(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態のリアクトルについて説明する。
【0011】
[1.第1実施形態]
[1−1.概略構成]
図1は、第1実施形態に係るリアクトルの斜視図である。リアクトル1は、設置対象物に設置される。設置対象物は、例えば、冷却装置などの金属製の筐体である。設置対象物には、リアクトル1の熱、より具体的には、リアクトル1のコイル40で発生した熱が当該設置対象物に伝達されて放熱される。すなわち、設置対象物は、リアクトル1が設置される対象であるとともに、コイル40の熱を吸収する冷却部材である。
【0012】
リアクトル1の設置対象物への固定は、固定部27を介してネジ締結等により成される。固定部27は、リアクトル1の下方に設けられており、固定部27が設置対象物に接触するとともに、リアクトル1の底面が設置対象物に接触する。
【0013】
なお、本明細書において、説明の便宜上、Z軸の矢印が指す方向を「上」、その逆方向を「下」とし、「下」は「底」とも称する。また、Z軸方向をリアクトル1の「高さ」の方向とする。コイル40a、40bの巻軸が延びる方向をZ軸方向と直交するY軸方向とし、Z軸方向及びY軸方向に直交する方向をX軸方向とする。
【0014】
[1−2.詳細構成]
図2は、第1実施形態に係るリアクトルの分解斜視図である。
図1及び
図2に示すように、リアクトル1は、コア10、コア10を被覆する樹脂部材20、及び、樹脂部材20を介してコア10の一部に装着されるコイル40を備えている。
【0015】
コア10は、中脚部11、外脚部12、13及びヨーク部14、15を有し、環状に構成されている。中脚部11は、コイル40が装着される柱状のコアである。ここでは、中脚部11は、3つの円柱状の中脚コア11a〜11cが軸を共通にして接着剤等で接合されて柱形状を成している。中脚部11の断面は円形である。
【0016】
外脚部12、13は、柱状であり、中脚部11を中央にして中脚部11と並列に配置されている。外脚部12、13は、中脚部11よりも設置対象物に近くなるように配置されている。すなわち、中脚部11、外脚部12、13は平行に配置され、かつ、外脚部12、13が配置される仮想的な平面から離れているものの、外脚部12と外脚部13の間に入り込むように中脚部11が配置されている。本実施形態では、外脚部12、13は、ブロック状の外脚コア12a〜12c、13a〜13cを接着剤等で接合して柱形状を成している。外脚部12、13は、断面が概略直角三角形状を有する。具体的には、直角三角形の斜辺が外脚部12、13において中脚部11又はコイル40と対向する部分である。当該外脚部12、13の中脚部11又はコイル40と対向する部分は、コイル40の外周に沿った形状を有する。特に、外脚部12、13のコイル40と対向する部分の縁16が、丸みを帯びた形状になっており(
図3参照)、丸みを持たせず角にした場合と比べてコイル40の外周との距離を長くしている。
【0017】
ヨーク部14、15は、ここでは、逆さV字形状のヨークコア14a、15aで構成されている。ヨーク部14、15は、対向配置され、中脚部11及び外脚部12、13の端部を繋ぐ。具体的には、ヨーク部14には、中脚部11、外脚部12、13の一端が接続され、ヨーク部15には、中脚部11、外脚部12、13の他端が接続されることで、コア10が環状に構成される。中脚部11の周囲に設けられたコイル40に磁束が発生すると、当該磁束は、ヨーク部14を通って外脚部12、13、ヨーク部15を介して中脚部11に戻り、2つの閉じた磁気回路が形成される。
【0018】
ヨーク部14、15の設置対象物側の縁には、切り欠き部17が設けられている。この切り欠き部17は、概略三角形状であり、コイル40を露出させる。切り欠き部17は、概略台形形状としても良い。すなわち、台形の平行な辺のうち、短い上辺部分が円弧であり、中脚部11の下部と一致する。また、切り欠き部17の箇所は、コイル40で発生した磁束の流れが少なく、リアクトル1の特性に影響の小さい箇所である。
【0019】
中脚コア11a〜11c、外脚コア12a〜12c、13a〜13c、ヨークコア14a、15aは、磁性体であれば良い。例えば、圧粉磁心、フェライトコア、積層鋼板を用いることができる。ここでは、これらのコアは、圧粉磁心である。
