特許第6871349号(P6871349)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6871349
(24)【登録日】2021年4月19日
(45)【発行日】2021年5月12日
(54)【発明の名称】天井材、天井構造及びその施工方法
(51)【国際特許分類】
   E04B 9/04 20060101AFI20210426BHJP
   E04B 9/22 20060101ALI20210426BHJP
   E04B 9/00 20060101ALI20210426BHJP
【FI】
   E04B9/04 C
   E04B9/22 C
   E04B9/22 E
   E04B9/00 T
【請求項の数】8
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2019-226545(P2019-226545)
(22)【出願日】2019年12月16日
【審査請求日】2020年10月26日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000204985
【氏名又は名称】大建工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】原 光平
(72)【発明者】
【氏名】小谷 卓矢
(72)【発明者】
【氏名】玉村 耕造
【審査官】 下井 功介
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭61−177110(JP,U)
【文献】 特許第6566984(JP,B2)
【文献】 特開2014−173227(JP,A)
【文献】 特開2017−160688(JP,A)
【文献】 特開平08−239941(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B9/00、9/04、9/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
室内の天井部の天井下地材に複数の天井材が、該天井材の少なくとも一部がカットされた状態で取り付けられて施工される天井構造であって、
カットされる前の上記天井材は、互いに対向する1対の第1辺部及び該第1辺部に直交する1対の第2辺部を有する矩形の板材からなり、
上記カットされる前の天井材の表面に、当該天井材の第1辺部に沿うように配置される方向性を有する表面模様が形成され、
上記カットされる前の天井材の裏面には、1対の第2辺部の中央位置を通り第1辺部と平行な直線状の中央線の両側に位置して、上記表面模様の配向方向を表示するための少なくとも2列の模様方向表示部が、該天井材が第1辺部又は第2辺部と平行にカットされたときに常に該模様方向表示部の少なくとも一部が残るように設けられており、
複数の上記天井材の少なくとも一部は、各々の模様方向表示部の少なくとも一部が残るように第1辺部又は第2辺部と平行にカットされて、該模様方向表示部が互いに平行になるように施工されていることを特徴とする天井構造。
【請求項2】
請求項1の天井構造において、
上記天井材は、第1辺部の長さ及び第2辺部の長さが共に450mm又は600mmの正方形の板材からなることを特徴とする天井構造。
【請求項3】
請求項1又は2の天井構造において、
天井材の各模様方向表示部は、表面模様の配向方向に沿って延びる複数の矢印が該配向方向に直列に配置されたものであることを特徴とする天井構造。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1つの天井構造において、
天井材の表面模様はトラバーチン模様であることを特徴とする天井構造。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1つの天井構造において、
天井材は、天井部の壁際位置及び点検口の少なくとも一方に施工されていることを特徴とする天井構造。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1つの天井構造において、
天井下地材に捨て張り材が固定され、該捨て張り材に天井材が取り付けられていることを特徴とする天井構造。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1つの天井構造に施工されていることを特徴とする天井材。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれか1つの天井構造を施工する施工方法であって、
