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特許6871278電磁誘導コンロ、及び電磁誘導コンロの作製方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6871278
(24)【登録日】2021年4月19日
(45)【発行日】2021年5月12日
(54)【発明の名称】電磁誘導コンロ、及び電磁誘導コンロの作製方法
(51)【国際特許分類】
   H05B 6/12 20060101AFI20210426BHJP
   H01F 17/00 20060101ALI20210426BHJP
   H01F 17/04 20060101ALI20210426BHJP
   H01F 37/00 20060101ALI20210426BHJP
【FI】
   H05B6/12 308
   H01F17/00 B
   H01F17/04 A
   H01F37/00 L
   H01F37/00 D
【請求項の数】33
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2018-565464(P2018-565464)
(86)(22)【出願日】2017年2月28日
(65)【公表番号】特表2019-512860(P2019-512860A)
(43)【公表日】2019年5月16日
(86)【国際出願番号】IB2017051157
(87)【国際公開番号】WO2017149445
(87)【国際公開日】20170908
【審査請求日】2019年12月11日
(31)【優先権主張番号】102016000022070
(32)【優先日】2016年3月2日
(33)【優先権主張国】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】518312529
【氏名又は名称】アイ アール シー エイ エス ピー エイ−インダストリア レジステンツェ コラッツァーテ エ アフィニ
【氏名又は名称原語表記】I.R.C.A. S.P.A. − INDUSTRIA RESISTENZE CORAZZATE E AFFINI
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100198568
【弁理士】
【氏名又は名称】君塚 絵美
(72)【発明者】
【氏名】フェデリコ ゾッパス
(72)【発明者】
【氏名】ファブリーツィオ デュイエロ
【審査官】 田中 友章
(56)【参考文献】
【文献】 特表2012−526387(JP,A)
【文献】 米国特許第6144019(US,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0199027(US,A1)
【文献】 米国特許第5369249(US,A)
【文献】 独国特許出願公開第102005056501(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 6/12
H01F 17/00
H01F 17/04
H01F 37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱される少なくとも1つの鍋を使用中に配置することができる上側主面(15)、及び下側主面(16)がある本体(14)と、
前記下側主面(16)で前記本体(14)に結合した少なくとも1つのインダクタ(2)と、
を備える電磁誘導コンロであって、
前記電磁誘導コンロは、前記本体(14)の前記下側主面(16)に固定された可撓体(9)をさらに備え、
前記可撓体(9)は、第1の電気絶縁層(4)及び第2の層(20)を交互に備え、
前記第2の層(20)それぞれは、少なくとも1つの電気伝導トラック(5)を備え、
前記少なくとも1つのインダクタ(2)は、異なる第2の層(20)に位置付けられ、電気的に互いに直列及び/又は並列に接続された複数の前記電気伝導トラック(5)を備え、前記上側主面(15)に実質的に垂直な中心軸線の周りで同一方向に延在する複数のループを形成し、
前記可撓体(9)の可撓性は、前記可撓体(9)が前記本体(14)の前記下側主面(16)の形状に適合することができるようであり、前記本体(14)の前記形状により、前記可撓体(9)は、実質的に平坦である全体形状を有することができるか、又は下側主面(16)の形状によって実質的に規定された1つ以上の凹所/凸所を有するより複雑な形状を有することができることを特徴とする、電磁誘導コンロ。
【請求項2】
請求項1に記載の電磁誘導コンロであって
複数のインダクタ(2)を備え、
前記第2の層(20)それぞれは、各インダクタ(2)のための少なくとも1つの別々の電気伝導トラック(5)を備え、
各インダクタ(2)は、異なる第2の層(20)に位置付けられ、電気的に互いに直列及び/又は並列に接続された複数の電気伝導トラック(5)を備え、前記上側主面(15)に実質的に垂直な中心軸線の周りで同一方向に延在する複数のループを形成する、電磁誘導コンロ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の電磁誘導コンロであって、
前記可撓体(9)は、可撓性であって、少なくとも部分的に強磁性材料からなる成層基部(17)をさらに備え、
各インダクタ(2)は、前記本体(14)と前記成層基部(17)との間に位置付けられる、電磁誘導コンロ。
【請求項4】
請求項3に記載の電磁誘導コンロであって、
前記強磁性材料は、粉末状又は細粒状であり、前記成層基部(17)は、前記強磁性材料が埋め込まれている電気絶縁基盤を備えるか、又は、
前記成層基部(17)は、前記強磁性材料からなる第3の層と、電気絶縁性である第4の層とを備え、前記第3の層は、各インダクタ(2)と前記第4の層との間に位置付けられる、電磁誘導コンロ。
【請求項5】
請求項4に記載の電磁誘導コンロであって、
第1の代替において、前記強磁性材料はフェライトであり、及び/又は前記電気絶縁基盤は加硫処理されたシリコーンゴム系材料から構成され、又は、