【0020】
樹脂部材20は、コア10を樹脂で被覆してなる部材である。そのため、樹脂部材20は、コア10の外形に倣った形状を有する。この樹脂部材20は、中脚被覆部21、外脚被覆部22、23、ヨーク被覆部24、25を有する。中脚被覆部21は、中脚部11を被覆する。中脚被覆部21は、ここでは、円筒形状である。
【0021】
外脚被覆部22、23は、外脚部12、13を被覆する。外脚被覆部22、23は、ここでは、筒形状であり、コイル40と対向する部分は、コイル40の外周に沿った形状を有する。外脚被覆部22のコイル40と対向する部分の縁は、丸みを帯びた形状になっており、丸みを持たせず角にした場合と比べてコイル40の外周との距離を長くしている。外脚被覆部22、23は、中脚被覆部21を中央にして中脚被覆部21と並列に配置され、かつ、中脚被覆部21よりも設置対象物に近くなるように配置されている。
【0022】
ヨーク被覆部24、25は、ヨーク部14、15を被覆する。但し、脚部11〜13と接続される面とは反対側の面である背面を露出させる開口が設けられている。ヨーク被覆部24、25には、設置対象物側の縁に切り欠き部245が設けられている。この切り欠き部245は、ヨーク部14、15に設けられた切り欠き部17に倣った形状であり、コイル40を露出させる。
【0023】
ヨーク被覆部24には、中脚被覆部21、外脚被覆部22、23の一端が接続され、ヨーク被覆部25には、中脚被覆部21、外脚被覆部22、23の他端が接続されている。このヨーク被覆部24、25は、ヨーク部14、15を構成するヨークコア14a、15aを樹脂モールド成形してなる樹脂成形部である。
【0024】
本実施形態では、樹脂部材20は、二分割されて構成されており、樹脂体20a、20bを有する。樹脂体20a、20bは、略E字形状を有し、別々に成形しておき、互いの端部を向かい合わせることで概略θ形状の樹脂部材20が構成される。樹脂体20a、20bは、ヨーク被覆部24、25から3本の筒部T1〜T3が並列に設けられてなる。樹脂体20aの中央の筒部T1と樹脂体20bの中央の筒部T1とが向かい合うことで、中脚被覆部21が構成される。樹脂体20aの両側の筒部T2、T3と樹脂体20bの両側の筒部T2、T3とが向かい合うことで、外脚被覆部22、23が構成される。このように、樹脂体20a、20bを別々に成形するのは、互いの端部を向かい合わせる前に、中脚部11、外脚部12、13を構成する各コア部材を各筒部T1〜T3に収容するため、及び、コイル40を中央の筒部T1に嵌め込んで樹脂部材20にコイル40を装着するためである。
【0025】
本実施形態では、後述するように、コイル40は、2つのコイル40a、40bからなり、コイル40a、40bを絶縁するため、樹脂体20a、20bの間には、板状の仕切り部26が設けられている。この仕切り部26の中央部分には、貫通孔26aが設けられており、この貫通孔26aに樹脂体20a、20bの中央の筒部T1の先端が嵌合する。仕切り部26はコイル40a、40bの端部を覆う程度の大きさであり、外脚被覆部22、23の間に位置している。
【0026】
樹脂部材20は、リアクトル1を設置対象物に固定するための固定部27、リアクトル1が設置対象物に接触する接触部28を更に有する。この固定部27は、ヨーク被覆部24、25から外方に張り出した板状体であり、外縁の一部を切り欠いてなる切り欠き27aが設けられている。リアクトル1は、この切り欠き27aに、例えば切り欠き27aより大きな頭部を有するボルトを差し込んで締結により設置対象物に固定される。この固定部27は、ヨーク被覆部24に2箇所、ヨーク被覆部25に2箇所の合計4箇所に設けられている。
【0027】
図3及び
図4に示すように、接触部28は、リアクトル1が設置対象物に接触する部分である。接触部28としては、固定部27の底面、外脚被覆部22、23の底面、ヨーク被覆部24、25の底面が挙げられる。本実施形態では、これらの全ての底面が設置対象物に接触するが、少なくとも、外脚被覆部22、23の底面、又は、ヨーク被覆部24、25の底面が設置対象物に接触していれば良い。リアクトル1を安定的に設置できるからである。より安定的に設置するためには、ヨーク被覆部24、25の底面が設置対象物に接触することが好ましい。
