特許第6871269号(P6871269)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6871269核形成剤としてフッ素樹脂/窒化ホウ素混合物を使用してポリオレフィン組成物を発泡させるためのプロセス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6871269
(24)【登録日】2021年4月19日
(45)【発行日】2021年5月12日
(54)【発明の名称】核形成剤としてフッ素樹脂/窒化ホウ素混合物を使用してポリオレフィン組成物を発泡させるためのプロセス
(51)【国際特許分類】
   C08J 9/04 20060101AFI20210426BHJP
   H01B 7/02 20060101ALI20210426BHJP
【FI】
   C08J9/04 107
   C08J9/04CES
   H01B7/02 G
【請求項の数】8
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2018-549473(P2018-549473)
(86)(22)【出願日】2016年3月28日
(65)【公表番号】特表2019-511608(P2019-511608A)
(43)【公表日】2019年4月25日
(86)【国際出願番号】CN2016077478
(87)【国際公開番号】WO2017166004
(87)【国際公開日】20171005
【審査請求日】2019年3月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】502141050
【氏名又は名称】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100128484
【弁理士】
【氏名又は名称】井口 司
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】ギャンウェイ・サン
(72)【発明者】
【氏名】モハメド・エセギエ
【審査官】 石塚 寛和
(56)【参考文献】
【文献】 特表2003−518185(JP,A)
【文献】 特開2001−031792(JP,A)
【文献】 特開2003−109441(JP,A)
【文献】 特表2004−525242(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 9/00−9/42
B29C 44/00−44/60、67/20
H01B 7/02−7/02、7/38−7/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
核剤として、フッ素樹脂対窒化ホウ素の重量比が1:1〜1:4の範囲内にあるフッ素樹脂と窒化ホウ素との組み合わせを使用して、ポリオレフィン組成物を発泡させるプロセスであり、前記ポリオレフィン組成物が、高密度ポリエチレン(HDPE)及び低密度ポリエチレン(LDPE)を含む、プロセス
【請求項2】
前記ポリオレフィン組成物が、HDPE及びLDPEからなる、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記HDPEが、前記ポリオレフィン組成物の総重量に基づいて、45〜95重量パーセントを占め、前記LDPEが、前記ポリオレフィン組成物の総重量に基づいて、4〜54重量パーセントを占める、請求項2に記載のプロセス。
【請求項4】
前記フッ素樹脂が、ポリテトラフルオロエチレン(「PTFE」)を含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項5】
前記フッ素樹脂及び窒化ホウ素が、前記ポリオレフィン組成物の総重量に基づいて、0.01〜1重量パーセントの範囲内の合計量で存在する、請求項1〜4のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項6】
発泡性組成物であって、前記組成物の総重量に基づく重量パーセントで、
(a)高密度ポリエチレン(HDPEを45〜95%、
(b)低密度ポリエチレン(LDPEを4〜54%、
(c)フッ素樹脂対窒化ホウ素の重量比が1:1〜1:4の範囲内にあるフッ素樹脂と窒化ホウ素とを組み合わせた核剤を0.01〜1%、含む、発泡性組成物。
【請求項7】
請求項6に記載の発泡性組成物から調製された、発泡体。
【請求項8】
請求項7に記載の発泡体を含む絶縁層を含む、ケーブル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の様々な実施形態は、ポリオレフィン組成物を発泡させるためのプロセスに関する。他の態様は、フッ素樹脂/窒化ホウ素の組み合わせの核形成剤を使用してポリオレフィン組成物を発泡させること、及びそこから作製される発泡された組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
典型的には、高周波数通信ケーブルの発泡された絶縁層はまず、核形成剤をポリマー(例えば、ポリエチレン)と混合することによって生成される。その後、結果として得られる発泡性組成物は、押出機の内側のポリマーに注入される物理的発泡剤(例えば、窒素、二酸化炭素、塩素化フッ化炭素、フロン、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン、及びラドンなどの気体)の存在下で押出される。そのような発泡のための核形成剤としては、アゾジカルボンアミド(「ADCA」)及び4,4’−オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジド(「OBSH」)を挙げることができ、これらは、押出機内で熱分解し、ポリマー溶融物中にいくつかの微細な核を形成する。しかしながら、分解されたADCA及びOBSHの副生成物は、高い極性を有し、これは、通信ケーブルの電気性能に対して著しい負の影響を有することが周知である(散逸因子)。
【0003】
ADCA及びOBSHと比較して、ポリテトラフルオロエチレン(「PTFE」)などのフッ素樹脂粉末は、電気性能に対して著しくより少ない影響を呈する核形成剤であり、ADCA及びOBSHに関連付けられる分解の問題を有さない。PTFEは、通信ケーブル内の絶縁体として使用するための組成物を発泡させるための核形成剤として使用されてきており、かつ現在も使用されているが、特に発泡性組成物(すなわち、ポリマーマトリックス)中での核形成剤の分散に関して、及び発泡された生成物中での小さい均一なサイズのセルの形成において、依然として改善が所望されている。