第2の代替において、前記強磁性材料はフェライトであり、前記第3の層は前記強磁性材料の塗料からなり、及び/又は前記第4の層は加硫処理されたシリコーンゴム系材料からなる、電磁誘導コンロ。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載の電磁誘導コンロであって、
前記可撓体(9)は、前記本体(14)の近傍に設けられた、前記下側主面(16)に面する前記第1の層(4)の1つを有する、電磁誘導コンロ。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載の電磁誘導コンロであって、
前記可撓体(9)は、前記本体(14)に接着しているか、又は、前記本体(14)に機械的に拘束されている、電磁誘導コンロ。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項に記載の電磁誘導コンロであって、
前記本体(14)は、積層構造を有し、前記上側主面(15)は、少なくとも前記可撓体(9)で前記下側主面(16)に平行である、電磁誘導コンロ。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか一項に記載の電磁誘導コンロであって、
第2の層(20)それぞれは、各インダクタ(2)のための、電気的に連続して前記中心軸線の周りで半回転又は半回転より少ない回転で延在する複数の電気伝導トラック(5)を備え、前記インダクタの各ループは、2つ以上の第2の層(20)にわたって延在する、電磁誘導コンロ。
【請求項10】
請求項1から8のいずれか一項に記載の電磁誘導コンロであって、
第2の層(20)それぞれは、各インダクタ(2)のための、電気的に連続して前記中心軸線の周りで複数回転で延在する、前記インダクタ(2)の複数のループを規定する少なくとも1つの電気伝導トラック(5)を含む、電磁誘導コンロ。
【請求項11】
各ループは、並列に接続された複数の電気伝導トラック(5)を備える、請求項1から10のいずれか一項に記載の電磁誘導コンロ。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか一項に記載の電磁誘導コンロであって、
前記可撓体(9)の前記第2の層(20)は、前記第2の層(20)に隣接する前記第1の層(4)に貼着されている、電磁誘導コンロ。
【請求項13】
請求項1から12のいずれか一項に記載の電磁誘導コンロであって、
1つ以上の温度センサ、1つ以上の近接センサ若しくは接触センサ、又は他のセンサを備え、
前記センサは、前記可撓体(9)に挿入されている、電磁誘導コンロ。
【請求項14】
請求項13に記載の電磁誘導コンロであって、
1つ以上の前記センサは、1つ以上の第2の層(20)内で作製された1つ以上の電気伝導トラック(5)からなるか、1つ以上の第2の層(20)内で作製された1つ以上の電気伝導トラック(5)を備える、電磁誘導コンロ。
【請求項15】
請求項1から14のいずれか一項に記載の電磁誘導コンロであって、
前記上側主面(15)は平坦であるか、1つ以上の凹所及び/又は凸所を備える、電磁誘導コンロ。
【請求項16】
請求項1から15のいずれか一項に記載の電磁誘導コンロであって、
第1の電気絶縁層(4)それぞれは、加硫処理されたシリコーンゴム系材料、ポリイミド、又はアラミド紙からなる、又は加硫処理されたシリコーンゴム系材料、ポリイミド、又はアラミド紙を含む、電磁誘導コンロ。
【請求項17】
請求項1から16のいずれか一項に記載の電磁誘導コンロであって、
第1の電気伝導層(4)それぞれは、25μmから250μmまでの厚さである、電磁誘導コンロ。
【請求項18】
電磁誘導コンロを作製するための方法であって、
第1の電気絶縁層(4)、及び前記第1の層(4)に貼着されている1つ以上の別々の電気伝導トラック(5)を備える第2の層(20)をそれぞれ備える複数の可撓性モジュール(3)を生成するステップと、
2つの連続する第2の層(20)の間に少なくとも1つの第1の層(4)を常に挟むように、前記複数の可撓性モジュール(3)をともに重ねて結合させることによって可撓体(9)を生成するステップと、
前記電気伝導トラック(5)を直列及び/又は並列にともに電気的に接続させ、前記第1の層(4)の延在方向に実質的に垂直な中心軸線の周りで同一方向に延在する複数のループを形成することによってインダクタ(2)を生成するステップと、
堅くて、上側主面(15)及び下側主面(16)を備える本体(14)を得るステップと、
前記可撓体(9)を前記下側主面(16)に当てて、前記中心軸線が前記本体(14)の前記上側主面(15)に実質的に垂直になるように、前記可撓体(9)を前記本体(14)に拘束させるステップと、
を含み、
前記可撓体(9)を前記下側主面(16)に当てるステップにおいて、前記可撓体(9)は、前記可撓体(9)の可撓性のために前記本体(14)の前記下側主面(16)の形状に適合され、前記本体(14)の前記形状に応じて、前記本体に拘束された前記可撓体(9)は、実質的に平坦である全体形状を有することができるか、又は下側主面(16)の形状によって実質的に規定された1つ以上の凹所/凸所を有するより複雑な形状を有することができる、方法。
【請求項19】
請求項18に記載の方法であって、
前記複数の可撓性モジュールを生成するステップは、第2の層(20)各々が、対応する前記第1の層(4)の前記延在方向に実質的に垂直な各中心軸線を各々中心とした複数の所定の区域(18)に位置付けられる複数の別々の電気伝導トラック(5)を備えるように実装され、所定の区域(18)各々の前記中心軸線は、全ての前記可撓性モジュール(3)内に同じ共通の配置を有し、
前記可撓性モジュール(3)をともに重ねて結合させることによって可撓体(9)を生成するステップは、可撓性モジュール(3)各々の中心軸線を一致させることによって実装され、
前記電気伝導トラック(5)を直列及び/又は並列にともに電気的に接続させるステップは、各中心軸線で独立して繰り返され、各中心軸線でインダクタ(2)を生成する、方法。
【請求項20】
請求項18又は19に記載の方法であって、
前記可撓性モジュール(3)それぞれを順に生成するステップは、
第1の電気絶縁シート(6)及び第2の電気伝導シート(7)を結合させるステップと、
前記第2のシート(7)の一部における全厚みを取り除いて前記第2のシートから前記1つ以上の電気的伝導トラック(5)を作製し、前記第1のシート(6)によって形成された前記第1の層(4)に貼着させるステップと、を順に含む、方法。
