特許第6871292号(P6871292)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6871292
(24)【登録日】2021年4月19日
(45)【発行日】2021年5月12日
(54)【発明の名称】樹脂構造体
(51)【国際特許分類】
   H02G 3/14 20060101AFI20210426BHJP
   H02G 3/08 20060101ALI20210426BHJP
   H05K 5/02 20060101ALI20210426BHJP
   B60R 16/02 20060101ALI20210426BHJP
【FI】
   H02G3/14
   H02G3/08 080
   H05K5/02 L
   B60R16/02 610B
【請求項の数】2
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2019-44088(P2019-44088)
(22)【出願日】2019年3月11日
(65)【公開番号】特開2020-150598(P2020-150598A)
(43)【公開日】2020年9月17日
【審査請求日】2020年4月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】特許業務法人栄光特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】倉田 翔
(72)【発明者】
【氏名】河村 英樹
(72)【発明者】
【氏名】梅▲崎▼ 稔
(72)【発明者】
【氏名】藤本 昂
【審査官】 鈴木 大輔
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−034530(JP,A)
【文献】 特開2010−041808(JP,A)
【文献】 特開2005−185010(JP,A)
【文献】 特開2002−369346(JP,A)
【文献】 特開2018−133421(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/051301(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 16/02
H02G 3/08
H02G 3/14
H05K 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1樹脂体と、
前記第1樹脂体の外面に沿って所定のスライド方向の一方側に移動させながら前記第1樹脂体の外面に組み付けられる第2樹脂体と、
を備える、樹脂構造体において、
前記第1樹脂体及び前記第2樹脂体は、
前記第2樹脂体が前記第1樹脂体に組み付けられた状態において、前記スライド方向に延びる止水構造部を構成し、
前記止水構造部は、
当該止水構造部における前記スライド方向の前記一方側に位置する第1領域では、前記第1樹脂体及び前記第2樹脂体の一方の樹脂体に設けられた前記スライド方向に延びる止水面と、前記第1樹脂体及び前記第2樹脂体の他方の樹脂体に設けられた前記スライド方向に延びる止水リブと、の押圧接触による、第1止水構造を有するとともに、
当該止水構造部における前記第1領域より前記スライド方向の他方側に位置する第2領域では、前記一方の前記樹脂体に設けられた前記スライド方向に延びる第1溝部に、前記他方の前記樹脂体に設けられた前記スライド方向に延びる第1止水板が入ることによる、第2止水構造を有する、
樹脂構造体。
【請求項2】
請求項1に記載の樹脂構造体において、
前記止水構造部は、
前記第1領域において、前記一方の前記樹脂体に設けられた前記スライド方向に延びる第2溝部に、前記他方の前記樹脂体に設けられた前記スライド方向に延びる第2止水板が入ることによる、第3止水構造を有する、
樹脂構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、車両に搭載されるリレーボックス(電気接続箱)等のように、複数の樹脂体を互いに組み付けて構成される樹脂構造体が広く知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017−022824号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述したような樹脂構成体を構成する際、例えば、第1樹脂体の外面に沿って第2樹脂体をスライドさせながら第2樹脂体を第1樹脂体の外面に組み付ける場合がある。このような組み付けに対応した構造を有する樹脂構造体において、第1樹脂体と第2樹脂体との組付箇所を止水するべく、例えば、双方の樹脂体とを互いに押圧接触させた状態で組み付ける場合がある。この場合、止水性を高めるために双方の樹脂体をより強固に密着させようとすると、通常、その分だけ第2樹脂体を第1樹脂体に押し込むために要する力が大きくなり、作業性が低下する傾向がある。換言すると、双方の樹脂体の間の止水性と、双方の樹脂体を組み付ける際の作業性と、の両立が困難である。
