特許第6871348号(P6871348)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6871348
(24)【登録日】2021年4月19日
(45)【発行日】2021年5月12日
(54)【発明の名称】グラインダ及びカバー
(51)【国際特許分類】
   B24B 23/02 20060101AFI20210426BHJP
   B24B 55/05 20060101ALI20210426BHJP
【FI】
   B24B23/02
   B24B55/05
【請求項の数】17
【全頁数】28
(21)【出願番号】特願2019-226441(P2019-226441)
(22)【出願日】2019年12月16日
(62)【分割の表示】特願2015-178870(P2015-178870)の分割
【原出願日】2015年9月10日
(65)【公開番号】特開2020-49652(P2020-49652A)
(43)【公開日】2020年4月2日
【審査請求日】2020年1月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000137292
【氏名又は名称】株式会社マキタ
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】岩上 潤一
(72)【発明者】
【氏名】武藤 英治
(72)【発明者】
【氏名】副田 直樹
(72)【発明者】
【氏名】大谷 亮介
【審査官】 小川 真
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−000559(JP,A)
【文献】 特開2015−037819(JP,A)
【文献】 実公昭46−028155(JP,Y1)
【文献】 特開2010−162680(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0318999(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 23/00
B24B 55/05
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータと、
前記モータを収容するハウジングと、
前記ハウジングから下方に突出し、前記モータにより駆動されて回転するスピンドルと、
前記スピンドルに装着される先端工具を少なくとも部分的に覆うカバーと、
を備え、
前記カバーは、
前記スピンドルの周方向に設けられ及び前記ハウジングに固定されて、前記先端工具の上方を少なくとも部分的に覆う第一のカバー部と、
前記スピンドルの軸方向に非平行な所定の軸周りに回動可能であるように、前記第一のカバー部に保持される第二のカバー部と、
を備え、前記第二のカバー部が前記第一のカバー部に対して前記所定の軸周りに回動することに応じて、前記カバーにより覆われる前記先端工具の領域が変化し
前記第二のカバー部は、前記所定の軸周りとして、前記スピンドルの軸方向に垂直な面に沿う所定の軸周りに回動可能であるように、前記第一のカバー部に保持され、
前記第二のカバー部は、前記回動によって前記第一のカバー部に対して異なる第一及び第二の位置に配置され、前記第一の位置では、前記第一のカバー部により覆われない前記先端工具の下方の領域を少なくとも部分的に覆い、前記第二の位置では、前記第一のカバー部により覆われない前記先端工具の上方の領域を少なくとも部分的に覆うグラインダ。
【請求項2】
前記第一のカバー部は、前記先端工具の上方を少なくとも部分的に覆う上部構成体を備え、
前記第二のカバー部は、前記第二の位置では、前記第一のカバー部の前記上部構成体に横方向において隣接するように配置されて、前記上部構成体との境界から広がる前記第一のカバー部により覆われない前記先端工具の上方の領域、を少なくとも部分的に覆う請求項1記載のグラインダ。
【請求項3】
前記第一のカバー部は、前記先端工具の上方を少なくとも部分的に覆う上部構成体と、前記上部構成体の下に配置され、前記先端工具の下方を少なくとも部分的に覆う下部構成体と、を備え、
前記第二のカバー部は、前記第一の位置では、前記第一のカバー部の前記下部構成体に横方向において隣接するように配置されて、前記下部構成体との境界から広がる前記第一のカバー部により覆われない前記先端工具の下方の領域を、少なくとも部分的に覆う請求項1記載のグラインダ。
【請求項4】
前記第二のカバー部は、前記第二の位置では、前記第一のカバー部の前記上部構成体に横方向において隣接するように配置されて、前記上部構成体との境界から広がる前記第一のカバー部により覆われない前記先端工具の上方の領域を、少なくとも部分的に覆う請求項3記載のグラインダ。
【請求項5】
前記上部構成体は、上下方向において、前記下部構成体と重なる第一部分と、前記下部構成体と重ならない第二部分とを備え、
前記第二のカバー部は、前記第一の位置では、前記下部構成体との境界から広がる前記第一のカバー部により覆われない前記先端工具の下方の領域であって、前記上部構成体の第二部分の下に位置する領域を、少なくとも部分的に覆う請求項3又は請求項4記載のグラインダ。
【請求項6】
前記第二のカバー部は、少なくとも部分的に透明材料又はメッシュ材料によって構成される請求項1〜請求項のいずれか一項記載のグラインダ。
【請求項7】
前記第一のカバー部は、前記第二のカバー部の回転軸を規定する回動ピンを備え、
前記第二のカバー部は、アームを介して回動可能に前記回動ピンに係合され、前記第一の位置と前記第二の位置との間で前記回動ピンの周りを回転するように構成される
請求項1〜請求項のいずれか一項記載のグラインダ。
【請求項8】
前記第二のカバー部は、前記第一及び第二の位置において、前記第一のカバー部に螺子留め可能に構成される請求項1〜請求項のいずれか一項記載のグラインダ。
【請求項9】
グラインダが備えるハウジングから下方に突出するスピンドルに装着される先端工具を少なくとも部分的に覆うカバーであって、
前記スピンドルの周方向に設けられ及び前記ハウジングに固定されて、前記先端工具の上方を少なくとも部分的に覆う第一のカバー部と、
前記スピンドルの軸方向に非平行な所定の軸周りに回動可能であるように、前記第一のカバー部に保持される第二のカバー部と、
を備え、前記第二のカバー部が前記第一のカバー部に対して前記所定の軸周りに回動することに応じて、前記カバーにより覆われる前記先端工具の領域が変化し
前記第二のカバー部は、前記所定の軸周りとして、前記スピンドルの軸方向に垂直な面に沿う所定の軸周りに回動可能であるように、前記第一のカバー部に保持され、
前記第二のカバー部は、前記回動によって前記第一のカバー部に対して異なる第一及び第二の位置に配置され、前記第一の位置では、前記第一のカバー部により覆われない前記先端工具の下方の領域を少なくとも部分的に覆い、前記第二の位置では、前記第一のカバー部により覆われない前記先端工具の上方の領域を少なくとも部分的に覆うカバー。
【請求項10】
前記第一のカバー部は、前記先端工具の上方を少なくとも部分的に覆う上部構成体を備え、
前記第二のカバー部は、前記第二の位置では、前記第一のカバー部の前記上部構成体に横方向において隣接するように配置されて、前記上部構成体との境界から広がる前記第一のカバー部により覆われない前記先端工具の上方の領域、を少なくとも部分的に覆う請求項記載のカバー。
【請求項11】
前記第一のカバー部は、前記先端工具の上方を少なくとも部分的に覆う上部構成体と、前記上部構成体の下に配置され、前記先端工具の下方を少なくとも部分的に覆う下部構成体と、を備え、
前記第二のカバー部は、前記第一の位置では、前記第一のカバー部の前記下部構成体に横方向において隣接するように配置されて、前記下部構成体との境界から広がる前記第一のカバー部により覆われない前記先端工具の下方の領域を、少なくとも部分的に覆う請求項記載のカバー。
【請求項12】
前記第二のカバー部は、前記第二の位置では、前記第一のカバー部の前記上部構成体に横方向において隣接するように配置されて、前記上部構成体との境界から広がる前記第一のカバー部により覆われない前記先端工具の上方の領域を、少なくとも部分的に覆う請求項11記載のカバー。
【請求項13】
前記上部構成体は、上下方向において、前記下部構成体と重なる第一部分と、前記下部構成体と重ならない第二部分とを備え、