【0028】
樹脂部材20は、端子台29を有する。端子台29は、端子30を設けるための部分であり、ヨーク被覆部24、25の上部にそれぞれ2箇所設けられている。すなわち、ヨーク部14、15が逆さV字形状であるため、当該V字を形成する斜面の上部はデッドスペースになっており、当該デッドスペースに端子台29が設けられている。各端子台29には、端子30が設けられている。すなわち、端子30は、リアクトル1の底面となる、固定部27の底面、外脚被覆部22、23の底面、ヨーク被覆部24、25の底面よりも、設置対象物から離れた上方に設けられている。
【0029】
端子30は、コイル40a、40bの端部と電気的に接続されており、ネジ締結等により外部機器の配線と電気的に接続される。外部機器から電力が供給されるとコイル40a、40bに電力が流れ、コイル40a、40bに磁束が発生する。
【0030】
コイル40は、1本の導線が巻回されてなるコイル40a、40bを有する。コイル40a、40bは、ここでは、平角線が円筒状に巻回されたエッジワイズコイルである。コイル40a、40bは、巻軸を共通にして中脚被覆部21を介して中脚部11に装着されている。
【0031】
コイル40は、その少なくとも一部が外脚被覆部22、23の間に入り込んで配置されている。本実施形態では、
図3に示すように、コイル40は、その高さの半分程度が外脚被覆部22、23の間又は外脚部12、13の間に入り込んでいる。
【0032】
図3に示すように、コイル40は、設置対象物に接触する。本実施形態では、コイル40の外周の最下部が設置対象物と接触し、接触部28となる。本実施形態では、設置対象物本体の上部に絶縁シート60が設けられ、絶縁シート60上に放熱シート50が設けられており、コイル40の外周の最下部が放熱シート50に接触し、コイル40の熱が放熱シート50及び絶縁シート60を介して冷却装置の筐体などの設置対象物本体に放熱される。換言すれば、本実施形態の設置対象物とは、冷却装置の筐体などの設置対象物本体と、その上部に設けられた放熱シート50及び絶縁シート60とを含む。
【0033】
但し、放熱シート50と絶縁シート60は、リアクトル1が設置対象物本体に設置された際に、コイル40と設置対象物本体との間に両者をつなぐように介在していれば良く、リアクトル1に設けるようにしても良い。すなわち、
図4に示すように、樹脂部材20には、各固定部27から切り欠き部245に張り出した張り出し部27bがそれぞれ設けられている。ヨーク被覆部24の2つの張り出し部27bと、ヨーク被覆部25の2つの張り出し部27bとの間で、コイル40a、40bに対する放熱シート50を載せた絶縁シート60を架橋するようにしても良い。絶縁シート60の端を張り出し部27bに載せることで架橋し、放熱シート50及び絶縁シート60をリアクトル1に設けることができる。
【0034】
放熱シート50は、コイル40よりも熱伝導性が高いことが好ましい。絶縁シート60は、コイル40と設置対象物とを電気的に絶縁する。絶縁シート60は、例えば絶縁紙である。なお、放熱シート50が電気絶縁性を有するのであれば、絶縁シート60は設けなくても良い。
【0035】
[1−3.作用・効果]
(1)本実施形態のリアクトル1は、設置対象物に設置されるリアクトルであって、コア10と、コア10の一部の周囲に装着されるコイル40と、を備え、コア10は、コイル40が装着される柱状の中脚部11と、中脚部11を中央にして中脚部11と並列に配置され、かつ、中脚部11よりも設置対象物に近くなるように配置された二本の柱状の外脚部12、13と、を有し、コイル40は、少なくとも一部が外脚部12、13の間に入り込んで配置され、コイル40は、設置対象物と接触する接触部28を有するようにした。
【0036】
これにより、低背化させ、かつ、放熱性を向上させることができる。すなわち、従来の二脚構造のリアクトルでは、コイル40が装着されない外脚が、コイル40が装着される中脚と設置対象物との間に介在することによりリアクトルが大型化していたが、本実施形態では、少なくとも二本の柱状の外脚部12、13を設けるとともに、中脚部11よりも設置対象物に近くなるように配置した。その上で、コイル40の一部が外脚部12、13の間に入り込むように配置したので、リアクトル1を低背化することができる。また、コイル40が設置対象物と接触する接触部28を有するので、発生したコイル40の熱を効率的に設置対象物に逃がすことができ、放熱性を向上させることができる。また、脚部11〜13が同一平面上に平行に並んで配置される場合と比べて、外脚部12、13が中脚部11よりも設置対象物に近くなるように配置しているので、コイル40の設置対象物とは反対側の上面がコア10から大きく露出することになるので、放熱性を向上させることができる。