【0005】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、第1樹脂体の外面に沿って第2樹脂体をスライドさせながら第2樹脂体を第1樹脂体の外面に組み付ける際の作業性と、第1樹脂体と第2樹脂体との組付箇所の止水性とを両立可能な樹脂構造体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前述した目的を発揮するために、本発明に係る樹脂構造体は、下記[1]〜[2]を特徴としている。
[1]
第1樹脂体と、
前記第1樹脂体の外面に沿って所定のスライド方向の一方側に移動させながら前記第1樹脂体の外面に組み付けられる第2樹脂体と、
を備える、樹脂構造体において、
前記第1樹脂体及び前記第2樹脂体は、
前記第2樹脂体が前記第1樹脂体に組み付けられた状態において、前記スライド方向に延びる止水構造部を構成し、
前記止水構造部は、
当該止水構造部における前記スライド方向の前記一方側に位置する第1領域では、前記第1樹脂体及び前記第2樹脂体の一方の樹脂体に設けられた前記スライド方向に延びる止水面と、前記第1樹脂体及び前記第2樹脂体の他方の樹脂体に設けられた前記スライド方向に延びる止水リブと、の押圧接触による、第1止水構造を有するとともに、
当該止水構造部における前記第1領域より前記スライド方向の他方側に位置する第2領域では、前記一方の前記樹脂体に設けられた前記スライド方向に延びる第1溝部に、前記他方の前記樹脂体に設けられた前記スライド方向に延びる第1止水板が入ることによる、第2止水構造を有する、
樹脂構造体であること。
[2]
上記[1]に記載の樹脂構造体において、
前記止水構造部は、
前記第1領域において、前記一方の前記樹脂体に設けられた前記スライド方向に延びる第2溝部に、前記他方の前記樹脂体に設けられた前記スライド方向に延びる第2止水板が入ることによる、第3止水構造を有する、
樹脂構造体であること。
【0007】
上記[1]の構成の樹脂構造体によれば、第2樹脂体が第1樹脂体に組み付けられた状態において、第1樹脂体及び第2樹脂体の協働により、スライド方向に延びる止水構造部が構成される。止水構造部におけるスライド方向の一方側(即ち、第2樹脂体を組み付けるときのスライド方向前方側)に位置する第1領域では、止水面に押圧接触する止水リブ(以下「押圧接触による第1止水構造」という。)により止水機能が発揮される。止水構造部におけるスライド方向の他方側(即ち、第2樹脂体を組み付けるときのスライド方向後方側)に位置する第2領域では、第1溝部に第1止水板を進入させて水の進入経路(いわゆる沿面距離)を長くするラビリンス構造(以下「沿面距離の確保による第2止水構造」という。)により止水機能が発揮される。
【0008】
一般に、沿面距離の確保による第2止水構造を採用する場合、押圧接触による第1止水構造を採用する場合と比べて、水の進入経路(沿面距離)が長くなることから、第1樹脂体と第2樹脂体との組付箇所の止水性が高くなる。一方、沿面距離の確保による第2止水構造を採用する場合、第1溝部に第1止水板を進入させるために双方の樹脂体の相対位置及び相対姿勢を調整する作業が必要となり、作業性を向上させ難い。逆に、押圧接触による第1止水構造を採用する場合、沿面距離の確保による第2止水構造を採用する場合と比べ、双方の樹脂体を組み付ける際の作業性を向上させ易い。
【0009】
更に、スライド方向の一方側(前方側。奥側)に押圧接触による第1止水構造を採用することで、スライド方向の一方側(前方側。奥側)に沿面距離の確保による第2止水構造を採用する場合に比べ、第1樹脂体に第2樹脂体を組み付け易くなり(例えば、押し込み易くなり)、双方の樹脂体を組み付ける際の作業性を向上させ易い。
【0010】
以上から、本構成の樹脂構造体は、第1樹脂体の外面に沿って第2樹脂体をスライドさせながら第2樹脂体を第1樹脂体の外面に組み付ける際の作業性と、第1樹脂体と第2樹脂体との組付箇所の止水性とを両立可能である。
【0011】
上記[2]の構成の樹脂構造体によれば、止水性が相対的に低くなり易い押圧接触による第1止水構造を採用する第1領域に、第2溝部及び第2止水板による第3止水構造が追加される。この結果、止水構造部の第1領域の止水性が向上し、止水構造部の全体における止水性を更に高めることができる。
