【実施例】
【0079】
以下の実施例は、さらに本発明をより詳細に説明するが、その範囲を限定すると解釈されない。
【0080】
以下の原料または成分は、実施例および比較例に記載されているエマルションを調製するために使用される。
【0081】
以下の実施例では、米国特許第8,334,323B2号の実施例1に記載されているブチレンオキシドキャップされた直鎖第二級アルコールアルコキシレートが、非イオン性界面活性剤成分として使用される。
【0082】
Disponil(商標)FES−993は、約20重量%の非イオン性界面活性剤を含有する界面活性剤組成物であり、BASFから市販されている。Disponil FES−993は、BASFから受け取ったときに「そのまま」使用される。
【0083】
硫黄は、Sinopec Shanghaiから購入され、受け取ったときに「そのまま」使用される。硫黄は、既知の方法で、実験室で二酸化硫黄に、その後、三酸化硫黄に変換される。
【0084】
NaOH水溶液(32重量%の水溶液)は、市場で購入され、受け取ったときに「そのまま」使用される。
【0085】
界面活性剤組成物を調製するための一般的手順
実施例で使用される界面活性剤組成物は、以下の一般的手順に従って調製される。
【0086】
ステップ(1):まず、非イオン性界面活性剤前駆体(例えば、二級アルコールエトキシレートおよびブトキシレート)を、三酸化硫黄を介したChemithon硫酸化プロセスなどの硫酸化プロセスによって処理して、アニオン性界面活性剤を形成してもよい。Chemithon硫酸化プロセスは、より良好な不純物プロファイル制御を提供し、HCl副生成物がそのようなプロセスで生成されないため、好ましい。
【0087】
Chemithonプロセスによる硫酸化は、業界で周知の連続プロセスである。本プロセスの反応速度は、供給比、カラム長、カラム設計(三酸化硫黄と非イオン性前駆体との最大接触面を提供するため)などに依存する場合がある。Chemithonプロセスのためのそのような変数は、当業者によって容易に決定され得る。
【0088】
ステップ(2):次いで、ステップ(1)の上記の硫酸化プロセスから得られるアニオン性界面活性剤を、NaOH(32重量%の水溶液)を使用して約7〜約9のpHに迅速に中和して、硫酸塩界面活性剤の塩を形成し得る。
【0089】
ステップ(3):ステップ(2)からの硫酸塩界面活性剤の塩を水で希釈して、本発明の最終界面活性剤組成物を形成してもよい。
【0090】
一般的な硫酸化プロセス、上記の一般的プロセスのステップ(1)を実施する際、予熱された非イオン性界面活性剤(約40℃に予熱された)をまず、連続薄膜反応器内で、空気希釈液体三酸化硫黄と接触させる。それは、比較的速い発熱反応である。
【0091】
三酸化硫黄による典型的な硫酸化プロセスは、以下の硫酸化スキーム(I)に示されるように説明され得る。
【0092】
【化5】
【0093】
非イオン性界面活性剤に対する三酸化硫黄(SO
3)のモル比は、非イオン性界面活性剤の流量を調節することによって約0.80〜約1.02の範囲に維持され得る。概して、非イオン性界面活性剤の流速は、一実施形態では、1kg/時の硫黄消費を基準にして、約15キログラム/時(kg/時)〜約30kg/時であり得、別の実施形態では、1kg/時の硫黄消費を基準にして、約20kg/時〜約25kg/時までであり得る。用途の必要性に応じて、最終生成物中に特定の比率の非イオン性界面活性剤を維持するために、上記のモル比の範囲が設定される。高品質のアルキルアルコキシレートサルフェートを生成し、特に、例えば、望ましくない1,4−ジオキサンの形成を最小限に抑えるために、非イオン性界面活性剤に対するSO
3のモル比の正確な制御が実施される。粗硫酸エステル酸を約55℃で集める。
【0094】
上記の一般的プロセスの中和プロセスステップであるステップ(2)を実施する際、NaOHまたはNH
4OHを使用して、粗硫酸エステル酸の迅速な中和を実施する。迅速な中和は、暗色を避け、かつ良好な不純物プロファイルを保つために使用される。
【0095】