【0037】
(2)リアクトル1は、コア10を被覆する樹脂部材20を備え、コア10は、対向配置され、中脚部11及び外脚部12、13の端部を繋ぐ一対のヨーク部14、15を有し、コイル40は、樹脂部材20を介してコア10の一部に装着され、樹脂部材20は、外脚部12、13を被覆する外脚被覆部22、23と、ヨーク部14、15を被覆するヨーク被覆部24、25と、を有し、外脚被覆部22、23及びヨーク被覆部24、25の少なくとも一方は、設置対象物と接触する接触部28を有するようにした。
【0038】
これにより、コイル40とコア10との絶縁を確保できるとともに、設置対象物との絶縁を確保することができる。また、コイル40の接触部28の他、外脚被覆部22、23及びヨーク被覆部24、25の少なくとも一方が設置対象物と接触するので、リアクトル1を安定的に設置することができる。
【0039】
(3)ヨーク部14、15及びヨーク被覆部24、25には、コイル40を露出させる切り欠き部17、245を設けるようにした。これにより、コイル40の熱を逃がすことができるので、放熱性を向上させることができる。また、切り欠き部17を三角形状とするよりも略台形形状とすることにより、放熱性をさらに向上させることができる。また、切り欠き部17は、コイル40の通電により発生する磁束が通りにくい箇所に設けたので、磁気特性への影響が小さくて済む。すなわち、切り欠き部17を設けない場合と比べても、インダクタンスLの低減率を1%以内に抑えることができる。切り欠き部17を設けるコイル40の通電により発生する磁束が通りにくい箇所とは、ヨーク部14、15の中脚部11と接合される箇所の下方であって、外脚部12、13と接合される箇所の間である。切り欠き部17の形状を三角形状とする場合は、三角形の一頂点を中脚部11の底部に設け、三角形の底辺を外脚部12、13間に設ける。切り欠き部17の形状を略台形形状とする場合は、平行な短辺を中脚部11の底部に沿わせ、長辺を外脚部12、13の間に設ける。なお、インダクタンスの低減率は、(切り欠き部17有りのL値/切り欠き部17無しのL値)×100により算出した。
【0040】
(4)コイル40の接触部28は、設置対象物の放熱シート50と接触するようにした。
【0041】
これにより、設置対象物と接触部28との間に熱伝導率の悪い空気が介在することが抑制されるので、放熱性をより向上させることができる。
【0042】
(5)外脚部12、13及び外脚被覆部22、23は、コイル40と対向する部分が、コイル40の外周に沿った形状を有するようにした。これにより、コイル40をより下方に配置することができるので、リアクトル1をより低背化することができる。
【0043】
(6)外脚部12、13及び外脚被覆部22、23は、コイル40と対向する部分の縁16を、丸みを帯びた形状とした。これにより、当該縁16を丸みを持たせずに角にした場合と比べて、外脚被覆部22、23とコイル40との距離を長くすることができるので、外脚被覆部22、23とコイル40との隙間が大きくなり、放熱性をより向上させることができる。
【0044】
[2.第1実施形態の変形例]
第1実施形態の変形例を、
図5を用いて説明する。本変形例は、第1実施形態の基本構成と同じである。以下では、第1実施形態と異なる点のみを説明し、第1実施形態と同じ部分については同じ符号を付して詳細な説明は省略する。
【0045】
図5は、第1実施形態の変形例に係るリアクトルの斜視図である。
図6は、コア10の分解斜視図である。
図7は、本変形例に係るリアクトルの断面図であり、
図5のB−B断面図である。
【0046】
図5に示すように、本変形例のリアクトル1は、第1実施形態と比べて扁平である。具体的には、
