(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下では、第1発明および第2発明の実施の形態を、添付図面を参照して詳細に説明す
る。
[1]第1発明について
第1発明の実施の形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1Aは、第1発明の一実施形態に係るチップ抵抗器10の外観構成を示す図解的な斜
視図であり、
図1Bは、チップ抵抗器10が基板上に実装された状態を示す側面図である
。
【0011】
図1Aを参照して、第1発明の一実施形態に係るチップ抵抗器10は、基板11上に形
成された第1接続電極12と、第2接続電極13と、抵抗回路網14とを備えている。基
板11は、平面視略長方形状の直方体形状で、一例として、長辺方向の長さL=0.3m
m、短辺方向の幅W=0.15mm、厚みT=0.1mm程度の大きさの微少なチップで
ある。基板11は、たとえばシリコン、ガラス、セラミック等で形成することができる。
以下の実施形態では、基板11がシリコン基板の場合を例にとって説明する。
【0012】
チップ抵抗器10は、
図17に示すように、ウエハWa(シリコンウエハなどの半導体
ウエハ、あるいは導体ウエハや非導電性のウエハなどでもよい)上に格子状に多数個のチ
ップ抵抗器10が形成され、ウエハWaが切断されて個々のチップ抵抗器10に分離され
ることにより得られる。
シリコン基板11上において、第1接続電極12はシリコン基板11の一方短辺111
に沿って設けられた短辺111方向に長手の矩形電極である。第2接続電極13は、シリ
コン基板11上の他方短辺112に沿って設けられた短辺112方向に長手の矩形電極で
ある。抵抗回路網14は、シリコン基板11上の第1接続電極12と第2接続電極13と
で挟まれた中央領域(回路形成面または素子形成面)に設けられている。そして、抵抗回
路網14の一端側は第1接続電極12に電気的に接続されており、抵抗回路網14の他端
側は第2接続電極13に電気的に接続されている。これら第1接続電極12、第2接続電
極13および抵抗回路網14は、たとえば一例として、シリコン基板11上に半導体製造
プロセスを用いて設けることができる。
【0013】
第1接続電極12および第2接続電極13は、それぞれ、外部接続電極として機能する
。チップ抵抗器10が回路基板15に実装された状態においては、
図1Bに示すように、
第1接続電極12および第2接続電極13が、それぞれ、回路基板15の回路(図示せず
)と半田16により電気的かつ機械的に接続される。なお、外部接続電極として機能する
第1接続電極12および第2接続電極13は、半田濡れ性の向上および信頼性の向上のた
めに、金(Au)で形成するか、または表面に金メッキを施すことが望ましい。
【0014】
図2は、チップ抵抗器10の平面図であり、第1接続電極12、第2接続電極13およ
び抵抗回路網14の配置関係ならびに抵抗回路網14の平面視の構成(レイアウトパター
ン)が示されている。
図2を参照して、チップ抵抗器10は、シリコン基板上面の一方短辺111に長辺が沿
うように配置された平面視略矩形をした第1接続電極12と、シリコン基板上面の他方短
辺112に長辺が沿うように配置された平面視略矩形をした第2接続電極13と、第1接
続電極12および第2接続電極13間の平面視矩形の領域に設けられた抵抗回路網14と
を含んでいる。
【0015】
抵抗回路網14には、シリコン基板11上にマトリックス状に配列された等しい抵抗値
を有する多数個の単位抵抗体R(
図2の例では、行方向(シリコン基板の長手方向)に沿
って8個の単位抵抗体Rが配列され、列方向(シリコン基板の幅方向)に沿って44個の
単位抵抗体Rが配列され、合計352個の単位抵抗体Rを含む構成)を有している。そし
て、これら多数個の単位抵抗体Rの1〜64個の所定の個数が電気的に接続されて、接続
された単位抵抗体Rの数に応じた複数種類の抵抗回路が形成されている。形成された複数
種類の抵抗回路は導体膜C(導体で形成された配線膜)で所定の態様に接続されている。
【0016】
さらに、抵抗回路を抵抗回路網14に電気的に組み込んだり、または、抵抗回路網14
から電気的に分離したりするために溶断可能な。複数のヒューズ膜Fは、第2接続電極1
3の内側辺沿いに、配置領域複数のヒューズ膜Fが設けられているが直線状になるように
配列されている。より具体的には、複数のヒューズ膜Fおよび接続用導体膜Cが隣接する
ように配列され、その配列方向が直線状になるように配置されている。
【0017】
図3Aは、
図2に示す抵抗回路網14の一部分を拡大して描いた平面図であり、
図3B
および
図3Cは、それぞれ、抵抗回路網14における単位抵抗体Rの構造を説明するため
に描いた長さ方向の縦断面図(
図3AのB−B線に沿う断面図)および幅方向の縦断面図
(
図3AのC−C線に沿う断面図)である。
図3A、
図3Bおよび
図3Cを参照して、単位抵抗体Rの構成について説明をする。
【0018】
基板としてのシリコン基板11の上面には絶縁層(SiO
2)19が形成され、絶縁層
19上に抵抗体膜20が配置されている。抵抗体膜20は、TiN、TiONまたはTi
SiONにより形成される。この抵抗体膜20は、第1接続電極12と第2接続電極13
との間を平行に直線状に延びる複数本の抵抗体膜(以下「抵抗体膜ライン」という)とさ
れており、抵抗体膜ライン20は、ライン方向に所定の位置で切断されている場合がある
。抵抗体膜ライン20上には、導体膜片21としてのアルミニウム膜が積層されている。
各導体膜片21は、抵抗体膜ライン20上に、ライン方向に一定間隔Rを開けて積層され
ている。
【0019】
この構成の抵抗体膜ライン20および導体膜片21の電気的特徴を回路記号で示すと、
図4A〜
図4Cの通りである。すなわち、
図4Aに示すように、所定間隔Rの領域の抵抗
体膜ライン20部分が、それぞれ、一定の抵抗値rの単位抵抗体Rを形成している。導体
膜片21が積層された領域は、当該導体膜片21で抵抗体膜ライン20が短絡されている
。よって、
図4Bに示す抵抗rの単位抵抗体Rの直列接続からなる抵抗回路が形成されて
いる。
【0020】
また、隣接する抵抗体膜ライン20同士は抵抗体膜ライン20および導体膜片21で接
続されているから、
図3Aに示す抵抗回路網は、
図4Cに示す抵抗回路を構成している。
ここで、抵抗回路網14の製造プロセスの一例を簡単に説明する。(1)シリコン基板
11の表面を熱酸化し、絶縁層19としての二酸化シリコン(SiO
2)層を形成する。
(2)そして、スパッタリングにより、絶縁層19の上にTiN、TiONまたはTiS
iONの抵抗体膜20を全面に形成する。(3)さらに、スパッタリングにより、抵抗体
膜20の上にアルミニウム(Al)の導体膜21を積層する。(4)その後、フォトリソ
グラフィプロセスを用い、たとえばドライエッチングにより導体膜21および抵抗体膜2
0を選択的に除去し、
図3Aに示すように、平面視で、行方向に延びる一定幅の抵抗体膜
ライン20および導体膜21が一定間隔をあけて列方向に配列される構成を得る。このと
き、部分的に抵抗体膜ライン20および導体膜21が切断された領域も形成される。(5
)続いて、抵抗体膜ライン20の上に積層された導体膜21を選択的に除去する。この結
果、抵抗体膜ライン20上に一定間隔Rをあけて導体膜片21が積層された構成が得られ
る。(6)その後、保護膜としてのSiN膜22が堆積され、さらにその上に保護層であ
るポリイミド層23が積層される。
【0021】
この実施形態では、シリコン基板上11に形成された抵抗回路網14に含まれる単位抵
抗体Rは、抵抗体膜ライン20と、抵抗体膜ライン20上に、ライン方向に一定間隔をあ
けて積層された複数の導体膜片21とを含み、導体膜片21が積層されていない一定間隔
R部分の抵抗体膜ライン20が、1個の単位抵抗体Rを構成している。単位抵抗体Rを構
成している抵抗体膜ライン20は、その形状および大きさが全て等しい。よって、基板上
に作り込んだ同形同大の抵抗体膜は、ほぼ同値になるという特性に基づき、シリコン基板
11上にマトリックス状に配列された多数個の単位抵抗体Rは、等しい抵抗値を有してい
る。
【0022】
抵抗体膜ライン20上に積層された導体膜片21は、単位抵抗体Rを形成するとともに
、複数個の単位抵抗体Rを接続して抵抗回路を構成するための接続用導体膜の役目も果た
している。
図5Aは、
図2に示すチップ抵抗器10の平面図の一部分を拡大して描いたヒューズ膜
Fを含む領域の部分拡大平面図であり、
図5Bは、
図5AのB−Bに沿う断面構造を示す
図である。
【0023】
図5Aおよび
図5Bに示すように、ヒューズ膜Fも、抵抗体膜20上に積層された導体
膜21により形成されている。すなわち、単位抵抗体Rを形成する抵抗体膜ライン20上
に積層された導体膜片21と同じレイヤーに、導体膜片21と同じ金属材料であるアルミ
ニウム(Al)により形成されている。なお、導体膜片21は、前述したように、抵抗回
路を形成するために、複数個の単位抵抗体Rを電気的に接続する接続用導体膜Cとしても
用いられている。
【0024】
つまり、抵抗体膜20上に積層された同一レイヤーにおいて、単位抵抗体R形成用の導
体膜、抵抗回路を形成するための接続用導体膜、抵抗回路網14を構成するための接続用
導体膜、ヒューズ膜、ならびに抵抗回路網14を第1接続電極12および第2接続電極1
3に接続するための導体膜が、同一の金属材料(たとえばアルミニウム)を用いて、同じ
製造プロセス(たとえばスパッタリングおよびフォトリソグラフィプロセス)によって形
成されている。これにより、このチップ抵抗器10の製造プロセスが簡略化され、また、
各種導体膜を共通のマスクを利用して同時に形成できる。さらに、抵抗体膜20とのアラ
イメント性も向上する。
【0025】
図6は、
図2に示す抵抗回路網14における複数種類の抵抗回路を接続する接続用導体
膜Cおよびヒューズ膜Fの配列関係と、その接続用導体膜Cおよびヒューズ膜Fに接続さ
れた複数種類の抵抗回路との接続関係を図解的に示す図である。
図6を参照して、第1接続電極12には、抵抗回路網14に含まれる基準抵抗回路R8
の一端が接続されている。基準抵抗回路R8は、8個の単位抵抗体Rの直列接続からなり
、その他端はヒューズ膜F1に接続されている。
【0026】
ヒューズ膜F1と接続用導体膜C2とには、64個の単位抵抗体Rの直列接続からなる
抵抗回路R64の一端および他端が接続されている。
接続用導体膜C2とヒューズ膜F4とには、32個の単位抵抗体Rの直列接続からなる