天井下地材に対し複数の天井材を、該天井材各々の模様方向表示部が互いに平行になるように取り付けることを特徴とする天井構造の施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、天井材、天井構造及びその施工方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の天井材として、軽量で吸音性や意匠性に優れたロックウール化粧吸音板が一般的に用いられている。このロックウール化粧吸音板は、吸湿すると自重によって中央部が下側に撓んで周縁部よりも僅かに垂れ下がることから、例えば特許文献1に示されるように、天井材に、その繊維方向に沿って延びる矢印を繊維方向の表示部として設け、天井材の施工時に、その表示部に基づいて天井材の繊維方向を視認し、天井材を繊維方向に対向する両端部で野縁(天井下地材)に固定支持するようにすることで、天井材の垂れ下がりを抑制する技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6566984号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記ロックウール化粧吸音板のような天井材を室内の天井部に施工する際、例えば幅が300mmで長さが600mmの長方形の天井材(1×2天井材)を用い、それら複数枚の天井材を天井部の中央位置から周辺の壁際位置に向かって順に割り付けて天井下地材に張り付けるようにしている。そして、周辺の壁際位置で、天井材をそのまま張り付ける大きさのスペースがない場合には、そのスペースに合わせて天井材をカットして割り付ける必要がある。そのとき、カットした天井材の幅が小さくなり過ぎると、破損して施工し難くなる。このことから、スペースに合わせて2枚分の天井材を用い、それらを幅が小さくなり過ぎない程度までカットし、カットした2枚の天井材をスベースに施工するようにしており、このような施工は手間がかかる。
【0005】
また、天井部の裏側に設置される機器等を点検するための点検口は、例えば300mm角や450mm角、600mm角の正方形であり、この正方形の点検口を長方形天井材により塞ぐようにすると、複数枚の天井材を点検口の大きさに合わせてカットして割り付ける必要があり、やはり手間がかかる作業となる。
【0006】
一方、上記天井部の壁際位置や点検口に施工される天井材として、例えば一辺が600mmや450mmの正方形の天井材を用いれば、施工の際のカットが少なくて済み、その分、施工の手間を軽減することができる。
【0007】
しかし、天井材が正方形であると、その表面(下面)にトラバーチン模様等の方向性の模様がある場合、天井材の施工の向きの如何によっては表面の模様の方向が周りの天井材の模様の方向と一致しないことがあり、その向きを表面から確認しながら施工する必要があり、別の新たな施工手間の問題が生じることになる。
【0008】
本発明は斯かる諸点に鑑みてなされたものであり、その目的は、正方形の天井材に限らず、長方形の天井材であっても、表面に方向性を持った模様が形成された天井材に工夫を加えることにより、その天井材をカットして施工する場合であっても、表面模様の方向を施工時に容易に確認できるようにし、施工の手間を軽減して施工性を向上させるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成すべく、この発明では、方向性のある表面模様を有する天井材の裏面に、同表面模様の方向を表示する少なくとも2列の模様方向表示部を設け、天井材がカットされた場合でもその模様方向表示部により表面模様の方向が天井材裏面から確認できるようにした。
【0010】
具体的には、第1の発明は、室内の天井部の複数の天井下地材に天井材が、該天井材の少なくとも一部がカットされた状態で取り付けられて施工される天井構造であって、カットされる前の上記天井材は、互いに対向する1対の第1辺部及び該第1辺部に直交する1対の第2辺部を有する矩形の板材からなり、上記カットされる前の天井材の表面に、上記第1辺部に沿うように配置される方向性を有する表面模様が形成されている。また、上記カットされる前の天井材の裏面には、1対の第2辺部の中央位置を通り第1辺部と平行な直線状の中央線の両側に位置して、上記表面模様の配向方向を表示するための少なくとも2列の模様方向表示部が、該天井材が第1辺部又は第2辺部と平行にカットされたときに常に該模様方向表示部の少なくとも一部が残るように設けられている。そして、複数の上記天井材の少なくとも一部は、各々の模様方向表示部の少なくとも一部が残るように第1辺部又は第2辺部と平行にカットされて、該模様方向表示部が互いに平行になるように施工されていることを特徴とする。
【0011】
