特許第6871266号(P6871266)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6871266
(24)【登録日】2021年4月19日
(45)【発行日】2021年5月12日
(54)【発明の名称】洗浄剤用共重合体
(51)【国際特許分類】
   C11D 3/37 20060101AFI20210426BHJP
   C11D 3/48 20060101ALI20210426BHJP
   C08F 220/34 20060101ALI20210426BHJP
   C08F 220/60 20060101ALI20210426BHJP
   C08F 226/04 20060101ALI20210426BHJP
【FI】
   C11D3/37
   C11D3/48
   C08F220/34
   C08F220/60
   C08F226/04
【請求項の数】9
【全頁数】33
(21)【出願番号】特願2018-546286(P2018-546286)
(86)(22)【出願日】2017年10月12日
(86)【国際出願番号】JP2017037085
(87)【国際公開番号】WO2018074334
(87)【国際公開日】20180426
【審査請求日】2019年1月25日
(31)【優先権主張番号】特願2016-203634(P2016-203634)
(32)【優先日】2016年10月17日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004628
【氏名又は名称】株式会社日本触媒
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】特許業務法人 安富国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】張替 尊子
【審査官】 今井 督
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−039676(JP,A)
【文献】 特表2008−523184(JP,A)
【文献】 特表2014−529660(JP,A)
【文献】 国際公開第2016/047605(WO,A1)
【文献】 特開2006−111869(JP,A)
【文献】 国際公開第2006/005358(WO,A1)
【文献】 特開昭55−116800(JP,A)
【文献】 特開昭61−047800(JP,A)
【文献】 特開2013−184989(JP,A)
【文献】 国際公開第2001/016193(WO,A1)
【文献】 特開2014−047264(JP,A)
【文献】 特開2016−199679(JP,A)
【文献】 特表2003−509546(JP,A)
【文献】 特表2011−511103(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 220/00−220/70
C08F 226/00−226/12
C11D 3/00− 3/60
DB名 CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カチオン性基含有単量体(A)由来の構造単位(a)と疎水性単量体(B)由来の構造単位(b)とを有する共重合体を含む洗濯洗剤用洗剤ビルダーであって、
該共重合体は、構造単位(a)として下記式(4)及び/又は(5);
【化1】
(式(4)及び(5)中、R、Rは、同一又は異なって、水素原子又は炭素数1〜12の炭化水素基を表す。Zは、水素原子又はメチル基を表す。Yは、下記式(8)又は(10);
【化2】
(式中、iは、0〜12の整数を表す。kは、0〜4の整数を表す。)で表される構造を表す。Xは、陰イオンを表す。)で表されるカチオン性基含有単量体(A)由来の構造単位を有し、該構造単位(a)の割合が全構造単位100質量%に対して55〜90質量%であり、かつ、重量平均分子量が1000〜100万である共重合体(α)(但し、架橋性モノマー由来の構造単位を有するものを除く。)、又は、
構造単位(a)として下記式(6);
【化3】
(式(6)中、R〜Rは、同一又は異なって、炭素数1〜12の炭化水素基を表す。Zは、水素原子又はメチル基を表す。Yは、上記式(8)又は(10)で表される構造を表す。Xは、陰イオンを表す。)で表されるカチオン性基含有単量体(A)由来の構造単位を有し、
該疎水性単量体(B)が、単独重合体の溶解性パラメータが15以下であって、水酸基、炭素数1〜18のアルコキシ基、スルホン酸基、リン酸基、ハロゲノ基、エポキシ基及びカルボニル基からなる群より選択される少なくとも1種の置換基を有していてもよい(メタ)アクリレート類;不飽和モノカルボン酸類;芳香族ビニル系単量体;オレフィン系単量体;不飽和アルコールとカルボン酸とのエステル;ハロゲン化ビニル;アルキルビニルエーテル類;炭素数2〜8の環状エーテル含有基を有する不飽和単量体と炭素数1〜20のアルコールとの付加反応物;炭素数2〜20の不飽和アルコールのアルキレンオキシド付加物及びそれらの末端疎水変性物;環状ビニル系単量体からなる群より選択される少なくとも1種の化合物であり、
該構造単位(a)の割合が全構造単位100質量%に対して55〜99.9質量%であり、
該カチオン性基含有単量体(A)及び疎水性単量体(B)以外のその他の単量体(E)由来の構造単位(e)の割合が全構造単位100質量%に対して0〜10質量%であり、
該その他の単量体(E)が、クロトン酸ビニル、不飽和カルボン酸重金属塩からなる群より選択される少なくとも1種の化合物であり、かつ、
重量平均分子量が1000〜20万である共重合体(β)であることを特徴とする洗濯洗剤用洗剤ビルダー。
【請求項2】
前記共重合体(α)及び/又は(β)は、共重合体を形成する構造単位の総量100質量%に対して、前記疎水性単量体(B)由来の構造単位(b)を0.01〜45質量%の割合で有することを特徴とする請求項1に記載の洗濯洗剤用洗剤ビルダー。
【請求項3】
前記共重合体(α)及び/又は(β)は、少なくとも1種の(メタ)アクリル酸エステル由来の構造単位を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の洗濯洗剤用洗剤ビルダー。
【請求項4】
前記共重合体(α)及び/又は(β)は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル由来の構造単位(b−1)と、溶解性パラメータが15以下であって、カルボキシル基、水酸基及びエーテル基からなる群より選択される少なくとも1種の官能基を有する単量体由来の構造単位(b−2)とを有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の洗濯洗剤用洗剤ビルダー。
【請求項5】
カチオン性基含有単量体(A)由来の構造単位(a)と疎水性単量体(B)由来の構造単位(b)とを有する共重合体を含む洗濯用洗剤であって、
該共重合体は、構造単位(a)として下記式(4)及び/又は(5);
【化4】
(式(4)及び(5)中、R、Rは、同一又は異なって、水素原子又は炭素数1〜12の炭化水素基を表す。Zは、水素原子又はメチル基を表す。Yは、下記式(8)又は(10);
【化5】
(式中、iは、0〜12の整数を表す。kは、0〜4の整数を表す。)で表される構造を表す。Xは、陰イオンを表す。)で表されるカチオン性基含有単量体(A)由来の構造単位を有し、該構造単位(a)の割合が全構造単位100質量%に対して55〜90質量%であり、かつ、重量平均分子量が1000〜100万である共重合体(α)(但し、架橋性モノマー由来の構造単位を有するものを除く。)、又は、
構造単位(a)として下記式(6);
【化6】
(式(6)中、R〜Rは、同一又は異なって、炭素数1〜12の炭化水素基を表す。Zは、水素原子又はメチル基を表す。Yは、上記式(8)又は(10)で表される構造を表す。Xは、陰イオンを表す。)で表されるカチオン性基含有単量体(A)由来の構造単位を有し、
該疎水性単量体(B)が、単独重合体の溶解性パラメータが15以下であって、水酸基、炭素数1〜18のアルコキシ基、スルホン酸基、リン酸基、ハロゲノ基、エポキシ基及びカルボニル基からなる群より選択される少なくとも1種の置換基を有していてもよい(メタ)アクリレート類;不飽和モノカルボン酸類;芳香族ビニル系単量体;オレフィン系単量体;不飽和アルコールとカルボン酸とのエステル;ハロゲン化ビニル;アルキルビニルエーテル類;炭素数2〜8の環状エーテル含有基を有する不飽和単量体と炭素数1〜20のアルコールとの付加反応物;炭素数2〜20の不飽和アルコールのアルキレンオキシド付加物及びそれらの末端疎水変性物;環状ビニル系単量体からなる群より選択される少なくとも1種の化合物であり、
該構造単位(a)の割合が全構造単位100質量%に対して55〜99.9質量%であり、
該カチオン性基含有単量体(A)及び疎水性単量体(B)以外のその他の単量体(E)由来の構造単位(e)の割合が全構造単位100質量%に対して0〜10質量%であり、
該その他の単量体(E)が、クロトン酸ビニル、不飽和カルボン酸重金属塩からなる群より選択される少なくとも1種の化合物であり、かつ、
重量平均分子量が1000〜20万である共重合体(β)であることを特徴とする洗濯用洗剤。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれかに記載の洗濯洗剤用洗剤ビルダーと界面活性剤とを含むことを特徴とする洗濯洗剤組成物。
【請求項7】
前記洗濯洗剤組成物は、更に、酵素、蛍光剤、溶媒及び請求項1〜4のいずれかに記載の洗濯洗剤用洗剤ビルダー以外の洗剤ビルダーからなる群より選択される少なくとも1種の添加剤を含むことを特徴とする請求項6に記載の洗濯洗剤組成物。
【請求項8】
前記洗濯洗剤組成物は、界面活性剤の含有割合が洗濯洗剤組成物の全量100質量%に対して5〜70質量%であることを特徴とする請求項6又は7に記載の洗濯洗剤組成物。
【請求項9】
カチオン性基含有単量体(A)由来の構造単位(a)と疎水性単量体(B)由来の構造単位(b)とを有する共重合体を含む洗剤用抗菌剤であって、
該共重合体は、構造単位(a)として下記式(4)及び/又は(5);
【化7】
(式(4)及び(5)中、R、Rは、同一又は異なって、水素原子又は炭素数1〜12の炭化水素基を表す。Zは、水素原子又はメチル基を表す。Yは、下記式(8)又は(10);
【化8】
(式中、iは、0〜12の整数を表す。kは、0〜4の整数を表す。)で表される構造を表す。Xは、陰イオンを表す。)で表されるカチオン性基含有単量体(A)由来の構造単位を有し、該構造単位(a)の割合が全構造単位100質量%に対して55〜90質量%であり、かつ、重量平均分子量が1000〜100万である共重合体(α)、又は、
構造単位(a)として下記式(6);
【化9】
(式(6)中、R〜Rは、同一又は異なって、炭素数1〜12の炭化水素基を表す。Zは、水素原子又はメチル基を表す。Yは、上記式(8)又は(10)で表される構造を表す。Xは、陰イオンを表す。)で表されるカチオン性基含有単量体(A)由来の構造単位を有し、
該疎水性単量体(B)が、単独重合体の溶解性パラメータが15以下であって、水酸基、炭素数1〜18のアルコキシ基、スルホン酸基、リン酸基、ハロゲノ基、エポキシ基及びカルボニル基からなる群より選択される少なくとも1種の置換基を有していてもよい(メタ)アクリレート類;不飽和モノカルボン酸類;芳香族ビニル系単量体;オレフィン系単量体;不飽和アルコールとカルボン酸とのエステル;ハロゲン化ビニル;アルキルビニルエーテル類;炭素数2〜8の環状エーテル含有基を有する不飽和単量体と炭素数1〜20のアルコールとの付加反応物;炭素数2〜20の不飽和アルコールのアルキレンオキシド付加物及びそれらの末端疎水変性物;環状ビニル系単量体からなる群より選択される少なくとも1種の化合物であり、
該構造単位(a)の割合が全構造単位100質量%に対して55〜99.9質量%であり、
該カチオン性基含有単量体(A)及び疎水性単量体(B)以外のその他の単量体(E)由来の構造単位(e)の割合が全構造単位100質量%に対して0〜10質量%であり、
