミセルロース)、米国特許第6,399,859号明細書および米国特許出願公開第2004/0025203号明細書(UDPGdH)、米国特許第6,194,638号明細書(RGP)を参照されたい。これらの文献は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。
【0107】
4.部位特異的組み込みのための部位を作製する遺伝子遺伝子
これには、FLP/FRT系に使用可能なFRTおよび/またはCre/Loxp系に使用可能なLox部位の導入が含まれる。例えば、Lyznik,et al.,(2003)Plant Cell Rep 21:925−932および国際公開第99/25821号パンフレットを参照されたい。これらの文献は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。使用可能な他の系としては、ファージMuのGinリコンビナーゼ(Maeser,et al.,1991;Vicki Chandler,The Maize Handbook ch.118(Springer−Verlag 1994)、エシェリキア・コリ(E. coli)のPinリコンビナーゼ(Enomoto,et al.,1983)、およびpSR1プラスミドのR/RS系(Araki,et al.,1992)が挙げられる。これらの文献は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0108】
5.非生物的ストレス耐性(限定はされないが、開花、雄穂および種子の発達、窒素利用効率の増強、窒素反応性の改変、乾燥耐性または乾燥抵抗性、耐寒性または寒冷抵抗性、および耐塩性または塩抵抗性を含む)に影響を及ぼし、ストレス下で収穫量を増加させる遺伝子。例えば、国際公開第00/73475号明細書(リンゴ酸の改変によって水使用効率が改変される);米国特許第5,892,009号明細書、米国特許第5,965,705号明細書、米国特許第5,929,305号明細書、米国特許第5,891,859号明細書、米国特許第6,417,428号明細書、米国特許第6,664,446号明細書、米国特許第6,706,866号明細書、米国特許第6,717,034号明細書、国際公開第2000/060089号パンフレット、国際公開第2001/026459号パンフレット、国際公開第2001/035725号パンフレット、国際公開第2001/034726号パンフレット、国際公開第2001/035727号パンフレット、国際公開第2001/036444号パンフレット、国際公開第2001/036597号パンフレット、国際公開第2001/036598号パンフレット、国際公開第2002/015675号パンフレット、国際公開第2002/017430号パンフレット、国際公開第2002/077185号パンフレット、国際公開第2002/079403号パンフレット、国際公開第2003/013227号パンフレット、国際公開第2003/013228号パンフレット、国際公開第2003/014327号パンフレット、国際公開第2004/031349号パンフレット、国際公開第2004/076638号パンフレット、国際公開第98/09521号パンフレットおよび国際公開第99/38977号パンフレット(凍結、高塩分および乾燥という植物に対する負の効果を緩和し、植物表現型に他の正の効果を付与するのに有効な、CBF遺伝子および転写因子などの遺伝子を記載している);米国特許出願公開第2004/0148654号明細書および国際公開01/36596号パンフレット(植物中のアブシジン酸が改変され、それにより、収穫量の増加および/または非生物的ストレスに対する抵抗性の増大など、植物の表現型が改善される);国際公開第2000/006341号パンフレット、国際公開第04/090143、米国特許出願第10/817483号明細書および米国特許第6,992,237号明細書(サイトカイニン発現が改変され、それにより、乾燥耐性などのストレス耐性が増大し、かつ/または収穫量が増加した植物が得られる)を参照されたい。これらの文献は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。また、国際公開第02/02776号パンフレット、国際公開第2003/052063号パンフレット、特開2002−281975号公報、米国特許第6,084,153号明細書、国際公開第01/64898号パンフレット、米国特許第6,177,275号明細書および米国特許第6,107,547号明細書(窒素利用の増強および窒素反応性の改変)を参照されたい。これらの文献は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。エチレンの改変については、米国特許出願公開第2004/0128719号明細書、米国特許出願公開第2003/0166197号明細書および国際公開第2000/32761号パンフレットを参照されたい。これらの文献は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。非生物的ストレスの植物転写因子または転写調節因子については、例えば、米国特許出願公開第2004/0098764号明細書または米国特許出願公開第2004/0078852号明細書を参照されたい。これらの文献は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0109】
収穫量、開花、植物成長および/もしくは植物構造などの植物の成長および農業形質に影響を及ぼす他の遺伝子および転写因子を、植物に導入または移入することができる。例えば、国際公開第97/49811(LHY)号パンフレット、国際公開第98/56918(ESD4)号パンフレット、国際公開第97/10339号パンフレットおよび米国特許第6,573,430号明細書(TFL)、米国特許第6,713,663号明細書(FT)、国際公開第96/14414号パンフレット(CON)、国際公開第96/38560号パンフレット、国際公開第01/21822号パンフレット(VRN1)、国際公開第00/44918号パンフレット(VRN2)、国際公開第99/49064号パンフレット(GI)、国際公開第00/46358号パンフレット(FRI)、国際公開第97/29123号パンフレット、米国特許第6,794,560号明細書、米国特許第6,307,126号明細書(GAI)、国際公開第99/09174号パンフレット(D8およびRht)、ならびに国際公開第2004/076638号パンフレットおよび国際公開第2004/031349号パンフレット(転写因子)を参照されたい。これらの文献は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0110】
本明細書に開示される、調節配列に作動可能に連結している異種ヌクレオチド配列、およびそれに関連する生物活性断片および多様体は、標的遺伝子のアンチセンス配列であり得る。用語「アンチセンスDNAヌクレオチド配列」は、そのヌクレオチド配列の5’から3’という通常の方向に対し、その逆方向の配列を意味するものである。植物細胞に送達されると、アンチセンスDNA配列の発現は、標的遺伝子のDNAヌクレオチド配列の正常な発現を妨げる。アンチセンスヌクレオチド配列は、標的遺伝子のDNAヌクレオチド配列の転写によって生じた内因性メッセンジャーRNA(mRNA)に相補的でハイブリダイズすることができるRNA転写産物をコードする。この場合、標的遺伝子によってコードされる天然タンパク質の産生が阻害され、所望の表現型応答を得る。アンチセンス配列は、その配列が対応するmRNAにハイブリダイズし、その発現を妨げる限り、改変され得る。このように、対応するアンチセンス配列に対し70%、80%、85%の配列同一性を有するアンチセンス構築物を使用し得る。さらに、アンチセンスヌクレオチドの部分を使用して、標的遺伝子の発現を妨げることができる。一般に、少なくとも50ヌクレオチド、100ヌクレオチド、200ヌクレオチドもしくはそれ以上からなる配列を使用し得る。したがって、本明細書に開示のプロモーター配列は、アンチセンスDNA配列に作動可能に連結して、植物中の天然タンパク質の発現を抑制または阻害することができる。
【0111】
「RNAi」は遺伝子発現を抑制する一連の関連手法を指す(例えば、米国特許第6,506,559号明細書(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)を参照されたい)。他の名称で呼ばれる旧い手法は、今日、同じメカニズムに依っていると考えられるが、文献では異なる名称が付されている。これらには、「アンチセンス阻害」、すなわち標的タンパク質の発現を抑制し得るアンチセンスRNA転写産物の産生、および、同一または類似性の高い外来性または内在性遺伝子の発現を抑制することができるセンスRNA転写産物の産生を指す「コサプレッション」または「センスサプレッション」が含まれる(米国特許第5,231,020号明細書(この文献は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる))。そのような手法は、1本はサイレンシングする標的遺伝子の相補的な二本鎖RNAの蓄積を生じるコンストラクトの使用に依存している。本態様の調節配列を使用して、マイクロRNAおよびsiRNAを含むRNA干渉を起こすコンストラクトの発現を駆動することができる。
【0112】
本明細書で使用する場合、用語「プロモーター」または「転写開始領域」は、通常、RNAポリメラーゼIIを誘導して特定のコード配列に適切な転写開始部位でRNA合成を開始させることができるTATAボックスを含むDNAの調節領域を意味する。プロモーターはさらに、TATAボックスの上流、すなわち5’側に一般に位置し、転写開始速度に影響を及ぼす、上流プロモーターエレメントと称する他の認識配列を含み得る。本明細書に開示のプロモーター領域のヌクレオチド配列が特定されたことが認められており、本明細書で特定された特定のプロモーター領域の上流の5’側の非翻訳領域におけるさらなる調節エレメントを単離し特定するのはこの分野における最新技術である。さらにキメラプロモーターが提供され得る。そのようなキメラは、異種の転写調節領域の断片および/または多様体に融合したプロモーター配列の部分を含む。したがって、本明細書に開示のプロモーター領域は、コード配列、エンハンサーなどの組織および一時的な発現の原因であるものなどの上流調節エレメントを含み得る。同様に、生殖組織などの所望の組織での発現を可能にするプロモーターエレメントが特定され、単離され、他のコアプロモーターと共に使用して、初期内胚乳優先的発現を付与することができる。本開示のこの態様では、「コアプロモーター」は、プロモーターエレメントのないプロモーターを意味するものである。
【0113】
本明細書で使用する場合、用語「調節エレメント」はまた、通常、常にではないが、RNAポリメラーゼおよび/または特定の部位で転写を開始するのに必要な他の因子を認識することによって、コード領域の発現を制御する配列を含む、構造遺伝子のコード配列の上流(5’)側のDNA配列を指す。RNAポリメラーゼまたは特定の部位で確実に開始させる他の転写因子を認識する調節エレメントの一例は、プロモーターエレメントである。プロモーターエレメントは、転写の開始に関与しているコアプロモーターエレメント、および遺伝子の発現を変化させる他の制御エレメントを含む。イントロン、またはコード領域配列も3’側に位置しているヌクレオチド配列もまた、目的のコード領域の発現の調節に寄与し得ることは理解されるべきである。好適なイントロンの例としては、限定はされないが、トウモロコシIVS6イントロン、またはトウモロコシアクチンイントロンが挙げられる。調節エレメントはまた、転写開始部位の下流(3’)側、転写領域内、またはそれらの両方に位置するエレメントを含み得る。本開示との関連では、転写後の調節エレメントとして、転写開始の後に活性なエレマント、例えば、翻訳エンハンサーおよび転写エンハンサー、翻訳リプレッサーおよび転写リプレッサー、ならびにmRNA安定性決定因子が挙げられる。
