(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6871315
(24)【登録日】2021年4月19日
(45)【発行日】2021年5月12日
(54)【発明の名称】積層造形装置および三次元造形物の製造方法
(51)【国際特許分類】
B22F 3/105 20060101AFI20210426BHJP
B33Y 10/00 20150101ALI20210426BHJP
B33Y 30/00 20150101ALI20210426BHJP
B22F 3/16 20060101ALI20210426BHJP
【FI】
B22F3/105
B33Y10/00
B33Y30/00
B22F3/16
【請求項の数】12
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2019-135801(P2019-135801)
(22)【出願日】2019年7月24日
(65)【公開番号】特開2021-17642(P2021-17642A)
(43)【公開日】2021年2月15日
【審査請求日】2020年2月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000132725
【氏名又は名称】株式会社ソディック
(72)【発明者】
【氏名】宮下 泰行
【審査官】
池ノ谷 秀行
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2011/049143(WO,A1)
【文献】
特開平10−090167(JP,A)
【文献】
特開2010−113838(JP,A)
【文献】
特開2003−157997(JP,A)
【文献】
特開2007−141691(JP,A)
【文献】
特開2016−006215(JP,A)
【文献】
国際公開第2016/103686(WO,A1)
【文献】
特開2005−039119(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22F 3/105
B22F 3/16
B33Y 10/00−99/00
B29C 64/00−64/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
造形領域を覆うチャンバと、
前記チャンバに所定濃度の不活性ガスを充満させる不活性ガス供給装置と、
前記造形領域に対して材料層を形成する材料層形成装置と、
前記チャンバの上面に設けられるウインドウと、
前記チャンバの上方に設けられ前記材料層に前記ウインドウを介してレーザ光を照射して固化層を形成する照射装置と、
前記ウインドウに帯電した電荷の極性に対して逆の極性に電離された気体を前記ウインドウに供給して前記ウインドウを除電する除電装置と、を備える積層造形装置。
【請求項2】
前記除電装置は、
所定の気体を電離させ正イオンまたは負イオンを生成する放電電極と、
前記放電電極を把持し、少なくとも一部が電離された前記気体を前記ウインドウに向かって吹き出す開口が形成されたノズルと、
前記放電電極に所定の電圧を印加する電源と、を含む請求項1に記載の積層造形装置。
【請求項3】
前記気体は空気である、請求項2に記載の積層造形装置。
【請求項4】
前記不活性ガスおよび前記気体は窒素である、請求項2に記載の積層造形装置。
【請求項5】
前記除電装置による前記ウインドウの除電は、前記固化層の形成前に行われる、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の積層造形装置。
【請求項6】
前記除電装置による前記ウインドウの除電は、前記不活性ガス供給装置が前記チャンバに前記不活性ガスを充満させる前に行われる、請求項5に記載の積層造形装置。
【請求項7】
ウインドウに帯電した電荷の極性に対して、逆の極性に電離された気体を前記ウインドウに供給して前記ウインドウを除電する除電工程と、
造形領域を覆うチャンバに所定濃度の不活性ガスを充満させる不活性ガス充填工程と、
前記造形領域に対して材料層を形成する材料層形成工程と、
前記材料層に前記チャンバの上方に設けられたウインドウを介してレーザ光を照射して固化層を形成する照射工程と、を備える三次元造形物の製造方法。
【請求項8】
前記除電工程においては、少なくとも一部が電離された所定の気体が前記ウインドウに吹き付けられる、請求項7に記載の三次元造形物の製造方法。
【請求項9】
前記気体は空気である、請求項8に記載の三次元造形物の製造方法。
【請求項10】
前記不活性ガスおよび前記気体は窒素である、請求項8に記載の三次元造形物の製造方法。
