(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、第2アーム部材に減速機を介して第3アーム部材を支持するロボットにおいて、当該減速機に駆動力を入力するサーボモータを第3アーム部材に固定する場合がある。この場合、第3アーム部材のケーシングの一端面にサーボモータが固定され、当該ケーシングの他端面に減速機の出力軸である減速機出力シャフトの端面が固定される。ケーシングの他端面に減速機出力シャフトを固定するために、減速機出力シャフトの端面に複数のネジ穴が設けられ、ケーシングをその一端面から他端面側に挿通する複数のボルトがそれぞれネジ穴に螺合する。
【0005】
減速機内の潤滑剤が漏出しないように、減速機出力シャフトの端面とケーシングの他端面との間をシールする必要がある。このため、Oリング等のシール部材が減速機出力シャフトの端面とケーシングの他端面との間に配置され、Oリングは前記複数のネジ穴よりも径方向内側に配置される。ケーシングには、減速機用の潤滑剤をケーシング内に注入するための潤滑剤供給孔が設けられる。潤滑剤供給孔は、Oリングよりも径方向内側に潤滑剤を供給できるものでなければならない。
【0006】
しかし、例えば
図2に示されるように、ケーシング37の他端面に減速機出力シャフトを固定するための複数の取付ボルト36が配列された範囲ARに対して、ケーシング37の一端面37aに固定されたサーボモータ31の外径が大きい場合がある。また、前記範囲ARに対してサーボモータ31のフランジの外径等が大きい場合がある。これらの場合、ケーシング37をその一端面から他端面に貫通する潤滑剤供給孔では、Oリングよりも径方向内側に潤滑剤を供給できない場合がでる。
【0007】
Oリングの代わりに、ケーシングの他端面と減速機出力シャフトの端面との間にシール剤を塗布することも考えられる。しかし、シール剤は当該関節のメンテナンス性の低下を招来する。また、当該関節に大きな力が加わった時に、シール性能が低下する可能性もある。
また、減速機の軸方向寸法を低減したいという要求もある。
【0008】
前述の事情に鑑み、減速機のシャフトとアーム部材のケーシングとの間で潤滑剤を確実にシールでき、減速機の軸方向寸法を低減することができるロボットの実現が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の第1の態様は、アームを有するロボットであって、前記アームのケーシングの一端面に取付けられたモータと、前記ケーシングにおいて前記一端面と反対側を望む他端面に複数の取付ボルトによって取付けられ、前記モータの出力軸と平行な中心軸線を有する減速機出力シャフトと、前記ケーシングに設けられ、前記出力軸が前記一端面から前記他端面に挿通する孔と、前記ケーシングに取付けられ、前記孔と前記出力軸の外周面との間をシールする第1シール部材と、前記ケーシングの前記他端面と前記減速機出力シャフトの端面との間をシールする第2シール部材と、前記ケーシングの前記他端面側に設けられ、前記中心軸線に沿った方向に窪んでいる凹部と、前記ケーシングに設けられ、前記減速機出力シャフトの略径方向又は径方向に延び、前記ケーシングの外部と前記凹部とを接続している潤滑剤供給孔と、を備え、前記減速機出力シャフトには、前記複数の取付ボルトがそれぞれ螺合する複数のネジ穴が設けられ、前記第2シール部材が、前記複数のネジ穴よりも内側に配置され、前記潤滑剤供給孔が、前記ケーシングの前記外部側の外側開口又は前記凹部側の内側開口を備え、前記第1シール部材および前記第2シール部材が、前記潤滑剤供給孔の前記外側開口および前記内側開口の少なくとも一方よりも、前記中心軸線に沿った方向において前記減速機出力シャフト側に配置されている。
【発明の効果】
【0010】
上記態様では、減速機のシャフトとアーム部材のケーシングとの間で潤滑剤を確実にシールでき、減速機の軸方向寸法を低減することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
一実施形態に係るロボット1が、図面を用いながら以下説明されている。
本実施形態のロボット1は、
図1に示されるように、アーム2を有し、アーム2の先端部には任意のツールが取付けられる。本実施形態のロボット1は6軸多関節ロボットであるが、7軸多関節ロボット又はその他の多関節ロボットであってもよい。
【0013】
アーム2は、
