(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6871276
(24)【登録日】2021年4月19日
(45)【発行日】2021年5月12日
(54)【発明の名称】流体製品吐出装置
(51)【国際特許分類】
B65D 83/00 20060101AFI20210426BHJP
A61M 5/31 20060101ALI20210426BHJP
B05C 5/00 20060101ALI20210426BHJP
【FI】
B65D83/00 K
A61M5/31 534
B05C5/00 101
【請求項の数】10
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2018-557805(P2018-557805)
(86)(22)【出願日】2017年5月2日
(65)【公表番号】特表2019-515848(P2019-515848A)
(43)【公表日】2019年6月13日
(86)【国際出願番号】FR2017051036
(87)【国際公開番号】WO2017191400
(87)【国際公開日】20171109
【審査請求日】2020年4月6日
(31)【優先権主張番号】1654057
(32)【優先日】2016年5月4日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】502343252
【氏名又は名称】アプター フランス エスアーエス
(74)【代理人】
【識別番号】110001900
【氏名又は名称】特許業務法人 ナカジマ知的財産綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】プチ リュドビック
【審査官】
石田 宏之
(56)【参考文献】
【文献】
特表2019−521050(JP,A)
【文献】
特表2019−520979(JP,A)
【文献】
特開平04−322662(JP,A)
【文献】
特開平11−137686(JP,A)
【文献】
特開2000−202026(JP,A)
【文献】
国際公開第2012/67141(WO,A1)
【文献】
国際公開第2015/151692(WO,A1)
【文献】
特開2014−4041(JP,A)
【文献】
実開昭58−182749(JP,U)
【文献】
特開平11−226122(JP,A)
【文献】
米国特許第6708846(US,B1)
【文献】
米国特許第8734392(US,B2)
【文献】
欧州特許出願公開第1504783(EP,A1)
【文献】
特開2001−113210(JP,A)
【文献】
特開平6−70980(JP,A)
【文献】
仏国特許出願公開第2970955(FR,A1)
【文献】
特表2001−524384(JP,A)
【文献】
特表2001−509070(JP,A)
【文献】
国際公開第2010/139883(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 83/00
A61M 5/31
B05C 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体吐出装置であって、
流体を収容している容器(20)を固定する本体(10)と、
前記容器(20)に対して軸方向に移動可能に、前記本体(10)上に組み付けられた吐出ヘッド(30)を備え、
前記吐出ヘッド(30)は、
吐出口(31)と、
作動中に、ユーザーの指のうち少なくとも1本、一般的には2本を受け止める近接側押圧面(35)とを有し、
前記本体(10)は、作動中に、ユーザーの指のうち1本、一般的には親指を受け止める遠位側押圧面(15)を有し、
前記流体吐出装置は、前記遠位側押圧面(15)において前記本体(10)に取り外し可能に固定される作動部材(40)を有し、
前記作動部材(40)の径方向寸法は、前記押圧面(15)の径方向寸法よりも大きい
ことを特徴とする流体吐出装置。
【請求項2】
前記容器(20)は、流体を1回分収容している
請求項1に記載の流体吐出装置。
【請求項3】
前記容器(20)は、流体を2回分収容している
請求項1に記載の流体吐出装置。
【請求項4】
前記作動部材(40)は、前記本体(10)、具体的には前記遠位側押圧面(15)周辺に、取り外し可能に、具体的には摩擦によって係合した中空の軸方向スリーブ(41)を有する
請求項1から請求項3までの何れか1項に記載の流体吐出装置。
【請求項5】
前記作動部材(40)は、前記本体(10)の前記遠位側押圧面(15)に対して径方向外側に突出する、例えば円盤である径方向フランジ(42)を有する
請求項1から請求項4までの何れか1項に記載の流体吐出装置。
【請求項6】
前記作動部材(40)は、熱可塑性エラストマー(TPE)などの可撓性の材料からなる
請求項1から請求項5までの何れか1項に記載の流体吐出装置。
【請求項7】
前記本体(10)と前記吐出ヘッド(30)との間に、阻止手段及び/又は予圧手段(50)をさらに備える
請求項1から請求項6までの何れか1項に記載の流体吐出装置。
【請求項8】
前記阻止手段及び/又は予圧手段(50)は、断裂可能ブリッジである
請求項7に記載の流体吐出装置。
【請求項9】
前記遠位側押圧面(15)の面積は、100平方ミリメートル(mm2)より小さく、望ましくは80mm2より小さく、さらに望ましくは約60mm2である
