特許第6871360号(P6871360)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6871360-界面活性剤組成物 図000017
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6871360
(24)【登録日】2021年4月19日
(45)【発行日】2021年5月12日
(54)【発明の名称】界面活性剤組成物
(51)【国際特許分類】
   B01F 17/42 20060101AFI20210426BHJP
   C08G 65/48 20060101ALI20210426BHJP
【FI】
   B01F17/42
   C08G65/48
【請求項の数】8
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2019-507344(P2019-507344)
(86)(22)【出願日】2016年8月12日
(65)【公表番号】特表2019-531876(P2019-531876A)
(43)【公表日】2019年11月7日
(86)【国際出願番号】CN2016094885
(87)【国際公開番号】WO2018027907
(87)【国際公開日】20180215
【審査請求日】2019年7月29日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】502141050
【氏名又は名称】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【弁理士】
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100173107
【弁理士】
【氏名又は名称】胡田 尚則
(74)【代理人】
【識別番号】100128495
【弁理士】
【氏名又は名称】出野 知
(72)【発明者】
【氏名】チェン・シェン
(72)【発明者】
【氏名】ジアンハイ・ムー
【審査官】 吉岡 沙織
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2003/0114561(US,A1)
【文献】 特表2015−536812(JP,A)
【文献】 特開平11−349611(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01F 17/
C08F
C08G
C09K 3/
C11D
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのアルキルアルコキシレートサルフェートアニオン性界面活性剤を含み、
前記少なくとも1つのアルキルアルコキシレートサルフェートアニオン性界面活性剤が、以下の式(I)を有するアルキルアルコキシレートサルフェートアニオン性界面活性剤であり、
【化1】
式中、RおよびRは、RおよびRが一緒になって、8〜18個の炭素原子を含有することを条件として、それぞれ独立して、水素または1〜18個の炭素原子を含有する直鎖もしくは分枝鎖アルキル基であり、Rは、水素または1〜6個の炭素原子を含有するアルキルラジカルであり、RおよびRは、それぞれ独立して、水素または2〜6個の炭素原子を含有するアルキルラジカルであり、mを含有する基およびnを含有する基が、位置に関して互いに交換されてもよいことを条件として、mは、0〜10の範囲にある平均値であり、nは、3〜40の範囲にある平均であり、zは、0.5〜5の範囲にある平均であり、Mは、カチオンであり、および、
前記少なくとも1つのアルキルアルコキシレートサルフェートアニオン性界面活性剤がブチレンオキシドを含み、
前記少なくとも1つのアルキルアルコキシレートサルフェートアニオン性界面活性剤が、C12〜C14エトキシルレートおよびブトキシレートを有する第二級アルコールの硫酸塩からなる群から選択される、界面活性剤組成物。
【請求項2】
水を含み、少なくとも1つの第1の非イオン性アルキルアルコキシレート1界面活性剤と、任意に、少なくとも1つの第2の非イオン性アルキルアルコキシレート2界面活性剤と、を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記少なくとも1つの第1の非イオン性アルキルアルコキシレート1界面活性剤が、以下の式(II)を有するアルキルアルコキシレート非イオン性界面活性剤であり、
【化2】
式中、RおよびRは、RおよびRが一緒になって、8〜18個の炭素原子を含有することを条件として、それぞれ独立して、水素または1〜18個の炭素原子を含有する直鎖もしくは分枝鎖アルキル基であり、Rは、水素または1〜6個の炭素原子を含有するアルキルラジカルであり、RおよびRは、それぞれ独立して、水素または2〜6個の炭素原子を含有するアルキルラジカルであり、mを含有する基およびnを含有する基が、位置に関して互いに交換されてもよいことを条件として、mは、0〜10の範囲にある平均値であり、nは、3〜40の範囲にある平均であり、zは、0.5〜5の範囲にある平均である、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記少なくとも1つの第1の非イオン性アルキルアルコキシレート1界面活性剤が、第二級アルコールC12〜14エトキシレートおよびブトキシレートからなる群から選択される、請求項2に記載の組成物。
【請求項5】
前記少なくとも1つの第2の非イオン性アルキルアルコキシレート2界面活性剤が、以下の式(III)を有するアルキルアルコキシレート非イオン性界面活性剤であり、
O−(AO)−H (III)
式中、Rは、1〜24個の炭素原子(C〜C24)を含有する直鎖または分岐鎖のアルキル鎖であり、AOは、2〜4個の炭素原子(C2〜C4)を含有するアルキレンオキシド基またはアルキレンオキシド基のブロックであり、zは、1〜50の範囲にある、請求項2に記載の組成物。
【請求項6】
前記少なくとも1つの第2の非イオン性アルキルアルコキシレート2界面活性剤がアルキルアルコキシレートである、請求項2に記載の組成物。
【請求項7】
前記少なくとも1つのアルキルアルコキシレートサルフェートアニオン性界面活性剤の濃度が、10重量パーセント〜80重量パーセントの範囲にあるか、または前記少なくとも1つの第1の非イオン性アルキルアルコキシレート1界面活性剤の濃度が、0.01重量パーセント〜40重量パーセントの範囲にある、請求項2に記載の組成物。
【請求項8】
界面活性剤組成物を調製するためのプロセスであって、
(a)少なくとも1つのアルキルアルコキシレートサルフェートアニオン性界面活性剤と、
(b)少なくとも1つの第1の非イオン性アルキルアルコキシレート1界面活性剤と、
(c)水と、
(d)任意に、少なくとも1つの第2の非イオン性アルキルアルコキシレート2界面活性剤と、を混合することを含み、
前記少なくとも1つのアルキルアルコキシレートサルフェートアニオン性界面活性剤が、以下の式(I)を有するアルキルアルコキシレートサルフェートアニオン性界面活性剤であり、
【化3】
式中、RおよびRは、RおよびRが一緒になって、8〜18個の炭素原子を含有することを条件として、それぞれ独立して、水素または1〜18個の炭素原子を含有する直鎖もしくは分枝鎖アルキル基であり、Rは、水素または1〜6個の炭素原子を含有するアルキルラジカルであり、RおよびRは、それぞれ独立して、水素または2〜6個の炭素原子を含有するアルキルラジカルであり、mを含有する基およびnを含有する基が、位置に関して互いに交換されてもよいことを条件として、mは、0〜10の範囲にある平均値であり、nは、3〜40の範囲にある平均であり、zは、0.5〜5の範囲にある平均であり、Mは、カチオンであり、および、
前記少なくとも1つのアルキルアルコキシレートサルフェートアニオン性界面活性剤がブチレンオキシドを含み、
前記少なくとも1つのアルキルアルコキシレートサルフェートアニオン性界面活性剤が、C12〜C14エトキシルレートおよびブトキシレートを有する第二級アルコールの硫酸塩からなる群から選択される、プロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、界面活性剤組成物に関し、より具体的には、エマルションを形成するための乳化重合に有用な界面活性剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