【発明の概要】
【0004】
一実施形態は、核剤として、4:1未満のフッ素樹脂対窒化ホウ素の重量比のフッ素樹脂と窒化ホウ素との組み合わせを使用して、ポリオレフィン組成物を発泡させるプロセスである。
【0005】
別の実施形態は、発泡性組成物であって、組成物の総重量に基づく重量パーセントで、
(a)45〜95%のHDPEと、
(b)4〜54%のLDPEと、
(c)0.1〜1%の、4:1未満のフッ素樹脂対窒化ホウ素の重量比のフッ素樹脂と窒化ホウ素との組み合わせとを含む、発泡性組成物である。
【発明を実施するための形態】
【0006】
本開示の様々な実施形態は、ポリオレフィンと、フッ素樹脂及び窒化ホウ素を含む核形成剤とを含む、発泡性組成物に関する。本開示の別の実施形態は、発泡された組成物を作製するためのプロセス、及びそのような発泡された組成物を含む製造物品に関する。
【0007】
ポリオレフィン
直前に記述した通り、本開示の発泡性で発泡された組成物は、ポリオレフィンを含む。「ポリオレフィン」及び類似の用語は、1つ以上の単純なオレフィンモノマー(例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、及び1−オクテンなど)に由来するポリマーを意味する。オレフィンモノマーは、置換または非置換であり得、置換である場合、置換基は多岐にわたり得る。ポリオレフィンが不飽和を含有する場合、コモノマーのうちの少なくとも1つは、例えば、1,7−オクタジエン、1,9−デカジエン、1,11−ドデカジエン、1,13−テトラデカジエン、7−メチル−1,6−オクタジエン、及び9−メチル−1,8−デカジエンなどの少なくとも1つの非共役ジエンであり得る。多くのポリオレフィンは、熱可塑性である。ポリオレフィンとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリイソプレン、及びそれらの様々なインターポリマーが挙げられるが、これらに限定されない。
【0008】
様々な実施形態において、ポリオレフィンは、1つ以上のエチレン系ポリマーを含むか、またはそれからなり得る。本明細書で使用される場合、「エチレン系」ポリマーは、主要(すなわち、重合前の重量に基づいて、50重量パーセント(「重量%」)超の)モノマー構成要素としてエチレンモノマーから調製されるポリマーであるが、他のコモノマーもまた用いられ得る。「ポリマー」は、同じ型または異なる型のモノマーを反応(すなわち、重合)させることによって調製される巨大分子化合物を意味し、ホモポリマー及びインターポリマーを含む。「インターポリマー」は、少なくとも2つの異なるモノマー型の重合によって調製されるポリマーを意味する。この総称は、コポリマー(通常、2つの異なるモノマー型から調製されるポリマーを指すように用いられる)ならびに3つ以上の異なるモノマー型から調製されるポリマー(例えば、ターポリマー(3つの異なるモノマー型)及びテトラポリマー(4つの異なるモノマー型))を含む。
【0009】
様々な実施形態において、エチレン系ポリマーは、エチレンホモポリマーであり得る。本明細書で使用される場合、「ホモポリマー」は、単一のモノマー型に由来する反復単位を含むポリマーを表すが、ホモポリマーを調製する上で使用される残存量の他の構成要素(触媒、開始剤、溶媒、及び連鎖移動剤など)を除外しない。
【0010】
一実施形態において、エチレン系ポリマーは、総インターポリマー重量に基づいて、少なくとも1重量%、少なくとも5重量%、少なくとも10重量%、少なくとも15重量%、少なくとも20重量%、または少なくとも25重量%のα−オレフィン含有量を有するエチレン/アルファ−オレフィン(「αオレフィン」)インターポリマーであり得る。これらのインターポリマーは、総インターポリマー重量に基づいて、50重量%未満、45重量%未満、40重量%未満、または35重量%未満のα−オレフィン含有量を有し得る。α−オレフィンが用いられる場合、α−オレフィンは、C3−20(すなわち、3〜20個の炭素原子を有する)直鎖状、分岐鎖状、または環状α−オレフィンであり得る。C3−20α−オレフィンの例としては、プロペン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、及び1−オクタデセンが挙げられる。α−オレフィンはまた、シクロヘキサンまたはシクロペンタンなどの環状構造を有し、3−シクロヘキシル−1−プロペン(アリルシクロヘキサン)及びビニルシクロヘキサンなどのα−オレフィンももたらし得る。例示的なエチレン/α−オレフィンインターポリマーとしては、エチレン/プロピレン、エチレン/1−ブテン、エチレン/1−ヘキセン、エチレン/1−オクテン、エチレン/プロピレン/1−オクテン、エチレン/プロピレン/1−ブテン、及びエチレン/1−ブテン/1−オクテンが挙げられる。
【0011】
様々な実施形態において、エチレン系ポリマーは、単独で、または1つ以上の他の型のエチレン系ポリマーとの組み合わせ(例えば、モノマー組成及び含有量、触媒調製法、分子量、分子量分布、密度などが互いに異なる2つ以上のエチレン系ポリマーのブレンド)で使用され得る。エチレン系ポリマーのブレンドが用いられる場合、ポリマーは、任意の反応器内または反応器後プロセスによってブレンドされ得る。
【0012】
一実施形態において、エチレン系ポリマーは、低密度ポリエチレン(「LDPE」)を含むか、またはそれからなり得る。LDPEは一般に、高度に分岐したエチレンホモポリマーであり、高圧プロセス(すなわち、HP−LDPE)を介して調製され得る。本明細書での使用に好適なLDPEは、0.91〜0.94g/cmの範囲の密度を有し得る。様々な実施形態において、LDPEは、少なくとも0.915g/cmであるが、0.94g/cm未満もしくは0.93g/cm未満である密度、または0.920〜0.925g/cmの範囲内である密度を有し得る。本明細書に提供されるポリマー密度は、ASTM International(「ASTM」)方法D792に従って決定される。本明細書での使用に好適なLDPEは、10分間当たり20グラム(「g/10分」)未満、もしくは0.1〜10g/10分、2〜8g/10分、4〜8g/10分の範囲のメルトインデックス(I)を有し得るか、または約6g/10分のIを有する。本明細書に提供されるメルトインデックスは、ASTM方法D1238に従って提供される。別段記述されない限り、メルトインデックスは、190℃及び2.16Kgで決定される(すなわち、I)。一般に、LDPEは、広い分子量分布(「MWD」)を有し、これは、比較的高い多分散性指数(「PDI」、つまり重量平均分子量対数平均分子量の比)をもたらす。