請求項1から請求項8までの何れか1項に記載の流体吐出装置。
【請求項10】
前記作動部材(40)の面積は、150mm2より大きく、望ましくは220mm2より大きく、さらに望ましくは515mm2である
請求項1から請求項9までの何れか1項に記載の流体吐出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体吐出装置に関し、具体的には、1回分の流体のみを収容している1回分吐出型装置、及び、2回分の流体のみを収容している2回分吐出型装置に関する。
【背景技術】
【0002】
1回分吐出型装置、及び2回分吐出型装置は周知である。こうした装置は一般的には、容器と吐出ヘッドを備える。容器は、1回分又は2回分の流体を収容している。吐出ヘッドは、流体を吐出するために、容器に対して、具体的には容器の中で摺動するピストンを介して、移動可能である。容器は本体内に組み付けられ、ヘッドは本体上に組み付けられてもよい。特許文献1及び特許文献2は、こうした種類の装置を開示している。偶発的な作動を防ぐために、装置には一般的には阻止手段が設けられている。阻止手段は、例えば断裂可能ブリッジであり、装置を作動させるには、この断裂可能ブリッジを乗り越えること及び/又は断裂することが必要となる。同様に、装置には一般的には予圧手段が設けられる。予圧手段を乗り越えるのに必要な力によって、完全な作動ストロークを保証するために必要なエネルギーが確実に提供され、完全な量の流体が確実に吐出される。望ましくは、阻止手段と予圧手段は同じ部材、一般的には断裂可能ブリッジである。
【0003】
こうした従来の装置の欠点は、装置の作動が、具体的には断裂可能ブリッジなどの予圧手段及び/又は阻止手段が設けられている場合に、困難になることである。これは、容器及び/又は本体の径方向寸法、具体的にはユーザーが手動で押圧する押圧面の面積が小さい場合に特に当てはまる。この他には、装置が軸方向に作動しなかった場合に、動作不良が起こったり不完全な量の流体しか吐出されなかったりするリスクが生じるという欠点もある。
【0004】
特許文献3、特許文献4、特許文献5、特許文献6、特許文献7、特許文献8、特許文献9、特許文献10、特許文献11、特許文献12、及び特許文献13は、従来技術における装置を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第8,734,392号明細書
【特許文献2】仏国特許発明2,970,955号明細書
【特許文献3】米国特許第6,708,846号明細書
【特許文献4】国際公開第02/102443号
【特許文献5】欧州特許第0,546,607号明細書
【特許文献6】欧州特許第1,504,783号明細書
【特許文献7】独国特許発明第200,22,559号明細書
【特許文献8】欧州特許第2,896,421号明細書
【特許文献9】国際公開第99/28042号
【特許文献10】独国特許発明第197,00,437号明細書
【特許文献11】米国特許第6,321,942号明細書
【特許文献12】英国特許第2,412,326号明細書
【特許文献13】国際公開第2010/139883号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、上記の欠点を有さない装置を提供することである。
【0007】
本発明の別の目的は、より容易に作動する装置を提供することである。
【0008】
本発明の別の目的は、製造及び組立を容易かつ安価に行うことができる装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
従って、本発明は、流体吐出装置であって、流体を収容している容器を固定する本体と、前記容器に対して軸方向に移動可能に、前記本体上に組み付けられた吐出ヘッドを備え、前記吐出ヘッドは、吐出口と、作動中に、ユーザーの指のうち少なくとも1本、一般的には2本を受け止める近接側押圧面とを有し、前記本体は、作動中に、ユーザーの指のうち1本、一般的には親指を受け止める遠位側押圧面を有し、前記流体吐出装置は、前記遠位側押圧面において前記本体に取り外し可能に固定される作動部材を有し、前記作動部材の径方向寸法は、前記押圧面の径方向寸法よりも大きい流体吐出装置を提供する。
【0010】
望ましくは、前記容器は、流体を1回分収容している。
【0011】
変形例においては、前記容器は、流体を2回分収容している。
【0012】
望ましくは、前記作動部材は、前記本体、具体的には前記遠位側押圧面周辺に、取り外し可能に、具体的には摩擦によって係合した中空の軸方向スリーブを有する。
【0013】
望ましくは、前記作動部材は、前記本体の前記遠位側押圧面に対して径方向外側に突出する、例えば円盤である径方向フランジを有する。
【0014】
望ましくは、前記作動部材は、熱可塑性エラストマー(TPE)などの可撓性の材料からなる。
【0015】
望ましくは、前記本体と前記吐出ヘッドとの間に、阻止手段及び/又は予圧手段をさらに備える。
【0016】
望ましくは、前記阻止手段及び/又は予圧手段は、断裂可能ブリッジである。
【0017】
望ましくは、前記遠位側押圧面の面積は、100平方ミリメートル(mm
2)より小さく、望ましくは80mm
2より小さく、さらに望ましくは約60mm
2である。
【0018】
望ましくは、前記作動部材の面積は、150mm
2より大きく、望ましくは220mm
2より大きく、さらに望ましくは515mm
