(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6871255
(24)【登録日】2021年4月19日
(45)【発行日】2021年5月12日
(54)【発明の名称】ゲフィチニブの結晶形Aを製造する方法
(51)【国際特許分類】
C07D 239/94 20060101AFI20210426BHJP
A61K 31/517 20060101ALN20210426BHJP
A61P 43/00 20060101ALN20210426BHJP
A61P 35/00 20060101ALN20210426BHJP
【FI】
C07D239/94
!A61K31/517
!A61P43/00 111
!A61P35/00
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2018-534677(P2018-534677)
(86)(22)【出願日】2016年12月22日
(65)【公表番号】特表2019-505509(P2019-505509A)
(43)【公表日】2019年2月28日
(86)【国際出願番号】EP2016082322
(87)【国際公開番号】WO2017114735
(87)【国際公開日】20170706
【審査請求日】2019年12月11日
(31)【優先権主張番号】15203106.8
(32)【優先日】2015年12月30日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】500415715
【氏名又は名称】シントン・ベスローテン・フェンノートシャップ
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100096769
【弁理士】
【氏名又は名称】有原 幸一
(74)【代理人】
【識別番号】100107319
【弁理士】
【氏名又は名称】松島 鉄男
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【識別番号】100170379
【弁理士】
【氏名又は名称】徳本 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100180231
【弁理士】
【氏名又は名称】水島 亜希子
(72)【発明者】
【氏名】メルシャ,ペトル
(72)【発明者】
【氏名】スコウマル,ラドミール
【審査官】
早川 裕之
(56)【参考文献】
【文献】
特表2005−525354(JP,A)
【文献】
国際公開第2006/090413(WO,A1)
【文献】
中国特許出願公開第101973944(CN,A)
【文献】
中国特許出願公開第104277005(CN,A)
【文献】
中国特許出願公開第103102316(CN,A)
【文献】
中国特許出願公開第103896862(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D 239/94
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
CuKα1放射線(λ=1.54060Å)で測定し
、7.14、11.26、14.25、15.86、24.33、および26.40°2θ(±0.2°2θ)のピークを含むXRPD粉末回折パターンを特徴とする式(1)
【化1】
のゲフィチニブの結晶形1を製造する方法であって、
1.ゲフィチニブを、水とエタノールおよびブタノールから選択されるアルコールとを含む溶媒混合物中に溶解するステップであって、水とアルコールの比が1:16〜1:25(体積:体積)であるステップと、
2.ゲフィチニブの結晶形1を単離するステップと
を含む方法。
【請求項2】
前記水とアルコールの比が、1:18〜1:20(体積:体積)である請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記水とアルコールの比が、1:20(体積:体積)である請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記混合物中のゲフィチニブの濃度が、0.08g/ml〜0.15g/mlである請求項1から3のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゲフィチニブの結晶形1(crystalline Form 1)を製造するための改良された方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ゲフィチニブ、つまり化学的には、式(1)の4−(3−クロロ−4−フルオロフェニルアミノ)−7−メトキシ−6−[3−(4−モルホリニル)プロポキシ]キナゾリンは、