【0114】
本開示の調節エレメントまたはその多様体もしくは断片は、異種調節エレメントの活性を調節するために、異種調節エレメントまたはプロモーターに作動可能に結合し得る。そうした調節には、異種調節エレメントの転写活性の増強もしくは抑制、転写後イベントの調節、または異種調節エレメントの転写活性の増強もしくは抑制および転写後イベントの調節が含まれる。例えば、本開示の1つ以上の調節エレメントまたはその断片は、構成的プロモーター、誘導性プロモーターもしくは組織特異的プロモーターまたはそれらの断片を作動可能に結合して、植物細胞中の所望の組織内のそのようなプロモーターの活性を調節することができる。
【0115】
本開示の調節配列またはその多様体もしくは断片は、目的の異種ヌクレオチド配列に作動可能に結合すると、このコンストラクトを発現する植物組織中の異種ヌクレオチド配列の構成的または一時的発現を駆動することができる。用語「構成的発現」とは、異種ヌクレオチド配列の発現が植物の至る所に見出されることを意味する。
【0116】
本開示で使用される「異種ヌクレオチド配列」は、本開示のプロモーターと天然では一緒に存在することも、作動可能に連結していることもない配列である。このヌクレオチド配列はプロモーター配列に対し異種であるが、宿主植物に対しては、同種の、天然の、異種の、または外来のものであり得る。同様に、プロモーター配列は、宿主植物および/または目的のポリヌクレオチドに対して同種の、天然の、異種の、または外来のものであり得る。
【0117】
本開示の単離プロモーター配列は、一定範囲の発現レベルを有する異種ヌクレオチド配列を提供するために、改変することができる。したがって、全プロモーター領域より少ない領域を使用することができ、目的のヌクレオチド配列の発現を駆動する能力を保持することができる。プロモーター配列の部分を欠失させる方法とは異なる方法で、mRNAの発現レベルを変えることができることは認識されている。例えば、トランケーションの過程で除かれるネガティブ調節エレメント(リプレッサーで)があるなら、mRNAの発現レベルを低下させることができ、あるいは、プロモーター欠失の結果として、発現を増大させることができる。一般に、単離されたプロモーター配列の少なくとも約20個のヌクレオチドが、ヌクレオチド配列の発現を駆動するために使用されるであろう。
【0118】
異種ヌクレオチド配列は、植物転写因子、すなわち、コードしたタンパク質がプロモーター、エンハンサーまたは他の調節配列に結合し、その過程で、関連する内因性遺伝子の転写を刺激または抑制することができる配列を含み得る。転写因子の例としては、AP2/EREBPファミリーのメンバー(例えば、BBM(ODP2)、plethoraおよびaintegumentaサブファミリー、LEC1およびHAP3などのCAATボックス結合タンパク質、ならびにWUS1、WUS2、WUS3、WOX2、WOX2a、WOX4、WOX5などのホメオボックス含有タンパク質など)、そして、MYB、bHLH、NAC、MADS、bZIPおよびWRKYファミリーのメンバーが挙げられる。シロイヌナズナ属(Arabidopsis)の約26,000の全遺伝子のうち、1500を超える遺伝子が転写調節遺伝子であり、そのうちの約45%が植物に固有のものである(Reichmann et al.,2000.Science 290:2105−2110)。
【0119】
転写レベルを高めるために、エンハンサーが本開示のプロモーター領域と組み合わせて使用し得ることがわかった。エンハンサーは、プロモーター領域の発現を増加させるように作用するヌクレオチド配列である。エンハンサーは当該技術分野で知られており、SV40エンハンサー領域、35Sエンハンサーエレメントなどが挙げられる。いくつかのエンハンサーはまた、通常のプロモーター発現パターンを、例えば、プロモーターを構成的に発現させることによって変えることが知られている(エンハンサーがなければその同じプロモーターが1つまたは少数の特定の組織でのみ発現する場合)。
【0120】
本開示の単離されたプロモーター配列の改変は、異種ヌクレオチド配列の一定の範囲の発現を提供し得る。したがって、それらは弱プロモーターまたは強プロモーターに改変され得る。一般に、「弱プロモーター」は、低レベルでコード配列の発現を駆動するプロモーターを意味する。「低レベル」の発現とは、約1/10,000〜約1/100,000〜約1/500,000の転写レベルで発現することを意味する。逆に、強プロモーターは、高レベル、すなわち約1/10〜約1/100〜約1/1000の転写レベルでコード配列の発現を駆動する。
【0121】
PLTPプロモーターなどの本開示のプロモーターを天然のコード配列と共に使用して、発現を増加または低減し、それにより形質転換植物の表現型を変化させ得ることがわかった。PLTPプロモーターおよびLTP3プロモーター(本明細書の表1を参照されたい)などの本開示に開示されるヌクレオチド配列、ならびにそれらの多様体および断片は、いかなる植物の遺伝子操作にも有用である。調節配列は、その発現が制御されて所望の表現型応答を獲得する異種ヌクレオチド配列に作動可能に結合しているなら、本態様において有用である。用語「作動可能に結合している」は、異種ヌクレオチド配列の転写または翻訳が、プロモーター配列の影響下で行われることを意味する。このように、本開示のプロモーターのヌクレオチド配列は、目的の植物における発現のために、より詳しくは植物の生殖組織における発現のために、目的の異種ヌクレオチド配列と共に発現カセットに提供され得る。
【0122】
本開示の一態様では、発現カセットは、異種ヌクレオチド配列に作動可能に連結した、PLTPおよびLTP3プロモーターなどの本開示のプロモーターヌクレオチド配列、またはそれらの多様体もしくは断片の1つを含む転写開始領域を含む。そのような発現カセットは、調節領域の転写調節下にヌクレオチド配列を挿入するための複数の制限酵素認識部位を有し得る。発現カセットはさらに、選択マーカー遺伝子および3’終端領域を含み得る。
【0123】
発現カセットは、転写の5’〜3’方向に、宿主生物において機能する、転写開始領域(すなわち、本開示のプロモーター、またはその多様体もしくは断片)、翻訳開始領域、目的の異種ヌクレオチド配列、翻訳終端領域、および、場合により転写終端領域を含み得る。調節領域(すなわち、プロモーター、転写調節領域および翻訳終端領域)、および/または本態様のポリヌクレオチドは、宿主細胞に対し、または相互に天然/類似であり得る。あるいは、調節領域および/または本態様のポリヌクレオチドは、宿主細胞に対し、または相互に異種であり得る。本明細書で使用する場合、配列に関連した「異種の」は、外来種を起源とする配列であるか、または同一種からのものであれば、組成および/またはゲノム遺伝子座が意図的な人的介入によって天然の形態から変化した配列である。例えば、異種ポリヌクレオチドに作動に可能に連結したプロモーターは、そのポリヌクレオチドが由来する種と異なる種からのものであるか、または、同一/類似種からのものであれば、一方もしくは両方が元の形態および/もしくはゲノム遺伝子座から実質的に改変されており、あるいは、プロモーターが、作動可能に結合しているポリヌクレオチドに対し天然のプロモーターではない。
【0124】
PLTPおよびLTP3などの本開示のプロモーターを用いて異種ヌクレオチド配列を発現させることが好ましくあり得るが、天然の配列を発現させてもよい。そのようなコンストラクトは、植物または植物細胞におけるタンパク質の発現レベルを変化させるであろう。したがって、植物または植物細胞の表現型が改変される。
【0125】
終端領域は転写開始領域と同じ由来であっても、作動可能に連結した目的のDNA配列と同じ由来であっても、宿主植物と同じ由来であっても、他のソース由来(すなわち、プロモーター、発現するDNA配列、宿主植物、またはこれらの任意の組み合わせに対し外来もしくは異種)であってもよい。適切な終端領域は、オクトピンシンターゼ終端領域およびノパリンシンターゼ終端領域などのアグロバクテリウム・ツメフアシェンス(A.tumefaciens)のTiプラスミドから入手可能である。Guerineau, et al.,(1991)Mol.Gen.Genet.262:141−144、Proudfoot,(1991)Cell 64:671−674、Sanfacon,et al.,(1991)Genes Dev.5:141−149、Mogen,et al.,(1990)Plant Cell 2:1261−1272、Munroe,et al.,(1990)Gene 91:151−158、Ballas,et al.,(1989)Nucleic Acids Res.17:7891−7903、およびJoshi,et al.,(1987)Nucleic Acid Res.15:9627−9639もまた参照されたい。これらの文献は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0126】
本開示の配列を含む発現カセットはまた、生命体に同時形質転換する遺伝子のヌクレオチド配列をさらに少なくとも1つ含有することができる。あるいは、そのような追加配列を他の発現カセットに供してもよい。
【0127】
必要に応じて、発現が本開示の初期内胚乳組織優先的プロモーター配列の制御下にあるヌクレオチド配列、および任意の追加ヌクレオチドは、形質転換植物における発現を増加させるために最適化することができる。すなわち、発現を改善するために、これらのヌクレオチド配列を、植物に好適なコドンを用いて合成することができる。例えば、宿主好適コドンの利用の議論については、Campbell and Gowri,(1990)Plant Physiol.92:1−11(この文献は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)を参照されたい。植物好適遺伝子の合成方法は、この分野で利用可能である。例えば、米国特許第5,380,831号明細書、同第5,436,391号明細書、およびMurray,et al.,(1989)Nucleic Acids Res.17:477−498を参照されたい。これらの文献は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0128】
細胞宿主における遺伝子発現を強化するためのさらなる配列の改変は知られている。これらには、疑似ポリアデニル化シグナルをコードする配列、エクソン−イントロンスプライス部位シグナルをコードする配列、トランスポゾン様リピートをコードする配列、および遺伝子の発現に有害であり得る他のそのようなよく特徴付けられた配列の除去が含まれる。宿主細胞において発現した既知の遺伝子を参考にして算出される、異種ヌクレオチド配列のGC含量を、所与の細胞宿主の平均レベルに調節することができる。可能であれば、予測されるヘアピンmRNA二次構造を回避するために配列を改変する。
【0129】