今日のエマルション製造業者は、様々な界面活性剤組成物(乳化剤)を使用することによってエマルション特性を改善しようとしている。例えば、エマルションを製造するのに使用される望ましい乳化剤は、理想的には、例えば、低発泡、配合安定性、耐水性、機械的安定性、凍結/解凍安定性、および他の有益な特性などのエマルション特性を含む、いくつかの改良をエマルションに与えるべきである。低発泡特性を有する乳化剤は、重合中に生成される泡が少ないほど、実現される製品の生産効率がより高くなるため、乳化重合において有益である。
【0003】
配合安定性は概して、「カルシウム安定性」または「カルシウム耐性」によって表され、これは、CaCl水溶液をエマルションに添加して、エマルションの均一性を調べることを意味する。CaClを添加した後、48時間(hr)以内にエマルション中に凝集または相分離が起こらなければ、配合物は、安定であると考えられる。
【0004】
配合安定性は、例えば、コーティング調製用途における重要な特性である。コーティング調製の間、典型的には、エマルションは、特に経済的なグレードのコーティングを調製するために、高濃度のカルシウム含有充填剤と混合される。そのような実施形態では、例えば、1,000グラム(g)のコーティングを調製する際に、100gのエマルションが、数百グラムの充填剤、例えば、炭酸カルシウム、焼成カオリン、または他のカルシウム含有材料と混合される。例えば、エマルションを調製するとき、中国GB/T20623−2006に記載されている方法は、0.5重量パーセント(重量%)の濃度のCaCl水溶液を使用することを求める。しかしながら、エマルションの製造業者および使用者は、多くの場合、約5重量%〜約10重量%の範囲内など、0.5重量%を超える濃度のCaCl水溶液を使用することが知られている。
【0005】
機械的安定性は、例えば、コーティング調製用途における別の重要な特性である。コーティング調製の間、典型的には、エマルションは、容器または反応器中で機械的に攪拌することによっていくつかの添加剤/充填剤と混合される。そして、コーティング調製のために反応器内でエマルション成分を混合する傾向は、ますます大きなサイズの反応器を使用することである。したがって、エマルションが混合装置の剪断効果に対して機械的安定性を示すことが重要である。例えば、エマルションを調製するとき、「Emulsion for Architectural Coating」と題された中国GB/T20623−2006に記載されている方法が使用され得、この刊行物は、高速分散(例えば、毎分4,000回転[rpm]、30分[分])後に得られるエマルション中に凝集が現れない試験条件を求める。
【0006】
凍結/解凍安定性は、例えば、コーティング調製用途におけるさらなる別の重要な特性である。例えば、コーティング用途において、コーティングエマルションの凍結/解凍安定性は、コーティングエマルションの貯蔵中の温度変動に耐えるエマルションの能力である。例えば、上記の刊行物、中国GB/T20623−2006に記載されている方法が使用され得、この刊行物は、3サイクルの経過後にエマルション中に凝集が存在しない試験条件を求め、1サイクルは、エマルションを−5℃±2℃で18時間貯蔵した後にエマルションを室温(約25℃)で6時間を貯蔵することに等しい。
【0007】
米国特許第8,334,323B2号は、以下の化学式を有する界面活性剤組成物を開示し、
【0008】
【化1】
【0009】
式中、RおよびRは、RおよびRが一緒になって、約8〜18個の炭素原子を含有することを条件として、それぞれ独立して、水素または1〜18個の炭素原子を含有する直鎖もしくは分枝鎖アルキル基であり、Rは、水素または1〜6個の炭素原子を含有するアルキルラジカルであり、RおよびRは、それぞれ独立して、水素または2〜6個の炭素原子を含有するアルキルラジカルであり、mを含有する基およびnを含有する基が、位置に関して互いに交換されてもよいことを条件として、mは、0〜10の範囲にある平均値であり、nは、3〜40の範囲にある平均であり、zは、0.5〜5の範囲にある平均である。
【0010】
上記の米国特許第8,334,323B2号には、非イオン性界面活性剤組成物が記載されているが、この特許は、アニオン性界面活性剤と非イオン性界面活性剤との組み合わせを教示せず、この特許は、そのような非イオン性界面活性剤組成物が乳化重合プロセスに使用され得ることを教示していない。
【0011】
米国特許第6,346,509B1号は、以下の化学構造を有する高級第二級アルコールアルコキシレート化合物の生成方法を開示し、
【0012】
【化2】
【0013】
式中、長鎖オレフィンは、炭素数8〜30個の非環式炭化水素であり、RおよびRは、それぞれ独立して、水素または7〜29個の炭素原子を含有する直鎖もしくは分岐鎖アルキル基であり、Aは、低級アルキレン基を表し、nは、平均1〜50の範囲の数を表し、Bは、水素またはSOMを表し、Mは、カチオンを表す。
【0014】
米国特許第6,346,509B1号は、(ポリ)アルキレングリコールが本質的にエチレングリコールであり、アルキレンオキシドがエチレンオキシドであることを開示している。しかしながら、上記の特許は、エチレンオキシド(EO)とブチレンオキシド(BO)との両方を含む界面活性剤構造(0.5<m<5)、アニオン性界面活性剤と非イオン性界面活性剤との組み合わせ、または乳化重合プロセスにおける組み合わされた界面活性剤の使用を開示していない。
【0015】
乳化重合に有用であり、繊維加工、洗浄、農薬などのような他の用途にも有用な高性能の環境に優しいアニオン性界面活性剤を調整することが業界において利点であろう。
【発明の概要】
【0016】
一実施形態では、本発明は、乳化重合に有用な界面活性剤組成物を対象にする。界面活性剤組成物は、少なくとも1つのアルキルアルコキシレートサルフェートアニオン性界面活性剤を含む。
【0017】
別の実施形態では、本発明は、(a)少なくとも1つのアルキルアルコキシレートサルフェートアニオン性界面活性剤、(b)少なくとも1つの第1の非イオン性アルキルアルコキシレート1界面活性剤、および(c)水の組み合わせを含む。
【0018】
本発明の他の実施形態は、界面活性剤組成物を調製するためのプロセス、および界面活性剤組成物を用いた乳化重合プロセスを含む。
【0019】
本発明では、環境に優しい第二級アルコールアルコキシレート非イオン性界面活性剤は、標準的なChemithon硫酸化プロセスを介してアニオン性硫酸塩界面活性剤に変換される。次いで、得られた本発明の新規アニオン性硫酸塩界面活性剤がその非イオン性前駆体とブレンドされる。上記の2つの界面活性剤のブレンドは、改良された界面活性剤特性を示す。例えば、本発明の界面活性剤組成物は、表面張力、臨界ミセル濃度(CMC)、発泡プロファイル、および湿潤性能を含むいくつかの有益な特性を有する。概して、溶液の表面張力を水と比較して、溶液が表面をどれだけうまく「湿らす」ことができるかを決定する。表面張力が低いほど、溶液は、表面を急速に「湿らす」。本明細書におけるCMCは、平衡表面張力の低下を達成するのに十分なミセルを形成するために必要とされる最低の界面活性剤濃度を意味する。基本的に、低いCMCを有する界面活性剤は、乳化重合用途においてより有効である。本発明の界面活性剤組成物の表面張力、CMC、泡プロファイル、および湿潤性能特性に関して、「低い」は、BASFから入手可能な市販の界面活性剤製品である商品Disponil(商標)FES−993のベンチマークと比べたものである。
【0020】
本発明の新規アニオン性界面活性剤組成物は、乳化重合において有利に使用される。本発明の硫酸化界面活性剤と重合したスチレン−ブチルアクリレート(St−BA)エマルションは、既知の界面活性剤、例えば、BASF Disponil FES 993と重合したエマルションと比較して、優れたCa2+安定性、低い動的表面張力特性、および改善された耐水性を示す。下流のエマルション用途における多数の無機/有機添加剤/充填剤が、ラテックス粒子分散性およびエマルション安定性に影響を及ぼし得るため、向上されたCa2+安定性は、配合安定性および貯蔵安定性の改善と見なされる。特定の用途(例えば、接着剤用途)では、低い動的表面張力がより重要な役割を果たす基材上での急速な湿潤または吸着が予想される。さらに、水の吸着は、良好なコーティング外観および良好なコーティング特性を維持することに影響を与えるため、良好な耐水性は、建築用コーティングおよび木材コーティングの両方において常に受け入れられる。