【発明の効果】
【0012】
このように、本発明によれば、第1樹脂体の外面に沿って第2樹脂体をスライドさせながら第2樹脂体を第1樹脂体の外面に組み付ける際の作業性と、第1樹脂体と第2樹脂体との組付箇所の止水性とを両立可能な樹脂構造体を提供できる。
【0013】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、本発明の実施形態に係る樹脂構造体の斜視図である。
図2図2は、第1、第2アッパカバーのみを分解した樹脂構造体を示す斜視図である。
図3図3は、フレームの外面にサイドカバーが組み付けられた状態を拡大して示す斜視図である。
図4図4は、フレームにおけるサイドカバーが組み付けられる部分を拡大して示す斜視図である。
図5図5は、フレームにおけるサイドカバーが組み付けられる部分を拡大して示す側面図である。
図6図6は、サイドカバーの斜視図である。
図7図7は、サイドカバーの平面図である。
図8図8は、サイドカバーを内側からみた斜視図である。
図9図9は、サイドカバーを内側からみた平面図である。
図10図10は、図3のA−A断面図である。
図11図11は、図3のB−B断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<実施形態>
以下、図面を参照しながら、図1に示す本発明の実施形態に係る樹脂構造体1について説明する。樹脂構造体1は、典型的には、車両に搭載され、リレー等の電子部品を収容するリレーボックス(電気接続箱)である。樹脂構造体1の車両搭載時において、図1における手前側(図1における左下側)及び奥側(図1における右上側)は、それぞれ、車両の前側及び後側に対応している。
【0016】
図1及び図2に示すように、樹脂構造体1は、フレーム2と、フレーム2の車両前側の上方に組み付けられる第1フロントカバー3及び第2フロントカバー4と、フレーム2の車両後側領域の上端開口を塞ぐようにフレーム2の上方に組み付けられる第1アッパカバー5と、フレーム2の車両前側領域及び第1フロントカバー3の上端開口を塞ぐようにフレーム2及び第1フロントカバー3の上方に組み付けられる第2アッパカバー6と、フレーム2の車両前側の下方に組み付けられるアンダカバー7と、フレーム2及びアンダカバー7の下端開口を塞ぐようにフレーム2及びアンダカバー7の下方に組み付けられるロアカバー8と、フレーム2の車両左右方向における一方側の外面(側面)に組み付けられるサイドカバー9と、により構成される。樹脂構造体1を構成する上記8つの部品は全て、樹脂成形体である。
【0017】
図2に示すように、フレーム2の内部、並びに、第1フロントカバー3(及び第2フロントカバー4)の内部には、リレー等の電子部品(及び、その他の部品)Rが収容されている。本発明は、樹脂構造体1のうち、フレーム2、及び、サイドカバー9の構造に係る。よって、以下、フレーム2、及び、サイドカバー9のみの構造について詳細に説明する。
【0018】
以下、説明の便宜上、図3に示すように、「内外方向」、「幅方向」、「上下方向」、「内」、「外」、「上」及び「下」を定義する。「内外方向」、「幅方向」及び「上下方向」は、互いに直交している。樹脂構造体1の車両搭載時において、「内外方向」、「幅方向」及び「上下方向」は、それぞれ、車両の左右方向、車両前後方向及び車両上下方向に対応している。
【0019】
サイドカバー9は、フレーム2の外面に沿って下向きにスライドさせることで、フレーム2の外面に組み付けられるようになっている。よって、「上下方向」は、サイドカバー9のスライド方向に対応している。フレーム2の外面に組み付けられたサイドカバー9と、フレーム2の内面との間に画成される空間は、典型的には、端子などの部品(図示省略)を収容するための空間として使用される。
【0020】
先ず、フレーム2について説明する。図1図5に示すように、フレーム2は、樹脂構造体1の側面の外観の大部分を構成する。フレーム2におけるサイドカバー9が組み付けられる箇所には、図3図5に示すように、フレーム2の外面にて、幅方向に離間して幅方向に互いに向かい合う一対の対向面11が形成されている。サイドカバー9の組付時、一対の対向面11には、サイドカバー9の後述する一対の端縁部31(図6等参照)が押圧接触することになる。
【0021】