該その他の単量体(E)が、ポリオールの2置換以上の水酸基と(メタ)アクリル酸とのエステル類;ポリオールの2置換以上のメタクリル酸エステル類;ポリオールの2置換以上の水酸基と不飽和アルコールとのエーテル類;フタル酸ジアリル、リン酸トリアリル、メタクリル酸アリル、テトラアリルオキシエタン、トリアリルシアヌレート、アジピン酸ジビニル、クロトン酸ビニル、1,5−ヘキサジエン、ジビニルベンゼン、不飽和カルボン酸重金属塩からなる群より選択される少なくとも1種の化合物であり、かつ、
重量平均分子量が1000〜20万である共重合体(β)であることを特徴とする洗剤用抗菌剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗浄剤用共重合体に関する。より詳しくは、衣料用洗剤等の洗浄剤に好適に用いられる洗浄剤用共重合体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、衛生に対する意識の高まりから、衣料用洗剤においても、洗浄効果に加えて抗菌効果を付与した製品が上市されている。抗菌効果を奏する有効成分としては、従来から漂白剤やカチオン界面活性剤等のカチオン系殺菌剤等が使用されていた。塩素系や酸素系の漂白剤は抗菌効果が高いことが知られているが、塩素系漂白剤は洗濯用洗剤に添加すると色柄物の色落ちの問題があった。酸素系の漂白剤は色落ちの問題はないが、一般に弱アルカリ性である衣料用重質液体洗剤に安定配合するのは困難であることが当業界では明かであり、溶解性に優れ、かつ強固な汚れにも対応可能な衣料用重質液体洗剤にも、抗菌効果の付与が望まれている。衛生分野の洗浄剤に広く使用されているカチオン系の殺菌剤は、抗菌スペクトル帯が広く速効性に特徴があることから衣料用液体洗浄剤に配合する試みがなされている。例えば特許文献1〜4には、カチオン系の殺菌剤として、アミン系のポリマーが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−60788号公報
【特許文献2】特開2002−60791号公報
【特許文献3】特開2003−40719号公報
【特許文献4】特開2011−190368号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のとおり、種々のカチオン系殺菌剤が抗菌剤として洗剤に用いられているが、従来のカチオン系殺菌剤は、洗濯時に充分な抗菌性能を発現しないという課題があった。また、洗濯時の充分な抗菌性能とともに、洗濯後にも抗菌性能が持続し、さらに、抗菌性能のみならず洗濯時に再汚染防止能も発揮する剤が求められており、開発の余地があった。
【0005】
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、洗濯時の抗菌性能及び洗濯後の抗菌性能の持続性に優れ、再汚染防止能にも優れる洗浄剤用共重合体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、洗浄剤用途に用いられる共重合体について種々検討したところ、特定の構造のカチオン性基含有単量体由来の構造単位と特定の疎水性単量体由来の構造単位とを有し、重量平均分子量が特定の範囲である共重合体が、洗濯時及び洗濯後に充分な抗菌性能を発揮し、再汚染防止能にも優れることを見いだし、上記課題をみごとに解決することができることに想到し、本発明に到達したものである。
【0007】
すなわち本発明は、カチオン性基含有単量体(A)由来の構造単位(a)と疎水性単量体(B)由来の構造単位(b)とを有する洗浄剤用共重合体であって、上記洗浄剤用共重合体は、構造単位(a)として下記式(4)及び/又は(5);
【0008】
【化1】
【0009】
(式(4)及び(5)中、R、Rは、同一又は異なって、水素原子又は炭素数1〜12の炭化水素基を表す。Zは、水素原子又はメチル基を表す。Yは、2価の連結基を表す。Xは、陰イオンを表す。)で表されるカチオン性基含有単量体(A)由来の構造単位を有し、かつ、重量平均分子量が1000〜100万である共重合体(α)、又は、構造単位(a)として下記式(6)及び/又は(7);
【0010】
【化2】
【0011】
(式(6)及び(7)中、R〜Rは、同一又は異なって、炭素数1〜12の炭化水素基を表す。Zは、水素原子又はメチル基を表す。Yは、2価の連結基を表す。Xは、陰イオンを表す。m、nは、同一又は異なって、1〜3の整数である。)で表されるカチオン性基含有単量体(A)由来の構造単位を有し、上記疎水性単量体(B)が、単独重合体の溶解性パラメータが15以下であって、水酸基、炭素数1〜18のアルコキシ基、スルホン酸基、リン酸基、ハロゲノ基、エポキシ基及びカルボニル基からなる群より選択される少なくとも1種の置換基を有していてもよい(メタ)アクリレート類;不飽和モノカルボン酸類;スチレン等の芳香族ビニル系単量体;オレフィン系単量体;不飽和アルコールとカルボン酸とのエステル;ハロゲン化ビニル;アルキルビニルエーテル類;炭素数2〜8の環状エーテル含有基を有する不飽和単量体と炭素数1〜20のアルコールとの付加反応物;炭素数2〜20の不飽和アルコールのアルキレンオキシド付加物及びそれらの末端疎水変性物;環状ビニル系単量体からなる群より選択される少なくとも1種の化合物であり、上記カチオン性基含有単量体(A)及び疎水性単量体(B)以外のその他の単量体(E)由来の構造単位(e)の割合が全構造単位100質量%に対して0〜10質量%であり、上記その他の単量体(E)が、ポリオールの2置換以上の水酸基と(メタ)アクリル酸とのエステル類;ポリオールの2置換以上のメタクリル酸エステル類;ポリオールの2置換以上の水酸基と不飽和アルコールとのエーテル類;フタル酸ジアリル、リン酸トリアリル、メタクリル酸アリル、テトラアリルオキシエタン、トリアリルシアヌレート、アジピン酸ジビニル、クロトン酸ビニル、1,5−ヘキサジエン、ジビニルベンゼン、不飽和カルボン酸重金属塩からなる群より選択される少なくとも1種の化合物であり、かつ、重量平均分子量が1000〜20万である共重合体(β)であることを特徴とする洗浄剤用共重合体である。
以下に本発明を詳述する。
なお、以下において記載する本発明の個々の好ましい形態を2つ以上組み合わせたものもまた、本発明の好ましい形態である。
【0012】
<洗浄剤用共重合体>
本発明の洗浄剤用共重合体は、抗菌性能を発揮するものであり、抗菌性能とは、殺菌(微生物を殺す)、静菌(微生物の繁殖を抑える)、滅菌、消毒、制菌、除菌、防腐、防カビ等の性能を有することをいう。対象となる微生物は、細菌、真菌である。
上記細菌としては、大腸菌、緑膿菌、サルモネラ菌、モラクセラ菌、レジオネラ菌等のグラム陰性菌;黄色ブドウ球菌、クロストリジウム属細菌等のグラム陽性菌が挙げられる。上記真菌としてはカンジダ菌、ロドトルラ、パン酵母等の酵母類;赤カビ、黒カビ等のカビ類が挙げられる。
【0013】
本発明の洗浄剤用共重合体(以下、単に本発明の共重合体ともいう。)は、カチオン性基含有単量体(A)由来の構造単位(a)と疎水性単量体(B)由来の構造単位(b)とを有する共重合体である。このような共重合体が抗菌性を発揮する理由は以下のように推定される。本発明の共重合体を、微生物に作用させると、共重合体が有するカチオン性基含有単量体(A)由来のカチオン性基がマイナスの電荷を有する微生物の表面に吸着する。さらに共重合体が有する疎水基が細胞膜部分と親和性を示し、細胞膜と相互作用することにより、細胞膜を構成する脂質等の間の相互作用を破壊し、及び/又は、膜に結合しているタンパク質等の機能を阻害することにより、細胞が破壊され、及び/又は、細胞の生理活性が阻害され、微生物が死滅することが推定される。
また、本発明の洗浄剤用共重合体は、再汚染防止能にも優れるものであり、本発明の共重合体が有するカチオン性基含有単量体(A)由来のカチオン性基がアニオン性を有する親水性汚れや泥などの親水性粒子に吸着し、疎水性単量体由来の疎水基が疎水性汚れに吸着することにより、汚れ成分が繊維に付着することが抑制され、再汚染防止能が発揮されることとなる。
【0014】
本発明の共重合体は、共重合体(α)又は共重合体(β)である。本明細書中において単に「共重合体」という場合には共重合体(α)又は共重合体(β)に共通する事項を意味するものとする。
共重合体(α)の重量平均分子量は、1000〜100万である。共重合体(β)の重量平均分子量は、1000〜20万である。従来のカチオン系殺菌剤は、洗濯中に衣料に剤が付着することにより、洗濯時に充分な抗菌性能を発現できないと考えられる。これに対して本発明の共重合体は、重量平均分子量が1000〜100万の範囲であることにより、洗濯中における繊維への吸着を充分に抑制しつつ、濯ぎにより洗い流されることを充分に抑制でき、洗濯後の繊維への吸着性に優れることとなる。これにより、洗濯中の抗菌性能と洗濯後の抗菌性能の持続性とを両立させることができる。また、本発明の共重合体は、重量平均分子量が下記好ましい範囲であれば抗菌性能の持続性及び洗濯中の抗菌性により優れる傾向にある。
共重合体(α)の重量平均分子量として好ましくは2000〜80万であり、より好ましくは3000〜60万であり、更に好ましくは4000〜40万であり、一層好ましくは5000〜20万であり、より一層好ましくは6000〜18万であり、更に一層好ましくは7000〜14万であり、特に好ましくは8000〜10万であり、特に一層好ましくは1万〜8万であり、最も好ましくは14000〜75000である。
【0015】
共重合体(β)の重量平均分子量として好ましくは2000〜20万であり、より好ましくは3000〜20万であり、更に好ましくは4000〜18万であり、一層好ましくは5000〜16万であり、より一層好ましくは6000〜14万であり、更に一層好ましくは7000〜12万であり、特に好ましくは8000〜10万であり、特に一層好ましくは1万〜8万であり、最も好ましくは14000〜75000である。共重合体の重量平均分子量は、実施例に記載の方法により測定することができる。
【0016】
本発明の洗浄剤用共重合体は、カチオン性基含有単量体(A)由来の構造単位(a)を有している。上記カチオン性基含有単量体(A)は、エチレン性不飽和基とカチオン性基とを少なくとも1つずつ有していれば、特に制限されない。ここでカチオン性基とは、カチオンを有する基又はカチオンを発生させる基であり、例えば、第1〜3級アミノ基、第1〜3級アミノ基の酸による中和物、第4級アンモニウム塩基等が挙げられる。カチオン性基としては、下記式(1)〜(3);
【0017】
【化3】
【0018】
(式(1)及び(2)中、R、Rは、同一又は異なって、水素原子又は炭素数1〜12の炭化水素基を表す。式(3)中、R〜Rは、同一又は異なって、炭素数1〜12の炭化水素基を表す。Xは、陰イオンを表す。)のいずれかで表される基であることが好ましい。
上記炭化水素基は、鎖状構造であっても、環構造を有していてもよいが、鎖状構造であることが好ましい。炭化水素基が鎖状構造である場合、直鎖状であっても分岐を有していてもよい。
上記炭化水素基としては、アルキル基、アルケニル基、アリール基が好ましく、より好ましくはアルキル基、アルケニル基であり、更に好ましくはアルキル基である。
また、上記炭化水素基の炭素数としては、1〜10が好ましく、より好ましくは1〜8であり、特に好ましくは1〜5であり、最も好ましくは1〜2である。
上記式(1)及び(2)においてR及びRのうち少なくともいずれか一方は、炭素数1〜12のアルキル基であることが好ましく、R及びRの両方が炭素数1〜12の炭化水素基であることがより好ましい。
上記式(3)においてR〜Rは、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数2〜12のアルケニル基であることが好ましい。
〜Rのアルキル基としては、メチル基、エチル基、tert−ブチル基がより好ましく、メチル基又はエチル基が最も好ましい。
【0019】
上記式(2)及び(3)におけるXは、特に制限されないが、例えば、塩素イオン、臭素イオン、ヨウ素イオン等のハロゲン化物イオン;硫酸メチルイオン等の硫酸アルキルイオン;酢酸イオン等の有機酸のイオン等が挙げられる。