【請求項21】
請求項20に記載の方法であって、
前記取り除くステップは、エッチング技術を用いて実装される、方法。
【請求項22】
請求項18又は19のいずれか一項に記載の方法であって、
可撓性モジュール(3)それぞれを順に生成するステップは、伝導性インクの堆積によって直接、前記電気伝導トラック(5)を、前記第1の層(4)を形成する第1の電気絶縁シート(6)にプリントするステップを含む、方法。
【請求項23】
請求項18から22のいずれか一項に記載の方法であって、
各中心軸線において、可撓性モジュール(3)各々は、電気的に互いに絶縁され、半回転又は半回転より少ない回転による前記中心軸線の周りで各々延在する複数の電気伝導トラック(5)とともに作製されるか、又は、複数回転により前記中心軸線の周りで電気的に連続して延在する、少なくとも1つの電気伝導トラック(5)とともに作製される、方法。
【請求項24】
請求項18から23のいずれか一項に記載の方法であって、
可撓性モジュール(3)各々の前記電気伝導トラック(5)を電気的に互いに接続させるステップは、一の可撓性モジュール(3)に属する電気伝導トラック(5)を異なる可撓性モジュール(3)に属する電気伝導トラック(5)に接続させるステップを含む、方法。
【請求項25】
請求項24に記載の方法であって、
前記中心軸線に平行な軸線に沿って前記伝導トラック(5)の端部を配列させ、同じ端部で、それらの間に含まれる可撓性モジュール(3)、及びそれらの間に積層される任意の可撓性モジュール(3)を通る孔(10)を作製し、前記孔(10)内に電気接続を生成することによって、異なる可撓性モジュール(3)に配置される電気伝導トラック(5)間の電気接続が作製され、前記電気接続は、例えば、前記孔を金属化するか、又は前記孔(10)に液体金属を注ぐかによって生成される、方法。
【請求項26】
請求項18から25のいずれか一項に記載の方法であって、
前記可撓体(9)を生成するステップは、前記複数の結合した可撓性モジュール(3)のための成層基部(17)を生成するステップであって、前記可撓性モジュール(3)は、可撓性であり、少なくとも部分的に強磁性材料からなる、ステップをさらに含み、
前記可撓体(9)を前記下側主面(16)へ拘束させるステップは、前記結合した可撓性モジュールが前記本体(14)と前記成層基部(17)との間に位置付けられたままで行われる、方法。
【請求項27】
請求項26に記載の方法であって、
前記成層基部(17)を生成するステップは、
粉末状又は細粒状の前記強磁性材料を得るステップと、
前記強磁性材料を電気絶縁基盤内に埋め込むステップと、を含む動作ステップか、又は、
前記強磁性からなる第3の層を生成するステップと、
前記第3の層を、前記複数の結合した可撓性モジュール(3)の第1の層(4)に当てるステップと、
前記第3の層を電気絶縁性の第4の層で覆うステップと、を含む動作ステップを含む、方法。
【請求項28】
請求項27に記載の方法であって、
第1の代替において、フェライトが前記強磁性材料として用いられ、及び/又は前記電気絶縁基盤は加硫処理されたシリコーンゴム系材料からなり、又は、
第2の代替において、フェライトが前記強磁性材料として用いられ、前記第3の層は、前記強磁性材料を吹きかけることによって前記第1の層(4)に当てられ、及び/又は、第4の層は、加硫処理されたシリコーンゴム系材料からなる、方法。
【請求項29】
請求項18から28のいずれか一項に記載の方法であって、
第1の電気伝導層(4)各々は、加硫処理されたシリコーンゴム系材料、ポリイミド、又はアラミド紙からなり、又は加硫処理されたシリコーンゴム系材料、ポリイミド、又はアラミド紙を備える、方法。
【請求項30】
請求項18から29のいずれか一項に記載の方法であって、
第1の電気絶縁層(4)各々は、25μmから250μmまでの厚さである、方法。
【請求項31】
請求項18から30のいずれか一項に記載の方法であって、
個々の可撓性モジュール(3)の間に1つ以上のセンサを挟むステップを含み、前記1つ以上のセンサは、温度センサ、近接センサ、接触センサ、又は他のセンサである、方法。
【請求項32】
請求項18から31のいずれか一項に記載の方法であって、
1つ以上の第2の層(20)内に1つ以上の電気伝導トラック(5)を、可撓体(9)内に1つ以上のセンサが挿入されるように作製するステップを含み、前記1つ以上のセンサは、前記1つ以上の電気伝導トラック(5)からなるか、又は前記1つ以上の電気伝導トラック(5)を含む、方法。
【請求項33】
請求項18から32のいずれか一項に記載の方法によって得られる電磁誘導コンロ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電磁誘導コンロ、及び電磁誘導コンロの作製方法に関する。本発明の文脈において、「コンロ」という用語は、市場に出る(すなわち、制御インターフェース、及び/又は電子制御デバイスを配備した)完成品を指すことができ、また、完成品における能動部品だけ、すなわち機械構造部及びインダクタのみを備える部品だけを指すこともできる点に留意されたい。
【背景技術】
【0002】
周知のとおり、電磁誘導コンロは、昔ながらのガスレンジ又は発熱体調理器の代替となるシステムであり、鍋の強磁性の底に直接、熱を発生させることができる。
【0003】
通常、電磁誘導コンロは、加熱される鍋を配置することができる上面(コンロ又はトップとしても一般的に知られている)を有する本体を備える。市場でのほとんどの電磁誘導コンロにおいて、本体は、電気的に絶縁性の平坦シートと、(ガラス、セラミック、又はガラス−セラミックのような)反磁性材料とから構成されるが、特に、専門的な調理部門においては、本体が他の形状を有するコンロ、例えば、中華鍋を最適に収容するよう設計された、本体が上部に凹所を有するコンロがある。
【0004】
1つ以上のインダクタは、有利には均一な厚さを有する本体の他の面に当てられると、通常、本体の上面に垂直な中心軸線の周りに巻かれるループからなる。ほとんどの場合、インダクタは、中心軸線から徐々に離れて動く軌跡に沿って連続して延在するループによる全体的ならせん形状(円又は矩形)を有する。
【0005】