発現カセットはさらに、5’リーダー配列を含むことができる。そのようなリーダー配列は、翻訳を強化するように働き得る。翻訳リーダーは当該技術分野で知られており、限定はされないが、ピコルナウイルスリーダー、例えばEMCVリーダー(脳心筋炎5’非コード領域)(Elroy−Stein,et al.,(1989)Proc. Nat. Acad.Sci.USA 86:6126−6130);ポチウイルス、例えばTEVリーダー(タバコエッチウイルス(Tobacco Etch Virus))(Allison,et al.,(1986)Virology 154:9−20);MDMVリーダー(トウモロコシ萎縮モザイクウイルス(Maize Dwarf Mosaic Virus));ヒト免疫グロブリン重鎖結合タンパク質(BiP)(Macejak,et al.,(1991)Nature 353:90−94);アルファルファモザイクウイルス(alfalfa mosaic virus)の外皮タンパク質mRNA由来の非翻訳リーダー(AMV RNA 4)(Jobling,et al.,(1987)Nature 325:622−625);タバコモザイクウイルス(tobacco mosaic virus)リーダー(TMV)(Gallie,et al.,(1989)Molecular Biology of RNA,pages 237−256)、およびトウモロコシクロロティックモトルウイルス(maize chlorotic mottle virus)リーダー(MCMV)(Lommel,et al.,(1991)Virology 81:382−385)が挙げられる。これらの文献は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。Della−Cioppa,et al.,(1987)Plant Physiology 84:965−968(この文献は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)もまた参照されたい。mRNA安定性を高めることが知られている方法、例えば、トウモロコシユビキチンイントロン(Christensen and Quail,(1996)Transgenic Res.5:213−218、Christensen,et al.,(1992)Plant Molecular Biology 18:675−689)、またはトウモロコシAdhIイントロン(Kyozuka,et al.,(1991)Mol.Gen.Genet.228:40−48、Kyozuka,et al.,(1990)Maydica 35:353−357)などのイントロンもまた利用することができる。これらの文献は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0130】
本態様のDNAコンストラクトはまた、必要に応じて、さらなるエンハンサー、翻訳もしくは転写エンハンサーを含み得る。これらのエンハンサー領域は、当業者にはよく知られており、ATG開始コドンおよび隣接配列を含み得る。開始コドンは、全配列の翻訳を確かにするため、コード配列のリーディングフレームと同調していなければならない。翻訳調節シグナルと開始コドンは、天然および合成双方の様々な起源に由来するものであってよい。翻訳開始領域は、転写開始領域のソースまたは構造遺伝子から提供され得る。配列はまた、遺伝子発現のために選択された調節エレメントに由来してもよく、特に、mRNAの翻訳を増大させるように改変してもよい。転写レベルを高めるために、エンハンサーを本態様のプロモーター領域と組み合わせて利用し得ることがわかった。エンハンサーは当該技術分野で知られており、SV40エンハンサー領域、35Sエンハンサーエレメントなどが挙げられる。
【0131】
発現カセットの調製には、各種DNA断片が、適当な配向で、必要ならば、適当なリーディングフレームにおけるDNA配列を提供するように操作され得る。この終わり近くに、アダプターまたはリンカーがDNA断片の結合に使用され得、あるいは、適当な制限酵素認識部位、不要なDNAの除去、制限酵素認識部位の除去などを提供するための他の操作が行われ得る。この目的のために、インビトロでの変異誘発、プライマー修復、制限、アニーリング、再置換、例えばトランジションおよびトランスバージョンが行われ得る。
【0132】
レポーター遺伝子または選択マーカー遺伝子もまた本開示の発現カセットに含まれ得る。当該技術分野で知られる好適なレポーター遺伝子の例は、例えば、Jefferson,et al.,(1991)in Plant Molecular Biology Manual,ed.Gelvin,et al.,(Kluwer Academic Publishers),pp.1−33、DeWet,et al.,(1987)Mol. Cell.Biol.7:725−737、Goff,et al.,(1990)EMBO J.9:2517−2522、Kain,et al.,(1995)Bio Techniques 19:650−655およびChiu,et al.,(1996)Current Biology 6:325−330に見出すことができる。これらの文献は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0133】
形質転換された細胞または組織を選択するための選択マーカー遺伝子としては、抗生物質耐性または除草剤耐性を付与する遺伝子を挙げることができる。好適な選択マーカー遺伝子の例としては、限定はされないが、クロラムフェニコール耐性をコードする遺伝子(Herrera Estrella,et al.,(1983)EMBO J.2:987−992)、メトトレキサート耐性をコードする遺伝子(Herrera Estrella,et al.,(1983)Nature 303:209−213、Meijer, et al.,(1991)Plant Mol.Biol.16:807−820)、ハイグロマイシン耐性をコードする遺伝子(Waldron,et al.,(1985)Plant Mol.Biol.5:103−108およびZhijian,et al.,(1995)Plant Science 108:219−227)、ストレプトマイシン耐性をコードする遺伝子(Jones,et al.,(1987)Mol.Gen.Genet.210:86−91)、スペクチノマイシン耐性をコードする遺伝子(Bretagne−Sagnard,et al.,(1996)Transgenic Res.5:131−137)、ブレオマイシン耐性をコードする遺伝子(Hille,et al.,(1990)Plant Mol.Biol.7:171−176)、スルホンアミド耐性をコードする遺伝子(Guerineau,et al.,(1990)Plant Mol.Biol.15:127−36)、ブロモキシニル耐性をコードする遺伝子(Stalker,et al.,(1988)Science 242:419−423)、グリホサート耐性をコードする遺伝子(Shaw,et al.,(1986)Science 233:478−481、米国特許出願第10/004,357号明細書および同第10/427,692号明細書)、ホスフィノトリシン耐性をコードする遺伝子(DeBlock,et al.,(1987)EMBO J.6:2513−2518)が挙げられる。これらの文献は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0134】
トランスジェニックイベントの回収での利用に役立つ他の遺伝子としては、限定はされないが、GUS(ベータ−グルクロニダーゼ;Jefferson,(1987)Plant Mol.Biol.Rep.5:387)、GFP(緑色蛍光タンパク質;Chalfie,et al.,(1994)Science 263:802)、蛍光酵素(Riggs,et al.,(1987)Nucleic Acids Res.15(19):8115およびLuehrsen,et al.,(1992)Methods Enzymol.216:397−414)、およびアントシアニン産生をコードするトウモロコシ遺伝子(Ludwig,et al.,(1990)Science 247:449)などの例が挙げられよう。これらの文献は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0135】
目的のヌクレオチド配列に作動可能に連結した本開示の調節配列を含む発現カセットは、任意の植物の形質転換に使用することができる。このようにして、遺伝子組み換えが行われた植物、植物細胞、植物組織、種子、根などを得ることができる。
【0136】
本明細書で使用する場合、「ベクター」は、ヌクレオチドコンストラクト、例えば、発現カセットを宿主細胞に導入するためのプラスミド、コスミドまたはバクテリオファージなどのDNA分子を指す。クローニングベクターは、通常、外来DNA配列を特定可能な方法で、ベクターの必須の生物学的機能を失わずに挿入することができる1つまたは少数の制限エンドヌクレアーゼ認識部位と、クローニングベクターで形質転換された細胞の識別および選択に使用するのに好適なマーカー遺伝子とを含む。マーカー遺伝子としては、通常、テトラサイクリン耐性、ハイグロマイシン耐性またはアンピシリン耐性を与える遺伝子が挙げられる。
【0137】
本開示の方法は、植物にポリペプチドまたはポリヌクレオチドを導入することを含む。本明細書で使用する場合、「導入する」とは、ポリヌクレオチドまたはポリペプチドを植物に、その配列が植物細胞の内部に侵入する方法で送ることを意味する。本開示の方法は、植物に配列を導入する特定の方法に依存することはなく、植物の少なくとも1つの細胞の内部にポリヌクレオチドまたはポリペプチドを単に侵入させるだけである。ポリヌクレオチドまたはポリペプチドを植物に導入する方法は、当該技術分野で知られており、限定されないが、安定な形質転換方法、一過性形質転換方法およびウイルス媒介方法が挙げられる。
【0138】
「安定な形質転換」とは、植物に導入されるヌクレオチドコンストラクトが植物のゲノムに組み込まれ、その子孫によって受け継がれ得る形質転換をいう。「一過性形質転換」は、ポリヌクレオチドが植物に導入されるが植物のゲノムに組み込まれないか、またはポリペプチドが植物に導入されることを意味する。
【0139】
形質転換プロトコール、およびヌクレオチド配列を植物に導入するためのプロトコールは、植物または植物細胞の種類により、すなわち単子葉植物であるか双子葉植物であるかにより変わり得る。ヌクレオチド配列を植物細胞に導入し、その後植物ゲノムに挿入する好適な方法としては、微量注入法(Crossway,et al.,(1986)Biotechniques 4:320−334)、エレクトロポレーション(Riggs,et al.,(1986)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 83:5602−5606)、アグロバクテリウム(Agrobacterium)媒介形質転換法(Townsend,et al.,米国特許第5,563,055号明細書およびZhao,et al.,米国特許第5,981,840号明細書)、遺伝子直接導入法(Paszkowski,et al.,(1984)EMBO J. 3:2717−2722)、衝撃粒子加速法(例えば、米国特許第4,945,050号明細書および同第5,879,918号明細書および同第5,886,244号明細書および同第5,932,782号明細書、Tomes,et al.,(1995)in Plant Cell,Tissue,and Organ Culture:Fundamental Methods,ed.Gamborg and Phillips(Springer−Verlag, Berlin)、McCabe,et al.,(1988)Biotechnology 6:923−926を参照されたい)およびLec1形質転換法(国際公開第00/28058号パンフレット)が挙げられる。また、Weissinger,et al.,(1988)Ann.Rev.Genet. 