図1に示されるように、所定の設置面に固定されたベースBAに上下方向に延びる第1軸線J1周りに回転可能に支持された第1アーム部材10と、第1アーム部材10に水平方向に延びる第2軸線J2周りに揺動可能に基端側が支持された第2アーム部材20と、第2アーム部材20の先端側に水平方向に延びる第3軸線J3周りに揺動可能に基端側が支持された第3アーム部材30とを備える。
【0014】
また、アーム2は、第3軸線J3に平行な線と直交する方向に延びる第4軸線J4周りに回転可能に第3アーム部材30に支持された第4アーム部材40と、第4アーム部材40に第4軸線J4と直交する方向に延びる第5軸線J5周りに揺動可能に支持された第5アーム部材50と、第5アーム部材50に第6軸線J6周りに回転可能に支持された第6アーム部材60とを備える。
【0015】
また、アーム2は、第1〜第4アーム部材10〜40をそれぞれの駆動する複数のサーボモータ(モータ)11,21,31,41を備えており、第5アーム50および第6アーム部材60を駆動する図示しないサーボモータも有する。各サーボモータとして、回転モータ、直動モータ等の各種のサーボモータが用いられ得る。
【0016】
続いて、アーム2の構造について説明する。
図1に示されるように、第1アーム部材10は、第1アーム部材10の駆動用の減速機12のシャフトに複数のボルトによって取付けられ、減速機12はベースBAに固定されている。また、第2アーム部材20の基端側は、第2アーム部材20の駆動用の減速機22に複数のボルトによって取付けられ、減速機22は第1アーム部材10に固定されている。
【0017】
図2および
図3に示されるように、第3アーム部材30には複数の取付ボルト36によって第3アーム部材30の駆動用の減速機32の減速機出力シャフト35が取付けられ、減速機32が第2アーム部材20の先端部に固定されている。
【0018】
減速機32は、
図3に示されるように、サーボモータ31の出力軸31aに固定されたインプットギヤ34a、インプットギヤ34aと歯合している複数のスパーギヤ34b、複数のスパーギヤ34bがそれぞれ一端部に固定されている複数のクランク軸34c、各クランク軸34cに取付けられた偏心ギヤ34d、偏心ギヤ34dと噛み合うことにより回転する内歯車34e、内歯車34eの回転に応じて回転する減速機出力シャフト35等を有する周知の減速機である。減速機32として、例えば、ナブテスコ(登録商標)社製の精密減速機RV(登録商標)を用いることが可能である。なお、住友重機械工業社製のサイクロ(登録商標)減速機を用いることも可能である。
【0019】
図2および
図3に示されるように、第3アーム30はケーシング37を有し、ケーシング37に減速機出力シャフト35が複数の取付ボルト36によって取付けられている。ケーシング37は典型的には金属製であり、ケーシング37の一端面37aにはサーボモータ31がボルトBを用いて取付けられている。第4アーム40用のサーボモータ41が固定されているケーシング38とケーシング37とが一体であってもよいし、別体であってもよい。第3アーム部材30のケーシング37,38は第4アーム部材40の支持も行っている。
【0020】
ケーシング37において一端面37aと反対側を望む他端面37bに減速機出力シャフト35が複数の取付ボルト36によって取付けられている。より具体的には、減速機出力シャフト35の端面35aには複数のネジ穴35bが設けられ、複数の取付ボルト36がそれぞれネジ穴35bに螺合することによって他端面37bに減速機出力シャフト35が取付けられている。これにより、減速機出力シャフト35の端面35aと他端面37bとが面接触する。
【0021】
一端面37aおよび他端面37bに対して、サーボモータ31の出力軸31aの中心軸線CL1および減速機出力シャフト35の中心軸線CL2は垂直であり、中心軸線CL1と中心軸線CL2は平行である。本実施形態では、出力軸31aと減速機出力シャフト35は同軸であるが、出力軸31aの中心軸線CL1が中心軸線CL2に対して減速機出力シャフト35の径方向にずれた位置に配置されていてもよい。この場合でも、インプットギヤ34aの回転力が他のギヤを介して複数のスパーギヤ34bに伝達されるならば、減速機32の機能が達成される。
【0022】
ケーシング37には、一端面37a側から他端面37b側に貫通する孔37cが設けられている。孔37cは出力軸31aと同軸状に設けられ、孔37cの内周面には第1シール部材110が固定されている。第1シール部材110は一例ではオイルシールである。第1シール部材110は、
図6に示されるように、例えば、孔37cの内周面に嵌合されているベース部111と、ベース部111から径方向内側に延びるリップ部112とを備えている。