この第1の発明では、複数の天井材は少なくとも一部がカットされた状態で天井下地材に取り付けられて天井構造が施工される。そのとき、カットされる前の天井材は表面に方向性を有する表面模様が形成され、施工時にその表面模様の方向は裏側から確認できず、その確認に手間がかかる。しかし、そのカットされる前の天井材の裏面に、表面模様の配向方向を表示するための模様方向表示部が、天井材が第1辺部又は第2辺部と平行にカットされたときに常に該模様方向表示部の少なくとも一部が残るように設けられているので、複数の天井材の少なくとも一部について、各々の模様方向表示部の少なくとも一部が残るように第1辺部又は第2辺部と平行にカットして、該模様方向表示部が互いに平行になるように施工することで、カットされた天井材であっても、その模様方向表示部に基づいて容易に表面模様の向きを確認して他の天井材と一致させるように施工することができる。しかも、模様方向表示部は、天井材の裏面において1対の第1辺部間の中央位置を通り該第1辺部と平行な中央線の両側に少なくとも2列設けられているので、天井材を第1辺部又は第2辺部と平行となるようにカットすれば、どのようにカットしても常に模様方向表示部が残ることになり、その残された模様方向表示部によって表面模様の方向を他の天井材の表面模様と一致させることができ、施工性が向上する。
【0012】
第2の発明は、第1の発明において、天井材は、第1辺部の長さ及び第2辺部の長さが共に450mm又は600mmの正方形の板材からなることを特徴とする。
【0013】
この第2の発明では、天井材は、第1辺部及び第2辺部の長さが共に450mm又は600mmの正方形の板材であるので、例えば、この正方形の天井材をカットして天井部の壁際位置に施工する際、長方形天井材のように壁際のスペースに合わせて2枚の長方形天井材を用いる必要はなく、カットは1枚の天井材のみに行えばよく、施工の手間が少なくなる。しかも、1枚の天井材がカットされて施工されるので、天井部の壁際位置の天井材が他の天井材に比べて小さくなり過ぎることはなく、見映えが向上する。
【0014】
さらに、300mm角や450mm角、600mm角の正方形点検口を塞ぐ天井材においても、正方形の1枚の天井材をカットせずにそのまま使用するか、或いは1枚の天井材の一部をカットするだけで済み、長方形の天井材を用いるときの割り付けが不要となり、この場合も施工の手間が軽減される。
【0015】
そして、特に、450mm角又は600mm角の正方形の天井材の表面に方向性を有する表面模様が形成されていると、施工時にその表面模様の方向は裏側から確認できない。しかし、第1の発明と同様に、その裏面に表面模様の配向方向を表示するための模様方向表示部が設けられているので、正方形の天井材であっても、表面模様の向きを他の天井材と一致させて施工することができる。また、模様方向表示部は、天井材の裏面において1対の第1辺部間の中央位置を通り該第1辺部と平行な中央線の両側に少なくとも2列設けられているので、天井材を第1辺部又は第2辺部と平行となるようにカットすれば、どのようにカットしても常に模様方向表示部が残ることになり、その残された模様方向表示部によって表面模様の方向を他の天井材の表面模様と一致させることができ、施工性が向上する。
【0016】
第3の発明は、第1又は第2の発明において、天井材の各模様方向表示部は、表面模様の配向方向に沿って延びる複数の矢印が該配向方向に直列に配置されたものであることを特徴とする。こうすれば、天井構造の施工時に天井材における表面模様の方向を容易に判別することができ、施工性を高めることができる。
【0017】
第4の発明は、第1〜第3の発明のいずれか1つにおいて、天井材の表面模様はトラバーチン模様であることを特徴とする。
【0018】
この第4の発明では、天井材の表面模様としてのトラバーチン模様は、長さが短くて細長い多数の有端状溝部や多数の点状凹部がランダムに配置されたものであり、そのうちの溝部がおおよそ第1辺部に沿うように配置される方向性を有する。このトラバーチン模様を有する天井材を用いる天井構造においても、第1の発明と同様の作用効果を奏することができる。
【0019】
第5の発明は、第1〜第4の発明のいずれか1つにおいて、天井材は天井部の壁際位置及び点検口の少なくとも一方に施工されていることを特徴とする。
【0020】
この第5の発明では、天井部の壁際位置及び点検口の少なくとも一方に天井材がそのまま又はカットされて施工される。このことで、天井部の点検口や壁際位置に天井材を施工する手間を軽減することができる。
【0021】
第6の発明は、第1〜第5の発明のいずれか1つにおいて、天井下地材に捨て張り材が固定され、該捨て張り材に天井材が取り付けられていることを特徴とする。こうすれば、天井材を捨て張り材に取り付ける捨て張り天井構造の施工性を高めることができる。
【0022】