22:421−477、Sanford,et al.,(1987)Particulate Science and Technology 5:27−37(タマネギ)、Christou,et al.,(1988)Plant Physiol.87:671−674(ダイズ)、McCabe,et al.,(1988)Bio/Technology 6:923−926(ダイズ)、Finer and McMullen,(1991)In Vitro Cell Dev.Biol.27P:175−182(ダイズ)、Singh,et al.,(1998)Theor.Appl.Genet.96:319−324(ダイズ)、Datta,et al.,(1990)Biotechnology 8:736−740(イネ)、Klein,et al.,(1988)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:4305−4309(トウモロコシ)、Klein,et al.,(1988)Biotechnology 6:559−563(トウモロコシ)、米国特許第5,240,855号明細書および同第5,322,783号明細書および同第5,324,646号明細書、Klein,et al.,(1988)Plant Physiol.91:440−444(トウモロコシ)、Fromm,et al.,(1990)Biotechnology 8:833−839(トウモロコシ)、Hooykaas−Van Slogteren,et al.,(1984)Nature(London)311:763−764、米国特許第5,736,369号明細書(穀類)、Bytebier,et al.,(1987)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 84:5345−5349(ユリ科(Liliaceae))、De Wet,et al.,(1985)in The Experimental Manipulation of Ovule Tissues,ed.Chapman,et al.,(Longman, New York),pp.197−209(花粉)、Kaeppler,et al.,(1990)Plant Cell Reports 9:415−418 and Kaeppler,et al.,(1992)Theor.Appl.Genet.84:560−566(ウィスカー媒介形質転換)、D’Halluin,et al.,(1992)Plant Cell 4:1495−1505(エレクトロポレーション);Li,et al.,(1993)Plant Cell Reports 12:250−255およびChristou and Ford,(1995)Annals of Botany 75:407−413(イネ)、Osjoda,et al.,(1996)Nature Biotechnology 14:745−750(トウモロコシ アグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)による)を参照されたい。これらの文献は全て参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。急速な植物形質転換のための方法および組成もまた、米国仮特許出願第62/248578号明細書(この文献は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に見出される。
【0140】
特定の態様では、PLTPプロモーターなどの本開示のプロモーター配列を含むDNAコンストラクトは、様々な一過性形質転換法を用いて植物に供することができる。そのような一過性形質転換法としては、限定はされないが、ウイルスベクター系、およびDNAのその後の脱離が起こらないような方法でのポリヌクレオチドの沈澱が挙げられる。したがって、粒子結合DNAからの転写は起こり得るが、脱離してゲノムに組み込まれる頻度は非常に小さい。そのような方法としては、ポリエチルイミン(PEI;Sigma#P3143)でコーティングした粒子の使用が挙げられる。
【0141】
他の態様では、本開示のポリヌクレオチドは、植物をウイルスまたはウイルス性核酸と接触させることにより、植物に導入することができる。一般に、そのような方法は、本開示のヌクレオチドコンストラクトをウイルス性DNAまたはRNA分子に組み込むことを含む。ウイルス性DNAまたはRNA分子を含むポリヌクレオチドを植物に導入し、それによりコードされるタンパク質を発現させる方法は、当該技術分野で知られている。例えば、米国特許第5,889,191号明細書、同第5,889,190号明細書、同第5,866,785号明細書、同第5,589,367号明細書、同第5,316,931号明細書およびPorta,et al.,(1996)Molecular Biotechnology 5:209−221を参照されたい。これらの文献は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0142】
植物ゲノムの特定の位置でポリヌクレオチドをターゲッティングにより挿入する方法は当該技術分野で知られている。一態様では、ゲノムの所望の位置でのポリヌクレオチドの挿入は、部位特異的組み換えシステムを用いて行うことができる。例えば、国際公開第99/25821号パンフレット、国際公開第99/25854号パンフレット、国際公開第99/25840号パンフレット、国際公開第99/25855号パンフレットおよび国際公開第99/25853号パンフレットを参照されたい。これらの文献は全て参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。簡単に言えば、本開示のポリヌクレオチドは、2つの非同一性組み換え部位で挟まれている導入カセットに含まれ得る。導入カセットは、導入カセットの部位に対応する2つの非同一性組み換え部位で挟まれている標的部位がそのゲノムに安定に組み込まれた植物に導入される。適切なリコンビナーゼが提供され、導入カセットが標的部位に組み込まれる。目的のポリヌクレオチドは、それによって植物ゲノムの特定の染色体上の位置に組み込まれる。
【0143】
形質転換された細胞は、従来の方法で植物へと育てられる。例えば、McCormick,et al.,(1986)Plant Cell Reports 5:81−84(この文献は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)を参照されたい。その後、これらの植物を成長させ、同じ形質転換種または異なる種と授粉させ、それにより得られた、所望の表現型の特性を発現した子孫を確認することができる。2以上の世代を育生して、所望の表現型の特性の発現が安定に維持され、受け継がれていることを確認することができ、そして、その後に、所望の表現型の特性の発現を確認するために収穫した種子を得た。このように、本開示は、ゲノムに安定に組み込まれた、本開示のヌクレオチドコンストラクト、例えば本開示の発現カセットを有する形質転換種子(「トランスジェニック種子」ともいう)を提供する。
【0144】
植物組織から植物を再生する様々な方法がある。再生の特定の方法は、出発植物組織と再生する特定の植物種に依るであろう。単一の植物プロトプラスト形質転換体からの、または種々の形質転換外植体からの植物の再生、発達および栽培は当該技術分野でよく知られている(Weissbach and Weissbach,(1988)In:Methods for Plant Molecular Biology,(Eds.),Academic Press,Inc.,San Diego Calif.(この文献は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる))。この再生および育成プロセスには、通常、形質転換細胞を選択する工程、それらの個別の細胞を、胚の通常発生段階から小植物を根付かせる段階まで育成する工程を含む。トランスジェニック胚も同様に再生される。得られる根付いたトランスジェニックシュートはその後、土壌などの適切な植物育成培地に植え付ける。好ましくは、再生植物を自家授粉させて同型のトランスジェニック植物を提供する。さもなければ、再生植物から得た花粉を、農学的に重要な系の種子から育った植物と交雑させる。逆に、これらの重要な系の植物の花粉を、再生植物への授粉に使用する。所望のポリヌクレオチドを含む本態様のトランスジェニック植物は、当業者によく知られた方法で栽培される。
【0145】
本態様は、植物内での発現の調節する化合物のスクリーニングのための組成を提供する。ベクター、細胞および植物は、本明細書に開示の調節配列のアゴニストおよびアンタゴニストのための候補分子のスクリーニングに使用することができる。例えば、レポーター遺伝子は、調節配列に作動可能に連結し、植物における導入遺伝子として発現する。試験する化合物が加えられ、レポーター遺伝子の発現が測定され、プロモーター活性に対する効果が決定される。
【0146】
植物にゲノム編集技術を導入する方法
一態様において、本開示の方法および組成は、体細胞胚へ、体細胞胚由来の植物ゲノム中の改変に特異的な部位を標的とするのに有用なポリヌクレオチドを、高効率かつ高速で導入するのに使用することができる。本開示の方法および組成物によって導入することができる部位特異的改変としては、部位特異的改変を導入する任意の方法によるもの、例えば、限定はされないが、遺伝子修復オリゴヌクレオチドの使用(例えば、米国特許出願公開第2013/0019349号明細書)、または、TALEN、マガヌクレオチド、ジンクフィンガーヌクレアーゼ、CRISPR−Casなどの二本鎖切断技術によるものが挙げられる。例えば、体細胞胚由来の植物もしくは植物細胞のゲノム中の標的配列の改変のために、植物を選択するために、塩基または配列を欠失させるために、遺伝子編集のために、そして目的のポリヌクレオチドを体細胞胚由来の植物のゲノムに挿入するために、本開示の方法および組成物を使用して、CRISPR−Casシステムを体細胞胚へ導入することができる。したがって、本開示の方法および組成物は、CRISPR−Casシステムと共に使用して、植物体、植物細胞または種子のゲノム中の標的部位および目的のヌクレオチドを変更または改変するのに提供することができる。
【0147】
一態様では、本開示は、体細胞胚を生産するための方法および組成物を含む。その方法は、植物細胞のゲノム中の標的部位に目的のポリヌクレオチドを導入することを含み、その方法は(a)(i)WUS/WOXホメオボックスポリペプチドをコードするヌクレオチド配列、(ii)2つのAP2−DNA結合ドメインを含むポリペプチドをコードするヌクレオチド配列、または(iii)(i)および(ii)の組み合わせを含む発現コンストラクトで外植体細胞を形質転換する工程と;(b)形質転換された各細胞中で(a)のポリペプチドを発現させて、1つ以上の体細胞胚を形成する工程とを含み;ここで、カルスは形成されず;分裂組織の増殖は起こらず;形質転換はさらに、ガイドヌクレオチドを発現可能な第1の発現コンストラクトと、Casエンドヌクレアーゼを発現可能な第2の組み換えDNAコンストラクトとを含み、ガイドヌクレオチドとCasエンドヌクレアーゼは、Casエンドヌクレアーゼに標的部位での二本鎖切断の導入を可能にする複合体を形成することができる。あるいは、WUS/WOXホメオボックスポリペプチドをコードするヌクレオチド配列、および/または2つのAP2−DNA結合ドメインを含むポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む発現コンストラクトはまた、ガイドヌクレオチドを発現可能なヌクレオチド配列と、Casエンドヌクレアーゼを発現可能なヌクレオチド配列を含み得る。
【0148】
一態様において、Casエンドヌクレアーゼ遺伝子は、植物最適化Cas9エンドヌクレアーゼであり、その植物最適化Cas9エンドヌクレアーゼは、ゲノム標的配列の植物ゲノムに結合し、二本鎖を作ることができる。
【0149】