【0013】
好適な市販されているLDPEの一例としては、The Dow Chemical Company,Midland,MI,USAから入手可能なAXELERON(商標)CX B−1258NTが挙げられるが、これに限定されない。
【0014】
一実施形態において、エチレン系ポリマーは、直鎖状低密度ポリエチレン(「LLDPE」)を含むか、またはそれからなり得る。LLDPEは一般に、コモノマー(例えば、α−オレフィンモノマー)の均質な分布を有するエチレン系ポリマーであり、短鎖分岐を特徴とする。例えば、LLDPEは、上述したものなどの、エチレンモノマーとα−オレフィンモノマーとのコポリマーであり得る。本明細書での使用に好適なLLDPEは、1〜20g/10分または3〜8g/10分の範囲のメルトインデックス(I)を有し得る。
【0015】
一実施形態において、エチレン系ポリマーは、中密度ポリエチレン(「MDPE」)を含むか、またはそれからなり得る。MDPEは、一般に0.926〜0.940g/cmの範囲の密度を有するエチレン系ポリマーである。様々な実施形態において、MDPEは、0.930〜0.939g/cmの範囲の密度を有し得る。MDPEは、0.1g/10分、または0.2g/10分、または0.3g/10分、または0.4g/10分から、最大で5.0g/10分、または4.0g/10分、または3.0g/10分、または2.0g/10分、または1.0g/10分までの範囲のメルトインデックス(I)を有し得る。
【0016】
1つ以上の実施形態において、エチレン系ポリマーは、高密度ポリエチレン(「HDPE」)を含むか、またはそれからなり得る。本明細書での使用に好適な高密度ポリエチレンは、当該技術分野において既知であるか、または今後発見される任意の高密度ポリエチレンであり得る。当業者にとって既知であるように、HDPEは、少なくとも0.940g/cmの密度を有するエチレン系ポリマーである。一実施形態において、HDPEは、0.940〜0.980g/cm、0.950〜0.970g/cm、または0.960〜0.970g/cmの密度を有し得る。HDPEは、少なくとも124℃、または124〜135℃のピーク融解温度を有し得る。HDPEは、0.1g/10分、または0.2g/10分、または0.3g/10分、または0.4g/10分から、最大で66.0g/10分、または20.0g/10分、または15.0g/10分、または10.0g/10分までの範囲のメルトインデックス(I)を有し得る。様々な実施形態において、HDPEは、6.0〜10.0g/10分または7.0〜9.0g/10分の範囲内のメルトインデックス(I)を有し得る。また、HDPEは、ゲル浸透クロマトグラフィーによって決定される、1.0〜30.0の範囲内または2.0〜15.0の範囲内の多分散性指数(「PDI」)を有し得る。
【0017】
本明細書での使用に好適なHDPEは、単峰性または二峰性のいずれかであり得る。本明細書で使用される場合、「単峰性」は、そのゲル浸透クロマトグラフィー(「GPC」)曲線が単一のピークのみを呈し、そのような単一のピークと比較して、識別可能な第2のピークまたは肩もしくはコブさえもないような分子量分布(「MWD」)を有するHDPEを表す。対照的に、本明細書で使用される場合、「二峰性」は、GPC曲線のMWDが2つのピークを有すること、または一方の構成要素が、他方の構成要素ポリマーのピークと比較して、コブまたは肩によって示され得ることなどによって、2つの構成要素ポリマーの存在を呈することを意味する。様々な実施形態において、HDPEは、単峰性である。他の実施形態において、HDPEは、二峰性である。
【0018】
単峰性HDPEの調製法は、当該技術分野において周知である。所望される特性を有する単峰性HDPEを調製するための、既知であるか、または今後発見される任意の方法が、単峰性HDPEを作製するために用いられ得る。単峰性HDPEを作製するための好適な調製法は、例えば、米国特許第4,303,771号または同第5,324,800号に見出すことができる。
【0019】
市販されている単峰性LDPEの一例としては、The Dow Chemical Company,Midland,MI,USAから入手可能なAXELERON(商標)CX A−6944NTが挙げられるが、これに限定されない。
【0020】
用いられるHDPEが二峰性HDPEである場合、そのようなHDPEは、第1のポリマー構成要素及び第2のポリマー構成要を含み得る。様々な実施形態において、第1の構成要素は、エチレン系ポリマーであり得、例えば、第1の構成要素は、高分子量エチレンホモポリマーまたはエチレン/アルファ−オレフィンコポリマーであり得る。第1の構成要素は、任意の量の1つ以上のアルファ−オレフィンコポリマーを含み得る。例えば、第1の構成要素は、第1の構成要素の総重量に基づいて、10重量%未満の1つ以上のアルファ−オレフィンコモノマーを含み得る。第1の構成要素は、任意の量のエチレンを含み得、例えば、第1の構成要素は、第1の構成要素の総重量に基づいて、少なくとも90重量%のエチレンまたは少なくとも95重量%のエチレンを含み得る。
【0021】
二峰性HDPEの第1の構成要素中に存在するアルファ−オレフィンコモノマーは典型的には、20個以下の炭素原子を有する。例えば、アルファ−オレフィンコモノマーは、3〜10個の炭素原子または3〜8個の炭素原子を有し得る。例示的なアルファ−オレフィンコモノマーとしては、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、及び4−メチル−1−ペンテンが挙げられるが、これらに限定されない。一実施形態において、アルファ−オレフィンコモノマーは、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、及び1−オクテンからなる群から選択され得る。他の実施形態において、アルファ−オレフィンコモノマーは、1−ヘキセン及び1−オクテンからなる群から選択され得る。
【0022】