抵抗回路R32の一端および他端が接続されている。
ヒューズ膜F4と接続用導体膜C5とには、32個の単位抵抗体Rの直列接続からなる
抵抗回路体R32の一端および他端が接続されている。
【0027】
接続用導体膜C5とヒューズ膜F6とには、16個の単位抵抗体Rの直列接続からなる
抵抗回路R16の一端および他端が接続されている。
ヒューズ膜F7および接続用導体膜C9には、8個の単位抵抗体Rの直列接続からなる
抵抗回路R8の一端および他端が接続されている。
接続用導体膜C9およびヒューズ膜F10には、4個の単位抵抗体Rの直列接続からな
る抵抗回路R4の一端および他端が接続されている。
【0028】
ヒューズ膜F11および接続用導体膜C12には、2個の単位抵抗体Rの直列接続から
なる抵抗回路R2の一端および他端が接続されている。
接続用導体膜C12およびヒューズ膜F13には、1個の単位抵抗体Rからなる抵抗回
路体R1の一端および他端が接続されている。
ヒューズ膜F13および接続用導体膜C15には、2個の単位抵抗体Rの並列接続から
なる抵抗回路R/2の一端および他端が接続されている。
【0029】
接続用導体膜C15およびヒューズ膜F16には、4個の単位抵抗体Rの並列接続から
なる抵抗回路R/4の一端および他端が接続されている。
ヒューズ膜F16および接続用導体膜C18には、8個の単位抵抗体Rの並列接続から
なる抵抗回路R/8の一端および他端が接続されている。
接続用導体膜C18およびヒューズ膜F19には、16個の単位抵抗体Rの並列接続か
らなる抵抗回路R/16の一端および他端が接続されている。
【0030】
ヒューズ膜F19および接続用導体膜C22には、32個の単位抵抗体Rの並列接続か
らなる抵抗回路R/32が接続されている。
複数のヒューズ膜Fおよび接続用導体膜Cは、それぞれ、ヒューズ膜F1、接続用導体
膜C2、ヒューズ膜F3、ヒューズ膜F4、接続用導体膜C5、ヒューズ膜F6、ヒュー
ズ膜F7、接続用導体膜C8、接続用導体膜C9、ヒューズ膜F10、ヒューズ膜F11
、接続用導体膜C12、ヒューズ膜F13、ヒューズ膜F14、接続用導体膜C15、ヒ
ューズ膜F16、ヒューズ膜F17、接続用導体膜C18、ヒューズ膜F19、ヒューズ
膜F20、接続用導体膜C21、接続用導体膜C22が、直線状に配置されて直列に接続
されている。各ヒューズ膜Fが溶断されると、ヒューズ膜Fに隣接接続された接続用導体
膜Cとの間の電気的接続が遮断される構成である。
【0031】
この構成を、電気回路図で示すと
図7の通りである。すなわち、全てのヒューズ膜Fが
溶断されていない状態では、抵抗回路網14は、第1接続電極12および第2接続電極1
3間に設けられた8個の単位抵抗体Rの直列接続からなる基準抵抗回路R8(抵抗値8r
)の抵抗回路を構成している。たとえば、1個の単位抵抗体Rの抵抗値rをr=80Ωと
すれば、8r=640Ωの抵抗回路により、第1接続電極12および第2接続電極13が
接続されたチップ抵抗器10が構成されている。
【0032】
そして、基準抵抗回路R8以外の複数種類の抵抗回路には、それぞれ、ヒューズ膜Fが
並列的に接続され、各ヒューズ膜Fによりこれら複数種類の抵抗回路は短絡された状態と
なっている。つまり、基準抵抗回路R8には、12種類13個の抵抗回路R64〜R/3
2が直列に接続されているが、各抵抗回路は、それぞれ並列に接続されたヒューズ膜Fに
より短絡されているので、電気的にみると、各抵抗回路は抵抗回路網14に組み込まれて
はいない。
【0033】
この実施形態に係るチップ抵抗器10は、要求される抵抗値に応じて、ヒューズ膜Fを
選択的に、たとえばレーザー光で溶断する。それにより、並列的に接続されたヒューズ膜
Fが溶断された抵抗回路は、抵抗回路網14に組み込まれることになる。よって、抵抗回
路網14の全体の抵抗値を、溶断されたヒューズ膜Fに対応する抵抗回路が直列に接続さ
れて組み込まれた抵抗値を有する抵抗回路網とすることができる。
【0034】
換言すれば、この実施形態に係るチップ抵抗器10は、複数種類の抵抗回路に対応して
設けられたヒューズ膜を選択的に溶断することにより、複数種類の抵抗回路(たとえば、
F1、F4、F13が溶断されると、抵抗回路R64、R32、R1の直列接続)を抵抗
回路網に組み込むことができる。そして、複数種類の抵抗回路は、それぞれ、その抵抗値
が決まっているので、いわばデジタル的に抵抗回路網14の抵抗値を調整して、要求され
る抵抗値を有するチップ抵抗器10とすることができる。
【0035】
また、複数種類の抵抗回路は、等しい抵抗値を有する単位抵抗体Rが、直列に1個、2
個、4個、8個、16個、32個、および64個と、等比数列的に単位抵抗体Rの個数が
増加されて接続された複数種類の直列抵抗回路ならびに等しい抵抗値の単位抵抗体Rが並
列に2個、4個、8個、16個、および32個と、等比数列的に単位抵抗体Rの個数が増
加されて接続された複数種類の並列抵抗回路を備えている。そして、これらがヒューズ膜
Fで短絡された状態で直列に接続されている。よって、ヒューズ膜Fを選択的に溶断する
ことにより、抵抗回路網14全体の抵抗値を、小さな抵抗値から大きな抵抗値まで、広範
囲の間で、任意の抵抗値に設定することができる。
【0036】
図8は、第1発明の他の実施形態に係るチップ抵抗器30の平面図であり、第1接続電
極12、第2接続電極13および抵抗回路網14の配置関係ならびに抵抗回路網14の平
面視の構成が示されている。
チップ抵抗器30が、前述したチップ抵抗器10と異なるところは、抵抗回路網14に
おける単位抵抗体Rの接続態様である。
【0037】
すなわち、チップ抵抗器30の抵抗回路網14には、シリコン基板上にマトリックス状
に配列された等しい抵抗値を有する多数個の単位抵抗体R(
図8の構成では、行方向(シ
リコン基板の長手方向)に沿って8個の単位抵抗体Rが配列され、列方向(シリコン基板
の幅方向)に沿って44個の単位抵抗体Rが配列され、合計352個の単位抵抗体Rを含
む構成)を有している。そして、これら多数個の単位抵抗体Rの1〜128個の所定個数
が電気的に接続されて、複数種類の抵抗回路が形成されている。形成された複数種類の抵
抗回路は、回路網接続手段としての導体膜およびヒューズ膜Fにより並列態様で接続され
ている。複数のヒューズ膜Fは、第2接続電極13の内側辺沿いに、配置領域が直線状に
なるように配列されており、ヒューズ膜Fが溶断されると、ヒューズ膜に接続された抵抗
回路が抵抗回路網14から電気的に分離される構成である。
【0038】
なお、抵抗回路網14を構成する多数個の単位抵抗体Rの構造や、接続用導体膜、ヒュ
ーズ膜Fの構造は、先に説明したチップ抵抗器10における対応する部位の構造と同様で
あるから、ここでの説明については省略する。
図9は、
図8に示す抵抗回路網における複数種類の抵抗回路の接続態様と、それらを接
続するヒューズ膜Fの配列関係ならびにヒューズ膜Fに接続された複数種類の抵抗回路の
接続関係を図解的に示す図である。
【0039】
図9を参照して、第1接続電極12には、抵抗回路網14に含まれる基準抵抗回路R/
16の一端が接続されている。基準抵抗回路R/16は、16個の単位抵抗体Rの並列接
続からなり、その他端は残りの抵抗回路が接続される接続用導体膜Cに接続されている。
ヒューズ膜F1と接続用導体膜Cとには、128個の単位抵抗体Rの直列接続からなる
抵抗回路R128の一端および他端が接続されている。
【0040】
ヒューズ膜F5と接続用導体膜Cとには、64個の単位抵抗体Rの直列接続からなる抵
抗回路R64の一端および他端が接続されている。
ヒューズ膜F6と接続用導体膜Cとには、32個の単位抵抗体Rの直列接続からなる抵
抗回路R32の一端および他端が接続されている。
ヒューズ膜F7と接続用導体膜Cとには、16個の単位抵抗体Rの直列接続からなる抵
抗回路R16の一端および他端が接続されている。
【0041】
ヒューズ膜F8と接続用導体膜Cとには、8個の単位抵抗体Rの直列接続からなる抵抗
回路R8の一端および他端が接続されている。
ヒューズ膜F9と接続用導体膜Cとには、4個の単位抵抗体Rの直列接続からなる抵抗
回路R4の一端および他端が接続されている。
ヒューズ膜F10と接続用導体膜Cとには、2個の単位抵抗体Rの直列接続からなる抵
抗回路R2の一端および他端が接続されている。
【0042】
ヒューズ膜F11と接続用導体膜Cとには、1個の単位抵抗体Rの直列接続からなる抵
抗回路R1の一端および他端が接続されている。
ヒューズ膜F12と接続用導体膜Cとには、2個の単位抵抗体Rの並列接続からなる抵
抗回路R/2の一端および他端が接続されている。
ヒューズ膜F13と接続用導体膜Cとには、4個の単位抵抗体Rの並列接続からなる抵
抗回路R/4の一端および他端が接続されている。
【0043】
ヒューズ膜F14、F15、F16は電気的に接続されており、これらヒューズ膜F1
4、F15、F16と接続用導体Cとには、8個の単位抵抗体Rの並列接続からなる抵抗
回路R/8の一端および他端が接続されている。
ヒューズ膜F17、F18、F19、F20、F21は電気的に接続されており、これ
らヒューズ膜F17〜F21と接続用導体膜Cとには、16個の単位抵抗体Rの並列接続
からなる抵抗回路R/16の一端および他端が接続されている。
【0044】
ヒューズ膜Fは、ヒューズ膜F1〜F21の21個備えられていて、これらは全て第2
接続電極13に接続されている。
かかる構成であるから、抵抗回路の一端が接続されたいずれかのヒューズ膜Fが溶断さ
れると、そのヒューズ膜Fに一端が接続された抵抗回路は、抵抗回路網14から電気的に
切り離される。
【0045】
図9の構成、すなわちチップ抵抗器30に備えられた抵抗回路網14の構成を、電気回
路図で示すと
図10の通りである。全てのヒューズ膜Fが溶断されていない状態では、抵
抗回路網14は、第1接続電極14および第2接続電極13間に、基準抵抗回路R/16
と、12種類の抵抗回路R/16、R/8、R/4、R/2、R1、R2、R4、R8、
R16、R32、R64、R128の並列接続回路との直列接続回路を構成している。
【0046】
そして、基準抵抗回路R/16以外の12種類の抵抗回路には、それぞれ、ヒューズ膜
Fが直列に接続されている。よって、この抵抗回路網14を有するチップ抵抗器30では
、要求される抵抗値に応じて、ヒューズ膜Fを選択的に、たとえばレーザー光で溶断すれ
ば、溶断されたヒューズ膜Fに対応する抵抗回路(ヒューズ膜Fが直列に接続された抵抗
回路)は、抵抗回路網14から電気的に分離され、チップ抵抗器30の抵抗値を調整する
ことができる。
【0047】