コンロに対するインダクタの位置について、昔ながらの実施形態では、インダクタは、通常、ガスレンジの位置のように、いくつかの特定の位置のみにあるが、より最近の多くの実施形態では、コンロ上のどこにでも鍋を配置することを可能にする電子制御技術が紹介されてきた。その技術によれば、本体の低い面全体は、(使用可能な区域で)比較的小さいインダクタで実質的に覆われており、比較的小さいインダクタは、互いに独立して作動することができる。コンロがオンにスイッチされると、電子制御システムは、通常、作動し、関連する電気インピーダンスのチェックにしたがって、強磁性の「負荷」に結合するこれらのインダクタに排他的に動力を供給することができる。
【0006】
伝統的な技術において、電磁誘導コンロは、通常、4つから6つのインダクタを備えるが、ここで説明される技術では、数ダースあってもよい。
【0007】
構造的及び構成的な用語において、留意されるべき2つの重要な要素がある。その一つは、本体に対するインダクタの正しい位置決め(特に、正確に制御され、時間の経過に伴い変化しないままでいなければならない距離に関する)である。もう一つは、システム、特には、通常はガラス又はセラミック材料のような壊れやすい材料からなる本体の頑丈性である。そのため、本体に対するインダクタの衝撃のいかなる可能性も回避されなければならない。
【0008】
実際に、実用的な公知の商業用途の全てにおいて、各インダクタは、通常はリッツ線で作製されるループと、本体に対してインダクタの反対側に配置されるフェライトディスク又は複数のフェライトブロックで普通は構成されるフローコンセントレーターとの両方を支持する支持構造を備える剛性物体である。
【0009】
従来技術によれば、電磁誘導コンロを構築する2つの主な方法がある。
【0010】
第1の方法は、支持フレームによって硬く支持され、グラスウールのような熱絶縁材料の層で覆われているインダクタと、その絶縁層上で実質的に封じ込められている本体とを含み、これにより、インダクタと本体とが互いに相対的に動くのを防ぐ。
【0011】
一方、第2の方法は、本体に面し、本体の下面に対応する形状を有し、当該下面当該下面に直に載せられる面を有するインダクタを含む。2つの剛性本体部の間の接触による本体の破損のリスクを回避するために、この場合も、インダクタは、インダクタとフレームとの間に挟まれる予圧バネを用いて、支持フレームに取付けられる。バネは、本体に対してインダクタを押圧し、移動中の偶発的な衝撃からの反動を減衰させる。
【0012】
従来技術の構築方法のいずれも、特に、コンロが多数のインダクタを備えるより複雑な場合、ほぼ必然的にかなりの労力を必要とするため、相対的にどれほど複雑で高価であるかは、容易に理解できることである。
【0013】
第二に、上述したデバイス構成にも関わらず、それらが設計される方法のために、従来技術のコンロには、常に、かなりの破損リスクがある。そのため、力の規制に要する耐衝撃抵抗を保証するために、本体の厚さは、相対的に厚い値より薄くすることができなかった。
【0014】
さらに、関連する構造が複雑である場合、従来技術の電磁誘導コンロは、相対的に、重くて大きい物体である。
【0015】
最後に、科学的なレベルにおいて、HES-13 Heating by Electromagnetic Sources の245ページの、I.Lopeらによる記事「Printed circuit board inductors for domestic induction heating」は、通常のリッツ線インダクタの代替としてプリント回路基板内に集積させたインダクタの家庭用としての潜在的な使用にも論及しているが、産業上の見地から顕著な結果を伴うものではないことは明らかである点に留意されたい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】I.Lopeら著、「Printed circuit board inductors for domestic induction heating」、HES-13 Heating by Electromagnetic Sources、245ページ
【発明の概要】
【0017】
本文脈において、本発明の基礎を形成する技術的目的は、上述した不都合を解消する電磁誘導コンロ及び電磁誘導コンロを作製する方法を提供することである。
【0018】
特に、本発明の技術的目的は、従来技術の方法より簡単で、同時に、従来技術のコンロより衝撃による影響の少ないコンロを作製することを可能とする電磁誘導コンロを作製する方法を提供することである。
【0019】
本発明の技術的目的は、現在、市場にある電磁誘導コンロより軽く、より扱いやすい電磁誘導コンロを提供することでもある。
【0020】
特定される技術的目的、及び提示される狙いは、添付の特許請求の範囲に記載されたような電磁誘導コンロ及び電磁誘導コンロの作製方法によって実質的に達成することができる。
【0021】
本発明のさらなる特徴及び利点は、電磁誘導コンロ、及び電磁誘導コンロの作製方法におけるいくつかの好適で非限定的な実施形態を例示する添付の図面を参照した詳細な説明においてより明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明により作製された電磁誘導コンロの構造の概略側面図である。
図2】本発明による、コンロを作製するために利用可能な可撓性モジュール内のインダクタの配置に関する、第1の可能なレイアウトの概略平面図である。
図3】本発明による、コンロを作製するために利用可能な可撓性モジュール内のインダクタの配置に関する、第2の可能なレイアウトの概略平面図である。
図4】本発明による、コンロを作製するために利用可能な可撓性モジュール内のインダクタの配置に関する、第3の可能なレイアウトの概略平面図である。
図5】電磁誘導コンロを作製するための、本発明による方法の第1のステップの概略側面図である。
図6】本発明による方法の第2のステップの断面における概略側面図である。
図7】本発明による方法の第3のステップの結果の断面における概略側面図である。
図8】本発明による方法の第4のステップの断面における概略側面図である。
図9】本発明による方法の可能な第5のステップの断面における概略側面図である。