図5に示すように、一対の対向面11のそれぞれは、下側に向かうにつれて両者の間隔が徐々に狭くなるように、上下方向に対して角度θだけ傾斜して延びる平面である。角度θは、型を用いて樹脂成形体を成形する際において型抜き性を高めるために通常設けられる所謂「抜き勾配」より大きい値である。別の言い方をすると、一般の抜き勾配よりも大きな角度θだけ傾くように意図的に設計された一対の対向面11は、通常は抜き勾配に相当する角度程度の傾きしか有さない(実質的には、上下方向に平行といえる)一対の止水板25(図8等を参照)よりも、大きく傾いている。この角度θは、組み付けの作業性や止水性などを考慮して定められればよく、特に制限されないが、一例として3度以上5度以下である。
【0022】
本例では、止水性向上のため、一対の対向面11から連続してフレーム2の外面から更に外側に突出する一対の止水板11a,11bが設けられている。図3及び図4から理解できるように、本例では、一対の止水板11a,11bのうち、図3及び図4における右側(車両前側に相当)の止水板11aは、対応する対向面11の上下方向全域に亘って設けられているが、図3及び図4における左側(車両後側に相当)の止水板11bは、対応する対向面11の上下方向の下側領域のみに設けられている。これは、車両前方からの水の浸入をより確実に防止する、という思想に基づく。
【0023】
フレーム2の外面における一対の対向面11の間の領域には、内側に窪むと共に上下方向に延びる部品収容部12が設けられている。部品収容部12は、一対の対向面11の上下方向全域に対応して、上下方向に延びている。部品収容部12は、端子などの部品を収容するための空間の一部として使用されることになる。
【0024】
部品収容部12の下端部には、部品収容部12と上下方向に連通するように、内側に窪むと共に上下方向に延びる電線収容部13が設けられている。電線収容部13は、端子などの部品から下方に延出する電線を収容するための空間の一部として使用されることになる。
【0025】
部品収容部12の幅方向両側部には、部品収容部12の幅方向両側内壁面から連続してフレーム2の外面から外側に突出すると共に上下方向に延びる一対の止水板14が設けられている(図10及び図11も参照)。一対の止水板14は、部品収容部12(即ち、一対の対向面11)の上下方向全域に対応して、上下方向に延びている。
【0026】
部品収容部12の内部には、一対の止水板14から幅方向内側に所定距離だけ離れた位置にて、一対の止水板15が設けられている。一対の止水板15は、一対の止水板14の下側領域のみに対応して、部品収容部12の底面から外側に突出して上下方向に延びている。この結果、一対の止水板14と一対の止水板15との間には、一対の止水板14の下側領域にて、外側に開口し上下方向に延びる一対の溝16が形成されている(図11も参照)。
【0027】
一対の対向面11と一対の止水板14との間における一対の止水板14の下側領域には、上方に向けて突出する一対の係止片17が、一対の止水板14と一体で設けられている。一対の係止片17は、サイドカバー9の組付時、サイドカバー9の後述する一対の係止部29の貫通孔29aに挿入されることになる。
【0028】
次いで、サイドカバー9について説明する。図6図9に示すように、サイドカバー9は、略矩形平板状の平板部21を備える。平板部21の幅方向中央部には、外側に突出すると共に上下方向に延びる隆起部22が形成されている。隆起部22は、平板部21の下端縁から更に下方に延びている。隆起部22の内面側には、図8及び図9に示すように、外側に窪むと共に上下方向に延びる部品収容部23が形成されている。部品収容部23の下端部には、上下方向に貫通する一対の水抜き孔23aが形成されている(図8及び図11を参照)。
【0029】
部品収容部23の下端部には、電線収容部24が下方に突出するように連設されている。サイドカバー9の組付状態にて、部品収容部23及び電線収容部24は、それぞれ、フレーム2の部品収容部12及び電線収容部13と協働で、端子などの部品を収容するための空間及び当該部品から延出する電線を収容するための空間を画成する。
【0030】
部品収容部23の幅方向両側部には、部品収容部23の幅方向両側内壁面から連続して平板部21の内面から内側に突出すると共に上下方向に延びる一対の止水板25が設けられている(図10及び図11も参照)。
【0031】
平板部21には、一対の止水板25から幅方向外側に所定距離だけ離れた位置にて、一対の止水板26が設けられている。一対の止水板26は、一対の止水板25の上側領域のみに対応して、平板部21の内面から内側に突出して上下方向に延びている。一対の止水板26は、平板部21の下端縁まで下方に延びている。この結果、一対の止水板25と一対の止水板26との間には、一対の止水板25の上側領域にて、内側に開口し上下方向に延びる一対の溝27が形成されている(図10も参照)。