換言すれば、この実施形態に係るチップ抵抗器30も、複数種類の抵抗回路に対応して
設けられたヒューズ膜を選択的に溶断することにより、複数種類の抵抗回路を抵抗回路網
から電気的に分離することができる。そして、複数種類の抵抗回路は、それぞれ、その抵
抗値が決まっているので、いわばデジタル的に抵抗回路網14の抵抗値を調整して、要求
される抵抗値を有するチップ抵抗器30とすることができる。
【0048】
また、複数種類の抵抗回路は、等しい抵抗値を有する単位抵抗体Rが、直列に1個、2
個、4個、8個、16個、32個、64個および128個と、等比数列的に単位抵抗体R
の個数が増加されて接続された複数種類の直列抵抗回路ならびに等しい抵抗値の単位抵抗
体Rが並列に2個、4個、8個、16個と、等比数列的に単位抵抗体Rの個数が増加され
て接続された複数種類の並列抵抗回路を備えている。よって、ヒューズ膜Fを選択的に溶
断することにより、抵抗回路網14全体の抵抗値を、細かく、かつデジタル的に、任意の
抵抗値に設定することができる。
【0049】
なお、
図10に示す電気回路においては、基準抵抗回路R/16および、並列接続され
た抵抗回路のうち、抵抗値の小さな抵抗回路には、過電流が流れる傾向があり、抵抗設定
時に、抵抗に流せる定格電流を大きく設計しなければならない。
そこで、電流を分散させるために、
図10に示す電気回路を、
図11Aに示す電気回路
構成となるように、抵抗回路網の接続構造を変更してもよい。すなわち、基準抵抗回路R
/16を無くし、かつ、並列接続される抵抗回路は、最小の抵抗値をrとし、抵抗値rの
抵抗単位体R1を複数組並列に接続した構成140を含む回路に変えるのである。
【0050】
図11Bは、具体的な抵抗値を示した電気回路図であり、80Ωの単位抵抗体とヒュー
ズ膜Fとの直列接続を複数組並列に接続した構成140を含む回路とされている。これに
より、流れる電流の分散を図ることができる。
図12は、第1発明のさらに他の実施形態に係るチップ抵抗器に備えられる抵抗回路網
14の回路構成を電気回路図で示した図である。
図12に示す抵抗回路網14の特徴は、
複数種類の抵抗回路の直列接続と、複数種類の抵抗回路の並列接続とが直列に接続された
回路構成となっていることである。
【0051】
直列接続される複数種類の抵抗回路には、先の実施形態と同様、各抵抗回路毎に、並列
にヒューズ膜Fが接続されていて、直列接続された複数種類の抵抗回路は、全てヒューズ
膜Fで短絡状態とされている。従って、ヒューズ膜Fを溶断すると、そのヒューズ膜Fで
短絡されていた抵抗回路が、抵抗回路網14に電気的に組み込まれることになる。
一方、並列接続された複数種類の抵抗回路には、それぞれ、直列にヒューズ膜Fが接続
されている。従って、ヒューズ膜Fを溶断することにより、ヒューズ膜Fが直列に接続さ
れている抵抗回路を、抵抗回路の並列接続から電気的に切り離すことができる。
【0052】
かかる構成とすれば、たとえば、1kΩ以下の小抵抗は並列接続側で作り、1kΩ以上
の抵抗回路を直列接続側で作ることができる。よって、数Ωの小抵抗から数MΩの大抵抗
までの広範な範囲の抵抗回路を、等しい基本設計で構成した抵抗回路網14を用いて作る
ことができる。
また、より精度良く抵抗値を設定する場合は、要求抵抗値に近い直列接続側抵抗回路の
ヒューズ膜を予めカットしておけば、細かな抵抗値の調整を並列接続側の抵抗回路のヒュ
ーズ膜を溶断することにより行うことができ、所望の抵抗値への合わせ込みの精度が上が
る。
【0053】
図13は、10Ω〜1MΩの抵抗値を有するチップ抵抗器における抵抗回路網14の具
体的な構成例を示す電気回路図である。
図13に示す抵抗回路網14も、ヒューズ膜Fで短絡された複数種類の抵抗回路の直列
接続と、ヒューズ膜Fが直列接続された複数種類の抵抗回路の並列接続とが直列に接続さ
れた回路構成となっている。
【0054】
図13の抵抗回路によれば、並列接続側において、10〜1kΩの任意の抵抗値を、精
度1%以内で設定できる。また、直列接続側の回路で、1k〜1MΩの任意の抵抗値を、
精度1%以内で設定できる。直列接続側の回路を使用する場合は、所望の抵抗値に近い抵
抗回路のヒューズ膜Fを予め溶断し、所望の抵抗値に合わせ込んでおくことで、より精度
良く抵抗値を設定できるという利点がある。
【0055】
なお、ヒューズ膜Fは、接続用導体膜Cと同一のレイヤーを用いる場合のみを説明した
が、接続用導電膜C部分は、その上に更に別の導体膜を積層するようにし、導体膜の抵抗
値を下げるようにしてもよい。また、抵抗体膜をなくして、接続用導体膜Cのみとしても
良い。なお、この場合であっても、ヒューズ膜Fの上に導体膜を積層しなければ、ヒュー
ズ膜Fの溶断性が悪くなることはない。
【0056】
図14Aおよび
図14Bは、第1発明のさらに他の実施形態に係るチップ抵抗器90の
要部構造を説明するための図解的な平面図である。
たとえば、前述したチップ抵抗器10(
図1、
図2参照)や、チップ抵抗器30(
図8
参照)では、抵抗回路を構成する抵抗体膜ライン20と導体膜片21の関係を平面視で表
わすと、
図14Aに示す構成になっている。すなわち、
図14Aに示すように、所定間隔
Rの領域の抵抗体膜ライン20部分が、一定の抵抗値rの単位抵抗体Rを形成している。
そして単位抵抗体Rの両側には導体膜片21が積層され、当該導体膜片21で抵抗体膜ラ
イン20が短絡されている。
【0057】
ここで、前述したチップ抵抗器10およびチップ抵抗器30では、単位抵抗体Rを形成
している抵抗体膜ライン20部分の長さは、たとえば12μmであり、抵抗体膜ライン2
0の幅は、たとえば1.5μmであり、単位抵抗(シート抵抗)は10Ω/□である。こ
のため、単位抵抗体Rの抵抗値rは、r=80Ωである。
ところで、たとえば
図1、
図2に示すチップ抵抗器10において、抵抗回路網14の配
置領域を拡げることなく、抵抗回路網14の抵抗値を高めて、チップ抵抗器10の高抵抗
化を図りたいといった要望がある。
【0058】
そこで、この実施形態に係るチップ抵抗器90では、抵抗回路網14のレイアウトを変
更するとともに、抵抗回路網に含まれる抵抗回路を構成する単位抵抗体を、平面視におい
て、
図14Bに示す形状および大きさとした。
図14Bを参照して、抵抗体膜ライン20は、幅1.5μmで直線状に延びるライン状
の抵抗体膜ライン20を含む。そして、抵抗体膜ライン20において、所定間隔R’の抵
抗体膜ライン20部分が、一定の抵抗値r’の単位抵抗体R’を形成している。単位抵抗
体R’の長さは、たとえば17μmにする。こうすれば、単位抵抗体R’の抵抗値r’は
、
図14Aに示す単位抵抗体Rに比べて、ほぼ2倍のr’=160Ωの単位抵抗体とする
ことができる。
【0059】
また、抵抗体膜ライン20上に積層される導体膜片21の長さは、
図14Aに示すもの
においても、
図14Bに示すものにおいても、同じ長さで構成することができる。それゆ
え、抵抗回路網14に含まれる抵抗回路を構成する各単位抵抗体R’のレイアウトパター
ンを変更し、単位抵抗体R’が直列状に接続できるレイアウトパターンとすることにより
、チップ抵抗器90は高抵抗化が実現されたものとなる。
【0060】
図15Aは、第1発明のさらに他の実施形態に係るチップ抵抗器100の要部構造を示
す図解的な断面図であり、
図15Bは、
図15Aの矢印Bに沿って見た図解的な部分平面
図である。
まず、
図15Aを参照して、チップ抵抗器100は、基板としてのシリコン基板11を
有し、シリコン基板11の上面に絶縁層(SiO
2)19が形成されている。絶縁層19
の表面は回路形成面となっている。チップ抵抗器100では、回路形成面である絶縁層1
9の表面から、シリコン基板11に向かって所定の深さまで掘り下げられたトレンチ10
1がドライエッチング等により形成され、トレンチ101の内壁面および底面は、たとえ
ば熱酸化によりSiO
2の絶縁膜102で覆われている。絶縁膜102は、シリコン基板
11の上面に形成された絶縁層19とつながって一体的になっている。
【0061】
シリコン基板11上面の絶縁層19およびトレンチ101内の絶縁膜102上に、抵抗
体膜103が形成されている。抵抗体膜103は、TiN、TiONまたはTiSiON
により形成される。
抵抗体膜103は、各トレンチ101を横断するように、トレンチ101の内壁面およ
び底面に沿って、絶縁膜102の上に設けられている。
【0062】
図15Bを参照して、トレンチ101は、シリコン基板11の面方向に長手に延びてお
り、複数のトレンチ101が等間隔で平行に、直線状に形成されている。そして、絶縁層
19の上面およびトレンチ101を横断するようにトレンチ101の内壁面に沿って、絶
縁膜102の上に形成された抵抗体膜103は、トレンチ101を順に横断して延びてい
る。また、抵抗体膜103は、トレンチ101の長さ方向に直交方向に延びている。抵抗
体膜103は、平行に延びる複数本の抵抗体膜(以下「抵抗体膜ライン」という)とされ
ており、平行に延びる複数の抵抗体膜ライン103を含んでいる。
【0063】
そして、絶縁層19上に配置される部分の抵抗体膜ライン103には、導体膜片21と
してのアルミニウム膜が積層されている。抵抗体膜103における導体膜片21が積層さ
れた部分では、抵抗体膜103の抵抗は導体膜片21で短絡されている。
従って、
図15Aおよび
図15Bに示すチップ抵抗器100では、トレンチ101の内
壁面および底面に沿って延びる抵抗体膜ライン103部分が、単位抵抗体R”を形成して
いる。単位抵抗体R”を形成する抵抗体膜ライン103の長さは、トレンチ101の深さ
を調整す
ることにより所定の長さに設定できる(たとえば、トレンチ101の深さは、数10μm
〜100μmとすることができる。)。このため、単位抵抗体R”の抵抗値を高くするこ
とができる。その結果、チップ抵抗器100は、全体として、高抵抗化が図られたチップ
抵抗器となる。
【0064】
なお、この実施形態では、抵抗値精度の向上のために、導電膜21を設けているが、高
抵抗化を優先させる場合には、導電膜21を設けない構成とすることもできる。
第1発明は、以上説明した高抵抗化を図ったチップ抵抗器において、各高抵抗化のため
の構成を適宜組み合わせて作ったより高抵抗なチップ抵抗器とすることも可能である。
図16は、上述したチップ抵抗器に他の回路を組み込んだディスクリート部品1の回路
構成を示す図である。
【0065】
ディスクリート部品1は、たとえば、ダイオード55と抵抗回路14とを直列接続した
ものである。このディスクリート部品1は、ダイオード55を含むチップ型ディスクリー
