【文献】
KAHARI HANNA, et al,Improvements and Modifications to Room-Temperature Fabrication Method for Dielectric Li2MoO4 Ceramics,Journal of American Ceramic Society,米国,2015年,Vol. 98, No. 3,p.687-689
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
焼結材料を調製するための方法であって、50μm未満の粒径を有する粒子形態の少なくとも1種の無機化合物を、前記無機化合物を部分的に溶解できる溶媒と合わせて、混合物を形成すること、ならびに圧力および熱を前記混合物に加えて、前記溶媒を蒸発させ、前記少なくとも1種の無機化合物を高密度化して、焼結材料を形成することを含み、前記加えられる熱が、前記溶媒の沸点を200℃以下で上回る温度であり、前記焼結材料を80%超の相対密度になるまで高密度化する、方法。
焼結複合材料を調製するための方法であって、粒子形態の少なくとも1種の無機化合物および少なくとも1種の他の物質を、前記無機化合物を部分的に溶解できる溶媒と合わせて、混合物を形成すること、ならびに圧力および熱を前記混合物に加えて、前記溶媒を蒸発させ、前記少なくとも1種の無機化合物を高密度化して、焼結複合材料を形成することを含み、前記加えられる熱が、前記溶媒の沸点を200℃以下で上回る温度であり、前記焼結材料を80%超の相対密度になるまで高密度化する、方法。
基材上に焼結材料を調製するための方法であって、セラミックを基材上に堆積させ、続いて、前記堆積したセラミックを水性溶媒に曝露して、濡れた状態の堆積したセラミックを形成すること、ならびに圧力および熱を前記濡れた状態の堆積したセラミックに加えて、溶媒を蒸発させ、前記セラミックを前記基材上に焼結することを含み、前記加えられる熱が、200℃以下であり、前記加えられる圧力が、5,000MPa以下であり、前記セラミックが、85%以上の相対密度になるまで焼結される、方法。
前記無機化合物またはセラミックおよび前記溶媒が、前記無機化合物またはセラミックを、前記溶媒の制御された相対雰囲気に曝露することによって合わせられる、請求項1、2または4に記載の方法。
前記混合物を2個以上の基材上に形成すること、および焼結無機化合物または複合材料によって前記2個以上の基材を積層することをさらに含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0016】
焼結は、固体を高密度な固体に変換する方法を指し、一般的に、熱エネルギーおよび/または圧力を含む。本開示は、低温焼結方法に関する。すなわち、本開示は、材料の成分を少なくとも部分的に溶解させる溶媒を使用して、概ね溶媒の沸点の温度から沸点を200℃以下上回る温度間において、材料を高密度化するための方法(すなわち、低温焼結)に関する。好ましくは、加えられる熱は、溶媒の沸点の温度および溶媒の沸点を50〜80℃までで上回る温度である。本明細書において使用されているとき、溶媒の沸点は、1気圧における沸点である。一部の実施形態において、焼結温度は、200℃以下である。本開示の方法は、多種多様な化学的性質および複合材料にわたって、低温で高密度な固体を得ることができる。
【0017】
本方法は、粒子形態の少なくとも1種の無機化合物を、無機化合物を部分的に可溶化できる溶媒と合わせて、混合物を形成することを含む。他の成分、例えば他の物質が、無機化合物と共に含まれていてもよい。本方法は、溶媒を蒸発させる温度で圧力および熱を加えることによって、他の成分と共にまたは他の成分なしで無機化合物を焼結する(例えば、高密度化する)。有利なことに、溶媒を蒸発させる温度で圧力および熱を加えることにより、溶媒を蒸発させ、他の成分を含むまたは含まない無機化合物を高密度化して、高密度化された材料または複合材料を形成する。他の物質は、少なくとも1種の無機化合物と異なる物質である。他の物質は、異なる無機化合物であってもよいし、または例えばポリマー、金属もしくは他の材料であってもよい。
【0018】
本開示のために有用な無機化合物は、例えば、セラミック、例えば、金属酸化物、例えば、リチウム金属酸化物および非リチウム金属酸化物、金属炭酸塩、金属硫酸塩、金属セレン化物、金属フッ化物、金属テルル化物、金属ヒ化物、金属臭化物、金属ヨウ化物、金属窒化物、金属硫化物、金属ならびに金属炭化物を含む。
【0019】
本発明者らは、有利なことに、混合物の形成前に少なくとも1種の無機化合物のための微粉を使用することにより、高密度化された材料の特性が向上することを発見した。微粉は、例えばボールミル粉砕、アトリッションミル粉砕、振動ミル粉砕およびジェットミル粉砕等によって無機化合物を微粉砕することによって、製造することができる。
【0020】
本開示の一態様において、粒子形態の少なくとも1種の無機化合物は、100μm未満の粒径、または50μm未満、30μm未満、20μm未満、10μm未満およびさらには約5μm未満の粒径、または約1μm未満の粒径を有する。粒径は、Sedigraphによる方法、レーザー回折または同等の方法によって決定することができ、粒子の少なくとも95%は、先述の粒径以下である。
【0021】
有利なことに、適用される温度は、溶媒の沸点を約200℃以下で上回る。熱を加えることにより、溶媒を蒸発させ、可溶化された種を過飽和し、少なくとも1種の無機化合物を高密度化して、焼結材料および/または複合材料を形成すると考えられている。本開示の一態様において、混合物に加えられる熱は、約250℃未満、例えば約200℃未満または約150℃未満、例えば約100℃未満の温度である。
【0022】
本開示の方法の最中に加えられる圧力は限定されていないが、本開示の材料は、約5,000MPa以下の圧力、好ましくは中間の圧力、例えば約30MPa〜約2,000MPaまでの圧力、例えば約250MPa〜約750MPaまでの圧力下で焼結することができる。圧力は、低温焼結を促進するために加えることができ、一方で、溶媒は、系から蒸発することができる。
【0023】
本開示の実施において有用な溶媒は、C
1〜12アルコール、ケトン、エステル、水および/またはこれらの混合物のうちの1つまたは複数を含む。水は、単独の溶媒であってもよいし、または、可溶性塩を含むもしくは含まない、C
1〜12アルコール、ケトンもしくはエステルもしくはこれらの混合物のうちの1つもしくは複数を含む溶媒であってもよい。有機酸、例えば、クエン酸、酢酸、ギ酸、硝酸、オレイン酸等を含む酸性成分等の他の成分を溶媒に添加して、溶媒のpHを調製することができる。本開示の一態様において、溶媒は、任意選択により1種または複数の可溶性塩ならびに任意選択により1種または複数のC
1〜12アルコール、ケトン、エステルおよび/または有機酸を含む水を含む水性媒体であってよい。実施形態は、少なくとも50重量%の水、および有機酸等の1種もしくは複数の他の成分、またはC
1〜12アルコール、ケトン、エステルもしくは可溶性塩のうちの1つもしくは複数、またはこれらの混合物を含む、水性溶媒を含む。好ましくは、溶媒は、約200℃未満、例えば約120℃未満の沸点を有する。
【0024】
本開示の実施の一態様において、水およびわずかに酸性の水は、固結前の粉末形態の材料に添加してもよいし、または、後で水蒸気の形態で添加してもよい。他の溶媒を使用して、本方法の反応速度を制御することもできるが、水は、実用の観点から十分に良く機能する。
【0025】
溶媒は、無機化合物および無機化合物と混合される任意選択による他の成分を、無機化合物の微粉と任意選択により他の成分との調製された混合物に溶媒を直接添加すること、または無機化合物および任意選択による他の成分を溶媒からの蒸気に曝露することによって、合わせることができる。無機化合物および任意選択による他の成分は、溶媒の添加中、分圧下であってよい。本開示の一実施形態の実施において、溶媒は、少量となるように、例えば約30重量%未満の総固形分、例えばwt/wtにより約0.3g/1g未満となるように簡単に混合することができ、または、水性溶媒における多湿雰囲気に無機化合物を曝露すること等、溶媒の制御された相対雰囲気に粉末形態の無機化合物を曝露することによって簡単に混合することができる。
【0026】
有利なことに、低温焼結方法は、材料を高密度化する。焼結材料、例えば無機化合物、セラミックまたは複合材料の相対密度は、60%超、例えば80%超、例えば85%以上およびさらには90%超である。焼結材料の相対密度は、質量/幾何形状比もしくはアルキメデス法または同等の方法によって決定される。さらに、本開示の低温焼結方法は、短い期間で焼結材料を高密度化する。例えば、本開示の低温焼結方法は、180分未満、例えば120分未満、例えば60分以下で少なくとも85%およびさらには少なくとも90%の相対密度になるまで焼結材料を高密度化する。一部の実施形態において、本開示の低温焼結方法は、例えば、30分以下で少なくとも85%およびさらには少なくとも90%の相対密度になるまで焼結材料を高密度化する。
【0027】