【請求項11】
前記除電工程は前記照射工程前に行われる、請求項7から請求項10のいずれか1項に記載の三次元造形物の製造方法。
【請求項12】
前記除電工程は前記不活性ガス充填工程前に行われる、請求項11に記載の三次元造形物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、積層造形装置および三次元造形物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
金属の積層造形装置においては、所定の造形領域に金属材料からなる材料層を形成することと、当該材料層にレーザ光を照射して固化層を形成することを繰り返し、所定数の固化層を積層して所望の三次元造形物を形成する。
【0003】
このような積層造形装置においては、材料層および固化層の変質を防止するため、造形領域を密閉されたチャンバで覆い、チャンバ内に所定濃度の不活性ガスを充満させた上で造形が行われる。チャンバの上方に設けられた照射装置から出力されたレーザ光は、チャンバの上面に設けられたウインドウを透過し、造形領域に形成された材料層に照射される。
【0004】
一方、材料層にレーザ光を照射して、材料層を焼結または溶融・凝固させて固化層を形成する際、ヒュームとよばれる金属蒸気が発生する。造形中に発生したヒュームは、チャンバ内を上昇し、ウインドウに付着する可能性がある。ウインドウにヒュームが付着すると、ウインドウを透過するレーザ光の一部がヒュームに吸収されて、発熱によりレーザ光の焦点位置がずれたり、レーザ光のエネルギが減衰したりして、所望の品質の三次元造形物が得られなくなる可能性がある。
【0005】
そこで、従来の積層造形装置においては、ウインドウの周辺に不活性ガスを充満させたり、不活性ガスの流れを形成したりすることで、ヒュームがウインドウに付着しないようにしていた。例えば、特許文献1の積層造形装置においては、ウインドウを覆うようにヒューム拡散部を設けている。ヒューム拡散部は下部に開口を有する円筒状の筐体を含んでなる。ヒューム拡散部に不活性ガスを供給することで、ウインドウの下方に不活性ガスが充満するとともに、開口から向かう不活性ガスの流れを形成してヒュームがウインドウに付着することを防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第5721887号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このようにウインドウを介してレーザ光の照射を行う積層造形装置において、ウインドウは帯電している可能性がある。例えば、造形前にウインドウを布やペーパー等で拭浄すると、静電気が発生してウインドウが帯電する。ウインドウが帯電しているとき、ウインドウとは逆の極性に帯電したヒュームがウインドウに引き寄せられるので、ウインドウにヒュームが付着しやすくなる。
【0008】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、除電装置によりウインドウの除電を行うことで、より好適にウインドウにヒュームが付着することを防止する積層造形装置および三次元造形物の製造方法を提供することを主たる目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によれば、造形領域を覆うチャンバと、チャンバに所定濃度の不活性ガスを充満させる不活性ガス供給装置と、造形領域に対して材料層を形成する材料層形成装置と、チャンバの上面に設けられるウインドウと、チャンバの上方に設けられ材料層にウインドウを介してレーザ光を照射して固化層を形成する照射装置と、
ウインドウに帯電した電荷の極性に対して逆の極性に電離された気体をウインドウに供給してウインドウを除電する除電装置と、を備える積層造形装置が提供される。
【0010】
また、本発明によれば、
ウインドウに帯電した電荷の極性に対して逆の極性に電離された気体をウインドウに供給してウインドウを除電する除電工程と、造形領域を覆うチャンバに所定濃度の不活性ガスを充満させる不活性ガス充填工程と、造形領域に対して材料層を形成する材料層形成工程と、材料層にチャンバの上方に設けられたウインドウを介してレーザ光を照射して固化層を形成する照射工程と、を備える三次元造形物の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る積層造形装置および三次元造形物の製造方法においては、ウインドウは除電装置によって除電される。これにより、ヒュームがウインドウに付着しにくくなり、ウインドウが清浄な状態を長時間維持できる。ひいては、ウインドウに付着したヒュームにより造形品質が低下することを防止できる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を用いて本発明の実施形態について説明する。以下に説明される各種変形例は、それぞれ任意に組み合わせて実施することができる。