【0021】
乳化重合で使用したときに、改良された特性を提供する硫酸化界面活性剤組成物を調製することが望ましい。より環境に優しい界面活性剤組成物を有利に提供する硫酸化界面活性剤組成物、および配合安定性、低発泡、急速な湿潤特性などの向上された特性を有する界面活性剤組成物を調製することもまた望ましい。
【図面の簡単な説明】
【0022】
本発明を説明する目的のために、図面は、現在好ましい本発明の形態を示す。したがって、以下の図面は、本発明の非限定的な実施形態を例示している。
【0023】
図1】本発明の試料と比較例の試料との間のエマルションの動的表面張力特性の比較を示すグラフ図である。図1は、実施例4(実施例1の界面活性剤組成物を使用する)および実施例5(実施例2の界面活性剤組成物を使用する)のスチレンアクリレートエマルションが、比較例B(比較例Aの界面活性剤を使用する)より低いDSTを有することを示す。一般に、図1に記載される結果は、界面活性剤組成物の表面張力の一般的な傾向に従い、すなわち、実施例5の表面張力は、実施例4の表面張力よりも小さく、それは次に、比較例Bの表面張力よりも小さい。
図2】本発明の試料と比較例の試料との間のエマルションの泡高特性の比較を示すグラフ図である。図2は、実施例4(実施例1の界面活性剤組成物を使用する)の初期泡高が他の実施例よりわずかに低く、実施例4の発泡崩壊が比較的急速、すなわち、最初の3分で生じることを示す。実施例5(実施例2の界面活性剤組成物を使用する)の泡プロファイルは、比較例B(比較例Aの界面活性剤を使用する)の泡プロファイルと同様である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本明細書における「エマルション」、「エマルション溶液」、「エマルション配合物」、または「エマルション組成物」は、界面活性剤組成物によって乳化され、水性系に分散された小粒子(例えば、通常<500nm)の形態のコポリマーを互換的に意味する。
【0025】
本明細書における「泡」値または「発泡」値は、ロス−マイルス泡試験方法によって決定され、FES−993製品のベンチマーク値と比較される値を意味する。
【0026】
本明細書における「配合安定性」は、概して、カルシウム安定性またはカルシウム耐性によって表される安定性の測定を意味する。
【0027】
本明細書における「機械的安定性」は、コーティング調製中にエマルションによって示される剪断効果に基づく安定性の測定を意味する。
【0028】
本明細書における「凍結/解凍安定性」は、エマルションの貯蔵中の温度変動に対する、コーティング用などのエマルションの耐性に基づく安定性の測定を意味する。
【0029】
本明細書における「耐水性」は、乾燥エマルションフィルムで被覆された基材を水中に一定期間浸漬し、水が乾燥エマルションフィルムと基材との間に浸透した後の、エマルションから調製されたフィルムの水白化の測定によって示される。水白化は、粒子間の隙間に捕捉されている界面活性剤および塩が水で膨潤して、ポリマーとは異なる屈折率を示し、光を散乱させるのに十分大きくなるために生じる。その結果、白化効果が少ないほど、耐水白化性は、良好である。
【0030】
その最も広い範囲において、本発明は、少なくとも1つのアルキルアルコキシレートサルフェートアニオン性界面活性剤を含む新規界面活性剤組成物を対象にする。一実施形態では、少なくとも1つのアルキルアルコキシレートサルフェートアニオン性界面活性剤は、以下の式を有する界面活性剤であり得る。
【0031】
【化3】
【0032】
構造(I)の式中、RおよびRは、RおよびRが一緒になって、約8〜約18個の炭素原子を含有することを条件として、それぞれ独立して、水素または1〜約18個の炭素原子を含有する直鎖もしくは分枝鎖アルキル基であり、Rは、水素または1〜約6個の炭素原子を含有するアルキルラジカルであり、RおよびRは、それぞれ独立して、水素または2〜約6個の炭素原子を含有するアルキルラジカルであり、mを含有する基およびnを含有する基が、位置に関して互いに交換されてもよいことを条件として、mは、0〜約10の範囲にある平均値であり、nは、約3〜約40の範囲にある平均であり、zは、約0.5〜約5の範囲にある平均であり、Mは、カチオンである。
【0033】
少なくとも1つのアルキルアルコキシレートサルフェートアニオン性界面活性剤の例としては、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、およびそれらの混合物のうちの1つ以上が挙げられ得る。
【0034】
本発明のアルキルアルコキシレートサルフェートアニオン性界面活性剤の濃度は、最終界面活性剤組成物中の成分の総重量に基づいて、一実施形態では、概して、10重量%〜約80重量%、別の実施形態では、約20重量%〜約70重量%、さらに別の実施形態では、約30重量%〜約60重量%の範囲にあってもよい。
【0035】
本発明の一実施形態では、アルキルアルコキシレートサルフェートアニオン性界面活性剤は、非イオン性アルキルアルコキシレート界面活性剤(アルキルアルコキシレートサルフェートアニオン性界面活性剤の前駆体)を硫酸化プロセスに供した結果得られる生成物であり得る。例えば、非イオン性アルキルアルコキシレート界面活性剤前駆体は、既知の非イオン性界面活性剤から選択され得る。例えば、非イオン性アルキルアルコキシレート界面活性剤前駆体は、The Dow Chemical Companyから市販されている界面活性剤である、ECOSURF(商標)の商品名で入手可能な界面活性剤を含み得る。ECOSURF(商標)は、The Dow Chemical Companyの商標である。
【0036】
硫酸化プロセスのために選択された非イオン性アルキルアルコキシレート界面活性剤前駆体は、例えば、他の既知の界面活性剤と比較して優れた湿潤性能および並外れた洗浄性能などのいくつかの特性を有することがある。界面活性剤前駆体はまた、OECD301Fによって容易に生分解性であり得、したがって、受け入れられる環境プロファイルを有する。
【0037】
本発明の代替の実施形態では、界面活性剤組成物は、(a)少なくとも1つのアルキルアルコキシレートサルフェートアニオン性界面活性剤、(b)少なくとも1つの第1の非イオン性アルキルアルコキシレート1界面活性剤、および(c)水の組み合わせを含み得る。
【0038】
本発明の少なくとも1つの第1の非イオン性アルキルアルコキシレート1界面活性剤である成分(b)は、以下の式を有する界面活性剤を含んでもよい。
【0039】
【化4】
【0040】
構造(II)の式中、RおよびRは、RおよびRが一緒になって、約8〜約18個の炭素原子を含有することを条件として、それぞれ独立して、水素または1〜約18個の炭素原子を含有する直鎖もしくは分枝鎖アルキル基であり、Rは、水素または1〜約6個の炭素原子を含有するアルキルラジカルであり、RおよびRは、それぞれ独立して、水素または2〜約6個の炭素原子を含有するアルキルラジカルであり、mを含有する基およびnを含有する基が、位置に関して互いに交換されてもよいことを条件として、mは、0〜約10の範囲にある平均値であり、nは、約3〜約40の範囲にある平均であり、zは、約0.5〜約5の範囲にある平均である。
【0041】
一実施形態では、上記の第1の非イオン性アルキルアルコキシレート1界面活性剤である成分(b)は、例えば、非イオン性界面活性剤を硫酸化プロセスに供する前の、上記の非イオン性アルキルアルコキシレート界面活性剤(すなわち、アルキルアルコキシレート硫酸化アニオン性界面活性剤の前駆体)であり得る。例えば、単独でまたは他の非イオン性界面活性剤と組み合わせて使用されるECOSURF(商標)は、成分(b)として有用な非イオン性アルキルアルコキシレート界面活性剤であり得る。本発明において有用な成分(b)の他の例としては、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、およびそれらの混合物のうちの1つ以上が挙げられ得る。
【0042】