第7の発明は天井材に係り、この天井材は第1〜第6の発明のいずれか1つの天井構造に施工されていることを特徴とする。この発明でも第1の発明と同様の効果が得られる。
【0023】
第8の発明は、第1〜第6の発明のいずれか1つの天井構造を施工する施工方法であって、天井下地材に対し複数の天井材を、該天井材各々の模様方向表示部が互いに平行になるように取り付けることを特徴とする。
【0024】
この第8の発明では、天井下地材に対し複数の天井材を取り付けるとき、天井材は各々の模様方向表示部が互いに平行になるように取り付けられる。この発明でも、第1の発明と同様の作用効果が得られる。
【発明の効果】
【0025】
以上説明した如く、本発明によると、表面に方向性を有する表面模様が形成されかつ少なくとも一部がカットされて施工される正方形又は長方形の天井材の裏面に、表面模様の配向方向を表示するための少なくとも2列の模様方向表示部を中央線の両側に位置しかつ天井材が辺部と平行にカットされたときに常に模様方向表示部の少なくとも一部が残るように設けたことにより、天井材をカットして施工する際に、どのようにカットしても模様方向表示部が残って表面模様の向きを天井材の裏面から確認して施工でき、天井材の施工手間を軽減して施工性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1図1は、本発明の実施形態に係る正方形天井材の表面を拡大して示す平面図である。
図2図2は、正方形天井材の裏面を拡大して示す平面図である。
図3図3は、正方形天井材裏面の接着剤塗布位置を示す平面図である。
図4図4は、正方形天井材表面においてステープルの打ち込み位置を示す平面図である。
図5図5は、本発明の実施形態に係る天井構造を下側から見て示す斜視図である。
図6図6は、天井材が捨て張り材に取り付けられた天井構造の拡大断面図である。
図7図7は、天井部の点検口に正方形天井材が施工された天井構造を下側から見て示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。以下の実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものでは全くない。
【0028】
図5は本発明の実施形態に係る天井構造を示し、Wは建物における室内の壁、Cはその天井部であり、この天井部Cには、天井下地材として例えば水平方向に延びる複数の野縁1,1,…が一定のピッチで互いに平行に配置されている。各野縁1は例えば金属製等の中空角筒状のものであり(図6参照)、図示しないが、建物の天井スラブ等に吊りボルトやハンガー等を介して吊下げ支持されている。図6に示すように、野縁1,1,…の下面には、軽量の石膏ボード等からなる複数枚の捨て張り材3,3,…がタッピングビスVによるビス止めにより固定支持されている。各捨て張り材3は例えば900×1800mmの大判サイズであり、複数の野縁1,1,…間に亘るように配置されてビス止めされている。このことで、この天井構造は捨て張り天井構造とされている。
【0029】
そして、図6にも示すように、上記捨て張り材3,3,…の下面に複数枚の天井材6,6,…,15,15,…が接着剤及びステープル(いずれも図示せず)の併用により取付固定されて施工されている。天井部Cにおいて壁W近くの壁際位置を除いた中間位置には複数枚の長方形天井材15,15,…(1×2天井材)が施工され、壁際位置には複数枚の正方形天井材6,6,…(2×2天井材)がカットされて施工されている。尚、天井材6,15の四周辺部はスクエアエッジ(切放し)とされている。
【0030】
また、図7に示すように、天井部Cにおいて、例えば長方形天井材15が施工されている中間位置(カットされた正方形天井材6が施工される壁際位置でもよい)の所定部分には、天井部C裏側に設置される機器等を点検するための点検口17が開口されている。この点検口17は、捨て張り材3及び長方形天井材15を部分的に正方形に切り欠いた状態の開口部からなり、点検口17にそれを塞ぐ閉塞用の天井材として上記正方形天井材6が用いられて施工されている。図7中、17aは点検口17周りに取り付けられた点検口枠、17bは閉塞用の天井材の周りに取り付けられた枠部である。
【0031】
上記正方形天井材6及び長方形天井材15について説明すると、これら天井材6,15は、いずれも例えば繊維材料としてロックウール(鉱物繊維)を含む材料を湿式抄造すること等によって形成されている。この湿式抄造では、例えば繊維材料(ロックウール)を含む原料を水中に投入して水と混合し、水中で分散させてスラリーを生成した後、そのスラリーから湿式抄造によりウェットマットを成形する。例えば丸網式抄造法では、スラリーを金網シリンダで濾過脱水してウェットマットに成形し、そのマットを金網シリンダからエンドレスベルトに移載する。このウェットマットをプレスで厚み調整し、オートクレーブで養生した後に乾燥することで、天井材6,15が得られる。