【0032】
一対の止水板25の幅方向外側面における一対の止水板26より下方の領域には、幅方向外側に突出し且つ上下方向に延びる一対の止水リブ28が形成されている(図11も参照)。
【0033】
平板部21の幅方向両側の下端部の外面側には、平板部21の下端縁から下方に延びるように、一対の係止部29が、一対の止水板25と一体で設けられている。一対の係止部29には、上下方向に貫通する一対の貫通孔29aが形成されている。
【0034】
サイドカバー9の幅方向両側の一対の端縁部31は、平板部21の幅方向両側の一対の端縁部及び一対の係止部29の幅方向両側の一対の端縁部により構成されている(特に、図6及び図8参照)。一対の端縁部31のそれぞれは、フレーム2の一対の対向面11と同様、下側に向かうにつれて両者の間隔が徐々に狭くなるように、上下方向に対して角度θだけ傾斜して延びる平面である。以上、フレーム2、及び、サイドカバー9の構造について説明した。
【0035】
次いで、フレーム2にサイドカバー9を組み付ける際の手順について説明する。フレーム2にサイドカバー9を組み付ける際には、サイドカバー9を、フレーム2におけるサイドカバー9が組み付けられる箇所の上方に近づけ、サイドカバー9の一対の端縁部31の下端部を、フレーム2の一対の対向面11の上端部と幅方向に対面させる。
【0036】
この状態では、幅方向において、サイドカバー9の一対の止水板25とフレーム2の一対の溝16との位置が一致し(図11参照)、且つ、フレーム2の一対の止水板14とサイドカバー9の一対の溝27との位置が一致している(図10参照)。更に、サイドカバー9の一対の係止部29の貫通孔29aとフレーム2の一対の係止片17とが上下方向において同軸的に位置している。
【0037】
次いで、この状態から、サイドカバー9をフレーム2に対して下向きにスライドさせる。この過程において、サイドカバー9の一対の止水板25がフレーム2の一対の溝16に上方から進入し、フレーム2の一対の止水板14がサイドカバー9の一対の溝27に上方から進入していく。また、一対の端縁部31及び一対の対向面11の双方が、下側に向かうにつれて間隔が徐々に狭くなるように上下方向に対して角度θだけ傾斜しているため、一対の端縁部31及び一対の対向面11の間隔が次第に狭くなっていく。また、一対の係止片17が一対の貫通孔29aに挿入される。
【0038】
そして、サイドカバー9が組付完了位置に到達すると、一対の係止片17が一対の貫通孔29aに係止される。加えて、一対の端縁部31が、一対の対向面11対して、それぞれ(平面で)接触し、且つ、所謂くさび効果により押圧された状態に維持される。このため、フレーム2とサイドカバー9との間の相対移動(ガタ)の発生が効果的に抑制され得る。更には、一対の端縁部31が一対の対向面11にそれぞれ(平面で)押圧接触することで、一対の端縁部31及び一対の対向面11の接触部を介する水の浸入を効果的に抑制することができる。
【0039】
更に、サイドカバー9の組付完了状態では、図10に示すように、フレーム2の一対の止水板14の上側領域が、サイドカバー9の一対の溝27に進入している。また、図11に示すように、サイドカバー9の一対の止水板25の下側領域が、フレーム2の一対の溝16に進入し、且つ、サイドカバー9の一対の止水リブ28が、フレーム2の一対の止水板14の幅方向内側面の下側領域にそれぞれ押圧接触している。このように、サイドカバー9の組付完了状態では、上下方向に延びる一対の「止水構造部」が構成されている。
【0040】
一対の止水構造部の下側領域(第1領域)では、図11に示すように、一対の止水板14の幅方向内側面に押圧接触する一対の止水リブ28(押圧接触による第1止水構造)により止水機能が発揮される。また、一対の「止水構造部」の上側領域(第2領域)では、図10に示すように、溝27に止水板14を進入させて水の進入経路(沿面距離)を長くするラビリンス構造(沿面距離の確保による第2止水構造)により止水機能が発揮される。
【0041】
一般に、沿面距離の確保による第2止水構造を採用する場合、押圧接触による第1止水構造を採用する場合と比べて、水の進入経路(沿面距離)が長くなることから、止水構造部の止水性が高くなる。一方、沿面距離の確保による第2止水構造を採用する場合、溝部に止水板を進入させるためにフレーム2及びサイドカバー9の相対位置及び相対姿勢を調整する作業が必要となり、サイドカバー9のフレーム2への組み付け性が低下し易い。逆に、押圧接触による第1止水構造を採用する場合、沿面距離の確保による第2止水構造を採用する場合と比べて、サイドカバー9のフレーム2への組み付け性が高くなる。更に、止水構造部の下側領域に押圧接触による第1止水構造を採用する場合の方が、その下側領域に沿面距離の確保による第2止水構造を採用する場合と比べ、フレーム2にサイドカバー9を押し込み易くなり、サイドカバー9のフレーム2への組み付け性を向上させ易い。