本開示の低温焼結方法は、溶媒、例えば一時的な溶媒としての水性媒体を使用した低温液相焼結方法であると考えられている。例えば、本開示の一実施形態において、セラミック粉末は、少量の溶媒、例えば水溶液によって一様に湿潤させる。セラミック粉末の固体表面が分解し、溶媒中に部分的に溶解し、この結果、制御された量の液相が、粒子と粒子との界面に意図的に導入されると考えられている。これは、数滴の溶媒等、少量となるように簡単に混合することによって達成することができ、または、水性溶媒における多湿雰囲気等、溶媒の制御された相対雰囲気に粉末を曝露することによって達成することができる。第1の段階において、粉末の固体粒子の鋭利な縁部が溶解することにより、界面の面積が低下し、ある程度の毛管力が再配列を促進すると考えられている。外部からの十分な毛管圧の補助により、液相は、自力で再分配を行い、粒子間の細孔内に充満する。一軸圧力を加えたとき、固体粒子は、迅速に再配列し、これにより、総体としては、初期の高密度化をもたらす。しばしば「溶液沈殿(solution-precipitation)」と呼ばれる後続の成長段階は、溶媒の沸点よりわずかに高い低温、例えば、水性媒体の場合は100℃よりわずかに高い低温で液相の過飽和状態を可能にし、固体および液相が高いレベルの高密度化を達成するように大きな化学的駆動力を誘起する溶媒の蒸発によって起きる。
【0028】
本開示の一実施形態の実施において、セラミックは、低温で焼結することができる。このような実施形態において、本方法は、1〜25wt%までの量の溶媒、例えば水性溶媒に曝露するとすぐに、セラミックが部分的に溶解して、混合物、例えば粒子層を形成することになる、粒子形態のセラミックを含む。溶媒を含むこの粒子層は、一軸圧力に曝露することが可能であり、制御された乾燥速度下においては、粒子の再配列および沈殿をもたらして、粒子を高密度化し、短い期間、例えば120分未満、例えば60分以下で例えば85%以上、例えば90%超の相対密度になるまで焼結させて、高密度なセラミックにすることができる。
【0029】
下記表1は、本開示による低温焼結を施せることがすでに実証された材料を示している。
【0031】
表1に提示の材料は、本開示に従って80%以上の密度になるまで低温焼結されており、大部分の材料は、本開示に従って85%以上の密度になるまで低温焼結された。同様に、PbZrTiO
3等のPZT材料も低温焼結することができる。
【0032】
バルク状形態において、本発明者らは、低温焼結することができる二元酸化物、三元酸化物、四元酸化物、五元酸化物、炭酸塩、フッ化物、硫酸塩、リン酸塩および臭化物にわたって、多様な化学的性質および結晶構造の幅広い用途を実証した。選択された材料は、誘電体材料、電気化学的材料、イオン電解質、混合イオン伝導体、強誘電体、半導体材料、熱電材料、バイオマテリアルの形態および触媒基材用途において、実用的な関心を寄せられている。本明細書において開示された低温焼結方法は、溶媒への十分な溶解度を有するヒ化物、ホウ化物、臭化物、炭酸塩、炭化物、フッ化物、金属、窒化物、酸化物、リン酸塩、セレン化物、硫化物、テルル化物等に適用可能であり、一時的に過飽和した粒界相からの再沈殿の反応速度は、加熱速度に対して十分に速い。同様に、ヒドロキシアパタイト(HA)の焼結も、本明細書に開示されている本低温焼結方法によって行うことができる。
【0033】
低温焼結によって製造することができる単相モノリス基材の他にも、数多くの複合材料および集積デバイスを低温焼結方法によって形成することができる。これらは、混合された材料、積層された材料、および、電子パッケージにおいて使用されるような厚膜法によって相互接続された材料の形態であってよい。低温焼結の低温および速い焼結時間により、焼結材料ポリマーと、機械的強度のためのナノメタル、ナノセラミック、バイオマテリアル、生体細胞、タンパク質、薬物およびガラスまたは炭素繊維を複合化することも可能であり、これらのすべてが、設計の自由度の向上、ならびに、バルク状のセラミックおよび複合材料においてこれまで利用可能ではなかった機能性をもたらす。同様に、エレクトロセラミックおよび耐火物も製作することができる。
【0034】
さらに、積層セラミックは、QPac(商標)(ポリアルキレンカーボネート)等の低温バインダー系ならびにこのバインダー系に適した溶媒および可塑剤を使用して、テープ成形法によって形成することができる。これを使用して、セラミック材料をキャストすることができ、次いで、これらの材料を積層することができる。最初に、本発明者らは、空気または窒素雰囲気下において、170℃〜200℃までの温度でバインダーを除去することができる。次いで、これらの材料を慎重に高い湿度に曝露して、粒子の表面に水を取り込むことができる。十分な時間の後、これらの焼結されていない積層物を一軸プレス内に入れ、低温共焼結方法として、100℃〜200℃未満までで加熱することができる。他の場合において、本発明者らは、0〜60%までの体積分率のポリマー粉末と、セラミック(100%〜40%まで)とを簡単に混合し、これらをプレス加工して、初期形状を形成し、次いで、プレス加後の形状を湿気に曝露し、次いで、低温焼結を施して、高密度な共焼結セラミックおよびセラミックポリマー複合材料を形成することができる。低温焼結は、任意の気体雰囲気下で実施することができるが、不活性雰囲気、例えば、窒素またはアルゴンおよび測定可能なCO
2を含有しない雰囲気が好ましい。
【0035】
図1は、特定の実施形態による低温焼結方法のための基本的な機構を示している。本方法は、セラミック材料の製造において活用されてこなかった、比類のない基本的な液相焼結方法である。
【0036】
図2は、本開示の低温焼結において想定される基本的な多彩さおよび複合化を示している。一般的な例は、マイクロ波デバイス、電子パッケージおよび熱電気エネルギー変換システム、ならびに、ポリマーセパレータとバインダーとがセラミックアノードおよびカソード材料によって相互接続されているLiイオンバッテリー等の電気化学的システムを含む。ナノ複合材料の開発を伴うシステムにも影響が及ぶであろうし、さらには、著しく低くした温度において速い製造時間で処理することができ、スループットの向上、コストの節約およびエネルギーの節約をもたらす製造を可能にする、基材、セラミックフィルターおよび触媒担体等の単純なモノリス用途にも影響が及ぶであろう。
【0037】
次のデータは、本開示の方法の実施、ならびに、この実施から得た焼結材料および複合材料の特性をさらに実証するために提供されている。
【0038】
例えば、
図3aから
図3eは、時間、温度および圧力に関する処理条件の変更による微細構造の進展を示している。
図3aから
図3eは、様々な形態のK
2Mo
2O
7のSEM顕微鏡写真である。
図3aは、K
2Mo
2O
7粉末を示しており、
図3bは、350MPaの圧力において120℃で5分焼結したK
2Mo
2O
7セラミックを示しており、
図3cは、350MPaの圧力において180℃で5分焼結したK
2Mo
2O
7セラミックを示しており、
図3dは、350MPaの圧力において120℃で15分焼結したK
2Mo
2O
7セラミックを示しており、
図3eは、350MPaの圧力において120℃で30分焼結したK
2Mo
2O
7セラミックを示している。
【0039】
図4aから
図4cは、時間変数、温度変数および圧力変数に関する高密度化の傾向を示している。例えば、
図4aから
図4cは、様々な条件下で焼結したK
2Mo
2O
7セラミックの相対密度を示しているチャートである。
図4aは、異なる圧力により120℃で5分焼結したK
2Mo
2O
7セラミックの相対密度のチャートであり、
図4bは、異なる温度により350MPaの圧力で5分間焼結したK
2Mo
2O
7セラミックの相対密度を示しているチャートであり、
図4cは、異なる保持時間により120℃において350MPaの圧力で焼結したK
2Mo
2O
7セラミックの相対密度を示しているチャートである。これらの図のデータは、どのように時間、温度および圧力が所与の系の低温焼結に影響し得るかを示している。
【0040】
Li
2MoO
4、Na
2Mo
2O
7、K
2Mo
2O
7およびV
2O
5の低温焼結は、難溶性の単純金属酸化物セラミックおよび混合金属酸化物セラミックの焼結を示している。
図4aから
図4cに提示のように、K
2Mo
2O
7試料は、350MPaの圧力下において120℃で5分以内に89%の相対密度になるまで焼結される(
図4c)。10〜20分まで保持時間を延長したとき、本発明者らは、460℃の従来の加熱焼結温度を用いた場合に見受けられる密度と同等である、90%超の相対密度を有するセラミックを得た。温度、圧力、保持時間および含水量を適切に変更することにより、本発明者らは、高密度(90%超)相の純粋なセラミックになるまで、120℃という低い温度において、Li
2MoO
4、Na
2Mo
2O
7、K
2Mo
2O
7およびV
2O
5セラミックを低温焼結した。SEM画像は、これらの実験条件下で粒成長が大幅に限定されることを示している。この点に関して、焼結セラミックの粒径は、粉末の初期粒径の制御によって容易に調整することができる。このような技法は、制御可能で一様な粒径を有する多結晶性材料を製造するために利用することもできるし、またはさらには、LiFePO