【0032】
上記正方形天井材6及び長方形天井材15は、製品状態で一定サイズに設定された板材であり、板材の厚さが互いに同じ例えば9mm又は12mmで、厚さ以外の寸法が異なっているだけである。そのため、以下の説明では正方形天井材6について詳しく説明し、長方形天井材15は正方形天井材6との違いだけを説明する。
【0033】
正方形天井材6は本発明の実施形態に係る天井材であり、通常は必要な大きさにカットされて天井部Cに施工される。図1及び図2に示すように、この正方形天井材6は、互いに対向する1対の第1辺部6a,6aと、これら第1辺部6a,6aに直交する1対の第2辺部6b,6bとからなる四周辺部を有し、第1及び第2辺部6a,6bの長さはいずれも600mm又は450mmとされている。すなわち、カット前の正方形天井材6は600mm角又は450mm角の正方形状の板材からなっている。そして、この正方形天井材6は、カットされるときには、第1辺部6a或いは第2辺部6bと平行にカットされて長方形になり、その長方形の板材として施工される。
【0034】
図1に示すように、正方形天井材6の表面(天井部Cに施工されたときに室内側となる下面)は塗装が施され、その表面には表面模様としてのトラバーチン模様7が形成されている。このトラバーチン模様7は、長さが短くて細長い多数の有端状溝部7a,7a,…や多数の点状凹部7b,7b,…等がランダムに配置されたものであり、そのうちの溝部7a,7a,…がおおよそ上記第1辺部6aに沿うように配向されることで方向性を有している。図1及び図2ではトラバーチン模様3の配向方向Aを記載している。尚、トラバーチン模様7の溝部7aは直線状のものの他に少し折れ曲がった形状のものも含まれているが、いずれの溝部7aも天井材6全体から見ると第1辺部6aに沿うように配向される。
【0035】
本発明の特徴として、図2に示すように、正方形天井材6の裏面には、上記表面のトラバーチン模様3の配向方向Aを表示するための2列の模様方向表示部10,10が形成されている。この各模様方向表示部10は、天井材6表面のトラバーチン模様7の配向方向Aに沿って延びる複数(図示例では7)の矢印10a,10a,…が該配向方向Aに直列に配置されたものであり、例えば天井材6裏面に対する印刷やピン孔加工等により設けられている。2列の模様方向表示部10,10は、天井材6の1対の第2辺部6b,6bの中央位置を通りかつ第1辺部6aと平行な中央線Lの両側に該中央線Lから等距離(例えば175mm)の位置に配置されて、中央線Lに対し線対称の位置にある。複数の矢印10a,10a,…は向き(矢の部分の位置)がいずれも同じとなっているが、矢印10aの先端側が示す部分とその反対側が示す部分との間に差異はなく、矢印10aはトラバーチン模様7の配向方向Aを示しているだけである。
【0036】
これに対し、上記長方形天井材15は、幅が300mmで長さが600mmの長方形の板材で、600mm角の正方形天井材6の1/2の大きさを有しており、基本的にカットされずに(施工位置によっては長さが短くなるようにカットされる)天井部Cに施工される。図示しないが、長方形天井材15の表面にも、正方形天井材6と同様に表面模様としてトラバーチン模様が形成され、そのトラバーチン模様の配向方向は長方形天井材15の例えば長さ方向又は幅方向となっている。このように長方形天井材15は細長い板状であり、表面のトラバーチン模様は、その配向方向が長方形天井材15の長さ方向又は幅方向に応じて常に一定になるように形成されている。そのため、複数枚の長方形天井材15,15,…を各々の長さ方向が互いに平行になるように例えば馬乗り目地状態で施工すると、自ずとそれら長方形天井材15,15,…表面のトラバーチン模様の配向方向が一致することになる。しかし、その裏面にも、正方形天井材6のような模様方向表示部10(矢印10a,10a,…)は形成されている。
【0037】
天井構造の説明に戻ると、上記天井部Cの中間位置に施工される複数の長方形天井材15,15,…は、例えば馬乗り目地状態(詳しくは片馬踏み目地)のレイアウトにより配置されている。
【0038】
これに対し、天井部Cの壁際位置に施工される正方形天井材6,6,…は、そのままの大きさではなく、長方形天井材15,15,…の施工状態で壁Wとの間に残った壁際スペースの大きさに対応するように第1辺部6a又は第2辺部6bと平行にカットされ、カットされた正方形天井材6,6,…の各々の模様方向表示部10,10,…が互いに平行にかつ長方形天井材15のトラバーチン模様の配向方向と一致するように施工されている。壁際スペースは、2枚の長方形天井材15,15を幅が細くなるようにカットした状態で並べて張り付け得る大きさ、つまり300mmよりも大きくかつ600mmよりも小さい大きさを有するが、2枚の長方形天井材15,15は用いられず、カットした1枚の正方形天井材6が張り付けられている。