図6に示すように、コア10は、中間脚コア18と、中間脚コア18を挟む一対のヨークコア14a、15aとからなる。中間脚コア18は、中脚部11と、その両側の外脚部12、13と、各脚部11〜13の端部を繋ぐ一対の連結部18aとを有し、概略θ形状を成す。
【0047】
図7に示すように、本変形例の中脚部11は、その断面がオーバル形状である。オーバル形状とは、円形を扁平に変形させた形状であり、一方向に長く、扁平な形状である。オーバル形状としては、例えば、楕円形状、二本の平行な直線を一対の半円で繋いだ長穴形状、四隅の角が丸まった角丸長方形状が挙げられる。ここでは、中脚部11は、二本の平行な直線を一対の半円で繋いだ長穴形状であり、その長手方向(X軸方向)が二本の外脚部12、13の並びの方向と平行になるように配置されている。本変形例の外脚部12、13は、その断面が概略台形形状である。
【0048】
連結部18aは、各脚部11〜13の一端を繋ぐとともに、ヨークコア14a、15aと接合されている。連結部18aには、ヨークコア14a、15aの切り欠き部17と同じ形状の切り欠き部181が設けられており、コイル40a、40bの端面を露出させる。
【0049】
中間脚コア18は、磁性粉末と樹脂とを含む複合磁性材料により構成された樹脂コアである。磁性粉末としては、軟磁性粉末を使用でき、例えば、Fe粉末、Fe−Si合金粉末、Fe−Al合金粉末、Fe−Si−Al合金粉末(センダスト)、非晶質軟磁性合金粉末(アモルファス軟磁性合金粉末)又はこれら2種以上の混合粉を用いることができる。樹脂は、磁性粉末を保持する。樹脂としては、熱硬化性樹脂、紫外線硬化性樹脂、又は熱可塑性樹脂を用いることができる。熱硬化性樹脂としては、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン、ジアリルフタレート樹脂、シリコーン樹脂などが使用できる。紫外線硬化性樹脂としては、ウレタンアクリレート系、エポキシアクリレート系、アクリレート系、エポキシ系の樹脂を使用できる。熱可塑性樹脂としては、ポリイミドやフッ素樹脂などの耐熱性に優れた樹脂を使用することが好ましい。硬化剤を添加することにより硬化するエポキシ樹脂は、硬化剤の添加量などによってその粘度を調整できることから、本発明に適している。熱可塑性のアクリル樹脂やシリコーン樹脂も使用可能である。
【0050】
中間脚コア18は、樹脂体20a、20bの3つの筒部T1〜T3に、磁性粉末と樹脂とが混合された複合磁性材料が充填され、樹脂が固化されることで形成される。そのため、各脚部11〜13及び連結部18aは樹脂コアで構成される。なお、中間脚コア18の成形過程で、圧粉磁心の作製のように、数ton〜数十tonもの圧力でプレスすることはなく、加圧しないか、プレスにより加圧しても数kg〜数十kg程度である。
【0051】
樹脂体20a、20bには、ヨークコア14a、15aが埋設されており、中間脚コア18を複合磁性材料により構成しているので、当該材料に含まれる樹脂により、中間脚コア18(連結部18a)とヨークコア14a、15aが接合される。そのため、ヨークコア14a、15aと接合するための接着剤が不要である。
【0052】
ヨークコア14a、15aは、中間脚コア18よりも高い透磁率を有する磁性体で構成することが好ましい。但し、ヨークコア14a、15aも中間脚コア18と同様に複合磁性材料により構成し、同じタイミングでヨークコア14a、15aに含まれる樹脂及び中間脚コア18に含まれる樹脂を固化することで、ヨークコア14a、15aと中間脚コア18との接合箇所を、継ぎ目なく一続きにすることができる。換言すれば、ヨークコア14a、15aと中間脚コア18との間のギャップをなくすことができるので、漏れ磁束がコイル40を貫くことによる損失(鉄損)を低減できる。
【0053】
本変形例では、ヨークコア14a、15aは、中間脚コア18よりも高い透磁率を有する圧粉磁心で構成されている。
図8に示すように、ヨークコア14a、15aと中間脚コア18の接合箇所は、連結部18aが設けられているので、連結部18aの厚みTの分、コイル40の端面から遠ざかっているため、仮に当該接合箇所から漏れ磁束が出たとしても、当該漏れ磁束がコイル40を貫くことによる損失(鉄損)を抑制できる。
【0054】