Casエンドヌクレアーゼは、ガイドヌクレオチドにガイドされ、細胞のゲノムの特定の標的部位を認識し、場合により二本鎖切断を導入する。CRISPR−Casシステムは、植物体、植物細胞または種子のゲノム中の標的部位の改変に有効なシステムを提供する。さらに、細胞のゲノム中の標的部位の改変、細胞のゲノム中のヌクレオチドの編集に有効なガイドポリヌクレオチド/Casエンドヌクレアーゼシステムを用いる方法および組成物を提供する。ゲノム標的部位が特定されたなら、様々な方法を用いて、様々な目的のポリヌクレオチドを含むように標的部位をさらに改変することができる。本発明の組成物および方法を使用して、細胞のゲノム中のヌクレオチド配列の編集を行うCRISPR−Casシステムを導入することができる。編集されるべきヌクレオチド配列(目的のヌクレオチド配列)は、Casエンドヌクレアーゼによって認識される標的部位中にあっても標的部位外にあってもよい。
【0150】
CRISPR遺伝子座(クラスター化等間隔短鎖回文リピート)(SPIDR―スペーサー散在型ダイレクトリピートとしても知られる)は、最近記載されたDNA遺伝子座のファミリーを構成する。CRISPR遺伝子座は、短く、かつ高度に保存されたDNAリピート(通常24〜40bp、1〜140回の繰り返し―CRISPRリピートとも呼ばれる)から構成され、部分的に回文を形成している。反復配列(通常、種に固有である)間は一定の長さの可変配列(通常、CRISPR遺伝子座により20〜58bp)がスペーサーとして存在している(国際公開第2007/025097号パンフレット、2007年3月1日公開)。
【0151】
CRISPR遺伝子座は最初にエシェリキア・コリ(E.coliにおいて見出された(Ishino et al.(1987)J.Bacterial.169:5429−5433;Nakata et al.(1989)J.Bacterial.171:3553−3556を参照)。同様の間隔短配列リピートが、ハロフェラックス・メディテラネイ(Haloferax mediterranei)、ストレプトコッカス・ピオゲネス(Streptococcus pyogenes)、アナベナ属(Anabaena)およびマイコバクテリウム・ツベルクローシス(Mycobacterium tuberculosis)で特定された(Groenen et al.(1993)Mol.Microbiol.10:1057−1065、Hoe et al.(1999)Emerg.Infect.Dis.5:254−263、Masepohl et al.(1996)Biochim.Biophys.Acta1307:26−30、Mojica et al.(1995)Mol.Microbiol.17:85−93)。CRISPR遺伝子座はリピート配列の構造により他のSSRと異なり、短等間隔リピート(short regularly spaced repeat)(SRSR)と呼ばれていた(Janssen et al.(2002)OMICS J.Integ.Biol.6:23−33、Mojica et al.(2000)Mol.Microbiol.36:244−246)。リピートは、クラスターの形態で生じる短い要素であり、常に一定の長さの可変配列により等しい間隔をおいて存在している(Mojica et al.(2000)Mol.Microbiol.36:244−246)。
【0152】
Cas遺伝子としては、フランキングするCRISPR遺伝子座に結合して、関連して、または近接もしくは隣接して存在する。用語「Cas遺伝子」および「CRISPR関連(Cas)遺伝子」は、本明細書では互換的に使用される。Casタンパク質ファミリーの包括的レビューは、Haft et al.(2005)Computational Biology、PLoS Comput Biol 1(6):e60.doi:10.1371/journal.pcbi.0010060に記載されている。
【0153】
4つの当初記載された遺伝子ファミリーに加え、さらに41のCRISPR関連(Cas)遺伝子ファミリーが、国際公開第2015/026883号パンフレットに示されており、この文献は参照により本明細書に組み込まれる。この文献には、CRISPRシステムが、異なるリピート配列パターン、遺伝子群および種の範囲を有する異なる分類に属することが示されている。所与のCRISPR遺伝子座におけるCas遺伝子の数は、種によって変わり得る。Casエンドヌクレアーゼは、Cas遺伝子によってコードされるCasタンパク質と関連しており、Casタンパク質は、DNA標的配列へ二本鎖切断を導入することができる。Casエンドヌクレアーゼは、ガイドヌクレオチドにガイドされ、細胞のゲノムの特定の標的部位を認識し、場合により二本鎖切断を導入する。本明細書で使用する場合、用語「ガイドポリヌクレオチド/Casエンドヌクレアーゼシステム」には、DNA標的部位に二本鎖切断を導入することができる、Casエンドヌクレアーゼとガイドポリヌクレオチドとの複合体が含まれる。Casエンドヌクレアーゼは、ゲノム標的部位に近接したDNA二本鎖をほどき、標的配列を認識すると同時に、正しいプロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)が標的配列の3’末端に位置している限り、2本のDNA鎖をガイドヌクレオチドによって切断する(2015年2月26日公開の国際公開第2015/026883号パンフレットの図2Aおよび図2Bを参照)。
【0154】
一態様において、Casエンドヌクレアーゼ遺伝子は、Cas9エンドヌクレアーゼ、例えば、限定されないが、2007年3月1日公開の国際公開第2007/025097号パンフレット(この文献は参照によって本明細書に組み込まれる)の配列番号462、474、489、494、499、505、および518に挙げられているCas9遺伝子である。他の態様において、Casエンドヌクレアーゼ遺伝子は、植物、トウモロコシまたはダイズ最適化Cas9エンドヌクレアーゼ、例えば、国際公開第2015/026883号パンフレットの図1Aに示されたものである。他の態様において、Casエンドヌクレアーゼ遺伝子は、Casコドン領域上流のSV40核標的シグナル、およびCasコドン領域下流の二分核定位シグナル(Tinland et al.(1992)Proc.Natl.Acad.Sci.USA89:7442−6)に作動可能に結合している。
【0155】
一態様において、配列番号1、124、212、213、214、215、216、193のCasエンドヌクレアーゼ遺伝子または配列番号5のヌクレオチド2037〜6329は、国際公開第2015/026883号パンフレットの、Cas9エンドヌクレアーゼ遺伝子、またはその機能的断片もしくは多様体である。
【0156】
Casエンドヌクレアーゼに関連して、用語「機能的断片」、「機能的に等価である断片」および「機能的に等価な断片」は、本明細書では互換的に使用される。これらの用語は、二本鎖切断を起こす能力が保持されている、本開示のCasエンドヌクレアーゼの一部またはサブ配列を指す。
【0157】
Casエンドヌクレアーゼに関連して、用語「機能的多様体」、「機能的に等価である多様体」および「機能的に等価な多様体」は、本明細書では互換的に使用される。これらの用語は、二本鎖切断を起こす能力が保持されている、本開示のCasエンドヌクレアーゼの多様体を指す。断片および多様体は、部位特異的変異誘発法および合成構築などの方法によって得ることができる。
【0158】
一態様において、Casエンドヌクレアーゼ遺伝子は、N(12−30)NGG型の任意のゲノム配列を認識することができる、植物コドン最適化ストレプトコッカス・ピオゲネス(Streptococcus pyogenes)Cas9遺伝子であり、原則として標的とし得る。
【0159】
エンドヌクレアーゼは、ポリヌクレオチド鎖のリン酸ジエステル結合を切断する酵素であり、塩基を損傷することなく特定の部位でDNAを切断する制限エンドヌクレアーゼを含む。制限エンドヌクレアーゼは、I型、II型、III型およびIV型エンドヌクレアーゼを含み、これらはさらに亜型を含む。I型およびIII型系においては、メチラーゼ活性および制限活性の両活性が単一複合体内に含まれる。エンドヌクレアーゼはまた、ホーミングヌクレアーゼ(HE酵素)としても知られるメガヌクレアーゼを含み、この酵素は、制限エンドヌクレアーゼのように、特定の認識部位に結合し切断するが、メガヌクレアーゼの認識部位は通常長く、約18bp以上である。(2012年3月22日出願の国際特許出願PCT/US12/30061)。メガヌクレアーゼは、保存配列モチーフに基づいて4つのファミリーに分類されており、それらのファミリーは、LAGLIDADG、GIY−YIG、H−N−HおよびHis−Cysボックスのファミリーである。これらのモチーフは、金属イオンの配位およびリン酸ジエステル結合の加水分解に関与する。メガヌクレアーゼは、その長い認識部位と、そのDNA基質の配列多型性を許容していることで知られている。メガヌクレアーゼの命名規則は、他の制限エンドヌクレアーゼの規則と類似している。メガヌクレアーゼはまた、それぞれ独立ORF、イントロンおよびインテインによってコードされる酵素に対して付される接頭辞のF−、I−またはPI−で特徴付けられる。遺伝子組み換えプロセスの1つの工程は、認識部位またはその近傍でのポリヌクレオチドの切断を含む。この切断活性は、二本鎖の切断に使用され得る。部位特異的リコンビナーゼおよびその認識部位のレビューには、Sauer(1994)Curr Op Biotechnol5:521−7、およびSadowski(1993)FASEB 7:760−7を参照されたい。いくつかの例では、リコンビナーゼは、インテグラーゼファミリーまたはリゾルバーゼファミリーからのものである。TALエフェクターヌクレアーゼは、植物または他の有機体のゲノム中の特定の標的配列での二本鎖切断に使用することができる配列特異的ヌクレアーゼの新しい分類である。(Miller,et al.(2011)Nature Biotechnology 29:143−148).ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)は、ジンクフィンガーDNA結合ドメインおよび二本鎖切断誘発物質ドメインからなる人工の二本鎖切断誘発物質である。認識部位特異性は、ジンクフィンガードメインによって与えられ、このジンクフィンガードメインは、通常、例えば、C2H2構造を有する、2、3または4つのジンクフィンガーを含むが、しかしながら他のジンクフィンガー構造も知られており、作られてきている。ジンクフィンガードメインは、選択されたポリヌクレオチド認識配列に特異的に結合するポリペプチドの設計に適している。ZFNとしては、非特異的エンドヌクレアーゼドメインに結合した人工DNA結合ジンクフィンガードメイン、例えば、FoklなどのMs型エンドヌクレアーゼ由来のヌクレアーゼドメインが挙げられる。さらなる機能性は、ジンクフィンガー結合ドメイン、例えば、転写活性因子ドメイン、転写抑制因子ドメインおよびメチラーゼに融合することができる。いくつかの例では、切断活性にヌクレアーゼドメインの二量体化が要求される。核ジンクフィンガーは、標的DNAの3つの連続する塩基対を認識する。例えば、3フィンガードメインは、ヌクレアーゼの二量体化要件で、9個の連続するヌクレオチドからなる配列を認識し、2組のジンクフィンガートリプレットが、18個のヌクレオチドからなる認識配列に結合するために使用される。
【0160】
細菌および古細菌は、短鎖RNAを使用して外来核酸を分解する、クラスター化等間隔短鎖回文リピート(CRISPR)/CRISPR関連(Cas)システムと呼ばれる適応免疫防御を進化させた(2007年3月1日公開の国際公開第2007/025097号パンフレット)。細菌由来のII型CRISPR/Casシステムは、CasエンドヌクレアーゼをDNA標的へガイドするのにcrRNAおよびtracrRNAを使用する。crRNA(CRISPR RNA)は、二本鎖DNAの一方の鎖に相補的な領域と、CasエンドヌクレアーゼにDNA標的を切断させるRNA二本鎖を形成するtracrRNA(trans活性化CRISPR RNA)を有する塩基対とを含む。
【0161】
