【実施例】
【0043】
以下、実施例に基づいて本発明を詳細に説明する。但し、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。また、特に指摘がない場合、下記において、「部」は「質量部」を意味する。
【0044】
(実施例1)
<光学フィルムの作製>
先ず、透明基材として、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(東レ社製、商品名“ルミラーU34”、厚さ:50μm)を用意した。
【0045】
次に、下記材料を攪拌して混合した後、サンドグラインドミルにより分散処理を行い、分散液を作製した。
(1)金属酸化物(石原産業社製の超微粒子酸化チタン、商品名“TTO51(A)”、平均粒子径:20nm):80部
(2)分散剤(ルーブリゾール社製、商品名“ソルスパーズ32000”):7.6部
(3)紫外線硬化性樹脂(日本化薬社製のウレタンアクリレート、商品名“KAYARAD DPHA−40H”):11.78部
(4)光重合開始剤(BASF社製、商品名“イルガキュア907”):0.62部
(5)メチルエチルケトン:150部
(6)シクロヘキサノン:150部
【0046】
次に、メチルエチルケトンとシクロヘキサノンとの質量比50:50の混合溶剤を準備し、上記分散液を上記混合溶剤で12.5倍に希釈し、その希釈液をフィルターに通してろ過し、ハーフミラー層形成用塗布液を得た。
【0047】
続いて、上記ハーフミラー層形成用塗布液を上記PETフィルムの上に、バーコーターを用いて硬化後のハーフミラー層の厚さが80nmとなるように塗布し、100℃で乾燥させて塗膜を形成した。その塗膜に紫外線(最大波長:365nm、光源:高圧水銀ランプ、積算光量:400mJ/cm
2)を照射して塗膜を硬化させ、上記PETフィルムの上にハーフミラー層を形成し、実施例1の光学フィルムを作製した。
【0048】
<合わせガラスの作製>
先ず、中間膜に用いるポリビニルブチラール(PVB)フィルム(積水化学工業社製のPVBフィルム、商品名“エスレックフィルム”、厚さ:0.38mm)を、特許文献1(特開平2−279437号公報)の実施例2に記載の方法と同様にして加工し、くさび形の断面形状を有するPVBフィルムを2枚用意した。更に、ガラス基板として、厚さ2mmのフロートガラス(日本板硝子社製)を2枚用意した。
【0049】
次に、上記で作製した光学フィルムを上記2枚のPVBフィルムで断面形状がくさび形状となるように挟み込み、更に、PVBフィルムの両面に上記2枚のフロートガラスをそれぞれ重ね合わせて積層体を作製した。その後、この積層体をゴムバッグで包み、90℃に加熱したオートクレーブ中で10分間真空脱気して、上記積層体の各層を予備接着した。続いて、予備接着した積層体を室温まで冷却後、ゴムバッグから取り出し、再度、オートクレーブ中で135℃、12kg/cm
2の圧力下で30分間加熱・加圧し、実施例1の合わせガラスを作製した。
【0050】
(実施例2)
硬化後のハーフミラー層の厚さが100nmとなるように調整した以外は、実施例1と同様にして光学フィルムを作製し、この光学フィルムを用いた以外は、実施例1と同様にして実施例2の合わせガラスを作製した。
【0051】
(実施例3)
下記材料を攪拌して混合した後、サンドグラインドミルにより分散処理を行い、分散液を作製した。
(1)金属酸化物(石原産業社製の超微粒子酸化チタン、商品名“TTO51(A)”、平均粒子径:20nm):80部
(2)分散剤(ルーブリゾール社製、商品名“ソルスパーズ32000”):7.6部
(3)紫外線硬化性樹脂(日本化薬社製のウレタンアクリレート、商品名“KAYARAD DPHA−40H”):25.36部
(4)光重合開始剤(BASF社製、商品名“イルガキュア907”):1.33部
(5)メチルエチルケトン:171.1部
(6)シクロヘキサノン:171.1部