4の場合に示されるように、最終生成物中の結晶子をナノスケールサイズに保つために利用することもできる。この組の実験は、低温焼結のための駆動力を強化するための、圧力の効果的な使用を実証している。圧力は、粒子の接触箇所において、粒子の再配列と、溶解沈殿プロセスとの両方を補助する。
【0041】
低温焼結は、複合金属酸化物を主体とした相の沈殿を伴うため、セラミック粒界におけるほんのわずかな非晶相の出現は、妥当なように思われる。非晶性粒界相の形成は、溶媒蒸発の速度によって制御される溶質の濃縮の速度、およびこれに関連付けられた、溶解相の濃縮前における溶質の過飽和の度合いに依存する。本発明者らは、原子スケールの観点から低温焼結Na
2Mo
2O
7の非晶性セラミック界面をさらに研究したが、代表的な結晶子は、[110]方向に沿って配向していた。
【0042】
本発明者らは、非晶性−結晶性界面が一般的に、テラス−レッジ方式で配列されていることを観察したが、このテラス−レッジ方式は、蒸気または液体から成長する結晶表面の平衡状態を説明するために使用される古典的なテラス−レッジ−キンク(TLK)モデルと合致している。テラスは、レッジおよび下段の別のテラスに至るステップで終わりとなり、レッジにおける原子の消失が、キンク部位を形成する。熱力学的観点からは、ステップレッジおよびキンクは、これらの部位に結合したイオン種が、再溶解に耐え切るように結晶表面との間に十分な数の化学結合を確立することができるので、液相焼結中の原子の拡散および表面自由エネルギーの最小化のためにエネルギー的に好ましい部位を提供する。非晶性相において、ナノメートルサイズの沈殿物もまた、結晶表面上に核形成することが観察される。さらに、本発明者らは、克明な走査型/透過型電子顕微鏡法(S/TEM)調査を実施して、低温焼結Na
2Mo
2O
7セラミック中における粒と粒との界面領域を検査した。本発明者らは、粒界の90%が非晶性相を有さないと見積もっており、高結晶性セラミックに近づくことが可能であることを示している。
【0043】
本開示の低温焼結方法の一利点は、それぞれ540℃、575℃、460℃および450〜660℃までにおける従来の加熱焼結によって調製されたもの(下記の実施例の部にある表3)と同等である、低温焼結Li
2MoO
4、Na
2Mo
2O
7、K
2Mo
2O
7およびV
2O
5セラミックの電気的特性を含む。データは、種々の異なる融点を有するいくつかの結晶構造になっている数多くの単純金属酸化物および混合金属酸化物、金属塩化物ならびに複合材料が、室温から200℃の間で焼結できることを実証している。低温焼結無機化合物のいくつかは、表1に列記されている。
【0044】
本開示の低温焼結方法は、溶媒中に調和溶解する無機化合物と、溶媒中に非調和溶解する無機化合物との両方に適用可能である。調和溶解は、化合物が溶解したときに、化合物の組成の変化を実質的に伴わないが、非調和溶解は、溶媒中に化合物を溶解したときに、化合物の組成の大幅な変化を伴う。
【0045】
非調和溶解は、多数の材料において広く認められるものであり、特に原子/分子/リガンドが強固な化学結合によってしっかりと結び付けられている最密充填構造の場合、やはり、水性媒体への溶解度を限定する。周知の例は、BaTiO
3であるが、BaTiO
3は、pH12未満の水性環境中で熱力学的に安定でない。BaTiO
3粒子は水と反応するため、Baは優先的に表面領域から浸出し、Tiに富んだ非晶性外殻付きのBaが不足した層を生じさせる。この非晶層は、溶液と結晶格子とを分離し、溶液と結晶格子との間での物質移行を限定することによって、過飽和溶液からの結晶成長を著しく妨げるものであるため、沈殿プロセスにとって有害である。したがって、単に水をBaTiO
3粉末と混合し、熱を加えることは、セラミックを高密度化しない。
【0046】
本開示の一態様において、通常ならば溶媒中に非調和溶解するであろう無機化合物を、他の物質と共にまたは他の物質なしで低温焼結することができる。本方法は、粒子形態の少なくとも1種の無機化合物を、無機化合物を部分的に可溶化できる溶媒と合わせて、混合物を形成することを含む。この態様の場合、溶媒を無機化合物と接触させる前に、1種または複数の原料化合物によって溶媒を飽和または過飽和する。原料化合物は、無機化合物を合成することができる好ましい化合物である。代替的には、原料化合物は、溶媒と接触したときに無機化合物の非調和溶解を実質的に防止する、化合物である。無機化合物との接触前に1種または複数の原料化合物によって溶媒を飽和〜過飽和することにより、無機化合物からの元素の浸出を最小化または防止する。浸出は、溶媒と無機粒子の固体表面との濃度差によるものであって、飽和状態または過飽和状態の濃度に到達するまで原料化合物を溶媒に添加することにより、浸出が防止または最小化されると考えられている。本開示の方法のこの態様は、溶媒中に非調和溶解する無機化合物に特に有用であるが、この態様は、化合物を調和溶解させるために使用することもできる。本開示の低温焼結方法における原料化合物を含む溶媒の使用は、反応性化合物を合わせて無機化合物を合成する方法とは、本開示の低温焼結方法が、反応成分から化合物を合成するのではなく、完全に合成された無機化合物を用いて出発し、化合物を高密度化するという点で異なる。
【0047】
本方法では、続いて、圧力および熱を混合物に加えて、溶媒を蒸発させ、少なくとも1種の無機化合物を高密度化して、焼結材料または複合材料を形成する。本実施形態において加えられる熱は、先述の実施形態の場合と同じであり、例えば、加えられる熱は、溶媒の沸点を200℃以下で上回る温度または約250℃未満、例えば約200℃未満または約150℃未満、例えば約100℃未満の温度である。少なくとも1種の無機化合物は、100μm未満のサイズ、または50μm未満、30μm未満、20μm未満、10μm未満およびさらには約5μm未満のサイズ、または約1μm未満のサイズの粒子を含むことができる。高い相対密度を短い期間で達成することができ、例えば、少なくとも85%およびさらには90%超の相対密度を180分未満、例えば120分未満、例えば60分以下または30分以下で達成することができる。
【0048】
原料化合物と一緒に溶媒を使用することを含む、低温焼結する方法を実施することにより、水性媒体中に非調和溶解しやすい数多くのセラミックを、低温で焼結することができる。BaTiO
3は、本発明の低温焼結方法の利点を実証するための良好な材料であり、理由として、(1)BaTiO
3は、特に多層セラミックキャパシタ(MLCC)のために幅広く使用されているセラミック材料であるという点、(2)高密度なBaTiO
3セラミックは一般に、約1200〜1400℃までの従来の加熱焼結によって達成されるという点、および(3)マイクロメートルサイズの粉末に比較して、一般に、BaTiO
3ナノ粒子の方が、高い表面エネルギーのため、化学反応性が良いという点がある。低温焼結BaTiO
3を調製するために、以下が用いられた:(1)高品質なBaTiO
3ナノ粒子が出発用の粉末として利用した:本発明者らの透過型電子顕微鏡法(TEM)調査は、これらのナノ結晶子は、顕著な非晶性相がナノ結晶子の表面上になくても十分に結晶化し、同様に、化学種も一様に分配されることを示唆している;(2)液相は常に、BaTiO
3表面からのBaの溶解が大幅に抑制されるのに十分な量のBa供給源によって、過飽和状態に維持する;(3)克明な水熱合成の研究により、BaTiO
3の形成は、BaおよびTiの単純な化合物を利用することによって、室温から300℃までの温度で達成され得ることが明瞭に示唆されているため、BaTiO
3の水熱合成の場合と同様に、Ti供給源もまた、BaTiO
3を形成するために液相に添加する。
【0049】
図5aは、低温焼結したときの状態のBaTiO
3セラミックおよび700〜900℃までにおける後アニーリング後のBaTiO
3セラミックの相構造の推移を示している。より良い説明を目的として、特定の角度範囲におけるさらなる詳細が、
図5bおよび
図5cとして拡大されている。低温焼結したときの状態のBaTiO
3ペレットにおいては、点線によって丸で囲んでいるように(
図5b)、不純物相が確認される。特定の量のバリウム種が特定の温度でCO
2と反応するため、BaCO
3は一般に、BaTiO
3の水熱合成中に副生成物として出現することが、一般的に報告されている。この点に関して、BaCO
3のXRDスペクトルの(111)ピークと合致している不純物相(約24°)は、雰囲気中におけるBa(OH)
2とCO
2供給源との化学反応によるBaCO
3の形成が理由である可能性が最も高いと推定することが、妥当である。相純度を改善するためには、一般に文献において報告されているように、後アニーリングプロセスを700〜900℃までで実施する。予想されるように、アニーリングプロセスは、BaTiO