図10図10は、本発明による方法の可能な第6のステップの、図11と交換可能な概略断面図である。
図11図11は、本発明による方法の可能な第6のステップの、図10と交換可能な概略断面図である。
図12】本発明による方法の可能な実施形態により作製されたインダクタの概略的な例である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
添付の図面を参照して、数字の1は、本発明によって作製された電磁誘導コンロ全体を示す。
【0024】
全体の説明をより明確にするために、以降において、まず、本発明による方法を説明し、その後、本方法を用いて作製することができる電磁誘導コンロ1を説明する。以降において、本発明の方法及びコンロ1をそれぞれ参照して提供される全ての情報は、可能な限り、コンロ1及び方法それぞれを参照して検討される。
【0025】
その最も一般的な実施形態において、本発明による電磁誘導コンロ1を作製する方法によって、任意数のインダクタを有するコンロ1を作製することができる。そのため、本方法は、以下において、まず、単一のインダクタ2を配備したコンロ1を作製する事例を参照して本方法を説明し、続いて、2つ以上のインダクタ2がある場合に変化することのみを説明する。
【0026】
本発明は、まず、可撓性モジュール3を生成するステップを含み、各可撓性モジュール3は、第1の電気絶縁(及び好ましくは反磁性)層4と、1つ以上の別々の電気伝導トラック5を含む、第1の層4に貼着されている第2の層20とを備える。すなわち、各可撓性モジュール3において、第1の層4は、1つ以上の高電気伝導体が延在する支持部を構成する。各電気伝導トラック5は、軌道に沿って延在し、軌道は、多くの異なる形状を採用することができる。例えば、軌道は、(以下でより詳細に説明される)図2及び3に例示された軌道のような、通常のパンケーキインダクタ2、又はその一部(例えば、中心の周りでのおよそ半回転又は4分の1回転に相当)に相当してもよい。しかし、以降の説明からより明らかになるように、通常、各電気伝導トラック5の延在部の軌道は、少なくとも、本明細書で説明される方法の最後に得られるインダクタ2となる、ループ又はその一部を有する主作動部(端部又は電気接続区間で例外があるかもしれない)に一致する。
【0027】
さらに、有利には、各電気伝導トラック5は、(それぞれ第1の層4に貼着する大きな側部又は大きな底部を有する)実質的に矩形又は台形の断面を有する。さらに、多くの用途において、単一の可撓性モジュール3における電気伝導トラック5の形状は、それが「破線内」で、パンケーキ型のような従来のインダクタ2の典型的な形状に似ているようにすることができる(「破線」の各「区間」がループのほぼ半分に相当する図12を参照)。
【0028】
材料について、第1の層4は、加硫処理されたシリコーンゴム系材料、米国のデュポン社による商標Kapton(登録商標)で販売されているようなポリイミド、又はふたたび米国のデュポン社による商標Nomex(登録商標)で販売されているようなアラミド紙からなるか、又は、当該アラミド紙を含むことができる。さらに、特定の接着剤(有利には、少なくとも200℃、好ましくは220℃の最高温度に耐えることができるシリコーン、アクリル)を第1の層4に用いることができる。この接着剤は、第1の層4と電気伝導トラック5の接続を可能とするように設計される。電気伝導トラック5には、有利には、例えば、銅、アルミニウム、又は伝導性インクのような非強磁性の金属材料が用いられる。
【0029】
厚さについて、現在の好適な実施形態において、第1の層4の厚さは、25μmから250μmの間で、電気伝導性トラック5の厚さは25μmから300μmの間で、接着剤の厚さは12μmから100μmの間で変えることができる。
【0030】
本発明による方法の第1の好ましい実施形態において、各可撓性モジュール3を生成するステップは、第1の層4を形成する第1の電気絶縁シート6を第2の電気伝導シート7に結合するステップと、局所的に電気伝導トラック5がないように意図される全区域内の第2のシート7の全厚みを取り除くことによって、第2のシート7から1つ以上の、第1の層4に貼着する電気伝導トラック5を得るステップと、を順に含む。
【0031】
第1のシート6(有利には、第1のシート6上の接着剤とともに)と第2のシートを結合するステップは、好ましくは冷間又は熱間圧延(図5)によって得ることができる。
【0032】
一方、第2のシート7を局所的に取り除くことは、有利には、金属のエッチング技術(公知であり、そのため、詳細には説明しない)を用いて行うことができる。すなわち、まず、電気伝導トラック5が得られるところだけで、第2のシート7を保護材料8(図6)で局所的に覆い(図8)、そのようにして局所的に保護された第2のシートに、浸食によって金属材料を完全に取り除く(通常は侵漬又は吹付けによる)化学的処理を受けさせる(選択された処理は、金属のみに波及しなければならず、電気絶縁層及び保護材料8に波及してはならない。それ故、例えば、塩化鉄が用いられる)。有利には、保護材料8は、得られる電気伝導トラック5で、(上述した化学的処理に対する)化学的な腐食に耐久性があり、他の区域では耐久性がないように、適切に処理された感光性フィルムのエッチングにおける公知の方法で構成される。いったん、第2のシート7全体が関連区域において取り除かれると、要求に応じて、後続の化学的処理を行うことができ、行わなくてもよい。後者は、保護材料8を取り除くための攻撃性における異なるレベルを有する(そのため、この第2の処理は、保護材料にのみ有効でなければならず、金属及び第1の層4に有効であってはならない)。図7に、得られる最終製品が概略的に例示されているが、接着剤は、示されず。電気伝導トラック5の断面は、矩形であるとして示されており、一方、実際には、第1の化学的処理にさらされるため、矩形の短辺に台形を画定する角があり、あるいは、いずれの場合も、頂部に向けて収束する。
【0033】
本発明の方法による代わりの好ましい実施形態において、各可撓性モジュール3を生成するステップは、伝導性インクを堆積させることによって、電気伝導トラック5を、第1の層4を形成する第1の電気絶縁シート6に、直接、プリントするステップを含む(電気伝導トラック5は、そのため、インクプリンティングプロセスによって第1の層4に実質的にプリントされる)。