上記式(2)におけるXは、有機酸のイオンが好ましい。
上記式(3)におけるXは、ハロゲン化物イオン、硫酸アルキルイオンが好ましい。
【0020】
上記カチオン性基としては、第1〜3級アミノ基、第1〜3級アミノ基の酸による中和物及び第4級アンモニウム塩基の中でも、第3級アミノ基、第3級アミノ基の酸による中和物又は第4級アンモニウム塩基が好ましい。第3級アミノ基、第3級アミノ基の酸による中和物としてはジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基又はこれらの塩酸、酢酸等の酸による中和物が好ましい。
【0021】
上記カチオン性基含有単量体(A)は、下記式(4)〜(7);
【0022】
【化4】
【0023】
(式(4)及び(5)中、R、Rは、同一又は異なって、水素原子又は炭素数1〜12の炭化水素基を表す。式(6)及び(7)中、R〜Rは、同一又は異なって、炭素数1〜12の炭化水素基を表す。Zは、水素原子又はメチル基を表す。Yは、2価の連結基を表す。Xは、陰イオンを表す。m、nは、同一又は異なって、1〜3の整数である。)で表される構造であることが好ましい。
【0024】
式(6)及び(7)におけるXの具体例は、式(2)及び(3)におけるXと同様である。好ましくはハロゲン化物イオン又はアルキル硫酸イオンであり、より好ましくは塩化物イオン、メチル硫酸イオンである。
【0025】
抗菌性及び耐加水分解性の観点から、上記Zは、メチル基であることが好ましい。
上記式(7)におけるm、nは、同一又は異なって、1〜3の整数であり、好ましくは1又は2であり、より好ましくは1である。
【0026】
上記式(4)〜(6)における2価の連結基としては、特に制限されないが、例えば、下記式(8);
【0027】
【化5】
【0028】
(式中、iは、0〜12の整数を表す。)、下記式(9);
【化6】
【0029】
(式中、jは、1〜10の整数を表す。)及び下記式(10);
【0030】
【化7】
【0031】
(式中、kは、0〜4の整数を表す。)で表される構造が挙げられる。
上記2価の連結基としては、上記式(8)又は(9)で表される構造が好ましい。
上記式(8)におけるiは、1〜6であることが好ましく、より好ましくは1〜4である。
上記式(9)におけるjは、1〜6であることが好ましく、より好ましくは1〜4である。
【0032】
上記カチオン性基含有単量体(A)として、具体的には、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート等のN,N−ジアルキルアミノ基含有(メタ)アクリレート類及び上記モノマーに4級化剤を付加させたモノマー若しくはこれらの塩酸、酢酸等の酸による中和物;N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等のN,N−ジアルキルアミノ基含有(メタ)アクリルアミド類及び上記モノマーに4級化剤を付加させたモノマー若しくはこれらの塩酸、酢酸等の酸による中和物;モノメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、モノエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、モノメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、モノエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸2−(tert−ブチルアミノ)エチル等のモノアルキルアミノ基含有(メタ)アクリレート類及びこれらの塩酸、酢酸等の酸による中和物;モノメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、モノエチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、モノメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、モノエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等のモノアルキルアミノ基含有(メタ)アクリルアミド類及びこれらの塩酸、酢酸等の酸による中和物;(メタ)アクリル酸−2−アミノエチル等の(メタ)アクリル酸とアルカノールアミンとのエステル類及びこれらの塩酸、酢酸等の酸による中和物;ジアリルジメチルアンモニウムクロリド等のN,N−ジアリルメチルアミン及びこれに4級化剤を付加させたモノマー若しくはこれの塩酸、酢酸等の酸による中和物;アリルアミン及びこれの塩酸、酢酸等の酸による中和物;1−アリルオキシ−3−ジブチルアミノ−2−オール、1−アリルオキシ−3−ジエタノールアミノ−2−オール等の炭素数2〜8の環状エーテル含有基を有する不飽和単量体と炭素数1〜24のアミン化合物との付加反応物及びこれに4級化剤を付加させたモノマー若しくはこれの塩酸、酢酸等の酸による中和物等が挙げられる。
【0033】
上記炭素数1〜24のアミン化合物は、アミノ基を有し、炭素数2〜8の環状エーテル含有基を有する不飽和単量体の環状エーテル構造と反応することができる限り特に制限されない。炭素数1〜24のアミン化合物の炭素数は、1〜20が好ましく、1〜16がより好ましい。炭素数1〜24のアミン化合物としては、第1級アミン、第2級アミンが挙げられ、例えば、炭素数1〜24の(ジ)アルキルアミン、炭素数1〜24の(ジ)アルカノールアミン、炭素数1〜24のアルキルアルカノールアミン等が挙げられる。
炭素数1〜24の(ジ)アルキルアミンとしては、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、ペンチルアミン、ジペンチルアミン、ヘキシルアミン、ジヘキシルアミン、ヘプチルアミン、ジヘプチルアミン、オクチルアミン、ジオクチルアミン、ドデシルアミン、ジドデシルアミン等が好ましい。
炭素数1〜24の(ジ)アルカノールアミンとしては、メタノールアミン、エタノールアミン、プロパノールアミン、ブタノールアミン、ジメタノールアミン、ジエタノールアミン、ジプロパノールアミン、ジブタノールアミン、ヘキサノールアミン等が好ましい。
炭素数1〜24のアルキルアルカノールアミンとしては、メチルエタノールアミン等が好ましい。
上記カチオン性基含有単量体(A)として、好ましくは、N,N−ジアルキルアミノ基含有(メタ)アクリレート類及びこれらの塩酸、酢酸等の酸による中和物やこれらに4級化剤を付加させたモノマー、N,N−ジアルキルアミノ基含有(メタ)アクリルアミド類及びこれらの塩酸、酢酸等の酸による中和物やこれらに4級化剤を付加させたモノマー、中でもN,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド及びこれらの塩酸、酢酸等の酸による中和物やこれらに4級化剤を付加させたモノマーがより好ましい。
上記4級化剤としては、特に制限されるものではないが、塩化メチル、塩化エチル、臭化メチル、ヨウ化メチル等のハロゲン化アルキル;硫酸ジメチル、硫酸ジエチル、硫酸ジ−n−プロピル等のアルキル硫酸等の一般的なアルキル化剤が挙げられる。
【0034】
本発明の洗浄剤用共重合体は、疎水性単量体(B)由来の構造単位(b)を有している。上記疎水性単量体(B)は、単独重合を行って得られた単独重合体(ホモポリマー)に対する溶解性パラメータが15以下である。なお、溶解性パラメータが15以下であっても、カチオン性基を有するものについては、カチオン性基含有単量体(A)に含まれるものとする。
ここで、上記溶解性パラメータは、「POLYMER ENGINEERING AND SCIENCE」(1974年、Vol.14、No.2)の147〜154ページに記載の方法によって計算される値である。
以下にその方法を概説する。単独重合体の溶解性パラメータ(δ)(cal/cm1/2は、該重合体を形成している構成単位の蒸発エネルギー(△ei)及びモル体積(△vi)に基づいて、下記の計算法により算出される。
δ=(△ei/△vi)1/2 (cal/cm1/2
【0035】
疎水性単量体(B)を単独で重合した際に得られた単独重合体(ホモポリマー)に対する溶解性パラメータが15以下であれば、本発明の共重合体における疎水性が充分なものとなり、微生物の細胞膜に対する親和性が向上し、細胞膜との相互作用が増大することで、細胞膜の生理活性にダメージを与えるため、従来のカチオン系殺菌剤よりも抗菌性能に優れる。上記溶解性パラメータとして好ましくは14以下であり、より好ましくは13以下であり、更に好ましくは12以下である。上記溶解性パラメータとしては通常5以上である。
【0036】
上記疎水性単量体(B)としては、単独重合体での溶解性パラメータが15以下であれば特に制限されないが、(メタ)アクリル酸と置換基を有していてもよいアルコールとのエステル((メタ)アクリレート)類;(メタ)アクリル酸、クロトン酸、α―アリルオキシアクリル酸及びこれらの塩等の不飽和モノカルボン酸類;スチレン等の芳香族ビニル系単量体;エチレン、プロピレン等のオレフィン系単量体;酢酸ビニル等の不飽和アルコールとカルボン酸とのエステル;塩化ビニル等のハロゲン化ビニル;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル等のアルキルビニルエーテル類;1−アリルオキシ−3−ブトキシプロパン−2−オール等の炭素数2〜8の環状エーテル含有基を有する不飽和単量体と炭素数1〜20のアルコールとの付加反応物;アリルアルコールのエチレンオキシド付加物、メタリルアルコールのエチレンオキシド付加物、イソプレノールのエチレンオキシド付加物等の炭素数2〜20の不飽和アルコールのアルキレンオキシド付加物及びそれらの末端疎水変性物;N−ビニルピロリドン等の環状ビニル系単量体が挙げられる。
【0037】
上記不飽和モノカルボン酸の塩としては、金属塩が挙げられる。上記金属塩の金属としては、リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属が挙げられる。
【0038】
上記(メタ)アクリレートにおける置換基としては、水酸基;メトキシ基、エトキシ基等の炭素数1〜18のアルコキシ基;オキシアルキレン基、スルホン酸基、リン酸基等のオキソ基含有基;フルオロ基等のハロゲノ基;グリシジル基等のエポキシ基;アルデヒド基等のカルボニル基等が挙げられる。
【0039】
上記のような置換基を有しないアルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、sec−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート等のシクロアルキル(メタ)アクリレート、n−ラウリル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソボルニルメタクリレート等が挙げられる。
【0040】
水酸基含有(メタ)アクリレートとしては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートなどのエステル基の炭素数が1〜18の水酸基含有(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0041】
アルコキシアルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、メトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシプロピル(メタ)アクリレート、メトキシブチル(メタ)アクリレート、エトキシブチル(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリプロポキシ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0042】