二峰性HDPEの第1の構成要素は、0.915〜0.940g/cm、0.920〜0.940g/cm、または0.921〜0.936g/cmの範囲内の密度を有し得る。第1の構成要素は、0.5〜10g/10分、1〜7g/10分、または1.3〜5g/10分の範囲内のメルトインデックス(I21.6)を有し得る。第1の構成要素は、150,000〜375,000g/mol、175,000〜375,000g/mol、または200,000〜375,000g/molの範囲内の分子量を有し得る。
【0023】
二峰性HDPEの第2のポリマー構成要素は、エチレン系ポリマーであり得、例えば、第2の構成要素は、低分子量エチレンホモポリマーであり得る。エチレンホモポリマーは、微量の混入コモノマー、例えば、アルファ−オレフィンコモノマーを含有し得る。様々な実施形態において、第2の構成要素は、第2の構成要素の重量に基づいて、1重量%未満の1つ以上のアルファ−オレフィンコモノマーを含み得る。例えば、第2の構成要素は、0.0001〜1.00重量%の1つ以上のアルファ−オレフィンコモノマーまたは0.001〜1.00重量パーセントの1つ以上のアルファ−オレフィンコモノマーを含み得る。第2の構成要素は、第2の構成要素の重量に基づいて、少なくとも99重量%のエチレンまたは99.5〜100重量%の範囲内のエチレンを含み得る。
【0024】
二峰性HDPEの第2の構成要素は、0.965〜0.980g/cmまたは0.970〜0.975g/cmの範囲内の密度を有し得る。第2の構成要素は、50〜1,500g/10分、200〜1,500g/10分、または500〜1,500g/10分の範囲内のメルトインデックス(I)を有し得る。第2の構成要素は、12,000〜40,000g/mol、15,000〜40,000g/mol、または20,000〜40,000g/molの範囲内の分子量を有し得る。
【0025】
二峰性HDPEの調製法は、当該技術分野において周知である。所望される特性を有する二峰性HDPEを調製するための、既知であるか、または今後発見される任意の方法が、二峰性HDPEを作製するために用いられ得る。二峰性HDPEを作製するための好適な調製法は、例えば、米国特許出願公開第2009/0068429号の段落[0063]〜[0086]に見出すことができる。
【0026】
市販されている二峰性HDPEの一例としては、The Dow Chemical Company,Midland,MI,USAから入手可能なDMDA−1250NTが挙げられるが、これに限定されない。
【0027】
一実施形態において、発泡性組成物のポリオレフィン構成要素は、任意の2つ以上の上述のエチレン系ポリマーの組み合わせを含み得る。
【0028】
様々な実施形態において、発泡性組成物のポリオレフィン構成要素は、HDPEとLDPEとの組み合わせを含み得る。
【0029】
1つ以上の実施形態において、発泡性組成物のポリオレフィン構成要素は、HDPEとLDPEとの組み合わせからなる。
【0030】
様々な実施形態において、発泡性組成物のポリオレフィン構成要素は、発泡性組成物の総重量に基づいて、49〜99重量%の範囲を占める。
【0031】
1つ以上の実施形態において、発泡性組成物は、発泡性組成物の総重量に基づいて、少なくとも45重量パーセント(「重量%」)の量、45〜95重量%、55〜85重量%、または60〜80重量%の範囲内のHDPEを含む。
【0032】
1つ以上の実施形態において、発泡性組成物は、発泡性組成物の総重量に基づいて、少なくとも4重量%の量、4〜54重量%、14〜44重量%、または19〜39重量%の範囲内のLDPEを含む。
【0033】
2つ以上のエチレン系ポリマーの組み合わせ(HDPEとLDPEとの組み合わせなど)がポリオレフィンとして用いられる場合、混合物またはブレンドは、例えば、ペレット化形態において所望される比率で乾燥ブレンドし、その後、スクリュー押出機またはBANBURY(商標)混合機などの装置内で溶融ブレンドすることなどの当該技術分野において既知である任意の好適な手段によって調製され得る。乾燥ブレンドされたペレットは、例えば、押出または射出成形によって、最終的な固体状態の物品へと直接溶融加工されてもよい。ブレンドはまた、直接重合によって作製されてもよい。直接重合は、例えば、1つ以上の触媒を、単一の反応器、または直列もしくは並列の2つ以上の反応器内で使用し、動作条件、モノマー混合物、及び触媒選択のうちの少なくとも1つを変動させてもよい。
【0034】
核剤
フッ素樹脂構成要素
既知であるか、または今後発見される任意のフッ素樹脂が、本明細書で用いられ得る。好適なフッ素樹脂の例としては、ポリテトラフルオロエチレン(「PTFE」)、テトラフルオロエチレン−ペルフルオロアルキルビニルエーテルコポリマー(「PFA」)、エチレン−テトラフルオロエチレンコポリマー(「ETFE」)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレンコポリマー(「FEP」)、テトラフルオロエチレン−エチレンコポリマー、ポリフッ化ビニリデン(「PVdF」)、ポリクロロトリフルオロエチレン(「PCTFE」)、及びクロロトリフルオロエチレン−エチレンコポリマー(「ECTFE」)などが挙げられるが、これらに限定されず、PTFE、PFA、及びETFEが好ましい。1つ以上の実施形態において、フッ素樹脂は、PTFEを含む。1つ以上の実施形態において、フッ素樹脂は、PTFEからなる。
【0035】
フッ素樹脂粒子、特に1ミクロン未満のサイズの粒子は、凝集する傾向にある。いくつかの市販されているフッ素樹脂粉末は、少なくとも5ミクロン(μm)のサイズ(例えば、直径)の高濃度の凝集体を含む。典型的には、凝集体のサイズは、2〜50ミクロン、より典型的には5〜20ミクロン、及び更により典型的には5〜15ミクロンの範囲である。典型的には、これらの粉末中の少なくとも5μmのサイズのフッ素樹脂凝集体の量は、少なくとも80%、より典型的には少なくとも82%、及び更により典型的には少なくとも85%である。これらの粉末は、多くのポリオレフィン(例えば、HDPE及び/またはLDPEなど)中で良好に分散しない。
【0036】