ト部品となっている。なお、この例のようなチップ型に限らず、上述した抵抗回路14を
有するディスクリート部品として第1発明は適用できる。
第1発明は、以上説明した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載
された事項の範囲内で種々の設計変更を施すことが可能である。例えば、トレンチの代わ
りに、基板上に凸版パターンを形成し、その表面に沿って抵抗体膜を形成するようにし、
抵抗体膜の長さを長くして高抵抗化を図るようにしてもよい。
[2]第2発明について
第2発明は、次のような特徴を有している。
【0066】
A1.回路形成面を有する基板と、前記基板上に形成された第1接続電極および第2接
続電極と、前記基板上に形成され、一端側が前記第1接続電極に接続され、他端側が前記
第2接続電極に接続されている抵抗回路網とを含み、前記抵抗回路網は、前記基板上に形
成された第1抵抗体膜で構成される第1抵抗回路と、前記第1抵抗回路の上に層間絶縁膜
を介して積層形成された第2抵抗体膜で構成される第2抵抗回路と、前記第1抵抗回路お
よび前記第2抵抗回路を直列的に接続するための接続回路とを含み、さらに、前記抵抗回
路網に含まれる任意の抵抗回路を前記抵抗回路網に電気的に組み込み、または、前記抵抗
回路網から電気的に分離するために溶断可能なヒューズ膜を含むことを特徴とする、チッ
プ抵抗器。
【0067】
A2.前記第1抵抗体膜および前記第2抵抗体膜は、一定の幅を有し、直線状に延びる
ライン状の抵抗体膜ラインを含むことを特徴とする、「A1.」に記載のチップ抵抗器。
A3.前記第1抵抗回路および前記第2抵抗回路は、平面視において同一レイアウトパ
ターンに形成されていることを特徴とする、「A1.」または「A2.」に記載のチップ
抵抗器である。
【0068】
A4.前記第1抵抗回路および前記第2抵抗回路のうちの少なくとも一方は、前記抵抗
体膜ライン上に、ライン方向に一定間隔を開けて積層された複数の導体膜片を含み、前記
導体膜片が積層されていない前記一定間隔を開けた部分の抵抗体膜ライン部分が1つの単
位抵抗体を構成していることを特徴とする、「A2.」に記載のチップ抵抗器。
A5.前記第1抵抗回路は、前記複数の導体膜片を含み、前記導体膜片の積層レイヤー
と同一レイヤーに、前記導体膜片と同一材料で前記ヒューズ膜が形成されていることを特
徴とする、「A4.」に記載のチップ抵抗器。
【0069】
A6.前記抵抗回路網は、互いに抵抗値の異なる複数種類の抵抗回路を含むことを特徴
とする、「A1.」〜「A5.」のいずれかに記載のチップ抵抗器。
A7.前記ヒューズ膜は、前記抵抗回路網に含まれる複数種類の抵抗回路を、選択的に
前記抵抗回路網に電気的に組み込み、または、前記抵抗回路網から電気的に分離するため
に溶断可能なものであることを特徴とする、「A6.」に記載のチップ抵抗器。
【0070】
A8.前記第1抵抗回路は、前記第1抵抗体膜で形成された複数の単位抵抗体を有し、
前記第2抵抗回路は、前記第2抵抗体膜で形成された複数の単位抵抗体を有し、前記第1
抵抗回路に含まれる各単位抵抗体に対し、前記第2抵抗回路に含まれる各単位抵抗体が前
記接続回路により直列に接続されていることを特徴とする、「A1.」に記載のチップ抵
抗器。
【0071】
A9.前記第1抵抗体膜および第2抵抗体膜は、TiN、TiONまたはTiSiON
で形成されていることを特徴とする、「A1.」〜「A8.」のいずれかに記載のチップ
抵抗器。
A10.素子形成面を有する基板と、前記素子形成面に形成された第1抵抗体膜と、前
記第1抵抗体膜を覆う層間絶縁膜と、前記層間絶縁膜上に形成された第2抵抗体膜と、前
記第1抵抗体膜および第2抵抗体膜を直列接続するためのビアと、前記素子形成面に配置
され、前記第1抵抗体膜または第2抵抗体膜と接続される一対の外部接続電極と、を含む
ことを特徴とするチップ抵抗器。
【0072】
A11.前記第1抵抗体膜および前記第2抵抗体膜が、前記素子形成面を見下ろす平面
視において、重なり合った重なり領域を有しており、当該重なり領域において前記ビアに
より両抵抗体膜が互いに電気的に接続されていることを特徴とする、「A10.」に記載
のチップ抵抗器。
A12.前記第1抵抗体膜および前記第2抵抗体膜は、TiN、TiONまたはTiS
iONで形成されていることを特徴とする、「A10.」または「A11.」に記載のチ
ップ抵抗器。
【0073】
A13.前記第1抵抗体膜および前記第2抵抗体膜は、それぞれ、所定の抵抗回路形態
にパターニングされていることを特徴とする、「A10.」〜「A12.」のいずれかに
記載のチップ抵抗器。
A14.回路形成面を有する基板と、前記基板上に形成された第1接続電極および第2
接続電極と、前記基板上に形成され、一端側が前記第1接続電極に接続され、他端側が前
記第2接続電極に接続されている抵抗回路網とを含み、前記抵抗回路網は、前記基板上の
前記第1接続電極および第2接続電極間に位置する回路形成面に形成された第1抵抗回路
と、前記第1接続電極および第2接続電極の少なくとも一方の下に形成された第2抵抗回
路と、前記第1抵抗回路および前記第2抵抗回路を直列的に接続するための接続回路とを
含むことを特徴とする、チップ抵抗器。
【0074】
A15.前記抵抗回路網に含まれる任意の抵抗回路を前記抵抗回路網に電気的に組み込
み、または、前記抵抗回路網から電気的に分離するために溶断可能なヒューズ膜を含むこ
とを特徴とする、「A14.」に記載のチップ抵抗器。
A16.前記チップ抵抗器を平面視で見たときに、前記抵抗回路網が形成された領域の
面積と、前記第1接続電極および第2接続電極または前記一対の外部接続電極が配置され
た領域の面積とがほぼ等しい面積比であることを特徴とする、「A1.」〜「A15.」
のいずれかに記載のチップ抵抗器。
【0075】
「A1.」に記載の発明によれば、抵抗回路網が、層間絶縁膜を介して積層形成された
第1抵抗回路および第2抵抗回路を含んでおり、チップ抵抗器の小型化および高抵抗化を
達成することができる。
また、複数のヒューズ膜の任意のヒューズ膜を溶断して、任意の抵抗回路を抵抗回路網
に電気的に組み込んだり、抵抗回路網から電気的に分離したりすることにより、抵抗回路
網の抵抗値の調整が行えるとともに、チップ抵抗器の抵抗値を、基本設計を変えることな
く、複数種類の要求抵抗値に合致させることができる。これにより、同一の基本設計のチ
ップ抵抗器であって、その抵抗値を、要求される抵抗値としたチップ抵抗器を提供するこ
とができる。しかも、要求される抵抗値が高抵抗であった場合にも、好適に対処すること
ができる。
【0076】
「A2.」に記載の発明では、抵抗体膜ラインを用いて、第1抵抗回路および第2抵抗
回路を、それぞれ、高抵抗化することができる。
「A3.」に記載の発明によれば、第1層の第1抵抗回路の設計および第2層の第2抵
抗回路の設計を同じ設計とすることができる。よって、回路設計が容易で、製造の容易な
高抵抗化されたチップ抵抗器とすることができる。
【0077】
「A4.」に記載の発明によれば、抵抗値を正確に設定でき、かつ、抵抗値の調整が容
易な高抵抗化されたチップ抵抗器とすることができる。
「A5.」に記載の発明によれば、製造が容易で、比較的少ないプロセスにより簡単に
複数種類の金属膜(導体膜)を一度に形成することができる。
「A6.」に記載の発明によれば、抵抗値の調整がし易い高抵抗化されたチップ抵抗器
とすることができる。
【0078】
「A7.」に記載の発明によれば、「A6.」に記載の発明と同様に、抵抗値の調整が
容易な高抵抗化されたチップ抵抗器とすることができる。
「A8.」に記載の発明によれば、高抵抗化されたチップ抵抗器を提供できる。
「A9.」に記載の発明によれば、抵抗体膜を良好に形成できるチップ抵抗器を提供で
きる。
【0079】
「A10.」に記載の発明によれば、小型化と高抵抗化の双方を実現可能なチップ抵抗
器を提供することができる。
「A11.」に記載の発明によれば、第1抵抗体膜および第2抵抗体膜を、ビアを利用
して容易に直列接続可能なチップ抵抗器とすることができる。
「A12.」に記載の発明によれば、抵抗体膜を良好に形成できるチップ抵抗器とする
ことができる。
【0080】
「A13.」に記載の発明によれば、第1抵抗体膜および第2抵抗体膜を、それぞれの
抵抗回路に適したパターニングとすることができ、所望の高抵抗値を有するチップ抵抗器
を提供することができる。
「A14.」に記載の発明によれば、従来抵抗回路の配置対象外であった外部電極下方
を利用して、高抵抗化を実現したチップ抵抗器を提供することができる。
【0081】
「A15.」に記載の発明によれば、抵抗体膜を良好に形成できるチップ抵抗器とする
ことができる。
「A16.」に記載の発明によれば、極小型のチップ抵抗器であって、高抵抗化された
チップ抵抗器を提供することができる。
第2発明の実施の形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
【0082】
図18Aは、第2発明の一実施形態に係るチップ抵抗器210の外観構成を示す図解的
な斜視図であり、
図18Bは、チップ抵抗器210が基板上に実装された状態を示す側面
図である。
図18Aを参照して、第2発明の一実施形態に係るチップ抵抗器210は、基板211
上に形成された第1接続電極212と、第2接続電極213と、抵抗回路網214とを備
えている。基板211は、平面視略長方形状の直方体形状で、一例として、長辺方向の長
さL=0.3mm、短辺方向の幅W=0.15mm、厚みT=0.1mm程度の大きさの
微少なチップである。基板211は、たとえばシリコン、ガラス、セラミック等で形成す
ることができる。以下の実施形態では、基板211がシリコン基板の場合を例にとって説
明する。
【0083】
チップ抵抗器210は、
図37に示すように、ウエハWa(シリコンウエハなどの半導
体ウエハ、あるいは導体ウエハや非導電性のウエハなどでもよい)上に格子状に多数個の
チップ抵抗器210が形成され、ウエハWaが切断されて個々のチップ抵抗器210に分
離されることにより得られる。
シリコン基板211上において、第1接続電極212はシリコン基板211の一方短辺
311に沿って設けられた短辺311方向に長手の矩形電極である。第2接続電極213
は、シリコン基板211上の他方短辺312に沿って設けられた短辺312方向に長手の
矩形電極である。抵抗回路網214は、シリコン基板211上の第1接続電極212と第
2接続電極213とで挟まれた中央領域(回路形成面または素子形成面)に設けられてい
る。そして、抵抗回路網214の一端側は第1接続電極212に電気的に接続されており