オキソ基含有(メタ)アクリレートとしては、例えば、エチレングリコール(メタ)アクリレート、エチレングリコールメトキシ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコール(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールメトキシ(メタ)アクリレート等の(ジ)エチレングリコール(メトキシ)(メタ)アクリレート;アルコキシポリエチレングリコールメタクリレート(アントックスLMA−10)等のアルキレングリコールの繰り返し数が1〜100のアルコキシポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート;スルホプロピル(メタ)アクリレート;(メタ)アクリロイルオキシエチルホスフェート等が挙げられる。
【0043】
フルオロ基含有(メタ)アクリレートとしては、例えば、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレートなどのエステル基の炭素数が2〜6のフルオロ基含有アルキル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0044】
エポキシ基含有(メタ)アクリレートとしては、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、α−メチルグリシジル(メタ)アクリレート、グリシジルアリルエーテル等が挙げられる。
【0045】
カルボニル基含有(メタ)アクリレートとしては、例えば、アセトニル(メタ)アクリレート、ジアセトン(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートアセチルアセテート、ブタンジオール−1,4−アクリレートアセチルアセテート、2−(アセトアセトキシ)エチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルオキシアルキルプロペナール等が挙げられる。
【0046】
上記疎水性単量体(B)は、少なくとも1種の(メタ)アクリル酸エステルを含むことが好ましい。すなわち、本発明の共重合体は、少なくとも1種の(メタ)アクリル酸エステル由来の構造単位を有するものであることが好ましい。
上記(メタ)アクリル酸エステルとしては、下記式(11);
【0047】
【化8】
【0048】
(式中、Rは、水素原子又はメチル基を表す。Rは、炭素数1〜30の炭化水素基を表す。)で表される化合物であることが好ましい。
上記炭化水素基の炭素数は、1〜20であることが好ましい。より好ましくは1〜16であり、更に好ましくは1〜12であり、特に好ましくは1〜8である。
上記炭化水素基の炭素数が1〜20であれば、重合体の水溶性、粘度を好適な範囲とすることができ、取扱いに優れるものとなる。上記炭化水素基の炭素数が1〜12であれば、重合体の製造が容易となり、さらに、抗菌性に加えて安全性にも優れるものとなる。
【0049】
上記炭化水素基としては、特に制限されず、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基等の鎖状炭化水素基、芳香族炭化水素基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基等の環状炭化水素基が挙げられる。上記炭化水素基は、分岐を有していてもよく、分岐を有する場合の炭化水素基の炭素数は、主鎖及び分岐鎖の合計の炭素数を意味する。
上記アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、2−エチルへキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、ステアリル基、イコシル基等が挙げられる。
上記アルケニル基としては、例えば、ビニル基、アリル基、1−ブテニル基、2−ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ドデセニル基、オクタデセニル基、イコセニル基等が挙げられる。
上記アルキニル基としては、例えば、エチニル基、1−プロピニル基、2−プロピニル基、ブチニル基、ペンチニル基、ヘキシニル基、ヘプチニル基、オクチニル基、ノニニル基、デシニル基、ドデシニル基、オクタデシニル基、イコシニル基等が挙げられる。
【0050】
上記芳香族炭化水素基としては、例えば、フェニル基、ベンジル基、トリル基、o−キシリル基等が挙げられる。
上記シクロアルキル基としては、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。
上記シクロアルケニル基としては、例えば、シクロプロペニル基、シクロブテニル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基等が挙げられる。
上記炭化水素基として、好ましくはアルキル基、アルケニル基であり、より好ましくはアルキル基である。
すなわち上記(メタ)アクリル酸エステルとしては、(メタ)アクリル酸アルキルエステル(アルキル(メタ)アクリレート)が好ましい。
【0051】
アルキル(メタ)アクリレートとして好ましくはメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、sec−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレートであり、より好ましくは、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、sec−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレートである。
【0052】
本発明の洗浄剤用共重合体はまた、(メタ)アクリル酸アルキルエステル由来の構造単位(b−1)と、溶解性パラメータが15以下であって、カルボキシル基、水酸基及びエーテル基からなる群より選択される少なくとも1種の官能基を有する単量体由来の構造単位(b−2)とを有するものであることが好ましい。このような構造単位を有する共重合体もまた、本発明の好適な実施形態の1つである。
上記カルボキシル基、水酸基及びエーテル基からなる群より選択される少なくとも1種の官能基を有する単量体は、溶解性パラメータが15以下であって、カルボキシル基、水酸基及びエーテル基のいずれかの官能基を有しているものであればよく、(メタ)アクリル酸エステル構造を有しているものであっても、カルボキシル基、水酸基及びエーテル基からなる群より選択される少なくとも1種の官能基を有するモノマーに分類するものとする。
本発明の共重合体が構造単位(b−2)とを有することにより、共重合体の水溶性が向上し、また、塩やpHの変化による共重合体の析出、抗菌性の低下等の影響をより充分に緩和することができるため、幅広いpH領域において共重合体を使用することができ、中性から弱アルカリ領域のものが多い洗浄剤により好適に用いることができる。本発明の共重合体はまた、上記構造を有することにより共重合体の親水性が向上し、再汚染防止能により優れることとなる。上記カルボキシル基、水酸基及びエーテル基からなる群より選択される少なくとも1種の官能基を有する単量体としては、上述の不飽和モノカルボン酸類;水酸基含有(メタ)アクリレート;アルキルビニルエーテル類;炭素数2〜20の不飽和アルコールのアルキレンオキシド付加物;炭素数2〜8の環状エーテル含有基を有する不飽和単量体と炭素数1〜20のアルコールとの付加反応物等が挙げられる。
【0053】
カルボキシル基、水酸基及びエーテル基からなる群より選択される少なくとも1種の官能基を有する単量体としては、不飽和モノカルボン酸類;水酸基含有(メタ)アクリレート;炭素数2〜20の不飽和アルコールのアルキレンオキシド付加物;炭素数2〜8の環状エーテル含有基を有する不飽和単量体と炭素数1〜20のアルコールとの付加反応物が好ましい。
上記不飽和モノカルボン酸類としては、(メタ)アクリル酸及びこれらの塩が好ましい。
上記水酸基含有(メタ)アクリレートとしては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0054】
上記炭素数2〜20の不飽和アルコールの炭素数は、2〜18であることが好ましく、炭素数2〜20の不飽和アルコールとしては、ビニルアルコール、アリルアルコール、イソプレニルアルコール等が挙げられる。
上記炭素数2〜20の不飽和アルコールのアルキレンオキシド付加物におけるアルキレンオキシドの炭素数は、2〜16であることが好ましく、より好ましくは、2〜12である。上記アルキレンオキシドとしては、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、イソブチレンオキシド、1−ブテンオキシド、2−ブテンオキシド、スチレンオキシド等が挙げられる。より好ましくは、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシドであり、更に好ましくは、エチレンオキシド、プロピレンオキシドである。
上記アルキレンオキシドの平均付加モル数は、1〜100であることが好ましい。より好ましくは、1〜80であり、更に好ましくは、1〜70であり、特に好ましくは、1〜50である。
上記炭素数2〜20の不飽和アルコールのアルキレンオキシド付加物としては、イソプレノールのエチレンオキシド付加物が好ましい。
【0055】
上記炭素数1〜20のアルコールとしては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール等のアルキルアルコールが挙げられる。好ましくはエタノール、プロパノール、ブタノール等の炭素数2〜16のアルキルアルコールである。
上記炭素数2〜8の環状エーテル含有基を有する不飽和単量体と炭素数1〜20のアルコールとの付加反応物としては1−アリルオキシ−3−ブトキシプロパン−2−オールが好ましい。
【0056】
本発明の共重合体は、上記カチオン性基含有単量体(A)、疎水性単量体(B)以外のその他の単量体(E)由来の構造単位(e)を有していてもよい。その他の単量体(E)としては、カチオン性基含有単量体(A)、疎水性単量体(B)と共重合できるものである限り特に制限されない。その他の単量体(E)の単独重合体での溶解性パラメータは、15以下であっても、15を超えるものであってもよく、溶解性パラメータが15よりも大きい単量体(E−1)としては、特に制限されないが、例えば、アクリロニトリル等が挙げられる。
上記単量体(E−1)の溶解性パラメータとして好ましくは15よりも大きく、20以下であり、より好ましくは15よりも大きく、17以下である。
その他の単量体の溶解性パラメータが15以下であっても、15を超えるものであっても、上記疎水性単量体を好ましい割合で重合している限り、共重合体としての疎水性は充分に維持されることとなる。
また、粘度を調整する観点から溶解性パラメータの値にかかわらずエチレン性不飽和基を2個以上有する単量体が含まれていてもよい。エチレン性不飽和基を2個以上有する単量体としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、グリセリン、ポリグリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、サッカロース、ソルビトール、1,4−ブタンジオール等のポリオールの2置換以上の水酸基と(メタ)アクリル酸とのエステル類;上記ポリオールの2置換以上のメタクリル酸エステル類;上記ポリオールの2置換以上の水酸基とアリルアルコール、ビニルアルコール等の不飽和アルコールとのエーテル類;フタル酸ジアリル、リン酸トリアリル、メタクリル酸アリル、テトラアリルオキシエタン、トリアリルシアヌレート、アジピン酸ジビニル、クロトン酸ビニル、1,5−ヘキサジエン、ジビニルベンゼン等が挙げられる。これらのその他の単量体は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
抗菌性を向上させる観点から、本発明の共重合体はその他の単量体として重合性金属塩を共重合していてもよい。重合性金属塩としてはアクリル酸亜鉛、メタクリル酸亜鉛、α―アリルオキシアクリル酸亜鉛等の不飽和カルボン酸の重金属塩が挙げられる。
【0057】