上述の凝集したフッ素樹脂粒子(すなわち、凝集体)は本発明で使用され得るが、一実施形態において、非凝集粒子が使用される。一実施形態において、核剤のフッ素樹脂構成要素は、1ミクロン未満のサイズ、または0.5ミクロン未満のサイズ、または0.3ミクロン未満のサイズの非凝集粒子であり、これは、元々のサブミクロンのサイズであったか、または1ミクロン超から1ミクロン未満へとサイズが縮小したかのいずれかである凝集体と混合され得る。一実施形態において、本発明の実施において使用される核剤のフッ素樹脂構成要素は、10重量%、または9重量%、または8重量%、または7重量%、または6重量%、または5重量%、または4重量%、または3重量%、または2重量%、または1重量%未満の1ミクロン超のサイズの凝集体を含むが、そのような凝集体の量がより少なく、故にサブミクロン粒子及びサブミクロン凝集体の量がより多いほど、ポリオレフィン中のフッ素樹脂の分散はより良好となり、発泡された生成物中のセルサイズはより均等に分布される。
【0037】
凝集した粒子は、任意の従来の手段、例えば、粉砕、混合、または(典型的には高速での)撹拌などによって互いに分離され得る。一実施形態において、1ミクロン以上、典型的には3、または4、または5ミクロン以上の凝集体を含むフッ素樹脂は、大部分、好ましくは60%、70%、80%、90%以上のそのような凝集体を、1ミクロン未満のサイズの非凝集粒子または1ミクロン未満のサイズの凝集体のいずれかへと縮小させる任意の手順、処理などに供されてから、核剤がポリオレフィンと混合される。
【0038】
一実施形態において、1ミクロン以上、典型的には3、または4、または5ミクロン以上の凝集体を含むフッ素樹脂はまず、核剤の窒化ホウ素構成要素ありまたはなしでポリオレフィンと混合されて、マスターバッチを形成し得、その後、このマスターバッチは、大部分、好ましくは60%、70%、80%、90%以上のそのような凝集体を、1ミクロン未満のサイズの非凝集粒子または1ミクロン未満のサイズの凝集体のいずれかへと縮小させる任意の手順、処理などに供され得る。典型的には、マスターバッチは、1〜50、より典型的には5〜50、及び更により典型的には15〜30重量%のフッ素樹脂と、50〜99、より典型的には60〜95、及び更により典型的には70〜85重量%のポリオレフィンとを含む。マスターバッチがフッ素樹脂サイズ縮小手順、処理などに供された後、マスターバッチは、発泡プロセスの開始前に、非凝集粒子及び凝集体をポリオレフィン中に均一に分散させる条件下及びそれに十分な期間、核剤の窒化ホウ素構成要素(それがその構成要素を既に含まない場合)及び発泡されるポリオレフィンと混合され得る。
【0039】
一実施形態において、1ミクロン以上、典型的には3、または4、または5ミクロン以上の凝集体を含むフッ素樹脂はまず、核剤の窒化ホウ素構成要素ありまたはなしで、発泡プロセスの実施に所望される量でポリオレフィンと混合され得、その後、ポリオレフィンは、発泡プロセスが開始する前に、(1)大部分、好ましくは60%、70%、80%、90%以上のそのような凝集体を、1ミクロン未満のサイズの非凝集粒子または1ミクロン未満のサイズの凝集体のいずれかへと縮小させ、かつ(2)これらの非凝集粒子及び縮小した凝集体をポリオレフィン中に実質的に均一に分散させる任意の手順、処理などに十分な時間供され得る。核剤の窒化ホウ素構成要素は、フッ素樹脂の添加前、それと同時、またはその後に、かつフッ素樹脂の凝集体がサイズ縮小に供される前または後に、ポリオレフィンに添加され得る。
【0040】
核剤、好ましくは1ミクロン未満のサイズの粒子及び凝集体を含むPTFEは、任意の従来の手段によって、HDPE及びLDPEを含むか、またはそれらから本質的になるポリオレフィン組成物に添加され得る。核剤は、そのままで、1つ以上の他の添加剤、例えば、酸化防止剤、セル安定剤などと組み合わせて、またはマスターバッチの一部として添加され得る。核剤は、ポリオレフィン組成物中の核剤の本質的に均質な分散を達成するようにポリオレフィン組成物と混合され、この目的のために、典型的には、押出機内での混合よりも、例えば、BUSS(商標)混練機の使用を通したバッチ混合が好ましい。核剤がまずポリオレフィン組成物と押出機内で混合される場合、それは典型的には、発泡のための気体注入前にポリオレフィン組成物に添加される。
【0041】
粒径は、当該技術分野において既知である任意の方法によって決定され得る。一実施形態において、フッ素樹脂粉末の粒径及び比率(数基準による%)の決定は、以下のように決定され得る。約35〜40kHzの超音波処理下で約2分間の分散処理によって得られたフッ素樹脂粉末と、エタノールとを含む分散体であって、フッ素樹脂粉末が、分散体のレーザー透過(出力光対入射光の比率)を70〜95%にする量で含有される、分散体を、相対屈折(決定は、フッ素樹脂粉末の回析比(約0.99)対エタノールの回析比の比に基づいて、またはその比に最も近い(例えば、1.02)上述の粒径分析器の測定に従って行われる)及び流動型セル測定モード下でマイクロトラック粒径分析器に供して、個々の粒子の粒径(D、D、D...)及び各粒径を有する粒子の数(N、N、N...)を、レーザーの光学回析に基づいて決定する。この場合、個々の粒子の粒径(D)は、様々な形状を有する粒子が対応する球の直径の観点から測定されるマイクロトラック粒径分析器によって自動的に測定される。したがって、粒径Dの比率(数基準による%)は、これらの粒子の数(N)対粒子全体の数(ΣN)のパーセンテージによって表される。0.1〜0.5μmの粒径を有する粒子の比率は、0.1〜0.5μmの粒径を有する粒子の数対既存の粒子の総数(ΣN)のパーセンテージによって表される。同様に、5μm以上の粒径を有する粒子の比率は、5μm以上の粒径を有する粒子の数対既存の粒子の総数(ΣN)のパーセンテージによって表される。一方、本発明の核剤の平均粒径は、以下の式に従って、既存の粒子の総数(ΣN)、及びそれぞれの粒子の粒径の三乗の積と既存の粒子の総数との合計(ΣND)を使用して計算され得る。
平均粒径(μm)=(ΣND/ΣN)1/3
粒径の計算は、USP6,121,335に更に例証される。凝集体サイズの計算は、粒径決定について上述した様式と同じ様式で決定される。
【0042】
フッ素樹脂粒子及び凝集体の形状は特に限定されないが、微細なセル及び優れた均一な発泡を含む発泡体を生成するために、粒子及び凝集体が主に球様の形状であることが好ましい。
【0043】
フッ素樹脂/窒化ホウ素混合物の核剤
上述した通り、核剤は、フッ素樹脂(例えば、PTFE)と窒化ホウ素との混合物である。フッ素樹脂対窒化ホウ素の重量比は、4:1未満であるか、または1:1〜1:4の範囲内であり得る。窒化ホウ素は、1〜50μm、10〜40μm、または25〜35μmの範囲内の粒径(D50)を有し得る粉末の形態で用いられ得る。