【0034】
有利には、可撓性モジュール3は、すでに正確な最終サイズである第1のシート6から作製することができ、又は、好ましくは第1のシート6は、第2のシート7の設置後であって、電気伝導トラック5の形成前又は後に、連続した印刷用紙から切り取る/切ることによって得られる。
【0035】
要求に応じて、可撓性モジュール3は、該可撓性モジュール3が全て同じように、あるいは可撓性モジュール3が異なる電気伝導トラック5を有するように作製することができる。
【0036】
最後に、各電気伝導トラック5は、インダクタ2のループの能動部品とするよう意図した、必要であれば端部が拡張した、該インダクタ2が部品となる1つの主区間のみを有してもよく、又は、主区間から離れた関連する電気伝導トラック5との電気接触をもたらし、連続した電気接続を容易にする、主区間の端部に接続される1つ以上の補助的な区間を有しもよい。
【0037】
本発明による方法は、少なくとも1つの第2の層4が常に、2つの連続する第2の層20(図8)の間に位置するように、予め生成された複数の可撓性モジュール3を重ねて結合することによって可撓体9を生成するステップもさらに含む。
【0038】
可撓性モジュール3を重ねるステップも、好ましくは、(以下でより詳細に説明されるように、電気伝導トラック5同士の電気接続を容易にするために)電気伝導トラック5が互いに対して所定の位置に位置づけられるように実行される。
【0039】
有利には、可撓性モジュール3の間を結合するステップは、第1の層4と各層の電気伝導トラック5を接続するために用いられる添加剤と同一の又は類似の添加剤を用いて、可撓性モジュール3を互いに接着させることによって達成される。
さらに、好ましくは、可撓性モジュール3が可撓性であり、可撓性モジュール3が相対的に限定的な厚さであることにより、結合後に第1の層4の各々は、可撓性モジュール3の基礎がある電気伝導トラック5と、そして可能であれば可撓性モジュール3の第1の層4ともに接着する。
【0040】
最後に、好ましくは、可撓体9は、重なった可撓性モジュール3のパックを塞ぐように配置される(さらなる第1の層4のような)追加の電気絶縁層も備える(図1)。
【0041】
有利には、前述したように、可撓体9が生成された後、本方法は、電気伝導トラック5を互いに直列及び/又は並列に電気接続させて複数のループを形成し、これによりインダクタ2を生成する動作ステップを含む。特に、ループは、第1の層4の延在部分の主面に実質的に垂直な中心軸線の周りで同一方向に延在するように接続される。少なくとも様々な可撓性モジュール3の設計段階で、第2の層20各々の電気伝導トラック5が周りで延在する中心軸線が一致するように行われる電気伝導トラック5を作製するステップ中と、可撓性モジュール3を重ねるステップの次のステップ中とで、中心軸線が検討されることにも留意されたい。
【0042】
各可撓性モジュール3が、1つ以上のループをそれ自体で形成する単一の電気伝導トラック5を備え、様々な可撓性モジュール3の電気伝導トラック5が実際上、(少なくとも関連する主区間について)同じである最も簡易な実施形態において、全て互いに直列又は並列に接続させてインダクタ2を得るだけ十分である。
【0043】
一方、各層の電気伝導トラック5がループの一部のみを各々形成する(例えば、中心軸線の周りで半回転又は半回転より少ない回転で延在する)とき、有利には、各電気伝導トラック5を他の可撓性モジュール3の電気伝導トラック5に排他的に、直接、接続させることによって、それらは接続される。さらに、通常、使用中に不所望な接近の影響を最小にし、電気伝導トラック5の断面全体において電流分布が可能な限り最も均一とするためにループを構成するように、様々な電気伝導トラック5が接続される。
【0044】
図9から図11に例示されているように、好ましい実施形態によれば、有利には、中心軸線に平行な軸線に沿って電気伝導トラック5の端部を配列させ、同じ端部で、可撓性モジュール3(及びそれらの間に重なった任意の可撓性モジュール3)を通る孔10を作製し(図9)、例えば、図10に例示されているように孔10を金属にすることによって(コーティング11を参照)、あるいは、図11に示されているように液体金属12を孔10に注ぐことによって孔10内に電気接続を生成することによって、異なる可撓性モジュール3上に位置する電気伝導トラック5の端部間を接続することができる。
【0045】
図12に、説明のみによって提供される、インダクタ2のループを生成するために電気伝導トラック5を互いに接続する方法の一例が示される。この例において、3つの重なった可撓性モジュール3があり、各可撓性モジュール3は、複数の電気伝導トラック5を配備している(明確のために、図12は、電気伝導トラック5のみを示し、第1の層4を示していない)。各可撓性モジュール3において、各電気伝導トラック5は、約半回転で中心軸線の周りに延在するが、電気伝導トラック5の全体は、一般的なパンケーキ型渦巻きインダクタ2の軌跡に対応する、共有された軌跡に沿って次々に配置されている。さらに、同図から分かるように、電気伝導トラック5の端部間の電気接続を可能とするために、異なる可撓性モジュール3に配置された、パンケーキ形状全体に対して対応する位置の電気伝導トラック5の端部は、(中心軸線に平行に)整列されるか、又は不整列とされている。さらに、例示された例において、電気伝導トラック5は、直列又は並列に順に接続することができ、平面図で見られるように一般的なパンケーキコイルの形状に類似した形状を有する(それぞれ実線、破線、二点破線で例示されている)3つの別々の複数ループコイル13a、13b、及び13cを製造するように接続されていた。
【0046】
いずれの例においても、本目的に適した、例えば、前掲の特許文献1において説明されている導体間の交換原理に基づく任意の他のパターンによって、様々な電気伝導トラック5の間を接続することができる。
【0047】
可撓体9についても、可撓体9に挿入される温度センサがある(例えば、個々の可撓性モジュール3の間に挟まれている)。さらに、可撓性モジュール9に挿入されて、有利には、1つ以上の第2の層20は、適切に作製された1つ以上の電気伝導トラック5からなる、又は1つ以上の電気伝導トラック5を備える近接センサ、接触センサ、又は他のセンサがあってもよい。