【0014】
図1および
図2に示すように、本実施形態の積層造形装置1は、実質的に密閉されるように構成されたチャンバ10を備える。なお、本実施形態の積層造形装置1は、固化層85に対して切削加工を行う切削装置3を備える。このとき、チャンバ10は、三次元造形物の形成を行う造形室11と、切削装置3のX軸駆動装置31およびY軸駆動装置33の大部分が収容される駆動室12とに蛇腹13によって仕切られる。造形室11と駆動室12との間には、不活性ガスが通過できるだけのわずかな隙間である連通部14が存在している。
【0015】
切削装置3は、チャンバ10の造形室11内に配置されスピンドル39を内蔵する加工ヘッド37と、加工ヘッド37をZ軸方向に移動させるZ軸駆動装置35と、Z軸駆動装置35を含んで加工ヘッド37をY軸方向に移動させるY軸駆動装置33と、Y軸駆動装置33およびZ軸駆動装置35を含んで加工ヘッド37をX軸方向に移動させるX軸駆動装置31と、を備える。スピンドル39は、エンドミルなどの切削工具を装着して回転させることができるように構成されている。以上の構成によって、加工ヘッド37は、スピンドル39を造形室11内の任意の位置に移動させて、固化層85に対して切削加工を施すことができるようになっている。この切削工具を用いて、所定数の固化層85が形成される度に、固化層85の端面に対して切削加工を行ってもよい。また、リコータヘッド43が固化層85の隆起部に衝突したときにも、隆起部を除去するために固化層85の上面に対して切削加工を行ってもよい。
【0016】
材料層形成装置4が、チャンバ10の造形室11内に設けられる。材料層形成装置4は、所望の三次元造形物が形成される領域である造形領域Rを有するベース台41と、ベース台41上に配置され水平1軸方向に移動可能に構成されたリコータヘッド43と、を含む。リコータヘッド43の両側面にはそれぞれブレードが設けられる。リコータヘッド43は、不図示の材料供給装置から金属の材料粉体が供給され、内部に収容した材料粉体を底面から排出しながら水平1軸方向に往復移動する。このとき、ブレードは排出された材料粉体を平坦化して材料層83を形成する。造形領域Rには、造形テーブル駆動装置47により鉛直方向に移動可能な造形テーブル45が設けられる。積層造形装置1の使用時には、造形テーブル45上にベースプレート81が配置され、ベースプレート81上に1層目の材料層83を形成されてもよい。
【0017】
照射装置5が、チャンバ10の造形室11の上方に設けられる。本実施形態の照射装置5は、造形領域R上に形成される材料層83の所定の照射領域にレーザ光Lを照射して、照射位置の材料粉体を焼結または溶融・凝固させて固化層85を形成する。照射領域は、造形領域R内に存在し、所望の三次元造形物の輪郭形状で囲繞される領域とおおよそ一致する。
図3に示すように、照射装置5は、光源51と、コリメータ53と、フォーカス制御ユニット55と、一対のガルバノミラー57,59と、ガルバノミラー57,59をそれぞれ回転させるアクチュエータと、を含む。
【0018】
光源51はレーザ光Lを生成する。ここで、レーザ光Lは、材料層83を焼結または溶融可能なものであればその種類は限定されず、例えば、ファイバレーザ、CO
2レーザ、YAGレーザ、グリーンレーザまたは青色レーザである。コリメータ53は、光源51より出力されたレーザ光Lを平行光に変換する。フォーカス制御ユニット55は、光源51より出力されたレーザ光Lを集光し所望のビーム径に調整する。ガルバノミラー57,59は、不図示の制御装置から入力される回転角度制御信号の大きさに応じて回転角度が制御され、光源51より出力されたレーザ光Lを2次元走査する。
【0019】
ガルバノミラー57,59を通過したレーザ光Lは、チャンバ10の造形室11の上面に設けられたウインドウ15を透過して造形領域Rに形成された材料層83に照射される。ウインドウ15は、レーザ光Lを透過可能な材料で形成される。具体的に、ウインドウ15の材料は、レーザ光Lの種類に応じて、石英ガラスもしくはホウケイ酸ガラスまたはゲルマニウム、シリコン、ジンクセレンもしくは臭化カリウムの結晶等から選択される。例えば、レーザ光LがファイバレーザまたはYAGレーザの場合、ウインドウ15は石英ガラスで構成可能である。
【0020】