【0039】
図3は、正方形天井材6の裏面において、上記捨て張り材3に接着するための接着剤を塗布する接着剤塗布位置12,12,…を例示している。接着剤塗布位置12,12,…は、正方形天井材6の周辺部から内側に例えば30mm離れた中間部内に例えば90〜140mmのピッチで格子状に配置されている。この図3に示される接着剤塗布位置12,12,…は、正方形天井材6が必要な大きさにカットされる前の位置である。そのため、必要な大きさにカットされると、同様にして、その周辺部から内側に30mm離れた中間部内に90〜140mmのピッチで格子状に配置される。接着剤は酢酸ビニル樹脂系やエマルジョン樹脂系のものが用いられている。
【0040】
また、図4は、正方形天井材6の表面に捨て張り材3に固定するためのステープルを打ち込むステープル打ち込み位置13,13,…を例示している。このステープル打ち込み位置13,13,…は、正方形天井材6の周辺部から例えば10mm離れた中間部の周縁と、その中間部内とに配置され、中間部内のステープル打ち込み位置13,13,…は145mmのピッチ間隔を空けて5列に並び、各列でステープル打ち込み位置13,13,…が表面のトラバーチン模様7の配向方向Aに沿って並ぶように配置されている。この図4に示されるステープル打ち込み位置13,13,…も、正方形天井材6が必要な大きさにカットされる前の位置である。そのため、必要な大きさにカットされると、同様にして、その周辺部から10mm離れた中間部の周縁と中間部内とに配置され、中間部内で145mmのピッチ間隔で複数列に配置される。いずれの場合でも、ステープルはトラバーチン模様7の配向方向Aに沿って並ぶように打ち込まれる。ステープルは塗装した亜鉛メッキ、ステンレス製のものが用いられる。
【0041】
さらに、図7に示すように、上記天井部Cの点検口17は例えば一辺が300mmの正方形であり、この300mm角の点検口17を塞ぐ閉塞用の天井材として正方形天井材6がカットして用いられ、その正方形天井材6は一辺が300mmになるように第1辺部6a及び第2辺部6bと平行にカットされる。正方形天井材6がカットされた閉塞用の天井材は、周知の取付構造により点検口17を塞ぐように着脱可能に取り付けられる。このカットされた正方形天井材6を張る前に捨て張り材3と同じ石膏ボードを同寸法にカットして一体的に積層してもよい。尚、点検口17は300mm角の他に、一辺が450mm角や600mm角の正方形とされることがあり、450mm角の点検口17にあっては、例えば450mm角の1枚の正方形天井材6がカットされず、或いは点検口17の枠17aの寸法に応じて必要な寸法にカットされて閉塞用天井材が形成される。600mm角についても同様である。ここで、正方形天井材6及び点検口17において、「450mm角」又は「600mm角」とは、一辺の長さが±10%の範囲(「450mm角」は405〜495mm、「600mm角」は540〜660mm)を含むこととしている。
【0042】
上記天井構造の施工方法について説明する。天井部Cに先に施工されている野縁1,1,…に対し複数枚の捨て張り材3,3,…を天井部Cの全体に亘りタッピングビスVによるビス止めにより固定支持する。捨て張り材3において、点検口17となる部分にはそのための矩形状の開口部を形成しておく。
【0043】
次いで、これらの捨て張り材3,3,…の下面において、天井部Cの中間位置に複数枚の長方形天井材15,15,…を天井部Cの中央から周辺の壁Wに向かって順に接着剤及びステープルにより馬乗り目地状態等のレイアウトで取り付けていく。捨て張り材3のうち点検口17となる部分の開口部には長方形天井材15を固定せず、その非固定部分により捨て張り材3の開口部と同じ開口部を形成し、それら両開口部で点検口17を構成する。長方形天井材15表面のトラバーチン模様3の配向方向は同天井材15の長さ方向(又は幅方向)であるので、馬乗り目地状態のレイアウトのように複数枚の長方形天井材15,15,…の長さ方向が同じ向きに揃っていれば、複数枚の長方形天井材15,15,…全体でトラバーチン模様の配向方向が一致し、それらにより違和感のないトラバーチン模様が得られる。
【0044】
こうして長方形天井材15,15,…が張り付けられると、天井部Cの壁際位置に天井材のないスペースが残る。この壁際位置のスペースの大きさに合わせて正方形天井材6を第1辺部6a或いは第2辺部6bと平行にカットし、そのカットされた正方形天井材6を長方形天井材15と同様にして接着剤及びステープルにより捨て張り材3に取付固定する。