【0048】
本発明による本方法は、可撓体9が完成すると、堅くて、上側主面15及び下側主面16を備える本体14を得るステップを含み、本体14は、コンロ1に現在、共通に用いられる任意の本体14と類似してもよい。
有利には、本体14は、ガラス、セラミック、又はガラス−セラミック材料のような反磁性材料で作製されてもよい。さらに、要求に応じて、本体14の上側主面15は、例えば、従来技術のコンロの上面に類似して、平坦であっても、(1つ以上の凹所/凸所を有して)曲がっていてもよい。
【0049】
この点で、本方法は、有利には接触面全体上で、各可撓性モジュール3に対して上述したような接着剤を用いて、可撓体9を下側主面16に当てるステップと、可撓体9を本体14に拘束させるステップとを含む。
【0050】
本発明の好ましいが排他的ではない実施形態において、コンロ1は、本体14に対してインダクタ2とは反対側に位置づけられるフローコンセントレーターも配備する。この場合、可撓体9を生成するステップは、結合して重なった複数の可撓性モジュール3のための成層基部17を生成するステップも含み、成層基部17も可撓性であり、少なくとも部分的に強磁性材料(好ましくはフェライト)からなる。続いて、可撓体9を下側主面16に拘束するステップは、反対に、結合した可撓性モジュール3が本体14と成層基部17の間に位置づけられたままであるように実行される。
【0051】
第1の実施形態によれば、成層基部17を生成するステップは、
・粉末状又は細粒状の強磁性材料を得るステップと、
・電気絶縁基盤内に強磁性材料を埋め込むステップと、
の動作ステップを含む。有利には、基盤が液体状又はゲル状であるときで、基盤が固化しようとした後に、埋め込みが実行される。一方、代わりの実施形態によれば、成層基盤17を生成するステップは、
・強磁性からなる第3の層を生成するステップと、
・可撓性モジュール3が中心軸線に実質的に垂直に延在するように、第3の層を複数の結合した可撓性モジュール3の第1の層4に当てるステップと、
・電気絶縁性の第4の層で前記第3の層を覆うステップと、
の動作ステップを含む。
【0052】
有利には、第3の層を生成し、当てるステップは、(好ましくは塗料状の)強磁性材料を直接、関連する第1の層に吹きかけることによって行われてもよい。
【0053】
第1の実施形態の電気絶縁基盤と、第2の実施形態の第4の層とは、有利には、加硫処理されたシリコーンゴム系材料からなる。
【0054】
上述したことは、コンロ1に複数のインダクタ2を分布させて配備したコンロ1を作製する場合に容易に拡張することができる。
【0055】
この場合、複数の可撓性モジュール3を生成するステップは、有利には、各撓性モジュール3において複数の別々の所定の区域18が特定されるように実行され、これらの区域の数は、得られるインダクタ2の数と同じである。各所定の区域は、対応する第1の層4の延在部の主面に実質的に垂直な各中心軸線を中心に位置するように検討されてもよい。各所定の区域18の中心軸線は、全ての可撓性モジュール3が重なることができるように共通に配置される。さらに、有利には、各可撓性モジュール3を生成するステップ中に、電気伝導トラック5の作製に関して上述したことは、各所定の区域18で通用であるべきである。実際に、上述した実施形態によれば、第2の層20各々は、各所定の区域18で1つ以上の別々の電気伝導トラック5を備える。
【0056】
さらに、可撓体9を生成するステップ中に、可撓性モジュール3は重なって、各可撓性モジュール3の所定の区域18の中心軸線の全てを一致させ、電気伝導トラック5を直列及び/又は並列にともに電気的に接続させるステップは、配列した中心軸線を有する所定の区域18の各グループで独立して繰り返され、各中心軸線/各所定の区域18でインダクタ2を生成する。コンロ1が単一のインダクタ2を備えるか、複数のインダクタ2を備えるかに関係なく、既に示唆したように、有利には、各可撓性モジュール3は、まったく同じ可撓性モジュール3にある/規定される各中心軸線で、互いに電気的に絶縁され、中心軸線の周りで半回転又は半回転より少ない回転で各々延在している複数の電気伝導トラック5とともに作製される。
【0057】
さらに、各可撓性モジュール3の電気伝導トラック5を電気的に互いに接続させるステップは、有利には、一の可撓性モジュール3に属する各電気伝導トラック5を他の可撓性モジュール3に属する各電気伝導トラック5に接続させるステップを含む。
【0058】
ここで、本発明の主題である伝導性コンロ1について、まず、伝導性コンロは、有利には、上述した方法を用いて得ることができるが、本発明の範囲を限定するものではないことに留意されたい。
【0059】
本発明による伝導性コンロは、従来技術の伝導性コンロと同様に、使用中に上部に位置づけられる本体14を備え、本体14は、使用中に加熱される少なくとも1つの鍋を配置することができる上側主面15、及び下側主面16を備える。
【0060】
少なくとも1つのインダクタ2は、下側主面16で本体14に結合される。
【0061】
コンロ1は、例えば、(好ましくは、接触面全体での)接着、又は機械的拘束によって本体14の下側主面16に固定される可撓体9も備え、しかも、同様に1つ以上のインダクタ2を備える。
【0062】
可撓体9は、少なくとも第1の電気絶縁層4と第2の層20とを交互に備え、第2の層20各々は、少なくとも1つの電気伝導トラック5を備える。第1の層4各々の厚さは、有利には、実質的に一定でありゼロではなく、第2の層20の厚さはかなり異なっていてもよく、いくつかの好ましい実施形態では、電気伝導トラック5が存在しない場合にはゼロであってもよいことに留意されたい。図1及び8における第2の層20の代表(厚さが一定で、第2の層20は空間を含む)は、そのため、例としてのみ提供されてきたとみなされなければならず、本発明の範囲を限定しない。
【0063】
有利には、可撓体9の第2の層20は、第2の層20に隣接する第1の層4の全てに貼着されている。
【0064】