ここで、本実施の積層造形装置1は、除電装置6を備える。除電装置6は、ウインドウ15を除電可能に構成されたものであればよいが、本実施形態において、除電装置6は具体的にはコロナ放電式のイオナイザである。
図4は、除電装置6の概略構成を示す断面図である。放電電極61は、所定の電圧が印加され、コロナ放電を生じさせる。コロナ放電により、放電電極61周辺の所定の気体が電離され、正イオンまたは負イオンの少なくとも一方が生成される。好ましくは放電電極61と所定の間隔をおいて接地電極63が設けられる。接地電極63はアース接続された導電体である。接地電極63は、放電電極61周辺の電界強度を強め、放電電極61によるコロナ放電の発生を助ける。ノズル65はウインドウ15の近傍に配置され、一端には開口651が形成され、他端には管路67が接続される。管路67を通って供給された所定の気体は、放電電極61の周囲を通って、コロナ放電を受けながら開口651へと送られる。少なくとも一部が電離された気体が、開口651からウインドウ15に向かって吹き出される。電源69は、放電電極61と接続され、放電電極61に所定の電圧を印加する。電圧印加方式は、DC方式、AC方式、パルスDC方式またはパルスAC方式等、所望の除電速度やイオンバランスに応じて、種々の方式が選択可能である。本実施形態の電源69は、除電装置6の制御装置を兼ねる。
【0021】
本実施形態において、除電装置6によって電離される気体は空気である。管路67は空気供給装置18と接続され、空気供給装置18からは所定量の空気が供給される。空気供給装置18は、例えばエアコンプレッサである。
【0022】
なお、除電装置6は、正イオンまたは負イオンのいずれか一方を発生させるものであってもよいし、正イオンと負イオンを交互に発生させるものであってもよい。例えば、ウインドウ15がガラスであるとき、通常ウインドウ15は正に帯電する。このとき、除電装置6は、負イオンのみを発生させるものであってもよい。
【0023】
また、本実施形態の除電装置6は、1つのノズル65から局所的に電離された気体を供給するいわゆるスポットタイプであるが、複数のノズル65および放電電極61を直線上に配置して帯状に電離された気体を供給するバータイプであってもよいし、ファンによって電離された気体を供給するブロアタイプであってもよい。
【0024】
チャンバ10の上面には、ウインドウ15を覆うようにヒューム拡散部7が設けられてもよい。
図5に示すように、ヒューム拡散部7は、円筒状の筺体71と、筺体71内に配置された円筒状の拡散部材72を備える。筺体71と拡散部材72の間に不活性ガス供給空間73が設けられる。また、筺体71の底面には、拡散部材72の内側に開口部74が設けられる。拡散部材72には多数の細孔75が設けられており、不活性ガス供給空間73に供給された清浄な不活性ガスは細孔75を通じて清浄室76に充満される。そして、清浄室76に充満された清浄な不活性ガスは、開口部74を通じてヒューム拡散部7の下方に向かって噴出される。ヒューム拡散部7は、ウインドウ15が固化層85の形成時に発生するヒュームによって汚染されることを防止するとともに、レーザ光Lの照射経路を横断しようとするヒュームを照射経路から排除することを助ける。なお、除電装置6だけで造形中にウインドウ15にヒュームが付着することを十分防止できる場合は、ヒューム拡散部7を設けなくてもよい。なお、除電装置6のノズル65をよりウインドウ15に近接させるため、筐体71の底面にノズル65を挿通させるための挿通孔77が設けられてもよい。このようにすれば、ヒューム拡散部7を設ける場合でもノズル65をウインドウ15の近くに配置することができ、より好適にウインドウ15を除電することができる。
【0025】
次に、不活性ガスの給排経路について説明する。チャンバ10には、不活性ガス供給装置16から供給される不活性ガスおよびヒュームコレクタ17から返送される不活性ガスの供給口と、チャンバ10からヒュームコレクタ17へとヒュームを含んだ不活性ガスを排出する排出口がそれぞれ1つ以上設けられる。本実施形態においては、供給口として第1供給口211、第2供給口212、第3供給口213、第4供給口214および第5供給口215が設けられる。また、排出口として第1排出口221、第2排出口222および第3排出口223が設けられる。また、詳細は後述するが、不活性ガス供給装置16は、第1の不活性ガス供給装置161と、第2の不活性ガス供給装置162とを含む。各部はホースやパイプ等の管路で接続される。
【0026】