【0044】
発泡性組成物中に存在する核剤の量(すなわち、フッ素樹脂と窒化ホウ素との合計量)は、発泡性組成物の総重量に基づいて、0.01〜1重量%、0.05〜0.9重量%、0.1〜0.8重量%、0.3〜0.7重量%、または0.4〜0.6重量%の範囲内であり得る。様々な実施形態において、発泡性組成物中のフッ素樹脂と窒化ホウ素との合計量は、発泡性組成物の総重量に基づいて、約0.5重量%であり得る。
【0045】
様々な実施形態において、発泡性組成物中に存在するフッ素樹脂の量は、上記の比の制限を条件として、発泡性組成物の総重量に基づいて、0.01〜0.75重量%、0.05〜0.5重量%、または0.1〜0.25重量%の範囲内であり得る。
【0046】
様々な実施形態において、発泡性組成物中に存在する窒化ホウ素の量は、上記の比の制限を条件として、発泡性組成物の総重量に基づいて、0.01〜0.9重量%、0.1〜0.8重量%、または0.25〜0.4重量%の範囲内であり得る。
【0047】
核剤は、任意の従来の、または今後発見される手段によってポリオレフィン組成物に添加され得る。核剤は、そのままで、1つ以上の他の添加剤(例えば、酸化防止剤、セル安定剤など)と組み合わせて、またはマスターバッチの一部として添加され得る。核剤は典型的には、フッ素樹脂と窒化ホウ素との混合物として添加されるが、フッ素樹脂及び窒化ホウ素が別々に添加され、混合物が元の位置で形成されてもよい。核剤は、ポリオレフィン組成物中の核剤の本質的に均質な分散を達成するようにポリオレフィン組成物と混合され、この目的のために、例えば、Banbury Mixerまたは連続混合機(Farrel Continous Mixer(FCM)もしくは二軸スクリュー押出もしくはBUSS(商標)混練機など)の使用を通したバッチ混合。これらは典型的には、単軸スクリュー押出機内での混合よりも好ましい。核剤がまずポリオレフィン組成物と押出機内で混合される場合、それは典型的には、発泡のための気体注入前にポリオレフィン組成物に添加される。
【0048】
フッ素樹脂/窒化ホウ素核剤の使用は、核形成剤として単独でフッ素樹脂(特にPTFE)または窒化ホウ素のいずれかを使用して生成された生成物と比較して、より高い性能の生成物を生成する。生成物は、膨張比、セルサイズ、及びセルサイズ均一性、ならびに表面の滑らかさの観点から改良された特性を呈する。このハイブリッド核形成剤において、フッ素樹脂及び窒化ホウ素はともに、「受動」核形成剤である。これら2つの核形成剤間の相乗効果は、核形成剤として単独でそのままのフッ素樹脂またはそのままの窒化ホウ素を使用するプロセス、及びその使用によって生成される生成物と比較して、より高い核密度、及びより小さいセルサイズを有する発泡された生成物をもたらすが、但し、核剤構成要素が、4:1未満のフッ素樹脂対窒化ホウ素の重量比で存在することを条件とする。
【0049】
添加剤
本開示のポリオレフィン組成物は、必要に応じて、または所望される場合、1つ以上の添加剤を含有し得る。代表的な添加剤としては、加工助剤、潤滑剤、酸化防止剤、セル安定剤、発泡助剤、界面活性剤、流動助剤、粘度制御剤、着色剤、及び銅害阻害剤などが挙げられるが、これらに限定されない。これらの添加剤は、加工前または加工中のいずれかでポリマー(複数可)に添加され得る。ポリオレフィン組成物中の任意の特定の添加剤の量は典型的には、0.01〜1重量%、より典型的には0.01〜0.5重量%、及び更により典型的には0.01〜0.3重量%であり、ポリオレフィン組成物中の添加剤の総量は、少しでも存在する場合、典型的には0.01〜5重量%、より典型的には0.01〜2重量%、及び更により典型的には0.01〜1重量%である。
【0050】
1つ以上の実施形態において、発泡性組成物は、発泡性組成物の総重量に基づいて、0.01〜0.3重量%の範囲の量の酸化防止剤を含む。
【0051】
1つ以上の実施形態において、発泡性組成物は、発泡性組成物の総重量に基づいて、0.01〜0.3重量%の範囲の量のセル安定剤を含む。
【0052】
発泡剤
発泡剤は、押出温度、発泡条件、及び発泡体形成法などにとって好適な1つ以上のものである。最終形態の絶縁発泡体層が押出形成と同時に形成される場合、例えば、窒素、炭素ガス(例えば、CO、COなど)、ヘリウム、及びアルゴンなどの不活性気体、メタン、プロパン、ブタン、及びペンタンなどの炭化水素、例えば、ジクロロジフルオロメタン、ジクロロモノフルオロメタン、モノクロロジフルオロメタン、トリクロロモノフルオロメタン、モノクロロペンタフルオロエタン、及びトリクロロトリフルオロエタンなどのハロゲン化炭化水素が使用される。使用される発泡剤の量は、変動し得る。典型的には、それは、100重量部の発泡されるポリオレフィン組成物当たり0.001〜0.1重量部、より典型的には0.005〜0.05重量部である。発泡剤は、発泡性組成物と事前に混合されてもよく、または押出機のバレル上に形成された発泡剤供給口から押出機内に供給されてもよい。
【0053】
発泡プロセス
ポリオレフィン組成物は、既知であるか、または今後発見される方法及び設備を使用して発泡され得る。典型的には、発泡体は、核剤を含有するポリオレフィン組成物を、組成物が高圧区域にある間に、例えば、発泡剤の注入などの発泡押出条件下で動作される押出機を使用して押出し、その後、組成物を低圧区域に押出することによって生成される。発泡プロセスは、C.P.Park in Polyolefin Foam,Chapter9,Handbook of Polymer Foams and Technology,edited by D.Klempner and K.C.Frisch,Hanser Publishers(1991)に更に記載される。
【0054】
一実施形態において、典型的な押出発泡プロセスは、CA2523861C,Low Loss Foam Composition and Cable Having Low Loss Foam Layerに記載される通り、大気気体(例えば、CO)を使用して、発泡されたケーブル絶縁体を生成する。ポリマー溶融物中への発泡気体の溶解は、例えば、H.Zhang(下記)及び他者の研究において報告される通り、ヘンリーの法則によって支配される。可溶性は、飽和圧力と、それ自体が温度の関数であるヘンリーの法則定数との関数である。Zhang_Hongtao_201011_MASc_thesis.pdf.また、編者Shau−Tarng LeeによるFoam Extrusion:Principles and Practiceも参照されたい。MuCell(登録商標)マイクロセル発泡体射出成形技術は、商業的に実施される発泡プロセスの一例であり、それは一般に、USP6,284,810に記載される。