本発明の第1の非イオン性アルキルアルコキシレート1である成分(b)の濃度は、最終界面活性剤組成物中の成分の総重量に基づいて、一実施形態では、概して、0重量%〜約40重量%、別の実施形態では、約0.01重量%〜約40重量%、さらに別の実施形態では、約0.1重量%〜約30重量%、さらに別の実施形態では、約1重量%〜約20重量%の範囲内にあってもよい。
【0043】
第1の非イオン性アルキルアルコキシレート1である成分(b)が界面活性剤組成物に与える有益な特性のいくつかには、例えば、優れた湿潤特性、低発泡特性、および低いCMCが含まれる。
【0044】
水道水、蒸留水、脱イオン水などを含むあらゆる種類の水である成分(c)が、本発明の界面活性剤組成物において使用され得る。
【0045】
エマルション組成物に添加された水である構成成分(c)の濃度は、乳化剤の成分の総含有量における差を補い得るのに十分である。例えば、水は、最終界面活性剤組成物の成分の総重量に基づいて、一実施形態では、概して、0重量%〜約80重量%、別の実施形態では、約20重量%〜約80重量%、さらに別の実施形態では、約25重量%〜約75重量%、さらに別の実施形態では、約40重量%〜約70重量%の範囲内であり得る。
【0046】
水である成分(c)は、エマルション製造プロセス中の容易な取り扱いのための適切な流動性を提供するために界面活性剤組成物中に使用されるのが好ましい。
【0047】
本発明の界面活性剤組成物はまた、成分(d)として1つ以上の任意の成分を含んでもよい。例えば、任意の成分(d)は、以下の式を有する非イオン性界面活性剤を含む少なくとも1つの第2の非イオン性アルキルアルコキシレート2界面活性剤であり得、
O−(AO)−H (III)
式中、Rは、1〜約24個の炭素原子を含有する直鎖または分岐鎖のアルキル鎖(C6−C24)であり、AOは、2〜約4個の炭素原子を含有するアルキレンオキシド基またはアルキレンオキシド基のブロック(C2−C4)であり、zは、1〜約50の範囲の数である。任意の成分(d)のいくつかの例としては、例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、およびそれらの混合物のうちの1つ以上が挙げられ得る。
【0048】
本発明の任意の第2の非イオン性アルキルアルコキシレート2である成分(d)の濃度は、使用される場合、最終界面活性剤組成物中の成分の総重量に基づき、一実施形態では、概して、0重量%〜約80重量%、別の実施形態では、約0.01重量%〜約75重量%、さらに別の実施形態では、約0.1重量%〜約70重量%の範囲であり得る。
【0049】
第2の非イオン性アルキルアルコキシレート2である成分(d)がエマルション組成物に与える得る有益な特性のいくつかには、例えば、エマルション安定性のさらなる改善が含まれ得る。
【0050】
第2の非イオン性アルキルアルコキシレート2界面活性剤を含むまたは含まない他の任意の添加剤、例えば、他の非イオン性およびアニオン性界面活性剤は、第2の非イオン性アルキルアルコキシレート2界面活性剤に関して上述された濃度で本発明の界面活性剤組成物において使用されてもよい。
【0051】
広い実施態様では、本発明のプロセスは、少なくとも1つのアルキルアルコキシレートサルフェートアニオン性界面活性剤の硫酸化を含む。本発明の界面活性剤組成物を調製するために使用されるプロセスおよび装置の種類は、従来の硫酸化反応器または当該技術分野で知られている容器中での少なくとも1つのアルキルアルコキシレートサルフェートアニオン性界面活性剤の硫酸化を含む。例えば、本発明の界面活性剤組成物の調製は、少なくとも1つのアルキルアルコキシレート非イオン性界面活性剤を既知の装置で、任意に、任意の成分および/または任意の他の望ましい添加剤と組み合わせて硫酸化することにより達成され得る。本発明の界面活性剤組成の調製および/またはそのステップのいずれかは、バッチまたは連続プロセスであってもよい。
【0052】
界面活性剤組成物は、有効な界面活性剤組成物の調製を可能にする温度で、容器内で調製される。好ましい実施形態では、界面活性剤組成物を調製するプロセスは、硫酸化、NaOH水溶液を用いることによる中和、および水による希釈を含む連続プロセスである。概して、中和および希釈後、最終界面活性剤組成物の温度は、約40℃になり得る。
【0053】
本発明の代替の態様では、本発明のプロセスは、硫酸化、または(a)少なくとも1つのアルキルアルコキシレートサルフェートアニオン性界面活性剤、(b)少なくとも1つの第1の非イオン性アルキルアルコキシレート1界面活性剤、および(c)少なくとも水、ならびに必要に応じて、任意の成分(d)の組み合わせを一緒に混合(ブレンド)して、界面活性剤組成物を形成することを含む。
【0054】
1つの好ましい実施形態では、本発明の界面活性剤組成物を調製する一般的なプロセスは、例えば、以下のステップを含む。
【0055】
ステップ(1):非イオン性界面活性剤前駆体を、まず、三酸化硫黄を介したChemithon硫酸化プロセスなどの硫酸化プロセスによって処理して、アニオン性界面活性剤を形成してもよい。先行技術で周知のChemihton硫酸化プロセスは、例えば、このプロセスがより良好な不純物プロファイル制御を提供するため、およびこのプロセスがHCl副生成物を生成しないため、などを含むいくつかの理由で本発明の好ましい実施形態において使用されてもよい。
【0056】
ステップ(2):ステップ(1)の上記の硫酸化プロセスの後、得られた界面活性剤をNaOH(32重量%の水溶液)でpH約7〜約9に迅速に中和して、硫酸塩界面活性剤の塩を形成してもよく、その後、硫酸塩界面活性剤を30重量%の固形分に希釈してもよい。
【0057】
ステップ(3):ステップ(2)からの硫酸化界面活性剤を任意の非イオン性界面活性剤(d)と混合して、30重量%の固形分で本発明の最終界面活性剤組成物を形成してもよい。界面活性剤組成物中の非イオン性界面活性剤前駆体含有量は、非イオン性界面活性剤前駆体/SOのモル比を変えることによって、プロセスの上記の硫酸化ステップ(1)において制御され得る。
【0058】
本発明の上記のプロセスにより調製される界面活性剤組成物は、いくつかの予想外、かつ独特の特性を示し、界面活性剤組成物のいくつかの改良点が、乳化重合組成物に与えられる。例えば、界面活性剤組成物の重要な特性は、上述のように、改善されたCa2+安定性、低発泡、急速な泡崩壊、低い表面張力特性、および改善された耐水白化性性能を含み得る。
【0059】
概して、界面活性剤組成物のCa2+安定性能特性は、CaCl水溶液(aq.soln)の異なる濃度に依存し得る。本発明の例示として、界面活性剤組成物のCa2+安定性能特性は、一実施形態では、界面活性剤溶液の1重量%の水溶液中、25重量%超のCaClであり得、別の実施形態では、界面活性剤溶液の1重量%の水溶液中、約22重量%〜24重量%の間のCaClであり得る。界面活性剤組成物のCa2+安定性能特性は、GB/T−7381−2010に記載されている手順によって測定されてもよい。
【0060】
本発明の界面活性剤組成物(乳化剤)の別の有益な特性は、GB/T−7462−94に記載されているロス−マイルス泡高試験を用いて決定される界面活性剤組成物の低発泡特性および急速泡崩壊特性である。ロス−マイルス泡試験方法は、0分〜5分の泡高を記録する。低い泡は、t=0分における泡の初期泡高を意味する。界面活性剤組成物は、一般に、一実施形態における0.2重量%の水溶液の界面活性剤濃度に対して、一実施形態では、80ミリメートル(mm)未満、別の実施形態では、25mm未満、さらに別の実施形態では、20mm未満、さらに別の実施形態では、15mm未満の範囲の最終ロス−マイルス泡高値を有する。「急速泡崩壊」は、例えば、t=5分で80mm未満の低い泡を含み、これは界面活性剤組成物の急速泡崩壊を示す。
【0061】
乳化剤が示す別の有益な特性は、低い表面張力である。概して、乳化剤の低い表面張力は、一実施形態では、38mN/m未満であり得、別の実施形態では、約32〜約35mN/mであり得る。乳化剤の表面張力は、GB/T−5549−2010の手順に従って測定され得る。表面張力値は、濃度の対数に対してプロットされてもよく、臨界ミセル濃度(CMC)は、プロットの折点から決定され得る。
【0062】