第1供給口211は、リコータヘッド43の一方の側面に設けられる。第2供給口212は、第1供給口211が設けられた側と反対側のベース台41の端面上に敷設された配管に設けられる。第1供給口211および第2供給口212はそれぞれ第1の不活性ガス供給装置161に接続され、リコータヘッド43の移動位置に応じて、択一的に第1供給口211または第2供給口212を通じて所定の圧力と流量の不活性ガスがチャンバ10に供給される。すなわち、照射領域に対して第1供給口211が対面する位置にあるときは第1供給口211を通じて不活性ガスが供給され、照射領域に対して第1供給口211が対面しない位置にあるときは第2供給口212を通じて不活性ガスが供給される。第3供給口213は、第2供給口212が設けられた側のチャンバ10の側壁に設けられ、造形室11の中央より下側の高さに位置する。第3供給口213はヒュームコレクタ17と接続され、ヒュームが除去された清浄な不活性ガスが第3供給口213を通じてチャンバ10に返送される。第4供給口214は、駆動室12の上部に設けられる。第2の不活性ガス供給装置162から駆動室12に供給された不活性ガスは連通部14を通じて造形室11内に供給される。第5供給口215は、ヒューム拡散部7の上部に設けられ、第1の不活性ガス供給装置161からヒューム拡散部7の不活性ガス供給空間73に不活性ガスが供給される。
【0027】
第2供給口212および第3供給口213が設けられた側と反対側のチャンバ10の側壁を覆うように仕切板23が設けられる。仕切板23と側壁とで区切られる空間のチャンバ10の上端部に第1排出口221が設けられ、仕切板23付近のチャンバ10の照射領域側の上端部に第2排出口222が設けられる。また、第2排出口222の下には、第2排出口222を囲むように仕切板23側に断面L字状に延びる上部案内板24が設けられる。仕切板23の下端には、下部が照射領域側に延びる下部案内板25が設けられ、仕切板23と下部案内板25との間には所定の間隙26が形成される。間隙26は、造形室11の中央より下側の高さに位置する。間隙26付近には仕切板23と側壁とで区切られる空間に不活性ガスを吸引する複数のファン27が設けられ、各ファン27の両端には上方向に延びる整流板28が設けられる。仕切板23付近に送られた不活性ガスは、間隙26または下部案内板25の下から、仕切板23と側壁とで区切られる空間を通り、第1排出口221へと送られる。また、間隙26から回収しきれなかった不活性ガスは仕切板23に沿って上昇し、上部案内板24に案内されて第2排出口222へと送られる。第3排出口223は、リコータヘッド43の第1供給口211が設けられていない側の側面に設けられる。第1排出口221、第2排出口222および第3排出口223を通じて、不活性ガスがチャンバ10から排出され、ヒュームコレクタ17へと送られる。
【0028】
不活性ガス供給装置16は、窒素などの不活性ガスをチャンバ10へ供給する。不活性ガス供給装置16は、所定濃度の不活性ガスを供給できるものであればよいが、本実施形態では、第1の不活性ガス供給装置161と、第2の不活性ガス供給装置162とを含んでなる。第1の不活性ガス供給装置161は、第2の不活性ガス供給装置162よりもより高濃度の不活性ガスを供給できるものが望ましく、例えば、第1の不活性ガス供給装置161はPSA式窒素発生装置であり、第2の不活性ガス供給装置162は膜分離式窒素発生装置である。前述の通り、第1の不活性ガス供給装置161と第1供給口211、第2供給口212および第5供給口215とが接続され、第2の不活性ガス供給装置162と第4供給口214とが接続される。このように構成することで、不活性ガス濃度が直接的に造形に影響する造形室11により高濃度の不活性ガスを供給できるとともに、所要の不活性ガス供給量を維持することができる。なお、不活性ガスとは、材料粉体と実質的に反応しないガスであり、窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガスなどから材料粉体の種類に応じて適当なものが選択される。また、不活性ガス供給装置16は1つであってもよいし、所定濃度の不活性ガスが貯留されたガスボンベであってもよい。
【0029】
ヒュームコレクタ17は、例えば乾式電気集塵機である。チャンバ10から排出されたヒュームを含む不活性ガスは、ヒュームコレクタ17に送られ、電気集塵によりヒュームが除去される。ヒュームが除去された清浄な不活性ガスが、チャンバ10の第3供給口213に送られる。このような構成により、不活性ガスの再利用が可能になっている。なお、ヒュームコレクタ17は他の装置であってもよく、フィルタを含む濾過式集塵機であってもよい。また、ヒュームコレクタ17内部の不活性ガスを効率的に循環させるため、ファンモータを設けてもよい。
【0030】