、抵抗回路網214の他端側は第2接続電極213に電気的に接続されている。これら第
1接続電極212、第2接続電極213および抵抗回路網214は、たとえば一例として
、シリコン基板211上に半導体製造プロセスを用いて設けることができる。
【0084】
第1接続電極212および第2接続電極213は、それぞれ、外部接続電極として機能
する。チップ抵抗器210が回路基板215に実装された状態においては、
図18Bに示
すように、第1接続電極212および第2接続電極213が、それぞれ、回路基板215
の回路(図示せず)と半田216により電気的かつ機械的に接続される。なお、外部接続
電極として機能する第1接続電極212および第2接続電極213は、半田濡れ性の向上
および信頼性の向上のために、金(Au)で形成するか、または表面に金メッキを施すこ
とが望ましい。
【0085】
図19は、チップ抵抗器210の平面図であり、第1接続電極212、第2接続電極2
13および抵抗回路網214の配置関係ならびに抵抗回路網214の平面視の構成(レイ
アウトパターン)が示されている。
図19を参照して、チップ抵抗器210は、シリコン基板上面の一方短辺311に長辺
が沿うように配置された平面視略矩形をした第1接続電極212と、シリコン基板上面の
他方短辺312に長辺が沿うように配置された平面視略矩形をした第2接続電極213と
、第1接続電極212および第2接続電極213間の平面視矩形の領域に設けられた抵抗
回路網214とを含んでいる。
【0086】
抵抗回路網214には、シリコン基板211上にマトリックス状に配列された等しい抵
抗値を有する多数個の単位抵抗体R(
図19の例では、行方向(シリコン基板の長手方向
)に沿って8個の単位抵抗体Rが配列され、列方向(シリコン基板の幅方向)に沿って4
4個の単位抵抗体Rが配列され、合計352個の単位抵抗体Rを含む構成)を有している
。そして、これら多数個の単位抵抗体Rの1〜64個の所定の個数が電気的に接続されて
、接続された単位抵抗体Rの数に応じた複数種類の抵抗回路が形成されている。形成され
た複数種類の抵抗回路は導体膜C(導体で形成された配線膜)で所定の態様に接続されて
いる。
【0087】
さらに、抵抗回路を抵抗回路網214に電気的に組み込んだり、または、抵抗回路網2
14から電気的に分離したりするために溶断可能な複数のヒューズ膜Fが設けられている
。複数のヒューズ膜Fは、第2接続電極213の内側辺沿いに、配置領域が直線状になる
ように配列されている。より具体的には、複数のヒューズ膜Fおよび接続用導体膜Cが隣
接するように配列され、その配列方向が直線状になるように配置されている。
【0088】
図20Aは、
図19に示す抵抗回路網214の一部分を拡大して描いた平面図であり、
図20Bおよび
図20Cは、それぞれ、抵抗回路網214における単位抵抗体Rの構造を
説明するために描いた長さ方向の縦断面図(
図20AのB−B線に沿う断面図)および幅
方向の縦断面図(
図20AのC−C線に沿う断面図)である。
図20A、
図20Bおよび
図20Cを参照して、単位抵抗体Rの構成について説明をす
る。
【0089】
基板としてのシリコン基板211の上面には絶縁層(SiO
2)219が形成され、絶
縁層219上に抵抗体膜220が配置されている。抵抗体膜220は、TiN、TiON
またはTiSiONにより形成される。この抵抗体膜220は、第1接続電極212と第
2接続電極213との間を平行に直線状に延びる複数本の抵抗体膜(以下「抵抗体膜ライ
ン」という)とされており、抵抗体膜ライン220は、ライン方向に所定の位置で切断さ
れている場合がある。抵抗体膜ライン220上には、導体膜片221としてのアルミニウ
ム膜が積層されている。各導体膜片221は、抵抗体膜ライン220上に、ライン方向に
一定間隔Rを開けて積層されている。
【0090】
この構成の抵抗体膜ライン220および導体膜片221の電気的特徴を回路記号で示す
と、
図21A〜
図21Cの通りである。すなわち、
図21Aに示すように、所定間隔Rの
領域の抵抗体膜ライン220部分が、それぞれ、一定の抵抗値rの単位抵抗体Rを形成し
ている。導体膜片221が積層された領域は、当該導体膜片221で抵抗体膜ライン22
0が短絡されている。よって、
図21Bに示す抵抗rの単位抵抗体Rの直列接続からなる
抵抗回路が形成されている。
【0091】
また、隣接する抵抗体膜ライン220同士は抵抗体膜ライン220および導体膜片22
1で接続されているから、
図20Aに示す抵抗回路網は、
図21Cに示す抵抗回路を構成
している。
ここで、抵抗回路網214の製造プロセスの一例を簡単に説明する。(1)シリコン基
板211の表面を熱酸化し、絶縁層219としての二酸化シリコン(SiO
2)層を形成
する。(2)そして、スパッタリングにより、絶縁層219の上にTiN、TiONまた
はTiSiONの抵抗体膜220を全面に形成する。(3)さらに、スパッタリングによ
り、抵抗体膜220の上にアルミニウム(Al)の導体膜221を積層する。(4)その
後、フォトリソグラフィプロセスを用い、たとえばドライエッチングにより導体膜221
および抵抗体膜220を選択的に除去し、
図20Aに示すように、平面視で、行方向に延
びる一定幅の抵抗体膜ライン220および導体膜221が一定間隔をあけて列方向に配列
される構成を得る。このとき、部分的に抵抗体膜ライン220および導体膜221が切断
された領域も形成される。(5)続いて、抵抗体膜ライン220の上に積層された導体膜
221を選択的に除去する。この結果、抵抗体膜ライン220上に一定間隔Rをあけて導
体膜片221が積層された構成が得られる。(6)その後、保護膜としてのSiN膜22
2が堆積され、さらにその上に保護層であるポリイミド層223が積層される。
【0092】
この実施形態では、シリコン基板上211に形成された抵抗回路網214に含まれる単
位抵抗体Rは、抵抗体膜ライン220と、抵抗体膜ライン220上に、ライン方向に一定
間隔をあけて積層された複数の導体膜片221とを含み、導体膜片221が積層されてい
ない一定間隔R部分の抵抗体膜ライン220が、1個の単位抵抗体Rを構成している。単
位抵抗体Rを構成している抵抗体膜ライン220は、その形状および大きさが全て等しい
。よって、基板上に作り込んだ同形同大の抵抗体膜は、ほぼ同値になるという特性に基づ
き、シリコン基板211上にマトリックス状に配列された多数個の単位抵抗体Rは、等し
い抵抗値を有している。
【0093】
抵抗体膜ライン220上に積層された導体膜片221は、単位抵抗体Rを形成するとと
もに、複数個の単位抵抗体Rを接続して抵抗回路を構成するための接続用導体膜の役目も
果たしている。
図22Aは、
図19に示すチップ抵抗器210の平面図の一部分を拡大して描いたヒュ
ーズ膜Fを含む領域の部分拡大平面図であり、
図22Bは、
図22AのB−Bに沿う断面
構造を示す図である。
【0094】
図22Aおよび
図22Bに示すように、ヒューズ膜Fも、抵抗体膜220上に積層され
た導体膜221により形成されている。すなわち、単位抵抗体Rを形成する抵抗体膜ライ
ン220上に積層された導体膜片221と同じレイヤーに、導体膜片221と同じ金属材
料であるアルミニウム(Al)により形成されている。なお、導体膜片221は、前述し
たように、抵抗回路を形成するために、複数個の単位抵抗体Rを電気的に接続する接続用
導体膜Cとしても用いられている。
【0095】
つまり、抵抗体膜220上に積層された同一レイヤーにおいて、単位抵抗体R形成用の
導体膜、抵抗回路を形成するための接続用導体膜、抵抗回路網214を構成するための接
続用導体膜、ヒューズ膜、ならびに抵抗回路網214を第1接続電極212および第2接
続電極213に接続するための導体膜が、同一の金属材料(たとえばアルミニウム)を用
いて、同じ製造プロセス(たとえばスパッタリングおよびフォトリソグラフィプロセス)
によって形成されている。これにより、このチップ抵抗器210の製造プロセスが簡略化
され、また、各種導体膜を共通のマスクを利用して同時に形成できる。さらに、抵抗体膜
220とのアライメント性も向上する。
【0096】
図23は、
図19に示す抵抗回路網214における複数種類の抵抗回路を接続する接続
用導体膜Cおよびヒューズ膜Fの配列関係と、その接続用導体膜Cおよびヒューズ膜Fに
接続された複数種類の抵抗回路との接続関係を図解的に示す図である。
図23を参照して、第1接続電極212には、抵抗回路網214に含まれる基準抵抗回
路R8の一端が接続されている。基準抵抗回路R8は、8個の単位抵抗体Rの直列接続か
らなり、その他端はヒューズ膜F1に接続されている。
【0097】
ヒューズ膜F1と接続用導体膜C2とには、64個の単位抵抗体Rの直列接続からなる
抵抗回路R64の一端および他端が接続されている。
接続用導体膜C2とヒューズ膜F4とには、32個の単位抵抗体Rの直列接続からなる
抵抗回路R32の一端および他端が接続されている。
ヒューズ膜F4と接続用導体膜C5とには、32個の単位抵抗体Rの直列接続からなる
抵抗回路体R32の一端および他端が接続されている。
【0098】
接続用導体膜C5とヒューズ膜F6とには、16個の単位抵抗体Rの直列接続からなる
抵抗回路R16の一端および他端が接続されている。
ヒューズ膜F7および接続用導体膜C9には、8個の単位抵抗体Rの直列接続からなる
抵抗回路R8の一端および他端が接続されている。
接続用導体膜C9およびヒューズ膜F10には、4個の単位抵抗体Rの直列接続からな
る抵抗回路R4の一端および他端が接続されている。
【0099】
ヒューズ膜F11および接続用導体膜C12には、2個の単位抵抗体Rの直列接続から
なる抵抗回路R2の一端および他端が接続されている。
接続用導体膜C12およびヒューズ膜F13には、1個の単位抵抗体Rからなる抵抗回
路体R1の一端および他端が接続されている。
ヒューズ膜F13および接続用導体膜C15には、2個の単位抵抗体Rの並列接続から
なる抵抗回路R/2の一端および他端が接続されている。
【0100】
接続用導体膜C15およびヒューズ膜F16には、4個の単位抵抗体Rの並列接続から
なる抵抗回路R/4の一端および他端が接続されている。
ヒューズ膜F16および接続用導体膜C18には、8個の単位抵抗体Rの並列接続から
なる抵抗回路R/8の一端および他端が接続されている。
接続用導体膜C18およびヒューズ膜F19には、16個の単位抵抗体Rの並列接続か
らなる抵抗回路R/16の一端および他端が接続されている。
【0101】