本発明の共重合体は、カチオン性基含有単量体(A)由来の構造単位(a)の割合が全構造単位100質量%に対して、15〜99.9質量%であることが好ましい。より好ましくは20〜99質量%であり、更に好ましくは20〜98質量%であり、更により好ましくは25〜95質量%であり、一層好ましくは25〜94質量%であり、より一層好ましくは25〜93質量%であり、更に一層好ましくは25〜90質量%であり、特に好ましくは30〜88質量%であり、最も好ましくは30〜85質量%である。
上記割合の下限値としては36質量%、40質量%、50質量%、55質量%であってもよい。
【0058】
上記カチオン性基含有単量体(A)が第1〜3級アミノ基含有単量体及び/又はこれらの酸による中和物の場合、すなわち共重合体(α)における構造単位(a)の割合は、全構造単位100質量%に対して20〜99.9質量%であることが好ましい。より好ましくは25〜99.9質量%であり、更に好ましくは30〜99.9質量%であり、更により好ましくは36〜99.9質量%である。すなわち、共重合体(α)における構造単位(a)の割合が、全構造単位100質量%に対して36〜99.9質量%である洗浄剤用共重合体は本発明の好ましい実施形態の1つである。上記割合として更により好ましくは40〜99.9質量%であり、一層好ましくは45〜99.9質量%であり、更に一層好ましくは45〜95質量%であり、特に好ましく45〜93質量%であり、最も好ましくは45〜90質量%である。
上記割合の下限値としては50質量%、55質量%、60質量%であってもよい。
【0059】
一方、カチオン性基含有単量体(A)が第4級アンモニウム塩の場合、すなわち共重合体(β)における構造単位(a)の割合は、全構造単位100質量%に対して15〜99.9質量%であることが好ましい。より好ましくは20〜99質量%であり、更に好ましくは20〜98質量%であり、更により好ましくは20〜97質量%であり、一層好ましくは20〜95質量%であり、より一層好ましくは25〜90質量%であり、更に一層好ましくは25〜85質量%であり、特に好ましくは25〜80質量%である。
上記割合の下限値としては51質量%、53質量%、55質量%、60質量%であってもよい。
【0060】
本発明の共重合体、すなわち共重合体(α)及び/又は(β)は、共重合体を形成する構造単位の総量100質量%に対して、疎水性単量体(B)由来の構造単位(b)を0.01〜85質量%の割合で有することが好ましい。より好ましくは0.01〜75質量%であり、更に好ましくは0.01〜64質量%の割合で有することである。更により好ましくは0.01〜60質量%、一層好ましくは0.01〜50質量%であり、より一層好ましくは0.01〜48質量%であり、更に一層好ましくは0.01〜45質量%であり、特に好ましくは0.1〜40質量%であり、最も好ましくは1〜30質量%である。
【0061】
上記カチオン性基含有単量体(A)が第1〜3級アミノ基含有単量体及び/又はこれらの酸による中和物の場合、すなわち共重合体(α)における疎水性単量体(B)由来の構造単位(b)の割合は、全構造単位100質量%に対して0.01〜80質量%の割合であることが好ましい。より好ましくは0.01〜70質量%であり、更に好ましくは0.01〜64質量%であり、更により好ましくは0.01〜60質量%であり、一層好ましくは0.01〜55質量%であり、より一層好ましくは0.01〜50質量%であり、特に好ましくは0.01〜45質量%であり、最も好ましくは0.01〜40質量%である。
【0062】
上記カチオン性基含有単量体(A)が第4級アンモニウム塩の場合、すなわち共重合体(β)における疎水性単量体(B)由来の構造単位(b)の割合は、全構造単位100質量%に対して0.01〜85質量%の割合であることが好ましい。より好ましくは0.1〜80質量%であり、更に好ましくは1〜75質量%であり、更により好ましくは2〜70質量%であり、一層好ましくは3〜65質量%であり、より一層好ましくは4〜55重量%であり、更に一層好ましくは5〜49質量%であり、特に好ましくは10〜47質量%であり、特に一層好ましくは15〜45質量%であり、最も好ましくは20〜40質量%である。
【0063】
本発明の共重合体は、共重合体における疎水性単量体(B)由来の構造単位(b)の含有割合が、共重合体におけるカチオン性基含有単量体(A)由来の構造単位(a)100質量%に対して、0.01〜567質量%であることが好ましい。より好ましくは0.1〜400質量%、更に好ましくは1〜300質量%であり、一層好ましくは1.01〜200質量%であり、より一層好ましくは2.05〜100質量%であり、更に一層好ましくは5.3〜80質量%であり、特に好ましくは11.1〜60質量%である。本発明の共重合体における構造単位(b)の含有割合がこのような範囲であれば、上記共重合体の抗菌性能が向上する傾向にある。上記割合の上限値としては50質量%、40質量%、35質量%、25質量%であってもよい。
【0064】
本発明の共重合体の疎水性単量体(B)由来の構造単位(b)として(メタ)アクリル酸アルキルエステル由来の構造単位(b−1)を有する場合、構造単位(b−1)の割合は、共重合体を形成する構造単位の総量100質量%に対して、0.01〜80質量%であることが好ましい。より好ましくは0.015〜75質量%、更に好ましくは1〜70質量%であり、特に好ましくは5〜65質量%である。上記割合の上限値としては55質量%、49質量%、40質量%、30質量%であってもよい。
【0065】
本発明の共重合体は上述のとおり、カチオン性基含有単量体(A)由来の構造単位(a)、(メタ)アクリル酸アルキルエステル由来の構造単位(b−1)と、更にカルボキシル基、水酸基及びエーテル基からなる群より選択される少なくとも1種の官能基を有する単量体由来の構造単位(b−2)とを有していてもよく、上記共重合体における構造単位(b−2)の割合は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル由来の構造単位(b−1)100質量%に対して、0〜100質量%であることが好ましい。より好ましくは0〜50質量%である。
【0066】
本発明の共重合体は、共重合体を形成する構造単位の総量100質量%に対して、その他の単量体(E)由来の構造単位(e)の含有割合が、0〜10質量%であることが好ましい。より好ましくは0〜8質量%、更に好ましくは0〜5質量%である。
その他の単量体の中でも上記構造単位(e−1)を有する場合、構造単位(e−1)の割合は、共重合体を形成する構造単位の総量100質量%に対して、0〜1質量%であることが好ましい。より好ましくは0〜0.5質量%である。
その他の単量体の中でもエチレン性不飽和基を2個以上有する単量体由来の構造単位の含有割合は、共重合体を形成する構造単位の総量100質量%に対して0〜1%であることが好ましく、より好ましくは、0〜0.5質量%、更に好ましくは0〜0.1質量%である。
【0067】
本発明の共重合体としては、カチオン性基含有単量体(A)由来の構造単位(a)と疎水性単量体(B)由来の構造単位(b)のみからなる共重合体もまた、好ましい形態の1つである。この場合、構造単位(a)と構造単位(b)の割合の合計は100質量%であり、これらの構造単位のそれぞれの割合は、100質量%から上述の構造単位(a)の割合又は構造単位(b)の割合を差し引いた値となる。
【0068】
本発明の共重合体の構造はランダム共重合体構造、グラフト構造、ブロック共重合体構造、グラジエント共重合体構造、星形構造、デンドリマー構造などが挙げられるが、いずれの構造であってもよい。
【0069】
<共重合体の製造方法>
本発明の共重合体の製造は特に制限されないが、単量体成分を重合することにより製造することができ、各単量体成分の具体例及び好ましい例並びに好ましい割合は、共重合体における各構造単位において述べたとおりである。
【0070】
上記共重合体は、上記単量体成分を重合開始剤の存在下で重合する方法により製造することが好ましい。単量体成分を重合させる際には、重合方法に応じて重合開始剤を適宜用いることができる。上記重合開始剤としては、通常用いられるものを使用することができ、例えば、過酸化水素;過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩;ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(イソ酪酸)ジメチル、4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩、2,2’−アゾビス[N−(2−カルボキシエチル)−2−メチルプロピオンアミジン]n水和物、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]二塩酸塩、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]二硫酸塩二水和物、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2’−アゾビス[N−(2−プロペニル)−2−メチルプロピオンアミド]等のアゾ系化合物;過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、過酢酸、ジ−t−ブチルパーオキサイド等の有機過酸化物等が好適である。これらの重合開始剤のうち、アゾ系化合物が好ましい。上記重合開始剤としては、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの重合開始剤は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0071】
上記重合開始剤の使用量は、上記単量体成分の重合を開始できる量であれば特に制限されないが、全単量体成分100質量部に対して、通常0.01〜50質量部であり、好ましくは0.05〜30質量部、より好ましくは0.05〜20質量部であることが好ましい。
【0072】
本発明で用いるカチオン性基含有単量体の使用方法としては、それらを酸により中和した酸中和物、又は、4級化剤により4級化した4級アンモニウム塩として用いてもよい。
カチオン性基含有単量体の中和に用いる酸としては、特に制限されるものではないが、塩酸、硫酸等の無機酸;酢酸、クエン酸、酒石酸、トルエンスルホン酸、乳酸、コハク酸、グリコール酸等の有機酸が挙げられる。
カチオン性基含有単量体の4級化剤としては、上述のとおりである。
【0073】
上記酸、又は、4級化剤を用いる場合、これらの使用量としては、上記カチオン性基含有単量体の一部又は全部が中和又は4級化される限り特に制限されないが、重合反応に用いるカチオン性基含有単量体1モルに対して、酸、又は、4級化剤は0.1〜1モルであることが好ましい。
【0074】
上記共重合方法において、単量体成分や重合開始剤等の反応容器への添加方法としては、反応容器に単量体成分の全てを仕込み、重合開始剤を反応容器内に添加することによって共重合を行う方法;反応容器に単量体成分の一部を仕込み、重合開始剤と残りの単量体成分を反応容器内に連続してあるいは段階的に(好ましくは連続して)添加することによって共重合を行う方法;反応容器に重合溶媒を仕込み、単量体成分と重合開始剤の全量を添加する方法;単量体のうちの一(例えば、カチオン性基含有単量体)の一部を反応容器に仕込み、重合開始剤と残りの単量体成分を反応容器内に(好ましくは連続して)添加することによって共重合を行う方法等が好適である。このような方法の中でも、得られる共重合体の分子量分布を狭く(シャープに)することができうることから、重合開始剤と単量体成分を反応容器に逐次滴下する方法で共重合を行うことが好ましい。
【0075】
上記共重合方法としては、例えば、溶液重合やバルク重合、懸濁重合、乳化重合、リビング重合やグラフト重合等の方法で行うことができ、特に限定されるものではないが、溶液重合が好ましい。この際使用できる溶媒は、水であることが好ましい。水のみを使用する場合には、脱溶剤工程を省略できる点で好適である。
【0076】