【0045】
そのとき、長方形天井材15及び正方形天井材6は捨て張り材3に接着剤及びステープルにより固定されるので、それら天井材15,6を野縁1に直接固定する直張り工法のようにステープルやビスを野縁1の位置に合わせて精度よく打ち込む必要がなく、その天井構造の施工性を高めることができる。
【0046】
また、450mm角又は600mm角の正方形天井材6をカットして壁際スペースに施工するので、仮に2枚の長方形天井材15,15を用いる場合のように、それらを壁際スペースの大きさに合わせてカットして施工する必要はなく、カットは1枚の正方形天井材6のみに行えばよく、その分、施工の手間が少なくなる。また、1枚の正方形天井材6がカットされて施工されるので、天井部Cの壁際位置の天井材が他の天井材に比べて過度に小さくなることはなく、天井部Cの見映えが向上する。
【0047】
そして、壁際位置に用いられる450mm角又は600mm角の正方形天井材6をカットするに当たり、その表面のトラバーチン模様7の配向方向Aが、隣接して配置される上記長方形天井材15のトラバーチン模様の配列方向と一致するように第1辺部6a或いは第2辺部6bと平行にカットする。例えば、今仮に、例えば壁際位置の壁際スペースが400mmの幅を有し、そのスペースに、例えば600mm角の正方形天井材6を正方形から600mm×400mmの長方形にカットして張り付ける場合を想定する。この場合、正方形天井材6は、第1辺部6aの途中を第2辺部6bと平行にカットするか、或いは第2辺部6bの途中を第1辺部6aと平行にカットするかの2通りがある。第1辺部6aの途中をカットする前者のときには、カットされた正方形天井材6の400mmの幅方向がトラバーチン模様7の配向方向Aとなり、この正方形天井材6を上記壁際スペースに施工したときに、長方形天井材15のトラバーチン模様の配向方向が同天井材15の幅方向であれば、そのトラバーチン模様の配向方向と、カットされた正方形天井材6のトラバーチン模様3の配向方向Aとが一致し、違和感が生じない。しかし、長方形天井材15のトラバーチン模様の配向方向が同天井材15の長さ方向であれば、そのトラバーチン模様の配向方向と、カットされた正方形天井材6のトラバーチン模様3の配向方向Aとが略直交するようになり、両天井材15,6のトラバーチン模様が連続しないように見えて、違和感が生じる。
【0048】
一方、後者のように正方形天井材6を第2辺部6bの途中でカットすると、カットされた正方形天井材6の400mmの長さ方向が表面模様の配向方向Aとなり、この正方形天井材6を上記壁際スペースに施工したときに、長方形天井材15のトラバーチン模様の配向方向が同天井材15の長さ方向であれば、その表面のトラバーチン模様の配向方向と、カットされた正方形天井材6のトラバーチン模様3の配向方向Aとが略一致するようになり、両天井材15,6のトラバーチン模様が連続するように見え、違和感は生じない。しかし、長方形天井材15のトラバーチン模様3の配向方向が同天井材15の幅方向であれば、その表面のトラバーチン模様の配向方向と、カットされた正方形天井材6のトラバーチン模様3の配向方向Aとが略直交するようになり、違和感が生じる。
【0049】
そして、正方形天井材6の裏面に、表面のトラバーチン模様3の配向方向Aを示す模様方向表示部10,10が形成されているので、その正方形天井材6を上記のようにカットするに当たり、トラバーチン模様3の配向方向Aを表面で確認せずとも、その表示部10を基にトラバーチン模様3の配向方向Aを確認し、それに合わせて正方形天井材6を途中でカットすればよく、トラバーチン模様3の確認作業が容易になり、その手間を軽減することができる。
【0050】
しかも、正方形天井材6裏面に2列の模様方向表示部10,10が、第1辺部6aと平行な中央線Lの両側に形成されているので、正方形天井材6を第1辺部6a或いは第2辺部6bと平行にカットするのであれば、どのようにカットしても、使用する正方形天井材6に常に2列又は1列の模様方向表示部10が残ることになり、そのトラバーチン模様3の配向方向Aを容易に確認することができる。そのため、トラバーチン模様3を長方形天井材15のトラバーチン模様や他の正方形天井材6のトラバーチン模様7とスムーズに一致させることができ、施工性が向上する。
【0051】