実施例および比較例では、以下の標準測定、分析機器、および方法が使用される。
【0096】
界面活性剤試験方法
(a)活性成分
乳化剤の活性成分は、GB/T−5173−1995に記載されている手順に従って滴定方法によって決定されてもよく、ここで、アニオン性活性含有物の滴定は、酸性混合物からなる指示薬の存在下で標準容積カチオン溶液を用いて実施される。
【0097】
(b)表面張力およびCMCの測定
百万につき4000部(ppm)での界面活性剤の水溶液は、母液として調製されてもよく、1ppmまでのより低濃度の一連の溶液試料は、母液を希釈することによって調製されてもよい。各試料溶液の表面張力は、GB/T−5549−2010に記載されている手順に従って測定され得る。表面張力値は、濃度に対してプロットされ得、臨界ミセル濃度(CMC)は、プロットの破断点から決定され得る。
【0098】
(c)ロス−マイルス泡高試験
界面活性剤組成物の発泡特性は、ロス−マイルス泡高試験を用いて、まず、0.2重量%の界面活性剤水溶液300ミリリットル(mL)を調製し、次に、GB/T−7462−94に記載されている手順に従って溶液の泡高を測定ことによって決定されてもよい。
【0099】
(d)Draves湿潤測定
界面活性剤組成物の耐湿性は、まず、0.5重量%の界面活性剤水溶液を1リットル(L)調製することによって、Draves湿潤測定を用いて決定されてもよい。いくつかの綿布を同じサイズに切ってもよい。次に、GB/T−11983−2008に記載されている手順に従って、界面活性剤溶液中での綿布への湿潤時間が記録される。
【0100】
(e)界面活性剤のCa
2+安定性試験
界面活性剤組成物のCa
2+安定性は、GB/T−7381−2010に記載されているように界面活性剤のCa
2+安定性試験の手順を用いて決定されてもよい。
【0101】
(f)耐アルカリ性試験
界面活性剤組成物の耐アルカリ性特性は、GB/T−5556−2003に記載されているような耐アルカリ性試験の手順を用いて決定されてもよい。
【0102】
(g)粘度測定
界面活性剤組成物の粘度は、GB/T−5561−1994に記載されているような粘度測定の手順を用いて、室温(20℃)、スピンドル#62、および60rpmで決定されてもよい。
【0103】
実施例1
この実施例1の界面活性剤組成物は、以下の手順に従って調製した。
予熱した(約40℃)非イオン界面活性剤前駆体(第二級アルコールエトキシレートおよびブトキシレート)を実験室規模の薄膜流下反応器にゆっくり注いだ。非イオン性界面活性剤前駆体に対する三酸化硫黄(SO
3)のモル比を、実験室規模の調製において、非イオン性前駆体の流速を約3.0kg/時に微調整することによって、約1.01/1.00に安定に保った。連続硫酸化プロセスに続いて、硫酸エステル酸の回収後、NaOH(32重量%の水溶液)によるバッチ中和を、機械的攪拌を用いて行った。
【0104】
上記の手順に従って界面活性剤組成物を調製した後、界面活性剤組成物の特性を上記の方法を用いて測定した。特性測定の結果を表Iに記載する。
【0105】
実施例2
この実施例2では、約3.6−3.7kg/時の非イオン性前駆体の流量を微調整することによって非イオン性界面活性剤に対するSO
3のモル比を約0.81/1.00に安定に保ったことを除いて、実施例1と同じ手順に従った。
【0106】
比較例A
この比較例Aでは、Disponil FES−993を非イオン性界面活性剤前駆体として使用した。Disponil FES−993は、BASFから入手し、受け取った「そのまま」の状態で使用した。
【0107】
構造分析は、全界面活性剤のその固形分重量の約20重量%の非イオン性界面活性剤を含有する界面活性剤組成物としてDisponil FES−993を同定する。このため、上記の実施例2を、成分(a)/成分(b)の重量比を8/2として調製した。
【0108】
【表I】
【0109】
上記の表Iにおいて、本発明の界面活性剤組成物(実施例1および2)は、Disponil FES−993(比較例A)と比較すると、以下の特性を含むいくつかの非常に有用な特性を示した。