【化1】
上皮成長因子受容体(EGFR)のチロシンキナーゼの選択的阻害剤として作用する薬学的有効化合物である。ゲフィチニブは、医薬品として、例えば、局所進行性または転移性の非小細胞肺癌(NSCLC)の治療に使用され、例えば、経口投与用のゲフィチニブ250mg錠剤として商標名イレッサ(登録商標)で入手可能である。
【0003】
ゲフィチニブは、包括的に、欧州特許出願公開第566226号明細書において開示された。具体的には、ゲフィチニブおよびその塩が欧州特許出願公開第823900号明細書において開示されたが、ゲフィチニブ基剤の異なる多形(polymorphic form)が欧州特許出願公開第1480650号明細書(結晶形1の無水物、および結晶形5の三水和物)ならびに国際公開第2006/090413号(結晶形6の一水和物)において開示された。
【0004】
ゲフィチニブの固体形態の中で、欧州特許出願公開第1480650号明細書の結晶形1は、固体剤形を製造するための製薬用賦形剤との良好な加工性および適合性を有するとともに十分に安定で非吸湿性であることから製薬業界で特に好まれている。
【0005】
ゲフィチニブの結晶形1の調製に関する方法が、いくつかの先行技術文献、例えば、中国特許出願公開第103102316号明細書または同第101973944号明細書において開示されている。この方法の欠点は、ゲフィチニブの溶解性が低いために大容量の溶媒が使用されることである。
【発明の概要】
【0006】
本発明は、ゲフィチニブの結晶形1(crystalline GefitinibForm 1)を製造するための簡単な方法であって、以下に定義するように、ゲフィチニブを溶解するために大容量の溶媒を使用する必要がないとともに、工業規模での信頼性の高い製造環境において効果的である、方法に関する。
【0007】
本発明の第1の目的は、特に、約7.14、11.26、14.25、15.86、24.33、および26.40°2θ(±0.2°2θ)のピークを含むXRPD粉末回折パターンを特徴とする式(1)のゲフィチニブの結晶形1を調製する方法であって、
【化2】
1.ゲフィチニブを、水とエタノールおよびブタノールから選択されるアルコールとを含む溶媒混合物中に溶解するステップであって、水とアルコールの比が1:16〜1:25(体積:体積)である、ステップ;
2.ゲフィチニブの結晶形1を単離するステップ
を含む、方法である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施例2の方法によって得られたゲフィチニブの結晶形1のX線粉末ディフラクトグラム(XRPD)を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、ゲフィチニブの結晶形1を製造する方法に関する。開示および特許請求の範囲の全体にわたって、ゲフィチニブの「結晶形1」は、CuKα1放射線(λ=1.54060Å)で測定した場合に得られる、特に、約7.14、11.26、14.25、15.86、24.33、および26.40°2θ(±0.2°2θ)のピークを含むXRPD粉末回折パターンを特徴とする結晶形である。本発明の方法によって入手可能なゲフィチニブの結晶形1のXRPDパターンは、欧州特許出願公開第1480650号明細書でゲフィチニブの結晶形1に関して開示されているものと実質上一致する。「実質上一致する」とは、結晶構造の違いではなくむしろ技術および試料調製の違いを表す、当業者が分からないであろうパターンのばらつき/違いを包含することを意味する。
【0010】
本発明の方法によって生成されたゲフィチニブの結晶形1は、形成された結晶の大きさおよび形において優れたバッチ間均一性を有する。本発明の特定の一態様によれば、本発明の方法によって生成されたゲフィチニブの結晶形1は、好ましくは、ゲフィチニブの他の結晶形を実質的に含まない。この点において、「実質的に含まない」とは、ゲフィチニブの結晶形1を含む沈澱および/または単離生成物中に10%未満、より好ましくは5%未満の他の結晶形が存在することを意味する。
【0011】
本発明の方法のための出発材料のゲフィチニブは、市販されており、または既知の手順に従って、例えば、国際公開第96/33980号に開示される手順に従って生成することができる。
【0012】
本目的は、特に、約7.14、11.26、14.25、15.86、24.33、および26.40°2θ(±0.2°2θ)のピークを含むXRPD粉末回折パターンを特徴とする式(1)のゲフィチニブの結晶形1を調製する方法であって、この方法は、