3の形成を容易にすることによって、不純物相を効果的に除去するが、アニーリング後のすべてのスペクトルプロファイルは、ペロブスカイト構造と完全に合致している。結晶の対称性の観点からは、立方相は、800℃以下の温度におけるアニーリング後に、無変化の状態を維持するように思われるが、900℃におけるアニーリング後には、約45°におけるピーク分割によって示されるように、明らかな立方相から正方相への変態が起きる。この立方対称性から正方対称性への結晶学的推移は、文献と合致することが見出されている。
【0050】
図5dは、アニーリングプロセス中の低温焼結セラミックの熱重量的特性を示している。わずか約1.8%の総重量低下しか観察されないとしても、依然として、急な変化が、異なる温度段階において検出される可能性があり、これは、温度に対する重量低下の微分係数を考慮した場合、ピークP1〜P4によって標識されているように、より容易に確認することができる。質量スペクトルの補助により、これらのピークは、OH
−(またはH
2O)およびCO
2という2種の化学種の焼尽と完全に相関している。最初に、水蒸気が約100℃で出現するが、これは、セラミック粉末の表面領域からの水の脱離に起因する可能性がある。約300℃まで加熱したとき、OH
−の検出は、特定の水酸化物の分解を示唆している。後続の加熱プロセスは、CO
2の連続的な放出を起こし、これは、約520℃および約780℃を中心とした2つの温度域で主に観察される。これらの結果は、化学反応が約900℃でほぼ完了し、アニーリングプロセスが、セラミックの密度の進展に影響する可能性が最も高いことを示唆している。この点について調査するために、
図5eは、低温焼結時間の関数として、低温焼結BaTiO
3および900℃におけるアニーリング後の対応するセラミックペレットの密度の推移を示している。両方の曲線が、注目すべき2つの段階がある類似した傾向を示している。30分未満で低温焼結したセラミックは、低い密度を示しており、焼結時間が延長されて30分に達するとすぐに上昇が現れるが、この後、密度曲線は、ほぼ平坦な構成を保っている。低温焼結方法によって調製されたBaTiO
3セラミックの密度は、驚くほど低い温度(200℃未満)において、しかしながら、やはり短い期間(約30分)で、約5.6g/cm
3(6.02g/cm
3の理論密度が採用された場合、約93%の相対密度)にさえ到達し得る。これらの2つの密度推移曲線は、低温焼結方法は、BaTiO
3を対象にした約1200〜1400℃までの従来の加熱焼結温度に比較して、相対的に低い温度(700〜900℃まで)における後アニーリングによって密度をわずかに約2%改善できるとはいえ、最終的な密度の決定因子であることを明確に示している。
【0051】
実験による観察に基づくと、BaTiO
3ナノセラミックの低温焼結および関連のアニーリングプロセス中における基礎的な機構および主な段階は、次のように起きると考えられている。最初に、BaTiO
3ナノ粒子が、BaTiO
3の水熱合成のための成分を含有する水懸濁液によって均一に濡らされる。外圧の補助により、液相は、自力で再配分を行い、粒子間の細孔に充満し、粒子の圧密化および再配列を促進する。温度の上昇は、水熱反応を促進して、ガラス相を発生させ、溶液中へのBaTiO
3表面の部分的な溶解も加速させ、丸い形状の結晶子を生じさせる。低温焼結が、水の沸点を上回る温度で実施されたらすぐに、平衡になっていない動的環境が発生し、含水量が完全に消費されるまで保持される。水蒸気がセラミック全体から出現するにつれて、加えられた外圧下でさらに圧密化が進行していく。時間が経過するにつれて、BaTiO
3ナノ粒子は、平衡状態に到達するまで、新たに形成されたガラス相ならびに高密度な(BaTiO
3に比較して、約93%の相対密度)結晶性相およびガラス相によって緊密に接着されていく。ガラス相中にある対応するイオン種および/または原子クラスター(リガンド)は、化学ポテンシャルがより低いBaTiO
3結晶子上に沈殿するが、理由は、これらのBaTiO
3結晶子が熱力学的により好ましいためである。沈殿プロセスが進行すると、結晶子の形状が適合する。ガラス相が広く認められる場合は、一般に、丸みのある構成が現れるが、ガラス相の体積が著しく低下した場合は、通常、平らなファセットを有する多面体が発生する。同時に、このプロセス中の物質移行は、表面領域の過剰な自由エネルギーを最小化し、表面および孔を減少させ、結晶子と結晶子との接触面積が増大し、剛直な粒子状物質の骨格網目構造の形成が起こり、加えて、密度もさらに改善されて、約95%の相対密度になる。
【0052】
BaTiO
3の水熱合成は、複雑なプロセスであり、化学反応経路は、水熱条件に大きく依存することが知られてきた。BaTiO
3の水熱合成のための機構は、矛盾する実験による観察が文献において報告されているため、依然として議論中であるが、2種の機構が主に提案されてきた。第1の機構は、「インサイチュ(in-situ)変態(または拡散反応)機構」であり、この機構は、化学反応がTiO
2粒子の表面で開始され、不均一な核形成プロセスを誘起し、溶存バリウムがTiO
2中に拡散し、TiO
2が完全に消費されるまでBaTiO
3の連続層が生じると仮定している。他方の機構は、「溶解沈殿機構」であり、この機構は、最初に、TiO
2粒子が水溶液中に溶解して、非晶性ヒドロキシチタン錯体(Ti(OH)
n−)を生成し、次いで、溶存バリウムと反応して、溶液/ガラス環境からBaTiO
3を均一に沈殿させることを示唆している。本発明者らの化学マッピングによる観察を考慮すると、Ti元素は、ガラス相中に一様に分配されることが見出されている。この観点からは、提案の低温焼結方法が、BaTiO
3粒子上のエピタキシャル成長によって促進される溶解−沈殿経路によって実施される可能性が最も高いことを示唆しているように思われる。
【0053】
要約すると、高密度なBaTiO
3セラミックは、一般に高温で実施される慣例的な加熱焼結とは対照的に並外れて低い温度において、うまく得られた。本発明者らの実験は、最初に、非常に高密度な結晶/ガラス成形体(BaTiO
3に比較して、約93%の相対密度)が、180℃の驚くほど低い温度で得られ、次いで、後熱処理が徹底的な結晶化を起こし、密度をさらに改善して、約95%の相対密度にすることを示している。
【0054】
本開示の低温焼結方法は、焼結無機化合物、例えばセラミックとポリマーとの複合材料を調製するために適用可能である。セラミックおよびポリマー、例えば熱可塑性ポリマーを共焼結して、非常に高い体積分率のセラミックを有する複合材料を単一ステップで形成することは、セラミックとポリマーとの一般的な焼結温度にある大きな差を考えると、ありそうもないように思われる。しかしながら、これらの処理における制約は、本開示の焼結方法によって克服することができる。
【0055】
本開示の別の態様において、1種または複数の焼結無機化合物を1種または複数のポリマーと共に含む複合材料を、形成することができる。本方法は、粒子形態の少なくとも1種の無機化合物を、少なくとも1種のポリマーおよび無機化合物を部分的に可溶化できる溶媒と合わせて、混合物を形成することを含む。
【0056】
本方法では、続いて、圧力および熱を混合物に加えて、溶媒を蒸発させ、少なくとも1種の無機化合物を高密度化して、焼結材料または複合材料を形成する。本実施形態において加えられる熱は、先述の実施形態の場合と同じであり、例えば、加えられる熱は、溶媒の沸点を200℃以下で上回る温度または約250℃未満、例えば約200℃未満または約150℃未満、例えば約100℃未満の温度である。少なくとも1種の無機化合物は、100μm未満のサイズ、または50μm未満、30μm未満、20μm未満、10μm未満およびさらには約5μm未満のサイズ、または約1μm未満のサイズの粒子を特定の割合で含むことができる。無機化合物の高い相対密度を短い期間で達成することができ、例えば、少なくとも85%およびさらには90%超の相対密度を、180分未満、例えば120分未満、例えば60分以下または30分以下で達成することができる。
【0057】
下記表2は、本開示の実施形態による低温焼結に適した熱可塑性ポリマーの例示的なリストを提供している。
【0059】
本開示の焼結条件は、1ステップ式焼結方法によってポリマーおよびセラミック材料を共焼結することを可能にする。説明用の3つの例は、高密度なセラミックを、重要でない充填剤相としてのポリマーと共に同時処理して、これまでに実現されていない複合材料に変える能力によって発生した種々の電気的機能性を示すために、マイクロ波誘電体Li
2MoO
4−(−C
2F
4−)
n(PTFE)、電解質Li
1.5Al
0.5Ge
1.5(PO
4)
3−(−CH
2CF
2−)
x[−CF
2CF(CF
3)−]
y(PVDF−HFP)および半導体V
2O
5−PEDOT:PSS(ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)ポリスチレンスルホネート)複合材料を含む。本発明者らは、誘電特性、導電性および電子伝導度とイオン伝導度との両方を目的とした新たな設計を実証するために、これらの複合材料を選択している。本開示における手引きおよびデータを考えると、ポリマー製造手法は、セラミックとセラミック−ポリマー複合材料との両方の焼結のために修正することができ、製造における非常に大量のエネルギーが節約され、スループットが高まり、新規な複合材料設計も可能になる。