前記第二のカバー部は、前記第一の位置では、前記下部構成体との境界から広がる前記第一のカバー部により覆われない前記先端工具の下方の領域であって、前記上部構成体の前記第二部分の下に位置する領域を、少なくとも部分的に覆う請求項11又は請求項12記載のカバー。
【請求項14】
前記第二のカバー部は、少なくとも部分的に透明材料又はメッシュ材料によって構成される請求項〜請求項13のいずれか一項記載のカバー。
【請求項15】
前記第一のカバー部は、前記第二のカバー部の回転軸を規定する回動ピンを備え、
前記第二のカバー部は、アームを介して回動可能に前記回動ピンに係合され、前記第一の位置と前記第二の位置との間で前記回動ピンの周りを回転するように構成される
請求項〜請求項14のいずれか一項記載のカバー。
【請求項16】
前記第二のカバー部は、前記第一及び第二の位置において、前記第一のカバー部に螺子留め可能に構成される請求項〜請求項15のいずれか一項記載のカバー。
【請求項17】
グラインダが備えるハウジングから下方に突出するスピンドルの周囲において先端工具を少なくとも部分的に覆うために、請求項〜請求項16のいずれか一項記載のカバーを、前記ハウジングに取り付けることと、
前記先端工具として切断用の砥石を前記スピンドルに取り付ける場合には、前記カバーが備える前記第二のカバー部を操作して、前記第二のカバー部を、前記第一の位置に配置することと、
前記先端工具として研削用の砥石を前記スピンドルに取り付ける場合には、前記カバーが備える前記第二のカバー部を操作して、前記第二のカバー部を、前記第二の位置に配置することと
を含むグラインダの使用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グラインダに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、被加工材に対して研削、研磨、及び切断等の加工を行うことが可能なグラインダが知られている。グラインダは、駆動デバイスにより回転駆動されるスピンドルを備える。スピンドルには、種々の先端工具が着脱可能に装着される。グラインダには、先端工具の上方を覆う保護カバーが通常装着される(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013−78823号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、粉塵の飛散抑制のために、保護カバーにより先端工具を覆う面積を増やすと、保護カバーが被加工材に干渉して、作業性及びグラインダの加工能力が低下する。
そのため、従来では、先端工具の種類毎に、保護カバーが用意されていた。先端工具の種類毎に専用の保護カバーは、加工作業に適した形状によって、粉塵の飛散を抑制しながら、高い作業性及び加工能力を実現することができる。
【0005】
しかしながら、先端工具の取替と併せて、保護カバーを取り替えることは、作業者にとって非常に手間である。このため、従来では、保護カバーを取り替えずに、先端工具のみを取り替えて、作業する作業者も多かった。
【0006】
そこで、本発明の一側面では、粉塵の飛散を抑制する能力を有しながら、利便性の高いグラインダ及びカバーを提供できることが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一側面に係るグラインダは、モータと、ハウジングと、スピンドルと、カバーと、を備える。ハウジングは、モータを収容する。スピンドルは、ハウジングから下方に突出し、モータにより駆動されて回転する。カバーは、スピンドルに装着される先端工具を少なくとも部分的に覆う。
【0008】
本発明の一側面によれば、カバーは、第一のカバー部と、第二のカバー部とを備え、第二のカバー部は、第一のカバー部に対して可動的に保持される。第一のカバー部は、ハウジングに固定され得る。第一のカバー部は、スピンドルの周方向に設けられて、先端工具の上方を少なくとも部分的に覆うように構成され得る。
【0009】
本発明の一側面によれば、第二のカバー部は、第一のカバー部に対して相対移動可能であるように、第一のカバー部に保持され得る。カバーは、第二のカバー部が第一のカバー部に対して相対移動することに応じて、カバーにより覆われる先端工具の領域が変化するように構成され得る。カバーにより覆われる先端工具の領域は、先端工具の周囲のうち、カバーにより覆われる領域に対応する。
【0010】
このカバーを備えるグラインダによれば、カバーにより覆われる先端工具の領域を調整することが可能である。調整は、例えば、加工作業時の先端工具と被加工材との干渉を抑
えるために、又は、先端工具の取替時の先端工具とカバーとの干渉を抑えるために行うことが可能である。従って、本発明の一側面によれば、複数種類の先端工具が利用される場合にも、利便性の高いグラインダを提供することができる。
【0011】
本発明の一側面によれば、第二のカバー部は、スピンドルの周方向に沿って相対移動可能であるように、第一のカバー部に保持され得る。カバーは、第二のカバー部が第一のカバー部に対して周方向に沿って相対移動することに応じて、カバーにより覆われる先端工具の領域が変化するように構成され得る。
【0012】
本発明の一側面によれば、第一のカバー部は、周方向の特定の角度領域において、先端工具の下方を部分的に覆うように構成されてもよい。この角度領域は、周方向に沿う角度で範囲指定したときのカバー部の領域に対応する。この場合、第二のカバー部は、上記特定の角度領域から、第一のカバー部によって先端工具の下方が覆われていない別の角度領域に、第一のカバー部に対して周方向に沿って相対移動して、先端工具の下方における第一のカバー部により覆われない領域を少なくとも部分的に覆うように構成され得る。
【0013】
周知のように、加工作業時に被加工材と接近する先端工具の部位は、先端工具の種類及び加工方法によって異なる。ある作業では、先端工具の下面が利用され、別の作業では、先端工具の側縁が利用される。従って、カバーにより覆われる先端工具の下方の面積を調整可能なグラインダによれば、上述した複数の作業に対して高い作業性を示す。即ち、作業用途に応じて先端工具を変更しても、高い作業性を実現可能である。
【0014】
本発明の一側面によれば、カバーは、スピンドルの周方向に設けられ及びハウジングに固定されて、先端工具の上方を少なくとも部分的に覆う第一のカバー部と、スピンドルの軸方向に非平行な所定の軸周りに回動可能であるように、第一のカバー部に保持される第二のカバー部と、を備えた構成にしてもよい。カバーは、第二のカバー部が第一のカバー部に対して所定の軸周りに回動することに応じて、カバーにより覆われる先端工具の領域が変化するように構成され得る。
【0015】
本発明の一側面によれば、第二のカバー部は、スピンドルの軸方向に垂直な面に沿う所定の軸周りに回動可能であるように、第一のカバー部に保持されてもよい。第二のカバー部は、この回動によって第一のカバー部に対して異なる第一及び第二の位置に配置され、第一の位置では、第一のカバー部により覆われない先端工具の下方の領域を少なくとも部分的に覆い、第二の位置では、第一のカバー部により覆われない先端工具の上方の領域を少なくとも部分的に覆うように構成され得る。このようなカバーを備えるグラインダによっても、先端工具の種類及び加工方法の異なる複数の作業に対して、高い作業性を実現することができる。
【0016】
第二のカバー部は、少なくとも一部が作業者の視界を遮断しないように構成されてもよい。例えば、第二のカバー部は、少なくとも部分的に透明材料又はメッシュ材料によって構成されてもよい。
【0017】
カバーが第一のカバー部に加えて第二のカバー部を備えることは、粉塵の飛散抑制に貢献する。しかしながら、加工作業時には、場合によって、被加工材における加工対象部位と、作業者の目との間に、第二のカバー部が介在する可能性がある。第二のカバー部が少なくとも部分的に作業者の視界を遮断しないように構成されれば、第二のカバー部が作業性に好ましくない影響を与えるのを抑制することができる。
【0018】
本発明の一側面において、カバーは、スピンドルの周方向に設けられ及びハウジングに固定されて、先端工具の上方を少なくとも部分的に覆う第一のカバー部と、第一のカバー