ヒューズ膜F19および接続用導体膜C22には、32個の単位抵抗体Rの並列接続か
らなる抵抗回路R/32が接続されている。
複数のヒューズ膜Fおよび接続用導体膜Cは、それぞれ、ヒューズ膜F1、接続用導体
膜C2、ヒューズ膜F3、ヒューズ膜F4、接続用導体膜C5、ヒューズ膜F6、ヒュー
ズ膜F7、接続用導体膜C8、接続用導体膜C9、ヒューズ膜F10、ヒューズ膜F11
、接続用導体膜C12、ヒューズ膜F13、ヒューズ膜F14、接続用導体膜C15、ヒ
ューズ膜F16、ヒューズ膜F17、接続用導体膜C18、ヒューズ膜F19、ヒューズ
膜F20、接続用導体膜C21、接続用導体膜C22が、直線状に配置されて直列に接続
されている。各ヒューズ膜Fが溶断されると、ヒューズ膜Fに隣接接続された接続用導体
膜Cとの間の電気的接続が遮断される構成である。
【0102】
この構成を、電気回路図で示すと
図24の通りである。すなわち、全てのヒューズ膜F
が溶断されていない状態では、抵抗回路網214は、第1接続電極212および第2接続
電極213間に設けられた8個の単位抵抗体Rの直列接続からなる基準抵抗回路R8(抵
抗値8r)の抵抗回路を構成している。たとえば、1個の単位抵抗体Rの抵抗値rをr=
80Ωとすれば、8r=640Ωの抵抗回路により、第1接続電極212および第2接続
電極213が接続されたチップ抵抗器210が構成されている。
【0103】
そして、基準抵抗回路R8以外の複数種類の抵抗回路には、それぞれ、ヒューズ膜Fが
並列的に接続され、各ヒューズ膜Fによりこれら複数種類の抵抗回路は短絡された状態と
なっている。つまり、基準抵抗回路R8には、12種類13個の抵抗回路R64〜R/3
2が直列に接続されているが、各抵抗回路は、それぞれ並列に接続されたヒューズ膜Fに
より短絡されているので、電気的にみると、各抵抗回路は抵抗回路網214に組み込まれ
てはいない。
【0104】
この実施形態に係るチップ抵抗器210は、要求される抵抗値に応じて、ヒューズ膜F
を選択的に、たとえばレーザー光で溶断する。それにより、並列的に接続されたヒューズ
膜Fが溶断された抵抗回路は、抵抗回路網214に組み込まれることになる。よって、抵
抗回路網214の全体の抵抗値を、溶断されたヒューズ膜Fに対応する抵抗回路が直列に
接続されて組み込まれた抵抗値を有する抵抗回路網とすることができる。
【0105】
換言すれば、この実施形態に係るチップ抵抗器210は、複数種類の抵抗回路に対応し
て設けられたヒューズ膜を選択的に溶断することにより、複数種類の抵抗回路(たとえば
、F1、F4、F13が溶断されると、抵抗回路R64、R32、R1の直列接続)を抵
抗回路網に組み込むことができる。そして、複数種類の抵抗回路は、それぞれ、その抵抗
値が決まっているので、いわばデジタル的に抵抗回路網214の抵抗値を調整して、要求
される抵抗値を有するチップ抵抗器210とすることができる。
【0106】
また、複数種類の抵抗回路は、等しい抵抗値を有する単位抵抗体Rが、直列に1個、2
個、4個、8個、16個、32個、および64個と、等比数列的に単位抵抗体Rの個数が
増加されて接続された複数種類の直列抵抗回路ならびに等しい抵抗値の単位抵抗体Rが並
列に2個、4個、8個、16個、および32個と、等比数列的に単位抵抗体Rの個数が増
加されて接続された複数種類の並列抵抗回路を備えている。そして、これらがヒューズ膜
Fで短絡された状態で直列に接続されている。よって、ヒューズ膜Fを選択的に溶断する
ことにより、抵抗回路網214全体の抵抗値を、小さな抵抗値から大きな抵抗値まで、広
範囲の間で、任意の抵抗値に設定することができる。
【0107】
図25は、第2発明の他の実施形態に係るチップ抵抗器230の平面図であり、第1接
続電極212、第2接続電極213および抵抗回路網214の配置関係ならびに抵抗回路
網214の平面視の構成が示されている。
チップ抵抗器230が、前述したチップ抵抗器210と異なるところは、抵抗回路網2
14における単位抵抗体Rの接続態様である。
【0108】
すなわち、チップ抵抗器230の抵抗回路網214には、シリコン基板上にマトリック
ス状に配列された等しい抵抗値を有する多数個の単位抵抗体R(
図25の構成では、行方
向(シリコン基板の長手方向)に沿って8個の単位抵抗体Rが配列され、列方向(シリコ
ン基板の幅方向)に沿って44個の単位抵抗体Rが配列され、合計352個の単位抵抗体
Rを含む構成)を有している。そして、これら多数個の単位抵抗体Rの1〜128個の所
定個数が電気的に接続されて、複数種類の抵抗回路が形成されている。形成された複数種
類の抵抗回路は、回路網接続手段としての導体膜およびヒューズ膜Fにより並列態様で接
続されている。複数のヒューズ膜Fは、第2接続電極213の内側辺沿いに、配置領域が
直線状になるように配列されており、ヒューズ膜Fが溶断されると、ヒューズ膜に接続さ
れた抵抗回路が抵抗回路網214から電気的に分離される構成である。
【0109】
なお、抵抗回路網214を構成する多数個の単位抵抗体Rの構造や、接続用導体膜、ヒ
ューズ膜Fの構造は、先に説明したチップ抵抗器210における対応する部位の構造と同
様であるから、ここでの説明については省略する。
図26は、
図25に示す抵抗回路網における複数種類の抵抗回路の接続態様と、それら
を接続するヒューズ膜Fの配列関係ならびにヒューズ膜Fに接続された複数種類の抵抗回
路の接続関係を図解的に示す図である。
【0110】
図26を参照して、第1接続電極212には、抵抗回路網214に含まれる基準抵抗回
路R/16の一端が接続されている。基準抵抗回路R/16は、16個の単位抵抗体Rの
並列接続からなり、その他端は残りの抵抗回路が接続される接続用導体膜Cに接続されて
いる。
ヒューズ膜F1と接続用導体膜Cとには、128個の単位抵抗体Rの直列接続からなる
抵抗回路R128の一端および他端が接続されている。
【0111】
ヒューズ膜F5と接続用導体膜Cとには、64個の単位抵抗体Rの直列接続からなる抵
抗回路R64の一端および他端が接続されている。
ヒューズ膜F6と接続用導体膜Cとには、32個の単位抵抗体Rの直列接続からなる抵
抗回路R32の一端および他端が接続されている。
ヒューズ膜F7と接続用導体膜Cとには、16個の単位抵抗体Rの直列接続からなる抵
抗回路R16の一端および他端が接続されている。
【0112】
ヒューズ膜F8と接続用導体膜Cとには、8個の単位抵抗体Rの直列接続からなる抵抗
回路R8の一端および他端が接続されている。
ヒューズ膜F9と接続用導体膜Cとには、4個の単位抵抗体Rの直列接続からなる抵抗
回路R4の一端および他端が接続されている。
ヒューズ膜F10と接続用導体膜Cとには、2個の単位抵抗体Rの直列接続からなる抵
抗回路R2の一端および他端が接続されている。
【0113】
ヒューズ膜F11と接続用導体膜Cとには、1個の単位抵抗体Rの直列接続からなる抵
抗回路R1の一端および他端が接続されている。
ヒューズ膜F12と接続用導体膜Cとには、2個の単位抵抗体Rの並列接続からなる抵
抗回路R/2の一端および他端が接続されている。
ヒューズ膜F13と接続用導体膜Cとには、4個の単位抵抗体Rの並列接続からなる抵
抗回路R/4の一端および他端が接続されている。
【0114】
ヒューズ膜F14、F15、F16は電気的に接続されており、これらヒューズ膜F1
4、F15、F16と接続用導体Cとには、8個の単位抵抗体Rの並列接続からなる抵抗
回路R/8の一端および他端が接続されている。
ヒューズ膜F17、F18、F19、F20、F21は電気的に接続されており、これ
らヒューズ膜F17〜F21と接続用導体膜Cとには、16個の単位抵抗体Rの並列接続
からなる抵抗回路R/16の一端および他端が接続されている。
【0115】
ヒューズ膜Fは、ヒューズ膜F1〜F21の21個備えられていて、これらは全て第2
接続電極213に接続されている。
かかる構成であるから、抵抗回路の一端が接続されたいずれかのヒューズ膜Fが溶断さ
れると、そのヒューズ膜Fに一端が接続された抵抗回路は、抵抗回路網214から電気的
に切り離される。
【0116】
図26の構成、すなわちチップ抵抗器230に備えられた抵抗回路網214の構成を、
電気回路図で示すと
図27の通りである。全てのヒューズ膜Fが溶断されていない状態で
は、抵抗回路網214は、第1接続電極214および第2接続電極213間に、基準抵抗
回路R/16と、12種類の抵抗回路R/16、R/8、R/4、R/2、R1、R2、
R4、R8、R16、R32、R64、R128の並列接続回路との直列接続回路を構成
している。
【0117】
そして、基準抵抗回路R/16以外の12種類の抵抗回路には、それぞれ、ヒューズ膜
Fが直列に接続されている。よって、この抵抗回路網214を有するチップ抵抗器230
では、要求される抵抗値に応じて、ヒューズ膜Fを選択的に、たとえばレーザー光で溶断
すれば、溶断されたヒューズ膜Fに対応する抵抗回路(ヒューズ膜Fが直列に接続された
抵抗回路)は、抵抗回路網214から電気的に分離され、チップ抵抗器230の抵抗値を
調整することができる。
【0118】
換言すれば、この実施形態に係るチップ抵抗器230も、複数種類の抵抗回路に対応し
て設けられたヒューズ膜を選択的に溶断することにより、複数種類の抵抗回路を抵抗回路
網から電気的に分離することができる。そして、複数種類の抵抗回路は、それぞれ、その
抵抗値が決まっているので、いわばデジタル的に抵抗回路網214の抵抗値を調整して、
要求される抵抗値を有するチップ抵抗器30とすることができる。
【0119】
また、複数種類の抵抗回路は、等しい抵抗値を有する単位抵抗体Rが、直列に1個、2
個、4個、8個、16個、32個、64個および128個と、等比数列的に単位抵抗体R
の個数が増加されて接続された複数種類の直列抵抗回路ならびに等しい抵抗値の単位抵抗
体Rが並列に2個、4個、8個、16個と、等比数列的に単位抵抗体Rの個数が増加され
て接続された複数種類の並列抵抗回路を備えている。よって、ヒューズ膜Fを選択的に溶
断することにより、抵抗回路網214全体の抵抗値を、細かく、かつデジタル的に、任意
の抵抗値に設定することができる。
【0120】
なお、
図27に示す電気回路においては、基準抵抗回路R/16および、並列接続され
た抵抗回路のうち、抵抗値の小さな抵抗回路には、過電流が流れる傾向があり、抵抗設定
時に、抵抗に流せる定格電流を大きく設計しなければならない。
そこで、電流を分散させるために、
図27に示す電気回路を、
図28Aに示す電気回路
構成となるように、抵抗回路網の接続構造を変更してもよい。すなわち、基準抵抗回路R