【0110】
(1)実施例1および2は、Disponil FES−993(比較例A)よりもはるかに低い表面張力を有する。特に、実施例2の低い表面張力は34mN/mである。
【0111】
(2)実施例1および2は、Disponil FES−993(比較例A)よりも低いCMCを有する。より低いCMCは、重合反応を制御するのに非常に有用であり得る。例えば、より低いCMCでより小さなポリマー粒子サイズを得ることができる。
【0112】
(3)泡特性に関して、実施例2の界面活性剤組成物は、最低の初期泡高を示し、実施例1および2は、Disponil FES−993(比較例A)よりもはるかに急速な、非常に速い泡崩壊を有する。
【0113】
(4)実施例2の湿潤性能は、他の界面活性剤組成物より著しく良好であることが認められる。低泡湿潤剤である非イオン性アルキルアルコキシレート1の存在が湿潤性能に寄与すると理論付けられる。良好な湿潤性能は、下流のエマルション用途において有利であり、価値のある特性となり得る。
【0114】
(5)実施例1および2のCa
2+安定性は、Disponil FES−993(比較例A)に匹敵する。
【0115】
結論として、実施例2(本発明の界面活性剤)は概して、低い表面張力、低いCMC、急速な湿潤、低発泡、および急速な発崩壊などを含む、非常に有用で有利な界面活性剤特性を証明する。上記の特性のすべてが、より良好な重合安定性、より良好なエマルション安定性、およびより少ない用途欠陥を有する、得られたエマルションを提供するのに寄与するであろう。
【0116】
実施例4および5、ならびに比較例B−乳化重合
パートA:エマルションの基本配合成分
スチレンブチルアクリレートエマルションを調製するために実施例で使用される基本配合物は、(a)次のモノマー:ブチルアクリレート、スチレン、アクリルアミド、およびアクリル酸、(b)過硫酸アンモニウムなどの開始剤、(c)0.834phmのアニオン性界面活性剤、を含む。得られたエマルションのガラス転移温度(Tg)は、22℃である。
【0117】
パートB:エマルションの調製
スチレン−ブチルアクリレートエマルションの基本的重合手順
上記のパートAに記載されるエマルションの重合プロセスは、以下のステップを含む。
【0118】
ステップ(1):フラスコ中で、実施例1および2、ならびに比較例Aからの界面活性剤組成物を、重炭酸ナトリウム、水、および上述のモノマーで予備乳化し、混合物を室温で約30分間連続的に攪拌することによって、化合物を混合する。
【0119】
ステップ(2):界面活性剤組成物の第2の部分および水を反応器に加え、反応器内容物を約80℃〜約90℃の範囲の温度で加熱する。
【0120】
ステップ(3):過硫酸アンモニウムの第1の部分を反応器に加え、次に、過硫酸アンモニウムの第2の部分と共に予備エマルションを3時間かけて滴下する。
【0121】
ステップ(4):ステップ(3)の添加後、温度を約80℃〜約90℃の範囲内に1時間維持し、その後、混合物の乳化重合を行う。
【0122】
ステップ(5):エマルションが上記のステップ(4)で形成されたら、エマルションを65℃の温度に冷却し、次いで、re−dox開始剤を添加して、いかなる残留モノマーをも消費し、この反応混合物を攪拌しながら30分間維持する。
【0123】
ステップ(6):ステップ(5)から得られたエマルションを40℃に冷却し、アンモニア水をエマルションに添加することによりエマルションのpHを調整し、得られたエマルションを濾過して、濾過後にポリマーエマルションを得る。
【0124】
表IIは、実施例4および5、ならびに比較例Bに従って調製された3つのエマルションを記載する。
【0125】
【表II】
【0126】
エマルションの性能を評価するための一般的なプロセス
上記のように調製されたエマルションを、以下の試験を用いてエマルションの性能特性を決定するために評価し、得られたエマルションの特性を表IIIに示す。
【0127】
Ca
2+安定性試験
CaCl
2水溶液(5重量%または10重量%の濃度)を20mLのエマルションに添加し、手動で混合した後、CaCl