2である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
これらの特徴、利点、及びその他の事項は、非限定的な例として以下に示す詳細な説明及び添付図面を参照することにより、さらに明確となる。
【
図1】本発明が適用される吐出装置の模式斜視図である。
【
図2】望ましい実施形態における取り外し可能な作動部材の詳細斜視図である。
【
図3】
図2の作動部材を有する
図1の装置の、作動前の様子を示す模式断面図である。
【
図4】
図3に類似した、吸入後の様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の説明において、「軸方向」及び「径方向」という用語は、
図3及び
図4に示す装置の長手軸に対する位置を示す。「近接側」及び「遠位側」という用語は、吐出口に対する位置を示す。
【0021】
本発明の流体吐出装置は、周知技術同様に、流体を収容した容器20を固定する本体10を備える。本体10上には、吐出ヘッド30が、容器20に対して軸方向に移動可能に組み付けられる。吐出ヘッド30は、吐出口31を有する。
【0022】
周知技術同様に、吐出ヘッド30は、作動中に、ユーザーの指のうち少なくとも1本、一般的には2本を受け止める近接側押圧面35を有する。同様に、本体10は、作動中に、ユーザーの指のうち1本、一般的には親指を受け止める遠位側押圧面15を有する。
【0023】
容器20内には、ピストン25が摺動可能に設けられている。作動中、吐出ヘッドが本体10に、ひいては容器20に対して軸方向に移動している間に、ピストン25は吐出ヘッド30によって移動する。
【0024】
本発明においては、装置は、遠位側押圧面15において本体10と協働する取り外し可能な作動部材40を有する。具体的には、作動部材40は本体10に、取り外し可能に固定される。作動部材40の径方向寸法は、押圧面15の径方向寸法よりも大きい。望ましくは、遠位側押圧面15の面積は100平方ミリメートル(mm
2)よりも小さく、具体的には80mm
2よりも小さく、さらに具体的には約60mm
2である。一方、作動部材の面積は、望ましくは150mm
2より大きく、具体的には220mm
2より大きく、さらに具体的には約515mm
2である。この構成によって、ユーザーの親指と作動中の装置との間の接触面積が増加し、親指が及ぼす作動力を押圧面のより広い面積に分布させるので、装置の作動が容易となる。本発明の装置においては、より多くの作動力を受け取れるようにすることにより、完全な作動ストロークも容易に伝達される。これは、例えば作動ストロークが長かったり流体の粘性が高かったりして名目吐出量が大きい場合に特に望ましい。
【0025】
望ましくは、作動部材40は、中空の軸方向スリーブ41を有する。軸方向スリーブ41は本体10に、取り外し可能に、具体的には摩擦によって、係合する。
図1、
図3、及び
図4からわかるように、軸方向スリーブ41は、本体10の遠位側押圧面15周辺に係合するのが望ましい。任意に、中空の軸方向スリーブ41は、作動部材40の係合と取り外しを容易にするための、リブなどの締め付け突起を有してもよい。
【0026】
作動部材40は、望ましくは径方向フランジ42を有する。径方向フランジ42は、例えば円盤であり、本体10の遠位側押圧面15に対して径方向外側に突出する代替押圧面となり、親指との接触面積を増加させる。
【0027】
偶発的な作動を回避し、作動中にユーザーの手の中で予圧を生成するために、装置は望ましくは阻止手段及び/又は予圧手段50を有する。阻止手段及び/又は予圧手段50は望ましくは、本体10とヘッド30との間に配された断裂可能ブリッジである。当然のことながら、他の阻止手段及び/又は予圧手段も考えられる。さらに、予圧手段は、阻止手段とは別の部材であってもよい。
【0028】
本体10の基部に作動部材40を付加することによって、ユーザーの親指とより大きな表面積で接触する結果、ユーザーがかける力をより多く受け止めることができる。
【0029】
作動部材40は本体から取り外し可能であるため、ユーザーは作動部材40を使用するかしないかを選択することができる。
【0030】
作動部材40は、熱可塑性エラストマー(TPE)などの比較的可撓性の高い材料からなるのが望ましい。作動部材40は、具体的には以下のような数々の利点を有する。
・ユーザーの親指と適切に接触する。
・本体10への組み付け、及び締め付けによる保持が容易である。
【0031】
作動部材40はさらに、本体10からの取り外しが不可能な構成と比べて、以下の利点を有する。
・作動後にユーザーが引っ張ることによって、本体10から簡単に取り外すことができる。したがって、作動後に装置を分解して装置内に残留する流体を取り出すために用いることはできない。
・材料が可撓性を有するため、ユーザーが作動部材40を本体の軸方向に押さなかった場合、本体10から外れてしまう。これによって作動部材40が傾くことが回避され、動作不良が起こったり吐出が不完全になったりするリスクが抑えられる。
【0032】
本発明は特に、1回分の流体のみを収容している1回分吐出型装置、及び2回分の流体のみを収容している2回分吐出型装置に適用される。
【0033】
以上、本発明を望ましい実施形態を参照しながら説明したが、添付の請求項によって規定された本発明の範囲を超えない限り、当業者による他の有用な変形も可能である。