本明細書で使用する場合、用語「ガイドヌクレオチド」は、2つのRNA分子、可変標的領域を含むcrRNA(CRISPR RNA)およびtracrRNAの合成的融合に関する。一態様において、ガイドヌクレオチドは、12〜30ヌクレオチド配列からなる可変標的ドメインと、Casエンドヌクレアーゼと相互作用し得るRNA断片とを含む。
【0162】
本明細書で使用する場合、用語「ガイドポリヌクレオチド」は、Casエンドヌクレアーゼと複合体を形成し、CasエンドヌクレアーゼがDNA標的部位を認識し、場合により切断することを可能にするポリヌクレオチド配列に関連している。このガイドポリヌクレオチドは一本鎖分子であっても二本鎖分子であってもよい。ガイドポリヌクレオチド配列は、RNA配列、DNA配列、またはこれらの組み合わせ(RNA−DNA組み合わせ配列)であってよい。任意選択で、ガイドポリヌクレオチドは、少なくとも1個のヌクレオチド、ホスホジエステル結合または連結修飾を含むことができ、この連結修飾として、ロックド核酸(LNA)、5−メチルdC、2,6−ジアミノプリン、2’−フルオロA、2’−フルオロU、2’−O−メチルRNA、ホスホロチオエート結合、コレステロール分子への連結、ポリエチレングリコール分子への連結、スペーサー18(ヘキサエチレングリコール鎖)分子への連結、または環化をもたらす5’から3’への共有結合的連結が挙げられるがこれらに限定されない。リボ核酸のみを含むガイドポリヌクレオチドもまた、「ガイドヌクレオチド」と称される。
【0163】
ガイドポリヌクレオチドは、標的DNAのヌクレオチド配列に相補的な第1のヌクレオチド配列ドメイン(可変ターゲティングドメインまたはVTドメインとも呼ばれる)と、Casエンドヌクレアーゼポリペプチドと相互作用する第2のヌクレオチド配列ドメイン(Casエンドヌクレアーゼ認識ドメインまたはCERドメインとも呼ばれる)とを含む二本鎖分子(二本鎖ガイドポリヌクレオチドとも呼ばれる)であってよい。この二本鎖分子ガイドポリヌクレオチドのCERドメインは、相補領域に沿ってハイブリダイズされる2個の個別の分子を含む。この2個の個別の分子は、RNA配列、DNA配列および/またはRNA−DNA組み合わせ配列であってよい。一態様においては、CERドメインに連結されているVTドメインを含む二本鎖ガイドポリヌクレオチドの第1の分子は、「crDNA」(DNAヌクレオチドの連続区間で構成されている場合)、「crRNA」(RNAヌクレオチドの連続区間で構成されている場合)、または「crDNA−RNA」(DNAヌクレオチドとRNAヌクレオチドとの組み合わせで構成されている場合)と称される。crヌクレオチドは、細菌中および古細菌中に天然に存在するcRNAの断片を含むことができる。一態様においては、本明細書で開示するcrヌクレオチド中に存在する細菌中および古細菌中に天然に存在するcRNAの断片のサイズは、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個、20個またはそれ以上のヌクレオチドから変動することができるがこれらに限定されない。
【0164】
一態様においては、CERドメインを含む二本鎖ガイドポリヌクレオチドの第2の分子は、「tracrRNA」(RNAヌクレオチドの連続区間で構成されている場合)、「tracrDNA」(DNAヌクレオチドの連続区間で構成されている場合)「tracrDNA」、または「tracrDNA−RNA」(DNAヌクレオチドとRNAヌクレオチドとの組み合わせで構成されている場合)と称される。一態様においては、RNA Cas9エンドヌクレアーゼ複合体をガイドするRNAは、二本鎖crRNA−tracrRNAを含む二本鎖RNAである。
【0165】
ガイドポリヌクレオチドはまた、標的DNAのヌクレオチド配列に相補的な第1のヌクレオチド配列ドメイン(可変標的ドメインまたはVTドメインと呼ばれる)と、Casエンドヌクレアーゼポリペプチドと相互作用する第2のヌクレオチド配列ドメイン(Casエンドヌクレアーゼ認識ドメインまたはCERドメインと呼ばれる)とを含む一本鎖分子であってもよい。「ドメイン」は、RNA配列、DNA配列および/またはRNA−DNA組み合わせ配列であり得るヌクレオチドの連続区間を意味する。一本鎖ガイドポリヌクレオチドのVTドメインおよび/またはCERドメインは、RNA配列、DNA配列またはRNA−DNA組み合わせ配列を含むことができる。一態様においては、一本鎖ガイドポリヌクレオチドは、tracrヌクレオチド(CERドメインを含む)に連結されているcrヌクレオチド(CERドメインに連結されているVTドメインを含む)を含み、この連結は、RNA配列、DNA配列、またはRNA−DNA組み合わせ配列を含むヌクレオチド配列である。crヌクレオチド由来の配列およびtracrヌクレオチド由来の配列で構成されている一本鎖ガイドポリヌクレオチドは、「一本鎖ガイドヌクレオチド」(RNAヌクレオチドの連続区間で構成されている場合)、「一本鎖ガイドDNA」(DNAヌクレオチドの連続区間で構成されている場合)、または「一本鎖ガイドヌクレオチド−DNA」(RNAヌクレオチドとDNAヌクレオチドとの組み合わせで構成されている場合)と称することができる。本開示の一態様においては、一本鎖ガイドヌクレオチドは、II型Casエンドヌクレアーゼと複合体を形成することができるII型CRISPR/CasシステムのcRNAまたはcRNA断片、およびtracrRNAまたはtracrRNA断片を含み、このガイドヌクレオチドCasエンドヌクレアーゼ複合体は、Casエンドヌクレアーゼを植物ゲノム標的部位へと誘導することができ、Casエンドヌクレアーゼがこのゲノム標的部位に二本鎖切断を導入することを可能にする。二本鎖ガイドポリヌクレオチドと対比して一本鎖ガイドポリヌクレオチドを使用する一態様は、一本鎖ガイドポリヌクレオチドを発現させるために作製する必要がある発現カセットが1種のみであるということである。
【0166】
用語「可変標的ドメイン」または「VTドメイン」は本明細書において互換的に使用され、二本鎖DNA標的部位の一方の鎖(ヌクレオチド配列)に相補的であるヌクレオチド配列を含む。第1のヌクレオチド配列ドメイン(VTドメイン)と標的配列との間の%相補性は、少なくとも50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、63%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%であり得る。可変標的ドメインの長さは、少なくとも12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29または30ヌクレオチドであり得る。一態様においては、可変ターゲティングドメインは12〜30ヌクレオチドからなる連続区間を含む。可変標的ドメインは、DNA配列、RNA配列、改変DNA配列、改変RNA配列、またはこれらの任意の組み合わせで構成され得る。
【0167】
ガイドポリヌクレオチドの用語「Casエンドヌクレアーゼ認識ドメイン」または「CERドメイン」は本明細書において互換的に使用され、Casエンドヌクレアーゼポリペプチドと相互作用するヌクレオチド配列(例えば、ガイドポリヌクレオチドの第2のヌクレオチド配列ドメイン)を含む。CERドメインは、DNA配列、RNA配列、改変DNA配列、改変RNA配列(例えば、本明細書に記載する改変を参照されたい)、またはこれらの任意の組み合わせで構成され得る。
【0168】
一本鎖ガイドポリヌクレオチドのcrヌクレオチドとtracrヌクレオチドとを連結するヌクレオチド配列は、RNA配列、DNA配列またはRNA−DNA組み合わせ配列を含むことができる。一態様においては、一本鎖ガイドポリヌクレオチドのcrヌクレオチドとtracrヌクレオチドとを連結するヌクレオチド配列の長さは、少なくとも3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99または100個のヌクレオチドであり得る。他の態様では、一本鎖ガイドポリヌクレオチドのcrヌクレオチドとtracrヌクレオチドとを連結するヌクレオチド配列は、限定はされないが、GAAAテトラループ配列などのテトラループ配列を含み得る。
【0169】
ガイドポリヌクレオチド、VTドメインおよび/またはCERドメインのヌクレオチド配列改変は、5’キャップ、3’ポリアデニル化テイル、リボスイッチ配列、安定した制御配列、dsRNA二本鎖を形成する配列、ガイドポリヌクレオチドの標的を細胞内位置に設定する改変または配列、トラッキングが生じる改変または配列、タンパク質用の結合部位が生じる改変または配列、ロックド核酸(LNA)、5−メチルdCヌクレオチド、2,6−ジアミノプリンヌクレオチド、2’−フルオロAヌクレオチド、2’−フルオロUヌクレオチド;2’−O−メチルRNAヌクレオチド、ホスホロチオエート結合、コレステロール分子への連結、ポリエチレングリコール分子への連結、スペーサー18分子への連結、5’から3’への共有結合的連結、またはこれらの任意の組み合わせからなる群から選択することができるが、これらに限定されない。これらの改変により、少なくとも1種の追加の有利な特徴をもたらすことができ、この追加の有利な特徴は、安定性の変更または調節、細胞内ターゲティング、トラッキング、蛍光標識、タンパク質用またはタンパク質複合体用の結合部位、相補的な標的配列に対する結合親和性の変更、細胞分解に対する耐性の変更、および細胞透過性の増大の群から選択される。
【0170】
一態様において、ガイドヌクレオチドとCasエンドヌクレアーゼとは、CasエンドヌクレアーゼがDNA標的部位で二本鎖切断を導入するのを可能にする複合体を形成することができる。
【0171】
本開示の一態様において、可変標的ドメインの長さは、少なくとも12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29または30ヌクレオチドであり得る。
【0172】
本開示の一態様において、ガイドヌクレオチドは、II型Casエンドヌクレアーゼと複合体を形成することができるII型CRISPR/CasシステムのcRNA(またはcRNA断片)およびtracrRNA(またはtracrRNA断片)を含み、このガイドヌクレオチドCasエンドヌクレアーゼ複合体は、Casエンドヌクレアーゼを植物ゲノム標的部位へと誘導することができ、Casエンドヌクレアーゼがこのゲノム標的部位に二本鎖切断を導入することを可能にする。一態様において、ガイドヌクレオチドは、当該技術分野で知られた任意の方法、例えば、限定はされないが、粒子衝撃法または局所的適用法により植物体または植物細胞に導入することができる。
【0173】
一態様において、ガイドヌクレオチドは、植物細胞中でガイドヌクレオチド転写することができる、植物特異的プロモーターに作動可能に結合した、対応するガイドDNA配列を含む組み換えDNA分子を導入することによって、間接的に導入することができる。用語「対応するガイドDNA」は、RNA分子の各「U」が「T」に置き替えられている以外はRNA分子と同じDNA分子を含む。
【0174】
一態様において、ガイドヌクレオチドは、粒子衝撃法により、または、植物U6ポリメラーゼIIIプロモーターに作動可能に結合した、対応するガイドDNAを含む組み換えDNAコンストラクトをアグロバクテリウム属(Agrobacterium)により形質転換するための方法および組成物によって導入される。
【0175】
一態様において、RNA Cas9エンドヌクレアーゼ複合体をガイドするRNAは、二本鎖crRNA−tracrRNAを含む二本鎖RNAである。二本鎖crRNA−tracrRNAに対してガイドヌクレオチドを使用する利点の1つは、融合ガイドヌクレオチドを発現させるために作製する必要がある発現カセットが1種のみであるということである。
【0176】