2−含有エマルションを室温で48時間保った。エマルション中に凝集または不均一性が少しでも見られる場合、Ca
2+安定性試験での不合格が示される。試験方法は、中国GB/T20623−2006を参照するが、より高濃度のCaCl
2水溶液を使用する。
【0128】
乳化重合における重合安定性
得られたエマルションを濾過し、フィルター中に反応凝集物を集め、それを水道水で洗浄し、周囲温度で乾燥させ、収集物を秤量して、凝集物の量を決定する。エマルションの総重量に対する凝集物の重量百分率を使用して、重合安定性を測定した。凝集物の割合が低いほど、重合安定性は良好である。
【0129】
ポリマーエマルション中の粒径および粒径分布(ピーク幅)
ゼータ電位粒子分析装置(Malvern Nano ZS)を用いて、エマルション中の平均粒径を測定した。
【0130】
固形分
固形分測定は、乾燥減量法により150℃で0.5時間行った。
【0131】
耐水白化性試験
4重量%のフィルム形成助剤をエマルション中に添加し、手動混合の後、エマルションフィルムをプレート表面に約100μmの厚さで広げた。フィルムを周囲温度で24時間空気乾燥させ、次いで、エマルションフィルムを有するプレートを水道水に浸した。フィルムの外観を、これらのエマルションフィルムの耐水白化性の尺度として、24または48時間後に調べた。エマルション耐水白化性の試験方法は、建築用塗料の耐水性試験方法であるGB/T16777−1997から簡略化した。
【0132】
【表III】
【0133】
表IIIの結果に記載されているように、実施例4は、比較例Bと非常に類似した特性を有するエマルションを与えた。例えば、実施例4の粒径およびその分布は、比較例Bと同様であり、実施例4については、比較例Bよりも少ない重合残渣が記録された。
【0134】
概して、アニオン性界面活性剤は、粒度制御においてより効果的である。したがって、表IIIの結果は、実施例5における非イオン性界面活性剤の存在が、実施例4および比較例Bの他のエマルションよりもわずかに大きい粒径を有するエマルションをもたらすことを示す。
【0135】
表IIIのすべて3つのエマルションのCa
2+安定性は、GB/T−20623−2006の標準方法によって決定されるCa
2+安定性よりもはるかに良好であり、実施例4および5のエマルションは、100%のCaCl
2(10重量%の水溶液)を通過するほど非常に良好であったが、FES−993を有するエマルション(比較例B)は、75%のCaCl
2(10重量%の水溶液)のみ通過した。
【0136】
概して、実施例4および5のエマルションは、比較例Bのエマルションと比較して、よりバランスのとれた性能を与えた。特に、多数の充填剤/添加剤に対するエマルションのCa
2+安定性は、例えば、建築用塗料配合物のコーティング安定性にとって極めて重要な特性である。
【0137】
動的表面張力
表面張力は、非常に重要な界面活性剤特性であり、泡形成、界面活性剤の安定性、および界面活性剤溶液の湿潤性などの界面活性剤の特性に影響を与える。高いコーティング速度が必要とされる特定の用途では、動的表面張力(DST)が、湿潤性能の指標と見なされる。実施例では、3つのエマルションのDSTを測定して、エマルションの湿潤性能を区別し、界面活性剤の比較例として、Disponil FES−993を使用した。
【0138】
試験方法である最大泡圧法は、界面活性剤を含むシステム/組成物のDSTを測定するために一般的に使用されている。最大泡圧法では、テンシオメータが、一定の速度で気泡を生成し、試料液に浸されているキャピラリー(既知の半径を有する)を通して気泡を吹き付ける。気泡がキャピラリーを通過するにつれて、気泡内部の圧力が増加し続け、気泡が完全に半球形状を有し、その半径がキャピラリーの半径に正確に対応するとき、最大圧力値が得られる。表面張力は、以下のように、液体内にある球形のバブル形状に関して還元形のヤング−ラプラス方程式を用いて決定され得、
【0139】
【数1】
【0140】