【0023】
ベース部111の内部には例えば金属リングが設けられている。リップ部112は耐油性を有する材料から成り、例えば、ニトリルブタジエンゴム(NBR)、アクリルゴム(ACM)、フッ素ゴム、シリコンゴム等のゴム状弾性を有する材料から成る。リップ部112の先端が出力軸31aの外周面に接触している。また、リップ部112の外周面にはリップ部112を出力軸31aの外周面に押付けるためのリング状スプリング113が取付けられている。第1シール部材110は、他端面37b側から一端面37a側へのグリース等の潤滑剤の侵入を防止するためのものである。
【0024】
減速機出力シャフト35の端面35aと他端面37bとの間は第2シール部材120によってシールされている。より具体的には、減速機出力シャフト35の端面35aにはOリング溝35cが設けられ、Oリング溝35c内に第2シール部材120としてOリングが配置されている。Oリング溝35cおよび第2シール部材120は中心軸線CL2周りに全周に亘って設けられている。
図4に示されるように、Oリング溝35cおよび第2シール部材120は複数のネジ穴35bよりも内側に配置されている。仮に、第2シール部材120がネジ穴35bよりも外側に配置されると、減速機32内の潤滑剤がケーシング37のボルト孔37dを介して漏出するので、シール構造は成立しない。なお、Oリング溝35cおよび第2シール部材120が、
図1に示されるサーボモータ31のモータ用ネジ穴37fよりも内側に配置されていることが好ましい。モータ用ネジ穴37fはケーシング37に形成されている。モータ用ネジ穴37fが円上に配置されている場合は、Oリング溝35cおよび第2シール部材120の外径がモータ用ネジ穴37fのPCDよりも小さいことになる。
【0025】
第2シール部材120として、Oリング溝35cを用いずに配置されるリング状のシール部材を用いることも可能である。この場合も、シール部材は上記のゴム状弾性を有する材料から成る。また、このようなシール部材は、減速機出力シャフト35の端面35aに設けられた下がり平面等に配置される。これにより、シール部材は、端面35aと他端面37bとが面接触した時に完全に潰されることがない。第2シール部材120として他のシール部材を用いることも可能である。
【0026】
ケーシング37の他端面37b側には、中心軸線CL2に沿った方向に窪んでいる凹部39が形成されている。凹部39はOリング溝35cおよび第2シール部材120よりも径方向内側に配置されている。本実施形態では、凹部39は中心軸線CL2周りに全周に亘って設けられているが、凹部39が中心軸線CL2周りの一部にだけ設けられていてもよい。この場合、凹部39が穴の態様で形成される場合もある。
【0027】
凹部39の中心軸線CL2に近い側には筒状の突出部39aが形成されている。突出部39aは、凹部39の底面39bから減速機出力シャフト35に向かって中心軸線CL2に沿った方向に突出している。突出部39aの内孔が前述の孔37cとして機能する。本実施形態では、中心軸線CL2に沿った方向において、第1シール部材110は底面39bよりも減速機出力シャフト35側に配置されている。
【0028】
ケーシング37には潤滑剤供給孔200が設けられている。潤滑剤供給孔200は減速機出力シャフト35の径方向に延び、ケーシング37の外部と凹部39とを接続している。例えば、潤滑剤供給孔200はケーシング37にドリル等によって孔をあけることにより形成される。潤滑剤供給孔200は、ケーシング37の外部に開口している外側開口201と、凹部39に開口している内側開口202とを有する。外側開口201に蓋部材、潤滑剤の注入装置に接続されるアダプタ等が取付けられていてもよい。
【0029】
本実施形態では、中心軸線CL2に沿った方向において、第1シール部材110および第2シール部材120は、外側開口201の中心201aおよび内側開口202の中心202aよりも右側に配置されている。一例では、中心201aおよび中心202aは外側開口201および内側開口202の形状中心である。以下、中心201aおよび中心202aを外側開口201および内側開口202の位置として説明する。
【0030】
減速機32にグリース等の潤滑剤を供給する場合は、潤滑剤供給孔200から潤滑剤を注入する。この時、第2アーム部材20に設けられた潤滑剤排出孔300が開かれていると、注入がスムーズに行われる。潤滑剤排出孔300は第3アーム部材30のケーシング37,38に設けられていてもよい。