【0052】
次に、メチルエチルケトンとシクロヘキサノンとの質量比50:50の混合溶剤を準備し、上記分散液を上記混合溶剤で12.5倍に希釈し、その希釈液をフィルターに通してろ過し、ハーフミラー層形成用塗布液を得た。
【0053】
上記ハーフミラー層形成用塗布液を用いた以外は、実施例1と同様にして光学フィルムを作製し、この光学フィルムを用いた以外は、実施例1と同様にして実施例3の合わせガラスを作製した。
【0054】
(比較例1)
実施例1で作製した光学フィルムを用いなかった以外は、実施例1と同様にして、フロートガラス/中間膜/中間膜/フロートガラスの構成を有する比較例1の合わせガラスを作製した。
【0055】
(比較例2)
PETフィルムにハーフミラー層を形成しなかった以外は、実施例1と同様にして、フロートガラス/中間膜/PETフィルム/中間膜/フロートガラスの構成を有する比較例2の合わせガラスを作製した。
【0056】
(比較例3)
硬化後のハーフミラー層の厚さが140nmとなるように調整した以外は、実施例1と同様にして光学フィルムを作製し、この光学フィルムを用いた以外は、実施例1と同様にして比較例3の合わせガラスを作製した。
【0057】
(比較例4)
下記材料を攪拌して混合した後、サンドグラインドミルにより分散処理を行い、分散液を作製した。
(1)金属酸化物(石原産業社製の超微粒子酸化チタン、商品名“TTO51(A)”、平均粒子径:20nm):72部
(2)分散剤(ルーブリゾール社製、商品名“ソルスパーズ32000”):6.84部
(3)紫外線硬化性樹脂(日本化薬社製のウレタンアクリレート、商品名“KAYARAD DPHA−40H”):39.10部
(4)光重合開始剤(BASF社製、商品名“イルガキュア907”):2.06部
(5)メチルエチルケトン:180部
(6)シクロヘキサノン:180部
【0058】
次に、メチルエチルケトンとシクロヘキサノンとの質量比50:50の混合溶剤を準備し、上記分散液を上記混合溶剤で12.5倍に希釈し、その希釈液をフィルターに通してろ過し、ハーフミラー層形成用塗布液を得た。
【0059】
上記ハーフミラー層形成用塗布液を用いた以外は、実施例1と同様にして光学フィルムを作製し、この光学フィルムを用いた以外は、実施例1と同様にして比較例4の合わせガラスを作製した。
【0060】
次に、作製した実施例1〜3及び比較例1〜4の合わせガラスを用いて下記特性を評価した。
【0061】
<光学フィルムの反射率>
光学フィルムの反射率は、日本電色工業社製の同時測光方式分光式色差計“SQ−2000”を用いて測定した。測定条件は、光学フィルムの直径10mmの円形領域を測定領域とし、正反射入りの条件で反射測定を行い、Y値を求め、求めたY値を光学フィルムの反射率とした。
【0062】
<ハーフミラー層の屈折率>
ハーフミラー層の屈折率は、大塚電子社製の反射分光膜厚計“FE3000”及び標準ソフトウェア“FE Series ver4”を用いて測定した。測定条件は、絶対反射、マニュアルモードで、レファランスにアルミニウムの反射板を用い、レンズはRefrec×20、NA=0.400、フィルターなしとし、スリットは0.2×2mm、サンプリングは524msec、積算は9回、ゲインはノーマルとした。
【0063】
<反射率の比R1/R2>
反射率の比R1/R2は、日本分光社製の分光光度計“V-570”と、日本分光社製の積分球ユニット“ILN−472”とを組み合わせて測定した。測定は、波長380〜780nmの範囲で行い、全光線反射率に換算して行った。具体的には、先ず、合わせガラスのフロートガラスの片面側から光を入射させた際の反射率を測定しR1とした。次に、入射光側とは反対側のフロートガラスの外表面の外側をサンドペーパにて荒らした後に油性黒インクにて塗りつぶし、更に黒テープを貼りつけた状態で反射率を測定しR2とした。最後に、反射率の比R1/R2を算出した。
【0064】
<投影像の輝度>