中脚被覆部21及びコイル40は、中脚部11に倣ってオーバル形状である。ここでは、中脚被覆部21及びコイル40は、二本の平行な直線を一対の半円で繋いだ長穴形状であり、その長手方向(X軸方向)が二本の外脚部12、13の並びの方向(Y軸方向)と並行になるように配置されている。
【0055】
以上のように、本変形例では、中脚部11は、その断面がオーバル形状であり、その長手方向が2本の外脚部12、13の並びの方向と平行になるように配置するようにした。これにより、リアクトル1をより低背化することができるとともに、接触部28の設置対象物との接触面積を大きくすることができるので放熱性をより向上させることができる。
【0056】
[3.他の実施形態]
本発明は、実施形態、その変形例に限定されるものではなく、下記に示す他の実施形態も包含する。また、本発明は、実施形態、その変形例及び下記の他の実施形態を全て又はいずれかを組み合わせた形態も包含する。さらに、これらの実施形態を発明の範囲を逸脱しない範囲で、種々の省略や置き換え、変更を行うことができ、その変形も本発明に含まれる。
【0057】
(1)上記実施形態では、コイル40と設置対象物本体との間に、放熱シート50及び絶縁シート60が介在することにより、コイル40の接触部28が、固定部27の底面、外脚被覆部22、23の底面、及びヨーク被覆部24、25の底面(固定部27、外脚被覆部22、23、及びヨーク被覆部24、25の各接触部28)の位置する平面よりも高い位置に配置されていたが、コイル40の接触部28は、外脚被覆部22、23の接触部28又はヨーク被覆部24、25の接触部28と同一平面上に設けるようにしても良い。これにより、コイル40がより外脚部12、13又は外脚被覆部22、23間に入り込むので、リアクトル1の高さは、コイル40の外径と一致し、リアクトル1をより低背化することができる。この場合は、放熱シート50及び絶縁シート60を設けず、コイル40と設置対象物とが直接接触する。また、コイル40の接触部28は、固定部27、外脚被覆部22、23、及びヨーク被覆部24、25の各接触部28と同一平面上に設けるようにしても良い。
【0058】
(2)上記実施形態では、コア10を圧粉磁心で構成したが、ヨーク部14、15を圧粉磁心で構成し、中脚部11、外脚部12、13は、磁性粉末と樹脂とを含む複合磁性材料で構成された樹脂コアで構成しても良い。
【0059】
(3)上記実施形態では、外脚部12、13を二本設けたが、3本以上設けても良い。この場合、設置対象物に近い二本の外脚部12、13以外のコイル40が巻回されない外脚部は、設置対象物から離れた位置に設けられる。但し、当該外脚部は、コイル40の上部より低い位置に配置されることが好ましい。例えば、外脚部12、13を4本設ける場合は、
図3に示すように、2本は設置対象物に近くなるように配置し、残りの2本は、端子台29を設けた位置に配置する。この場合、端子台29は設置しないか、コイル40の上部より低い位置に配置を変更する。
【0060】
(4)上記実施形態では、コイル40を構成する2つのコイル40a、40bを設けたが、コイルの数は1つでも良い。この場合、仕切り部26は不要であり、端子台29及び端子30も2つあれば良い。
【0061】
(5)上記実施形態では、樹脂部材20を設けたが、必ずしもこれに限定されない。例えば、中脚部11の周囲、外脚部12、13、ヨーク部14、15のコイル40と対向する部分のみに、絶縁紙等の絶縁物を配置するようにしても良い。この場合、外脚部12、13及びヨーク部14、15の底面は露出しており、外脚部12、13の底面及びヨーク部14、15の底面の少なくとも一方は、設置対象物と接触する接触部28となる。この接触部28とコイル40の接触部28は、同一平面上に設けられていても良い。
【0062】
(6)上記実施形態では、逆さV字形状を成すヨーク部14、15の斜面の上部には、端子台29を設けるようにしたが、端子台29を設けずに、逆さV字形状を成すヨーク部14,15の斜面の上部からリード線を引き出すようにしても良い。リード線は、コイル40の端部と電気的に接続された導線であり、外部機器と接続される。或いは、リード線は、コイル40の端部そのものであっても良い。このように、逆さV字形状を成すヨーク部の斜面の上部からリード線を引き出すことにより、逆さV字形状を成すヨーク部の斜面の上部のデッドスペースを活用してリード線を引き出すことになるので、リアクトルの低背化を図ることができる。