【0055】
発泡押出中の適切な圧力制御の重要性に関する上記のことを考慮して、好適なプロセスは、商業的にMuCell(登録商標)プロセスと称されるものであり、このプロセスでは、USP6,284,810に報告される通り、効果的な核形成のための特定のハードウェア設計を介して適切な圧力が構築される。この公開物に開示される方法は、「補助核形成剤」の不在下で、発泡気体の自己核形成のための高圧降下(dP/dt)にのみ依存する(4欄、25〜30行目)。
【0056】
発泡された組成物
結果として得られる発泡された組成物は、以下の試験方法の節に記載される通り、そのままのポリオレフィンの密度と発泡された組成物の密度とを比較することによって測定される、少なくとも70、少なくとも75、少なくとも77、または少なくとも78パーセントの発泡レベル(「多孔度」)を有し得る。様々な実施形態において、発泡された組成物の発泡レベルは、80パーセント未満であり得る。
【0057】
様々な実施形態において、発泡された組成物は、215μm未満、210μm未満、または207μm未満の平均セルサイズを有し得る。加えて、発泡された組成物は、少なくとも180μmまたは少なくとも190μmの平均セルサイズを有し得る。発泡された組成物の平均セルサイズは、以下の試験方法の節に提供される手順に従って決定される。
【0058】
様々な実施形態において、発泡された組成物は、少なくとも1cm当たり9.80E+04、少なくとも1cm当たり9.90E+04、少なくとも1cm当たり1.00E+05、または少なくとも1cm当たり1.05E+05のセル密度を有し得る。
【0059】
製造物品
一実施形態において、本開示の発泡性または発泡された組成物は、既知の量で、かつ既知の方法によって、例えば、USP5,246,783、USP6,714,707、USP6,496,629、及びUSPA2006/0045439に記載される設備及び方法で、ケーブル、ワイヤ、または伝導体に鎧装または絶縁層として適用され得る。典型的には、発泡された組成物は、ケーブルコーティングダイを備える反応器−押出機内で調製され得、組成物の構成要素が配合された後、組成物は、ケーブルまたは伝導体がダイを通して引き出されるにつれて、ケーブルまたは伝導体にわたって押出される。ポリオレフィン組成物の発泡は、ケーブルまたは伝導体にわたる押出時点で実行され得る。そのような実施形態において、押出は、発泡剤の活性化温度よりも高い温度で実行され得る。
【0060】
本開示の発泡されたポリマー組成物から調製され得る他の製造物品としては、ファイバー、リボン、シート、テープ、管、パイプ、目詰め材、シール、ガスケット、ホース、発泡体、敷き物の蛇腹、ボトル、及びフィルムが挙げられる。これらの物品は、既知の設備及び技術を仕様して製造され得る。
【0061】
定義
本明細書で使用される場合、「及び/または」という用語は、2つ以上の項目の一覧において使用される場合、列挙される項目のうちのいずれか1つがそれ自体で用いられ得るか、または列挙される項目のうちの2つ以上の任意の組み合わせが用いられ得ることを意味する。例えば、組成物が構成要素A、B、及び/またはCを含有するものとして記載される場合、この組成物は、A単独、B単独、C単独、AとBとの組み合わせ、AとCとの組み合わせ、BとCとの組み合わせ、またはAとBとCとの組み合わせを含有し得る。
【0062】
「ワイヤ」は、単一の撚線の伝導性金属(例えば、銅もしくはアルミニウム)または単一の撚線の光学ファイバーを意味する。
【0063】
「ケーブル」または「電力ケーブル」は、鎧装(例えば、絶縁被覆または保護外皮)内の少なくとも1つのワイヤまたは光学ファイバーを意味する。典型的には、ケーブルは、典型的には共通の絶縁被覆及び/または保護外皮内でともに結合された、2つ以上のワイヤまたは光学ファイバーである。鎧装の内側の個々のワイヤまたはファイバーは、むき出しになっていても、被覆されていても、または絶縁されていてもよい。組み合わせケーブルは、電気ワイヤ及び光学ファイバーの両方を含有し得る。ケーブルは、低、中、及び/または高電圧用途のために設計され得る。典型的なケーブル設計は、USP5,246,783、6,496,629、及び6,714,707に例証される。
【0064】
「伝導体」は、熱、光、及び/または電気を伝導するための1つ以上のワイヤ(複数可)またはファイバー(複数可)を表す。伝導体は、単一ワイヤ/ファイバーもしくは複数ワイヤ/ファイバーであってもよく、または撚線の形態もしくは管状の形態であってもよい。好適な伝導体の非限定的な例としては、銀、金、銅、炭素、及びアルミニウムなどの金属が挙げられる。伝導体はまた、ガラスまたはプラスチックのいずれかから作製された光学ファイバーであり得る。
【0065】
「組成物」及び類似の用語は、2つ以上の材料の混合物を意味する。
【0066】
「ポリオレフィン組成物」及び類似の用語は、本発明の文脈において、少なくとも1つのポリオレフィンを含む組成物を意味する。
【0067】
「核剤」、「核形成剤」、及び類似の用語は、本発明の文脈において、ポリマー溶融物内での気泡形成のための核形成部位または位置を提供する物質、典型的には小粒子を意味する。これらの核形成剤は、発泡ポリマーのセル構造を改良するために使用される。
【0068】
「凝集体」及び類似の用語は、ともに全体を構成する2つ以上の粒子群の収集物を意味する。凝集体は、様々なサイズのものであり得る。凝集体は、それが作製される粒子よりも常に大きいが、特定の凝集体に会合されないいくつかの粒子は、その凝集体よりも大きくあり得る。本発明の実施において、凝集体は、典型的に及び好ましくは1ミクロン未満のサイズ、より好ましくは0.5ミクロン未満、及び更により好ましくは0.3ミクロン未満のサイズである。
【0069】
「粒子」及び類似の用語は、単位質量を意味する。粒子は、様々なサイズのものであり得る。フッ素樹脂粒子、例えば、PTFE粒子は、フッ素樹脂の単位質量である。ともに群化された、すなわち、互いに接触している2つ以上のフッ素樹脂粒子は、フッ素樹脂凝集体を形成する。本開示のフッ素樹脂粒子は典型的には、1ミクロン未満、0.5ミクロン未満、または0.3ミクロン未満のサイズである。