界面活性剤組成物が示すさらに別の特性は、界面活性剤の改善された湿潤能力である。概して、改善された湿潤時間は、一実施形態では、0.5重量%の水溶液の界面活性剤濃度で60秒(s)未満であり得、別の実施形態では、0.5重量%の界面活性剤濃度で約20秒〜約40秒であり得る。界面活性剤組成物の湿潤性能は、GB/T11983−2008に記載されている手順を使用することによって決定され得る。
【0063】
界面活性剤組成物が示すさらに別の特性は、界面活性剤組成物の耐アルカリ性特性である。概して、界面活性剤組成物の耐アルカリ性は、一実施形態では、界面活性剤溶液、1重量%の水溶液中、約7.0重量%超のNaOHであり得、別の実施形態では、界面活性剤溶液、1重量%の水溶液中、6.0重量%〜7.0重量%のNaOHであり得る。界面活性剤組成物の耐アルカリ性は、GB/T5556−2003に記載されている手順を使用することによって決定され得る。
【0064】
界面活性剤組成物によって示される有益な特性のために、本発明の界面活性剤組成物は、乳化重合用途に有利に使用される。界面活性剤組成物は、例えば、改善されたCa2+安定性、低発泡、および急速な発崩壊、急速な湿潤、ならびに低い表面張力特性など、上述のようなその特性のうちの少なくともいくつかを乳化重合に与え得る。上記のように、本発明のプロセスは、高性能の環境に優しい界面活性剤組成物の調製を含み、それは、次に、乳化重合に使用され得る。界面活性剤組成物が有用である他の用途には、例えば、織物加工、洗浄、農薬などが含まれてもよい。
【0065】
本発明の界面活性剤組成物は、乳化重合用途に有用である第二級アルコールエトキシレート−ブトキシレートの誘導体を含む界面活性剤組成物を使用する。本発明の組成物は、有利なことに、アルキルフェノールエトキシレート(APE)界面活性剤を含まず、すなわち、本発明の組成物は、APEを有しない界面活性剤である。一実施形態では、界面活性剤組成物は、様々なモノマーレシピの乳化重合(EP)に使用され得る。例えば、重合する生成物は、スチレン−アクリル酸ブチル(「St−BA」)であり得る。重合され得る他のモノマーとしては、例えば、スチレン−ブタジエンなど、およびそれらの混合物が挙げられる。
【0066】
乳化重合を実施するためのプロセスは、以下の一般的なステップを含む。
【0067】
ステップ(1):界面活性剤組成物を、重炭酸ナトリウム、水、および上記のモノマーで、混合物を室温で約30分間撹拌しながらフラスコ内で予備乳化する。
【0068】
ステップ(2):界面活性剤組成物の第2の部分および水を反応器に加え、約80℃〜約90℃の範囲の温度に加熱し始める。
【0069】
ステップ(3):過硫酸アンモニウムの第1の部分を反応器に加え、次に、過硫酸アンモニウムの第2の部分と共に予備エマルションの3時間かけた滴下を開始する。
【0070】
ステップ(4):ステップ(3)の添加後、乳化重合が行われるように、混合物を同じ温度で1時間保持する。
【0071】
ステップ(5):ステップ(4)からの乳化重合が65℃に冷却したら、re−dox開始剤を添加して、エマルション中に残存する残留モノマーを30分間かけてさらに消費する。
【0072】
ステップ(6):エマルションを40℃に冷却する。
【0073】
ステップ(7):アンモニア水を用いてエマルションのpHを約7〜約8のpHに調整する。
【0074】
ステップ(8):エマルションを濾過して、ポリマーエマルションを得る。
【0075】
上記のように、本発明のプロセスによって調製される界面活性剤組成物は、いくつかの予想外、かつ独特の特性を示し、界面活性剤組成物のいくつかの改良点が、乳化重合組成物に与えられ得る。例えば、得られる乳化重合生成物の特性には、低い動的表面張力、低発泡、および増大したCa2+安定性が含まれ得る。
【0076】
本発明の例示として、本発明の界面活性剤組成物で調製されたエマルションのCa2+安定性は、一実施形態では、25重量%超のCaCl(10重量%の水溶液)であり得、別の実施形態では、35重量%超のCaCl(10重量%の水溶液)であり得る。エマルションのCa2+安定性能特性は、GB/T−20623−2006に記載されている手順によって測定されてもよい。
【0077】
本発明の界面活性剤組成物を有するエマルションの別の有益な特性は、低い動的表面張力である。動的表面張力は、一実施形態では、1バブル/秒で約48.5mN/m〜10バブル/秒で約54.0mN/mであり、別の実施例では、1バブル/秒で約46.5mN/m〜10バブル/秒で約51.5mN/mの範囲である。エマルションの動的表面張力は、最大泡圧試験法によって測定されてもよい。
【0078】
本発明の界面活性剤組成物を有するエマルションのもう1つの有益な特性は、改善された耐水白化性である。Lab明度は、浸漬部分がちょうど空気に曝された直後に測定した。Lが小さいほど、白化効果が少ないことを示し、耐水白化性が良好であることを示す。Labは、色の明るさを表す(L=0は、黒、L=100は、拡散白を表す)。一実施形態では、L値は、30未満であり、別の実施形態では、24未満である。
【実施例】
【0079】
以下の実施例は、さらに本発明をより詳細に説明するが、その範囲を限定すると解釈されない。
【0080】
以下の原料または成分は、実施例および比較例に記載されているエマルションを調製するために使用される。
【0081】
以下の実施例では、米国特許第8,334,323B2号の実施例1に記載されているブチレンオキシドキャップされた直鎖第二級アルコールアルコキシレートが、非イオン性界面活性剤成分として使用される。
【0082】
Disponil(商標)FES−993は、約20重量%の非イオン性界面活性剤を含有する界面活性剤組成物であり、BASFから市販されている。Disponil FES−993は、BASFから受け取ったときに「そのまま」使用される。
【0083】
硫黄は、Sinopec Shanghaiから購入され、受け取ったときに「そのまま」使用される。硫黄は、既知の方法で、実験室で二酸化硫黄に、その後、三酸化硫黄に変換される。
【0084】
NaOH水溶液(32重量%の水溶液)は、市場で購入され、受け取ったときに「そのまま」使用される。
【0085】
界面活性剤組成物を調製するための一般的手順
実施例で使用される界面活性剤組成物は、以下の一般的手順に従って調製される。
【0086】
ステップ(1):まず、非イオン性界面活性剤前駆体(例えば、二級アルコールエトキシレートおよびブトキシレート)を、三酸化硫黄を介したChemithon硫酸化プロセスなどの硫酸化プロセスによって処理して、アニオン性界面活性剤を形成してもよい。Chemithon硫酸化プロセスは、より良好な不純物プロファイル制御を提供し、HCl副生成物がそのようなプロセスで生成されないため、好ましい。
【0087】
Chemithonプロセスによる硫酸化は、業界で周知の連続プロセスである。本プロセスの反応速度は、供給比、カラム長、カラム設計(三酸化硫黄と非イオン性前駆体との最大接触面を提供するため)などに依存する場合がある。Chemithonプロセスのためのそのような変数は、当業者によって容易に決定され得る。
【0088】
ステップ(2):次いで、ステップ(1)の上記の硫酸化プロセスから得られるアニオン性界面活性剤を、NaOH(32重量%の水溶液)を使用して約7〜約9のpHに迅速に中和して、硫酸塩界面活性剤の塩を形成し得る。
【0089】
ステップ(3):ステップ(2)からの硫酸塩界面活性剤の塩を水で希釈して、本発明の最終界面活性剤組成物を形成してもよい。
【0090】
一般的な硫酸化プロセス、上記の一般的プロセスのステップ(1)を実施する際、予熱された非イオン性界面活性剤(約40℃に予熱された)をまず、連続薄膜反応器内で、空気希釈液体三酸化硫黄と接触させる。それは、比較的速い発熱反応である。
【0091】
三酸化硫黄による典型的な硫酸化プロセスは、以下の硫酸化スキーム(I)に示されるように説明され得る。
【0092】
【化5】
【0093】
非イオン性界面活性剤に対する三酸化硫黄(SO)のモル比は、非イオン性界面活性剤の流量を調節することによって約0.80〜約1.02の範囲に維持され得る。概して、非イオン性界面活性剤の流速は、一実施形態では、1kg/時の硫黄消費を基準にして、約15キログラム/時(kg/時)〜約30kg/時であり得、別の実施形態では、1kg/時の硫黄消費を基準にして、約20kg/時〜約25kg/時までであり得る。用途の必要性に応じて、最終生成物中に特定の比率の非イオン性界面活性剤を維持するために、上記のモル比の範囲が設定される。高品質のアルキルアルコキシレートサルフェートを生成し、特に、例えば、望ましくない1,4−ジオキサンの形成を最小限に抑えるために、非イオン性界面活性剤に対するSOのモル比の正確な制御が実施される。粗硫酸エステル酸を約55℃で集める。