/16を無くし、かつ、並列接続される抵抗回路は、最小の抵抗値をrとし、抵抗値rの
抵抗単位体R1を複数組並列に接続した構成340を含む回路に変えるのである。
【0121】
図28Bは、具体的な抵抗値を示した電気回路図であり、80Ωの単位抵抗体とヒュー
ズ膜Fとの直列接続を複数組並列に接続した構成340を含む回路とされている。これに
より、流れる電流の分散を図ることができる。
図29は、この発明のさらに他の実施形態に係るチップ抵抗器に備えられる抵抗回路網
214の回路構成を電気回路図で示した図である。
図29に示す抵抗回路網214の特徴
は、複数種類の抵抗回路の直列接続と、複数種類の抵抗回路の並列接続とが直列に接続さ
れた回路構成となっていることである。
【0122】
直列接続される複数種類の抵抗回路には、先の実施形態と同様、各抵抗回路毎に、並列
にヒューズ膜Fが接続されていて、直列接続された複数種類の抵抗回路は、全てヒューズ
膜Fで短絡状態とされている。従って、ヒューズ膜Fを溶断すると、そのヒューズ膜Fで
短絡されていた抵抗回路が、抵抗回路網214に電気的に組み込まれることになる。
一方、並列接続された複数種類の抵抗回路には、それぞれ、直列にヒューズ膜Fが接続
されている。従って、ヒューズ膜Fを溶断することにより、ヒューズ膜Fが直列に接続さ
れている抵抗回路を、抵抗回路の並列接続から電気的に切り離すことができる。
【0123】
かかる構成とすれば、たとえば、1kΩ以下の小抵抗は並列接続側で作り、1kΩ以上
の抵抗回路を直列接続側で作ることができる。よって、数Ωの小抵抗から数MΩの大抵抗
までの広範な範囲の抵抗回路を、等しい基本設計で構成した抵抗回路網214を用いて作
ることができる。
また、より精度良く抵抗値を設定する場合は、要求抵抗値に近い直列接続側抵抗回路の
ヒューズ膜を予めカットしておけば、細かな抵抗値の調整を並列接続側の抵抗回路のヒュ
ーズ膜を溶断することにより行うことができ、所望の抵抗値への合わせ込みの精度が上が
る。
【0124】
図30は、10Ω〜1MΩの抵抗値を有するチップ抵抗器における抵抗回路網214の
具体的な構成例を示す電気回路図である。
図30に示す抵抗回路網214も、ヒューズ膜Fで短絡された複数種類の抵抗回路の直
列接続と、ヒューズ膜Fが直列接続された複数種類の抵抗回路の並列接続とが直列に接続
された回路構成となっている。
【0125】
図30の抵抗回路によれば、並列接続側において、10〜1kΩの任意の抵抗値を、精
度1%以内で設定できる。また、直列接続側の回路で、1k〜1MΩの任意の抵抗値を、
精度1%以内で設定できる。直列接続側の回路を使用する場合は、所望の抵抗値に近い抵
抗回路のヒューズ膜Fを予め溶断し、所望の抵抗値に合わせ込んでおくことで、より精度
良く抵抗値を設定できるという利点がある。
【0126】
なお、ヒューズ膜Fは、接続用導体膜Cと同一のレイヤーを用いる場合のみを説明した
が、接続用導電膜C部分は、その上に更に別の導体膜を積層するようにし、導体膜の抵抗
値を下げるようにしてもよい。なお、この場合であっても、ヒューズ膜Fの上に導体膜を
積層しなければ、ヒューズ膜Fの溶断性が悪くなることはない。
図31Aは、第2発明のさらに他の実施形態に係るチップ抵抗器260の要部構造を示
す図解的な断面図である。
図31Bは、
図31Aの図解的な平面図である。
図31Cは、
図31Aのチップ抵抗器260の回路図である。
【0127】
このチップ抵抗器260の特徴は、抵抗回路網214が、第1抵抗回路261および第
2抵抗回路262の2層構造を有していることである。
すなわち、チップ抵抗器260は、たとえばシリコン基板211を有し、その上面に絶
縁層(SiO
2)219が形成され、絶縁層219上に第1抵抗体膜263が配置されて
いる。第1抵抗体膜263は、TiN、TiONまたはTiSiONにより形成される。
第1抵抗体膜263は、所定の幅(たとえば1.5μm程度)と長さ(たとえば8〜15
μm程度)の平面視長手短冊状の単位抵抗体膜が一定間隔を隔てて長さ方向に配列された
レイアウト構成を有している。この第1抵抗体膜263を覆うように絶縁層(SiO
2)
264が形成されている。そして、絶縁層264上に、第1抵抗体膜263と互い違いに
なるように、第2抵抗体膜265が設けられている。第2抵抗体膜265も、TiN、T
iONまたはTiSiONにより形成される。
【0128】
第2抵抗体膜265は、第1抵抗体膜263と等しい幅および長さの平面視長手短冊状
の単位抵抗体膜が、その長さ方向に一定間隔を開けて配列されたレイアウトを備える。そ
して
図31A〜
図31Cに示されるチップ抵抗器260の場合は、第1抵抗体膜263の
存在しない位置の上方に第2抵抗体膜265が位置するように積層されている。抵抗体膜
の長さ方向に見ると、第1抵抗体膜263と第2抵抗体膜265とは互い違いに配列され
ている。なお、第1抵抗体膜263と第2抵抗体膜265とは、交差したり、並走するよ
うに配置するのが好ましい。
【0129】
そして、第1抵抗体膜263の長さ方向両端部と、第2抵抗体膜265の長さ方向両端
部とは、上下方向に対向する端部領域を有し、その端部領域同士は、絶縁層264に形成
されたビア266によって電気的に接続されている。ビア266内には、たとえばアルミ
ニウムが充填されている。
第2抵抗体膜265上は、保護膜としてのたとえばSiN膜222で覆われ、さらにそ
の上に、保護層であるポリイミド層223が積層されている。
【0130】
かかる構成であるから、たとえば第1抵抗体膜263および第2抵抗体膜265が、そ
れぞれ、抵抗値rの単位抵抗体Rを形成している場合、
図31Aおよび
図31Bに示すチ
ップ抵抗器260の部分的な抵抗回路は、
図31Cに示す回路図として表わされる。
このように、チップ抵抗器260の抵抗回路網214を、第1抵抗回路261および第
2抵抗回路262の2層構造を有するものにすることにより、チップ抵抗器260の抵抗
値を、抵抗回路網214の配置面積を増加することなく約2倍まで高めることができる。
【0131】
より具体的には、下層に配置された第1抵抗体膜263と、上層に配置された第2抵抗
体膜265とを、順次直列に接続することにより、抵抗回路網214の抵抗値を約2倍に
することができる。
なお、
図31A〜
図31Cに示されるチップ抵抗器260では、抵抗回路網214が第
1抵抗回路261および第2抵抗回路262の2層構成を有する旨説明した。しかし、抵
抗回路網214は、抵抗回路の2層構成に限らず、3層以上の多層構成とすることも可能
である。それにより、抵抗回路網214の抵抗値を、単層の抵抗回路の場合に比べ、飛躍
的に高めることができる。
【0132】
チップ抵抗器260におけるその他の構成、すなわちヒューズ膜を有すること等は、図
19、
図22、
図23等を参照して説明した先の実施形態に係るチップ抵抗器210の構
成と同様である。
図32および
図33は、第2発明のさらに他の実施形態に係るチップ抵抗器270の要
部の構造を表わす図解的な縦断面図である。
図32および
図33は、それぞれ、
図20B
および
図20Cと対比して描いた縦断面図であり、
図19に示すチップ抵抗器210との
構造上の違いを示している。
【0133】
図32および
図33を参照して、チップ抵抗器270の特徴は、抵抗回路網214に含
まれる抵抗体膜が、単層構成ではなく、2層構成となっていることである。
すなわち、基板としてのたとえばシリコン基板211の上面には絶縁層(SiO
2)2
19が形成され、絶縁層219上に第1抵抗体膜220が配置されている。第1抵抗体膜
220は、TiN、TiONまたはTiSiONにより形成される。第1抵抗体膜220
は、平行に直線状に延びる複数本の抵抗体膜(以下「抵抗体膜ライン」という)とされて
おり、第1抵抗体膜ライン220は、ライン方向に所定の位置で切断されている場合があ
る。第1抵抗体膜ライン220上には、第1導体膜片221としてのアルミニウム膜が積
層されている。各第1導体膜片221は、第1抵抗体膜ライン220上に、ライン方向に
一定間隔Rを開けて積層されている。
【0134】
そして、第1抵抗体膜ライン220および第1導体膜片221上を覆うように層間絶縁
膜としてのSiO
2の絶縁層271が形成されている。この絶縁層271上には、第2抵
抗体膜272が配置されている。第2抵抗体膜272も、TiN、TiONまたはTiS
iONにより形成される。第2抵抗体膜272のレイアウトは、第1抵抗体膜220のレ
イアウトと全く同じにされており、平面視では両者はオーバラップするレイアウト配置と
なっている。第2抵抗体膜272も、平行に直線状に延びる複数本の抵抗体膜(以下「抵
抗体膜ライン」という)とされており、第2抵抗体膜ライン272は、第1抵抗体膜ライ
ン220と同様、ライン方向に所定の位置で切断されている場合がある。第2抵抗体膜ラ
イン272上には、第2導体膜片273としてのアルミニウム膜が積層されている。各第
2導体膜片273は、第2抵抗体膜ライン272上に、ライン方向に一定間隔Rを開けて
積層されている。
【0135】
そして、第2抵抗体膜ライン272および第2導体膜片273上には、保護膜としての
SiN膜222が堆積され、さらにその上に、保護層であるポリイミド層223が積層さ
れている。
チップ抵抗器270は、かかる構造を有するので、抵抗回路網214に含まれる複数種
類の抵抗回路が、第1抵抗体膜ライン220および第1導体膜片221からなる第1層と
、第2抵抗体膜ライン272および第2導体膜片273からなる第2層との2層構造を含
んでいる。第1層の抵抗回路と第2層の抵抗回路とは、全く同じレイアウトパターンを有
している。よって、複数種類の抵抗回路が、それぞれ対をなすように、上下に積層された
構成をしている。そして、複数種類の抵抗回路は、単位抵抗体R毎に第1層と第2層との
抵抗体が直列接続されているのではなく、抵抗回路毎に、第1層の抵抗回路と第2層の抵
抗回路とが直列に接続されている。
【0136】
その結果、抵抗回路網214に含まれる複数種類の抵抗回路は、
図19〜
図24を参照
して説明した第1の実施形態(チップ抵抗器210)に比べて、それぞれ2倍の抵抗値を
有する抵抗回路となっている。
これにより、チップ抵抗器270は、第1の実施形態のチップ抵抗器210に比べて、
2倍の抵抗値を有するチップ抵抗器270とすることができる。チップ抵抗器270は、
高抵抗で、かつ抵抗値を所望の抵抗値にデジタル的に調整できるチップ抵抗器とすること
ができる。
【0137】
図32および
図33を参照して説明したチップ抵抗器270において、さらに抵抗値を