【0060】
図6aから
図6cに提示のように、高密度なLi
2MoO
4(LM)、Li
1.5Al
0.5Ge
1.5(PO
4)
3(LAGP)およびV
2O
5セラミックは、それぞれ540℃で2時間、825℃で8時間および450〜660℃までで2〜26時間という従来の高い加熱焼結温度および長い保持時間とは対照的に、120℃において15〜60分低温焼結することができる。ポリマーは軽量な材料であり、これにより、セラミック−ポリマー複合材料の密度は、ポリマーの量の増大に伴って低下していく(
図6aから
図6c)。ポリマーは、セラミック材料の特性にかなうように厳密に選択された。例えば、PTFEは、非常に良好な誘電体材料であり、PVDF−HFPは、ポリマーゲル電解質中にあるLi塩のための優れたホストであり、PEDOT:PSSは、良好な電子伝導性ポリマーである。すべての(1−x)LM−xPTFEおよび(1−x)V
2O
5−xPEDOT:PSS試料の相対密度は、90%より高く、(1−x)LAGP−x(PVDF−HFP)試料の密度は、80〜88%の間の範囲であり、低温焼結方法によってセラミック−ポリマー複合材料を良く焼結できることを示している。フルオロポリマーPTFEおよびPVDF−HFPとは対照的に、PEDOT:PSSは、水溶液(3〜4%PEDOT:PSS)中において、約1.5〜2.5のpH値を有する親水性ポリマーである。PEDOT:PSSのより低いpH値は、水へのV
2O
5の溶解速度を向上し、(1−x)V
2O
5−xPEDOT:PSS複合材料の相対密度をわずかに改善することができる。
【0061】
低温焼結後に明白な不純物相は存在せず、セラミックおよびポリマーを共焼結できることが明らかになっており、二相複合材料が形成された。本開示による低温焼結の使用は、少量のポリマーおよび大量のポリマーを用いた高密度な試料の調製を可能にする。少量のポリマーが組成物中に使用されている場合、セラミックがマトリックス材料としておよびポリマーが充填剤として作用し、大量のポリマーが組成物中に使用されている場合、ポリマーがマトリックス材料としておよびセラミックが充填剤として作用する。セラミック−ポリマー複合材料の後方散乱画像およびエネルギー分散型分光法(EDS)によるマップは、(1−x)LM−xPTFE、(1−x)LAGP−x(PVDF−HFP)および(1−x)V
2O
5−xPEDOT:PSS試料の密度は比較的高いことを示しており、これは、上記密度の結果と合致している。120℃における低温焼結後に、良好な分散物複合材料を得ることができることも観察されている。
【0062】
セラミック−ポリマー複合材料の性能は、成分材料の特性、成分材料の体積分率、相間接続性、粒径、多孔度等に依存する。高密度なセラミック−ポリマー複合材料は、本開示による低温焼結によって得ることができる。したがって、
図7aに提示のように、ポリマーの量を変更することにより、電気的特性および機械的特性等のセラミック−ポリマー複合材料の特性を設計することができる。x値の関数としての(1−x)LM−xPTFE複合材料のマイクロ波誘電(電気的)特性が、
図7bから
図7dにプロットされている。PTFEの誘電率は、Li
2MoO
4の誘電率より低く、この結果、xが0から0.7まで増大した場合、複合材料の比誘電率が5.8から2.9まで低下する。いくつかのモデルが、二相複合材料または多相複合材料の平均誘電率を予測するために提案されてきた。最も単純なモデルは、複合材料が電場に対して平行な状態および垂直な(直列な)状態に整列していると仮定しており、これにより、複合材料の比誘電率εの上限(式1)および下限(式2)のそれぞれが導出される:
【0065】
ε
1およびε
2が、それぞれ相1および相2の比誘電率である場合、V
1およびV
2(V
1+V
2=1)は、これらの2つの相の体積分率である。
図7bに提示のように、(1−x)LM−xPTFE複合材料の実測比誘電率は、平行式の混合法則から得られた算定比誘電率より低く、直列式の混合法則から計算された比誘電率より高い。一般に、完全に平行なまたは垂直な整列という仮定は、実際の試料に適さず、数多くの修正モデルが推定されている。可能性の問題として考えた場合、複合材料の比誘電率は、次の統計学的原理から導出することができる。
【0067】
n=1およびn=−1である場合、式3は、それぞれ平行式および直列式の混合法則になる。ランダム分布系の場合、nは、0に近似し、式3は、次の対数混合法則の式を与える:
【0069】
図7aは、実測誘電率データが、式4によって予測された傾向と良く符号していることを示している。
【0070】
品質係数(Q)は、損失正接の逆数(Q=1/tanδ)であり、マイクロ波系のエネルギー損失を表す重要なパラメータである。
図7cは、PTFEの量が変化したときに、Q×f(f、共振周波数)値の明白な悪化がないことを示しており、(1−x)LM−xPTFE複合材料が、マイクロ波用途のために使用できることを示している。本発明者らは、高い体積分率のセラミックを有する(1−x)LM−xPTFE複合材料の密度、誘電率およびQ×f値が、表4(下記の実施例の部において提供されている)に提示のように、従来のホットプレス法とは対照的に低温焼結によって改善できることも実証している。共振周波数(TCF)の温度係数は、材料の熱安定性を表し、温度−共振周波数曲線の傾き、TCF=1/f
0・df/dTから得ることができる。LMおよびPTFEは、異なるTCF値を有し、したがって、xが0から0.7まで増大した場合、(1−x)LM−xPTFE複合材料のTCF値は、−170ppm℃
−1から−7.2ppm℃
−1にシフトする(
図7d)。この結果は、PTFEの添加によってLMの共振周波数の熱安定性を改善できることを明らかにしている。複合材料のTCF値を予測するための単純な仮定は、誘電率の対数混合法則から導出される線形混合則である:
【0072】
式5中、TCF
1およびTCF
2は、それぞれ相1および相2のTCF値である。実験によるTCF値は、式5の予測と類似していることが分かる。
【0073】
ポリマーは、堅い材料であるセラミックに比較して、比較的柔らかい材料であり、この結果、(1−x)LM−xPTFE複合材料の弾性率およびせん断弾性率は、
図7eに提示のように、PTFE含量の増大に伴って低下していく。誘電率の予測と同様に、複合材料の弾性率/せん断弾性率を計算するための数多くモデルが存在する。上限と下限は、複合材料がそれぞれ、装入方向に対して平行な状態および垂直な(直列な)状態に整列していると仮定することにより、決定することができる。一般に、弾性率は、
図7eに明示のように、上限と下限との間に位置する。ここで再び、対数混合則を使用すると、複合材料の実測弾性率は、算定弾性率と良く符合する。PTFEの量が多い場合、実測弾性率は、算定弾性率より少しだけ低い。この領域において、PTFEは、マトリックスだと考えることができ、セラミックは、充填剤である。数多くの他のモデルを使用して、(1−x)LM−xPTFE複合材料の弾性率を予測することができる。
【0074】
PVDF−HFPコポリマーの非晶性領域は、浸されたときに、液体電解質を吸収する。したがって、複合材料電解質を液体電解質中に浸して、イオン伝導度を増大させた。25℃における1M LiPF
6 EC−DMC(50:50vol%)中に浸した(1−x)LAGP−x(PVDF−HFP)複合材料の伝導度は、3.3×10
−5〜1.4×10
−4S cm
−1までの範囲だったが、活性化エネルギーは、0.28〜0.43eVまでの範囲だった(
図8aおよび
図8b)。良く結晶化した従来方式で焼結したLAGPは、25℃において、3×10
−4S cm
−1の伝導度を有する。0℃未満の温度において、液体電解質は完全に凍結するが、50℃超では、液体電解質は完全に乾燥する。したがって、0℃〜50℃までの適度な温度範囲の外では、伝導度は、保持時間に応じて安定ではない。
【0075】
ポリマーを含むまたは含まない低温焼結LAGPの合計活性化エネルギーは、部分的に非晶性の粒界と合致している(0.60eV)。粒界は、ポリマーを含む低温焼結LAGPおよびポリマーを含まない低温焼結LAGPの合計伝導および合計活性化エネルギーを左右する。対照的に、良く結晶化した従来方式で焼結したLAGP粒および粒界領域は、類似した活性化エネルギー(0.40±0.02eV)を有する。文献は、粒界抵抗の源が、幾何形状により、粒界の接触面積が限定されることから、電流が絞り込まれることを記述している。セラミックをポリマーと共に共焼結することは、抵抗粒界を物理的に架橋することができるが、液体電解質中に複合材料を浸すことが、これらの抵抗粒界をイオンにより架橋するために必要とされる。液体電解質の取込みによるポリマーの膨潤もまた、粒界接触面積を増大させる。ポリマーの膨潤が複合材料の寸法を変化させる場合、30vol%以上のポリマー装入量を有する組成物が、柔軟な溶液流延複合材料において報告されている。室温で液体電解質中に浸してから60日後には、(1−x)LAGP−x(PVDF−HFP)においてx≦0.30という複合材料電解質の寸法は、変化していなかった。複合材料電解質の寸法の変化は、ポリマーの膨潤を抑える低温焼結セラミックと関連付けられていない。