部に対して、スピンドルの軸方向に沿って相対移動可能であるように、第一のカバー部に保持される第二のカバー部と、を備えた構成にしてもよい。カバーは、第二のカバー部の第一のカバー部に対する位置が上記軸方向に沿う相対移動によって変化することに応じて、カバーにより覆われる先端工具の領域が変化するように構成され得る。
【0019】
本発明の一側面によれば、第二のカバー部は、上記軸方向に沿う相対移動によって第一のカバー部に対して異なる第一及び第二の位置に配置され、第一の位置では、第一のカバー部の先端工具を向く内面との間に先端工具を収容する空間を形成して、先端工具の下方を少なくとも部分的に覆い、第二の位置では、第一のカバー部の内面に近接して、第一のカバー部と共に先端工具の上方を少なくとも部分的に覆うように構成され得る。
【0020】
本発明の一側面において、カバーは、スピンドルの周方向に設けられ及びハウジングに固定され、先端工具の上方を少なくとも部分的に覆う面を有する当該面に沿って広がる第一のカバー部と、第一のカバー部に対して、上記面に沿って相対移動可能であるように、第一のカバー部に保持される第二のカバー部と、を備えた構成にされてもよい。カバーは、第二のカバー部が第一のカバー部に対して上記面に沿って相対移動することに応じて、カバーにより覆われる先端工具の領域が変化するように構成され得る。
【0021】
このカバーにおいて、第二のカバー部は、先端工具の下方を少なくとも部分的に覆うように構成されてもよく、カバーは、第二のカバー部が第一のカバー部に対して上記面に沿って相対移動することに応じて、カバーにより覆われる先端工具の下方の領域が変化するように構成され得る。
【0022】
本発明の一側面において、カバーは、スピンドルの周方向に設けられ及びハウジングに固定されて、先端工具の上方を少なくとも部分的に覆う第一のカバー部と、第一のカバー部に保持される第二のカバー部であって、折り畳み可能な構造を有する第二のカバー部と、を備えた構成にされてもよい。カバーは、第二のカバー部が折り畳まれた状態であるか否かに応じて、カバーにより覆われる先端工具の領域が変化するように構成され得る。
【0023】
このカバーにおいて、第二のカバー部は、折り畳まれた状態で、第一のカバー部により覆われない先端工具の下方における第一の領域を覆い、折り畳まれていない状態で、第一の領域に加えて、第一のカバー部により覆われない先端工具の下方における第二の領域を覆うように構成され得る。
【0024】
この他、本発明の一側面によれば、グラインダに装着される上述のカバーが提供されてもよい。本発明の一側面によれば、グラインダが備えるハウジングから下方に突出するスピンドルに装着される先端工具を少なくとも部分的に覆うカバーであって、第一及び第二のカバー部を備え、第一及び第二のカバー部が上述した特徴の少なくとも一つを有するカバーが提供されてもよい。
【0025】
本発明の一側面によれば、グラインダの使用方法であって、グラインダが備えるハウジングから下方に突出するスピンドルの周囲において先端工具を少なくとも部分的に覆うためのカバーであって、可動部を備え、可動部の操作に応じて、カバーにより覆われる先端工具の領域が変化するように形状変化するカバーを、ハウジングに取り付けることと、先端工具として研削用の砥石をスピンドルに取り付ける場合には、可動部を操作してカバーを第一の形状に設定し、先端工具として切断用の砥石をスピンドルに取り付ける場合には、可動部を操作してカバーを第二の形状に設定することと、を含み、カバーは、第二の形状では第一の形状よりも先端工具の下方領域の広い範囲を覆うグラインダの使用方法が提供されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】グラインダの内部構成を表す断面図である。
図2】従来型の保護カバーが装着された状態でのスピンドル周囲の構成を表す断面図である。
図3】第一実施形態のグラインダの第一態様を表す斜視図である。
図4】第一実施形態の保護カバーの第一態様を表す斜視図である。
図5】第一実施形態の保護カバーの第一態様を表す下面図である。
図6】第一実施形態の保護カバーの断面図である。
図7】第一実施形態の保護カバーの第二態様を表す斜視図である。
図8】第一実施形態の保護カバーの第二態様を表す下方からの斜視図である。
図9】第一実施形態のグラインダの第二態様を表す斜視図である。
図10】第二実施形態のグラインダの第一態様を表す斜視図である。
図11】第二実施形態の保護カバーの第一態様を表す斜視図である。
図12】第二実施形態の保護カバーの第二態様を表す斜視図である。
図13】第二実施形態の保護カバーの第二態様を表す下面図である。
図14】第二実施形態のグラインダの第二態様を表す斜視図である。
図15】第三実施形態のグラインダの第一態様を表す斜視図である。
図16】第三実施形態の保護カバーの第一態様を表す下方からの斜視図である。
図17】第三実施形態の保護カバーの第二態様を表す下方からの斜視図である。
図18】第三実施形態のグラインダの第二態様を表す斜視図である。
図19】第四実施形態のグラインダの第一態様を表す斜視図である。
図20】第四実施形態の保護カバーの第一態様を表す斜視図である。
図21】第四実施形態の保護カバーの第一態様を表す下面図である。
図22】第四実施形態の保護カバーの第二態様を表す一部透過斜視図である。
図23】第四実施形態の保護カバーの第二態様を表す一部透過下面図である。
図24】第四実施形態のグラインダの第二態様を表す一部透過斜視図である。
図25】第四実施形態の保護カバーの第三態様を表す斜視図である。
図26】第四実施形態のグラインダの第三態様を表す斜視図である。
図27】第五実施形態のグラインダの第一態様を表す斜視図である。
図28】第五実施形態の保護カバーの第一態様を表す斜視図である。
図29】第五実施形態の保護カバーの第二態様を表す下面図である。
図30】第五実施形態のグラインダの第二態様を表す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下に本発明の例示的実施形態を図面と共に説明する。
[基本構成]
最初に、基本的なグラインダ1の内部構成を説明する。グラインダ1は、ディスク(円板)状の先端工具40が取り付けられる所謂ディスクグラインダである。このグラインダ1は、先端工具40の回転により被加工材を加工する。先端工具40には、切断砥石及び研削砥石等の各種砥石、更にはワイヤブラシが含まれる。グラインダ1は、先端工具40を取替可能に構成される。
【0028】
このグラインダ1に続いて説明される第一実施形態〜第五実施形態のグラインダ100,200,300,400,500は、図1に示すグラインダ1又は類似のグラインダに、各実施形態に特徴的な保護カバーが取り付けられた構成にされる。
【0029】
これら複数の実施形態では、長尺なグラインダ本体の軸線、又は、それに対応するモータ12の回転軸14に沿って前後方向を定義する。具体的には、グラインダ本体のスピンドル24が設けられている側を「前」、その反対側を「後」と定義する。
【0030】
また、スピンドル24の軸線を基準に上下方向を定義する。具体的には、スピンドル24の第一ギヤハウジング6及び第二ギヤハウジング30に収納される側を「上」、スピンドル24の先端工具40が取り付けられる側を「下」と定義する。また、上下方向に広がる面を「側面」と定義し、方向に関する用語を用いる。
【0031】
図1に示すグラインダ1は、モータハウジング4と、第一ギヤハウジング6と、リアカバー8とを備える。グラインダ1は、更に第二ギヤハウジング30を備える。グラインダ1が備える内部要素は、モータハウジング4、第一ギヤハウジング6、第二ギヤハウジング30、及び、リアカバー8によって主に形成されるグラインダ本体の内部空間に収容される。
【0032】
モータハウジング4は、略円筒形状のハウジングであり、モータ12を収容する。モータ12の回転軸14は、隣接する第一ギヤハウジング6に向かって突出するように配置されている。リアカバー8は、モータハウジング4の後方に設けられ、モータ12に駆動電流を入力しモータ12を駆動するための回路系を収容する。回路系には、図1では示されない電源コード18(図3等参照)を通じて外部から電力が供給される。グラインダ1の駆動は、外部に露出するように設けられる図1では示されないスイッチ操作部19に対する作業者の操作を通じて、オン/オフされる。
【0033】