高める場合には、第1層の第1導体膜片221、または、第2層の第2導体膜片273を
設けない構成とすることもできる。
すなわち、たとえば第1層の第1抵抗体膜ライン220において、第1導体膜片221
を設けない場合、第1抵抗体膜ラインが長く延びた抵抗値の高い抵抗体膜ライン220と
することができる。よって、単位抵抗体Rが直列に接続されたものよりも、抵抗値を上げ
ることができる。
【0138】
同様に、第2抵抗体膜ライン272に対し、第2導体膜片273を設けない構成とする
ことによっても、第2層の抵抗回路の抵抗値を高くすることができる。
そして、全体としてみると、チップ抵抗器270の高抵抗化を実現することができる。
上述した実施形態に係るチップ抵抗器270は、第1層および第2層の2層構造の抵抗
回路に限定されるものではない。3層以上の多層構造の抵抗回路を設け、チップ抵抗器2
70をより高抵抗化することも可能である。
【0139】
図34は、この発明のさらに他の実施形態に係るチップ抵抗器280の平面図であり、
図35は、
図34のA−Aに沿う断面構造を図解的に示した断面図である。
チップ抵抗器280の特徴は、抵抗値を高めるために、第1接続電極212および第2
接続電極213の下に、抵抗回路281が形成されていることである。チップ抵抗器28
0においては、一対の外部接続電極としての第1接続電極212および第2接続電極21
3が必須である。これら外部接続電極212、213を設けるための配置面積は、チップ
抵抗器280を平面視で観察した場合、全面積の約2分の1が外部電極配置用に用いられ
る。
【0140】
それゆえ、この実施形態では、第1接続電極212および第2接続電極213間の、本
来の抵抗回路網214の配置領域に加えて、第1接続電極212および第2接続電極21
3の下方に、抵抗回路281を設ける構造を有している。
図35を参照して、第1接続電極212下に設けられる抵抗回路281は、抵抗回路網
214に含まれる抵抗回路と同様に、シリコン基板211の上に絶縁層(SiO
2)21
9が形成され、その上に配置された抵抗体膜282を含んでいる。この実施形態において
も、抵抗体膜282は、TiN、TiONまたはTiSiONにより形成される。抵抗体
膜282は、紙面に直交方向に延びており、その上には間欠的に導体膜片283が積層さ
れている。導体膜片283はアルミニウム膜である。
【0141】
そして、その上には、抵抗回路281を第1接続電極212と電気的に接続するために
、接続用アルミニウム膜284が設けられている。図では、アルミニウム膜284が、紙
面に直交方向に延びて形成された抵抗体膜282の上に間欠的に設けられた特定の導体膜
片283とのみ接続されているので、抵抗回路281の抵抗値を所望の値にすることがで
きる。
【0142】
アルミニウム膜284上には、第1接続電極212が積層されている。第1接続電極2
12は、Niで形成された拡散防止層321と、ニッケルと金とを良好に接合するために
、Ni層321上に積層されたパラジウム(Pd)層322と、Pd層322上に積層さ
れた金(Au)のパッド層323を含んでいる。
チップ抵抗器280は、第1接続電極212および第2接続電極213、すなわち外部
接続電極の下に設けられた抵抗回路281を有している。チップ抵抗器280は、基板2
11の上面の素子形成領域全面に、抵抗回路が備えられた構成をしている。よって、抵抗
回路を多く設けることができ、高抵抗化を図ることができる。
【0143】
なお、外部接続電極212、213の少なくとも一方の下に抵抗回路を設けることによ
り、高抵抗化を実現できる。
第2発明は、以上説明した高抵抗化を図ったチップ抵抗器において、各高抵抗化のため
の構成を適宜組み合わせて作ったより高抵抗なチップ抵抗器とすることも可能である。
図36は、上述したチップ抵抗器に他の回路を組み込んだディスクリート部品201の
回路構成を示す図である。
【0144】
ディスクリート部品201は、たとえば、ダイオード255と抵抗回路214とを直列
接続したものである。このディスクリート部品201は、ダイオード255を含むチップ
型ディスクリート部品となっている。なお、この例のようなチップ型に限らず、上述した
抵抗回路214を有するディスクリート部品としてこの発明は適用できる。
この明細書および図面から抽出される特徴の例を以下に示す。
【0145】
[項1]一方の表面に回路形成面を有する基板と、前記基板における回路形成面側の表
面上に形成された第1接続電極および第2接続電極と、前記基板における回路形成面側の
表面上に形成され、一端側が前記第1接続電極に接続され、他端側が前記第2接続電極に
接続されている抵抗回路網とを含み、前記基板の回路形成面には、当該回路形成面から所
定の深さまで掘り下げられたトレンチが形成されており、前記抵抗回路網は、前記トレン
チを横断するように前記トレンチの内壁面に沿って設けられた抵抗体膜を有する抵抗回路
を含み、前記基板における回路形成面側の表面が実装対象に対向するように配置された状
態で、前記実装対象に実装されることを特徴とする、チップ抵抗器。
【0146】
項1に記載のチップ抵抗器によれば、基板の回路形成面にトレンチが形成されており、
そのトレンチの内壁面に沿って延びる抵抗体膜を有する抵抗回路が備えられている。従っ
て、抵抗回路に備えられる抵抗体膜の長さを長くでき、抵抗値を上げることができる。ま
た、高抵抗化を図るために、回路形成面を拡げなくてもよいから、チップ抵抗器の小型化
および高抵抗化の両方を達成することができる。
【0147】
[項2]前記抵抗回路網は、複数の抵抗回路を含んでおり、任意の抵抗回路を前記抵抗
回路網に電気的に取り込み、または、前記抵抗回路網から電気的に分離するために溶断可
能なヒューズ膜をさらに含むことを特徴とする、項1に記載のチップ抵抗器。
項2に記載のチップ抵抗器によれば、ヒューズ膜を溶断して、任意の抵抗回路を抵抗回
路網に電気的に組み込んだり、抵抗回路網から電気的に分離することができる。よって、
抵抗回路網の抵抗値の調整が行えるとともに、チップ抵抗器の抵抗値を、基本設計を変え
ることなく、複数種類の要求抵抗値に合致させることができる。これにより、同一の基本
設計のチップ抵抗器であって、その抵抗値を、要求される抵抗値としたチップ抵抗器を提
供することができる。しかも、要求される抵抗値が高抵抗であった場合にも、好適に対処
することができる。
【0148】
[項3]前記抵抗体膜は、一定の幅を有し、直線状に延びるライン状の抵抗体膜ライン
を含むことを特徴とする、項1または2に記載のチップ抵抗器。
項3に記載のチップ抵抗器によれば、抵抗体膜ラインを用いて、抵抗回路の抵抗値を高
抵抗化することができる。
[項4]前記抵抗体膜は、前記トレンチの内側面から当該トレンチ外の前記回路形成面
にまで延びて形成されており、前記抵抗体膜において前記回路形成面に形成された部分に
接して形成された配線膜をさらに含むことを特徴とする、項1〜3のいずれかに記載のチ
ップ抵抗器。
【0149】
項4に記載のチップ抵抗器によれば、トレンチ内に延びる抵抗体膜を、それぞれ、単位
抵抗体とすることができる。また、トレンチ内に延びる抵抗体膜を、容易にヒューズ膜や
第1接続電極または第2接続電極に接続することができる。
[項5]前記トレンチは、前記回路形成面を平面視で見たとき、所定の方向に延びてお
り、前記抵抗体膜は、前記トレンチを横断するように前記トレンチの内壁面に沿って設け
られるとともに前記トレンチが延びる長さ方向に直交方向に延びる、平行に配列された複
数の抵抗体膜ラインを含むことを特徴とする、項3に記載のチップ抵抗器。
【0150】
項5に記載のチップ抵抗器によれば、高抵抗化を実現したチップ抵抗器とすることがで
きる。
[項6]前記抵抗体膜は、TiN、TiONまたはTiSiONで形成されていること
を特徴とする、項1〜5のいずれかに記載のチップ抵抗器。
項6に記載のチップ抵抗器によれば、抵抗体膜を良好に形成できるチップ抵抗器とする
ことができる。
【0151】
[項7]一方の表面に回路形成面を有する基板と、前記基板における回路形成面側の表
面上に形成された第1接続電極および第2接続電極と、前記基板における回路形成面側の
表面上に形成され、一端側が前記第1接続電極に接続され、他端側が前記第2接続電極に
接続されている抵抗回路網とを含み、前記抵抗回路網は、前記基板の回路形成面に形成さ
れ、一定の幅で直線状に延びるライン状の抵抗体膜ラインを有する抵抗回路を含み、前記
基板における回路形成面側の表面が実装対象に対向するように配置された状態で、前記実
装対象に実装されることを特徴とする、チップ抵抗器。
【0152】
項7に記載のチップ抵抗器によれば、抵抗値を正確に設定でき、かつ、高抵抗化が可能
なチップ抵抗器とすることができる。
[項8]前記抵抗回路網は、複数の抵抗回路を含んでおり、
任意の抵抗回路を前記抵抗回路網に電気的に組み込み、または、前記抵抗回路網から電
気的に分離するために溶断可能なヒューズ膜をさらに含むことを特徴とする、項7に記載
のチップ抵抗器。
【0153】
項8に記載のチップ抵抗器によれば、抵抗値の調整が容易な高抵抗化されたチップ抵抗
器とすることができる。
[項9]前記抵抗体膜ライン上に、ライン方向に一定間隔を開けて積層された導体膜を
備え、前記導体膜が積層されていない前記一定間隔部分の抵抗体膜ラインが1個の単位抵
抗体を構成していることを特徴とする、項7または8に記載のチップ抵抗器。
【0154】
項9に記載のチップ抵抗器によれば、単位抵抗体の直列接続により抵抗値を正確に設定
できるチップ抵抗器とすることができる。
[項10]前記抵抗体膜ライン上に積層された前記導体膜と、前記ヒューズ膜とは同一
レイヤーに形成された同一材料の金属膜を含むことを特徴とする、項9に記載のチップ抵
抗器。
【0155】
項10に記載のチップ抵抗器によれば、製造が容易で、比較的少ないプロセスにより簡
単に複数種類の金属膜(導体膜)を一度に形成することができる。
[項11]前記抵抗回路は、前記単位抵抗体が複数個直列に接続されたものを含むこと
を特徴とする、項8〜10のいずれかに記載のチップ抵抗器。
項11に記載のチップ抵抗器によれば、抵抗値の調整がし易い高抵抗化されたチップ抵
抗器とすることができる。
【0156】
[項12]前記抵抗体膜ラインは、TiN、TiONまたはTiSiONで形成されて
いることを特徴とする、項7〜11のいずれかに記載のチップ抵抗器。
項12に記載のチップ抵抗器によれば、抵抗体膜を良好に形成できるチップ抵抗器を提
供できる。
[項13]前記抵抗回路網の表面を覆うポリイミドからなる保護層をさらに含む、項1
〜12のいずれかに記載のチップ抵抗器。