【0076】
V
2O
5は、ワイドバンドギャップ半導体であり、室温における10
−5〜10
−3S cm
−1までの電子DC伝導度(σ)および0.17〜0.21eVの活性化エネルギーを有する。
[12]低温焼結V
2O
5セラミックのDC伝導度(4.8×10
−4S cm
−1)および活性化エネルギー(0.25eV)は、従来の加熱焼結によって得られたものと同等である。室温において150S cm
−1の高い伝導度(18μmのフィルム)を有するPEDOT:PSSの添加により、さらに向上した伝導度が考えられ得る。これは、
図8cに提示のように、PEDOT:PSSの添加によってDC伝導度が体系的に改善された低温焼結複合材料において、実証されている。驚くべきことに、(1−x)V
2O
5−xPEDOT:PSS複合材料のDC伝導度は、最大1〜2%までのPEDOT:PSSの添加のみによって、1〜2桁増大させることができる。(1−x)V
2O
5−xPEDOT:PSS(0.8≦x≦0.27)複合材料の活性化エネルギーは、0.22〜0.23eVまでの範囲であり、純粋なV
2O
5セラミックの活性化エネルギーより低い(
図8d)。
【0077】
要約すると、セラミック−ポリマー複合材料は、本開示の低温焼結方法を使用して調製することができる。複合材料は、幅広い種々のポリマーを含むことが可能であり、低い(例えば、120℃という低い)焼結温度によって短い期間(例えば、15〜60分までの範囲)で高い密度になるまで焼結することができる。複合材料の電気的特性および機械的特性は、混合法則によって予測することができる。本開示の低温焼結方法は、セラミックとポリマーとの処理における差を埋めることが可能であり、慣例的に適合しないセラミックおよびポリマーを使用した材料系およびデバイスのための簡便で効果的な方法をもたらすことができる。一般的に、数百度になると、これらの材料を、高い体積分率のセラミック材料と共に1ステップで同時処理する能力は失われる。したがって、本開示の低温焼結方法は、約200℃超の温度で分解または酸化する物質を含む焼結材料および複合材料の製作を可能にする。
【0078】
低温焼結は、低温プロセスを主な理由として、新たな材料およびデバイスの製作を可能にする。例えば、本開示の低温焼結方法は、機能回路を得るために、セラミック、ポリマーおよび金属等の異なる材料を同じ基材上で高密度化することができる。このような材料およびデバイスは、セラミックペースト等のセラミックを、他の物質と共にまたは他の物質なしで、基材(例えば、金属、セラミック、ポリマーから構成される基材)上に堆積することによって、製作することができる。基材は、他のデバイス層中で、堆積したセラミックと基材との間に電極層を有し得る。堆積後、セラミックは、堆積したセラミックを水性溶媒に曝露して、多かれ少なかれ一様に濡れた状態の堆積したセラミックを形成すること等によって、溶媒と合わせることができる。次いで、熱および圧力を、他の複数の実施形態に関して記述されたのと同じようにして、湿潤状態の堆積したセラミックに加えて、セラミックを基材上に焼結することができる。一実施形態において、本方法は、5,000MPa以下、例えば2,000MPa未満の圧力または約30MPa〜約1,000MPaの間の圧力により、200℃未満、例えば150℃未満に加熱され得る。低温焼結方法により、基材上の焼結セラミックは、80%超、例えば85%以上およびさらには90%超の相対密度を達成することができる。さらに、セラミックの高い相対密度を短い期間で達成することができ、例えば、少なくとも85%およびさらには90%超の相対密度を、180分未満、例えば120分未満、例えば60分以下およびさらには30分以下で達成することができる。金属基材とポリマー基材との両方の上に低温焼結キャパシタを製作することが、下記の例において提示されている。
【実施例】
【0079】
下記の例は、特定の好ましい本発明の実施形態をさらに説明するように意図されており、本質的に限定的なものではない。当業者は、通例の実験を用いるだけでも、本明細書において記述された特定の物質および手順の数多くの均等物を認識し、または確定することができる。
【0080】
粉末調製。NaCl(99.9%)、Li
2CO
3(99%)、Na
2CO
3(99.95%)、K
2CO
3(99%)、MoO
3(99.5%)、WO
3(99.8%)、V
2O
3(99.7%)、CsBr(99%)、CsSO
4(99%)、ZnMoO
4(98%)、Gd
2O
3(99.99%)、Na
2WO
4−2H
2O(95%)、LiVO
3(99.9%)、BiVO
4(99.9%)、AgVO
3、Na
2ZrO
3(98%)、KH
2PO
4(99%)およびクエン酸一水和物(99.5%)を、Alfa Aesarから購入した。BaFe
12O
19(97%)ナノ粉末、V
2O
5(98%)およびZnO(99%)は、Sigma−Aldrichから調達した。Bi
2O
3(99.9%)、Eガラス繊維(70μm)およびTeflon(PTFE)は、それぞれMCP Inc.、TAP Plastics Inc.およびHoward Piano Industriesから購入した。Li
2MoO
4、Na
2Mo
2O
7、K
2Mo
2O
7およびLi
2WO
4粉末は、化学量論量のLi
2CO
3、Na
2CO
3、K
2CO
3、MoO
3およびWO
3を使用して、固体状態式の反応方法によって合成した。原材料の混合物を、ジルコニアボールによってエタノール中で24時間微粉砕した。乾燥させた後、粉末を450〜600℃までで空気中でか焼し、続いて、ZrO
2およびエタノールを用いて24時間、第2のボールミル粉砕を行った。次いで、一部のLi
2MoO
4粉末を、次の式に従ってBaFe
12O
19、PTFEおよびEガラス繊維(「EG」と略される)と混合した:0.8Li
2MoO
4−0.2BaFe
12O
19、0.5Li
2MoO
4−0.5PTFEおよび0.8Li
2MoO
4−0.2EG(体積分率)。混合物をエタノール中でボールミル粉砕し、次いで乾燥させた。これらの材料の粒径を、SEM走査型電子顕微鏡法によって査定すると、粒径は、0.5〜10ミクロンまでの範囲だった。
【0081】
バルク状セラミック調製。MoO
3、WO
3、V
2O
3、V
2O
5、ZnO、Bi
2O
3、CsBr、Li
2CO
3、CsSO
4、Li
2MoO
4、Na
2Mo
2O
7、K
2Mo
2O
7、ZnMoO
4、Gd
2(MoO
4)
3、Li
2WO
4、Na
2WO
4、LiVO
3、BiVO
4、AgVO
3、Na
2ZrO
3、LiFePO
4およびKH
2PO
4の高密度なセラミックならびにLi
2MoO
4−BaFe
12O
19、Li
2MoO
4−PTFEおよびLi
2MoO
4−EGの高密度な複合材料を、低温焼結ステップを含む次の方法によって調製した。
【0082】
方法1
ZnO以外のすべての粉末を、ピペットを使用して4〜25wt%までの脱イオン水と混合した。ZnOを、0.5〜5.0M酢酸(約2〜4までのpH値)という濃度の水性酢酸溶媒と混合した。乳鉢および乳棒を用いて撹拌した後、湿潤させた粉末を、80〜570MPaまでの一軸圧力下において120℃で鋼ダイによってホットプレスして、高密度なペレット(12.7mmの直径および1〜5mmまでの高さ)に変えた。ダイを120℃で1時間超予備加熱した。最後に、ペレットを120℃のオーブン内に6時間入れて、残留水の可能性をなくした。
【0083】
方法2
すべての乾いた粉末を、低圧(30〜70MPaまで)下において室温でプレス加工して、柔らかいペレットに変えた。次いで、ペレットを、多湿雰囲気(脱イオン水の加熱によって生成した水蒸気または湿度室)下に10〜360分置いた。湿潤させたペレットを、80〜570MPaまでの一軸圧力下において120℃で鋼ダイによってホットプレスして、高密度なペレットに変えた。ダイを120℃で1時間超予備加熱した。最後に、ペレットを120℃のオーブン内に6時間入れて、残留水の可能性をなくした。
【0084】
多層セラミック調製。Li
2MoO
4テープおよびK
2Mo
2O
7テープを、テープ成形手順によって調製した。最初に粉末を、96wt%のメチルエチルケトン(MEK)および4wt%のQpacの溶液に添加し、ジルコニアボールによって微粉砕した。次いで、66.3wt%のメチルエチルケトン(MEK)、28.4wt%のQpacおよび5.3wt%のSanticizer−160の別の溶液をスラリーに添加し、続いて、さらにボールミル粉砕した。ドクターブレード型キャスティングヘッド付きの実験室用キャスティング装置を使用して、テープ成形を実施した。シリコーンコーティング加工マイラー(ポリエチレンテレフタレート)を、キャリアフィルムとして使用した。キャストされたスラリーを、室温で乾燥させた。Li
2MoO
4−K
2Mo
2O
7多層の場合、Li
2MoO
4緑色テープおよびK
2Mo
2O
7緑色テープを互い違いに積層した。Li