第一ギヤハウジング6は、モータハウジング4の前方に設けられ、第一ベベルギヤ20、第二ベベルギヤ22、スピンドル24、及び、ベアリング26,28を収容する。
第一ベベルギヤ20は、第一ギヤハウジング6内でモータ12の回転軸に固定される。第二ベベルギヤ22及びスピンドル24は、ベアリング26を介して、第一ギヤハウジング6とは別体で構成された第二ギヤハウジング30に回転可能に設けられる。第二ベベルギヤ22及びスピンドル24の上部は、第二ギヤハウジング30が第一ギヤハウジング6に固定されることで、第一ギヤハウジング6内に収容される。
【0034】
第二ギヤハウジング30は、スピンドル24がモータ12の回転軸14と直交するように、第一ギヤハウジング6に固定される。第二ギヤハウジング30は、例えば第一ギヤハウジング6に螺子止めされる。
【0035】
第二ベベルギヤ22は、スピンドル24に固定されている。第二ベベルギヤ22は、第一ギヤハウジング6内で第一ベベルギヤ20と噛合い、モータ12の回転出力をスピンドル24の軸周りの回転力に変換する。
【0036】
スピンドル24の一端は、ベアリング28を介して、第一ギヤハウジング6に回転自在に支持されており、スピンドル24の他端は、第二ギヤハウジング30から下方に突出している。
【0037】
スピンドル24の第二ギヤハウジング30からの突出部分には、ディスク状の先端工具40を位置決め固定するためのインナーフランジ32が設けられる。スピンドル24のインナーフランジ32よりも更に先端の外周部分には、ロックナット34を螺合するための螺子部25が形成されている。ロックナット34は、スピンドル24の下端に螺子留めにより固定されて、インナーフランジ32との間で先端工具40を挟持及び固定する。
【0038】
このように構成されたグラインダ1では、作業者がスイッチ操作部19を用いてオン操作すると、モータ12が回転し、その回転出力が、第一ギヤハウジング6内のギヤ機構(ベベルギヤ20,22)を介してスピンドル24に伝達される。即ち、スピンドル24は、ハウジング4,6,30に収容されるモータ12及びギヤ機構を含む駆動デバイスによって回転駆動される。
【0039】
このため、ロックナット34を介して、先端工具40がスピンドル24に固定された状態では、スピンドル24の回転に合わせて、先端工具40が回転する。先端工具40の回転により、グラインダ1は、被加工材に対する研削、研磨、及び切断等の加工を行う。但し、実現可能な加工は、スピンドル24に取り付けられる先端工具40の種類による。
【0040】
モータ12の回転軸14には、リアカバー8の吸入孔から外気を導入して、第一ギヤハウジング6に設けられた排出孔7から空気を排出させるファン15が設けられている。
グラインダ1には更に、ディスク状の先端工具40を覆う保護カバー60が設けられる(図2参照)。この保護カバー60は、当技術分野においてホイールカバー又はディスクカバーとも呼ばれる。本明細書における「覆う」との記載は、対象を少なくとも部分的に覆うことを意味し、特段の言及がない限りにおいて、対象全体を覆うことに限定されない。
【0041】
図2には、図1に示すグラインダ1に従来型の保護カバー60が装着された状態でのスピンドル24及び先端工具40周辺の断面構成を示す。
図2に示される保護カバー60は、ディスク状の先端工具40における上部後方の半円部分を覆うための半円状の上部構成体61と、上部構成体61の外周端縁から下方に延びる側部構成体63とを備える。この保護カバー60は、上部構成体61及び側部構成体63が一体に形成された構成にされる。例えば、上部構成体61及び側部構成体63は、金属材料により一体に形成される。側部構成体63は、下端に湾曲部64を備え、下端で僅かに径方向内側に湾曲した構成にされる。
【0042】
保護カバー60は、第二ギヤハウジング30に保護カバー60を固定するための円筒部67を更に有する。円筒部67は、上部構成体61の外周円弧と同心の円筒部として上部構成体61に設けられる。この円筒部67は、内径が第二ギヤハウジング30に設けられた円状の側面を有するカバー接続部31の外径よりも僅かに大きいサイズに設計される。
【0043】
図2には示されないが、円筒部67は、上下方向に垂直な面に沿う断面が開環形状を示すように構成され、周方向において開いた部分に、第二ギヤハウジング30のカバー接続部31に対して円筒部67を径方向内側に締め付けるための締付部を備える。図4には同等の構成を有する円筒部170及び締付部175が示される。
【0044】
この締付部は、この締付部を両側から挟む螺子とナットとの位置関係が変化することにより、円筒部67の内側を、第二ギヤハウジング30のカバー接続部31に締め付けて、保護カバー60を第二ギヤハウジング30に固定するように機能する。図2に示される保護カバー60は、例えば、研削砥石により被加工材を加工するときに用いられる。
【0045】
付言すると、保護カバー60は、カバー接続部31に対して周方向に任意の角度(向き)で取り付け可能である。図2に示される配置は、研削加工において一般的な配置である。以下の各実施形態で説明する保護カバーも、グラインダに対して任意の角度で取り付け可能である。従って、保護カバーの構成要素に関し前後左右を説明するときには、この研削加工時の一般的な配置に基づいて方向を説明しているだけであり、グラインダに対する保護カバーの周方向の向きが特定方向に限定されるわけではないことを理解されたい。
【0046】
[第一実施形態]
第一実施形態のグラインダ100は、図1に示すグラインダ1又は類似のグラインダに、図3図9に示す保護カバー110が装着された構成にされる。
【0047】
保護カバー110は、主カバー部130と、外側カバー部140と、内側カバー部15
0と、主カバー部130を第二ギヤハウジング30に固定するための円筒部170と、を備える。保護カバー110は、主カバー部130に対する外側カバー部140及び内側カバー部150の相対移動によって、先端工具40の下方を覆う領域が変化するように構成される。
【0048】
外側カバー部140は、主カバー部130の外面に沿って、周方向(スピンドル24の回転方向又は外周方向)に移動可能であるように、主カバー部130に保持される。図6図8及び図9に示される内側カバー部150は、主カバー部130の内面に沿って、周方向に移動可能であるように主カバー部130に保持される。
【0049】
主カバー部130は、上述の保護カバー60と同様、先端工具40の上部後方の半円部分を覆うための半円状の上部構成体131と、上部構成体131の外周端縁から下方に延びる側部構成体133と、を備え、スピンドル24の周方向に広がって先端工具40の上方及び側方を覆うように構成される。側部構成体133は、図5に示すように、径方向内側に湾曲した湾曲部134を下端に備える。
【0050】
主カバー部130は更に、先端工具40の下方を覆う下部構成体135を、図6図8及び図9に示すように、上部構成体131に対応する0度から180度までの半円状の角度領域の内、およそ40度から140度までの角度領域に有する。ここでいう角度は、スピンドル24の軸線を中心とした周方向の角度を示し、角度領域は、この角度で範囲指定される周方向の領域に対応する。
【0051】
下部構成体135は、側部構成体133の下端から上下方向に垂直な面に沿って径方向内側に延びて、先端工具40の下方を覆う。下部構成体135は、上部構成体131及び側部構成体133と一体に形成される。
【0052】
図5において、下部構成体135は、外側カバー部140の下部構成体145と重なって、下部構成体145に隠れるように位置する。同様に、図4において、下部構成体135は、図示されないが、外側カバー部140の上部構成体141に対応する角度領域で、側部構成体133の下端から径方向内側に延びて、先端工具40の下方を覆う。
【0053】
この主カバー部130は、外側カバー部140及び内側カバー部150の移動を、周方向に規制するためのガイド突起132を、図6に示すように、上部構成体131の外面及び内面に備える。
【0054】
主カバー部130の上部構成体131には、上部構成体131の円弧と同心の円筒部170が設けられる。上部構成体131は、円筒部170に対応する位置で上方に延びる延設部位131Aを有し、延設部位131Aで円筒部170に接続される。円筒部170は、この延設部位と一体に構成される、又は、延設部位とは別体で構成される。
【0055】