さらに、有利には、可撓体9は、本体14の近傍に引き出された、下側主面16に面する第1の層の1つを有する。好ましくは、少なくとも可撓体9で、本体14は、積層構造を有し、上側主面15は、下側主面16に平行である。本体14の形状により、可撓体9は、実質的に平坦である全体形状を有してもよいし、下側主面16の形状によって実質的に規定された1つ以上の凹所/凸所を有する複雑な形状を有してもよい。実際、その可撓性によって、可撓体9は、本体14の下側主面16の形状に適合することができる。
【0065】
しかしながら、他の実施形態において、電気伝導トラック5を備える2つの層が、常に電気的に絶縁している場合、可撓体9は、(例えば、層の数が異なる、層の順序が異なる、層を作製する方法が異なる等の)異なる構造を有することができることに留意されたい。
【0066】
インダクタ2は、異なる第2の層20に位置づけられた複数の電気伝導トラック5(インダクタ2が1つのみである場合、有利には、全てのトラック)を備え、電気伝導トラック5は、互いに電気的に、直列又は/及び並列に接続されて、第1の面に(すなわち、上側主面15に)実質的に垂直な中心軸線の周りで同一方向に延在する複数のループを形成する。実際、可撓体9において、インダクタ2の全ての電気伝導トラック5は、同じ中心軸線の周りに延在する。
【0067】
コンロ1が、複数の別々の、並んだインダクタ2(数カ所の所定加熱位置のみにおいて、既知の態様で各位置に1つずつ、又は並べて配置することによりコンロ1の調理区域の範囲全体を実質的にカバーするインダクタ2)を備える場合、正に説明されたことが各インダクタ2にも通用することを理解されたい。そのため、この場合、第2の層20各々は、有利には、インダクタ2のための少なくとも1つの別々の電気伝導トラック5を備え、各インダクタ2は、異なる第2の層20に位置づけられ、互いに電気的に直列及び/又は並列に接続された電気伝導トラック5を備え、第1の面(上側主面15)に実質的に垂直な中心軸線の周りで同一方向に延在する複数のループを形成し、複数の電気伝導トラック5は、インダクタ2ごとに異なる。
【0068】
さらに、好ましい実施形態において、第2の層20各々は、存在するインダクタ2ごとに、中心軸線の周りで半回転又は半回転より少ない回転のみで電気的に連続して延在する複数の電気伝導トラック5を備え、インダクタ2の各ループは、2つ以上の別々の第2の層20にわたって延在するように作製される。
【0069】
さらに、各ループは、互いに並列に接続された複数の電気伝導トラック5を備えることもある。
【0070】
さらに、好ましい実施形態において、コンロ1は、各インダクタ2のために、本体14の反対側に位置付けられる磁気フローコンセントレーターも備える。
【0071】
有利には、その目的のために、可撓体9は、可撓であり、少なくとも部分的に強磁性材料からなる成層基盤17も備える。成層基盤17は、各インダクタ2が本体14と成層基盤17の間に位置付けられるように、可撓体9の残りについても当てはまる。
【0072】
第1の実施形態によれば、成層基盤17は、粉末状又は細粒状の強磁性材料が埋め込まれている電気絶縁基盤を備える。
【0073】
一方、第2の実施形態によれば、成層基盤17は、強磁性材料からなる第3の層と、電気的に絶縁である第4の層とを備え、第3の層は、各インダクタ2と第4の層の間に位置付けられる。
【0074】
好ましい実施形態において、強磁性材料は、フェライトであってよく、第3の層は、塗料から構成されてもよく、及び/又は、電気絶縁基板又は第4の層それぞれは、加硫処理されたシリコーンゴム系材料としてもよい。
【0075】
既に上述した方法について示唆されているように、コンロ1は、可撓体9に挿入された1つ以上の温度センサ(不図示)、近接センサ、接触センサ、又は他のセンサも備えてもよく、かなり有利なことに、1つ以上の第2の層20内に適切に作製された1つ以上の電気伝導トラック5から構成され/備えてもよい。
【0076】
コンロ1が、排他的に、最終用途のために意図した製品の能動部品である、すなわち、関連する機械構造(可撓体9等)とともに本体14及びインダクタ2を備えるだけの部品であると理解される場合、コンロ1は、露出しており、アクセス可能な各インダクタ2の電気端子(又は、各インダクタ2の1つ以上のループ)を有し、電気端子を電気制御システム及び電源に接続することを可能にする。
【0077】
一方、コンロ2が使用のために準備された最終製品であると理解される場合、コンロ1は、電源部品、制御部、又はユーザーインターフェースと、必要であれば、互いに、及びインダクタ2、又はインダクタ2の1つ以上のループの電気端子に適切に接続される電子制御システムも備える。
【0078】
本発明は、重要な利点をもたらす。
【0079】
第一に、本発明によって、従来の方法より簡易で、その実装のために要する労力の少ない、特に多数のインダクタを作製するときの費用を低くし、従来のコンロより衝撃による影響を少なく製造することが可能な、電磁誘導コンロを作製する方法を提供することが可能である。
【0080】
第二に、コンロを作製するために用いられる方法に関係なく、本発明によるコンロは、現在、市場にあるコンロより、軽く、より管理可能である一方、他方では、コンロが本体に接触する硬い部品を有さないため、偶然の衝撃後に破損のリスクにさらされにくい。他の要素は同等であり、このため、コンロは、従来技術のコンロに比べて、より薄い本体を用いて作製することができ、これにより、インダクタと鍋の間の結合効率を高めることにもなる。
【0081】
さらに、本発明による方法のために、特に多数のインダクタを用いるより複雑な構成において、ループの幾何精度及び/又は分離度をより高くしたコンロを作製することができる。このことは、ほぼ追加のコストなしで、(特に、コンロが所定の調理位置を有さない用途での)従来技術のコンロより多数のインダクタを用いるコンロを作製することも可能となることを意味する。
【0082】
最後に、本発明は、比較的簡易に製造することができ、本発明を実装するのに関連する費用も大して高くないことに留意されたい。
【0083】
上述した本発明は、発明の思想の範囲から逸脱することなく変形し適用することができる。
【0084】
詳細の全ては、他の技術的に均等な要素で代替することができ、用いられる材料や様々な構成要素の形状及び大きさは要求によって変えることができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12