【化3】
1.ゲフィチニブを、水とエタノールおよびブタノールから選択されるアルコールとを含む溶媒混合物中に溶解するステップであって、水とアルコールの比が1:16〜1:25(体積:体積)であるステップと、
2.ゲフィチニブの結晶形1を単離するステップと
を含む。
【0013】
本発明の方法の第1ステップにおいて、式(1)の化合物を、通常撹拌下で、水とC1〜C6脂肪族アルコールから選択されるアルコール、好ましくはエタノールまたはブタノールとを含む溶媒混合物と一緒にする。ブタノールは、1−ブタノールもしくは2−ブタノールでも、またはそれらの混合物でもよい。水とアルコールの比は、1:16〜1:25(体積:体積)、好ましくは1:18〜1:20(体積:体積)であり、最も好ましい比は1:20(体積:体積)である。水含量がより高い溶媒混合物は、単離されたゲフィチニブ中に多形1とは異なる多形(例えば、ゲフィチニブの水和形)の存在を示す。溶媒とゲフィチニブとの混合物を、例えば、混合物の還流温度に加熱して、溶媒混合物中にゲフィチニブを溶解することができる。混合物中にゲフィチニブを溶解した後、混合物を、50〜75℃、好ましくは75℃の温度に冷却することができる。次いで、好ましくは、混合物にゲフィチニブの結晶形1の粒子の結晶種を入れる。混合物を−10℃〜室温(20〜25℃)の温度で、好ましくは室温でさらに冷却することができる。混合物をこの温度で5〜20時間、好ましくは10〜16時間撹拌する。その間にゲフィチニブの結晶形1が混合物から沈澱する。
【0014】
水とエタノールまたはブタノールから選択されるアルコールとを含む溶媒混合物およびそれらの比は、本発明にとって不可欠なものである。ゲフィチニブの結晶形1は、任意の技術、例えば、結晶化、溶媒蒸発などによって混合物から沈澱させることができる。
【0015】
沈澱した生成物を、従来技術、例えば、ろ過または遠心分離によって混合物から単離することができ、洗浄し、乾燥することができる。
【0016】
開示の方法を使用して、ゲフィチニブの結晶形1の結晶化に使用する溶媒の量を、従来技術方法と比べて驚くほど減少させることができる。
【0017】
本発明の方法によって調製したゲフィチニブの結晶形1を、薬学的組成物に製剤化し、使用することができる。例えば、適切な薬学的組成物は、ゲフィチニブの結晶形1および少なくとも1種の薬学的に許容される賦形剤を含み得る。
【0018】
本発明の方法によって調製したゲフィチニブの結晶形1は、例えば、局所進行性または転移性の非小細胞肺癌(NSCLC)を含めた広範囲の病態の治療に適している。本発明を以下の非限定的な例を参照してさらに説明する。
【実施例】
【0019】
[実施例1]
ゲフィチニブ(10g、22.29mmol)を含む2−ブタノール(85.3ml)および水(4.7ml)の懸濁液を、撹拌しながら94℃(還流)に加熱して、透明な溶液を得た。その溶液を撹拌しながら75℃に冷却した。それにゲフィチニブの結晶形1の結晶種を入れ、得られた懸濁液を75℃で1時間撹拌した。次いで、それを2時間以上かけて23℃に冷却し、さらに12時間撹拌し、ろ過し、2−ブタノール(10ml)で洗浄し、乾燥して、ゲフィチニブの結晶形1を収率87%で得た。
【0020】
[実施例2]
ゲフィチニブ(10g、22.29mmol)を含む2−ブタノール(88ml)および水(4.4ml)の懸濁液を、撹拌しながら94℃(還流)に加熱して、透明な溶液を得た。その溶液を撹拌しながら75℃に冷却した。それにゲフィチニブの結晶形1の結晶種を入れ、得られた懸濁液を75℃で1時間撹拌した。次いで、それを2時間以上かけて23℃に冷却し、さらに12時間撹拌し、ろ過し、2−ブタノール(10ml)で洗浄し、乾燥して、ゲフィチニブの結晶形1を収率85%で得た。
【0021】
[実施例3]
ゲフィチニブ(10g、22.29mmol)を含むエタノール(88ml)および水(4.4ml)の懸濁液を、撹拌しながら加熱還流して、透明な溶液を得た。その溶液を撹拌しながら75℃に冷却した。それにゲフィチニブの結晶形1の結晶種を入れ、得られた懸濁液を75℃で1時間撹拌した。次いで、それを2時間以上かけて23℃に冷却し、さらに13時間撹拌し、ろ過し、エタノール(10ml)で洗浄し、乾燥して、ゲフィチニブの結晶形1を収率86%で得た。
【0022】
次いで、以下の測定条件を使用して、ゲフィチニブの結晶形1に対応するXRPD(
図1に示す)を得た。
【0023】
Vantec PSD検出器を装備した、θ/2θ幾何形状(反射モード)を有するBruker−AXS D8 Vario回折計
【0024】
【表1】