円筒部170は、円筒部67と同様に開環形状にされ、図4等に示されるように、周方向において開いた部分に、第二ギヤハウジング30のカバー接続部31に対して円筒部170を締め付けるための締付部175を備える。
【0056】
締付部175は、この締付部175を両側から挟む螺子とナットとの位置関係が変化することにより、円筒部170の内側を、第二ギヤハウジング30のカバー接続部31に締め付けるように機能する。この円筒部170の機能により、保護カバー110の主カバー部130は、第二ギヤハウジング30に固定される。保護カバー110は、第二ギヤハウジング30のカバー接続部31に嵌め込まれた後、締め付けられることにより、カバー接続部31に固定される。
【0057】
外側カバー部140は、主カバー部130の外面に沿う内面を有し、主カバー部130の外面に沿って、周方向に相対移動可能に設けられる。具体的に、外側カバー部140は、扇状の上部構成体141と、上部構成体141の外周端縁から下方に延びる側部構成体143と、を備え、主カバー部130を介して先端工具40の上方及び側方を覆うように構成される。
【0058】
更に、外側カバー部140は、図5及び図6等に示されるように、側部構成体143の下端から、上下方向に垂直な面及び下部構成体135の下面に沿って径方向内側に延びる下部構成体145を備え、下部構成体145により先端工具40の下方を覆うように構成される。これら上部構成体141、側部構成体143及び下部構成体145は、例えば金属材料により一体に形成される。上部構成体141及び下部構成体145は、主カバー部130の下部構成体135と同じ角度範囲又は少し大きい角度範囲で周方向に広がる。
【0059】
外側カバー部140は、主カバー部130に対して周方向に相対移動可能に設けられることにより、図4及び図5に示すように、主カバー部130に対する第一の位置に配置された状態では、下部構成体145により、先端工具40の下方領域の内、主カバー部130の下部構成体135と略同じ領域を覆う。
【0060】
一方、外側カバー部140は、図7図8及び図9に示すように、主カバー部130に対する第二の位置に配置された状態では、主カバー部130では覆われない先端工具40の下方の領域R11,R12の内、一方の領域R11を覆う。
【0061】
付言すると、外側カバー部140の上部構成体141は、その内面に、主カバー部130の外面に設けられたガイド突起132に係合する周方向に延びる凹条142(図6参照)を有する。凹条142は、上部構成体141に設けられたスリットに、これを覆うカバーが設けられた構成であると理解されてもよい。スリットを覆うカバーは、粉塵対策のために設けることができる。この凹条142とガイド突起132との係合により、外側カバー部140は、主カバー部130に対する移動(摺動)を周方向に規制される。
【0062】
内側カバー部150は、主カバー部130の内面に沿う外面を有し、主カバー部130の内面に対して、周方向に相対移動可能に設けられる。具体的に、内側カバー部150は、図6及び図8に示すように、扇状の上部構成体151と、上部構成体151の外周端縁から下方に延びる側部構成体153と、を備え、先端工具40の上方及び側方を覆うように構成される。更に、内側カバー部150は、側部構成体153の下端から、上下方向に垂直な面及び下部構成体135の上面に沿って径方向内側に延びる下部構成体155を備え、下部構成体155により先端工具40の下方を覆うように構成される。
【0063】
これら上部構成体151、側部構成体153及び下部構成体155は、例えば金属材料により一体に形成される。上部構成体151及び下部構成体155は、外側カバー部140と同様に、主カバー部130の下部構成体135と同じ角度範囲又は少し大きい角度範囲で周方向に広がる。
【0064】
内側カバー部150は、主カバー部130に対して周方向に相対移動可能に設けられることにより、図4図5及び図6に示すように、主カバー部130に対する第一の位置に配置された状態では、下部構成体155により、先端工具40の下方領域の内、主カバー部130の下部構成体135と略同じ領域を覆う。
【0065】
一方、内側カバー部150は、図7図8及び図9に示すように、主カバー部130に対する第三の位置に配置された状態では、主カバー部130では覆われない先端工具40
の下方の領域R11,R12の内、一方の領域R12を覆う。
【0066】
内側カバー部150の上部構成体151は、その外面に、主カバー部130の内面に設けられたガイド突起132に係合する、周方向に延びる凹条152(図6参照)を有する。凹条152は、凹条142と同様、上部構成体151に設けられたスリットに、これを覆うカバーが設けられた構成であると理解されてもよい。この凹条152と、ガイド突起132との係合により、内側カバー部150は、主カバー部130に対する移動を周方向に規制される。
【0067】
以上に説明したように、本実施形態のグラインダ100では、保護カバー110が、複数のカバー部130,140,150を備える。そして、第一のカバー部である主カバー部130に対して、第二及び第三のカバー部である外側カバー部140及び内側カバー部150が周方向に相対移動可能に設けられる。保護カバー110では、外側カバー部140及び内側カバー部150の移動により、主カバー部130により覆われない領域R11,R12が開閉され、保護カバー110により覆われる先端工具40の領域が変化する。
【0068】
この保護カバー110によれば、作業者は、保護カバー110により覆われる先端工具40の領域を調整することが可能である。例えば、作業者は、粉塵の飛散抑制を考慮しながら、作業性が低下しないように保護カバー110により覆われる先端工具40の下方領域を調整することが可能である。
【0069】
調整は、例えば、加工作業時の先端工具40と被加工材との干渉を抑えるために、又は、先端工具40の取替時の先端工具40と保護カバー110との干渉を抑えるために行うことが可能である。
【0070】
周知のように、加工作業時に被加工材と接近する先端工具40の部位は、先端工具40の種類及び加工方法によって異なる。ある作業では、先端工具40の下面が加工に利用され、別の作業では、先端工具40の側縁が加工に利用される。従って、保護カバー110により覆われる先端工具40の下方領域を調整可能なグラインダ100によれば、上述した複数の作業に対して高い作業性を示す。図9に示されるグラインダ100では、更に、保護カバー110の周方向の向きが、切断加工作業に適した向きに調整されている。
【0071】
[第二実施形態]
第二実施形態のグラインダ200は、図1に示すグラインダ1又は類似のグラインダに、図10図14に示す保護カバー210が装着された構成にされる。
【0072】
保護カバー210は、主カバー部230と、補助カバー部250と、主カバー部230を第二ギヤハウジング30に固定するための円筒部270と、を備える。保護カバー210は、主カバー部230に対する補助カバー部250の回動によって、先端工具40を覆う領域が変化するように構成される。
【0073】
主カバー部230は、保護カバー60と同様に、先端工具40の上部後方の半円部分を覆うための半円状の上部構成体231と、上部構成体231の外周端縁から下方に延びる側部構成体233と、を備え、スピンドル24の周方向に広がって先端工具40の上方及び側方を覆うように構成される。上部構成体231及び側部構成体233は、例えば金属材料により一体に形成される。側部構成体233は、図11及び図12に示すように、径方向内側に湾曲した湾曲部234を下端に備える。
【0074】
主カバー部230は、図13に示すように、先端工具40の下方を覆う下部構成体235を更に有する。下部構成体235は、上部構成体231及び側部構成体233と一体に
形成される。この下部構成体235は、側部構成体233の下端(湾曲部234)から径方向内側に、上下方向に垂直な面に沿って少しだけ延設され、これにより上部構成体231の下方領域の内、後方半分の領域を覆う。
【0075】
下部構成体235の端縁235Aは、上下方向に垂直な左右方向に直線状に延びている。下部構成体235に覆われない主カバー部230の下方領域R20は、補助カバー部250が下方に配置されるときに、補助カバー部250によって覆われる。
【0076】