【0094】
上記の一般的プロセスの中和プロセスステップであるステップ(2)を実施する際、NaOHまたはNHOHを使用して、粗硫酸エステル酸の迅速な中和を実施する。迅速な中和は、暗色を避け、かつ良好な不純物プロファイルを保つために使用される。
【0095】
実施例および比較例では、以下の標準測定、分析機器、および方法が使用される。
【0096】
界面活性剤試験方法
(a)活性成分
乳化剤の活性成分は、GB/T−5173−1995に記載されている手順に従って滴定方法によって決定されてもよく、ここで、アニオン性活性含有物の滴定は、酸性混合物からなる指示薬の存在下で標準容積カチオン溶液を用いて実施される。
【0097】
(b)表面張力およびCMCの測定
百万につき4000部(ppm)での界面活性剤の水溶液は、母液として調製されてもよく、1ppmまでのより低濃度の一連の溶液試料は、母液を希釈することによって調製されてもよい。各試料溶液の表面張力は、GB/T−5549−2010に記載されている手順に従って測定され得る。表面張力値は、濃度に対してプロットされ得、臨界ミセル濃度(CMC)は、プロットの破断点から決定され得る。
【0098】
(c)ロス−マイルス泡高試験
界面活性剤組成物の発泡特性は、ロス−マイルス泡高試験を用いて、まず、0.2重量%の界面活性剤水溶液300ミリリットル(mL)を調製し、次に、GB/T−7462−94に記載されている手順に従って溶液の泡高を測定ことによって決定されてもよい。
【0099】
(d)Draves湿潤測定
界面活性剤組成物の耐湿性は、まず、0.5重量%の界面活性剤水溶液を1リットル(L)調製することによって、Draves湿潤測定を用いて決定されてもよい。いくつかの綿布を同じサイズに切ってもよい。次に、GB/T−11983−2008に記載されている手順に従って、界面活性剤溶液中での綿布への湿潤時間が記録される。
【0100】
(e)界面活性剤のCa2+安定性試験
界面活性剤組成物のCa2+安定性は、GB/T−7381−2010に記載されているように界面活性剤のCa2+安定性試験の手順を用いて決定されてもよい。
【0101】
(f)耐アルカリ性試験
界面活性剤組成物の耐アルカリ性特性は、GB/T−5556−2003に記載されているような耐アルカリ性試験の手順を用いて決定されてもよい。
【0102】
(g)粘度測定
界面活性剤組成物の粘度は、GB/T−5561−1994に記載されているような粘度測定の手順を用いて、室温(20℃)、スピンドル#62、および60rpmで決定されてもよい。
【0103】
実施例1
この実施例1の界面活性剤組成物は、以下の手順に従って調製した。
予熱した(約40℃)非イオン界面活性剤前駆体(第二級アルコールエトキシレートおよびブトキシレート)を実験室規模の薄膜流下反応器にゆっくり注いだ。非イオン性界面活性剤前駆体に対する三酸化硫黄(SO)のモル比を、実験室規模の調製において、非イオン性前駆体の流速を約3.0kg/時に微調整することによって、約1.01/1.00に安定に保った。連続硫酸化プロセスに続いて、硫酸エステル酸の回収後、NaOH(32重量%の水溶液)によるバッチ中和を、機械的攪拌を用いて行った。
【0104】
上記の手順に従って界面活性剤組成物を調製した後、界面活性剤組成物の特性を上記の方法を用いて測定した。特性測定の結果を表Iに記載する。
【0105】
実施例2
この実施例2では、約3.6−3.7kg/時の非イオン性前駆体の流量を微調整することによって非イオン性界面活性剤に対するSOのモル比を約0.81/1.00に安定に保ったことを除いて、実施例1と同じ手順に従った。
【0106】
比較例A
この比較例Aでは、Disponil FES−993を非イオン性界面活性剤前駆体として使用した。Disponil FES−993は、BASFから入手し、受け取った「そのまま」の状態で使用した。
【0107】
構造分析は、全界面活性剤のその固形分重量の約20重量%の非イオン性界面活性剤を含有する界面活性剤組成物としてDisponil FES−993を同定する。このため、上記の実施例2を、成分(a)/成分(b)の重量比を8/2として調製した。
【0108】
【表I】
【0109】
上記の表Iにおいて、本発明の界面活性剤組成物(実施例1および2)は、Disponil FES−993(比較例A)と比較すると、以下の特性を含むいくつかの非常に有用な特性を示した。
【0110】
(1)実施例1および2は、Disponil FES−993(比較例A)よりもはるかに低い表面張力を有する。特に、実施例2の低い表面張力は34mN/mである。
【0111】
(2)実施例1および2は、Disponil FES−993(比較例A)よりも低いCMCを有する。より低いCMCは、重合反応を制御するのに非常に有用であり得る。例えば、より低いCMCでより小さなポリマー粒子サイズを得ることができる。
【0112】
(3)泡特性に関して、実施例2の界面活性剤組成物は、最低の初期泡高を示し、実施例1および2は、Disponil FES−993(比較例A)よりもはるかに急速な、非常に速い泡崩壊を有する。
【0113】
(4)実施例2の湿潤性能は、他の界面活性剤組成物より著しく良好であることが認められる。低泡湿潤剤である非イオン性アルキルアルコキシレート1の存在が湿潤性能に寄与すると理論付けられる。良好な湿潤性能は、下流のエマルション用途において有利であり、価値のある特性となり得る。
【0114】
(5)実施例1および2のCa2+安定性は、Disponil FES−993(比較例A)に匹敵する。
【0115】
結論として、実施例2(本発明の界面活性剤)は概して、低い表面張力、低いCMC、急速な湿潤、低発泡、および急速な発崩壊などを含む、非常に有用で有利な界面活性剤特性を証明する。上記の特性のすべてが、より良好な重合安定性、より良好なエマルション安定性、およびより少ない用途欠陥を有する、得られたエマルションを提供するのに寄与するであろう。
【0116】
実施例4および5、ならびに比較例B−乳化重合
パートA:エマルションの基本配合成分
スチレンブチルアクリレートエマルションを調製するために実施例で使用される基本配合物は、(a)次のモノマー:ブチルアクリレート、スチレン、アクリルアミド、およびアクリル酸、(b)過硫酸アンモニウムなどの開始剤、(c)0.834phmのアニオン性界面活性剤、を含む。得られたエマルションのガラス転移温度(Tg)は、22℃である。
【0117】
パートB:エマルションの調製
スチレン−ブチルアクリレートエマルションの基本的重合手順
上記のパートAに記載されるエマルションの重合プロセスは、以下のステップを含む。
【0118】
ステップ(1):フラスコ中で、実施例1および2、ならびに比較例Aからの界面活性剤組成物を、重炭酸ナトリウム、水、および上述のモノマーで予備乳化し、混合物を室温で約30分間連続的に攪拌することによって、化合物を混合する。
【0119】
ステップ(2):界面活性剤組成物の第2の部分および水を反応器に加え、反応器内容物を約80℃〜約90℃の範囲の温度で加熱する。
【0120】
ステップ(3):過硫酸アンモニウムの第1の部分を反応器に加え、次に、過硫酸アンモニウムの第2の部分と共に予備エマルションを3時間かけて滴下する。
【0121】
ステップ(4):ステップ(3)の添加後、温度を約80℃〜約90℃の範囲内に1時間維持し、その後、混合物の乳化重合を行う。
【0122】
ステップ(5):エマルションが上記のステップ(4)で形成されたら、エマルションを65℃の温度に冷却し、次いで、re−dox開始剤を添加して、いかなる残留モノマーをも消費し、この反応混合物を攪拌しながら30分間維持する。
【0123】
ステップ(6):ステップ(5)から得られたエマルションを40℃に冷却し、アンモニア水をエマルションに添加することによりエマルションのpHを調整し、得られたエマルションを濾過して、濾過後にポリマーエマルションを得る。
【0124】