式中、σは、表面張力であり、ΔPmaxは、最大圧力降下であり、Rcapは、キャピラリーの半径である。
【0141】
エマルションの粘度を下げるために水を使用する。希釈エマルション溶液(40mL)を、その初期固形分の50パーセント(%)で調製する。
【0142】
図1は、実施例のエマルション動的表面張力(DST)特性の比較を示す。
図1において、実施例4および実施例5のSt−アクリレートエマルションは、比較例Bのエマルションよりも低いDSTを有した。全体として、
図1に示される結果は、エマルションの表面張力に従って良好な結果である。実施例2<実施例1<比較例A
【0143】
エマルション泡高測定
低発泡性能は、低発泡が下流のエマルション用途における消泡剤の添加剤の使用を最小限に抑えることができるため、エマルションにとって望ましい特性であり、低発泡はまた、生産効率を増加させ得る。高粘性エマルションでは、低発泡は、コーティングおよび接着剤用途の両方における製品欠陥を減らすために特に歓迎されている。実施例において、低発泡は、界面活性剤の比較例としてDisponil FES−993を用いて測定される。
【0144】
泡試験方法1
泡試験方法1は、まず、200mLのエマルションを500mLのプラスチックカップに注ぐことによって、エマルションを用いて実施される。その後、初期エマルション高さを記録する。エマルションを、分散プレートを用いて4000rpmで30分間連続的に攪拌する。30分間の撹拌の間のエマルション泡高の変化を記録する。高発泡エマルションの場合、泡がプラスチックカップからこぼれる可能性がある。泡試験の結果は、表IVに示す通りである。
【0145】
【表IV】
【0146】
表IVに記載された結果から、実施例4のエマルションの泡高は、表IVに記載された3つのエマルションの中で最も低いことが分かる。実施例5の界面活性剤組成物は、急速な泡崩壊を伴う低発泡であるが、実施例5の得られたエマルションは、比較例Bのエマルションよりもわずかに高い泡を有する。
【0147】
高速分散後、エマルションの低い最終泡高は、界面活性剤組成物の低い泡プロファイルを示す。
【0148】
実施例4と実施例5との間の1つの違いは、実施例5が界面活性剤組成物中に成分(b)の濃縮物を含有することである。
【0149】
泡試験方法2
この泡試験方法2では、エマルションをまず、1%の活性水溶液に希釈する。次に、250mLの希釈エマルションを試験管に入れる。水性エマルション溶液を1分間通気し、その後、泡立てを止め、泡高を記録する。次の5分間における泡高の変化を記録する。
【0150】
上記の試験は、二重に実施され、結果は、±5%で再現可能である。2つの重複試験の平均泡高を報告する。
【0151】
図2にエマルションのエマルション泡高特性の比較を示す。
図2では、実施例4のエマルションの初期泡高は、わずかに低く、実施例4の発泡崩壊は、最初の3分でかなり急速であった一方、実施例5のエマルションにおける泡プロファイルは、比較例Bのエマルションとほぼ同じであった。
【0152】
上記の2つの異なる泡試験方法に関して、希釈エマルションを用いる方法2は、エマルション中の界面活性剤組成物の消泡特性を直接反映するが、高速分散を用いる方法1は、エマルションの粘性を有する界面活性剤組成物の消泡能力を示す。高粘性エマルションの発泡を減少させることの困難性を考慮すると、界面活性剤組成物が一定量の消泡能力を示すことは有益である。
【0153】
上記の泡試験方法1および2の両方からの泡高試験結果に基づいて、本発明の実施例4のエマルションは、最低の泡プロファイルを有した。
【0154】
耐水白化性試験
耐水白化性は、エマルション用途、特にコーティング用途に重要な影響を及ぼす場合がある、本質的なエマルション特性である。本明細書の上記に記載される試験方法によると、エマルション中に現れる白化の観察は、エマルションによって形成されたフィルムを通る水の浸透を表す。したがって、白化は、フィルムの耐水性の尺度として使用され得る。エマルション中で白化が目視で観察されないほど、エマルションの耐水白化性は良好である。
【0155】