上記共重合方法は、回分式でも連続式でも行うことができる。また、共重合の際、必要に応じて使用される溶媒としては、公知のものを使用でき、水;メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、ブタノール、THF(テトラヒドロフラン)等の1価のアルコール類;グリセリン、(ポリ)エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ジプロピレングリコール等の多価アルコール;ベンゼン、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、n−ヘプタン等の芳香族又は脂肪族炭化水素類;酢酸エチル等のエステル類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;ジメチルホルムアミド等のアミド類;ジエチルエーテル、ジオキサン等のエーテル類等が好適である。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、単量体成分及び得られる共重合体の溶解性の点から、水及び炭素数1〜4の低級アルコールからなる群より選択される1種又は2種以上の溶媒を用いることが好ましい。上記溶媒は、比較的安価なものであり、本発明の製造方法は、経済的にも優れる。また、上記共重合方法においては、水にプロピレングリコールやエチレングリコール等の多価アルコール溶媒を加えて重合してもよい。上記多価アルコール溶媒は水と併用することによって、ポリマーの溶解性を高めることができ、ソープフリー重合をより充分に抑制することができる。これにより、水溶性に乏しいポリマーの生成をより充分に抑制し、溶液の透明性をより向上させることができる。
上記多価アルコール溶媒と水とを併用する場合、水100質量%に対する多価アルコール溶媒の割合は、0〜200質量%であることが好ましい。
本発明の共重合体の製造方法は、必要に応じて、任意の連鎖移動剤、pH調節剤、緩衝剤などを用いることができる。
【0077】
重合の際の温度は特に限定されないが、通常50〜120℃であり、好ましくは60〜110℃である。重合時の温度が上記範囲であれば、残存単量体成分が少なくなる傾向にある。なお、重合時の温度は、重合反応の進行中において、常に一定に保持する必要はなく、例えば、室温から重合を開始し、適当な昇温時間又は昇温速度で設定温度まで昇温し、その後、設定温度を保持するようにしてもよいし、単量体成分や開始剤等の滴下方法に応じて、重合反応の進行中に経時的に重合温度を変動(昇温又は降温)させてもよい。また、単量体成分を重合させる際には、単量体成分が均一に重合するようにするために、適宜、撹拌することが好ましい。
【0078】
重合時間は特に制限されず、重合反応の進行状況に応じて適宜設定すればよいが、通常、2〜9時間程度である。なお、本発明において、「重合時間」とは単量体の滴下前の加熱撹拌を行っている時間、単量体を添加している時間及び単量体の滴下後の熟成時間を表す。
【0079】
反応系内の圧力としては、常圧(大気圧)下、減圧下、加圧下のいずれであってもよい。反応系内の雰囲気としては、空気雰囲気でも不活性雰囲気でもどちらでもよい。
【0080】
上記重合反応系における重合反応が終了した時点での水溶液中の固形分濃度(すなわち単量体の重合固形分濃度)は、20質量%以上が好ましく、25〜80質量%であることがより好ましい。このように重合反応終了時の固形分濃度が20質量%以上と高ければ、高濃度かつ一段で重合を行うことができる。そのため、従来の製造方法では場合によっては必要であった濃縮工程を省略することができるなど、効率よく共重合体を得ることができる。それゆえ、その製造効率を大幅に上昇させたものとすることができ、その結果、本発明の共重合体の生産性を大幅に向上し、製造コストの上昇も抑制することが可能となる。
【0081】
本発明の共重合体の製造方法は、全ての使用原料の添加が終了した以後に、単量体の重合率を上げること等を目的として熟成工程を設けても良い。熟成時間は、通常1〜240分間、好ましくは1〜180分間、より好ましくは1〜120分間である。熟成時間が1分間未満の場合には、熟成不十分につき単量体成分が残ることがあり、残存単量体に起因する毒性や臭気などが問題となる。
【0082】
また、熟成工程における好ましい重合体溶液の温度は、上記重合温度と同様の範囲である。したがって、ここでの温度も一定温度(好ましくは上記滴下が終了した時点での温度)で保持してもよいし、熟成中に経時的に温度を変化させてもよい。
【0083】
<洗浄剤及び洗浄剤組成物>
本発明はまた、本発明の洗浄剤用共重合体を含む洗浄剤でもある。
上述のとおり、本発明の共重合体は、抗菌性能を発揮するため、上記洗浄剤は抗菌剤を含む洗浄剤ということもできる。さらに上記洗浄剤用共重合体を洗剤ビルダー又は洗剤組成物として使用する方法もまた本発明の1つである。
上記洗浄剤は、本発明の共重合体と共重合体以外の他の成分とを含んでいてもよく、その他の成分としては、界面活性剤、洗剤に用いられる添加剤、重合開始剤残渣、残存モノマー、重合時の副生成物、水分等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を含有することができる。
これらの成分の中でも界面活性剤は主な洗浄成分であり、洗浄剤としては界面活性剤を含むものであることが好ましい。すなわち、本発明の洗浄剤用共重合体からなる抗菌剤と界面活性剤とを含む洗浄剤組成物もまた、本発明の一つである。
上記洗浄剤組成物は、界面活性剤以外の上記その他の成分を含んでいてもよい。
洗浄剤又は洗浄剤組成物における上記共重合体の含有量は特に制限されないが、洗浄剤又は洗浄剤組成物の全量100質量%に対して、好ましくは0.001〜20質量%であり、より好ましく0.01〜10質量%であり、更に好ましくは0.01〜5質量%である。
上記界面活性剤や添加剤の具体的な形態は特に制限されず、洗浄剤分野において一般的に知られている知見が適宜参照されうる。
上記洗浄剤としては、特に制限されないが、衣料用の粉末洗剤や、液体洗剤が挙げられる。
【0084】
界面活性剤としては、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤及び両性界面活性剤からなる群から選択される1種又は2種以上を用いることができる。2種以上が併用される場合、アニオン性界面活性剤とノニオン性界面活性剤との合計量は、界面活性剤の全量100質量%に対して50質量%以上であることが好ましく、より好ましくは60質量%以上であり、更に好ましくは70質量%以上であり、特に好ましくは80質量%以上である。
【0085】
アニオン性界面活性剤としては、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルエーテル硫酸塩、アルケニルエーテル硫酸塩、アルキル硫酸塩、アルケニル硫酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、α−スルホ脂肪酸及びそのエステル塩、アルカンスルホン酸塩、飽和脂肪酸塩、不飽和脂肪酸塩、アルキルエーテルカルボン酸塩、アルケニルエーテルカルボン酸塩、アミノ酸型界面活性剤、N−アシルアミノ酸型界面活性剤、アルキルリン酸エステル及びその塩、アルケニルリン酸エステル及びその塩等が好適に挙げられる。これらのアニオン性界面活性剤におけるアルキル基、アルケニル基としては、直鎖状でも分岐鎖状でもよい。
上記洗浄剤又は洗浄剤組成物が、アニオン性界面活性剤を含むことにより、黄色ブドウ球菌に対する抗菌性能がより向上することとなり、本発明の共重合体が、疎水性単量体(B)として、(メタ)アクリル酸アルキルエステル由来の構造単位と、更に溶解性パラメータが15以下であって、カルボキシル基、水酸基及びエーテル基からなる群より選択される少なくとも1種の官能基を有するモノマー由来の構造単位、及び/又は、溶解性パラメータが15よりも大きい単量体由来の構造単位とを有するものである場合に、再汚染防止能と抗菌性能とをより効果的に発揮させることができる。
【0086】
ノニオン性界面活性剤としては、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、高級脂肪酸アルカノールアミド及びそのアルキレンオキサイド付加物、ショ糖脂肪酸エステル、アルキルグリコキシド、脂肪酸グリセリンモノエステル、アルキルアミンオキサイド等が好適に挙げられる。これらのノニオン性界面活性剤におけるアルキル基、アルケニル基としては、直鎖状でも分岐鎖状でもよい。
カチオン性界面活性剤としては、第4級アンモニウム塩等が好適である。また、両性界面活性剤としては、カルボキシル型両性界面活性剤、スルホベタイン型両性界面活性剤等が好適である。これらのカチオン性界面活性剤、両性界面活性剤におけるアルキル基、アルケニル基としては、直鎖状でも分岐鎖状でもよい。
【0087】
上記界面活性剤の配合(含有)割合は、洗浄剤又は洗浄剤組成物の全量100質量%に対して、好ましくは5〜70質量%であり、より好ましくは10〜60質量%であり、更に好ましくは15〜50質量%であり、一層好ましくは20〜45質量%であり、特に好ましくは25〜40質量%である。界面活性剤の配合割合が10質量%より少ないと、充分な洗浄力を発揮できなくなるおそれがあり、界面活性剤の配合割合が60質量%より多いと、経済性が低下するおそれや安定性が悪くなる可能性がある。
【0088】
添加剤としては、洗剤ビルダー、汚れ抑制剤(ベンゾトリアゾール、エチレン−チオ尿素等)、ソイルリリース剤、色移り防止剤、柔軟剤、pH調節用アルカリ性物質、香料、可溶化剤、蛍光剤、着色剤、起泡剤、泡安定剤、つや出し剤、殺菌剤、漂白剤、漂白助剤、酵素(プロテアーゼ、リパーゼ、セルラーゼ等)、染料、溶媒等が好適に挙げられる。また、粉末洗剤組成物の場合にはゼオライトを配合することが好ましい。
上記洗浄剤組成物は、酵素、蛍光剤、溶媒及び洗剤ビルダーからなる群より選択される少なくとも1種の添加剤を含むことが好ましい。
【0089】
上記洗剤ビルダーとしては、特に制限されないが、例えば、炭酸塩、炭酸水素塩、珪酸塩、硫酸塩等のアルカリビルダー;トリポリリン酸塩、ピロリン酸塩、ボウ硝、ニトリロトリ酢酸塩、エチレンジアミン四酢酸塩、ジエチレントリアミン五酢酸塩、クエン酸塩、ジグリコール酸塩、オキシカルボン酸塩、(メタ)アクリル酸の共重合体塩、アクリル酸−マレイン酸共重合体、フマル酸塩、ゼオライト等のキレートビルダー;カルボキシメチルセルロース等の多糖類のカルボキシル誘導体等が挙げられる。上記ビルダーに用いられる対塩としては、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属、アンモニウム、アミン等が挙げられる。
【0090】
上記酵素としては、衣料用洗剤用途等に通常用いられる酵素が利用することができ、例えば、プロテアーゼ、アミラーゼ、リパーゼ、セルラーゼ、マンナーゼ等が挙げられる。
洗浄剤又は洗浄剤組成物中の酵素の含有量は、洗浄剤又は洗浄剤組成物の総量100質量%に対して0.01〜3質量%が好ましい。
【0091】
上記添加剤の合計の配合割合は、洗浄剤又は洗浄剤組成物100質量%に対して0.1〜50質量%が好ましい。より好ましくは0.2〜40質量%であり、更に好ましくは0.3〜35質量%であり、特に好ましくは0.4〜30質量%であり、最も好ましくは0.5〜20質量%である。添加剤の合計の配合割合が0.1質量%未満であると、充分な洗剤性能を発揮できなくなるおそれがあり、50質量%を超えると経済性が低下するおそれがある。
【発明の効果】
【0092】
本発明の洗浄剤用共重合体は、上述の構成よりなり、洗濯時の抗菌性能及び洗濯後の抗菌性能の持続性に優れ、再汚染防止能にも優れるため、洗浄剤等に好適に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0093】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は「重量部」を、「%」は「質量%」を意味するものとする。
【0094】
<ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)>