ここで、本実施形態の積層造形装置1による、三次元造形物の製造方法について説明する。本実施の三次元造形物の製造方法は、除電工程と、不活性ガス充填工程と、材料層形成工程と、照射工程と、切削工程と、を備える。
【0031】
除電工程においては、除電装置6によって、ウインドウ15の除電が行われる。具体的に、本実施形態では、電離した気体をウインドウ15に吹き付けることで除電が行われる。除電工程は、ヒュームが発生する前、すなわち固化層85の形成が行われる照射工程を開始する前に行われるのが望ましい。ヒュームが発生する前にウインドウ15の除電を行うことで、ヒュームがウインドウ15に付着することを抑制できる。除電工程は不活性ガス充填工程を開始する前に行われてもよく、除電装置6によって電離される気体が空気であるとき、特に好ましい。不活性ガス充填工程後は、チャンバ10内は所定濃度の不活性ガス雰囲気下におかれるため、空気による除電は不活性ガスの充填を行う前に行うことが望ましい。もし、不活性ガス充填工程後に空気による除電を行う場合は、除電工程後造形を中断し、再度チャンバ10内が所定濃度の不活性ガス雰囲気となるまで少なくとも照射工程を行わないことが望ましい。
【0032】
不活性ガス充填工程においては、不活性ガス供給装置16によって、チャンバ10に所定濃度の不活性ガスが充満される。不活性ガス充填工程は、少なくとも1回目の照射工程を開始する前に完了することが望ましい。このようにして、造形中に材料層83や固化層85が変質することが防止される。不活性ガス充填工程後も、造形中はチャンバ10内を所定濃度の不活性ガス雰囲気下に維持するため、不活性ガス供給装置16からチャンバ10に不活性ガスが供給される。
【0033】
材料層形成工程においては、まず、造形テーブル駆動装置47が、材料層83の厚み分造形テーブル45を下降させる。次にリコータヘッド43が水平方向に移動し、造形テーブル45の造形領域R上に材料粉体を吐出するとともに、ブレードで材料粉体を均し、材料層83を形成する。照射工程においては、照射装置5が材料層83中の所定部位にレーザ光Lを照射し、材料層83のレーザ照射位置を焼結または溶融・凝固させる。このようにして、固化層85が形成される。このような材料層形成工程と照射工程が繰り返され、複数層の固化層85が積層されて所望の三次元造形物が形成される。積層される固化層85は、互いに固着される。
【0034】
本実施形態のように、切削装置3を備える積層造形装置1においては、所定数の固化層85が形成される毎に固化層85の端面に対し切削加工を行ってもよい。すなわち、所定数の照射工程毎に、固化層85を切削する切削工程が行われてもよい。切削工程によれば、より高精度に三次元造形物を仕上げることができる。
【0035】
以上に説明した実施形態において、除電装置6によって電離される気体は空気であったが、電離が可能な気体であれば他の気体であってもよい。例えば、除電装置6によって電離される気体は、チャンバ10に供給される不活性ガスと同種の気体であってもよい。このとき、チャンバ10に供給される不活性ガスおよび除電に使用される気体は、例えば窒素である。このような除電装置6においては、空気供給装置18に代えて、不活性ガス供給装置16と除電装置6の管路67とが接続される。
【0036】
窒素を電離して除電を行う場合、不活性ガス充填工程中や不活性ガス充填工程後に除電を行っても、チャンバ10内の酸素濃度に影響を及ぼさない。そのため、造形中にウインドウ15の除電を行っても、不活性ガスが再充填されるまで造形を中断する必要がない。なお、造形中にウインドウ15の除電を行う場合は、例えばウインドウ15の温度を温度センサで取得し、ウインドウ15が所定の温度以上となったときにウインドウ15がヒュームで汚染されていると判断し、ウインドウ15を除電するよう構成してもよい。
【0037】
また、除電装置6は、空気による除電と窒素による除電が両方可能なように構成されてもよい。このような除電装置6により、不活性ガス充填工程前は空気による除電を行い、不活性ガス充填工程後は窒素による除電を行ってもよい。
【0038】
また、前述のように、除電装置6は、ウインドウ15を除電可能に構成されたものであればコロナ放電式のイオナイザに限定されない。例えば、除電装置6は、フォトイオナイザであってもよい。
【0039】
本発明は、すでにいくつかの例が具体的に示されているように、図面に示される実施形態の構成に限定されず、本発明の技術思想を逸脱しない範囲で種々の変形または応用が可能である。
【符号の説明】
【0040】
4 材料層形成装置
5 照射装置
6 除電装置
10 チャンバ
15 ウインドウ
16 不活性ガス供給装置
61 放電電極
65 ノズル
69 電源
651 開口
83 材料層
85 固化層
L レーザ光
R 造形領域