実施例4のエマルションフィルムは、比較例Bのエマルションフィルムおよび実施例5のエマルションフィルムよりも白化が少ない。スキームIに示される構造によると、ブチレンオキシド(BO)単位の存在は、エチレンオキシド単位よりも顕著な立体障害を提供するだけでなく、BO単位はまた、耐水浸透性を高めるように、エマルションフィルムに対してより高い疎水性を提供する。さらに、界面活性剤構造中におけるBO単位の存在は、界面活性剤の臨界ミセル濃度(CMC)を低減させ得、その結果、より小さい粒径を有するエマルションが提供される。そして結果として、より小さい粒度がおそらく、実施例4のエマルションフィルムが実施例5のエマルションフィルムよりも耐水白化性に関してわずかに有利である理由であると理論付けられる。
【0156】
上記の適用試験は、本発明の界面活性剤組成物(実施例1および2)が本発明のエマルションに非常に有用な特性を与えるという結論を導き得る。例えば、はるかに強いCa
2+安定性が、本発明のエマルションフィルムに対して観察され、その結果、著しく向上したコーティング安定性が達成され得る。また、本発明のエマルションフィルムは、低い動的表面張力を示し、これは、高いコーティング速度が適用される種々な用途において非常に有用であり得る。
【0157】
さらに、アルキルエーテルサルフェート乳化剤であるDisponil FES−993よりも低い発泡およびより急速な泡崩壊特性が、本発明の界面活性剤組成物、特に実施例1の界面活性剤組成物に対して達成され得る。
【0158】
実施例4および5のエマルションはまた、比較例Bのエマルションと比較して改善された耐水白化性を証明する。
【0159】
実施例4および5のエマルションを比較例Bのエマルションと比較すると、非イオン性アルキルアルコキシレート1の存在は、特に例えば、急速な湿潤に関して、界面活性剤特性を改良するのに非常に有用である。また、実施例4のエマルションは、粒度制御、発泡、および耐水性に関してより有利であることが観察される。
【0160】
製造コストの観点から、実施例1の界面活性剤組成物は、実施例2の界面活性剤組成物よりも低い。したがって、実施例1の界面活性剤組成物は、Disponil FES−993に代わる非常に競争力のある代替溶液として選択され得る。本明細書の実施例に記載されている異なるエマルションから作製されたエマルションフィルムを耐水白化性試験に供すると、実施例4および実施例5のエマルションフィルムは、比較例Bのエマルションフィルムよりも白化が少ない。実施例5のエマルションフィルムによると、ブチレンオキシド(BO)単位の存在は、エチレンオキシド単位よりも顕著な立体障害を提供するだけでなく、耐水浸透性を高めるように、より高い疎水性も提供する。さらに、乳化剤構造におけるBOの存在は、エマルションの臨界ミセル濃度(CMC)が低下させる場合があり、その結果、より小さい粒径を有するエマルションを調製することが有用である。結果として、おそらく、より小さい粒度が、実施例4のエマルションフィルムが実施例5のエマルションフィルムよりも耐水白化性に関してわずかにより有利である理由である。
(態様)
(請求項1)
少なくとも1つのアルキルアルコキシレートサルフェートアニオン性界面活性剤を含む、界面活性剤組成物。
(請求項2)
水を含む、請求項1に記載の組成物。
(請求項3)
少なくとも1つの第1の非イオン性アルキルアルコキシレート1界面活性剤を含む、請求項1に記載の組成物。
(請求項4)
前記少なくとも1つのアルキルアルコキシレートサルフェートアニオン性界面活性剤が、以下の式(I)を有するアルキルアルコキシレートサルフェートアニオン性界面活性剤であり、
【化1】
式中、R1およびR2は、R1およびR2が一緒になって、約8〜約18個の炭素原子を含有することを条件として、それぞれ独立して、水素または1〜18個の炭素原子を含有する直鎖もしくは分枝鎖アルキル基であり、R3は、水素または1〜約6個の炭素原子を含有するアルキルラジカルであり、R4およびR5は、それぞれ独立して、水素または2〜約6個の炭素原子を含有するアルキルラジカルであり、mを含有する基およびnを含有する基が、位置に関して互いに交換されてもよいことを条件として、mは、0〜10の範囲にある平均値であり、nは、約3〜約40の範囲にある平均であり、zは、約0.5〜約5の範囲にある平均であり、Mは、カチオンである、請求項1に記載の組成物。