【0031】
減速機32の潤滑剤を交換する場合は、潤滑剤排出孔300が開かれている状態で、潤滑剤供給孔200から潤滑剤を注入する。これにより、新しい潤滑剤が潤滑剤供給孔200から減速機32内に供給され、古い潤滑剤が潤滑剤排出孔300から排出される。
【0032】
なお、第2アーム部材20の基端側と減速機22との間の取付構造および潤滑剤供給構造と、第1アーム部材10と減速機12との間の取付構造および潤滑剤供給構造も、前述と同様に構成することができる。また、他のアーム部材40〜60に減速機のシャフトを取付けるロボットを作る場合に、アーム部材40〜60とその減速機との間の取付構造および潤滑剤供給構造を前述と同様に構成することができる。
【0033】
また、
図5に示されるように、潤滑剤供給孔200が減速機出力シャフト35の略径方向に延びていてもよい。中心軸線CL2と平行な線と潤滑剤供給孔200の中心軸線CL3とが成す角度が45°以上の時に、減速機出力シャフト35の略径方向であると言える。なお、中心軸線CL2と平行な線と中心軸線CL3とが成す角度が70°以上であることが好ましい。
この場合、中心軸線CL2に沿った方向において、潤滑剤供給孔200の外側開口201の位置よりも第1シール部材110および第2シール部材120が減速機出力シャフト35側に配置されている。
【0034】
また、潤滑剤供給孔200はオイルを排出するための排出孔として用いられてもよい。例えば、潤滑剤としてオイルが潤滑剤排出孔300等から注入され、注入されたオイルが潤滑剤供給孔200から排出される。
【0035】
本実施形態では、減速機出力シャフト35の端面35aとケーシング37の他端面37bとの間が第2シール部材120によってシールされ、モータ31の出力軸31aとケーシング37の孔37cとの間が第1シール部材110によってシールされている。また、第2シール部材が減速機出力シャフト35の複数のネジ穴35bよりも内側に配置されている。このため、シール剤を用いなくても、減速機出力シャフト35とケーシング37との間で潤滑剤が確実にシールされる。
【0036】
また、ケーシング37には、減速機出力シャフト35の径方向又は略径方向に延びる潤滑剤供給孔200が形成されている。さらに、中心軸線CL2に沿った方向において、潤滑剤供給孔200の外側開口201および内側開口202の少なくとも一方に対して、第1シール部材110および第2シール部材120が減速機出力シャフト35側に配置されている。
当該構成は、減速機32の中心軸線CL2に沿った方向の寸法を小さくする上で有利である。また、第1シール部材110とサーボモータ31との中心軸線CL2に沿った方向の距離も大きくなる。これは、第1シール部材110から潤滑剤が僅かに漏れ出した場合でも、当該潤滑剤がサーボモータ31に影響を与える可能性を低減することができる。
【0037】
また、本実施形態では、
図2に示されるように、潤滑剤供給孔200が、中心軸線CL2に沿った方向から見て、取付ボルト36が並設される領域ARを通過している。当該構成は、ケーシング37の中心軸線CL2に沿った方向の寸法の自由度を向上する上で有利である。
【0038】
また、本実施形態では、凹部39に底面39bから減速機出力シャフト35側に突出する筒状の突出部39aが設けられ、サーボモータ31の出力軸31aが挿通する孔37cが突出部39aの内孔である。また、中心軸線CL2に沿った方向において、第1シール部材110が凹部39の底面39bよりも減速機出力シャフト35側に配置されている。
当該構成は、第1シール部材110とサーボモータ31との中心軸線CL2に沿った方向の距離を大きくする上で有利である。
【0039】
なお、本実施形態では、ボルト孔37dに座ぐりが施され、座ぐりの底面37eが取付ボルト36の座面として機能している。ここで、
図3に示されるように、中心軸線CL2に沿った方向において、底面37eが、潤滑剤供給孔200の中心軸線CL3と略同一の位置、又は、中心軸線CL3よりも減速機出力シャフト35側に配置されていることが好ましい。
図5のように、中心軸線CL3が傾いている場合等は、底面37eが、潤滑剤供給孔200の外側開口201の中心201a又は内側開口202の中心202aよりも減速機出力シャフト35側に配置されていることが好ましい。
当該構成により、中心軸線CL2に沿った方向において、潤滑剤供給孔200の位置と取付ボルト36の頭部の位置とが近くなり、これはロボット1の当該関節の中心軸線CL2に沿った方向の寸法を小さくするために有利である。