【0070】
「非凝集粒子」及び類似の用語は、同種の別の粒子に会合されない粒子を意味する。非凝集粒子は、凝集体から解離した粒子及び凝集体に会合されていない粒子の両方を含む。
【0071】
「マスターバッチ」及び類似の用語は、担体樹脂中の添加剤の濃縮混合物を意味する。本発明の文脈において、マスターバッチは、ポリオレフィン樹脂中の核剤の濃縮混合物を含む。マスターバッチは、ポリオレフィンへの効率的な核剤の添加及びポリオレフィン中での分散を可能にする。マスターバッチの製造及び使用は、プラスチック及び発泡体物品の製造及び生産の技術分野の当業者にとって周知である。
【0072】
試験方法
多孔度(膨張比)
膨張比を、発泡の前後の試料の密度に基づいて計算する。発泡された物品及び固体プラークの密度を、ASTM D792に従って測定する。
【0073】
【数1】
【0074】
セル密度及び平均セルサイズ
発泡された試料を、液体窒素を利用して破砕し、その後、剃刀刃を使用して切片を切り取る。走査電子顕微鏡法(「SEM」)分析の前に、EMITECH(商標)K575Xコーティング機を使用して切片を白金でコーティングする。SEM画像を、FEI Nova NanoSEM630SEMで、エバハート・ソーンリー検出器(「ETD」)及びスルーレンズ検出器(「TLD」)によって、5kVの加速電圧、およそ6.5mmの作業距離、及び5のスポットサイズで取得する。平均セルサイズを、SEM写真の分析を通して得る。
【0075】
発泡された物品のセル密度は、以下の等式によって計算され得る:
【0076】
【数2】
【0077】
は、発泡された物品中の1立方センチメートル体積当たりのセル数を表し、nは、SEM写真の可視領域内のセル数であり、Aは、SEM写真の面積であり、Mは、倍率である。
【0078】
Dは、平均セルサイズであり、以下の等式によって計算され得る:
【0079】
【数3】
【0080】
式中、Vは、発泡された物品の膨張比を表す。
【0081】
材料
以下の実施例において、以下の材料が用いられる。
【0082】
高密度ポリエチレン(「HDPE」)は、AXELERON(商標)CX A−6944NTであり、8g/10分のメルトインデックス(I)(ASTM D1238、条件190℃/2.16kg)、0.965g/cmの密度(ASTM D792)を有し、The Dow Chemical Company,Midland,MI,USAから市販されている。
【0083】
低密度ポリエチレン(「LDPE」)は、AXELERON(商標)CX B−1258NTであり、6g/10分のメルトインデックス(I)(ASTM D1238、条件190℃/2.16kg)、0.922g/cmの密度(ASTM D792)を有し、The Dow Chemical Company,Midland,MI,USAから市販されている。
【0084】
ポリテトラフルオロエチレン(「PTFE」)は、10μmの粒径(D50)を有し、Chemours Company,Wilmington,DE,USAから入手可能な白色の流動性PTFEである、ZONYL(商標)MP1400である。
【0085】
窒化ホウ素は、32μmの粒径(D50)を有する微細な球状粒子である、CARBOTHERM(商標)CTS2Mであり、Saint−Gobain Group,La Defense,Courbevoie,Franceから入手可能である。
【実施例】
【0086】
発泡プロセス
機体注入系を有する単軸スクリュー押出機で、物理的発泡実験を実行する。スクリュー直径は50ミリメートル(mm)であり、長さ対直径(L/D)の比は40である。機体注入点は、COを発泡剤として有して、スクリューの中央に位置する。温度プロファイルは、140/175/180(気体注入)/170/145(静的混合機)/143(ダイ)である。HDPE、LDPE、及び核形成剤粉末をまず乾燥ブレンドし、その後、押出機の上流に供給する。発泡された生成物を、棒の形状で得る。
【0087】
実施例
以下の表1に提供される配合及び上述の発泡プロセスに従って、7つの比較試料(CS1〜CS7)及び3つの試料(S1〜S3)を調製する。上記に提供される試験方法に従って、それらを分析する。結果を以下の表1に提供する。
【0088】
【表1】
【0089】
上記の表1に提供される結果は、PTFEの窒化ホウ素との組み合わせが、そのままのPTFEまたは窒化ホウ素のいずれよりも良好な発泡性能(例えば、より微細なセルサイズ及びより高いセル密度)を有することを示す。発泡に対するPTFEとBNとの間の相乗効果が、観察され得る。PTFE対BNの比が4:1未満である場合、より一層良好な発泡性能が達成され、最良の性能は重量に基づいて1:1〜1:4の範囲のPTFE対BN比で達成される。
本願発明には以下の態様が含まれる。
項1.
核剤として、4:1未満のフッ素樹脂対窒化ホウ素の重量比のフッ素樹脂と窒化ホウ素との組み合わせを使用して、ポリオレフィン組成物を発泡させるプロセス。
項2.
前記フッ素樹脂対窒化ホウ素の重量比が、1:1〜1:4の範囲内にある、項1に記載のプロセス。
項3.
前記ポリオレフィン組成物が、高密度ポリエチレン(「HDPE」)及び低密度ポリエチレン(「LDPE」)を含む、項1または項2に記載のプロセス。
項4.
前記ポリオレフィン組成物が、HDPE及びLDPEからなる、項1〜3のいずれか1項に記載のプロセス。
項5.
前記HDPEが、前記ポリオレフィン組成物の総重量に基づいて、45〜95重量パーセントを占め、前記LDPEが、前記ポリオレフィン組成物の総重量に基づいて、4〜54重量パーセントを占める、項4に記載のプロセス。
項6.
前記フッ素樹脂が、ポリテトラフルオロエチレン(「PTFE」)を含む、項1〜5のいずれか1項に記載のプロセス。
項7.
前記フッ素樹脂及び窒化ホウ素が、前記ポリオレフィン組成物の総重量に基づいて、0.01〜1重量パーセントの範囲内の合計量で存在する、項1〜6のいずれか1項に記載のプロセス。
項8.
発泡性組成物であって、前記組成物の総重量に基づく重量パーセントで、
(a)45〜95%のHDPEと、
(b)4〜54%のLDPEと、
(c)0.01〜1%の、4:1未満のフッ素樹脂対窒化ホウ素の重量比のフッ素樹脂と窒化ホウ素との組み合わせと、を含む、発泡性組成物。
項9.
項8に記載の発泡性組成物から調製された、発泡体。
項10.
項9に記載の発泡体を含む絶縁層を含む、ケーブル。