2MoO
4−Ag多層の場合、銀ペーストをLi
2MoO
4緑色テープ上に印刷し、2つの銀印刷層および10のLi
2MoO
4層を一緒に積層した。次いで、積層されたLi
2MoO
4−K
2Mo
2O
7およびLi
2MoO
4−Ag層を、20MPaの静水圧下において80℃で20分積層した。バインダーは、0.5℃/分の加熱速度により、空気中において175℃で10時間焼き尽くした。先述のように、低温焼結製作ステップを使用して、多層を焼結した。特に、多層は、10〜360分までの間、多湿雰囲気(脱イオン水の加熱によって生成した水蒸気または湿度室)中に入れておいた。次いで、湿潤させた多層を、80〜570MPaまでの一軸圧力下において120℃で鋼ダイによってホットプレスして、高密度なセラミックに変えた。ダイを120℃で1時間超予備加熱した。低温焼結後、同時焼成された多層を120℃のオーブン内に6時間入れて、水酸化物残留の可能性をなくした。
【0085】
焼結した試料のバルク密度は、質量/幾何形状比およびアルキメデス法によって測定された。相対密度は、実験により測定されたバルク密度の、単結晶の形態の材料の対応する密度に対する比によって決定された。
【0086】
下記表3は、溶媒としての水を含む低温焼結ステップによって、120℃において350MPaの圧力下で調製された、特定のセラミックの密度および性能特性を提供している。
【0087】
【表3】
【0088】
水熱支援式セラミック処理。BaTiO
3ナノ粉末(99.9%、50nm、立方相)を、販売元(例えば、US Research Nanomaterials, Inc.)から購入した。Ba(OH)
2/TiO
2懸濁液を、対応する化学物質を脱イオン水と混合することによって製造した。Ba(OH)
2:TiO
2のモル比は1.2:1であり、Ba(OH)
2の濃度は0.1mol L
−1だった。セラミックペレットを形成するために、0.14〜0.15gまでのBa(OH)
2/TiO
2懸濁液を、0.56gのBaTiO
3ナノ粉末に添加し、乳棒および乳鉢を使用して、混合物を3分粉砕した。混合物を、430MPa下において最初は室温(25℃)で10分一軸プレスし、次いで温度を、9℃/分の総速度で180℃に上昇させた。温度を1分〜3時間の間等温に保って、一連の試料を得た。最初に、調製したときの状態のセラミックペレットを、200℃で終夜焼成して、残留水の可能性をさらになくし、次いで、空気中において5℃/分の昇温速度により、700〜900℃までで3時間さらにアニーリングした。密度は、液体媒体としてアセトン(0.791g/cm
3)を使用して、アルキメデス法によって測定された。
【0089】
相構造を、Cu−Kα線を用いたX線回折(Panalytical、X’Pert PRO)によって確認した。誘電体測定のために、白金を電極としてスパッタリングし、誘電特性を、2℃/分の速度で200℃から室温に冷却している間に、LCRメーター(HP4284A、Agilent Technologies)によって1kHz〜1MHzまでにおいて測定した。熱重量−質量スペクトル(TGA−MS Q50、TA Instrument)分析を、ヘリウム雰囲気下において、10℃/分により30〜900℃までで実施した。焼結ペレットから圧潰したセラミック粉末を使用した。加熱前に、試料を1時間30℃に保持して、平衡状態に到達させた。TEM供試材を、機械的シンニング、研磨およびイオンミリングを含む標準的な手順によって調製した。供試材を約30μmの厚さになるまで研磨し、次いで、モリブデングリッドに取り付けた。電子透過孔が形成されるまで、Arイオンミル(Gatan、PIPS II)によってホイルをさらに薄くした。イオンミリング中には、構造的損傷および人工物を最小化するために、低温段階を使用して、供試材を液体N
2温度に冷却した。微細構造的および化学的な研究を、200kVの加速電圧で動作するエネルギー分散型X線分光法(EDS)システムを備えたTalos(FEI、Talos)顕微鏡法によって実施した。
【0090】
セラミック/ポリマー複合材料
(1−x)LM−xPTFE粉末の調製
微粉を得るために、Li
2MoO
4(Alfa Aesar、99%)を、乳鉢を用いて粉砕し、次いで、エタノール中で48時間ボールミル粉砕した。乾燥させた後、Li
2MoO
4粉末を、次の組成に従ったPTFE(Howard Piano Industries)と混合した:(1−x)LM−xPTFE(x=0、10、40、50、60、70vol%)。混合物をエタノール中で24時間ボールミル粉砕し、続いて、85℃で乾燥させた。
【0091】
Li
1.5Al
0.5Ge
1.5(PO
4)
3粉末の調製
化学量論量のLi
2CO
3(Alfa Aesar、99%)、Al
2O
3(Tape Casting Warehouse, Inc.)、GeO
2(Alfa Aesar、99.98%)およびNH
4H
2PO
4(Alfa Aesar、98%)を24時間ボールミル粉砕し、空気中において750℃で30分か焼し、24時間再度ボールミル粉砕した。微粉砕された粉末を、カバー付きアルミナるつぼ内に入れ、空気中において1380℃で1時間溶融させた後、スプラットクエンチした。スプラットクエンチされたガラスを、450℃で3.75時間アニーリングし、空気中において825℃で8時間結晶化させた。ガラス−セラミック粉末を、74μmメッシュによってふるい分けした。
【0092】
(1−x)V
2O
5−xPEDOT:PSS粉末の調製
最初に、V
2O
5粉末(Sigma Aldrich、98%)を脱イオン水中に分散させ、次いで、釣り合い(x=0、0.8、1.6、3.2、14.9、27vol%)がとれるようにPEDOT:PSS溶液(Sigma Aldrich、高伝導度グレード、H
2O中3〜4%)と混合した。混合物を室温で4時間撹拌し、120℃で乾燥させた。
【0093】
複合材料の低温焼結
高密度な複合材料を低温焼結方法によって調製した。(1−x)LM−xPTFEの場合、適量の脱イオン水(6〜12wt%まで)をLi
2MoO
4およびPTFEの混合物に添加し、乳鉢および乳棒を用いて均一に混合した。この後、湿潤させた粉末を、350MPaの一軸圧力下において120℃で15〜20分プレス加工して、高密度な試料に変えた。(1−x)LAGP−x(PVDF−HFP)の場合、30〜39vol%までの脱イオン水をLAGPに添加し、乳鉢および乳棒によって均一化した。LAGPおよびPVDF−HFP(Arkema、Kynar Powerflex LBG)を、液体窒素中に渦巻きを発生させることによって混合し、400MPaの一軸圧力下において120℃で1時間プレス加工した。(1−x)V
2O
5−xPEDOT:PSSの場合、湿潤を脱イオン水(11〜17wt%まで)によって実施し、高密度なセラミック−ポリマー複合材料を、350MPaの一軸圧力下において120℃で20〜30分プレス加工した。
【0094】
キャラクタリゼーション
低温焼結後の複合材料の相純度および組成を、X線回折(PANalytical Empyrean)によって決定した。エネルギー分散型分光計(EDS)付きの環境制御走査型電子顕微鏡(ESEM、FEI、Quanta200)を使用して、低温焼結試料の断面における微細構造および元素分布を分析した。バルク密度を、質量/幾何形状体積比およびアルキメデス法によって測定した。(1−x)LM−xPTFEのマイクロ波誘電特性(誘電率およびQ×f値)を、ベクトルネットワークアナライザー(Anritsu37369D)を用いて、TE
011モードにより、Hakki−Coleman方法を使用して確認した。TE
01δ遮へい空洞法を使用して、ネットワークアナライザー、反響する円筒形の空洞および温度室(Delta9023、Delta Design、Poway、CA)を用いて、共振周波数(TCF)値の温度係数を、次のように計算して得た:TCF=(f
85−f
25)/(f
25(85−25))10
6ppm ℃
−1、式中、f
25およびf
85が、それぞれ25℃および85℃における共振周波数だった。弾性率およびせん断弾性率の測定を、ASTM規格E494−05に基づいた音速法によって実施した。Liイオン伝導性(1−x)LAGP−x(PVDF−HFP)複合材料を対象にしてインピーダンス測定を実施するために、100nmの厚さのAu電極を、ペレット面上にスパッタリングした。ペレットを、Arグローブボックスの内部で25℃の1M LiPF
6 EC−DMC(50:50vol%)(BASF Selectilyte LP30)中に浸し、過剰な液体をふき取った後、インピーダンス分光法(Solartron Ametek ModuLab)のために空気密セル内に装入した。液体の取込みは、5〜10wt%まで(10〜12μLまで)だった。(1−x)V
2O
5−xPEDOT:PSS上のDC導電性を測定するために、ディスクを、10×2×1mmの寸法を有する棒材になるように切断した。棒材の研磨後、Pt電極を堆積させ、Agワイヤーを、Agエポキシ(Epo−tek H20E)と共に取り付けた。4端子法を使用して、Keithley2700Integraシリーズのデジタルマルチメーターによって、DC導電性を測定した。