表IIは、実施例4および5、ならびに比較例Bに従って調製された3つのエマルションを記載する。
【0125】
【表II】
【0126】
エマルションの性能を評価するための一般的なプロセス
上記のように調製されたエマルションを、以下の試験を用いてエマルションの性能特性を決定するために評価し、得られたエマルションの特性を表IIIに示す。
【0127】
Ca2+安定性試験
CaCl水溶液(5重量%または10重量%の濃度)を20mLのエマルションに添加し、手動で混合した後、CaCl−含有エマルションを室温で48時間保った。エマルション中に凝集または不均一性が少しでも見られる場合、Ca2+安定性試験での不合格が示される。試験方法は、中国GB/T20623−2006を参照するが、より高濃度のCaCl水溶液を使用する。
【0128】
乳化重合における重合安定性
得られたエマルションを濾過し、フィルター中に反応凝集物を集め、それを水道水で洗浄し、周囲温度で乾燥させ、収集物を秤量して、凝集物の量を決定する。エマルションの総重量に対する凝集物の重量百分率を使用して、重合安定性を測定した。凝集物の割合が低いほど、重合安定性は良好である。
【0129】
ポリマーエマルション中の粒径および粒径分布(ピーク幅)
ゼータ電位粒子分析装置(Malvern Nano ZS)を用いて、エマルション中の平均粒径を測定した。
【0130】
固形分
固形分測定は、乾燥減量法により150℃で0.5時間行った。
【0131】
耐水白化性試験
4重量%のフィルム形成助剤をエマルション中に添加し、手動混合の後、エマルションフィルムをプレート表面に約100μmの厚さで広げた。フィルムを周囲温度で24時間空気乾燥させ、次いで、エマルションフィルムを有するプレートを水道水に浸した。フィルムの外観を、これらのエマルションフィルムの耐水白化性の尺度として、24または48時間後に調べた。エマルション耐水白化性の試験方法は、建築用塗料の耐水性試験方法であるGB/T16777−1997から簡略化した。
【0132】
【表III】
【0133】
表IIIの結果に記載されているように、実施例4は、比較例Bと非常に類似した特性を有するエマルションを与えた。例えば、実施例4の粒径およびその分布は、比較例Bと同様であり、実施例4については、比較例Bよりも少ない重合残渣が記録された。
【0134】
概して、アニオン性界面活性剤は、粒度制御においてより効果的である。したがって、表IIIの結果は、実施例5における非イオン性界面活性剤の存在が、実施例4および比較例Bの他のエマルションよりもわずかに大きい粒径を有するエマルションをもたらすことを示す。
【0135】
表IIIのすべて3つのエマルションのCa2+安定性は、GB/T−20623−2006の標準方法によって決定されるCa2+安定性よりもはるかに良好であり、実施例4および5のエマルションは、100%のCaCl(10重量%の水溶液)を通過するほど非常に良好であったが、FES−993を有するエマルション(比較例B)は、75%のCaCl(10重量%の水溶液)のみ通過した。
【0136】
概して、実施例4および5のエマルションは、比較例Bのエマルションと比較して、よりバランスのとれた性能を与えた。特に、多数の充填剤/添加剤に対するエマルションのCa2+安定性は、例えば、建築用塗料配合物のコーティング安定性にとって極めて重要な特性である。
【0137】
動的表面張力
表面張力は、非常に重要な界面活性剤特性であり、泡形成、界面活性剤の安定性、および界面活性剤溶液の湿潤性などの界面活性剤の特性に影響を与える。高いコーティング速度が必要とされる特定の用途では、動的表面張力(DST)が、湿潤性能の指標と見なされる。実施例では、3つのエマルションのDSTを測定して、エマルションの湿潤性能を区別し、界面活性剤の比較例として、Disponil FES−993を使用した。
【0138】
試験方法である最大泡圧法は、界面活性剤を含むシステム/組成物のDSTを測定するために一般的に使用されている。最大泡圧法では、テンシオメータが、一定の速度で気泡を生成し、試料液に浸されているキャピラリー(既知の半径を有する)を通して気泡を吹き付ける。気泡がキャピラリーを通過するにつれて、気泡内部の圧力が増加し続け、気泡が完全に半球形状を有し、その半径がキャピラリーの半径に正確に対応するとき、最大圧力値が得られる。表面張力は、以下のように、液体内にある球形のバブル形状に関して還元形のヤング−ラプラス方程式を用いて決定され得、
【0139】
【数1】
【0140】
式中、σは、表面張力であり、ΔPmaxは、最大圧力降下であり、Rcapは、キャピラリーの半径である。
【0141】
エマルションの粘度を下げるために水を使用する。希釈エマルション溶液(40mL)を、その初期固形分の50パーセント(%)で調製する。
【0142】
図1は、実施例のエマルション動的表面張力(DST)特性の比較を示す。図1において、実施例4および実施例5のSt−アクリレートエマルションは、比較例Bのエマルションよりも低いDSTを有した。全体として、図1に示される結果は、エマルションの表面張力に従って良好な結果である。実施例2<実施例1<比較例A
【0143】
エマルション泡高測定
低発泡性能は、低発泡が下流のエマルション用途における消泡剤の添加剤の使用を最小限に抑えることができるため、エマルションにとって望ましい特性であり、低発泡はまた、生産効率を増加させ得る。高粘性エマルションでは、低発泡は、コーティングおよび接着剤用途の両方における製品欠陥を減らすために特に歓迎されている。実施例において、低発泡は、界面活性剤の比較例としてDisponil FES−993を用いて測定される。
【0144】
泡試験方法1
泡試験方法1は、まず、200mLのエマルションを500mLのプラスチックカップに注ぐことによって、エマルションを用いて実施される。その後、初期エマルション高さを記録する。エマルションを、分散プレートを用いて4000rpmで30分間連続的に攪拌する。30分間の撹拌の間のエマルション泡高の変化を記録する。高発泡エマルションの場合、泡がプラスチックカップからこぼれる可能性がある。泡試験の結果は、表IVに示す通りである。
【0145】
【表IV】
【0146】
表IVに記載された結果から、実施例4のエマルションの泡高は、表IVに記載された3つのエマルションの中で最も低いことが分かる。実施例5の界面活性剤組成物は、急速な泡崩壊を伴う低発泡であるが、実施例5の得られたエマルションは、比較例Bのエマルションよりもわずかに高い泡を有する。
【0147】
高速分散後、エマルションの低い最終泡高は、界面活性剤組成物の低い泡プロファイルを示す。
【0148】
実施例4と実施例5との間の1つの違いは、実施例5が界面活性剤組成物中に成分(b)の濃縮物を含有することである。
【0149】
泡試験方法2
この泡試験方法2では、エマルションをまず、1%の活性水溶液に希釈する。次に、250mLの希釈エマルションを試験管に入れる。水性エマルション溶液を1分間通気し、その後、泡立てを止め、泡高を記録する。次の5分間における泡高の変化を記録する。
【0150】
上記の試験は、二重に実施され、結果は、±5%で再現可能である。2つの重複試験の平均泡高を報告する。
【0151】
図2にエマルションのエマルション泡高特性の比較を示す。図2では、実施例4のエマルションの初期泡高は、わずかに低く、実施例4の発泡崩壊は、最初の3分でかなり急速であった一方、実施例5のエマルションにおける泡プロファイルは、比較例Bのエマルションとほぼ同じであった。
【0152】
上記の2つの異なる泡試験方法に関して、希釈エマルションを用いる方法2は、エマルション中の界面活性剤組成物の消泡特性を直接反映するが、高速分散を用いる方法1は、エマルションの粘性を有する界面活性剤組成物の消泡能力を示す。高粘性エマルションの発泡を減少させることの困難性を考慮すると、界面活性剤組成物が一定量の消泡能力を示すことは有益である。
【0153】
上記の泡試験方法1および2の両方からの泡高試験結果に基づいて、本発明の実施例4のエマルションは、最低の泡プロファイルを有した。
【0154】
耐水白化性試験
耐水白化性は、エマルション用途、特にコーティング用途に重要な影響を及ぼす場合がある、本質的なエマルション特性である。本明細書の上記に記載される試験方法によると、エマルション中に現れる白化の観察は、エマルションによって形成されたフィルムを通る水の浸透を表す。したがって、白化は、フィルムの耐水性の尺度として使用され得る。エマルション中で白化が目視で観察されないほど、エマルションの耐水白化性は良好である。