主カバー部230の上部構成体231には、第一実施形態の円筒部170と同様に構成された円筒部270が設けられる。主カバー部230は、円筒部270を介して第二ギヤハウジング30のカバー接続部31に固定される。
【0077】
補助カバー部250は、主カバー部230に回動ピン260を介して回動可能に接続される。回動ピン260は、補助カバー部250のアーム253に設けられた貫通孔254と、主カバー部230の側部構成体233の前方左右端部に設けられた図示しない貫通孔とに貫挿され、加締められて、補助カバー部250を、主カバー部230に対して左右方向の軸周りに回動可能に保持する。
【0078】
補助カバー部250は、カバー本体251と、二つのアーム253と、を備える。アーム253は、カバー本体251の左右端部に、カバー本体251の表面に対して垂直に立設される。カバー本体251及びアーム253は、透明な樹脂材料で一体に形成される。このため、図10図14では、補助カバー部250に覆われる領域が透過して現れている。
【0079】
回動ピン260の機能による、左右方向に沿う軸周りのアーム253の回動により、カバー本体251は、図10及び図11に示すように、主カバー部230に対する第一の位置に配置された状態では、主カバー部230に覆われていない先端工具40の上方領域を覆う。
【0080】
カバー本体251は、図12図13及び図14に示すように、主カバー部230に対する第二の位置に配置された状態では、主カバー部230に覆われていない先端工具40の下方領域R20を覆う。作業者は、スピンドル24から先端工具40を外した後、補助カバー部250を操作して、補助カバー部250を第一の位置又は第二の位置に配置することにより、保護カバー210により覆われる先端工具40の領域を調整することができる。
【0081】
補助カバー部250の第一又は第二の位置での保持は、螺子265を用いて実現される。補助カバー部250のアーム253には、貫通孔256,257が設けられている。主カバー部230の側部構成体233には、補助カバー部250が第一の位置(図11参照)に配置された状態で、貫通孔257と連通する螺子孔(図示せず)が設けられている。貫通孔256は、補助カバー部250が第二の位置(図12参照)に配置された状態で、上記螺子孔と連通するように設けられている。
【0082】
このため、作業者は、補助カバー部250を第一の位置に配置した状態で、螺子265を、貫通孔257に差し込み、主カバー部230の螺子孔と螺合させることで、螺子265に、補助カバー部250を第一の位置に保持させることができる。同様に、作業者は、補助カバー部250を、第二の位置に配置した状態で、螺子265を、貫通孔256に差し込み、主カバー部230の螺子孔と螺合させることで、螺子265に、補助カバー部250を第二の位置に保持させることができる。
【0083】
上述したように、保護カバー210は、複数のカバー部230,250を備える。先端工具40の上方を覆う第一のカバー部である主カバー部230に対し、第二のカバー部である補助カバー部250は、スピンドル24の軸方向に非平行で垂直な左右方向の軸周りに回動可能に設けられる。この回動によって、保護カバー210は、主カバー部230では覆われない先端工具40の上方の領域及び下方の領域R20を補助カバー部250で切り替えて覆うように構成される。
【0084】
本実施形態では、このように補助カバー部250の操作により、保護カバー210により覆われる先端工具40の領域を調整可能である。従って、作業者は、先端工具40の種類及び加工方法に合わせて、補助カバー部250の位置を容易に調整することができ、作業性よく被加工材を加工することができる。
【0085】
特に、本実施形態によれば、第一及び第二の位置における補助カバー部250の保持に、共通する螺子265が使用される。従って、作業者が螺子265を紛失する可能性を抑えることができる。
【0086】
補助カバー部250は更に、作業者と被加工材の加工対象部位との間に介在したときに、作業者の視界を遮らないように構成される。従って、視界の遮断により作業性が低下するのを抑制することができる。
【0087】
以上では、補助カバー部250が透明な樹脂材料で構成されていることを説明した。しかしながら、図10図14に示されるカバー本体251は、金網等のメッシュ材料で構成されていると理解されてもよい。メッシュの大きさは、加工作業時に、大きな破片がカバー本体251を通って飛散しないように設定することができる。カバー本体251には、不透明材料に細かな貫通孔が分散配置された構成が採用されてもよい。この構成によっても、作業者の視界を遮断しないようにカバー本体251を構成することができる。
【0088】
[第三実施形態]
第三実施形態のグラインダ300は、図1に示すグラインダ1又は類似のグラインダに、図15図18に示す保護カバー310が装着された構成にされる。
【0089】
保護カバー310は、主カバー部330と、補助カバー部350と、主カバー部330を第二ギヤハウジング30に固定するための円筒部370と、を備える。保護カバー310は、主カバー部330に対する補助カバー部350の、スピンドル24の軸方向である上下方向への相対移動によって、先端工具40を覆う領域が変化するように構成される。
【0090】
主カバー部330は、保護カバー60と同様に、先端工具40の上部後方の半円部分を覆うための半円状の上部構成体331と、上部構成体331の外周端縁から下方に延びる側部構成体333と、を備え、スピンドル24の周方向に広がって先端工具40の上方及び側方を覆うように構成される。上部構成体331及び側部構成体333は、例えば金属材料により一体に形成される。側部構成体333は、図16に示すように、径方向内側に湾曲した湾曲部334を下端に備える。
【0091】
主カバー部330は更に、上部構成体331の上面から下方に貫挿される螺子337を収容する複数の螺子収容部335を、側部構成体333の一部領域に有する。螺子337は、螺子収容部335において例えばサークリップ336の作用により上下方向には移動しないように収容される。螺子337は、補助カバー部350が備えるカバー本体351に固定されるナット353と螺合する。
【0092】
主カバー部330の上部構成体331には、第一実施形態の円筒部170と同様に構成
された円筒部370が設けられる。主カバー部330は、円筒部370を介して第二ギヤハウジング30のカバー接続部31に固定される。
【0093】
補助カバー部350は、主カバー部330の上部構成体331の内面(下面)と対向するカバー本体351と、カバー本体351に固定配置された複数のナット353と、を備える。
【0094】
カバー本体351は、主カバー部330の側部構成体333及び螺子収容部335の内面に沿う輪郭を有する半円状の金属板又は樹脂板で構成される。カバー本体351は、不透明、透明、又は、メッシュ状に構成される。
【0095】
ナット353は、主カバー部330において螺子337が配置される位置に対応するカバー本体351の領域において、螺子337と螺合するように設けられる。ナット353は、螺子337が回転しても、それにつられて回転しないように、カバー本体351に固定される。
【0096】
このように構成される保護カバー310では、ナット353がカバー本体351に固定されている結果、ナット353に螺合する螺子337が作業者の操作によって回転すると、その回転方向に応じて、カバー本体351が上下に移動する。この原理に従って、補助カバー部350は、主カバー部330に対して上下方向に相対移動可能に設けられる。
【0097】
補助カバー部350の上下移動により、カバー本体351は、図15及び図16に示すように主カバー部330に対する第一の位置に配置された状態で、主カバー部330の上部構成体331の内面に近接して、上部構成体331と共に、先端工具40の上方を覆う。
【0098】
カバー本体351は、図17及び図18に示すように、主カバー部330に対する第二の位置に配置された状態で、主カバー部330の先端工具40を向く内面との間に先端工具40を収容する空間を形成し、先端工具40の下方を覆うように機能する。作業者は、スピンドル24から先端工具40を外した後、螺子337を回して、補助カバー部350を上下移動させることにより、補助カバー部350の位置を切り替えて、先端工具40の下方の被覆の有無を切り替えることができる。
【0099】