投影像の輝度は、村上色彩技術研究所製の変角光度計“GP200”を用いて測定した。具体的には、合わせガラスについて入射角60°で入射する光の反射特性を測定し、反射角60°の光強度を相対評価し、求めた相対値を輝度とした。作製した合わせガラスは、断面形状がくさび形となっているが、光の入射は合わせガラスの断面が薄い方から行い、反射光は合わせガラスの断面が厚い方から出射するように、合わせガラスを装置にセットした。
【0065】
<合わせガラスの耐衝撃性>
先ず、合わせガラスを室温及び−20℃で24時間以上それぞれ保存した。次に、保存後の合わせガラスを厚さ10mmのアルミニウム板の上に置き、合わせガラスの中央部をハンマーで強くたたいた。−20℃に保存したサンプルは、冷凍庫から取り出して直ぐにアルミニウム板の上に置いてハンマーでたたいた。比較例1及び2以外の合わせガラスは、光学フィルムのハーフミラー層側のガラス面を上にして、アルミニウム板の上に置いた。上記合わせガラスの耐衝撃性の評価は、下記の基準で行った。
(1)中間膜と光学フィルムとの接着面の剥離領域が、全接着面の30%未満の場合、耐衝撃性は「良好」と判断した。
(2)中間膜と光学フィルムとの接着面の剥離領域が、全接着面の30%以上50%未満の場合、耐衝撃性は「良」と判断した。
(3)中間膜と光学フィルムとの接着面の剥離領域が、全接着面の50%以上の場合、耐衝撃性は「不良」と判断した。
【0066】
<表示像の良否>
合わせガラスの下側に設置した表示ユニットからの表示情報光を、合わせガラスに対して入射角60°となる状態で投影し、所定の位置でゴーストの有無を目視で確認し、以下の基準により表示像の良否を評価した。上記合わせガラスは、その上端断面が厚くなるようにセットした。
(1)表示像に顕著にゴーストが確認されなかった場合、表示像は「良好」と判断した。
(2)表示像に顕著にゴーストが確認された場合、表示像は「不良」と判断した。
【0067】
以上の結果を表1に示す。
【0068】
【表1】
【0069】
表1から、反射率比が1.4以下であった実施例1〜3の合わせガラスは、光学フィルムの反射率が15%以上であったためか、投影像の輝度が高く、表示像が良好であることが分かる。また、実施例1〜3の合わせガラスでは、光学フィルムに金属酸化物を含むハーフミラー層を設けたので、室温及び低温ともに耐衝撃性が良好であった。
【0070】
一方、比較例1では、光学フィルムを用いなかったため、合わせガラスの反射率比が大きく、投影像の輝度が低いことが分かる。比較例2では、光学フィルムにハーフミラー層を設けていないPETフィルムを用いたので、光学フィルムの反射率が小さく、合わせガラスの反射率比が1.4より大きく、投影像の輝度は光学フィルムを用いない比較例1と大差ないことが分かる。また、比較例2では、光学フィルムに金属酸化物を含むハーフミラー層を設けていないため、耐衝撃性が劣ることが分かる。比較例3では、ハーフミラー層を設けているが、反射率が15%より小さい光学フィルムを用いたので、合わせガラスの反射率比が1.4より大きく、投影像の輝度が比較例1と大差ないことが分かる。比較例4では、合わせガラスの反射率比が1.4より大きいので、投影像の輝度が比較例1と大差ないことが分かる。これは、比較例4に用いたハーフミラー層を設けた光学フィルムの反射率が15%より小さいためと考えられる。また、比較例4では、ハーフミラー層の屈折率が1.75より低いため、−20℃の耐衝撃性が劣ることが分かる。
【0071】
本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で、上記以外の形態としても実施が可能である。本出願に開示された実施形態は一例であって、これらに限定はされない。本発明の範囲は、上述の明細書の記載よりも、添付されている請求の範囲の記載を優先して解釈され、請求の範囲と均等の範囲内での全ての変更は、請求の範囲に含まれるものである。