【0155】
実施例4のエマルションフィルムは、比較例Bのエマルションフィルムおよび実施例5のエマルションフィルムよりも白化が少ない。スキームIに示される構造によると、ブチレンオキシド(BO)単位の存在は、エチレンオキシド単位よりも顕著な立体障害を提供するだけでなく、BO単位はまた、耐水浸透性を高めるように、エマルションフィルムに対してより高い疎水性を提供する。さらに、界面活性剤構造中におけるBO単位の存在は、界面活性剤の臨界ミセル濃度(CMC)を低減させ得、その結果、より小さい粒径を有するエマルションが提供される。そして結果として、より小さい粒度がおそらく、実施例4のエマルションフィルムが実施例5のエマルションフィルムよりも耐水白化性に関してわずかに有利である理由であると理論付けられる。
【0156】
上記の適用試験は、本発明の界面活性剤組成物(実施例1および2)が本発明のエマルションに非常に有用な特性を与えるという結論を導き得る。例えば、はるかに強いCa2+安定性が、本発明のエマルションフィルムに対して観察され、その結果、著しく向上したコーティング安定性が達成され得る。また、本発明のエマルションフィルムは、低い動的表面張力を示し、これは、高いコーティング速度が適用される種々な用途において非常に有用であり得る。
【0157】
さらに、アルキルエーテルサルフェート乳化剤であるDisponil FES−993よりも低い発泡およびより急速な泡崩壊特性が、本発明の界面活性剤組成物、特に実施例1の界面活性剤組成物に対して達成され得る。
【0158】
実施例4および5のエマルションはまた、比較例Bのエマルションと比較して改善された耐水白化性を証明する。
【0159】
実施例4および5のエマルションを比較例Bのエマルションと比較すると、非イオン性アルキルアルコキシレート1の存在は、特に例えば、急速な湿潤に関して、界面活性剤特性を改良するのに非常に有用である。また、実施例4のエマルションは、粒度制御、発泡、および耐水性に関してより有利であることが観察される。
【0160】
製造コストの観点から、実施例1の界面活性剤組成物は、実施例2の界面活性剤組成物よりも低い。したがって、実施例1の界面活性剤組成物は、Disponil FES−993に代わる非常に競争力のある代替溶液として選択され得る。本明細書の実施例に記載されている異なるエマルションから作製されたエマルションフィルムを耐水白化性試験に供すると、実施例4および実施例5のエマルションフィルムは、比較例Bのエマルションフィルムよりも白化が少ない。実施例5のエマルションフィルムによると、ブチレンオキシド(BO)単位の存在は、エチレンオキシド単位よりも顕著な立体障害を提供するだけでなく、耐水浸透性を高めるように、より高い疎水性も提供する。さらに、乳化剤構造におけるBOの存在は、エマルションの臨界ミセル濃度(CMC)が低下させる場合があり、その結果、より小さい粒径を有するエマルションを調製することが有用である。結果として、おそらく、より小さい粒度が、実施例4のエマルションフィルムが実施例5のエマルションフィルムよりも耐水白化性に関してわずかにより有利である理由である。
(態様)
(請求項1)
少なくとも1つのアルキルアルコキシレートサルフェートアニオン性界面活性剤を含む、界面活性剤組成物。
(請求項2)
水を含む、請求項1に記載の組成物。
(請求項3)
少なくとも1つの第1の非イオン性アルキルアルコキシレート1界面活性剤を含む、請求項1に記載の組成物。
(請求項4)
前記少なくとも1つのアルキルアルコキシレートサルフェートアニオン性界面活性剤が、以下の式(I)を有するアルキルアルコキシレートサルフェートアニオン性界面活性剤であり、
【化1】
式中、RおよびRは、RおよびRが一緒になって、約8〜約18個の炭素原子を含有することを条件として、それぞれ独立して、水素または1〜18個の炭素原子を含有する直鎖もしくは分枝鎖アルキル基であり、Rは、水素または1〜約6個の炭素原子を含有するアルキルラジカルであり、RおよびRは、それぞれ独立して、水素または2〜約6個の炭素原子を含有するアルキルラジカルであり、mを含有する基およびnを含有する基が、位置に関して互いに交換されてもよいことを条件として、mは、0〜10の範囲にある平均値であり、nは、約3〜約40の範囲にある平均であり、zは、約0.5〜約5の範囲にある平均であり、Mは、カチオンである、請求項1に記載の組成物。
(請求項5)
前記少なくとも1つのアルキルアルコキシレートサルフェートアニオン性界面活性剤が、C12〜C14エトキシル化およびブトキシレートを有する第二級アルコールの硫酸塩からなる群から選択される、請求項1に記載の組成物。
(請求項6)
前記少なくとも1つの第1の非イオン性アルキルアルコキシレート1界面活性剤が、以下の式(II)を有するアルキルアルコキシレート非イオン性界面活性剤であり、
【化2】
式中、RおよびRは、RおよびRが一緒になって、約8〜約18個の炭素原子を含有することを条件として、それぞれ独立して、水素または1〜18個の炭素原子を含有する直鎖もしくは分枝鎖アルキル基であり、Rは、水素または1〜約6個の炭素原子を含有するアルキルラジカルであり、RおよびRは、それぞれ独立して、水素または2〜約6個の炭素原子を含有するアルキルラジカルであり、mを含有する基およびnを含有する基が、位置に関して互いに交換されてもよいことを条件として、mは、0〜約10の範囲にある平均値であり、nは、約3〜約40の範囲にある平均であり、zは、約0.5〜約5の範囲にある平均である、請求項1に記載の組成物。
(請求項7)
前記少なくとも1つの第1の非イオン性アルキルアルコキシレート1界面活性剤が、第
二級アルコールC12〜14エトキシレートおよびブトキシレートからなる群から選択される、請求項1に記載の組成物。
(請求項8)
前記少なくとも1つの第2の非イオン性アルキルアルコキシレート2界面活性剤が、以下の式(III)を有するアルキルアルコキシレート非イオン性界面活性剤であり、
O−(AO)−H (III)
式中、Rは、1〜約24個の炭素原子(C6−C24)を含有する直鎖または分岐鎖のアルキル鎖であり、AOは、2〜約4個の炭素原子(C2−C4)を含有するアルキレンオキシド基またはアルキレンオキシド基のブロックであり、zは、1−50の範囲にある、請求項1に記載の組成物。
(請求項9)
前記少なくとも1つの第2の非イオン性アルキルアルコキシレート2界面活性剤がアルキルアルコキシレートである、請求項1に記載の組成物。
(請求項10)
前記少なくとも1つのアルキルアルコキシレートサルフェートアニオン性界面活性剤の濃度が、約10重量パーセント〜約80重量パーセントの範囲にある、請求項1に記載の組成物。
(請求項11)
前記少なくとも1つの第1の非イオン性アルキルアルコキシレート1界面活性剤の濃度が、約0.01重量パーセント〜約40重量パーセントの範囲にある、請求項1に記載の組成物。
(請求項12)
界面活性剤組成物であって、
(a)少なくとも1つのアルキルアルコキシレートサルフェートアニオン性界面活性剤と、
(b)少なくとも1つの第1の非イオン性アルキルアルコキシレート1界面活性剤と、
(c)水と、
(d)任意に、少なくとも1つの第2の非イオン性アルキルアルコキシレート2界面活性剤と、を含む、界面活性剤組成物。
(請求項13)
請求項1に記載の界面活性剤を調製することを含む、プロセス。
(請求項14)
界面活性剤組成物を調製するためのプロセスであって、
(a)少なくとも1つのアルキルアルコキシレートサルフェートアニオン性界面活性剤と、
(b)少なくとも1つの第1の非イオン性アルキルアルコキシレート1界面活性剤と、
(c)水と、
(d)任意に、少なくとも1つの第2の非イオン性アルキルアルコキシレート2界面活性剤と、を混合することを含む、プロセス。
(請求項15)
請求項1に記載の界面活性剤の反応生成物を含むポリマーエマルション組成物、およびエマルション組成物。
(請求項16)
乳化重合プロセスであって、
(I)請求項1に記載の界面活性剤を提供するステップと、
(II)ステップ(I)からの前記界面活性剤を含有するエマルション組成物の乳化重合を行うステップと、を含む、乳化重合プロセス。
図1
図2