先端工具40として切断砥石を用いる場合には、先端工具40を被加工材に対し垂直に配置し、先端工具40の側縁で被加工材を加工する状況が発生する。この状況では、先端工具40の下方が作業者側を向く可能性がある。従って、作業者は、補助カバー部350により先端工具40の下方領域が覆われるように、保護カバー310の状態を切り替えることで、下方からの粉塵等の飛散を抑えて切断作業を行うことができる。
【0100】
一方、研削砥石を用いて被加工材に対する加工作業を行う場合には、先端工具40の下方を覆う補助カバー部350が、被加工材と干渉して作業性が低下する可能性がある。この場合、作業者は、補助カバー部350を上方に配置して、先端工具40の下方領域が覆われないようにすることで、作業性よく被加工材を加工することができる。
【0101】
補助カバー部350が透明に構成されている場合には、補助カバー部350が、作業者から被加工材の加工対象部位への視界を遮断する可能性を抑えることができるために、作業者は、効率よく精密な加工作業を行うことができる。
【0102】
[第四実施形態]
第四実施形態のグラインダ400は、図1に示すグラインダ1又は類似のグラインダに
図19図26に示す保護カバー410が装着された構成にされる。
【0103】
保護カバー410は、主カバー部430と、外側カバー部450と、主カバー部430を第二ギヤハウジング30に固定するための円筒部470と、を備える。保護カバー410は、主カバー部430に対する外側カバー部450の、主カバー部430の上面に沿う横方向の移動によって、先端工具40の下方を覆う領域が変化するように構成される(例えば図24及び図26参照)。横方向は、上下方向に垂直な面に沿う方向を意味する。外側カバー部450は、主カバー部430を内側に収容した状態で、上下方向に延びる回動ピン440を軸に横方向に回動するように配置される。
【0104】
主カバー部430は、保護カバー60と同様に、先端工具40の上部後方の半円部分を覆うための半円状の上部構成体431と、上部構成体431の外周端縁から下方に延びる側部構成体433と、を備える(図22参照)。上部構成体431及び側部構成体433は、例えば金属材料により一体に形成される。側部構成体433は、図23及び図24に示すように、径方向内側に湾曲した湾曲部434を下端に備える。
【0105】
この主カバー部430は、先端工具40の後部の上方及び側方を覆うが、先端工具40の下方領域を実質的に覆わないように構成される。図22図23及び図24では、主カバー部430及び外側カバー部450の配置を容易に理解できるように、外側カバー部450を透過して表し、これにより、外側カバー部450の内側に位置する主カバー部430の部位を表す。
【0106】
主カバー部430の上部構成体431には、第一実施形態の円筒部170と同様に構成された円筒部470が設けられる。主カバー部430は、円筒部470を介して第二ギヤハウジング30のカバー接続部31に固定される。
【0107】
主カバー部430は更に、側部構成体433の前方右端部に、回動ピン440を収容するピン収容部436を有する。回動ピン440は、連通する外側カバー部450の上部貫通孔451A、主カバー部430のピン収容部436、及び外側カバー部450の下部貫通孔455Aに貫挿されて、加締められて、外側カバー部450を、主カバー部430に対して、主カバー部430の上面に沿う横方向に回動可能に結合する。
【0108】
主カバー部430は更に、上部構成体431の前方左端部の近くに、螺子445が貫挿される挿入孔432を有した構成にされる。図19図23及び図25に示される螺子445は、この挿入孔432に挿入され、挿入孔432の下端に位置するナット446と螺合する。螺子445は、外側カバー部450のスリット451C及び主カバー部230の挿入孔432を介したナット446との螺合によって、外側カバー部450及び主カバー部430に強く締め付けられる場合には、外側カバー部450を横方向に移動しないように主カバー部430に固定する。外側カバー部450の移動が必要な場合には、作業者により螺子445が緩められる。
【0109】
外側カバー部450は、主カバー部430の上方に位置し、主カバー部430の上部構成体431よりも広い面積を有する上部構成体451と、上部構成体451の外周から下方に延びる側部構成体453と、側部構成体453の下端から径方向内側に延びる下部構成体455と、を備えた構成にされる。
【0110】
上部構成体451は、上部貫通孔451A、開口部451B、及び、スリット451Cを備える。上部貫通孔451Aには、回動ピン440が貫挿される。開口部451Bは、円筒部470と上部構成体431との連結部分で、外側カバー部450の移動が阻害されるのを回避するために、外側カバー部450が回動ピン440を軸に回動するときに、円
筒部470の通り道となる上部構成体451の領域に設けられる。スリット451Cは、外側カバー部450が回動ピン440を軸に回動するときに、主カバー部430に取り付けられた螺子445の通り道となる上部構成体451の領域に設けられる。
【0111】
下部構成体455は、上部構成体451の下方に位置し、主カバー部430が覆わない先端工具40の下方領域を覆うことが可能な構成にされる。下部構成体455は、開口部455Bを有し、螺子445がナット446に緩く螺合されている状態で、外側カバー部450が最大限後方に回動されて、図19図20及び図21に示すように、第一の位置に配置された状態では、主カバー部430が覆わない先端工具40の下方領域をほとんど覆わないように構成される。
【0112】
外側カバー部450は、主カバー部430に対して前方に最大限回動する過程では、図22図23、及び図24に示すように、主カバー部430が覆わない先端工具40の下方領域を、下部構成体455で徐々に覆うように、主カバー部430に対して相対移動する。
【0113】
外側カバー部450は、主カバー部430に対して前方に最大限回動して第二の位置に配置された状態において、図25及び図26に示すように、主カバー部430が覆わない先端工具40の下方領域の内、上部構成体431の下方領域を、略完全に覆うように配置される。
【0114】
本実施形態によれば、このように先端工具40を覆う複数のカバー部430,450が一方のカバー部の面に沿って相対移動可能に設けられる。具体的には、第一のカバー部である主カバー部430に対して、第二のカバー部である外側カバー部450が、回動ピン440を軸に、横方向に回動可能に設けられる。保護カバー410は、外側カバー部450の主カバー部430に対する横方向への移動に応じて、先端工具40を覆う下方領域が変化するように構成される。
【0115】
第三実施形態においてカバー本体351が第一の位置に配置された状態(図15及び図16参照)と同様、図19図20及び図21に示すように、外側カバー部450が主カバー部430に対して第一の位置に配置された状態では先端工具40の下方領域がほとんど覆われない。従って、保護カバー410は、研削砥石を用いた研削作業に適した形態をとることができる。
【0116】
一方、図25及び図26に示すように、外側カバー部450が主カバー部430に対して第二の位置に配置された状態では、先端工具40の半円状の領域がほとんど覆われる。従って、保護カバー410は、切断砥石を用いた切断作業に適した形態をとることができる。図26に示されるグラインダ400では、保護カバー410の周方向の向きが、切断加工作業に適した向きに調整されている。
【0117】
従って、本実施形態によれば、作業者は、先端工具40の種類及び加工作業に合わせて先端工具40の下方を覆う領域を調整することができる。即ち、本実施形態によれば、利便性の高いグラインダを提供することができる。
【0118】
[第五実施形態]
第五実施形態のグラインダ500は、図1に示すグラインダ1又は類似のグラインダに、図27図30に示す保護カバー510が装着された構成にされる。
【0119】
保護カバー510は、主カバー部530と、補助カバー部550と、主カバー部530を第二ギヤハウジング30に固定するための円筒部570と、を備える。補助カバー部5
50は、主カバー部530の下方に配置され、折り畳み可能な構造を有する。保護カバー510は、補助カバー部550が折り畳まれた状態であるか否かに応じて、先端工具40を覆う下方領域が変化するように構成される。
【0120】