共重合体の重量平均分子量(Mw)は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)により測定した。
測定条件、装置などは以下の通りである。
装置:東ソー社製 EcoSEC HLC−8320GPC
検出器:示差屈折率計(RI)検出器
カラム:東ソー社製 TSKgel α−M、α−2500
カラム温度:40℃
流速:0.4mL/min
注入量:20μL(試料濃度0.4wt%の溶離液調製溶液)
検量線:ジーエルサイエンス社製 ポリエチレングリコール
GPCソフト:東ソー社製 EcoSEC−WS
溶離液:0.5M酢酸+0.2M硝酸Na/アセトニトリル=50/50(v/v)
【0095】
<最小発育阻止濃度(MIC)>
抗菌剤(共重合体)を含む水溶液をミューラーヒントン培地中で2倍ずつ順次希釈していき、抗菌剤含有培地の希釈系列を調製した。その後、各濃度の抗菌剤を含有する培地をポリスチレン製96穴プレートに50μLずつ添加した。次に、18時間ミューラーヒントン寒天培地上で生育させた大腸菌(Escherichia coli、NBRC−3972、NBRC−15034)又は黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus、NBRC−12732、NBRC−15035)のコロニーをバターフィールド緩衝液に懸濁し、10×10個/mL程度の菌液を調製した。調製した菌液をミューラーヒントン培地中で10×10個/mL程度まで希釈し、上記で調製した希釈系列に対して50μLずつ添加した。35℃にて20時間静置後、菌が生育していない培地中の最小の抗菌剤濃度(ppm)を最小発育阻止濃度(MIC)として決定した。菌の生育の有無は、目視にて濁度が上昇しているかによって判断した。
【0096】
<殺菌性試験(time−kill test)>
抗菌剤として得られた重合体を10ppm、洗浄剤としてノニオン界面活性剤を100ppm、ポリオキシエチレンラウリルエーテルを5ppm添加した水溶液の殺菌性試験をASTM E−2315−03に準じて、接触時間10分で行った。試験に用いた菌種は、大腸菌(Escherichia coli、NBRC−3972)及び黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus、NBRC−12732)である。
生菌数の減少を対数(log)で示した値が殺菌活性値(A)として示され、抗菌剤未添加のコントロールの生菌数が10であって、抗菌剤を添加したものの生菌数が10であれば、殺菌活性値は5となる。以下の基準に従って殺菌活性値を評価し、殺菌性を判断した。
A>1:◎
0.5<A≦1:〇
0.2<A≦0.5:△
A≦0.2:×
【0097】
<持続性評価(模擬洗濯試験)>
綿布(カナキン3号、日本規格協会)を0.4gずつに切断し、バイアル瓶中で滅菌し、乾燥させた。次に、滅菌乾燥させた布を表1に示す組成の水溶液5mlに30分間含浸させ、試験布1とした。
その後、含浸させた試験布1を清浄なペーパータオルではさみ、圧力をかけて脱水を行った。続けて、濯ぎと脱水とをそれぞれ3回ずつ行った。濯ぎと脱水とは、20mlの超純水を入れたビーカー中でこの布を撹拌した(濯ぎ)後、ペーパータオルではさみ、圧力をかけて脱水を行った。3回の濯ぎと脱水後、バイアル瓶に一枚ずつ小分けして一晩乾燥させたものを試験布2とした。
試験布1、2の抗菌性試験をJIS L1902:2008に準拠して実施した。上記で処理した試験布1、2をバイアル瓶に入れ、そこに菌数を10CFU/ml調整した大腸菌(Escherichia coli、 NBRC−3972)または黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus、NBRC−12732)の菌液を0.2ml接種して、37℃で18時間静置培養した。培養後のバイアル瓶に0.7重量%のポリソルベート80と0.1重量%の大豆レシチンとを含む生理食塩水20mlを加えて振とうした。10倍希釈法による希釈系列を作製してミューラーヒントン培地に塗布して植菌後、37℃で24時間培養して生菌数を計測した。抗菌成分を含有しない水で処理した布で上記と同様の試験を行った場合の菌数から上記処理を行った試験布の場合の菌数を減じたものと比較し、減菌数を対数で表示した。
試験布2での滅菌数/試験布1での滅菌数×100(%)を抗菌剤の持続性と定義し、以下の判断基準に従って判定した。
70%以上:◎
50%以上70%未満:〇
20%以上50%未満:△
20%未満:×
【0098】
【表1】
【0099】
<カーボンブラック(CB)再汚染防止能の評価>
(1)Test fabric社より入手したポリエステル布を5cm×5cmに切断し、白布を作製した。この白布を予め日本電色工業社製の測色色差計SE6000型を用いて、白色度を反射率にて測定した。
(2)塩化カルシウム2水和物7.5gに純水を加えて17kgとし、硬水を調製した。
(3)ポリオキシエチレン(8)ラウリルエーテル4.0g、に、純水を加えて、100.0gとし、界面活性剤水溶液を調製した。pHは、水酸化ナトリウムで8.5に調整した。
(4)ターゴットメーターを25℃にセットし、硬水1Lと界面活性剤水溶液1g、固形分換算で5%の重合体水溶液1g、カーボンブラック0.1gをポットに入れ、100rpmで1分間撹拌した。その後、白布5枚を入れ、100rpmで10分間撹拌した。
(5)手で白布の水を切り、25℃にした硬水1Lをポットに入れ、100rpmで2分間撹拌した。
(6)白布に当て布をして、アイロンでしわを伸ばしながら乾燥させた後、上記測色色差計にて再度、白布の白度を反射率にて測定した。
(7)以上の測定結果から、下式により再汚染防止能を求めた。
(8)再汚染防止能(%)=〔(洗浄後の白色度)/(原白布の白色度)〕×100
70%以上 :◎
50%以上70%未満:〇
30%以上50%未満:△
30%未満:×
【0100】
<実施例1>
温度計、還流冷却器、攪拌機を備えたガラス製のセパラブルフラスコに、純水65.0g、プロピレングリコール24gを仕込み、攪拌下、90℃に昇温した。次いで攪拌下、90℃一定状態の重合反応系中に、メタクリル酸2−(ジメチルアミノ)エチル(N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート)(和光純薬工業(株)製、以下DAMとも称す。)48.3g、酢酸17.5g及びアクリル酸ブチル(以下BAとも称す。溶解性パラメータ:9.75)18.1gからなるモノマー溶液1;2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩(和光純薬工業(株)製、以下V−50とも称す。)の5%水溶液30.1gからなる開始剤水溶液;DAM24.12g及び酢酸8.77gからなるモノマー溶液2をそれぞれ別々の滴下ノズルより滴下した。滴下時間に関して、モノマー溶液1と開始剤水溶液は同時に滴下を開始し、モノマー溶液1は120分間、開始剤水溶液を210分間滴下した。モノマー溶液2はモノマー溶液1滴下終了後から60分間に渡って滴下した。
全滴下終了後、さらに30分間反応溶液を90℃に保持して熟成し、重合を完結させ、共重合体1を得た。
得られた共重合体1の固形分は37.9%、pHは6.6、重量平均分子量は28,200であった。
【0101】
<実施例2>
温度計、還流冷却器、攪拌機を備えたガラス製のセパラブルフラスコに、純水45.0gを仕込み、攪拌下、90℃に昇温した。次いで攪拌下、90℃一定状態の重合反応系中に、DAM39.3g、酢酸14.3g及びメタクリル酸エチル(以下EMAとも称す。溶解性パラメータ:9.71)6.54gからなるモノマー溶液1;V−50の10%水溶液22gからなる開始剤水溶液;DAM19.6g及び酢酸7.13gからなるモノマー溶液2をそれぞれ別々の滴下ノズルより滴下した。
滴下開始時間に関して、モノマー溶液1と開始剤水溶液は同時に滴下を開始し、モノマー溶液1は120分間、開始剤水溶液を210分間滴下した。モノマー溶液2はモノマー溶液1滴下終了後から60分間に渡って滴下した。全滴下終了後、さらに30分間反応溶液を90℃に保持して熟成し、重合を完結させ、共重合体2を得た。
得られた共重合体2の固形分は39.7%、pHは6.75、重量平均分子量は15,800であった。
【0102】
<実施例3>
開始剤水溶液をV−50の5%水溶液21.6gに変更したこと以外は実施例2と同様にして重合を行い、共重合体3を得た。
得られた共重合体3の固形分は39%、pHは6.83、重量平均分子量は28,800であった。
【0103】
<実施例4>
開始剤水溶液をV−50の2.5%水溶液36.3gに変更したこと以外は実施例3と同様にして重合を行い、共重合体4を得た。
得られた共重合体4の固形分は40.9%、pHは6.82、重量平均分子量は69,900であった。
【0104】
<実施例5>
モノマー溶液1及び2におけるN,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート(DAM)をジエチルアミノエチルメタクリレート(以下、DEAMとも称す)に変更したこと以外は実施例3と同様にして重合を行い、共重合体5を得た。
得られた共重合体5の固形分は36.9%、pHは6.7、重量平均分子量は28,400であった。
【0105】
<実施例6>
モノマー溶液2をBAに変えたこと以外は実施例5と同様にして共重合体6を得た。
得られた共重合体6の固形分は37.2%、pHは6.5、重量平均分子量は32,000であった。
【0106】
<実施例7>
セパラブルフラスコに脱イオン水25g、プロピレングリコール70gを仕込み、モノマー溶液1としてジメチルアミノエチルメタクリレート 四級化物(以下DQ−100、共栄社化学社製)を73.7g計量し、脱イオン水50.9gで溶解させたものを用いた。開始剤水溶液をV−50の2.5%水溶液25gとし、モノマー溶液2としてBA12.8gとし滴下時間は、モノマー溶液1は180分、モノマー溶液2は180分、開始剤水溶液は210分とした以外は、実施例1と同様にして共重合体7を得た。
得られた共重合体7の固形分は37%、重量平均分子量は25,600、pH5.5であった。
【0107】
<実施例8>
セパラブルフラスコに脱イオン水20g、プロピレングリコール70gを仕込み、モノマー溶液1としてDQ−100を54.0g計量し、脱イオン水37.8gで溶解させたものを用いた。開始剤水溶液をV−50の5%水溶液35.9gとし、モノマー溶液2としてEMA36.0gとしたこと以外は実施例5と同様にして重合を行い、共重合体8を得た。
得られた共重合体8の固形分は37.7%、重量平均分子量は19,500、pH5.0であった。
【0108】
<実施例9>
モノマー溶液1としてDQ−100を63g、脱イオン水44.1gとし、モノマー溶液2をBA27gとしたこと以外は実施例6と同様にして共重合体9を得た。
得られた共重合体9の固形分は37.7%、重量平均分子量は14,300、pH5.5であった。
【0109】
<実施例10>
温度計、還流冷却器、攪拌機を備えたガラス製のセパラブルフラスコに、純水65.0g、プロピレングリコール24gを仕込み、攪拌下、90℃に昇温した。次いで攪拌下、90℃一定状態の重合反応系中に、DAM67.9g、BA13.6g、酢酸26gからなるモノマー溶液1;V−50の5%水溶液26.9gからなる開始剤水溶液;イソプレノールにエチレンオキシドが10モル付加したモノマー(以下、IPN10とも称す。溶解性パラメータ:8.17、固形分80%)11.3gからなるモノマー溶液2をそれぞれ別々の滴下ノズルより滴下した。
滴下時間は、モノマー溶液1は180分、モノマー溶液2は90分、開始剤水溶液は210分とした。その他の重合方法は実施例7と同様にして重合し、共重合体10を得た。
得られた共重合体10の固形分は37.3%、pHは6.7、重量平均分子量は38,100であった。
【0110】
<実施例11>