【0042】
以上のことから、上記構成によれば、止水構造部の下側領域に押圧接触による第1止水構造を採用することで、サイドカバー9のフレーム2への組み付け性を向上し、且つ、止水構造部の上側領域に第1の沿面距離の確保による第2止水構造を採用することで、止水構造部の止水性を向上させることができる。
【0043】
更に、一対の止水構造部の下側領域(第1領域)では、図11に示すように、上述した第1止水構造に加え、溝16に止水板25を進入させて水の進入経路(沿面距離)を長くするラビリンス構造(沿面距離の確保による第3止水構造)によっても止水機能が発揮される。
【0044】
よって、止水性が相対的に劣り易い押圧接触による第1止水構造を採用する止水構造部の下側領域においても、沿面距離の確保による第3止水構造の併用により、止水性を更に向上できる。その結果、上下方向に延びる止水構造部の全体における止水性を更に向上できることになる。
【0045】
<他の形態>
なお、本発明は上記各実施形態に限定されることはなく、本発明の範囲内において種々の変形例を採用することができる。例えば、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数、配置箇所、等は本発明を発揮できるものであれば任意であり、限定されない。
【0046】
上記実施形態では、止水性が相対的に劣り易い押圧接触による第1止水構造を採用する止水構造部の下側領域において、沿面距離の確保による第3止水構造が更に追加されている。これに対し、止水構造部の下側領域において、沿面距離の確保による第3止水構造が追加されていなくてもよい。
【0047】
更に、上記実施形態では、一対の止水構造部の下側領域にて、フレーム2側の「止水面」(止水板14の幅方向内側面)にサイドカバー9側の「止水リブ」(止水リブ28)を押圧接触させることで、押圧接触による第1止水構造が構成されている。これに対し、サイドカバー9側の「止水面」にフレーム2側の「止水リブ」を押圧接触させることで、押圧接触による第1止水構造を構成してもよい。
【0048】
更に、上記実施形態では、樹脂構造体1が、複数の電子部品Rを収容するリレーボックス(電気接続箱)であるが、樹脂構造体1が、リレーボックス(電気接続箱)以外の機能を有する構造体であってもよい。
【0049】
ここで、上述した本発明に係る樹脂構造体1の実施形態の特徴をそれぞれ以下[1]〜[2]に簡潔に纏めて列記する。
[1]
第1樹脂体(2)と、
前記第1樹脂体(2)の外面に沿って所定のスライド方向の一方側に移動させながら前記第1樹脂体(2)の外面に組み付けられる第2樹脂体(9)と、
を備える、樹脂構造体(1)において、
前記第1樹脂体(2)及び前記第2樹脂体(9)は、
前記第2樹脂体(9)が前記第1樹脂体(2)に組み付けられた状態において、前記スライド方向に延びる止水構造部を構成し、
前記止水構造部は、
当該止水構造部における前記スライド方向の前記一方側に位置する第1領域では、前記第1樹脂体(2)及び前記第2樹脂体(9)の一方の樹脂体(2)に設けられた前記スライド方向に延びる止水面(止水板14の側面)と、前記第1樹脂体(2)及び前記第2樹脂体(9)の他方の樹脂体(9)に設けられた前記スライド方向に延びる止水リブ(28)と、の押圧接触による、第1止水構造を有するとともに、
当該止水構造部における前記第1領域より前記スライド方向の他方側に位置する第2領域では、前記一方の前記樹脂体(2)に設けられた前記スライド方向に延びる第1溝部(27)に、前記他方の前記樹脂体(9)に設けられた前記スライド方向に延びる第1止水板(14)が入ることによる、第2止水構造を有する、
樹脂構造体。
[2]
上記[1]に記載の樹脂構造体(1)において、
前記止水構造部は、
前記第1領域において、前記一方の前記樹脂体(2)に設けられた前記スライド方向に延びる第2溝部(16)に、前記他方の前記樹脂体(9)に設けられた前記スライド方向に延びる第2止水板(25)が入ることによる、第3止水構造を有する、
樹脂構造体。
【符号の説明】
【0050】
1 樹脂構造体
2 フレーム(第1樹脂体)
9 サイドカバー(第2樹脂体)
14 止水板(第1止水板)
16 溝(第2溝部)
25 止水板(第2止水板)
27 溝(第1溝部)
28 止水リブ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11