(請求項5)
前記少なくとも1つのアルキルアルコキシレートサルフェートアニオン性界面活性剤が、C12〜C14エトキシル化およびブトキシレートを有する第二級アルコールの硫酸塩からなる群から選択される、請求項1に記載の組成物。
(請求項6)
前記少なくとも1つの第1の非イオン性アルキルアルコキシレート1界面活性剤が、以下の式(II)を有するアルキルアルコキシレート非イオン性界面活性剤であり、
【化2】
式中、R1およびR2は、R1およびR2が一緒になって、約8〜約18個の炭素原子を含有することを条件として、それぞれ独立して、水素または1〜18個の炭素原子を含有する直鎖もしくは分枝鎖アルキル基であり、R3は、水素または1〜約6個の炭素原子を含有するアルキルラジカルであり、R4およびR5は、それぞれ独立して、水素または2〜約6個の炭素原子を含有するアルキルラジカルであり、mを含有する基およびnを含有する基が、位置に関して互いに交換されてもよいことを条件として、mは、0〜約10の範囲にある平均値であり、nは、約3〜約40の範囲にある平均であり、zは、約0.5〜約5の範囲にある平均である、請求項1に記載の組成物。
(請求項7)
前記少なくとも1つの第1の非イオン性アルキルアルコキシレート1界面活性剤が、第
二級アルコールC12〜14エトキシレートおよびブトキシレートからなる群から選択される、請求項1に記載の組成物。
(請求項8)
前記少なくとも1つの第2の非イオン性アルキルアルコキシレート2界面活性剤が、以下の式(III)を有するアルキルアルコキシレート非イオン性界面活性剤であり、
R6O−(AO)z−H (III)
式中、R6は、1〜約24個の炭素原子(C6−C24)を含有する直鎖または分岐鎖のアルキル鎖であり、AOは、2〜約4個の炭素原子(C2−C4)を含有するアルキレンオキシド基またはアルキレンオキシド基のブロックであり、zは、1−50の範囲にある、請求項1に記載の組成物。
(請求項9)
前記少なくとも1つの第2の非イオン性アルキルアルコキシレート2界面活性剤がアルキルアルコキシレートである、請求項1に記載の組成物。
(請求項10)
前記少なくとも1つのアルキルアルコキシレートサルフェートアニオン性界面活性剤の濃度が、約10重量パーセント〜約80重量パーセントの範囲にある、請求項1に記載の組成物。
(請求項11)
前記少なくとも1つの第1の非イオン性アルキルアルコキシレート1界面活性剤の濃度が、約0.01重量パーセント〜約40重量パーセントの範囲にある、請求項1に記載の組成物。
(請求項12)
界面活性剤組成物であって、
(a)少なくとも1つのアルキルアルコキシレートサルフェートアニオン性界面活性剤と、
(b)少なくとも1つの第1の非イオン性アルキルアルコキシレート1界面活性剤と、
(c)水と、
(d)任意に、少なくとも1つの第2の非イオン性アルキルアルコキシレート2界面活性剤と、を含む、界面活性剤組成物。
(請求項13)
請求項1に記載の界面活性剤を調製することを含む、プロセス。
(請求項14)
界面活性剤組成物を調製するためのプロセスであって、
(a)少なくとも1つのアルキルアルコキシレートサルフェートアニオン性界面活性剤と、
(b)少なくとも1つの第1の非イオン性アルキルアルコキシレート1界面活性剤と、
(c)水と、
(d)任意に、少なくとも1つの第2の非イオン性アルキルアルコキシレート2界面活性剤と、を混合することを含む、プロセス。
(請求項15)
請求項1に記載の界面活性剤の反応生成物を含むポリマーエマルション組成物、およびエマルション組成物。
(請求項16)
乳化重合プロセスであって、
(I)請求項1に記載の界面活性剤を提供するステップと、
(II)ステップ(I)からの前記界面活性剤を含有するエマルション組成物の乳化重合を行うステップと、を含む、乳化重合プロセス。