しかる後、上記点検口17にその閉塞用の天井材として1枚の正方形天井材6をカットして施工する。そのとき、点検口17は300mm角の正方形であるので、1枚の正方形天井材6を同寸法にカットして閉塞用天井材として用いることができる。点検口17が450mm角の点検口17であれば、1枚の正方形天井材6を同寸法にカットして閉塞用天井材を形成する。或いは、450mm角の正方形天井材であれば、カットせずにそのままで閉塞用天井材を形成する。点検口17が600mm角の点検口17であれば、600mm角の正方形天井材6をカットせずにそのままで閉塞用天井材を形成する。その際、点検口17の寸法に応じて一部カットする場合もある。このように点検口17の閉塞用天井材は、正方形天井材6をそのまま又はカットするだけで形成され、長方形天井材15を用いる場合のように4枚の長方形天井材15,15,…をカットして割り付ける作業が不要となり、施工の手間を大幅に軽減することができる。尚、点検口17を閉塞する閉塞用天井材として、正方形天井材6を上側の石膏ボードに接着剤及びステープルで張り付ける場合には、石膏ボードも、正方形天井材6と同じ寸法にカットする。
【0052】
そして、正方形天井材6をそのまま又はカットして閉塞用の天井材とするとき、正方形天井材6裏面に模様方向表示部10,10が形成されているので、その模様方向表示部10を基に表面のトラバーチン模様3の配向方向Aを確認し、その配向方向Aが点検口17周りの長方形天井材15のトラバーチン模様の配向方向と一致するように閉塞天井材を施工すればよく、この場合も施工の手間が軽減される。
【0053】
したがって、この実施形態によると、上記のように正方形天井材6裏面に2列の模様方向表示部10,10が形成されているので、正方形天井材6が第1辺部6a或いは第2辺部6bと平行にカットされて施工される場合でも、そのカットされた正方形天井材6の裏面に模様方向表示部10が常に1列又は2列となって残り、その模様方向表示部10により正方形天井材6表面のトラバーチン模様3の配向方向Aを容易に確認することができ、施工の手間を軽減して施工性を高めることができることになる。
【0054】
(その他の実施形態)
上記実施形態では、正方形天井材6の裏面に2列の模様方向表示部10,10を形成しているが、3列以上の模様方向表示部10,10,…を形成してもよい。それらの列は上記中央線Lの両側に形成すればよい。また、模様方向表示部10は、表面のトラバーチン模様3の配向方向Aに沿って延びる複数の矢印10a,10,…としているが、矢印10a以外の表示部を採用してもよく、トラバーチン模様3の方向が識別できる表示であれば何でもよい。
【0055】
また、上記実施形態では、正方形天井材6の表面に形成される模様をトラバーチン模様3としているが、印刷や塗装等による他の模様であってもよく、方向性を有する表面模様であれば本発明の適用が可能である。
【0056】
さらに、上記実施形態では、天井構造は天井下地材としての野縁1に捨て張り材3を固定し、その捨て張り材3に長方形天井材15及び正方形天井材6を張り付ける捨て張り天井構造であるが、本発明は、野縁1に天井材15,6を直接に固定する直張り天井構造に適用することもできる。
【0057】
さらにまた、上記実施形態では、正方形天井材6を対しその裏面に2列の模様方向表示部10,10を形成しているが、本発明は正方形天井材6に限定されず、長方形の天井材に対しても適用が可能であり、表面に方向性を有する表面模様が形成された天井材であれは、その寸法や形状に関係なく適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明は、方向性を有する表面模様が形成された天井材がカットされて用いられる場合でも、その表面模様を裏面の2列以上の模様方向表示部で確認して施工性を向上でき、天井材及び天井構造の分野で極めて有用で産業上の利用可能性が高い。
【符号の説明】
【0059】
W 壁
C 天井部
1 野縁(天井下地材)
3 捨て張り材
6 正方形天井材(天井材)
6a 第1辺部
6b 第2辺部
7 トラバーチン模様(表面模様)
7a 溝部
A トラバーチン模様配向方向
10 模様方向表示部
10a 矢印
L 中央線
15 長方形天井材
17 点検口
【要約】
【課題】表面に方向性を持ったトラバーチン模様が形成された天井材がカットされて室内天井部Cに施工されても、トラバーチン模様の配向方向を施工時に容易に確認できるようにし、施工の手間を軽減する。
【解決手段】天井材6は、互いに対向する1対の第1辺部6a及び第1辺部6aに直交する1対の第2辺部6bが共に600又は450mmの正方形の板材からなる。天井材6の表面に、第1辺部6aに沿うように配置される方向性を有するトラバーチン模様3が形成され、天井材6の裏面において1対の第2辺部6bの中央位置を通り第1辺部6aと平行な中央線Lの両側には、トラバーチン模様3の配向方向Aを表示するための2列の模様方向表示部10が設けられている。天井構造において、カットされた複数の天井材6は、各々の模様方向表示部10が互いに平行になるように施工されている。
【選択図】図2
図1
図2
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図7