【0095】
下記表4は、ホットプレスおよび低温焼結方法(CSP)によって調製された0.9Li
2MoO
4−0.1PTFE複合材料の密度および誘電特性を提供している。
【0096】
【表4】
【0097】
エレクトロセラミック
使用前にエタノール中で48〜100時間ボールミル粉砕したリチウム酸化モリブデン粉末(99+%、Alfa Aesar、Ward Hill、MA)を使用して、セラミックインクを調製した。自転公転式ミキサー(AR250、Thinky USA、Laguna Hills、CA)内において、樹脂が溶媒中に完全に溶解するまで、QPAC40(ポリ(プロピレンカーボネート))樹脂(Empower Materials、New Castle、DE)を、エチレングリコールジアセテート(97%、Alfa Aesar、Ward Hill、MA)と、それぞれ15wt%および85wt%の量で混合することによって、印刷用溶剤を製造した。インクを配合するために、それぞれ66.1wt%、22.0wt%、11.0wt%および0.9wt%の量のLi
2MoO
4、印刷用溶剤、さらなるエチレングリコールジアセテートおよびブチルベンジルフタレートS−160(Tape Casting Warehouse、Morrisville、PA)を配合し、自転公転式ミキサー内で均一化した。
【0098】
PET(ポリエチレンテレフタレート)シート(Tape Casting Warehouse、Morrisville、NJ)を切断して、32mm×32mmの正方形にすることによって基材を調製し、次いで、銀インク(5029、DuPont、Wilmington、DE、USA)を使用して、25.4mm×25.4mmの正方形パターンとなるように金属化して、底部電極を形成した。200メッシュ型ステンレス鋼スクリーン(UTZ LLC、Little Falls、NJ)を使用して、パターンを印刷した。銀インクを120℃で30分硬化させた。代替的には、50ミクロンの厚さのニッケルホイル(99+%、Alfa Aesar、Ward Hill、MA)基材もまた、調製した。セラミックインクは、5mm×5mmの正方形パターンが付いた400カレンダー加工メッシュステンレス鋼スクリーンを使用して、金属化PET基材上に印刷した。二重層型印刷物の各印刷層には、二重経路を使用したが、インクは、層間で120℃において15分乾燥させた。上記のように、25.4mm×25.4mmの正方形パターンの200メッシュスクリーンを使用して、セラミックインクもニッケルホイル基材上に印刷した。単層型印刷物を、上記のように乾燥させた。バインダーの焼尽は、ニッケル試料の場合は0.2℃/分において150℃まで実施し、PET試料の場合は175℃まで実施したが、ピーク温度において6時間の休止があった。
【0099】
明るい白色の印刷物が鈍い灰色に変わるまで密封ビーカー内において35〜40℃までで印刷済み試料を水蒸気に最初に曝露することによって、低温焼結を実施したが、この灰色は、水が、印刷されたインクの正方形に吸収されたことを示していた。濡らした試料をおよそ1分静置して、過剰な水を平衡させた後、印刷フィルムの上にシリコーンコーティング加工PETシートを配置した。次いで、試料を数枚の紙またはポリテトラフルオロエチレン(PTFE)シートの間に配置し、120℃に予備加熱されたプラテンプレスに装入した。紙およびPTFEを使用して、試料上への均一な圧力の分配を促進したが、70〜100MPaまでの圧力が、12〜15分間、積層体に加えられていた。積層サイクルが終了したら、紙またはPTFEフィルムおよびPETフィルムを、試料から慎重に取り外したが、印刷フィルムは、半透明の薄い灰色を示した。頂部電極は、コロイド状銀ペースト(PELCO、Ted Pella、Redding、CA)を使用して、円形構成になるように施用した。電極を室温で10分乾燥させた。
【0100】
室温、1kHzにおけるキャパシタンスCおよび損失(tanδ)は、PET試料の場合はLCRメーター(Model E4980、Agilent、Santa Clara、CA)を使用して測定し、ニッケルホイル試料の場合は、LCRメーター(Model SR715、Stanford Research、Sunnyvale、CA)を使用した。厚さtは、ダイヤルゲージ(Model ND280、Heidenhain、Traunreut、Germany)の使用によって測定した。頂部電極の面積Aおよび式C=ε
0ε
rA/tを使用して、平行なプレートのキャパシタの近似値から比誘電率ε
rを計算した。印刷済み試料の微細構造を、環境制御走査型エミッション顕微鏡(E−SEM、FEI Quanta200、Hillsboro、OR)の使用によって調査した。
【0101】
室温、1kHzにおけるキャパシタンスおよび損失を測定し、ニッケルホイル上の単層型キャパシタの場合の20〜21ミクロンの実測印刷物厚さおよびPETフィルム上の二層型印刷キャパシタの場合は30〜31ミクロンの実測印刷物厚さに基づいて誘電率を計算した。プレス加工中に試料を取り囲んでいる紙またはプラスチックの種類等の積層条件は、電気的特性に影響する可能性があるように思われる。数枚の光沢紙は、配列中の9個すべてのキャパシタが高密度化されているように思われたため、最も滑らかで最も均一な積層条件を与えたことが、観察された。これは、未加工状態の試料を表す白色から、高密度化された試料および同様の電気的特性を示す鈍い灰色への色の変化によって示された。平均された誘電特性の結果は、本方法の様々な修正と共に、表5に要約されている。540℃で焼成され、13.051GHzにおける室温で測定された、Li
2MoO
4に関して報告された誘電特性は、5.5の比誘電率である。Zhou et al., "Microwave Dielectric Ceramics in Li
2O-Bi
2O
3-MoO
3System with Ultra-Low Sintering Temperatures, " J. Am. Ceram. Soc., 93 [4] 1096-100 (2010)を参照されたい。
図9aから
図9bは、PETフィルム上における、Ag電極を有する印刷された焼結Li
2MoO
4セラミックインクの断面図を示している。Li
2MoO
4セラミックは、Ag電極と共存しており、120℃における低温焼結方法によって、印刷されたLi
2MoO
4セラミックをAg電極と共に共焼結できることを示している。
【0102】
【表5】
【0103】
この例によって、本発明者らは、低温焼結方法によって、ニッケルホイルとPETフィルムとの両方の上に印刷された、Li
2MoO
4キャパシタ構造の製作を実証した。従来の処理方法を用いた場合で、Li
2MoO
4の焼結が540℃で実施されるとき、これは、ニッケルホイルが300℃超の温度において空気中で酸化し、PETフィルムが約225℃〜260℃までの温度で熱分解するため、不可能であろう。さらに、この例は、本開示の低温焼結方法が、柔軟な基材、およびこの基材上に焼結された数多くの異なる無機物の構造の形成に適合し得ることを示している。これらの例における基材上の焼結セラミックの相対密度は、従来方式で調製されたキャパシタに比べて、調製キャパシタの性能に基づいて、約90%以上であると見積もられている。
【0104】
印刷された低温焼結Li
2MoO
4キャパシタは、従来処理されていたものに類似した電気的特性および微細構造的特性を有する。低温ポリマー等の不適合な材料系を高温セラミックと一緒に同時処理できることにより、デバイス製造のための種々の新たな複合材料の製造が可能になる。さらに、低温焼結方法の採用によるエネルギーおよび時間の節約は、従来の焼結方法に比較して著しい。
【0105】
図10は、異なる方法によって製造された無機材料(例は、BaTiO
3)の焼結温度に対して相対密度を比較している、プロットである。これらの異なる方法は、従来の焼結(CS)、2ステップ式の焼結(TSS)、速度制御された焼結(RCS)、放電プラズマ焼結(SPS)、マイクロ波焼結(MVS)、高圧焼結(HPS)、フラッシュ焼結(FS)、複合式すなわちRRS(急速焼結)−RCS−LP(低圧)−TSSおよび本開示による低温焼結方法(CSP)を含む。6.02g/cm
3の理論密度が、BaTiO
3に採用されている。GSは粒径である。
図10のプロットに提示のように、本開示の低温焼結方法は、従来の製作方法よりはるかに低い温度で、セラミック等の比較的高密度な無機材料を製作することができる。
【0106】
本発明の多用性に関する、本発明の好ましい実施形態および例のみが、本開示において提示および記述されている。本発明は、様々な他の組合せおよび環境での使用が可能であり、本明細書において表明されている本発明の概念の範囲において、変更または修正が可能であると理解すべきである。したがって、例えば、当業者は、通例の実験を用いるだけでも、本明細書において記述された特定の物質、手順および配置の数多くの均等物を認識し、または確定することが可能である。このような均等物は、本発明の範囲に含まれると考えられており、下記の特許請求の範囲によって包含される。