温度計、還流冷却器、攪拌機を備えたガラス製のセパラブルフラスコに、純水50g、プロピレングリコール22gを仕込み、攪拌下、90℃に昇温した。次いで攪拌下、90℃一定状態の重合反応系中に、DAM63g、酢酸24.1g及びBA22.5gからなるモノマー溶液1;V−50の5%水溶液31.9gからなる開始剤水溶液;18%アクリル酸(溶解性パラメータ:14.1)水溶液25.6gからなるモノマー溶液2をそれぞれ別々の滴下ノズルより滴下した。滴下開始時間に関して、モノマー溶液1は180分間、開始剤水溶液およびモノマー溶液2は210分間滴下した。全滴下終了後、さらに30分間反応溶液を90℃に保持して熟成し、重合を完結させ、共重合体11を得た。
得られた共重合体11の固形分は34.9%、pHは6.15、重量平均分子量は49,500であった。
【0111】
<実施例12>
温度計、還流冷却器、攪拌機を備えたガラス製のセパラブルフラスコに、純水14g、プロピレングリコール39gを仕込み、攪拌下、90℃に昇温した。次いで攪拌下、90℃一定状態の重合反応系中に、メタクリル酸2−(tert−ブチルアミノ)エチル(以下t−BDAMとも称す)34.0g、酢酸10.4g、水42.4gからなるモノマー溶液1;V−50の2.5%水溶液23.5gからなる開始剤水溶液;アクリル酸ブチル8gからなるモノマー溶液2をそれぞれ別々の滴下ノズルより滴下した。滴下開始時間に関して、モノマー溶液1は180分間、開始剤水溶液およびモノマー溶液2は210分間滴下した。全滴下終了後、さらに30分間反応溶液を90℃に保持して熟成し、重合を完結させ、共重合体12を得た。
得られた共重合体12の固形分は21.7%、pHは6.03、重量平均分子量は21,600であった。
【0112】
<実施例13>
温度計、還流冷却器、攪拌機を備えたガラス製のセパラブルフラスコに、純水14g、プロピレングリコール39gを仕込み、攪拌下、90℃に昇温した。次いで攪拌下、90℃一定状態の重合反応系中に、ジアリルジメチルアンモニウムクロライド(以下、DADMACとも称する。大阪ソーダ社製、固形分65.2%)110.4gからなるモノマー溶液1;V−50の5%水溶液29.3gからなる開始剤水溶液;アクリル酸ブチル18gからなるモノマー溶液2をそれぞれ別々の滴下ノズルより滴下した。滴下開始時間に関して、モノマー溶液1、2は180分間、開始剤水溶液およびモノマー溶液2は210分間滴下した。全滴下終了後、さらに30分間反応溶液を90℃に保持して熟成し、重合を完結させ、共重合体13を得た。
得られた共重合体13の固形分は39%、pHは5.6、重量平均分子量は5,100であった。
【0113】
<実施例14>
温度計、還流冷却器、攪拌機を備えたガラス製のセパラブルフラスコに、1,3−ブタンジオール70gを仕込み、攪拌下、90℃に昇温した。次いで攪拌下、90℃一定状態の重合反応系中に、DAM67.5g、EMA18gからなるモノマー溶液1:V−50 5%水溶液31.6gからなる開始剤水溶液、29%アクリル酸水溶液15.6gからなるモノマー溶液2をそれぞれ別々の滴下ノズルより滴下した。
滴下開始時間に関して、モノマー溶液1および2は180分間、開始剤水溶液およびモノマー溶液2は210分間滴下した。
全滴下終了後、さらに90分間反応溶液を90℃に保持して熟成し、重合を完結させた。純水113.8gを追加し、共重合体14を得た。
得られた共重合体14の固形分は27.7%、pHは9.0、重量平均分子量は29,100であった。
【0114】
<実施例15>
温度計、還流冷却器、攪拌機を備えたガラス製のセパラブルフラスコに、1,3−ブタンジオール60gを仕込み、攪拌下、90℃に昇温した。次いで攪拌下、90℃一定状態の重合反応系中に、DEAM81g、V−50の5%水溶液28.1gからなるモノマー溶液1:開始剤水溶液、42.4%アクリル酸水溶液21.3gからなるモノマー溶液2をそれぞれ別々の滴下ノズルより滴下した。全滴下終了後、さらに90分間反応溶液を90℃に保持して熟成し、重合を完結させた。純水60gを追加し、共重合体15を得た。
得られた共重合体15の固形分は32.9%、pHは8.8、重量平均分子量は22,100であった。
【0115】
<実施例16>
温度計、還流冷却器、攪拌機を備えたガラス製のセパラブルフラスコに、純水25g、プロピレングリコール50gを仕込み、攪拌下、90℃に昇温した。次いで攪拌下、90℃一定状態の重合反応系中に、DAM45g、酢酸20.6g及びBA42.3gからなるモノマー溶液1;V−50の10%水溶液26.2gからなる開始剤水溶液;20.3%AA水溶液13.4gからなるモノマー溶液2をそれぞれ別々の滴下ノズルより滴下した。滴下開始時間に関して、モノマー溶液1及びモノマー溶液2は140分間、開始剤水溶液は240分間、滴下した。全滴下終了後、さらに30分間反応溶液を90℃に保持して熟成し、重合を完結させ、純水50gを加えて共重合体16を得た。得られた共重合体16の固形分は31.4%、pHは5.7、重量平均分子量は68,800であった。
【0116】
<実施例17>
セパラブルフラスコにプロピレングリコール75gを仕込み、モノマー溶液1をDAM36g、酢酸16.5g、BA51.3gとしたこと以外は実施例16と同様にして共重合体17を得た。得られた共重合体17の固形分は32.1%、pHは5.7、重量平均分子量は18,700であった。
【0117】
<実施例18>
モノマー溶液1をDAM27g、酢酸12.4g、BA50.4、モノマー溶液2を24.8%AA水溶液 14.5g、開始剤水溶液を10%V−50水溶液24.6gとしたこと以外は実施例17と同様にして共重合体18を得た。得られた共重合体18の固形分は31%、pHは5.7、 重量平均分子量は12,000であった。
【0118】
<実施例19>
モノマー溶液1をDAM45g、酢酸20.6g、2EHA41.4g、モノマー溶液2を24.8%AA水溶液 14.5g、開始剤水溶液を10%V−50水溶液22.4gとしたこと以外は実施例18と同様にして共重合体19を得た。得られた共重合体19の固形分は31.1%、pHは5.6、重量平均分子量は15,000であった。
【0119】
<実施例20>
モノマー溶液1をDAM36g、酢酸16.5g、2EHA49.5g、モノマー溶液2を28.7%AA水溶液15.6gとしたこと以外は実施例19と同様にして共重合体20を得た。得られた共重合体20の固形分は31.3%、pHは5.6、重量平均分子量は16,600であった。
【0120】
<実施例21>
モノマー溶液1をDAM45g、クエン酸一水和物24.1g、イオン交換水18.1gBA42.3gからなるものに、モノマー溶液2を20.2%AA水溶液13.4g、開始剤水溶液を10%V−50水溶液26.2gとし、モノマー溶液2の滴下時間を100分、モノマー溶液3の滴下時間を140分としたこと以外は実施例20と同様にして共重合体21を得た。得られた共重合体21の固形分は33.6%、pHは5.8、 重量平均分子量は16,500であった。
【0121】
<実施例22>
セパラブルフラスコにイオン交換水80gを仕込み、モノマー溶液1をDMAPAA81g、酢酸24.9g、水45.4gからなるものに、モノマー溶液2をN−ビニルピロリドン(以下NVPとも称する)9gに、開始剤水溶液を10%V−50水溶液20.9gからなるものとし、モノマー1、2溶液の滴下時間を重合開始から120分、としたこと以外は実施例1と同様にして共重合体22を得た。得られた共重合体22の固形分は35.2%、pHは7.5、重量平均分子量は23,800であった。
【0122】
<実施例23>
セパラブルフラスコにプロピレングリコール80gを仕込み、モノマー溶液1としてDQ−100を36.0g計量し、脱イオン水25.2gで溶解させたものを用いた。開始剤水溶液をV−50の10%水溶液24.4gとし、モノマー溶液2としてBA54gとし、モノマー溶液の滴下時間を140分、モノマー溶液の滴下時間を100分としたこと以外は実施例1と同様にして重合を行い、共重合体23を得た。
得られた共重合体23の固形分は31.2%、pHは5.4、重量平均分子量は10,100であった。
【0123】
<実施例24>
セパラブルフラスコにプロピレングリコール100gを仕込み、モノマー溶液1としてDQ−100を18.0g計量し、脱イオン水12.6gで溶解させたものを用いた。開始剤水溶液をV−50の10%水溶液26.2gとし、モノマー溶液2としてBA72gとしたこと以外は実施例23と同様にして重合を行い、共重合体24を得た。
得られた共重合体24の固形分は30.9%、pHは6.0、重量平均分子量は7,600であった。
【0124】
<実施例25>
モノマー溶液2として2EHA54g、開始剤水溶液をV−50の10%水溶液19.3gとしたこと以外は合成例24と同様にして重合を行い、共重合体25を得た。
得られた共重合体25の固形分は33.4%、pHは4.9、重量平均分子量は8,000であった。
【0125】
<実施例26>
モノマー溶液2として2EHA 72gとしたこと以外は実施例23と同様にして重合を行い、共重合体26を得た。得られた共重合体26の固形分は31.5%、pHは5.6、重量平均分子量は5,200あった。
【0126】
<実施例27>
セパラブルフラスコに純水24g、プロピレングリコール72g仕込み、モノマー溶液1をDAM54g、酢酸20.6g及びBA36gとし、開始剤水溶液として2.5%V−50 32.5gとしたこと、及び、モノマー溶液2を用いないこと以外は実施例1と同様にして共重合体27を得た。
得られた共重合体27の固形分は35.2%、pHは6.7、重量平均分子量は22,000であった。
【0127】
<実施例28>
セパラブルフラスコに純水39g、プロピレングリコール71g仕込み、モノマー溶液1をDAM54g、酢酸20.6g及び2EHA36gとしたこと以外は実施例27と同様にして共重合体28を得た。得られた共重合体28の固形分は36.4%、pHは6.7、重量平均分子量は70,700であった。
【0128】
<実施例29>
セパラブルフラスコに純水26g、プロピレングリコール74g仕込み、モノマー溶液1をDAM54g、酢酸20.6g及びEMA36gとしたこと以外は実施例28と同様にして共重合体29を得た。得られた共重合体29の固形分は34.4%、pHは6.7、重量平均分子量は44,600であった。
【0129】
<実施例30>
セパラブルフラスコに純水26g、プロピレングリコール74g仕込み、モノマー溶液1をDAM54.0g、酢酸20.6g及びEMA36.0gとし、開始剤水溶液として15%V−50水溶液65.9gとしたこと以外は実施例29と同様にして共重合体30を得た。
得られた共重合体30の固形分は30.3%、pHは6.6、重量平均分子量は6,900であった。
【0130】
<実施例31>
セパラブルフラスコに純水26g、プロピレングリコール74g仕込み、モノマー溶液1をDAM51.3g、酢酸19.6g及びEMA36.0gとし、開始剤水溶液として15%V−50水溶液68g、モノマー溶液2を20.3%AA水溶液13.4gとしたこと以外は実施例16と同様にして共重合体31を得た。
得られた共重合体31の固形分は30.3%、pHは6.7、重量平均分子量は7,000であった。
【0131】
<実施例32>
セパラブルフラスコにプロピレングリコール75g、イオン交換水26g仕込み、モノマー溶液1をDAM51.3g、酢酸20.6g、BA36.0gとし、開始剤水溶液として15%V−50水溶液68g、モノマー溶液2として20.3%AA水溶液13.4gとしたこと以外は実施例16と同様にして重合を行い、共重合体32を得た。得られた共重合体32の固形分は28.1%、pHは6.5、重量平均分分子量は6,900であった。
【0132】
実施例1〜15において得られた共重合体1〜15及び、比較例1、2として塩化ベンザルコニウム、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロライド(HDACとも称する。)について、最小発育阻止濃度(MIC)の測定、殺菌性試験(time−kill test)、持続性評価(模擬洗濯試験)を行った。結果を表2に示した。以下の表中、Ecは大腸菌を、Saは黄色ブドウ球菌を表す。
【0133】
【表2】
【0134】
実施例16〜32において得られた共重合体16〜32について、最小発育阻止濃度(MIC)の測定を行った。結果を表3に示した。
【0135】
【表3】