主カバー部530は、保護カバー60と同様に、先端工具40の上部後方の半円部分を覆うための半円状の上部構成体531と、上部構成体531の外周端縁から下方に延びる側部構成体533と、を備え、先端工具40の上方及び側方を覆うように構成される。上部構成体531及び側部構成体533は、例えば金属材料により一体に形成される。側部構成体533は、図29に示すように、径方向内側に湾曲した湾曲部534を下端に備える。
【0121】
補助カバー部550は、主カバー部530の側部構成体533の外周面に沿う側部構成体551と、側部構成体551に囲まれる先端工具40の下方の半円状の領域、換言すれば、上部構成体531の下方領域を覆う第一下部構成体554及び第二下部構成体556と、を備える。側部構成体551、第一下部構成体554、及び第二下部構成体556は、例えば金属材料により構成される。
【0122】
側部構成体551は、主カバー部530の側部構成体533に対して嵌め込まれることで、主カバー部530に圧接し、補助カバー部550を、主カバー部530に着脱可能に固定する。あるいは、補助カバー部550は、主カバー部530に対して溶接により着脱不可能に固定される。
【0123】
第一下部構成体554は、第二下部構成体556よりも、側部構成体551の外周に沿う円弧の中心より遠い位置で、側部構成体551の下端に結合される。第二下部構成体556は、第一下部構成体554にヒンジ559を介して回動可能に接続される。ヒンジ559は、上下方向に垂直な面に沿う軸周りに第二下部構成体556を回動可能に、第二下部構成体556を第一下部構成体554に接続する。
【0124】
この接続により、第二下部構成体556は、図27及び図28に示すように、第二下部構成体556が第一下部構成体554に対して折り曲げられていない状態では、上部構成体531の下方領域の内、第一下部構成体554によって覆われない領域を覆う。
【0125】
この第二下部構成体556により覆われる先端工具40の下方領域は、図29及び図30に示すように、第二下部構成体556が第一下部構成体554に対して折り曲げられた状態では、覆われず、外部に露出される。
【0126】
補助カバー部550は、回動する第二下部構成体556を固定するための構成を更に備える。補助カバー部550の側部構成体551は、第二下部構成体556が第一下部構成体554側に折り曲げられた際に、第二下部構成体556の二か所に設けられた貫通孔556Aと連通する螺子孔552Aを有する二つの固定部552を備える。図29に示すように、第二下部構成体556は、第一下部構成体554側に折り曲げられた際に、貫通孔556Aを通じて螺子孔552Aと螺合する螺子560により、固定部552に固定されて、折り曲げられた状態を保持する。
【0127】
この他、補助カバー部550は、第二下部構成体556の左右端部に立設された、貫通孔557Aを有する固定部557を備える。補助カバー部550は、第二下部構成体556が第一下部構成体554に対して折り曲げられていない状態で、固定部557が備える貫通孔557Aに連通する螺子孔551Aを、図30に示すように側部構成体551の前方左右端部に有する。
【0128】
第二下部構成体556を折り曲げた状態に保持するために用いられる上述の螺子560(図29参照)は、第二下部構成体556が第一下部構成体554に対して折り曲げられていない状態で、貫通孔557Aを介して側部構成体551の左右端部に設けられた螺子孔551Aと螺合される。これにより、第二下部構成体556は、第一下部構成体554に対して折り曲げられていない状態で、図27及び図28に示すように側部構成体551に螺子留めされて、その状態を保持する。
【0129】
本実施形態によれば、先端工具40の下方を覆う補助カバー部550が、第一下部構成体554及び第二下部構成体556を含む折り畳み可能な構造を有する。この構造により、保護カバー510は、先端工具40の下方を覆う領域が変化するように構成される。補助カバー部550は、折り畳まれた状態で、主カバー部530により覆われない先端工具40の下方領域の内、後方領域を覆い、折り畳まれていない状態で、この後方領域の前方に位置する領域を更に覆う。
【0130】
従って、本実施形態によれば、第四実施形態と同様、切断砥石及び研削砥石のような複数種類の先端工具40が切り替えて利用される場合にも、先端工具40の下方を覆う領域を、先端工具40の種類及び加工作業に合わせて調整することができる。従って、利便性の高いグラインダを提供することができる。
【0131】
本実施形態によれば特に、螺子560が、第二下部構成体556が折り曲げられた状態、及び、折り曲げられていない状態のいずれにおいても、第二下部構成体556を固定するために利用される。従って、作業者が螺子560を紛失する可能性を小さくすることができる。
【0132】
上述した補助カバー部550は、作業者と被加工材の加工対象部位との間に介在したときに作業者の視界を遮らないように、第二実施形態と同様、透明部材又はメッシュ部材で構成されてよい。この構成によれば、作業性が向上する。
【0133】
[他の実施形態]
以上に、第一実施形態から第五実施形態について説明したが、本発明のグラインダ及びカバーは、上記実施形態に限定されるものではなく、種々の態様をとることができる。
【0134】
上記実施形態における1つの構成要素が有する機能は、複数の構成要素に分散して設けられてもよい。複数の構成要素が有する機能は、1つの構成要素に統合されてもよい。上記実施形態の構成の一部は、省略されてもよい。上記実施形態の構成の少なくとも一部は、他の上記実施形態の構成に対して付加又は置換されてもよい。特許請求の範囲に記載の文言から特定される技術思想に含まれるあらゆる態様が本発明の実施形態である。
【符号の説明】
【0135】
1…グラインダ、4…モータハウジング、6…第一ギヤハウジング、8…リアカバー、12…モータ、14…回転軸、20…第一ベベルギヤ、22…第二ベベルギヤ、24…スピンドル、25…螺子部、26…ベアリング、28…ベアリング、30…第二ギヤハウジング、31…カバー接続部、32…インナーフランジ、34…ロックナット、40…先端工具、60…保護カバー、61…上部構成体、63…側部構成体、64…湾曲部、67…円筒部、100…グラインダ、110…保護カバー、130…主カバー部、131…上部構成体、131A…延設部位、132…ガイド突起、133…側部構成体、134…湾曲部、135…下部構成体、140…外側カバー部、141…上部構成体、142…凹条、143…側部構成体、145…下部構成体、150…内側カバー部、151…上部構成体、152…凹条、153…側部構成体、155…下部構成体、170…円筒部、175…締付部、200…グラインダ、210…保護カバー、230…主カバー部、231…上部構
成体、233…側部構成体、234…湾曲部、235…下部構成体、250…補助カバー部、251…カバー本体、253…アーム、254…貫通孔、256…貫通孔、257…貫通孔、260…回動ピン、265…螺子、270…円筒部、300…グラインダ、310…保護カバー、330…主カバー部、331…上部構成体、333…側部構成体、334…湾曲部、335…螺子収容部、336…サークリップ、337…螺子、350…補助カバー部、351…カバー本体、353…ナット、370…円筒部、400…グラインダ、410…保護カバー、430…主カバー部、431…上部構成体、432…挿入孔、433…側部構成体、434…湾曲部、436…ピン収容部、440…回動ピン、445…螺子、446…ナット、450…外側カバー部、451…上部構成体、451A…上部貫通孔、451B…開口部、451C…スリット、453…側部構成体、455…下部構成体、455A…下部貫通孔、455B…開口部、470…円筒部、500…グラインダ、510…保護カバー、530…主カバー部、531…上部構成体、533…側部構成体、534…湾曲部、550…補助カバー部、551…側部構成体、551A…螺子孔、552…固定部、552A…螺子孔、554…第一下部構成体、556…第二下部構成体、556A…貫通孔、557…固定部、557A…貫通孔、559…ヒンジ、560…螺子、570…円筒部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
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