用語「標的部位」、「標的配列」、「標的DNA」、「標的遺伝子座」、「ゲノム標的部位」、「ゲノム標的配列」および「ゲノム標的遺伝子座」は、本明細書では互換的に使用され、Casエンドヌクレアーゼによって植物細胞ゲノムで二本鎖切断が誘発される、植物細胞ゲノム中のポリヌクレオチド配列(葉緑体DNAおよびミトコンドリアDNAを含む)を指す。標的部位は植物ゲノム中の内在性部位であり得、あるいは、標的部位は植物体に対して異種であり得、そのためゲノム中に天然には存在していない、あるいは標的部位は天然で生じる場所と比較して異種のゲノム位置で見出すことができる。
【0177】
本明細書で使用する場合、用語「内在性標的配列」および「天然標的配列」は、本明細書では互換的に使用され、植物ゲノムに対して内在性または天然性のものであり、かつ植物ゲノム中の標的配列の内在性または天然の位置に存在する標的配列を指す。一態様において、標的部位は、DNA認識部位、または特異的に認識し、かつ/または、LIG3−4エンドヌクレアーゼ(2009年5月21日公開の米国特許出願公開第2009/0133152A1号明細書)、もしくはMS26++メガヌクレアーゼ(2012年6月19日出願の米国特許出願第13/526912号明細書)などの二本鎖切断誘発物質によって結合する標的部位に類似する部位であり得る。
【0178】
「人工標的部位」または「人工標的配列」は、本明細書では互換的に使用され、植物のゲノム中に導入された標的配列を指す。そのような人工標的配列は、植物ゲノム中の内在性標的配列または天然標的配列と配列が同じであり得、しかし、植物ゲノム中の異なる場所(すなわち、非内在性または非天然の場所)に存在し得る。
【0179】
「改変標的部位」、「改変標的配列」、「変更標的部位」および「変更標的配列」は、本明細書では互換的に使用され、非改変標的配列を比較したとき、少なくとも1つの改変を含む本明細書に開示の標的部位を指す。そのような「改変」としては、例えば、(i)少なくとも1つのヌクレオチドの置換、(ii)少なくとも1つのヌクレオチドの欠失、(iii)少なくとも1つのヌクレオチドの挿入、または(iv)(i)〜(iii)の任意の組み合わせが挙げられる。
【0180】
以下の実施例は、実例として提供するものであって、限定することを意図するものではない。
【実施例】
【0181】
本態様を以下の実施例においてさらに明確にするが、実施例中、特に明記しない限り、部およびパーセンテージは重量基準であり、度はセ氏である。これらの実施例は本開示の態様を示すが、それらは単に実例として与えられているものであることは理解されるべきである。上記の説明およびこれらの実施例から、当業者であれば、これらの態様の必須の特徴を確認することができ、その精神と範囲から逸脱することなく、それらに様々な変更および修正を加えて、様々な用途および条件に適合させることができる。したがって、本明細書に示され記載されているものに加えて、これらの態様の様々な変更は、当業者には、前述の記載から明らかであろう。そのような変更もまた、添付の特許請求の範囲の範囲内である。
【0182】
実施例1.PLTPプロモーターの特定。
トウモロコシのWUS2およびODP2遺伝子を用いる形質転換法を改善するプロモーターを同定した。ODP2の高レベル発現(例えば、トウモロコシUBI PRO;配列番号31を使用)およびWUS2の低レベル発現(例えば、アグロバクテリウム(Agrobacterium)NOS PROを使用)が報告され、いずれもアグロバクテリウム(Agrobacterium)媒介形質転換直後およびカルス成長期間を通じて発現して、最適な成長および速度のイベント回収を示した(米国特許公開第2014/0157453号明細書(この文献は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)を参照されたい)。しかしながら、この転写因子のこのレベルの発現を継続させると、膨れ、根の成長不全、植物成長部の重度のねじりおよび変形などの重度の多面的異常が発生し、また不稔性となった。1つの事前の解決策は、小植物体の再生前に、RAB17 PRO駆動CREリコンビナーゼを用いて、これらの遺伝子を切除することであった。しかしながら、CRE発現を刺激するのに必要な乾燥プロセスは、多くの近交系のその後の健康に有害であり、それに代わる解決策が必要であった。
【0183】
過去に研究から、トウモロコシ植物は特に根、雌穂、雄穂でのODP2およびWUS2の異所性発現に感受性があった。この情報に基づき、胚(および、それ故カルス)で発現し、根(あらゆる発達段階で)、雌穂、雄穂で発現しない新規のプロモーターが探索された。これはまた、葉での初期発現は許容されると推測している。
【0184】
上記発現基準が確立したところで、DuPont Pioneerのデータベースから73,268個の遺伝子候補を解析して(Illumina RNA−Seqデータを使用)、この発現プロフィールを満たすトウモロコシ遺伝子を決定した。この解析に基づいて、これらの基準を満たす11の候補プロモーターを特定した。これまで未確認のトウモロコシのリン脂質トランスフェラーゼ遺伝子からの1つの特定プロモーターは、胚でより高く発現した。図5に示すように、UBI PROの構成的発現(図19)に比べ、PLTPの発現(図5)は、i)毛(silk)、果皮および胚乳で非常に強く、ii)胚で強く、iii)葉および茎で中程度、そしてiv)根、分裂組織、未成熟の雄穂、雌穂、葯および花粉ではみられず、一方、名前が示すように、UBIの発現はあらゆる組織で観察され、特に花粉で強かった。PLTPおよびUBIの両発現の範囲は類似しており、それぞれ約13,000PPMおよび約17,000PPMであった。
【0185】
実施例2.トウモロコシおよびソルガムのPLTPプロモーターのアライメント。
トウモロコシプロモーターおよびソルガムプロモーターのプロモーター配列(それぞれ配列番号1および配列番号2)をアラインして、プロモーター内の共通のエレメント(7塩基以上)を識別し、これらのエレメントのどれが文字通り既知の植物プロモーターエレメントの構造と共通しているかを決定した。この解析に基づいて、配列番号1および配列番号2のプロモーター配列は多くのエレメント、例えば、既知の植物プロモーターエレメントにマッチする多くのエレメントと共通した。
【0186】
【表3】
【0187】
【表4】
【0188】
実施例3.トウモロコシのPLTPプロモーターにより駆動する導入遺伝子の発現パターン。
PLTPプロモーターによって駆動される発現の空間的および時間的パターンを評価するために、次のような発現カセットを構築した:PLTP PRO::DS−GREEN::pinII TERM。この発現カセットを含むトランスジェニックトウモロコシイベントを作製した。成長中の接合胚から、発芽植物(および、その後の栄養成長期)の根および葉から、雌穂および雄穂からの組織を、実体顕微鏡および化合物落射蛍光顕微鏡を使用して落射蛍光照射下で観察した。接合胚での発現は強かったが、胚盤の腺上皮(胚乳と接する表面、図1を参照)に限られた。葉では、発現パターンは均一でなく、表皮の孔辺細胞の側方に位置するアクセサリー細胞(図2を参照)と短細胞とに特に限定された。毛(silk)における発現もまた非常に強いが、均一ではなく、毛(silk hair)と毛(silk)先端で明るい緑色の蛍光が観察された(図3を参照)。
【0189】
Pioneer近交系を使用して野生型未熟胚のアグロバクテリウム(Agrobacterium)媒介形質転換を行った後、初期の成長中のトランスジェニック体細胞胚で緑色蛍光が観察され(図4を参照、)、再生まで発現が継続した(根ではなく、葉において)。
【0190】
実施例4.プラスミド。
本明細書に記載の実験では、表1に記載のT−DNAを含むプラスミドを使用した。
【0191】
【表5】
【0192】
実施例5:培養培地
実施例では、形質転換および細胞培養で使用する各種培地が参照される。これらの培地の説明を下記の表4〜11に示す。
【0193】
【表6】
【0194】
【表7】
【0195】
【表8】
【0196】
【表9】
【0197】
【表10】
【0198】
【表11】
【0199】
【表12】
【0200】
【表13】
【0201】
【表14】
【0202】
【表15】
【0203】
【表16】
【0204】
実施例6.PLTPプロモーターを使用した形質転換。
トウモロコシODP2遺伝子の発現を駆動するためPLTPプロモーターを使用したことにより、形質転換が改善され、かつ正常な表現型の稔性植物の再生が可能になった。試験に使用したPioneer近交系は、異所性ODP2発現に対する感受性が非常に高かった。T−DNA中にNOS PRO::WUS2::PINII TERM+UBI PRO::ODP2::PINII TERMを含むアグロバクテリウム属(Agrobacterium)株LBA4404 THY−のコンストラクトを使用すると、カルスレベルでの形質転換頻度はしばしば70%(開始時の胚の数に対するトランスジェニックカルス)に達したが、植物の再生へと成長が続くと、ODP2の発現が継続し、根の成長不良、葉の生育異常および100%の不稔がもたらされた。対照的に、同じ近交系を、T−DNA中に発現カセットNOS PRO::WUS2::PINII TERM+PLTP PRO::ODP2::PINII TERMを有するアグロバクテリウム(Agrobacterium)で形質転換すると、カルスの形質転換頻度はまた非常に高かった(>100%)。加えて、再生された植物は全て正常な野生型形態を示し、かつ全てが稔性であった。
【0205】
他の一連の実験では、ODP2発現を駆動するPLTPプロモーターおよびWUS2発現を駆動するNOSプロモーターは、迅速で直接的な体細胞胚の形成をもたらした。
【0206】
授粉から約11日後、Pioneerトウモロコシ近交系PH184Cから未熟胚(長さ2〜2.5mm)を収穫し、以下の組成を有するT−DNA含有アグロバクテリウム属(Agrobacterium)株AGL1を感染させた;RB+NOS PRO::Top2::ZM−WUS2::IN2−1 TERM+ZM−PLTP PRO::ZM−ODP2::OS−T28 TERM+GZ−W64A TERM+UBI PRO::UBI1ZM INTRON::ESR::SB−SAG12 TERM+SB−ALS PRO::HRA::SB−PEPC1 TERM+LTP2 PRO::ZS−YELLOW::PINII TERM−LB(PLTP PROについては、配列番号1を参照されたい、およびPHP77833については、配列番号28を参照されたい)。アグロバクテリウム属(Agrobacterium)菌を、光学密度が0.5(520nmで)になるまで液体培地で培養し、未成熟胚(3つの別個の耳からの、約53、52、および56の胚)をこのアグロバクテリウム属(Agrobacterium)懸濁液中で5分間インキュベートした後、液体から取り出して710I固体培地上に置いた。
【0207】
24時間後、胚を新鮮な培地に移し、アグロバクテリウム属(Agrobacterium)を除去する選択を開始した。6日後、処理した124の未成熟胚のそれぞれの表面に多くの小さな体細胞胚が観察された。各未熟胚は、明確に定義された胚柄で多くが支持された、多数の、はっきりとした、個別の体細胞胚を含有した。UBI PRO::ZS−GREEN::PINII発現カセット(PHP79024、配列番号29を参照)とともにAXIG1::WUS2::IN2およびPLTP::ODP2::OS−T28発現カセットを含有するT−DNAを有するアグロバクテリウム(Agrobacterium)による形質転換後、最初に感染させた接合胚の胚盤から成長した、多くの個別の緑色蛍光体細胞胚が観察された(図4)。この像は、開示した方法を用いた処理後に、最初に形質転換した接合胚の胚盤表面で、蛍光胚が成長していることを示している。この像は、アグロバクテリウム属(Agrobacterium)感染の開始から4日後に、落射蛍光アタッチメントおよび標準Leica GFPフィルターセットを備えた実体顕微鏡を使用して撮影したものである。参考までに、接合胚の全長は約1.5mmであった。
【0208】
アグロ感染から7日後、胚を成熟培地(+0.1mg/lイマザピル含有の289Q培地)に移し、イマダゾリノン系除草剤を使用して、トランスジェニック胚を選択した。成熟培地に14日間置いた後、成熟胚を発根培地(13158H培地;13158培地+25mg/lセフォタキシム)に移し、PCR分析用に葉片をサンプリングした。第1の雌穂から生じた53個の胚から12個の除草剤耐性植物体はPCRされ、アグロバクテリウム属(Agrobacterium)形質転換を開始した時を実験の開始として、それから32〜34日後にこれらを温室に送った。植物のいずれかが部分的にしか形質転換されない(キメラ)可能性を確認するため、各植物体から2種の試料、すなわち2つの相対する耳から(植物体の反対側の両方の葉から)の試料を採取することにより、植物体のPCR用の試料を得た。全植物体からの各試料ペアに対するPCRの結果は、他と一致し、キメラ植物体が生じていないこと、およびT0植物体は均質に遺伝子が導入されていることを示している。
【0209】
実施例7.プロモーターの発現パターン
植物発育期の様々なトウモロコシ組織における正常な発現パターンを評価するためにデータを分析した。評価には超並列末端固有配列解析(Reinartz J et al.2002.Brief Funct Genomic Proteomic.1(1):95−104、Brenner S et al.2000.Nat Biotechnol.18(6):630−4、Torres et al.,2008.Gene expression profiling by massively parallel sequencing.Genome Res.18(1):172−177)を使用した。様々な発育段階の各種組織、例えば、根、茎、葉/シュート、未熟雄穂、胚、小花梗、胚乳、果皮、毛(silk)、雌穂、小穂、葯、花粉および分裂組織などを解析のための試料とした。超並列末端固有配列解析(MPSS)の発現データは、ZM−PLTP(配列番号1)については図5に、ZM−PLTP1(配列番号3)については図6に、ZM−PLTP2(配列番号4)については図7に、ZM−FBP1(配列番号10)については図8に、ZM−RFP(配列番号11)については図9に、ZM−APMP(配列番号12)については図10に、ZM−RfeSP(配列番号13)については図11に、ZM−CRR6(配列番号14)については図12に、ZM−G3K(配列番号15)については図13に、ZM−CAB7(配列番号16)については図14に、ZM−UBR(配列番号17)については図15に、ZM−HBP(配列番号18)については図16に、ZM−PS1−N(配列番号19)については図17に、およびZM−SDR光化学系I反応中心サブユニットpsi−N(配列番号20)については図18に示す。これらの全てのプロモーターにおける発現の際立った特徴は、根で発現が見られず、生殖構造体(いくつかのプロモーターでは毛(silk)を除く)では発現がないかもしくは低いことであった。葉では、図18のZM−SDR(配列番号20)、図20のZM−LGL(配列番号25)、図21のZM−LEA14−A(配列番号26)および図22のZM−LEA34−D(配列番号27)、(これらは胚でのみ(または、主に)発現した)を除く、これらの遺伝子の多くで中程度から高い発現を示した。
【0210】
実施例8.ダイズの形質転換の改善を目的に、WUSの発現をコントロールするためのダイズのLTP3プロモーターの使用。
シロイヌナズナ(Arabidopsis)のWUS遺伝子を用いて形質転換を改善させるためにプロモーターを見出した。アグロバクテリウム(Agrobacterium)媒介形質転換直後およびカルスの成長期間を通じて発現した、シロイヌナズナ(Arabidopsis)WUSの高レベルの発現(例えば、ダイズEF1A PRO:配列番号32使用の場合)により、イベントの生成速度が増大した。しかしながら、この転写因子のこのレベルの発現を継続させると、イベントの再生が妨げられた。可能性のある解決策としては、小植物体の再生前に、この遺伝子を切除し、体細胞胚の分化および成熟に際してシロイヌナズナ(Arabidopsis)WUSの異所性発現を制限することであろう。このことに基づき、培養細胞、胚、および成長中の未成熟種子で発現し、別の植物組織では発現が全くないかまたは非常に低レベルである新規のプロモーターを探索した。ダイズLTP3(GM−LTP3;配列番号21)プロモーターがこれらの基準を満たした。GM−LTP3(配列番号21)は、これまでに確認されていないダイズのリン脂質トランスフェラーゼ遺伝子からのものである。EF1A PROの構成的発現(図23)と比較すると、LTP3の発現(図24)は、i)成長中の未成熟種子で強く、かつii)別の試料および植物の部分では弱いかまたは発現しないが、EF1Aの発現は全ての組織で観察された。
【0211】
発現カセット GM−LTP3 PRO::AT−WUS::UBI14 TERM+GM−UBQ PRO::TAGRFP::UBQ3 TERMを含むT−DNA含有アグロバクテリウム属(Agrobacterium)株AGL1を使用し、Pioneerダイズ変種93Y21を形質転換した。アグロバクテリウム属(Agrobacterium)の感染開始から4日後、組織を滅菌培養培地で洗浄し、過剰の細菌を除いた。9日後、組織を体細胞胚成熟培地に移し、22日後にトランスジェニック体細胞胚はドライダウンの準備が整った。この時点で、十分に形成された成熟体細胞胚は、RFPフィルターを備えた落射蛍光実体顕微鏡下で赤色の蛍光を発した。成長した体細胞胚は、機能的であり発芽して温室で健康な植物体に育った。この急速な、体細胞胚の生成方法、および発芽させて植物体を形成する方法により、アグロバクテリウム属(Agrobacterium)の感染からトランスジェニックT0植物体を温室に移すまでの通常の時間枠が、4ヵ月(従来のダイズの形質転換)から2ヵ月に短縮された。
【0212】
アグロバクテリウム属(Agrobacterium)の感染から2週後の、未成熟子葉外植体の体細胞胚形成反応の分布を示す図25のボックスプロットで示すように、At−WUSの発現を駆動するGM−LTP3プロモーター(LTP3 PRO)を使用すると、体細胞胚の形成が大きく改善された(試験した他のプロモーター、例えば、P450、GH、HSDおよびSSL1プロモーター、またはWUS発現カセットを含まないネガティブコントロール(NEG CON)と比較して)。
【0213】
感染した未成熟子葉集団の体細胞胚反応の増加はまた、急速な体細胞胚の成長を伴い、これは形態を評価する光学顕微鏡(図26A)および赤色蛍光を観察する落射蛍光顕微鏡(図26B)の両方で観察された。それは、アグロバクテリウム属(Agrobacterium)の感染から僅か5週後に、乾燥およびその後の発芽準備が整った、成熟したトランスジェニックダイズの体細胞胚を示すものである。未成熟子葉をLTP3::At−WUSを用いずに形質転換(コントロール処理)すると、成熟体細胞胚は極めて低い頻度で生成する(図25を参照)だけでなく、アグロバクテリウム属(Agrobacterium)の感染から体細胞胚が同等の成熟度になるまでに9週間の培養期間を必要とした。
【0214】
実施例9.トウモロコシの体細胞胚を生成するために、相同遺伝子源からの様々なPLTPプロモーターを使用したことの結果。
以下に記載する研究では、ポジティブコントロールとして使用される次の構造から始まる単一のT−DNA構造を使用した:RB+ZM−AXIG1 PRO::ZM−WUS2::IN2−1 TERM+ZM−PLTP PRO::ZM−ODP2::OS−T28 TERM+GZ−W64A TERM+UBI PRO:UBI1ZM INTRON:ESR::SB−SAG12 TERM+SB−ALS PRO::HRA::SB−PEPC1 TERM+UBI PRO::ZS−GREEN1::PINII TERM:SB−ACTIN TERM−LB。このT−DNAとの関連では、ZM−PLTP PRO(コントロール処理からの配列番号1)が、2種のトウモロコシパラログ(ZM−PLTP1およびZM−PLTP2、それぞれ配列番号3および配列番号4)からのプロモーターで、または3種のイネ科(Poaceae)のオーソログ(モロコシ(Sorghum bicolor)SB−PLTP1(配列番号2)、アワ(Setaria italica)SI−PLTP1(配列番号7)もしくはイネ(Oryza sativa)OS−PLTP1(配列番号8)からのプロモーターで置き換えられていることを除けば、成分は全て変わらなかった。未熟胚源としてPioneer近交系PH1V5T、PH1V69およびPHH5Gを使用して、コントロールT−DNA(上記の全てのトウモロコシ成分)を胚盤に導入すると、7日後には、感染した未熟胚の大部分で、胚盤表面積の約半分が新たに成長した体細胞胚で覆われ、この反応のスコアを「2」とする。この反応スペクトルの上限では、感染7日後、解剖顕微鏡下で容易に認められる個々の成長中の「一面」の体細胞胚で胚盤が覆われたなら、この反応には相対スコア「4」を与え、そして他の処理全てを「0」(反応なし)から「4」(体細胞胚が最も多く生成)まで整数でランク付けした。これらの3つの近交系のベースライン反応(すなわち、T−DNA中にWUS2カセットまたはODP2カセットを含まない)については、PH1V5Tは低レベルの体細胞胚を生成した(スコア1)が、PH1V69およびPHH5Gの両者は反応なしであった(スコア0)。
【0215】
様々な「相同」プロモーターにより、3種の異なるPioneer近交系で、コントロール処理(ZM−PLTP PRO)(そのスコアは1〜2であった)に対し、ある範囲の急速な体細胞胚の形成が生じた。
【0216】
【表17】
【0217】
この実験では、ZM−PLTP1プロモーターが、感染7日後に、3(PH1V5Tにおいて、およそ75%が体細胞胚で覆われた)〜4(PH1V69およびPHH5Gにおいて、全体が覆われた)の範囲という、最も高い体細胞胚形成スコアを生じた。ZM−PLTP2もまた、3種の近交系全てでスコアが同じ3となり、コントロールより良好な結果を生じた。イネ科(Poaceae)の他のメンバー由来のPLTP1プロモーター、ソルガムおよびイネプロモーターは、2種の近交系で中程度の反応(2)を、1種の近交系で低い反応(1)を生じ、一方、エノコログサ属(Setaria)プロモーターは、2種の近交系で低レベルの反応を、1種の近交系で中程度の反応を生じた。とはいえ、試験した全てのPLTPプロモーターが、7日後には、体細胞胚形成においてポジティブな刺激をもたらした。
【0218】
本明細書では、単数形「a」、「an」および「the」は別途文脈が明確に指示しない限り複数の指示対象を含む。したがって、例えば、「細胞」への言及は、そのような細胞を複数種含み、「タンパク質」への言及は、1つ以上のタンパク質および当業者に知られたその同等物などを含む。別途明確な指示がない限り、本明細書で使用する全ての技術用語および科学用語は、本開示が属する技術分野の当業者により一般に理解される意味と同一の意味を有する。
【0219】
本明細書で言及した全ての特許、刊行物および特許出願は、本開示が属する技術分野の当業者の水準を示すものである。全ての特許、刊行物および特許出願は、あたかも個々の特許、刊行物または特許出願が、明確にかつ個々に参照により全体的に組み込まれるよう指示されているのと同程度に、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0220】
以上の開示は、理解を明確にする目的で、図面および実施例を使ってある程度の詳しく説明してきたが、添付の請求項の範囲内で一定の変更および修正を行うことができる。
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26A
図26B
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]